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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145306
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】コイルユニット
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220926BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20220926BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20220926BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20220926BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20220926BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20220926BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20220926BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20220926BHJP
【FI】
H02J7/00 301D
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301B
H01F38/14
H05K5/03 H
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L50/60
B60L53/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046660
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 豊英
【テーマコード(参考)】
4E360
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
4E360AB02
4E360AB12
4E360BA02
4E360BB22
4E360BD03
4E360BD05
4E360CA02
4E360EA03
4E360EA18
4E360EA24
4E360ED02
4E360ED04
4E360ED28
4E360GA11
4E360GB92
4E360GC02
4E360GC08
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA03
5G503FA06
5G503GB08
5H105AA17
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC07
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC25
5H125DD02
5H125FF15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】強度を確保すると共に、ケース本体とカバー部材の板厚を薄くすることができるコイルユニットを提供する。
【解決手段】コイルユニットは、渦巻き状に形成されたコイルと、コイルが接続される配線基板と、を収容する収容空間を有するケース本体4と、収容空間を塞ぐ第1カバー部材5と、を備える。ケース本体は、第1カバー部材側に突出した筒状の中央ボス部47(第1支持部材)を有する。第1カバー部材は、ケース本体側に突出した筒状の第2支持部57を有し、第1カバー部材がケース本体に取り付けられた状態において、第1支持部及び第2支持部が入れ子状に配置され、第1支持部が第1カバー部材に当接して第1カバー部材を支持するとともに、第2支持部がケース本体に当接してケース本体を支持する。
【選択図】図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に配置された送電側のコイルユニットと電気自動車に配置された受電側のコイルユニットとの間で電力を伝送し、前記電気自動車に搭載されたバッテリを充電する非接触充電システムにおける地上又は電気自動車に配置されるコイルユニットであって、
渦巻き状に形成されたコイルと、
前記コイルが接続される配線基板と、
前記コイル及び前記配線基板を収容する収容空間を有するケース本体と、
前記ケース本体に取り付けられて前記収容空間を塞ぐカバー部材と、を備え、
前記ケース本体は、前記カバー部材側に突出した筒状の第1支持部を有し、
前記カバー部材は、前記ケース本体側に突出した筒状の第2支持部を有し、
前記カバー部材が前記ケース本体に取り付けられた状態において、前記第1支持部及び前記第2支持部が入れ子状に配置され、前記第1支持部が前記カバー部材に当接して前記カバー部材を支持するとともに、前記第2支持部が前記ケース本体に当接して前記ケース本体を支持するコイルユニット。
【請求項2】
前記第1支持部及び前記第2支持部は、前記ケース本体の前記収容空間に収容された前記コイルの中央空間内に配置される請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項3】
前記カバー部材が前記ケース本体に取り付けられた状態において、前記第1支持部が前記第2支持部の内側に入った入れ子状に配置される請求項1又は2に記載のコイルユニット。
【請求項4】
前記第2支持部は、内側壁及び外側壁を有する二重筒形状であり、前記内側壁と前記外側壁の間に複数のリブを有している請求項3に記載のコイルユニット。
【請求項5】
前記カバー部材は、前記第2支持部の中央部に形成されたネジ孔を有し、前記ネジ孔に挿入されたネジにより前記ケース本体に固定され、
前記カバー部材は、前記第2支持部の内側において前記ネジ孔を囲むように形成された環状の凸部を有し、
前記ケース本体は、前記第1支持部の前記カバー部材と対向する面に形成された環状の凹部を有し、
前記カバー部材は、シール材が充填された前記凹部に前記凸部を挿入し、前記カバー部材と前記第1支持部との間にシール材を介在させた状態で、前記ケース本体に取り付けられる請求項3又は4に記載のコイルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に搭載されたバッテリを充電する非接触充電システムにおける地上又は電気自動車に配置されるコイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の車載バッテリに電力を充電する充電方法として、非接触充電システムが注目を集めている。非接触充電システムでは、地上に配置された送電側のコイルユニットと電気自動車に配置された受電側のコイルユニットとの間で電力を伝送し、電気自動車に搭載されたバッテリを充電する。
【0003】
非接触充電システムに用いるコイルユニットでは、地上に配置する場合は車両の乗り上げ等を考慮して強度を確保する必要があり、車両に配置する場合は車両底面と障害物との衝突や飛び石等を考慮して強度を確保する必要がある。一方で、コイルの磁界を妨げないようにするため、コイルと対向して配置されるカバー部材には、金属など強度確保が容易な材料を用いることができない。
【0004】
特許文献1には、上記非接触充電システムに用いるコイルユニット(給電コイルユニット)が開示されている。このコイルユニットでは、箱状のケースを備え、ケース内の空間に制御ユニットと制御ユニットに接続されたコイルとが並んで配置されている。ケースの開口は、相手側のコイルユニットと対向する側に開口しており、ケース内のコイルを覆うようにしてケースの開口が樹脂製のカバー部材で塞がれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-233107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された技術では、コイルを覆うカバー部材が樹脂製のカバー部材とされているため、必要な強度を確保するためにケースやカバー部材の板厚を増加させることが考えられる。しかし、ケースやカバー部材の板厚を増加させると、ケースが大型化するため、小型化の需要に応じることができないという課題がある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、強度を確保すると共に、ケース本体とカバー部材の板厚を薄くすることができるコイルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係るコイルユニットは、地上に配置された送電側のコイルユニットと電気自動車に配置された受電側のコイルユニットとの間で電力を伝送し、前記電気自動車に搭載されたバッテリを充電する非接触充電システムにおける地上又は電気自動車に配置されるコイルユニットであって、渦巻き状に形成されたコイルと、前記コイルが接続される配線基板と、前記コイル及び前記配線基板を収容する収容空間を有するケース本体と、前記ケース本体に取り付けられて前記収容空間を塞ぐカバー部材と、を備え、前記ケース本体は、前記カバー部材側に突出した筒状の第1支持部を有し、前記カバー部材は、前記ケース本体側に突出した筒状の第2支持部を有し、前記カバー部材が前記ケース本体に取り付けられた状態において、前記第1支持部及び前記第2支持部が入れ子状に配置され、前記第1支持部が前記カバー部材に当接して前記カバー部材を支持するとともに、前記第2支持部が前記ケース本体に当接して前記ケース本体を支持する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るコイルユニットによれば、ケース本体の収容空間にコイル及び配線基板が収容されており、収容空間は、ケース本体に取り付けられたカバー部材によって塞がれている。ケース本体は、カバー部材側に突出した筒状の第1支持部を有し、第1突出部をカバー部材に当接させてカバー部材を支持している。カバー部材は、ケース本体側に突出した筒状の第2支持部を有し、第2突出部をケース本体に当接させてケース本体を支持している。ここで、カバー部材が前記ケース本体に取り付けられた状態では、上記した第1支持部と第2支持部が入れ子状に配置されため、収容空間内において強度が低下する所定の部分において、ケース本体とカバー部材とを互いに支持させることができる。ケース本体とカバー部材とを互いに支持させることで効率良く補強することができるため、コイルユニットの強度を確保すると共に、ケース本体とカバー部材の板厚を薄くすることがきる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るコイルユニットを平面側斜視図である。
図2】本実施形態に係るコイルユニットの底面側斜視図である。
図3】本実施形態に係るコイルユニットの側面図である。
図4】本実施形態に係るコイルユニットの分解斜視図である。
図5】本実施形態に係るケース本体の平面側斜視図である。
図6】本実施形態に係るケース本体の平面図である。
図7】本実施形態に係るケース本体の底面側斜視図である。
図8】本実施形態に係るケース本体の底面図である。
図9】本実施形態に係る第1カバー部材の平面側斜視図である。
図10】本実施形態に係る第1カバー部材の平面図である。
図11】本実施形態に係る第1カバー部材の底面側斜視図である。
図12】本実施形態に係る第2カバー部材の平面側斜視図である。
図13】本実施形態に係る第2カバー部材の底面側斜視図である。
図14】本実施形態に係るコイルケースの平面側斜視図である。
図15】本実施形態に係るコイルケースの平面図である。
図16】本実施形態に係るコイルケースの底面側斜視図である。
図17】本実施形態に係るコイルケースの底面図である。
図18】本実施形態に係るリッツ線と配線基板の接続構造を示す拡大斜視図である。
図19図18のXIX-XIX線に沿った端子部材の断面図である。
図20図1のXX-XX線に沿った装置ケースの断面図である。
図21図1のXXI-XXI線に沿った装置ケースの断面図である。
図22】本実施形態に係る凹部及び凸部の変形例であり、図20に対応する装置ケースの断面図である。
図23】本実施形態に係る第1支持部及び第2支持部の変形例であり、図22に対応する装置ケースの断面図である。
図24】本実施形態に係る非接触充電システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る非接触充電システム100と、非接触充電システム100に用いられるコイルユニット1について図1図24を参照して説明する。本実施形態では、説明の便宜上、各図中に適宜示す上下、左右、前後の矢印で示す方向を、それぞれ上下方向、左右方向、前後方向と定義して説明する。また、各図中においては、図面を見易くするため、一部の符号を省略している場合がある。
【0012】
図24に示されるように、非接触充電システム100は、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の電気自動車200を充電するためのシステムである。非接触充電システム100では、地上に配置された送電側のコイルユニット1Aと電気自動車200に配置された受電側のコイルユニット1Bとの間で電力を伝送し、電気自動車200に搭載されたバッテリ300を充電する。電力の伝送方法は、送電側のコイルユニット1Aに収容された一次側のコイル2と、受電側のコイルユニット1Bに収容された二次側のコイル2とを対向して配置して、コイル間の電磁誘導を利用して電力を伝送する。具体的に、外部の電源装置400から送電側のコイルユニット1Aに交流の電力を供給することで一次側のコイル2に誘導電流を流し、磁界を発生させる。発生した磁界は二次側のコイル2に達し、二次側のコイル2に誘導電流が流れることによって電力を伝送する。
【0013】
次に、上記構成の非接触充電システム100を構成するコイルユニット1A,1Bについて説明する。以下では、受電側のコイルユニット1Bを送電側のコイルユニット1Aと区別しない場合は、単にコイルユニット1として説明する。
【0014】
図1図4に示すように、コイルユニット1は、後述するコイル2等を収容する箱状の装置ケース3を備えている。装置ケース3は、コイル2等を収容する収容空間S1,S2が形成されたケース本体4と、ケース本体4の開口部41,42を塞ぐ第1カバー部材5と第2カバー部材6を有している。
【0015】
図5図8に示すように、ケース本体4は、前後方向及び左右方向に所定の幅を有し、上下方向に扁平な箱状に形成されている。ケース本体4は、アルミニウム等の非磁性材料で形成されており、一例として、アルミダイカストとされている。ケース本体4は、前壁部4A、後壁部4B、左壁部4C、右壁部4D、上壁部4E、底壁部4F及び区切り壁部4Gを備えている。区切り壁部4Gは、前壁部4Aの中間部と後壁部4Bの中間部とを繋ぐように前後方向に延在している。上壁部4Eは、区切り壁部4Gの上端部、区切り壁部4Gよりも右側の前壁部4A及び後壁部4Bの上端部、並びに、右壁部4Dの上端部に繋がって一体に設けられている。底壁部4Fは、区切り壁部4Gの下端部、区切り壁部4Gよりも左側の前壁部4A及び後壁部4Bの下端部、並びに、左壁部4Cの下端部に繋がって一体に設けられている。ケース本体4では、上壁部4E、区切り壁部4G及び底壁部4Fの上下左右断面がクランク形状になっている。
【0016】
このようなケース本体4では、上壁部4E、区切り壁部4G、右壁部4D、前壁部4A及び後壁部4Bによって下方に開口する第1収容空間S1が形成されている。また、ケース本体4では、底壁部4F、区切り壁部4G、左壁部4C、前壁部4A及び後壁部4Bによって上方に開口する第2収容空間S2が形成されている。ケース本体4では、区切り壁部4Gによってケース本体4の内部空間(収容空間)が左右二つに区画され、それら左右の内部空間が互いに上下逆方向に開口するようになっている。
【0017】
ケース本体4において、区切り壁部4Gの右側に形成される第1収容空間S1には、コイル2及びフェライトコア8を保持するコイルケース7が収容される(図4参照)。区切り壁部4Gの左側に形成される第2収容空間S2には、コイル2が接続される配線基板9が収容される(図4参照)。図示はしないが、配線基板9には、主として共振回路部、制御部、電力変換部が実装されている。共振回路部は、コイル2と直列又は並列に接続されるコンデンサ(共振コンデンサ)を含んで構成される。制御部は、充電電力を監視している。電力変換部は、整流部を含んでおり、受電した高周波交流電力を所定の直流電力に変換して電気自動車200に搭載されたバッテリ300に供給する。
【0018】
ケース本体4において、区切り壁部4Gの右側に形成される第1収容空間S1は、下方側に開口する第1開口部41を有している。また、区切り壁部4Gの左側に形成される第2収容空間S2は、上方側に開口する第2開口部42を有している。ケース本体4では、第1収容空間S1の第1開口部41と第2収容空間S2の第2開口部42とを、ケース本体4において対向する側面(4E,4F)に別々に設けている。従って、ケース本体4は、区切り壁部4Gによって第1収容空間S1と第2収容空間S2との間に段差形状を有するクランク状の構造を成している。
【0019】
なお、図1図23には、電気自動車200に搭載される受電側のコイルユニット1Bを図示しているため、第1収容空間S1が地上に設置された相手側(送電側)のコイルユニット1Aと対向する下方側に開口している。送電側のコイルユニット1Aでは、第1収容空間S1が、受電側のコイルユニット1Bと対向する上方側に開口している。
【0020】
図7及び図8に示すように、第1収容空間S1は、装置ケース3の下方に開口した矩形箱状の収容空間とされており、ケース本体4の前壁部4A、後壁部4B、右壁部4D、及び区切り壁部4Gによって側壁部分が形成されている。これらの壁部4A,4B,4D,4Gには、第1カバー部材5をケース本体4に固定するための複数の第1ボス部43が一体に形成されている。複数の第1ボス部43は、壁部4A,4B,4D,4Gから第1収容空間S1の内側に向かって突出しており、上下方向を軸方向とする柱状に形成されている。この複数の第1ボス部43を介して、第1カバー部材5の外周部がケース本体4に固定される。
【0021】
図9図11に示すように、第1カバー部材5は、前後方向及び左右方向に所定の幅を有し、上下方向に所定の板厚を有する樹脂製の板状部材である。第1カバー部材5は、ケース本体4の下方側に配置されており(図4参照)、ケース本体4に取り付けることで第1収容空間S1の第1開口部41を塞ぐ構成となっている。第1カバー部材5の外周部には、第1カバー部材5を上下方向に貫通する複数の第1取付孔51が形成されている。複数の第1取付孔51はそれぞれ、第1収容空間S1に設けられた複数の第1ボス部43に対応している。第1カバー部材5は、ネジ52(図2及び図3参照)を第1取付孔51と第1ボス部43に形成されたネジ孔(雌ネジ)に挿入してケース本体4に取り付けられる。
【0022】
図11に示すように、第1カバー部材5の下面5Bには、第1取付孔51に対応する位置にカバー側凹部53が形成されている。カバー側凹部53は、上方側に窪んだ円柱状の凹部であり、底面に第1取付孔51が形成されている。第1カバー部材5の外側から第1取付孔51に挿入されたネジ52は、カバー側凹部53に挿入されて第1カバー部材5の下面5Bから突出しないようになっている。従って、電気自動車200に搭載される受電側のコイルユニット1Bでは、電気自動車200の底面を構成する第1カバー部材5の下面5Bをフラットにすることができるため、車両下部の空力性能を低下させないようになっている。また、走行中に路面から跳ね返った小石や車両下部に侵入した障害物とネジ52との接触を抑制することができる。
【0023】
装置ケース3では、第1収容空間S1の密閉性を高める観点から、ケース本体4において第1収容空間S1の側壁部分を構成する壁部4A,4B,4D,4Gと第1カバー部材5との対向面にシール材Xを塗布している。図7及び図8に示すように、ケース本体4において第1収容空間S1の側壁部分を構成する壁部4A,4B,4D,4Gの下端面(シール材Xが塗布される面)には、凹部44が形成されている。凹部44は、壁部4A,4B,4D,4Gにおいて、第1ボス部43よりも内側に配置され、第1開口部41の外周部に沿って一周延びる線状に形成されている。図20に示すように、凹部44は、第1カバー部材5側(下方側)に開口した矩形溝状に形成されており、対向して配置された一対の側面441と一対の側面441の上端を繋ぐ底面442を有している。
【0024】
図9及び図10に示すように、第1カバー部材5の上面5Aの周縁部(シール材Xが塗布される部分)には、凸部54が形成されている。凸部54は、第1カバー部材5の上面5Aの周縁部において、第1取付孔51よりも内側に配置され、上面5Aの周縁部に沿って一周延びる線状凸部として構成されている。図20に示すように、凸部54は、第1カバー部材5の上面5Aからケース本体4側(上方側)に立設されており、延在方向と直交する方向の断面が凹部44よりも一回り小さな矩形状を成している。
【0025】
第1カバー部材5をケース本体4に取り付ける際には、ケース本体4の凹部44にシール材Xを充填した後に、第1カバー部材5の凸部54をケース本体4の凹部44に挿入させるように第1カバー部材5をケース本体4に取り付ける。このように第1カバー部材5がケース本体4に取り付けられると、図20に示すように、凹部44内のシール材Xの一部が凸部54に押圧されて凹部44内から押し出され、当該シール材Xが、ケース本体4の壁部4A,4B,4D,4Gの下端面と第1カバー部材5の上面5Aとの間に介在した状態となる。凹部44内にもシール材Xの一部は残り、当該シール材Xは、凹部44を構成する一対の側面441及び底面442と、凸部54を構成する各面との間に介在した状態となる。シール材Xは、一例として、シリコン系の湿式のシール材で構成されており、液状の状態で凹部44に充填され、硬化すると、弾性を持ったゴム状物となる。
【0026】
上記構成のように、ケース本体4側に形成した凹部44に、第1カバー部材5の凸部54を挿入する構成とした理由は主に二つある。第1の理由は、ケース本体4と第1カバー部材5の接合部の面積を増加させ、シール材Xによるケース本体4と第1カバー部材5との接合強度を高めることにある。これにより、金属製のケース本体4と樹脂製の第1カバー部材5の間の線膨張収縮差が大きくなった場合に、第1カバー部材5の一部がケース本体4から乖離しても第1収容空間S1が口開きすることを抑制する。第2の理由は、凹部44と凸部54の間に弾性を持ったシール材Xを介在させることで、シール材Xの弾性変形によりケース本体4と樹脂製の第1カバー部材5の線膨張収縮差を複数方向の面で効率良く吸収することができるためである。
【0027】
第2の理由について具体的に説明する。例えば、寒冷地で車両が冷やされた場合に、線膨張係数の大きい樹脂製の第1カバー部材5が金属製のケース本体4よりも収縮するため、第1カバー部材5に対して、第1カバー部材5をケース本体4の第1開口部41から離間させる方向へ外力が働く場合がある。この際、第1カバー部材5の凸部54の側面に追従して凹部44の側面441の近傍のシール材Xが弾性変形するため、ケース本体4と第1カバー部材5との密封性を維持したまま線膨張収縮差を吸収することができる。一方、例えば、運転直後で車両が高温の場合、樹脂製の第1カバー部材5が金属製のケース本体4よりも膨張するため、第1カバー部材5における凸部54の一方側の側面において、凹部44の側面との離間距離t1が小さくなる場合がある。凹部44の側面441の近傍のシール材Xが凹部44の底面442側に押し出されるように弾性変形するため、ケース本体4と第1カバー部材5との密封性を維持したまま線膨張収縮差を吸収することができる。
【0028】
図20に示すように、第1カバー部材5がケース本体4に取り付けられた状態で、凸部54の先端と凹部44の底面442との間の離間距離t2が凸部54の側面と凹部44の側面との間の離間距離t1よりも大きくなるように設定されている。当該構成は、ケース本体4と第1カバー部材5の膨張収縮差を効率良く吸収することを目的としている。即ち、上述のとおり、第1カバー部材5の凸部54の側面と凹部44の側面441との相対的な位置関係は、ケース本体4と第1カバー部材5との線膨張収縮差が増大することで大きく変化することが想定される。凸部54の側面と凹部44の側面441の位置関係が大きく変化すると、凸部54側面の両側の空間で膨張収縮差を吸収しきれなくなる恐れがあるがある。そこで、凸部54の先端と凹部44の底面442との間の離間距離t2を大きくすることにより、凸部54側面の両側の空間と連通した凹部44の底面442側のシール層を厚くした。凹部44の底面442側のシール層を厚くすると、凸部54側面の両側の空間で膨張収縮差が吸収しきれなくなる状態でも、シール材Xを効率良く変形させることができるため、ケース本体4と第1カバー部材5の膨張収縮差を効率良く吸収することができる。
【0029】
更に、ケース本体4において第1収容空間S1を形成する壁部4A,4B,4D,4Gには、第1収容空間S1側の角部を面取りして形成した傾斜面45が形成されている。当該構成は、第1収容空間S1の気密性を高めることを目的としている。傾斜面45は、第1収容空間S1の内側に向かうにつれて第1カバー部材5の対向面(上面5A)との間の間隙が大きくなるように傾斜されている。従って、液状のシール材Xを凹部44に充填し、第1カバー部材5をケース本体4に取り付けると、凸部54によって凹部44の内側から第1収容空間S1側に押し出されたシール材Xが、傾斜面45と第1カバー部材5の上面5Aとの間に留まり、肉厚のシール層を形成する。これにより、第1収容空間S1の気密性を高めることができる。また、シール材Xの余剰部分を傾斜面45と第1カバー部材5の間に留めることで第1収容空間S1内にシール材Xが流入することを防止している。
【0030】
図7及び図8に示すように、ケース本体4の上壁部4Eの下面には、第1収容空間S1の中央の位置に、下方側に突出した中央ボス部47が配置されている。中央ボス部47(第1支持部)は上下方向を軸方向とする円柱状に形成されており、中央ボス部47を介して第1カバー部材5の中央部分がケース本体4に固定される。図21に示すように、中央ボス部47の下面の中央には、上方に窪んだ窪み部46が形成されている。当該窪み部46により、中央ボス部47の下端部は、筒状に形成されている。また、窪み部46の中央には、雌ネジ孔が形成されている。第1カバー部材5がケース本体4に取り付けられた状態では、中央ボス部47の下端面が第1カバー部材5の対向面(上面5A)に当接して第1カバー部材5を第1収容空間S1の内側から支持する構成となっている。中央ボス部47の下端面(第1カバー部材5と対向する面)には、環状の凹部471が形成されている。この凹部471は、第1カバー部材5側(下方側)に開口した矩形溝状に形成されており、凹部471の内側に、シール材Xが充填される。
【0031】
図9及び図10に示すように、第1カバー部材5の上面5Aには、中央ボス部47と対向する位置(上面5Aの中央位置)に、円筒状の突起部59が形成されている。突起部59の中央に、上下方向に貫通するネジ孔55が形成されている。図21に示すように、第1カバー部材5の突起部59をケース本体4の中央ボス部47の窪み部46に挿入し、ネジ孔55に挿通させたネジ52を窪み部46の雌ネジ孔に螺合することにより、第1カバー部材5はケース本体4に固定される。第1カバー部材5の下面5Bには、突起部59及びネジ孔55に対応する位置にカバー側凹部53が形成されている。カバー側凹部53は、第1カバー部材5において、第1取付孔51に対応して設けたカバー側凹部53と同様の構成であるため説明を割愛する。第1カバー部材5の外側からネジ孔55に挿入されたネジ52は、カバー側凹部53に挿入されて第1カバー部材5の下面5Bから突出しない構成となっている。
【0032】
図9及び図10に示すように、第1カバー部材5の上面5Aには、突起部59を囲むように形成された環状の凸部56が一体に形成されている。図21に示すように、凸部56は、第1カバー部材5の上面5Aから上方側に立設されており、延在方向と直交する方向の断面が矩形状を成している。第1カバー部材5は、凸部56をシール材Xが充填されたケース本体4(中央ボス部47)の凹部471に挿入し、第1カバー部材5の上面5Aと中央ボス部47の下端面との間にシール材Xを介在させた状態でケース本体4に取り付けられる。このように第1カバー部材5がケース本体4に取り付けられると、凹部471内のシール材Xの一部が凸部56に押圧されて凹部471内から押し出され、当該シール材Xが、中央ボス部47の下端面と第1カバー部材5の上面5Aとの間に介在した状態となる。凹部471内にもシール材Xの一部は残り、当該シール材Xは、凹部471を構成する各面と、凸部56を構成する各面との間に介在した状態となる。これにより、シール材Xを介してケース本体4と第1カバー部材5とを密着させて第1収容空間S1の気密性を確保することができる、更に、ケース本体4と第1カバー部材5の線膨張収縮差を吸収することができる。
【0033】
図9及び図10に示すように、第1カバー部材5の上面5Aには、環状の凸部56の径方向外側の位置に、上方側に突出した円筒状の第2支持部57が形成されている。第2支持部57は、第1カバー部材5の上面5Aから上方側に立設され、ネジ孔55を中心とする円筒状に形成された内側壁571と、内側壁571の径方向外側で上面5Aから上方側に立設された円筒状の外側壁572とで二重円筒形状を構成している。内側壁571と外側壁572の間は、複数のリブ573で連結されて、軸方向から見て格子状を成している。図21に示すように、この第2支持部57は、第1カバー部材5がケース本体4に取り付けられた状態では、ケース本体4の中央ボス部47(第1支持部)が内側に入った入れ子状に配置される。このとき、第2支持部57の上端部がケース本体4の対向面(上壁部4Eの下面)に当接し、ケース本体4を第1収容空間S1の内側から支持する構成となっている。入れ子状に配置された中央ボス部47及び第2支持部57は、コイル2が第1収容空間S1に収容された状態では、コイル2の中央空間内に配置されている。
【0034】
上述したとおり、コイル2は、コイルケース7に保持されてケース本体4の第1収容空間S1に収容される。図14図17に示すように、コイルケース7は、前後方向及び左右方向に所定の幅を有し、上下方向に所定の厚みを有する樹脂製の板状部材であり、上下方向から見て四角形状に形成されている。コイルケース7の中央部分には、コイルケース7を上下方向に貫通する矩形状の開口部71が形成されている。コイルケース7を第1収容空間S1に収容した状態では、開口部71の内側にケース本体4の中央ボス部47と第1カバー部材5の第2支持部57とが配置される。コイルケース7の上面側は、複数のフェライトコア8が固定されるコア固定面7Aとなっている。コア固定面7Aには、複数の仕切り壁部72によってマス目状に仕切られた区画のそれぞれに、矩形板状のフェライトコア8が固定されている。
【0035】
コイルケース7の開口部71の外側には、コイルケース7を上下方向に貫通するコイル挿通孔73が形成されている。コイル挿通孔73には、コイルケース7の下面側に保持されたコイル2の一方側の端部2A(図4参照)が挿通されて、コイルケース7のコア固定面7A側に引き出される。コア固定面7A側に引き出されたコイル2の一方側の端部2Aは、コイルケース7におけるコア固定面7Aの左端部側に設けられた溝形の第1コイル案内部74Aに挿入されて保持される。
【0036】
コイルケース7の下面側は、コイル2を固定するコイル固定面7Bとなっている。コイル固定面7Bには、渦巻状に形成されたコイル収容溝76が形成されている。コイル収容溝76は一例として、下方側に開口した矩形溝状とされており、コイル2を形成する線材が内側に挿入される。本実施形態において、コイル2は、表皮効果による巻線抵抗の増大を防ぐためにリッツ線21で構成されている。リッツ線21は、絶縁被覆された複数の線材(細線)を撚り合わせて形成されており、コイルケース7のコイル収容溝76内に挿入されることで、渦巻状に形成されたコイル2を形成する。このようにして、コイルケース7のコイル固定面7B上(表面上)には、渦巻状のコイル2が配置される。コイル2の両端2A,2Aは、コイル2の中央空間側に配置された一端2Aが上述したコイル挿通孔73を通って上面側のコア固定面7Aに引き出される。一方、コイル2において、径方向外側に配置された他端2Aは、コイル収容溝76の端部からコイル固定面7Bの左端部側に延長された第2コイル案内部74Bに挿入されて保持される。
【0037】
コイルケース7の外周部及び開口部71の内側面には、複数のコイルケース側ボス部75が一体に形成されている。コイルケース7は、複数のコイルケース側ボス部75を介してケース本体4の上壁部4Eに固定される。上壁部4Eには、コイルケース7のコイルケース側ボス部75と対向する位置にケース本体側ボス部48が設けられている(図8参照)。コイルケース7は、コイルケース側ボス部75とケース本体側ボス部48にネジ(不図示)を挿通させてケース本体4の第1収容空間S1内に固定される。
【0038】
図8に概略的に示すように、ケース本体4の第1収容空間S1内に固定されたコイルケース7において、第1コイル案内部74Aと第2コイル案内部74Bに保持されたコイル2の両端部2A,2Aは、第1収容空間S1の左側の壁部を構成する区切り壁部4G側に延在し、区切り壁部4Gに形成された挿通孔49を通って第2収容空間S2内に案内される。第2収容空間S2内に案内されたコイル2の両端部2A,2Aは、第2収容空間S2に収容された配線基板9の上面の実装面9Aに端子部材22(図18参照)を介して接続される。端子部材22の詳細の構成については後述する。
【0039】
挿通孔49は、ケース本体4の区切り壁部4Gと底壁部4Fに跨って形成されており、区切り壁部4Gを左右方向に貫通して第1収容空間S1と第2収容空間S2とを連通させると共に、底壁部4Fを上下方向に貫通して第2収容空間S2と外部とを連通させている。挿通孔49は、ケース本体4の第1開口部41に沿って延在する凹部44よりも内側に配置される。従って、第1カバー部材5がケース本体4に取り付けられた状態では、挿通孔49の周囲がシール材Xで密閉されるため、装置ケース3の外部から挿通孔49を通って水滴等が内部に侵入することが阻止されている。
【0040】
上述のとおり、ケース本体4はダイカストであるところ、挿通孔49は上下方向に開口する部分を有するため、上下金型のみで構成されたダイカストの鋳造金型で形成することができる。従って、横方向の挿抜を要する金型を要しないため、金型の構成を容易にすることができる。第1カバー部材5がケース本体4に取り付けられた状態では、挿通孔49の下方側は、第1カバー部材5の左端部5Lから突出した突出部58により塞がれる(図10及び図2参照)。底壁部4Fの表面には、第1カバー部材5の左端部5Lの形状に沿って形成された段差部4Hが形成されており、第1カバー部材5の左端部5Lを区切り壁部4Gの下面側に重ねると、底壁部4Fの段差部4Hに嵌め合わされて第1カバー部材5の位置決めされ、底壁部4Fの下面と第1カバー部材5の下面5Bとが面一の状態となる。
【0041】
次に、図18及び図19を用いてコイル2の両端部2A,2Aにおけるリッツ線21と配線基板9との接続構造について説明する。本実施形態では、リッツ線21の端部が端子部材22を介して配線基板9に接続されている。
【0042】
ところで、従来、リッツ線の端部を配線基板に固定する方法として、配線基板にネジ固定する端子部材の一端にリッツ線の端部をヒュージング(カシメ)で圧着させて固定する方法が知られている。このようなヒュージングによる端子部材とリッツ線との圧着は、複数の線材を撚り合わせて形成されるリッツ線においては、各線材と端子部材22との圧着部分が不安定になるため、接触抵抗による電力損失が生ずるという問題があった。また、端子部材、配線基板、固定用のネジの間による接触抵抗も著しく、これによっても電力損失を生じていた。
【0043】
図18に示すように、端子部材22は、金属製の板状部材で構成され、配線基板9に固定される基板固定部23と、基板固定部23と一体に形成されて、リッツ線21の端部を挟持する挟持部24とを備えている。基板固定部23は、上下方向に所定の板厚を有する長尺な板状部材で構成され、下面側が配線基板9の上面の実装面9Aに載置されている。基板固定部23の上面側には、基板固定部23の長手方向をリッツ線21の延在方向とする姿勢でリッツ線21の端部が載置されている。基板固定部23は、長手方向の一端と他端のそれぞれに配線基板9側に延びる一対の脚部231が形成されている。一対の脚部231は、配線基板9を上下方向に貫通する貫通孔91に挿通されて、半田付けされることにより、配線基板9に実装される。
【0044】
挟持部24は、基板固定部23の短手方向の両側に一体に形成された一対の腕部241を有する。一対の腕部241は、基板固定部23から脚部231と反対側(上方側)に延在し、基板固定部23に載置されたリッツ線21の両側に配置される。一対の腕部241は、基板固定部23から突出した基端部側が、リッツ線21の周方向に沿って延び、先端側の部位は、互いに離れる方向へ折り曲げられてテーパ状に広がった導入部241Aとされている。リッツ線21の端部は、予め、予備半田工程において溶かした半田Yに浸して線材の間に半田Yをしみ込ませた状態で端子部材22に装着される(図19参照)。この際、リッツ線21の端部は、導入部241Aの間に挿入され、導入部241Aを押し広げるように一対の腕部241を弾性変形させて一対の腕部241の内側に挿入される。リッツ線21が導入部241Aを通過すると、押し広げられた一対の腕部241が元の位置まで復元してリッツ線21の端部を挟持する構成となっている。本実施形態には、基板固定部23の長手方向に沿って一対の挟持部24が二箇所に設けられているが、一対の腕部241の数は適宜変更可能であり、一つでもよく、三つ以上でもよい。端子部材22は、予備半田工程によって半田Yで被覆されたリッツ線21の端部を一対の腕部241により挟持した状態で、リッツ線21の端部と一対の腕部241(挟持部24)を覆うように半田Yを付着させることにより、リッツ線21の端部を配線基板9に接続させている。
【0045】
上記構成において特筆すべき点は、第1に半田Yを浸み込ませたリッツ線21の端部を端子部材22の一対の腕部241(挟持部24)によって挟持させることで、端子部材22とリッツ線21の接触部分を安定させた点である。リッツ線21を構成する各線材は予備半田工程において半田Yによって被覆された状態で一対の腕部241に挟持されるため、リッツ線21の各線材が一対の腕部241に直接接触せず、リッツ線21の各線材が一対の腕部241との間に予備半田工程による半田Yを介在させた状態で挟持される。これにより、リッツ線21と端子部材22との接触抵抗が小さくなり、電力損失を低減させることができる。
【0046】
第2に、リッツ線21の端部と挟持部24を覆うように半田Yを付着させることにより、リッツ線21と端子部材22との間に確実に半田Yを介在させることができる点である。これにより、リッツ線21の端部(各線材)を配線基板9に直接半田付けしたのと同様の接続状態を実現することができるため、リッツ線21と端子部材22との間の機械的な接合強度の向上を図ると共に、リッツ線21と端子部材22(配線基板9)との接触をより一層安定させて接触抵抗の低減を図ることができる。また、リッツ線21が端子部材22により挟持されるため、車の振動や衝撃による半田へのストレスを軽減させることができる。
【0047】
以下、図5及び図6を用いて、ケース本体4の第2収容空間S2について説明する。第2収容空間S2は、ケース本体4の上方に開口した矩形箱状の収容空間とされており、ケース本体4の前壁部4A、後壁部4B、左壁部4C、及び区切り壁部4Gによって側壁部分が形成されている。これらの壁部4A,4B,4C,4Gには、第2カバー部材6をケース本体4に固定するための複数の第2ボス部50が一体に形成されている。第2収容空間S2には、配線基板9や、図示していない伝送効率を最適化する共振チョーク等が収容される。第2収容空間S2の左側の壁部を構成する左壁部4Cには、二つのコネクタ装着部501,502が形成されている。コネクタ装着部501,502は、左壁部4Cからケース本体4の外側に突出した筒状に形成されており、内側に入力側のコネクタ11のハウジング11Aと、出力側のコネクタ12のハウジング12Aが装着される(図1参照)。ハウジング11A,12Aには、図示しない接続端子がそれぞれ設けられており、当該接続端子は配線基板9の実装面9Aに接続される。入力側のコネクタ11は、図示しない電源等と電気的に繋がるケーブルコネクタが接続される。出力側のコネクタ12は、電気自動車200のバッテリ300と電気的につながるケーブルコネクタが接続され、コイル2で受電した電力を電気自動車200のバッテリ300に供給する。
【0048】
図12及び図13に示すように、第2カバー部材6は、前後方向及び左右方向に所定の幅を有し、上下方向に所定の板厚を有する金属製の板状部材である。第2カバー部材6は、ケース本体4の上方側に配置され、ケース本体4に取り付けることで第2収容空間S2の第2開口部42を塞ぐ構成となっている。第2カバー部材6の外周部には、第2カバー部材6を上下方向に貫通する複数の第2取付孔61が形成されている。複数の第2取付孔61はそれぞれ、第2収容空間S2を形成する各壁部に設けられた複数の第2ボス部50に対応している。第2カバー部材6は、ネジ62を第2取付孔61と第2ボス部50に挿入してケース本体4に取り付けられる。
【0049】
第2カバー部材6の下面側には、プレス成型により第2カバー部材6の上面を上方側に突出させて形成した収容凹部63が形成されている。収容凹部63は、下方側に開口した矩形箱状の収容空間であり、配線基板9に実装されたコンデンサ等の各種回路素子や、伝送効率を最適化する共振チョーク等が収容される。
【0050】
この第2収容空間S2について特筆すべき点は、第2カバー部材6の右端部6R側の固定位置にある。上述したとおり、ケース本体4において、第1収容空間S1と第2収容空間S2を区画する区切り壁部4Gには、第1カバー部材5をケース本体4に取り付ける第1ボス部43と、第2カバー部材6をケース本体4に取り付ける第2ボス部50とが一体に形成されている。従って、図3に示されるように、第2カバー部材6の右端部6R側(位置端部側)は、区切り壁部4Gの上面側を覆うように配置され、第1カバー部材5の左端部5L側と第2カバー部材6の右端部6R側とが、区切り壁部4Gを挟んで上下に重なり合った状態でケース本体4に取り付けられている。
【0051】
(作用並びに効果)
以上説明したように、本実施形態のコイルユニット1では、装置ケース3の内部にコイル2及びコイル2に接続される配線基板9が収容されている。この装置ケース3のケース本体4は、区切り壁部4Gによって区画された第1収容空間S1と第2収容空間S2を有しており、第1収容空間S1にコイル2が収容され、第2収容空間S2に配線基板9が収容されている。ケース本体4は、第1収容空間S1が相手側のコイルユニットと対向する向きに開口し、第2収容空間S2が第1収容空間と反対側に開口している。従って、ケース本体4は、区切り壁部4Gによって第1収容空間S1と第2収容空間S2の間に段差形状を有するクランク状に形成され、断面の剛性が高められることによりケース本体4の強度を向上させることができる。更に、コイル2が収容された第1収容空間S1の第1開口部41が小さくなり第1カバー部材5を小型化させることができるため、これによっても装置ケース3全体の強度を高めることができる。このようにして、本発明に係るコイルユニット1では、装置ケース3の強度を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態では、区切り壁部4Gの両側面に第1カバー部材5を固定させる第1ボス部43と第2カバー部材6を固定させる第2ボス部50とが一体に設けられている。これにより、図3に示すように、第1カバー部材5の左端部5L側(一端部側)と前記第2カバー部材6の右端部6R側(一端部側)とが、区切り壁部4Gを挟んで重なり合った状態でケース本体に取り付けられている。従って、第1カバー部材5と第2カバー部材6とをケース本体4の同一面に並べて固定する構成と比較して、ケース本体4を小型化させることができる。
【0053】
また、区切り壁部4Gの両側面に第1ボス部43と第2ボス部50を一体に設ける構成としたため、区切り壁部4Gの剛性を高めることができる。従って、ケース本体4のクランク状の部分の剛性を効果的に高めることができ、ケース本体4の強度をより一層向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、区切り壁部4Gは、コイル2が挿通される挿通孔49を有しているため、コイル2の端部2Aを装置ケース3の内部で配策して配線基板9に接続することができる。従って、装置ケース3に外部と連通する挿通孔が形成されないため、装置ケース3内の防水性能を高めることができる。
【0055】
また、本実施形態では、コイル2は、コイルケース7のコイル固定面7B(表面)に形成されたコイル収容溝76内に収容され、コイルケース7の表面上に渦巻状に配置されている。従って、コイル2がコイルケース7に保持されて、使用時の揺動を抑制することができるため、電気自動車200の走行中の振動からコイルを保護することができる。また、コイルケース7の表面にコイル2が配置されるため、コイルケースの薄型化が可能となり、ひいてはコイルユニット1の薄型化及び軽量化を図ることができる。
【0056】
また、本実施形態では、ケース本体4は、第1収容空間S1を形成する壁部(前壁部4A,後壁部4B,右壁部4D.区切り壁部4G)において、第1カバー部材5と対向する面に形成された凹部44を有しており、当該凹部44にシール材Xが充填される。第1カバー部材5は、第1収容空間S1の壁部4A,4B,4D,4Gと対向する面に形成された凸部54を有しており、当該凸部54を凹部44に挿入させ、壁部4A,4B,4D,4Gとの間にシール材Xを介在させた状態でケース本体4に取り付けられている。コイルユニット1の設置環境などによりケース本体4と第1カバー部材5の線膨張収縮差が増大した場合に、凹部44と凸部54の間に介在するシール材Xが変形する。従って、線膨張収縮差を複数方向の面で効率良く吸収することができ、第1収容空間S1の口開きを防止することができる。
【0057】
また、本実施形態では、ケース本体4の壁部4A,4B,4D,4Gには、第1収容空間S1側の角部を面取りした傾斜面45が形成されており、第1収容空間S1側に押し出されたシール材Xを傾斜面45で留める構成になっている。従って、傾斜面45に肉厚のシール層が形成され、第1収容空間S1の気密性が高まるため、装置ケース3の防水性能を高めることができる。また、傾斜面45に余剰分のシール材Xを留めて第1収容空間内に流入することを防止しているため、第1収容空間S1に収容されたコイル2等の部品をシール材Xから保護することができる。
【0058】
なお、壁部4A,4B,4D,4Gの第1収容空間S1側の角部に段差部を形成することによりケース本体4と第1カバー部材5との間にシール材Xの肉厚部を形成することも可能であるが、角部を傾斜面状に形成することでシール材Xの押し出しをスムーズにすることができる。
【0059】
更に、本実施形態では、第1カバー部材5がケース本体4に取り付けられた状態において、図20に示すように、第1カバー部材5の凸部54の先端とケース本体4の凹部44の底面442との間の離間距離t2が、凸部54の側面と凹部44の側面441との間の離間距離t1よりも大きく設定されている。即ち、凸部54先端と凹部の底面442との間に形成されるシール層(シール材)の厚みが凸部54の両側に形成されるシール層の厚みよりも大きく設定されている。凹部44の底面442側の空間は凸部54の両側の空間と連通するため、底面442側の空間のシール層を厚くすることで、部材間の線膨張収縮差により凸部54の両側の空間の変形を効率良く吸収することができる。
【0060】
また、本実施形態では、ケース本体4に形成された中央ボス部47(第1支持部)を第1カバー部材5に当接させ、第1カバー部材5に形成された第2支持部57をケース本体4に当接させるため、ケース本体4と第1カバー部材5と互いに支持しあう構成となっている。また、第1カバー部材5がケース本体4に取り付けられた状態では、上記した中央ボス部47と第2支持部57が入れ子状に配置される。従って、第1収容空間S1内において強度が低下する所定の部分において、ケース本体4と第1カバー部材5とを互いに支持させることで効率良く補強することができる。その結果、ケース本体4と第1カバー部材5の板厚を薄くすることがきる。
【0061】
また、本実施形態では、中央ボス部47と第2支持部57は、ケース本体4の第1収容空間S1に収容されたコイル2の中央空間内に配置されている。従って、コイル2が収容される第1収容空間S1において、強度が低下するコイル2の中央空間を効率良く補強することができる。
【0062】
また、本実施形態では、第1カバー部材5がケース本体4に取り付けられた状態において、ケース本体4の中央ボス部47が第2支持部57の内側に入った入れ子状に配置される。即ち、第1カバー部材5の第2支持部57は、ケース本体4の中央ボス部47を内側に収納可能な内径を有するため、ケース本体4の対向面をより広範囲に支持することができる。従って、本実施形態のように、ケース本体4をアルミニウム等の比較的形成し易い材料で形成した場合でも、ケース本体4の強度を広範囲に高めることができるので、強度の確保と軽量化とを両立することができる。また、ケース本体4をダイカストとしても、ダイカストにおける強度上の弱点を構造で補うことができるので、必要な強度を確保して、寸法精度及び生産性を高めることができる。
【0063】
また、本実施形態では、第2支持部57は、内側壁571及び外側壁572を有する二重筒形状であり、内側壁571と外側壁572の間に複数のリブ573を有している。従って、第2支持部57によるケース本体4の支持面積を増加させることができ、ケース本体4をより効果的に補強することができる。なお、第2支持部57を一層の筒形状とし、板厚を厚くすることでケース本体4に対する支持面積を増加させることも可能である。しかし、当該構成を本実施形態のように樹脂製の第1カバー部材5に適用した場合、第1カバー部材5の重量が増すことに加えて、板厚の増加に伴う樹脂ヒケが生じやすくなる。本実施形態は、第2支持部57が二重筒形状の内側に複数のリブを形成する構造としたので、第1カバー部材5の重量の増加を抑制し、樹脂ヒケの発生を防止することができる。
【0064】
また、図21に示すように、本実施形態では、第2支持部57の中央部にネジ孔55が形成されており、ネジ孔55にネジ52を挿通して第1カバー部材5がケース本体4に固定されている。従って、中央ボス部47と第2支持部57の中央部分をネジ52で固定して補強することができる。更に、第2支持部57において、ネジ孔55を囲むように形成された環状の凸部56が、シール材Xを介してケース本体4の対向する環状の凹部471に挿入されるため、ネジ孔55の周りの防水性能を確保することができる。従って、強度が充分に確保され、且つ防水性能に優れるコイルユニット1を得ることができる。
【0065】
また、本実施形態では、コイル2を構成するリッツ線21を配線基板9に接続するために、予備半田工程において溶かした半田Yに浸して半田Yを浸み込ませたリッツ線21の端部を、配線基板9に固定された端子部材22によって挟持する構成となっている。従って、リッツ線21と端子部材22との間に半田Yが介在する。その結果、例えば、リッツ線21と端子部材22を直接接触させてカシメにより圧着させる構成と比較して、リッツ線21と端子部材22の接触部分が安定することにより、接触抵抗を低減させることができる。更に、リッツ線21及び端子部材22の挟持部24を覆うように半田Yを付着させることにより、接触抵抗を増加させることなくリッツ線21と端子部材22の機械的な固定強度も容易に確保することができる。また、リッツ線21が端子部材22により挟持されるため、車の振動や衝撃による半田へのストレスを軽減させることができる。
【0066】
また、本実施形態において、端子部材22の挟持部24は、弾性変形可能な一対の腕部241でリッツ線21を挟持するため、挟持部24は、複数種類の異径のリッツ線21を挟持することができる。従って、複数種類の異径のリッツ線21を共通の端子部材22により配線基板9に接続できるため、部材の共通化を図り、汎用性に優れた接続構造を提供することができる。
【0067】
以下、上記実施形態にも適用可能な各変形例について説明する、なお、前述した実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0068】
上記実施形態では、第1収容空間S1の側壁部を形成する壁部4A,4B,4D,4Gと第1カバー部材5との対向する面において、ケース本体4の壁部4A,4B,4D,4Gに凹部44を形成し、第1カバー部材5に凸部54を形成する構成とした。しかし、本発明はこれに限らない。例えば、図22(A)に示す変形例のように、ケース本体4の壁部4A,4B,4D,4Gに凸部500を形成し、第1カバー部材5の対向面に形成された凹部503に挿入する構成としてもよい。また、上記実施形態では、ケース本体4に形成された凹部44の形状を矩形溝状としたが、本発明はこれに限らない。例えば、図22(B)に示すように、半球状の断面を有する溝状の凹部600に、半球状の断面を有する凸部602を挿入してもよい。若しくは、図22(C)に示す変形例のように、台形状断面を有する溝状の凹部700に台形状の凸部702を挿入してもよい。また、断面三角形状を成す溝状の凹部に三角形状の凸部を挿入してもよい。
【0069】
また、上記実施形態の中央ボス部47(第1支持部)と第2支持部57は、ケース本体4側から突出した中央ボス部47が第2支持部57の内側に入って入れ子状に配置される構成としたが、本発明はこれに限らない。図23に示す変形例のように、中央ボス部800(第1支持部)の内側に第1カバー部材5から突出した第2支持部900を挿入して入れ子状に配置してもよい。この図に示す変形例に係る中央ボス部800(第1支持部)は、ケース本体4の上壁部4Eから第1カバー部材5側に突出した円筒状に形成されている。中央ボス部800内の中央には、下方に突出した円筒状の突起部が形成され、その突起部の中央に雌ネジ孔が形成されている。中央ボス部800において、第1カバー部材5と対向する面には、矩形溝状の環状の凹部802が形成されており、凹部802の内側に、シール材Xを介在させて第1カバー部材5から突出した環状の凸部902が挿入されている。一方、変形例に係る第2支持部900は、第1カバー部材5の中央部に形成されたネジ孔55を囲むように形成された環状の凸部902の内側に配置されており、第1カバー部材5からケース本体4側へ突出した筒状に形成されている。第2支持部900は、ネジ孔55の周囲を囲うように形成された内側壁904と、内側壁904の径方向外側で同軸的に配置された外側壁906とによって二重筒形状とされており、内側壁904と外側壁906の間に複数のリブ908を有している。第1カバー部材5がケース本体4に取り付けられた状態では、第2支持部900が、第1支持部800の内側に入った入れ子状に配置され、第2支持部57がケース本体4に当接してケース本体4を支持している。
【0070】
また、上記実施形態及び各変形例では、磁界共鳴方式による非接触充電システムのコイルユニットについて説明したが、本発明のコイルユニットはこれに限らず、電磁誘導方式の非接触充電システムに適用してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 コイルユニット(1A、1B)
2 コイル
4 ケース本体
5 第1カバー部材(カバー部材)
9 配線基板
47 中央ボス部(第1支持部)
55 ネジ孔
56 凸部
57 第2支持部
100 非接触給電システム
200 電気自動車
300 バッテリ
471凹部
571 内側壁
572 外側壁
573 リブ
S1 第1収容空間(収容空間)
X シール材
図1
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