(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145243
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20220926BHJP
F16H 57/08 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046565
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍三郎
(72)【発明者】
【氏名】深野木 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】上原 弘樹
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA04
3J063AB12
3J063AC01
3J063BA11
3J063CA01
3J063CB06
3J063XD03
3J063XD22
3J063XD43
3J063XD62
3J063XD72
3J063XD73
(57)【要約】
【課題】潤滑効率を向上させる。
【解決手段】動力伝達装置は、ケースと、ケース内で、当該ケースの回転軸に沿う向きで配置されたシャフトと、を有し、ケースには、回転軸方向に貫通する開口部が設けられており、ケースは、開口部から、ケースの内側に突出する第1ガイド部を有し、ケースには、回転軸の径方向において第1ガイド部よりも外側に、シャフトと連絡するオイル経路が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内で、当該ケースの回転軸に沿う向きで配置されたシャフトと、を有し、
前記ケースには、前記回転軸方向に貫通する開口部が設けられており、
前記ケースは、前記開口部から、前記ケースの内側に突出する第1ガイド部を有し、
前記ケースには、前記回転軸の径方向において前記第1ガイド部よりも外側に、前記シャフトと連絡するオイル経路が形成されている、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記開口部の内周壁は、前記オイル経路に近づくにつれて外径側に広がる向きに傾斜している、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記ケースは、前記開口部から、前記ケースの外側に突出する第2ガイド部を有する、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記回転軸方向から見て、前記第2ガイド部は環状であり、前記第1ガイド部は非環状である、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記回転軸方向から見て、前記第1ガイド部は、開口を内径側に向けた連続壁である、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記ケースは、前記第1ガイド部を有する第1ケース部材と、前記オイル経路を有する第2ケース部材と、から構成されており、
前記第2ケース部材は、前記第1ガイド部の外径側に、オイル受部を有する、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記オイル受部には、前記回転軸方向から見て、前記径方向内側に開口する切欠部が形成されている、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記オイル受部は、前記第1ガイド部から前記オイル経路に近づくにつれて、外径側に広がる向きに傾斜する傾斜面を有する、動力伝達装置。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のいずれか一において、
前記オイル経路は、前記オイル受部の側壁と前記シャフトに支持されたピニオンギアの側壁との間のクリアランスとして構成される、動力伝達装置。
【請求項10】
請求項6乃至請求項8のいずれか一において、
前記オイル受部は、前記回転軸方向で前記第1ガイド部と対向すると共に、前記径方向内径側に突出する対向側壁部を有する、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、傘歯車式の差動機構を有する動力伝達装置が開示されている。差動機構は、デフケースに収容されたピニオンメートギアとピニオンメートシャフトとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動力伝達装置において、潤滑効率を向上させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様における動力伝達装置は、
ケースと、
前記ケース内で、当該ケースの回転軸に沿う向きで配置されたシャフトと、を有し、
前記ケースには、前記回転軸方向に貫通する開口部が設けられており、
前記ケースは、前記開口部から、前記ケースの内側に突出する第1ガイド部を有し、
前記ケースには、前記回転軸の径方向において前記第1ガイド部よりも外側に、前記シャフトと連絡するオイル経路が形成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、動力伝達装置において潤滑効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態にかかる動力伝達装置を説明するスケルトン図である。
【
図2】本実施形態にかかる動力伝達装置を説明する断面の模式図である。
【
図3】動力伝達装置の遊星減速ギア周りの拡大図である。
【
図4】動力伝達装置の差動機構周りの拡大図である。
【
図6】差動機構のデフケース周りの分解斜視図である。
【
図7】差動機構のケース部材6をケース部材7側から見た斜視図である。
【
図8】差動機構のケース部材6をケース部材7側から見た平面図である。
【
図12】
図9における回転軸Xの上側領域を示すと共に、段付きピニオンギアを実線で示している。
【
図13】ケース部材7をケース部材6と反対側から見た斜視図である。
【
図14】ケース部材7をケース部材6と反対側から見た平面図である。
【
図15】ケース部材7をケース部材6側から見た斜視図である。
【
図16】ケース部材7をケース部材6側から見た平面図である。
【
図21】ケース部材6とケース部材7の組み付けを説明する図である。
【
図22】ケース部材6とケース部材7の組み付けを説明する図である。
【
図23】変形例1に係る動力伝達装置を説明する図である。
【
図24】変形例2に係るガイド部を説明する図である。
【
図25】変形例3に係るガイド部を説明する図である。
【
図26】変形例4に係るガイド部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態にかかる動力伝達装置1を説明するスケルトン図である。
図2は、本実施形態にかかる動力伝達装置1を説明する断面の模式図である。
図3は、動力伝達装置1の遊星減速ギア4周りの拡大図である。
図4は、動力伝達装置1の差動機構5周りの拡大図である。
【0009】
図1に示すように、動力伝達装置1は、モータ2と、モータ2の出力回転を減速して差動機構5に入力する遊星減速ギア4(減速機構)と、を有する。動力伝達装置1は、また、ドライブシャフト9と、パークロック機構3と、を有する。ドライブシャフト9は、ドライブシャフト9A(第2駆動軸)とドライブシャフト9B(第1駆動軸)とを有する。
動力伝達装置1では、モータ2の回転軸X回りの出力回転の伝達経路に沿って、パークロック機構3と、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフト9(9A、9B)と、が設けられている。ドライブシャフト9(9A、9B)の軸線は、モータ2の回転軸Xと同軸である。
【0010】
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転が、遊星減速ギア4で減速されて差動機構5に入力された後、ドライブシャフト9(9A、9B)を介して、動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪W、Wに伝達される。
ここで、遊星減速ギア4は、モータ2の下流に接続されており、差動機構5は、遊星減速ギア4の下流に接続されており、ドライブシャフト9(9A、9B)は、差動機構5の下流に接続されている。
【0011】
図2に示すように、動力伝達装置1の本体ボックス10は、モータ2を収容する第1ボックス11と、第1ボックス11に外挿される第2ボックス12と、を有する。本体ボックス10は、また、第1ボックス11に組み付けられる第3ボックス13と、第2ボックス12に組み付けられる第4ボックス14と、を有する。
【0012】
第1ボックス11は、円筒状の支持壁部111と、支持壁部111の一端111aに設けられたフランジ状の接合部112と、を有している。
第1ボックス11は、支持壁部111をモータ2の回転軸Xに沿わせた向きで設けられている。支持壁部111の内側には、モータ2が収容される。
【0013】
接合部112は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。接合部112は、支持壁部111よりも大きい外径で形成されている。
【0014】
第2ボックス12は、円筒状の周壁部121と、周壁部121の一端121aに設けられたフランジ状の接合部122と、周壁部121の他端121bに設けられたフランジ状の接合部123と、を有している。
周壁部121は、第1ボックス11の支持壁部111に外挿可能な内径で形成されている。
第1ボックス11と第2ボックス12は、第1ボックス11の支持壁部111に、第2ボックス12の周壁部121を外挿して互いに組み付けられている。
【0015】
周壁部121の一端121a側の接合部122は、回転軸X方向から、第1ボックス11の接合部112に当接している。これら接合部122、112は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
第1ボックス11では、支持壁部111の外周に複数の凹溝111bが設けられている。複数の凹溝111bは、回転軸X方向に間隔をあけて設けられている。凹溝111bの各々は、回転軸X周りの周方向の全周に亘って設けられている。
第1ボックス11の支持壁部111に、第2ボックス12の周壁部121が外挿される。凹溝111bの開口が周壁部121で閉じられている。支持壁部111と周壁部121との間に、冷却水が通流する複数の冷却路CPが形成される。
【0016】
第1ボックス11の支持壁部111の外周では、凹溝111bが設けられた領域の両側に、リング溝111c、111cが形成されている。リング溝111c、111cには、シールリング113、113が外嵌して取り付けられている。
これらシールリング113は、支持壁部111に外挿された周壁部121の内周に圧接して、支持壁部111の外周と、周壁部121の内周との間の隙間を封止する。
【0017】
第2ボックス12の他端121bには、内径側に延びる壁部120が設けられている。壁部120は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。壁部120の回転軸Xと交差する領域に、ドライブシャフト9Aが挿通する開口120aが開口している。
壁部120では、モータ2側(図中、右側)の面に、開口120aを囲む筒状のモータ支持部125が設けられている。
モータ支持部125は、後記するコイルエンド253bの内側に挿入されている。モータ支持部125は、ロータコア21の端部21bに回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0018】
第2ボックス12の周壁部121は、動力伝達装置1の車両への搭載状態を基準とした鉛直線方向の下側の領域において、径方向の厚みが、上側の領域よりも厚くなっている。
この径方向の厚みが厚い領域には、回転軸X方向に貫通してオイル溜り部128が設けられている。
オイル溜り部128は、連通孔112aを介して、第3ボックス13の接合部132に設けた軸方向油路138に連絡している。連通孔112aは、第1ボックス11の接合部112に設けられている。
【0019】
第3ボックス13は、回転軸Xに直交する壁部130を有している。壁部130の外周部には、回転軸X方向から見てリング状を成す接合部132が設けられている。
第1ボックス11から見て第3ボックス13は、差動機構5とは反対側(図中、右側)に位置している。第3ボックス13の接合部132は、第1ボックス11の接合部112に回転軸X方向から接合されている。第3ボックス13と第1ボックス11は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。この状態において第1ボックス11は、支持壁部111の接合部122側(図中、右側)の開口が、第3ボックス13で塞がれている。
【0020】
第3ボックス13では、壁部130の中央部に、ドライブシャフト9Aの挿通孔130aが設けられている。
挿通孔130aの内周には、リップシールRSが設けられている。リップシールRSは、図示しないリップ部をドライブシャフト9Aの外周に弾発的に接触させている。挿通孔130aの内周と、ドライブシャフト9Aの外周との隙間が、リップシールRSにより封止されている。
壁部130における第1ボックス11側(図中、左側)の面には、挿通孔130aを囲む周壁部131が設けられている。周壁部131の内周には、ドライブシャフト9AがベアリングB4を介して支持されている。
【0021】
周壁部131から見てモータ2側(図中、左側)には、モータ支持部135が設けられている。モータ支持部135は、回転軸Xを間隔を空けて囲む筒状を成している。
モータ支持部135の外周には、円筒状の接続壁136が接続されている。接続壁136は、壁部130側(図中、右側)の周壁部131よりも大きい外径で形成されている。接続壁136は、回転軸Xに沿う向きで設けられており、モータ2から離れる方向に延びている。接続壁136は、モータ支持部135と第3ボックス13の壁部130とを接続している。
【0022】
モータ支持部135は、接続壁136を介して第3ボックス13で支持されている。モータ支持部135の内側を、モータシャフト20の一端20a側が、モータ2側から周壁部131側に貫通している。
モータ支持部135の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部135で支持されている。
ベアリングB1と隣り合う位置には、リップシールRSが設けられている。
【0023】
第3ボックス13では、接続壁136の内周に、後記する油孔136aが開口している。接続壁136で囲まれた空間(内部空間Sc)に、油孔136aからオイルOLが流入するようになっている。リップシールRSは、接続壁136内のオイルOLのモータ2側への流入を阻止するために設けられている。
【0024】
第4ボックス14は、遊星減速ギア4と差動機構5の外周を囲む周壁部141と、周壁部141における第2ボックス12側の端部に設けられたフランジ状の接合部142と、を有している。第4ボックス14は、遊星減速ギア4と差動機構5とを収容するボックスとして機能する。
第4ボックス14は、第2ボックス12から見て差動機構5側(図中、左側)に位置している。第4ボックス14の接合部142は、第2ボックス12の接合部123に回転軸X方向から接合されている。第4ボックス14と第2ボックス12は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
【0025】
動力伝達装置1の本体ボックス10の内部には、モータ2を収容するモータ室Saと、遊星減速ギア4と差動機構5を収容するギア室Sbとが形成されている。
モータ室Saは、第1ボックス11の内側で、第2ボックス12の壁部120と、第3ボックス13の壁部130との間に形成されている。
ギア室Sbは、第4ボックス14の内径側で、第2ボックス12の壁部120と、第4ボックス14の周壁部141との間に形成されている。
【0026】
ギア室Sbの内部には、プレート部材8が設けられている。
プレート部材8は、第4ボックス14に固定されている。
プレート部材8は、ギア室Sbを、遊星減速ギア4と差動機構5を収容する第1ギア室Sb1と、パークロック機構3を収容する第2ギア室Sb2とに区画している。
回転軸X方向において第2ギア室Sb2は、第1ギア室Sb1と、モータ室Saとの間に位置している。
【0027】
モータ2は、円筒状のモータシャフト20と、モータシャフト20に外挿された円筒状のロータコア21と、ロータコア21の外周を間隔を空けて囲むステータコア25とを、有する。
【0028】
モータシャフト20では、ロータコア21の両側に、ベアリングB1、B1が外挿されて固定されている。
ロータコア21から見てモータシャフト20の一端20a側(図中、右側)に位置するベアリングB1は、第3ボックス13のモータ支持部135の内周に支持されている。他端20b側に位置するベアリングB1は、第2ボックス12の円筒状のモータ支持部125の内周に支持されている。
【0029】
モータ支持部135、125は、後記するコイルエンド253a、253bの内径側で、ロータコア21の一方の端部21aと他方の端部21bに、回転軸X方向の隙間をあけて対向して配置されている。
【0030】
ロータコア21は、複数の珪素鋼板を積層して形成したものである。珪素鋼板の各々は、モータシャフト20との相対回転が規制された状態で、モータシャフト20に外挿されている。
モータシャフト20の回転軸X方向から見て、珪素鋼板はリング状を成している。珪素鋼板の外周側では、図示しないN極とS極の磁石が、回転軸X周りの周方向に交互に設けられている。
【0031】
ロータコア21の外周を囲むステータコア25は、複数の電磁鋼板を積層して形成したものである。ステータコア25は、第1ボックス11の円筒状の支持壁部111の内周に固定されている。
電磁鋼板の各々は、支持壁部111の内周に固定されたリング状のヨーク部251と、ヨーク部251の内周からロータコア21側に突出するティース部252と、を有している。
【0032】
本実施形態では、巻線253を、複数のティース部252に跨がって分布巻きした構成のステータコア25を採用している。ステータコア25は、回転軸X方向に突出するコイルエンド253a、253bの分だけ、ロータコア21よりも回転軸X方向の長さが長くなっている。
【0033】
なお、ロータコア21側に突出する複数のティース部252の各々に、巻線を集中巻きした構成のステータコアを採用しても良い。
【0034】
第2ボックス12の壁部120(モータ支持部125)には、開口120aが設けられている。モータシャフト20の他端20b側は、開口120aを差動機構5側(図中、左側)に貫通して、第4ボックス14内に位置している。
モータシャフト20の他端20bは、第4ボックス14の内側で、後記するサイドギア54Aに、回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0035】
図3に示すように、モータシャフト20では、第4ボックス14内に位置する領域に、段部201が設けられている。段部201は、モータ支持部125の近傍に位置している。段部201とベアリングB1との間の領域の外周には、モータ支持部125の内周に支持されたリップシールRSが当接している。
リップシールRSは、モータ2を収容するモータ室Saと、第4ボックス14内のギア室Sbとを区画している。
【0036】
第4ボックス14の内径側には、遊星減速ギア4と差動機構5を潤滑するためのオイルOLが封入されている(
図2参照)。
リップシールRSは、モータ室SaへのオイルOLの流入を阻止するために設けられている。
【0037】
図3に示すように、モータシャフト20では、段部201から他端20bの近傍までの領域が、外周にスプラインが設けられた嵌合部202となっている。
嵌合部202の外周には、パークギア30とサンギア41がスプライン嵌合している。
【0038】
パークギア30は、回転軸X方向におけるパークギア30の一方の側面が、段部201に当接している(図中、右側)。パークギア30の他方の側面に、サンギア41の円筒状の基部410の一端410aが当接している(図中、左側)。
基部410の他端410bには、モータシャフト20の他端20bに螺合したナットNが、回転軸X方向から圧接している。
サンギア41とパークギア30は、ナットNと段部201との間に挟み込まれた状態で、モータシャフト20に対して相対回転不能に設けられている。
【0039】
サンギア41は、モータシャフト20の他端20b側の外周に、歯部411を有している。歯部411の外周には、ピニオンギアとしての段付きピニオンギア43の大径歯車部431が噛合している。
【0040】
段付きピニオンギア43は、サンギア41に噛合する大径歯車部431と、大径歯車部431よりも小径の小径歯車部432とを有している。
段付きピニオンギア43は、大径歯車部431と小径歯車部432が、回転軸Xに平行な軸線X1方向で並んで、一体に設けられたギア部品である。
大径歯車部431は、小径歯車部432の外径R2よりも大きい外径R1で形成されている。
段付きピニオンギア43は、軸線X1に沿う向きで設けられている。この状態において、大径歯車部431はモータ2側(図中、右側)に位置している。
【0041】
小径歯車部432の外周は、リングギア42の内周に噛合している。リングギア42は、回転軸Xを間隔を空けて囲むリング状を成している。リングギア42の外周には、径方向外側に突出する複数の係合歯421が設けられている。複数の係合歯421は、回転軸X周りの周方向に所定間隔で複数設けられている。
リングギア42は、外周に設けた係合歯421を、第4ボックス14の支持壁部146に設けた歯部146aにスプライン嵌合している。リングギア42は、回転軸X回りの回転が規制されている。
【0042】
段付きピニオンギア43は、大径歯車部431と小径歯車部432の内径側を軸線X1方向に貫通した貫通孔430を有している。
段付きピニオンギア43は、貫通孔430を貫通したピニオン軸44の外周で、軸受としてのニードルベアリングNB、NBを介して回転可能に支持されている。
【0043】
ピニオン軸44の外周では、大径歯車部431の内周を支持するニードルベアリングNBと、小径歯車部432の内周を支持するニードルベアリングNBとの間には、中間スペーサMSが介在している。
【0044】
図4に示すように、ピニオン軸44の内部には、軸内油路440A、440Bが設けられている。軸内油路440Aは、第1ピニオン軸内油路として、ピニオン軸44の一端44a(図中、右側)から、軸線X1に沿って大径歯車部431の内径側まで延びている。軸内油路440Bは、第2ピニオン軸内油路として、ピニオン軸44の他端44b(図中、左側)から、軸線X1に沿って小径歯車部432の内径側まで延びている。
ピニオン軸44には、軸内油路440Aとピニオン軸44の外周とを連通させる油孔441、442と、軸内油路440Bとピニオン軸44の外周とを連通させる油孔443、444が設けられている。
【0045】
油孔441は、大径歯車部431の内周を支持するニードルベアリングNBが設けられた領域に開口している。ピニオン軸44において油孔441は、段付きピニオンギア43が外挿された領域内に開口している。油孔442は、大径歯車部431の軸方向側面431aと、デフケース50のケース部材6の対向面61bとの軸線X1方向の隙間CL1に開口している。
【0046】
油孔442には、後記するデフケース50が掻き上げたオイルOLが流入する。油孔442に流入したオイルOLは、ピニオン軸44の軸内油路440Aに流入する。軸内油路440Aに流入したオイルOLは、油孔441から径方向外側に排出される。油孔441から排出されたオイルOLは、ピニオン軸44に外挿されたニードルベアリングNBを潤滑する。
【0047】
また、油孔443は、小径歯車部432の内周を支持するニードルベアリングNBが設けられた領域に開口している。ピニオン軸44において油孔443は、段付きピニオンギア43が外挿された領域内に開口している。
【0048】
油孔444は、軸内油路440Bとピニオン軸44の外周とを連通させている。油孔444は、軸線X1方向における小径歯車部432の側壁部432aと、後記するケース部材6のプレート部68との隙間CL2に開口している。
【0049】
隙間CL2には、後記するデフケース50が掻き上げて外径側に向かうオイルOLが流入する。隙間CL2から油孔444に流入したオイルOLは、ピニオン軸44の軸内油路440Bに流入する。軸内油路440Bに流入したオイルOLは、油孔443から径方向外側に排出される。油孔443から排出されたオイルOLは、ピニオン軸44に外挿されたニードルベアリングNBを潤滑する。すなわち、隙間CL2は、デフケース50が掻き上げたオイルOLをピニオン軸44へ導くオイル経路として機能する。
【0050】
図4に示すように、ピニオン軸44の長手方向の一端44a側では、段付きピニオンギア43から突出した領域が第1軸部445となっている。第1軸部445は、デフケース50のケース部材6に設けた支持孔61aで支持されている。
ピニオン軸44の長手方向の他端44b側では、段付きピニオンギア43から突出した領域が第2軸部446となっている。第2軸部446は、デフケース50のケース部材6に設けた支持孔68aで支持されている。詳細は後記するが、第2軸部446は、支持孔68aに圧入されており、ケース部材6に対して相対回転不能に支持されている。
【0051】
ここで、第1軸部445は、ピニオン軸44における段付きピニオンギア43が外挿されていない一端44a側の領域(
図4における右側)を意味する。第2軸部446は、ピニオン軸44における段付きピニオンギア43が外挿されていない他端44b側の領域(
図4における左側)を意味する。
ピニオン軸44では、第1軸部445よりも第2軸部446のほうが、軸線X1方向の長さが長くなっている。
【0052】
以下、差動機構5の主要構成を説明する。
図5は、差動機構5のデフケース50周りの斜視図である。
図6は、差動機構5のデフケース50周りの分解斜視図である。
図6では、1つの段付きピニオンギア43を省略して、差動機構5の内部を露出させている。
図4から
図6に示すように、ケースとしてのデフケース50は、差動機構5を収容する。デフケース50は、ケース部材6(第2ケース部材)とケース部材7(第1ケース部材)を回転軸X方向で組み付けて形成される。本実施形態では、デフケース50のケース部材6が、遊星減速ギア4のピニオン軸44を支持するキャリアとしての機能を有している。
【0053】
図6に示すように、デフケース50の、ケース部材6とケース部材7との間に、3つのピニオンメートギア52と、ピニオンメートシャフト51と、が設けられている。ピニオンメートシャフト51は、ピニオンメートギア52を支持する支持軸として機能する。
ピニオンメートシャフト51は、回転軸X周りの周方向に等間隔で設けられた3つのシャフト部材511を備える(
図6参照)。
シャフト部材511の各々の内径側の端部は、回転軸X上に配置された中心部材510に連結されている。すなわち、シャフト部材511は、中心部材510を中心として、放射状に配置されている。ピニオンメートシャフト51として、中心部材510とシャフト部材511を一体成型したものを用いることができる。
【0054】
ピニオンメートギア52は、シャフト部材511の各々に1つずつ外挿されている。ピニオンメートギア52の各々は、回転軸Xの径方向外側から、中心部材510に接触している。
この状態においてピニオンメートギア52の各々は、シャフト部材511で回転可能に支持されている。
【0055】
図4に示すように、シャフト部材511には、球面状ワッシャ53が外挿されている。球面状ワッシャ53は、ピニオンメートギア52の球面状の外周に接触している。
【0056】
デフケース50では、回転軸X方向における中心部材510の一方側にサイドギア54Aが位置し、他方側にサイドギア54Bが位置する。サイドギア54Aはケース部材6で回転可能に支持される。サイドギア54Bはケース部材7で回転可能に支持される。
サイドギア54Aは、回転軸X方向における一方側から、3つのピニオンメートギア52に噛合している。サイドギア54Bは、回転軸X方向における他方側から、3つのピニオンメートギア52に噛合している。
【0057】
図7から
図12は、ケース部材6を説明する図である。
図7は、差動機構5のケース部材6をケース部材7側から見た斜視図である。
図8は、差動機構5のケース部材6をケース部材7側から見た平面図である。
図7、
図8では、見やすくするために、プレート部68にクロスハッチングを付してある。
図9は、
図8におけるA-A断面の模式図である。
図9は、ピニオンメートシャフト51のシャフト部材511の配置を仮想線で示している。
図10は、
図9におけるA-A矢視図である。
図11は、
図8におけるA-A断面の模式図である。
図11は、プレート部68と、紙面奥側の連結梁62の図示を省略しつつ、サイドギア54Aと段付きピニオンギア43とドライブシャフト9Aの配置を仮想線で示している。
図12は、
図9における回転軸Xの上側領域を示すと共に、段付きピニオンギア43を実線で示している。
【0058】
図7および
図9に示すように、ケース部材6は、リング状の基部61を有している。基部61は、回転軸X方向に厚みW61を有する板状部材である。
図9に示すように、基部61の中央部には、開口60が設けられている。基部61におけるケース部材7とは反対側(
図9における、右側)の面には、開口60を囲む筒壁部611が設けられている。筒壁部611の外周は、ベアリングB3を介して、プレート部材8で支持されている(
図2参照)。
【0059】
基部61におけるケース部材7側(
図9における、左側)の面には、ケース部材7側に延びる3つの連結梁62が設けられている。
3つの連結梁62は、回転軸X周りの周方向に、等間隔で設けられている(
図7および
図8参照)。
図7に示すように、連結梁62は、基部61に接続し、基部61に直交する方向に延びる基部63を有する。連結梁62は、また、基部63のケース部材7側(図中、左側)に接続し、基部63より幅広の連結部64を有する。連結部64は、基部63よりも回転軸X周りの周方向幅が大きい。
【0060】
連結部64の内径側には、回転軸X方向から視て円形の空間が形成される。
図6に示すように、この空間に、ピニオンメートシャフト51の中心部材510、ピニオンメートギア52および球面状ワッシャ53が収容される。ピニオンメートギア52の外周に球面状ワッシャ53が位置し、ピニオンメートギア52の内周に、中心部材510が位置する。
【0061】
連結部64は、
図8に示すように、回転軸X周りの周方向に等間隔で設けられている。連結部64の間に、3つのプレート部68が配置されている。プレート部68は、回転軸X周りの周方向に沿って延び、隣り合う連結部64を接続する。プレート部68は、回転軸X方向から視て円弧状である。
図9に示すように、プレート部68は、連結部64よりもケース部材7側(図中、左側)に突出している。プレート部68は、基部61と隙間を空けて対向している。この隙間に、段付きピニオンギア43およびピニオン軸44が収容される(
図5参照)。
【0062】
図7に示すように、基部63の外周面には、回転軸X周りの周方向に沿って段差部63aが形成されている。
図4に示すように、この段差部63aを境界として、ケース部材6のケース部材7側(図中、左側)を、第1部分6Aとし、ケース部材7から離れる基部61側(図中、右側)を第2部分6Bとする。
【0063】
第2部分6Bの外周面の径は、第1部分6Aの外周面の径よりも大きい。第1部分6Aの回転軸Xの径方向における厚みを第2部分6Bの厚みよりも小さくすることで、ケース部材6を軽量化している。なお、
図7に示すように、段差部63aは基部63の回転軸X方向における中心付近に形成されているが、段差部63aを形成する位置は、適宜変更可能である。
【0064】
図8に示すように、連結部64の回転軸X周りの周方向における中央に、凹部640が設けられている。
図7に示すように、凹部640は、プレート部68に対して基部61側にへこんでいる。凹部640は、回転軸X周りの周方向に沿って延びる円弧状の底面部643と、底面部643からプレート部68に向かって回転軸X方向に延びる側壁部644とを備える。
【0065】
底面部643と側壁部644の境界には、回転軸Xの径方向に延びる溝部645が形成されている。凹部640の底面部643は、回転軸Xに直交する方向に沿って延びる面である。底面部643には、ピニオンメートシャフト51のシャフト部材511を支持するための支持溝65(第2切欠部)が設けられている。
【0066】
図8に示すように、回転軸X方向から見て支持溝65は、リング状の基部61の半径線Lに沿って、直線状に形成されている。支持溝65は、回転軸X周りの周方向における凹部640の中央部を、内径側から外径側に横断している。
図9に示すように、支持溝65は、底面部643をピニオンメートシャフト51のシャフト部材511の外径に沿う半円形に切り欠いた形状である。支持溝65は、円柱状のシャフト部材511の半分を収容可能な深さで形成されている。すなわち、支持溝65は、シャフト部材511の直径Daの半分(=Da/2)に相当する深さで形成されている。
【0067】
連結部64の内径側(回転軸X側)には、ピニオンメートギア52の外周に沿う形状で円弧部641が形成されている。
円弧部641では、ピニオンメートギア52の外周が、球面状ワッシャ53を介して支持される。
円弧部641では、前記した半径線Lに沿う向きで油溝642が設けられている。油溝642は、シャフト部材511を支持する支持溝65から、連結部64の内周に固定されたギア支持部66までの範囲に設けられている。
【0068】
ギア支持部66は、基部63と連結部64との境界部に接続されている。ギア支持部66は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。ギア支持部66は、中央部に貫通孔660を有している。
図8に示すように、ギア支持部66の外周は、3つの連結部64の内周に接続されている。この状態において貫通孔660の中心は、回転軸X上に位置している。
【0069】
図9および
図11に示すように、ギア支持部66では、基部61とは反対側(図中、左側)の面に、貫通孔660を囲む凹部661が設けられている。凹部661には、サイドギア54Aの裏面を支持するリング状のワッシャ55が収容される。
サイドギア54Aの裏面には、円筒状の筒壁部541が設けられている。ワッシャ55は筒壁部541に外挿されている。
【0070】
回転軸X方向から見て、ギア支持部66における凹部661側の面には、3つの油溝662が設けられている。油溝662は、回転軸X周りの周方向に所定間隔で設けられている。
油溝662は、前記した半径線Lに沿って、ギア支持部66の内周から外周まで及んでいる。油溝662は、前記した円弧部641側の油溝642に連絡している。
【0071】
図7および
図9に示すように、基部61には、ピニオン軸44の支持孔61aが開口している。支持孔61aは、回転軸X周りの周方向で間隔をあけて配置された連結梁62、62の間の領域に開口している。
基部61には、支持孔61aを囲むボス部616が設けられている。ボス部616には、ピニオン軸44に外挿されたワッシャWc(
図11参照)が、回転軸X方向から接触する。
【0072】
基部61では、中央の開口60からボス部616までの範囲に、油溝617が設けられている。
図7に示すように、油溝617は、ボス部616に近づくにつれて、回転軸X周りの周方向の幅が狭くなる先細り形状で形成されている。油溝617は、ボス部616に設けた油溝618に連絡している。
【0073】
連結部64では、支持溝65の両側に、ボルト穴67、67が設けられている。
図6に示すように、ケース部材6の連結部64には、ケース部材7側の連結部74が回転軸X方向から接合される。ケース部材6とケース部材7は、ケース部材7側の連結部74を貫通したボルトB(
図5参照)が、ボルト穴67、67に螺入されて、互いに接合される。
【0074】
図8に示すように、回転軸X方向から見て、プレート部68は、弧状の基部680と、当該基部680の外周縁に設けられた外周壁681と、から構成されている。
図9に示すように、基部680は、厚み方向を回転軸X方向に沿わせて配置した板状部材である。回転軸X方向における基部680の一端面680aと他端面680bは、回転軸Xに直交する平坦面である。外周壁681は、基部680の一端面680aから回転軸X方向に突出している。
【0075】
図8に示すように、回転軸X方向から見て、外周壁681は、回転軸X周りの周方向における基部680の全長に亘って形成されている。3つのプレート部68は、外周壁681の内周面681aが、それぞれ直径D1の仮想円Im1に重なるように形成されている。また、3つのプレート部68は、基部680の内周面680cが、それぞれ直径D2の仮想円Im2に重なるように形成されている。
【0076】
図9に示すように、プレート部68には、基部680を回転軸X方向に貫通する支持孔68aが形成されている。支持孔68aと支持孔61aとは、回転軸Xに平行な軸線X1に沿って同心に配置されている。
図8に示すように、支持孔68aは、回転軸X周りの周方向における基部680の中央部に形成されている。
【0077】
なお、詳細は後記するが、プレート部68の基部680では、回転軸Xの径方向における支持孔68aよりも内径側の領域が、デフケース50の回転で掻き上げられたオイルOLを受けるオイル受部682を構成する(
図9参照)。
以下の説明では、基部680における支持孔68aよりも内径側の領域については、基部680の一端面680a、他端面680b及び内周面680cを、オイル受部682の一端面680a、他端面680b及び内周面680cとも表記する。
【0078】
図10に示すように、オイル受部682の内周面680cには、回転軸X周りの周方向における中央部が切り欠かれた凹部683が開口している。
回転軸X方向から見て、凹部683は、径方向内径側に向かって開口している。凹部683は、内周面680cから外径側に向かうにつれて周方向の開口幅W68を狭める傾斜面683a、683bを有している。凹部683の傾斜面683aと傾斜面683bとが交差する頂点Pは、回転軸Xと軸線X1とを通る直径線Lr上に位置している。
【0079】
図9に示すように、オイル受部682の内周面680c及び凹部683は、回転軸X方向における一端面680aから他端面680bに向かうにつれて、径方向外側に傾斜している。
凹部683では、傾斜面683a、683bが、回転軸X方向における一端面680aから他端面680bに向かうにつれて、径方向外側に向かって傾斜している。
【0080】
図9に示すように、回転軸X方向におけるオイル受部682の他端面680bには、油溝685が形成されている。油溝685は、凹部683と支持孔68aとを接続している。油溝685は、凹部683の頂点Pから直径線Lrに沿って直線状に延びている(
図10参照)。
【0081】
図12に示すように、ケース部材6への段付きピニオンギア43の組付けは、回転軸X方向における基部61とプレート部68の間の空間に段付きピニオンギア43を配置した状態で、ピニオン軸44を支持孔61a側から挿入することで行われる(図中、矢印方向)。なお、回転軸X方向における大径歯車部431と基部61との間及び、小径歯車部432と基部680との間には、それぞれワッシャWcを介在させている。
【0082】
ピニオン軸44の一端44a側と他端44b側は、それぞれ支持孔61a、68aで支持される。支持孔61aの孔径は、ピニオン軸44の外径より僅かに大径に設定され、支持孔68aの孔径は、ピニオン軸44の外径と略整合する径に設定されている。ピニオン軸44では、他端44b側は支持孔68aに圧入されている。これにより、ピニオン軸44は、ケース部材6に対して相対回転不能に固定されている。ピニオン軸44に外挿された段付きピニオンギア43は、ピニオン軸44によって、軸線X1回りに回転可能に支持されている。
【0083】
図12の拡大領域に示すように、段付きピニオンギア43をケース部材6に組み付けると、基部680の他端面680bは、小径歯車部432の側壁部432aと回転軸X方向でワッシャWcを挟んで対向する。
【0084】
基部680のうち、オイル受部682の油溝685が形成された領域では、回転軸X方向における油溝685と、小径歯車部432の側壁部432aとの間には、ワッシャWcを挟んで隙間CL2が形成される。そして、ピニオン軸44の油孔444は、隙間CL2に開口している。
【0085】
図12の拡大領域に示すように、ケース部材6には、回転軸X方向におけるプレート部68側からケース部材7(図中、仮想線参照)が取り付けられる。
【0086】
図13から
図20は、ケース部材7を説明する図である。
図13は、ケース部材7をケース部材6と反対側から見た斜視図である。
図14は、ケース部材7をケース部材6と反対側から見た平面図である。
図15は、ケース部材7をケース部材6側から見た斜視図である。
図16は、ケース部材7をケース部材6側から見た平面図である。
図16では、ガイド部78の位置を分かり易くするために、クロスハッチングを付してある。
図17は、
図16におけるA-A断面の模式図である。
図17は、ピニオンメートギア52の配置を仮想線で示している。
図17では、分かり易くするために、油孔710とガイド部78との境界を破線で示している。
図18は、
図17におけるA-A矢視図である。
図18では、ガイド部78の位置を分かり易くするために、クロスハッチングを付してある。
図19は、
図16におけるA-A断面の模式図である。
図19は、紙面奥側の連結部74の図示を省略しつつ、段付きピニオンギア43、プレート部68、サイドギア54B及びドライブシャフト9Bの配置を仮想線で示している。
図20は、
図19におけるA-A断面の模式図である。
【0087】
図13及び
図14に示すように、ケース部材7は、回転軸X方向から見てリング状の基部71(プレート)を有している。
基部71は、回転軸X方向に厚みW71(
図19参照)を有する板状部材である。基部71の中央部には、基部71を厚み方向に貫通する貫通孔70が設けられている。基部71の外周面71cの直径(2R4、
図14参照)は、前記したプレート部68の外周壁681の内周面681aに沿う仮想円Im1(
図8参照)の直径D1よりも僅かに小径である(2R4<D1)。
【0088】
図17に示すように、回転軸X方向における基部71の一端面71aと他端面71bは、回転軸Xに直交する平坦面である。基部71における一端面71aには、貫通孔70を囲む筒壁部72と、筒壁部72を囲むガイド部73(第2ガイド部)が設けられている。
図14に示すように、ガイド部73は、回転軸X方向から視て環状である。
【0089】
図13及び
図14に示すように、基部71におけるガイド部73の内径側には、3つのリブ711が設けられている。3つのリブ711は、回転軸X周りの周方向に間隔を空けて設けられている。これらリブ711は、基部71の一端面71aに形成されている。リブ711は、回転軸Xの径方向に直線状に延びている。リブ711は、外径側のガイド部73と内径側の筒壁部72とに跨がって設けられている。
【0090】
図14に示すように、回転軸X周りの周方向に並ぶ3つのリブ711の間には、基部71を厚み方向に貫通する油孔710(開口部)がそれぞれ設けられている。油孔710は、回転軸X方向におけるデフケース50の外側と内側に開口している。
【0091】
また、基部71におけるガイド部73の外径側には、3つのリブ713が設けられている。3つのリブ713は、回転軸X周りの周方向に間隔を空けて設けられている。これらリブ713は、基部71の一端面71aに形成されている。リブ713は、ガイド部73から基部71の外周面71cに向かって、回転軸Xの径方向に直線状に延びている。
【0092】
基部71には、隣り合うリブ713の間に、紙面奥側に窪んだボルト収容部76、76が設けられている。これらボルト収容部76、76は、半径線Lを間に挟んで対称となる位置関係で設けられている。ボルト収容部76は、基部71の外周面71cに開口している。
ボルト収容部76の内側には、ボルトの挿通孔77が開口している。挿通孔77は、基部71を厚み方向(回転軸X方向)に貫通している。
【0093】
基部71において、3つのリブ713は、回転軸Xの径方向における油孔710の外径側に形成されている。
【0094】
図14に示すように、ケース部材7において油孔710は、回転軸X周りの周方向に間隔を空けて設けられている。
【0095】
図14の拡大領域に示すように、油孔710は、回転軸X方向から見て略矩形形状を成している。油孔710は、回転軸X周りの周方向に沿う長辺部710a、710bと、これら長辺部710a、710bの端部同士をつなぐ短辺部710c、710dと、から構成される。油孔710では、長辺部710aが長辺部710bよりも外径側に位置する。
【0096】
図15及び
図16に示すように、基部71におけるケース部材6側の他端面71bには、3つの油孔710をそれぞれ囲むガイド部78(第1ガイド部)が3つ設けられている。これら3つのガイド部78は、回転軸X周りの周方向に間隔を空けて設けられている。
【0097】
ガイド部78は、油孔710を囲むと共に、内径側に向かって開口する連続壁である。具体的には、
図15の拡大領域に示すように、ガイド部78は、油孔710の長辺部710aに沿う長壁部781と、油孔710の短辺部710c、710dに沿う短壁部783、784と、から構成されている。長壁部781と、短壁部783、784とは、一体に形成されている。
【0098】
図16に示すように、長壁部781では、外周面781bが、直径D4の仮想円Im3にそれぞれ重なるように形成されている。仮想円Im3の直径D4は、前記したケース部材6のプレート部68における基部680の内周面680cに沿う仮想円Im2(
図8参照)の直径D2よりも小径である(D4<D2)。
【0099】
図18に示すように、回転軸X方向から見て、ガイド部78の長壁部781は、回転軸X周りの周方向に沿う弧状壁である。短壁部783、784は、回転軸X周りの周方向における長壁部781の両端からそれぞれ径方向内側に延びている。短壁部783、784は、回転軸Xと、回転軸X周りの周方向における長壁部781の内周面781aの中間点Cを通る直線Lm1に平行な直線Lm2、Lm3に沿って直線状に延びている。
【0100】
ここで、
図15の拡大領域では、油孔710とガイド部78との境界を破線で示している。
図15の拡大領域に示すように、長壁部781の内周面781aと、短壁部783、784の内周面783a、784a(図中、破線より紙面手前側)は、それぞれ油孔710の長辺部710aと、短辺部710d、710c(図中、破線より紙面奥側)と段差なく接続されている。
【0101】
図17に示すように、ガイド部73、78は、回転軸X方向で基部71から互いに離れる向きに延びている。回転軸Xの径方向から見て、ガイド部73の内周面731は、回転軸Xと平行な平坦面である。油孔710の長辺部710aは、回転軸X方向における基部71の一端面71a側でガイド部73の内周面731に接続している。油孔710の長辺部710aは、回転軸X方向でガイド部73の内周面731から離れるにつれて外径側に傾斜した傾斜面となっている。油孔710の長辺部710aは、回転軸X方向における基部71の他端面71b側で、ガイド部78の長壁部781の内周面781aに接続している。
ガイド部78の長壁部781の内周面781aもまた、回転軸X方向でガイド部73の内周面731から離れるにつれて外径側に傾斜した傾斜面となっている。長壁部781の内周面781aの傾斜角度は、油孔710の長辺部710aの傾斜角度と同じである。
【0102】
図15および
図16に示すように、基部71におけるケース部材6側の他端面71bには、ケース部材6側に突出する3つの連結部74(凸部)が設けられている。
連結部74は、回転軸X周りの周方向に、等間隔で設けられている。
図15に示すように、連結部74は、ケース部材6側に突出した先端面743を有する。連結部74は、また、先端面743の回転軸X周りの周方向における両端部と、基部71とを接続する側壁部744を有する。
【0103】
図5および後記する
図21に示すように、連結部74は、ケース部材6側の連結部64の凹部640の周方向幅W1(
図5参照)よりも小さい周方向の幅W2で形成されている。なお、凹部640の周方向幅W1は、底面部643の回転軸X周りにおける周方向の一端に接続する側壁部644から他端に接続する側壁部644までの長さを意味する。連結部74の周方向幅W2は、先端面743の回転軸X周りにおける周方向の一端に接続する側壁部744から他端に接続する側壁部744までの長さを意味する。
【0104】
図16に示すように、連結部74の先端面743は、回転軸X方向から見て、回転軸X周りの周方向に沿って延びる円弧状の面である。
図15に示すように、側壁部744は、先端面743から基部71に向かって回転軸X方向に沿って延びる。先端面743には、ボルトの挿通孔77が開口している。ボルトの挿通孔77は、一端が前記したボルト収容部76(
図13参照)に開口し、基部71を厚み方向(回転軸X方向)に貫通して、他端が先端面743に開口している。
図16に示すように、先端面743には、ピニオンメートシャフト51を支持するための支持溝75(第1切欠部)が設けられている。支持溝75は、回転軸X周りの周方向における、ボルトの挿通孔77の間に形成されている。
【0105】
図17に示すように、回転軸X方向から見て支持溝75は、基部71の半径線Lに沿って直線状に形成されている。支持溝75は、連結部74を内径側から外径側に横断して形成されている。
【0106】
支持溝75は、先端面743をシャフト部材511の外径に沿う半円形に切り欠いた形状である。
図17に示すように、支持溝75は、円柱状のシャフト部材511の半分を収容可能な深さで形成されている。すなわち、支持溝75は、シャフト部材511の直径Daの半分(=Da/2)に相当する深さで形成されている。
【0107】
図13に示すように、連結部74の外周面74aは、基部71の外周面71cよりも、回転軸Xの径方向外側に突出している。連結部74の外周面74aと基部71の外周面71cとは、段差部79により接続されている。すなわち、段差部79は、連結部74と基部71の境界の外周面に設けられている。
図14に示すように、段差部79の連結部74側の外周面、すなわち外周面74aの径R3は、基部71側の外周面、すなわち外周面71cの径R4よりも長い。ここで、径R3、R4は、それぞれ回転軸Xからの半径を意味する。
【0108】
図15および
図16に示すように、連結部74の内径側(回転軸X側)には、ピニオンメートギア52の外周に沿う円弧部741が設けられている。
円弧部741では、ピニオンメートギア52の外周が、球面状ワッシャ53を介して支持される(
図17参照)。
円弧部741では、前記した半径線Lに沿う向きで油溝742が設けられている。油溝742は、シャフト部材511の支持溝75から、連結部74の内周に位置する基部71までの範囲に設けられている。
【0109】
油溝742は、基部71の他端面71bに設けた油溝712に連絡している。
図16に示すように、回転軸X方向から見て油溝712は、半径線Lに沿って設けられており、基部71に設けた貫通孔70まで形成されている。
図19の下方の拡大領域に示すように、基部71の他端面71bには、サイドギア54Bの裏面を支持するリング状のワッシャ55が載置される。サイドギア54Bの裏面には、円筒状の筒壁部540が設けられている。ワッシャ55は筒壁部540に外挿されている。
【0110】
図19に示すように、貫通孔70を囲む筒壁部72の内周には、油溝712と交差する位置に油溝721が形成されている。筒壁部72の内周では、油溝721が、回転軸Xに沿う向きで、筒壁部72の回転軸X方向の全長に亘って設けられている。
【0111】
図21は、ケース部材6とケース部材7の組み付けを説明する図である。
図22は、ケース部材6とケース部材7の組み付けを説明する図である。
図21は、ケース部材6とケース部材7の組み付け前の状態を示し、
図22は、ケース部材6とケース部材7の組み付け後の状態を示している。
図21、
図22は、
図4におけるA-A方向から見たデフケース50を示している。また、見やすくするために、連結部64、74にハッチングを付している。また、ピニオンメートシャフト51のシャフト部材511を破線で示している。
【0112】
図21に示すように、デフケース50は、ケース部材6とケース部材7を、回転軸X方向に組み付けて構成される。すなわち、回転軸X方向は、デフケース50の組み付け方向に沿うものである。
図22に示すように、ケース部材7の連結部74(凸部)が、ケース部材6の連結部64の凹部640に挿入される。
ここで、ケース部材7の側壁部744の回転軸X方向の長さL2は、ケース部材6の側壁部644の回転軸X方向の長さL1に整合する長さを有する。そのため、凹部640に挿入された連結部74の先端面743は、底面部643に当接する。これによって、ケース部材7とケース部材6の回転軸X方向の位置決めがなされる。
【0113】
ケース部材7の基部71の外周面71cを、ケース部材6のプレート部68における外周壁681の内周面681aに嵌入することで、ケース部材7とケース部材6とが回転軸X上で同心に配置される。
【0114】
前記したように、ケース部材6とケース部材7は、ケース部材7側の連結部74を貫通したボルトB(
図5参照)が、ケース部材6側のボルト穴67、67に螺入されて、互いに接合される
【0115】
図22に示すように、底面部643の支持溝65と、先端面743の支持溝75は、回転軸X方向にオーバーラップする位置に形成されている。底面部643と先端面743が当接すると、半円形の支持溝65、75は対向し、底面部643および先端面743を挟んで、線対称となる。支持溝65、75の開口部が連通し、全体としてシャフト部材511の外径に沿った円形の孔を形成する。シャフト部材511は、この円形の孔に挿通して保持される。
【0116】
図21に示すように、凹部640の回転軸X周りの周方向幅W1は、連結部74の周方向幅W2よりも大きい(W1>W2)。そのため、
図22に示すように、凹部640の側壁部644は、連結部74の側壁部744と隙間を介して対向する。この隙間が、デフケース50の内部と外部を連通する油路56となる。油路56は、回転軸X周りの周方向における両端に形成される。各油路56の回転軸X周りの周方向における長さは、(W1-W2)/2となる。
【0117】
油路56は、デフケース50の回転軸X周りの周方向において、凹部640と連結部74の間に位置する。
図6において、油路56の位置をケース部材6にハッチングで示している。油路56は、連結部64の内径側端部から回転軸Xの径方向外側に延びて、デフケース50の外周面に開口する。油路56は、連結部64の内径側に収容されるピニオンメートギア52およびサイドギア54Bが撹拌したオイルOLを、デフケース50の外部に排出する。
【0118】
図22に示すように、油路56は、回転軸X方向に沿って延びる長手形状を有する。油路56の回転軸X方向の一端には、底面部643と側壁部644の境界に形成された溝部645が位置する。油路56の回転軸X方向の他端には、ケース部材7の基部71が位置する。
【0119】
図19の拡大領域に示すように、ケース部材7の基部71では、外周面71cが、ケース部材6のプレート部68における外周壁681の内周面681aに内嵌される。
ケース部材7のガイド部78は、ケース部材6のオイル受部682の内径側に配置される。この状態において、ガイド部78の先端面78aは、回転軸X方向におけるオイル受部682の一端面680aと他端面680bの間に配置される。ケース部材7のガイド部78、ケース部材6のオイル受部682及びピニオン軸44は、回転軸Xの径方向にオーバーラップしている。
【0120】
図20に示すように、回転軸Xの径方向から見て、ケース部材7の油孔710及びガイド部78、並びにケース部材6の凹部683及び油溝685、並びにピニオン軸44の油孔444及び軸内油路440Bが、回転軸Xと軸線X1を通る直径線Lrに沿って、順番に配置された状態となる。凹部683の頂点Pは、直径線Lr上に配置されている。
【0121】
図19に示すように、デフケース50では、ケース部材7の筒壁部72に、ベアリングB2が外挿されている。ベアリングB2は、筒壁部72の外周に設けた段部722に、インナレースを回転軸X方向から当接させている。筒壁部72に外挿されたベアリングB2は、第4ボックス14の支持部145で保持されている。デフケース50の筒壁部72は、ベアリングB2を介して、第4ボックス14(
図4参照)で回転可能に支持されている。
【0122】
図4に示すように、支持部145には、第4ボックス14の開口部145aを貫通したドライブシャフト9Bが、回転軸X方向から挿入されている。ドライブシャフト9Bは、支持部145で回転可能に支持されている。筒壁部72は、ドライブシャフト9Bの外周を支持する軸支持部として機能する。
開口部145aの内周には、リップシールRSが固定されている。リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフト9Bに外挿されたサイドギア54Bの筒壁部540の外周に弾発的に接触している。
これにより、サイドギア54Bの筒壁部540の外周と開口部145aの内周との隙間が封止されている。
【0123】
デフケース50のケース部材6は、筒壁部611に外挿されたベアリングB3を介して、プレート部材8で支持されている(
図2参照)。
【0124】
ケース部材6の内部には、第3ボックス13の挿通孔130aを貫通したドライブシャフト9Aが、回転軸X方向から挿入されている。
ドライブシャフト9Aは、モータ2のモータシャフト20と、遊星減速ギア4のサンギア41の内径側を回転軸X方向に横切って設けられている。
【0125】
図4に示すように、デフケース50の内部では、ドライブシャフト9(9A、9B)の先端部の外周に、サイドギア54A、54Bがスプライン嵌合している。サイドギア54A、54Bとドライブシャフト9(9A、9B)とが、回転軸X周りに一体回転可能に連結されている。
【0126】
この状態においてサイドギア54A、54Bは、回転軸X方向で間隔をあけて、対向配置されている。サイドギア54A、54Bの間に、ピニオンメートシャフト51の中心部材510が位置している。
本実施形態では、合計3つのシャフト部材511が、中心部材510から径方向外側に延びている。ピニオンメートシャフト51のシャフト部材511の各々に、ピニオンメートギア52が支持されている。ピニオンメートギア52は、回転軸X方向の一方側に位置するサイドギア54Aおよび他方側に位置するサイドギア54Bに、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
【0127】
図2に示すように、第4ボックス14の内部には、潤滑用のオイルOLが貯留されている。デフケース50の下部側は、貯留されたオイルOL内に位置している。
本実施形態では、連結梁62が最も下部側に位置した際に、連結梁62がオイルOL内に位置する高さまで、オイルOLが貯留されている。
貯留されたオイルOLは、モータ2の出力回転の伝達時に、回転軸X回りに回転するデフケース50により掻き上げられる。
【0128】
図2に示すように、第4ボックス14の上部に、オイルキャッチ部15が設けられている。回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの一部は、オイルキャッチ部15内に流入する。
オイルキャッチ部15は、第4ボックス14内を内径側に延びる油路151aと連絡している。
図2に示すように、油路151aの内径側の端部は、リップシールRSとベアリングB2との間に開口している。
【0129】
オイルキャッチ部15は、また、不図示の配管を介して、第3ボックス13の円筒状の接続壁136に設けた油孔136a(
図2参照)に連通している。
【0130】
回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられて、オイルキャッチ部15に到達したオイルOLの一部が、ガイド部154と配管127を通って、接続壁136の内部空間Scに供給される。
【0131】
第3ボックス13には、内部空間Scに連通する径方向油路137が設けられている。
径方向油路137は、内部空間Scから径方向下側に延びる。径方向油路137は、接合部132内に設けた軸方向油路138に連通する。
【0132】
軸方向油路138は、第1ボックス11の接合部112に設けた連通孔112aを介して、第2ボックス12の下部に設けたオイル溜り部128に連絡している。
オイル溜り部128は、周壁部121内を回転軸X方向に貫通している。オイル溜り部128は、第4ボックス14に設けた第2ギア室Sb2に連絡している。
【0133】
かかる構成の動力伝達装置1の作用を説明する。
図1に示すように、動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフト9(9A、9B)と、が設けられている。
【0134】
図2に示すように、モータ2の駆動により、ロータコア21が回転軸X回りに回転すると、ロータコア21と一体に回転するモータシャフト20を介して、遊星減速ギア4のサンギア41に回転が入力される。
【0135】
図3に示すように、遊星減速ギア4では、サンギア41が、モータ2の出力回転の入力部となっている。段付きピニオンギア43を支持するデフケース50が、入力された回転の出力部となっている。
【0136】
サンギア41が入力された回転で回転軸X回りに回転すると、段付きピニオンギア43(大径歯車部431、小径歯車部432)が、サンギア41側から入力される回転で、軸線X1回りに回転する。
ここで、段付きピニオンギア43の小径歯車部432は、第4ボックス14の内周に固定されたリングギア42に噛合している。そのため、段付きピニオンギア43は、軸線X1回りに自転しながら、回転軸X周りに公転する。ドライブシャフト9Bは、段付きピニオンギア43の公転軌道の内周に位置している。
【0137】
ここで、段付きピニオンギア43の、小径歯車部432の外径R2は、大径歯車部431の外径R1よりも小さくなっている(
図3参照)。
これにより、段付きピニオンギア43を支持するデフケース50(ケース部材6、ケース部材7)が、モータ2側から入力された回転よりも低い回転速度で回転軸X回りに回転する。
そのため、遊星減速ギア4のサンギア41に入力された回転は、段付きピニオンギア43により、大きく減速される。減速された回転は、デフケース50(差動機構5)に出力される。
【0138】
そして、デフケース50が、入力された回転で回転軸X回りに回転することにより、デフケース50内で、ピニオンメートギア52と噛合するドライブシャフト9(9A、9B)が回転軸X回りに回転する。これにより動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪W、W(
図1参照)が、伝達された回転駆動力で回転する。
【0139】
図2に示すように、第4ボックス14の内部には、潤滑用のオイルOLが貯留されている。そのため、貯留されたオイルOLは、モータ2の出力回転の伝達時に、回転軸X回りに回転するデフケース50により掻き上げられる。
掻き上げられたオイルOLにより、サンギア41と大径歯車部431との噛合部と、小径歯車部432とリングギア42との噛合部と、ピニオンメートギア52とサイドギア54A、54Bとの噛合部とが潤滑される。デフケース50で掻き上げられたオイルOLの多くが、オイルキャッチ部15内に流入する。
【0140】
オイルキャッチ部15に流入したオイルOLの一部は、支持台部151の上面に一端が開口した油路151aに流入する。
【0141】
油路151aの内径側の端部は、支持部145の内周に開口している(
図2参照)。そのため、油路151aに流入したオイルOLは、第4ボックス14の支持部145の内周と、サイドギア54Bの筒壁部540との間の隙間Rxに排出される。
【0142】
隙間Rxに排出されたオイルOLの一部は、支持部145で支持されたベアリングB2を潤滑する。ベアリングB2を潤滑したオイルOLは、デフケース50の外側(ベアリングB2側)を、デフケース50の回転による遠心力で外径側に移動する。
デフケース50の外径側には、回転軸X方向から見て環状を成すガイド部73が設けられている。そのため、外径側に移動したオイルOLは、ガイド部73の部分で捕捉される。
図14に示すように、ガイド部73の内周側にはリブ711が設けられている。ガイド部73、リブ711および筒壁部72の間には窪みが形成される。この窪みによって、ガイド部73の内周側にオイルOLが溜まりやすくなっている。
図19に示すように、ケース部材7の基部71では、ガイド部73の内周面731に沿って油孔710が設けられている。オイルOLは、ガイド部73によって更なる外径側への移動が妨げられる。移動が妨げられたオイルOLは、ガイド部73の内周に開口する油孔710を、ケース部材6側に通過する。
【0143】
オイルOLは、デフケース50の回転による遠心力でガイド部73の内周面731まで到達する。ガイド部73の内周面731に到達したオイルOLの多くが、ガイド部73を乗り越えずに、回転軸X方向に開口する油孔710に流入する。
【0144】
図19に示すように、油孔710へ供給されたオイルOLは、ガイド部78へ移動する。油孔710の長辺部710a及びガイド部78の長壁部781の内周面781aは、回転軸X方向でガイド部73の内周面731から離れるにつれて径方向外側に傾斜した傾斜面となっている。
従って、油孔710とガイド部78を通過するオイルOLは、遠心力を受けつつ、傾斜に沿って移動することで、ケース部材6側への移動が促進される。また、この傾斜によって、ガイド部73からケース部材6側に移動したオイルOLが、再度ガイド部73側に戻って、デフケース50の外部に排出されることを抑制できる。
【0145】
ここで、前記した通り、ガイド部78は、長壁部781と、短壁部783、784と、から構成された連続壁である(
図18参照)。回転軸X方向から見て、ガイド部78は、内径側に向かって開口している。これにより、油孔710から流れてきたオイルOLの他に、デフケース50内を飛散するオイルOLもキャッチできる(
図19の白抜き矢印)。
【0146】
図19及び
図20に示すように、ガイド部78を油孔710からケース部材6側へ移動したオイルOLは、先端面78a側から排出される。オイル受部682の内周面680cと凹部683は、ガイド部78の先端面78aを、回転軸X方向におけるケース部材7の基部71側からピニオンギア43側に横断している。
よって、ガイド部78の先端面78aから排出されたオイルOLは、遠心力によって径方向外側に移動したのち、オイル受部682の内周面680cと凹部683(
図20参照)でキャッチされる。
【0147】
内周面680cと凹部683は、回転軸X方向でガイド部78から離れるにつれて径方向外側に傾斜した傾斜面となっている。凹部683でキャッチされたオイルOLは、傾斜に沿ってオイル受部682の一端面680a側から他端面680b側に移動する。また、内周面680cでキャッチされたオイルOLの多くは、傾斜に沿って移動する過程で、凹部683に集まる。
【0148】
図20に示すように、回転軸X方向から見て、凹部683内のオイルOLは、遠心力によって傾斜面683a、683b上を回転軸X周りの周方向に移動して、頂点P周りに集まる。
【0149】
凹部683は、頂点Pで油溝685(隙間CL2)に連絡している。凹部683内のオイルOLは、遠心力によって頂点Pに集まったのち、油溝685へ排出される。油溝685内のオイルOLは、遠心力によって径方向外側に移動し、ピニオン軸44の油孔444に流入する。この際にワッシャWcも潤滑される。
【0150】
ピニオン軸44の油孔444に流入したオイルOLは、軸内油路440Bへ移動したのち、最終的に油孔443(
図4参照)から排出されて、ニードルベアリングNBを潤滑する。
【0151】
さらに、隙間Rxに排出されたオイルOLの一部は、
図19に示すように、ケース部材7の筒壁部72の内周に設けた油溝721を通る。油溝721を通ったオイルOLは、サイドギア54Bの裏面を支持するワッシャ55に供給されて、ワッシャ55を潤滑する。
さらに、オイルOLは、ケース部材7の基部71に設けた油溝712と、円弧部741に設けた油溝742を通る。油溝742を通ったオイルOLは、ピニオンメートギア52の裏面を支持する球面状ワッシャ53に供給されて、球面状ワッシャ53を潤滑する。
【0152】
また、オイルキャッチ部15に捕捉されたオイルOLの一部は、不図示の配管を通って、第3ボックス13の円筒状の接続壁136に設けた油孔136a(
図2参照)に供給される。
油孔136aから内部空間Scに排出されたオイルOLは、内部空間Scに貯留される。オイルOLは、また、第3ボックス13の周壁部131で支持されたベアリングB4を潤滑する。
【0153】
内部空間Scに排出されたオイルOLの一部は、ドライブシャフト9Aの外周とモータシャフト20の内周との隙間を通って、モータシャフト20の他端20b側まで移動する。
図11に示すように、モータシャフト20の他端20bは、サイドギア54Aの筒壁部541の内側に挿入されている。筒壁部541の内周には、サイドギア54Aの裏面に連通する連絡路542が設けられている。
そのため、モータシャフト20の他端20b側まで移動して、筒壁部541の内側に排出されたオイルOLの一部は、連絡路542を通る。連絡路542を通ったオイルOLは、サイドギア54Aの裏面のワッシャ55に供給されて、ワッシャ55を潤滑する。
【0154】
さらに、
図11に示すように、サイドギア54Aの裏面のワッシャ55を潤滑したオイルOLは、ケース部材6のギア支持部66に設けた油溝662と、円弧部641に設けた油溝642を通る。油溝642を通ったオイルOLは、ピニオンメートギア52の裏面を支持する球面状ワッシャ53に供給されて、球面状ワッシャ53を潤滑する。
【0155】
また、
図2に示すように、第3ボックス13の内部空間Scは、径方向油路137と、軸方向油路138と、連通孔112aと、第2ボックス12の下部に設けたオイル溜り部128と、を介して、第4ボックス14に設けた第2ギア室Sb2に連絡している。
そのため、内部空間Sc内のオイルOLは、第4ボックス14内に貯留されたオイルOLと同じ高さ位置に保持される。
【0156】
このように、回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの多くが、オイルキャッチ部15内に流入する。オイルOLは、オイルキャッチ部15から、第4ボックス14の支持部145内に供給されてベアリングB2を潤滑する。オイルOLは、また、第3ボックス13内の内部空間Scに供給されてベアリングB4を潤滑する。
そして、これらベアリングB2、B4を潤滑したオイルOLは、最終的に第4ボックス14内に戻されて、回転するデフケース50により掻き上げられる。
【0157】
よって、動力伝達装置1では、駆動輪W、Wの回転時に第4ボックス14内のオイルOLが掻き上げられて、ベアリングや、ギア同士の噛合部の潤滑に用いられる。潤滑に用いられたオイルOLは、第4ボックス14内に戻されて、再び掻き上げられるようになっている。
【0158】
また、動力伝達装置1では、ケース部材6の凹部640にケース部材7の連結部74を挿入して当接させることで、支持溝65および支持溝75が対向して、シャフト部材511を支持する円形の孔が形成される。
【0159】
そのため、
図21に示すように、実施の形態では、シャフト部材511を凹部640の支持溝65に予め配置した状態で、ケース部材6およびケース部材7を組み付けることができる。
【0160】
また、3つのシャフト部材511を予め中心部材510に連結した状態で、ケース部材6に配置することもできる。この場合、シャフト部材511と中心部材510を一体成型したピニオンメートシャフト51も用いることができる。
【0161】
また、連結部74の回転軸X周りの周方向幅W2は、凹部640の周方向幅W1よりも小さく設定されている。そのため、連結部74を凹部640に挿入しやすくなっている。
【0162】
図22に示すように、ケース部材6およびケース部材7を組み付けると、凹部640と連結部74の間には、油路56となる隙間が形成される。この油路56によって、デフケース50の内部から外部へオイルOLの排出性が向上する。これによって連結部64および連結部74の内径側に位置するピニオンメートギア52およびサイドギア54A、54B(
図5参照)によるオイルOLの撹拌抵抗を低減することができる。
【0163】
また、
図8に示すように、ケース部材6の、底面部643と側壁部644の境界には、溝部645が形成されている。この溝部645は、回転軸Xの内径側から外径側に油路56に沿って延びる。ピニオンメートギア52およびサイドギア54A、54Bに撹拌されたオイルOLが溝部645に入り込み、溝部645に沿って外径側に流れる。これによって、デフケース50の内部から外部へオイルOLの排出性が向上される。
【0164】
以上の通り、本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(1)動力伝達装置1は、
デフケース50(ケース)と、
デフケース50内で、当該デフケース50の回転軸Xに沿う向きで配置されたピニオン
軸44(シャフト)と、を有する。
デフケース50には、回転軸X方向に貫通する油孔710(開口部)が設けられている
。
デフケース50は、油孔710から、デフケース50の内側に突出するガイド部78(第1ガイド部)を有する。
デフケース50には、回転軸Xの径方向においてガイド部78よりも外側に、ピニオン
軸44と連絡する隙間CL2(オイル経路)が形成されている。
【0165】
このように構成すると、動力伝達装置1における潤滑効率を向上させることができる。
具体的には、デフケース50の回転による遠心力によって、油孔710に流入したオイルOLは、ガイド部78から隙間CL2を通って、ピニオン軸44に供給される。
油孔710とピニオン軸44との間に、ガイド部78と隙間CL2とを介在させることで、ピニオン軸44へ誘導するオイルOLの量を増やすことができる。これにより、潤滑効率が向上する。
【0166】
本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(2)油孔710の長辺部710a(内周壁)は、隙間CL2に近づくにつれて外径側に広がる向きに傾斜している。
【0167】
このように構成すると、遠心力を使用して、油孔710に流入したオイルOLを隙間CL2に積極的に誘導することができる。
【0168】
本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(3)デフケース50は、油孔710から、デフケース50の外側に突出するガイド部73(第2ガイド部)を有する。
【0169】
このように構成すると、ガイド部73によってデフケース50の外側で飛散するオイルOLを取り込むことできるので、ピニオン軸44へ誘導するオイルOL量を増やすことができる。これにより、潤滑効率が向上する。
【0170】
本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(4)回転軸X方向から見て、ガイド部73は環状であり、ガイド部78は非環状である。
【0171】
デフケース50は、内部に差動機構5を収容している。そのため、デフケース50の内側では、ガイド部78を設けるスペースは、差動機構5との干渉を避けた部分に制限される。その一方で、デフケース50の外側では、ガイド部73を設けるスペースに余裕がある。
そこで、上記のように構成して、デフケース50の内側においては、ガイド部78を非環状とすることで、差動機構5のレイアウトの自由度を確保している。また、デフケース50の外側においては、ガイド部73を環状とすることで、多くのオイルOLを取り込めるようにしている。
【0172】
本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(5)回転軸X方向から見て、ガイド部78は、開口を内径側に向けた連続壁である。具体的には、ガイド部78は、回転軸X周りの周方向に沿う向きに設けられた長壁部781と、当該長壁部781の両端部から径方向内径側に延びる短壁部783、784と、から構成されている。
【0173】
このように構成すると、ガイド部78は、油孔710を通るオイルOLの他に、デフケース50内で飛散するオイルOLを取り込むことができる。
【0174】
本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(6)デフケース50は、ガイド部78を有するケース部材7(第1ケース部材)と、隙間CL2を有するケース部材6(第2ケース部材)と、から構成されている。
ケース部材6は、回転軸X方向でケース部材7に接合された状態で、ガイド部78の外径側に配置されるオイル受部682を有する。
オイル受部682の内周面680cは、回転軸X方向でガイド部78の先端面78aを、ケース部材7側から段付きピニオン軸44側に横断している。
【0175】
このように構成すると、ケース部材7のガイド部78から排出されたオイルOLは、ケース部材6のオイル受部682の内周面680cで受けることができる。これにより、ケース部材7のガイド部78を通ったオイルOLを、飛散させることなく、キャッチすることができる。
【0176】
本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(7)オイル受部682の内周面680cには、回転軸X方向から見て、径方向内側に開口する凹部683(切欠部)が形成されている、
【0177】
このように構成すると、ガイド部78からオイル受部682の内周面680cでキャッチしたオイルOLを、凹部683に集めることができる。
【0178】
本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(8)オイル受部682の内周面680cは、隙間CL2の内径側に位置している。
オイル受部682の内周面680c及び凹部683は、ガイド部78から隙間CL2に近づくにつれて、外径側に広がる向きに傾斜している。
【0179】
このように構成すると、遠心力を使用して、内周面680cや凹部683でキャッチしたオイルOLを、隙間CL2に積極的に誘導することができる。
【0180】
本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(9)隙間CL2は、オイル受部682の他端面680b(側壁)と、ピニオン軸44に支持された小径歯車部432(ピニオンギア)の側壁部432a(側壁)との間のクリアランスとして構成される。
具体的には、隙間CL2は、オイル受部682の他端面680bにおいて凹部683と支持孔68aとを連通する油溝685と、小径歯車部432の側壁部432aとの間のクリアランスである。
【0181】
例えば、オイル受部682でキャッチしたオイルOLを、ピニオン軸44側に誘導するためには、オイル受部682を径方向に貫通する油孔を形成することが考えられる。油孔を形成する場合、油孔は、ケース部材6の鋳造後に形成する。
一方、本実施形態では、オイル受部682の他端面680bに、凹部683と支持孔68aとを連通する油溝685を設けて、当該油溝685と小径歯車部432の側壁部432aとの間にクリアランスを形成した構成としている。
このように構成すると、油溝685を、ケース部材6の鋳造時に形成することができる。これにより、油孔を形成する場合よりも、工程数を削減できる。
【0182】
なお、本実施形態では、油溝685を設けることで、隙間CL2が形成される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、オイル受部682の他端面680bを、回転軸X周りの周方向全面に亘って、小径歯車部432の側壁部432aから離れる向きにオフセットさせることで隙間CL2を形成してもよい。
【0183】
[変形例1]
本実施形態にかかる動力伝達装置1では、オイル受部682で受けたオイルOLを、隙間CL2からピニオン軸44側に誘導する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、以下の変形例のようにしてもよい。
【0184】
図23は、変形例1にかかる動力伝達装置1Aを説明する図である。
変形例1にかかる動力伝達装置1Aでは、本実施形態にかかる動力伝達装置1と異なる部分のみを説明する。
【0185】
図23に示すように、変形例1にかかる動力伝達装置1Aでは、プレート部68Aのオイル受部682Aに、内周面680cから径方向内径側に突出する壁部688が設けられている。壁部688は、回転軸X方向におけるオイル受部682Aの他端面680b側に設けられている。
壁部688は、回転軸X周りの周方向における内周面680cの全長に亘って設けられている。壁部688は、回転軸X方向に間隔を空けてガイド部78と対向している。壁部688は、ガイド部78の対向側壁部を構成する。
【0186】
また、オイル受部682Aには、凹部683と支持孔68aとを連通する連通孔689が形成されている。連通孔689は、オイル経路として機能する。連通孔689は、凹部683における回転軸X方向の壁部688とガイド部78との間の領域に開口している。また、連通孔689は、支持孔68aに開口すると共に、ピニオン軸44Aの油孔444Aに連絡している。
【0187】
動力伝達装置1Aでは、ガイド部78から排出されたオイルOLは、オイル受部682Aの内周面680cの凹部683でキャッチされる。凹部683でキャッチされたオイルOLは、凹部683上を傾斜に沿って回転軸X方向に移動する(
図23における矢印方向)。
【0188】
凹部683上を移動するオイルOLの流れは、最終的に壁部688によって堰き止められる。これにより、オイル受部682Aでは、凹部683と壁部688とで囲まれた空間にオイルOLが貯留される。貯留されたオイルOLは、遠心力によって、連通孔689からピニオン軸44Aの油孔444Aに排出される。これにより、ピニオン軸44AにオイルOLを誘導することができる。
【0189】
変形例にかかる動力伝達装置1Aは、以下の構成を有している。
(10)オイル受部682Aは、回転軸X方向でガイド部78と対向すると共に、径方向内径側に突出する壁部688(対向側壁部)を有する。
オイル受部682Aは、ガイド部78と壁部688との間で、ピニオン軸44Aに連絡する、連通孔689(オイル経路)を有する。
【0190】
このように構成すると、内周面680cの凹部683でキャッチされたオイルOLは、壁部688によって堰き止められて、連通孔689からピニオン軸44A側へ排出される。これにより、ピニオン軸44側に誘導するオイルOLの量を増やすことができる。
【0191】
[変形例2~4]
図24は、変形例2にかかるガイド部78Aを説明する図である。
図25は、変形例3にかかるガイド部78Bを説明する図である。
図26は、変形例4にかかるガイド部78Cを説明する図である。
【0192】
本実施形態では、ガイド部78の長壁部781が仮想円Im3(
図16参照)に沿う向きで設けられ、短壁部783、784が、径方向に平行な直線Lm2、Lm3(
図18参照)に沿う向きで設けられている場合を例示したが、これに限定されない。
【0193】
例えば、
図24に示す変形例2のように、ガイド部78Aは、径方向内側に向かうにつれて互いに離れる向きに傾斜した短壁部783A、784Aを有するように構成してもよい。
【0194】
また、
図25に示す変形例3のように、ガイド部78Bは、径方向内側に向かうにつれて互いに近づく向きに傾斜した短壁部783B、784Bを有するように構成してもよい。
【0195】
また、
図26に示す変形例4のように、ガイド部78Cは、回転軸X周りの周方向における全長に亘って油孔710を覆う弧状の壁部780を有するように構成してもよい。壁部780は、回転軸X周りの周方向における中央部に向かうにつれて、径方向外側に向かって窪んでおり、開口を径方向内側に向けている。
【0196】
また、本実施形態では、プレート部68に設けられた凹部683が、傾斜面683a、683bから構成されている場合を例示したがこれに限定されない。
図示は省略するが、例えば、回転軸X方向から見て、凹部683は内周面680cの曲率よりも大きな曲率で外径側に窪んでいればよい。このようにすることによっても、凹部683の頂点にオイルOLを集めることができる。
【0197】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0198】
1、1A 動力伝達装置
6 ケース部材(第2ケース部材)
7 ケース部材(第1ケース部材)
43 段付きピニオンギア(ピニオンギア)
44 ピニオン軸(シャフト)
50 デフケース(ケース)
68、68A プレート部
73 ガイド部(第2ガイド部)
78、78A~78C ガイド部(第1ガイド部)
432 小径歯車部
432a 側壁部
680c 内周面(傾斜面)
682、682A オイル受部
683 凹部(切欠部)
685 油溝
688 壁部(対向側壁部)
689 連通孔
710 油孔(開口部)
710a 長辺部(内周壁)
CL2 隙間(オイル経路)
OL オイル(潤滑油)
X 回転軸