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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145327
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】傾注装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
G01N1/28 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046685
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】城戸 孝文
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 了彩
(72)【発明者】
【氏名】飯澤 勇信
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 義彦
(72)【発明者】
【氏名】柳 丞
(72)【発明者】
【氏名】松山 誠
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA11
2G052AB01
2G052AD06
2G052CA02
2G052DA26
2G052EB06
2G052FD11
(57)【要約】
【課題】溶融した金属をモールドに注いだ後にるつぼを回収できる傾注装置を提供すること。
【解決手段】本発明の傾注装置1は、炉7内で幅方向に配列した複数のるつぼ8を取り出し、複数のるつぼ8を傾けて内容物を注ぐ傾注装置である。そして、フォーク20が所定の位置にあり、かつ上部押さえ板21が規制状態のときに、傾斜機構22がフォーク20を傾斜してるつぼ8を傾けて内容物を注ぎ、フォーク20が前記所定の異なる位置にあり、上部押さえ板21が非規制状態のときに、傾斜機構22がフォーク20を傾斜してるつぼ8をフォーク20から落下させ、落下したるつぼ8をるつぼ回収治具5で受けて回収することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内で幅方向に配列した複数のるつぼを取り出し、前記炉の外部の所定の位置で複数の前記るつぼを傾けて内容物を注ぐ傾注装置であって、
幅方向に配列した複数の前記るつぼの下部を支持するフォーク部と、前記フォーク部に支持された前記るつぼの上部で前記るつぼの変位を規制する規制状態と前記るつぼの変位を規制しない非規制状態との間で変位するるつぼ変位規制部と、前記フォーク部を傾斜させる傾斜部と、を有するアーム部と、
前記フォーク部が前記炉の内部と前記所定の位置との間で変位するように前記アーム部を移動するアーム移動部と、
前記炉の内部と外部を結ぶ内外方向で前記所定の位置と異なる位置に配置され、上方から落下するるつぼを受けて回収するるつぼ回収治具と、
を有し、
前記フォーク部が前記炉の内部と前記所定の位置にあり、かつ前記るつぼ変位規制部が前記規制状態のときに、前記傾斜部が前記フォーク部を傾斜して前記るつぼを傾けて前記内容物を注ぎ、
前記フォーク部が前記異なる位置にあり、前記るつぼ変位規制部が前記非規制状態のときに、前記傾斜部が前記フォーク部を傾斜して前記るつぼを前記フォーク部から落下させ、落下した前記るつぼを前記るつぼ回収治具で受けて回収することを特徴とする傾注装置。
【請求項2】
前記異なる位置は、前記炉の内部と外部を結ぶ内外方向で前記モールドと前記炉との間に設けられる請求項1に記載の傾注装置。
【請求項3】
前記るつぼ回収治具は、前記幅方向に沿って伸びる本体部と、前記本体部の上面から突出して設けられ前記るつぼの開口部に挿入される複数の突出棒部と、を有する請求項1~2のいずれか1項に記載の傾注装置。
【請求項4】
前記るつぼ回収治具は、前記幅方向に沿って伸びる本体部と、前記本体部の上部に設けられ前記るつぼの開口部が挿入されるるつぼ挿入孔を区画する外周支持部と、を有する請求項1~2のいずれか1項に記載の傾注装置。
【請求項5】
前記るつぼ回収治具は、前記幅方向に沿って伸びる本体部と、前記本体部の外周の端部から立設する壁部とを有する請求項1~2のいずれか1項に記載の傾注装置。
【請求項6】
前記所定の位置の下方に、前記内容物が注入する複数の注入孔が幅方向に配列して開口したモールドを有する請求項1~5のいずれか1項に記載の傾注装置。
【請求項7】
前記モールドは、幅方向に配列した前記複数の注入孔が、前記炉の内部と外部を結ぶ内外方向で複数列をなして設けられている請求項6に記載の傾注装置。
【請求項8】
前記アーム移動部は、前記フォーク部が前記炉の内部に位置する挿入位置と、前記炉の外部に位置する取り出し位置と、の間で前記アーム部を移動させ、
前記アーム部は、前記所定の位置、及び前記他の位置のそれぞれの位置に前記るつぼを位置決めする位置決め手段を有する請求項1~7のいずれか1項に記載の傾注装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内に配列した複数のるつぼを炉外に取り出し、るつぼを傾斜して内容物をモールドに注入する傾注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金、銀等の有価金属の定量分析は、特許文献1に記載のように、一般的に「JIS M8111」による方法が用いられている。この方法の概略は、試料を収納した粘土ルツボに、ソーダ灰、一酸化鉛、ホウ砂ガラス、小麦粉等を所定量加えて十分に混合し、その上から食塩を被覆して融解した後、鉛ボタンとスラグに分離する。次に鉛ボタンを灰吹炉内で灰吹きして得た金銀合粒を溶解処理して含金銀率を計算するというものである。
このような定量分析法では、るつぼで金属を溶融し、溶融した金属をるつぼからモールド(鋳型)に注ぐ作業が必要となっていた。
【0003】
従来、溶融した金属をるつぼからモールドに注ぐ作業は、トング等の治具を用いて手作業で行われている。1度の分析には大量のるつぼが用いられており、溶融した金属を手作業でモールドへ移す作業は、労力も時間もかかり、過度の負担となっていた。
【0004】
また、1度に複数のるつぼを担持して傾注する治具も開発されているが、手作業である点に変わりはなく、作業者の負担となっていた。さらに、この治具は、作業者が操作に未熟であると、るつぼを倒すおそれがあった。つまり、作業者が熟練者であることが求められており、誰でも簡単に作業できないという問題があった。
【0005】
この問題に対し、配列した複数のるつぼを炉外に取り出し、溶融した金属をモールド(鋳型)に注ぐことができる傾注装置が開発されている。そして、傾注装置では、溶融した金属をモールドに注いだるつぼを回収して再利用することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-97925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、溶融した金属をモールドに注いだ後にるつぼを回収できる傾注装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する傾注装置は、炉内で幅方向に配列した複数のるつぼを取り出し、前記炉の外部の所定の位置で複数の前記るつぼを傾けて内容物を注ぐ傾注装置であって、幅方向に配列した複数の前記るつぼの下部を支持するフォーク部と、前記フォーク部に支持された前記るつぼの上部で前記るつぼの変位を規制する規制状態と前記るつぼの変位を規制しない非規制状態との間で変位するるつぼ変位規制部と、前記フォーク部を傾斜させる傾斜部と、を有するアーム部と、前記フォーク部が前記炉の内部と前記所定の位置との間で変位するように前記アーム部を移動するアーム移動部と、前記炉の内部と外部を結ぶ内外方向で前記所定の位置と異なる位置に配置され、上方から落下するるつぼを受けて回収するるつぼ回収治具と、を有し、前記フォーク部が前記炉の内部と前記所定の位置にあり、かつ前記るつぼ変位規制部が前記規制状態のときに、前記傾斜部が前記フォーク部を傾斜して前記るつぼを傾けて前記内容物を注ぎ、前記フォーク部が前記異なる位置にあり、前記るつぼ変位規制部が前記非規制状態のときに、前記傾斜部が前記フォーク部を傾斜して前記るつぼを前記フォーク部から落下させ、落下した前記るつぼを前記るつぼ回収治具で受けて回収することを特徴とする。
【0009】
本発明の傾注装置は、炉内で幅方向に配列した複数のるつぼを取り出し、複数のるつぼを傾けて内容物(溶融した金属)を注ぐ傾注装置である。そして、本発明の傾注装置は、フォーク部が異なる位置で、フォーク部を傾斜してるつぼをフォーク部から落下させ、落下したるつぼを回収するるつぼ回収治具を有する。この構成によると、炉内から取り出した複数のるつぼを、回収することができる。そして、回収したるつぼは、再利用に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1の傾注装置の斜視図である。
図2】実施形態1の傾注装置の構成を示す分解斜視図である。
図3】実施形態1の傾注装置のアーム装置の斜視図である。
図4】実施形態1の傾注装置のアーム移動装置の斜視図である。
図5】実施形態1の傾注装置のアーム移動装置の側面図である。
図6】実施形態1の傾注装置のモールド装置の斜視図である。
図7】実施形態1の傾注装置のるつぼ回収治具の斜視図である。
図8】実施形態1の傾注装置のるつぼ回収治具の上面図である。
図9】実施形態1の傾注装置のるつぼ回収治具の側面図である。
図10】実施形態1の傾注装置のモールド部材とるつぼ回収治具の固定構造を示す部分拡大図である。
図11】実施形態の傾注装置のるつぼ廃棄装置の斜視図である。
図12】実施形態の傾注装置の移動量調整機構のハンドルプレートの切欠き近傍を示す部分拡大図である。
図13】実施形態の傾注装置で上部押さえ板がるつぼを押さえた状態のアーム装置の斜視図である。
図14】実施形態の傾注装置のアーム装置の傾注時の側面図である。
図15】実施形態の傾注装置のアーム装置のるつぼ回収時の側面図である。
図16】実施形態1の傾注装置の動作を示す斜視図である。
図17】実施形態1の傾注装置の動作を示す斜視図である。
図18】変形形態の傾注装置のるつぼ回収治具の斜視図である。
図19】実施形態2の傾注装置のるつぼ回収治具の斜視図である。
図20】実施形態3の傾注装置のるつぼ回収治具の斜視図である。
図21】実施形態4の傾注装置のるつぼ回収治具の斜視図である。
図22】実施形態4の傾注装置のるつぼ回収治具の上面図である。
図23】実施形態4の傾注装置のるつぼ回収治具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を用いて本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施形態において、炉の外部(の所定の位置)から炉の内部(のるつぼの配置された位置)に向かう方向を前方、炉の内部(のるつぼの配置された位置)から炉の外部(の所定の位置)に向かう方向を後方、前後方向に垂直かつ水平な方向を幅方向、前後方向に垂直かつ鉛直な方向を上下方向、とする。さらに、実施形態の傾注装置1を構成する各装置や部材の材質は、耐熱性や強度等から適宜選択できる。また、実施形態の傾注装置1を構成する各装置や部材は、同等の機能を発揮するものに置換してもよい。
【0012】
[実施形態1]
本形態の傾注装置1は、図1図2に示すように、アーム装置2、アーム移動装置3、モールド部材4、るつぼ回収治具5、るつぼ廃棄装置6、を有する。図1は、本形態の傾注装置1の斜視図である。図2は、本形態の傾注装置1の構成を示す分解斜視図である。
本形態の傾注装置1は、炉7内で幅方向に配列した複数のるつぼ8を取り出し、炉7の外部の所定の位置で複数のるつぼ8を傾けて内容物を注ぐ傾注装置である。
【0013】
アーム装置2は、図3に示すように、フォーク20(フォーク部に相当)、上部押さえ板21(るつぼ変位規制部に相当)、傾斜機構22(傾斜部に相当)、本体部23、移動量調整機構24を有する。アーム装置2は、請求項のアーム部に相当する。図3は、アーム装置2の斜視図である。
【0014】
フォーク20は、幅方向に配列した複数のるつぼ8の下部を支持する部材である。フォーク20は、幅方向に沿って伸びる帯状の部材であり、前方側の端部には、るつぼ8の下部が挿入される空隙200が複数設けられている。空隙200は、るつぼ8の下部に対応した形状を有している。すなわち、空隙200は、前端の開口の長さが空隙200の内部の長さよりも短く形成されている。本形態において、空隙200は、その内周形状が、るつぼ8の下端からわずかに上方での外周形状と略一致する形状となっている。複数の空隙200は、幅方向に配列した複数のるつぼ8に対応した、数,位置に設けられている。例えば、炉7内で幅方向に配列したるつぼ8と同じ数,位置で設けられている。
隣接する2つの空隙200の間には歯部201が設けられている。すなわち、フォーク20は、前方側(前端)が長く、後方側が短くなるように変化した歯部201を有する略くし状の形状を備えている。
【0015】
フォーク20は、幅方向の両端に、上方に立設した支持板202を有している。支持板202は、フォーク20がるつぼ8を支持したときに、その上端がるつぼ8の上端より高く形成されている。支持板202には、フォーク20がるつぼ8を支持したときに、るつぼ8の上端に対応した高さに、後方から前方に向かう切欠き203が形成されている。るつぼ8の上端に対応した高さとは、フォーク20が支持したるつぼ8の抜け落ち(変位)を規制できる高さであり、るつぼ8の上端の位置だけでなく、るつぼ8の上端の位置に更にすき間を設けた位置であってもよい。
【0016】
支持板202は、後方側の端部でありかつ基端部を中心に揺動可能に設けられている。フォーク20及び一対の支持板202は、一体に設けられている。支持板202が揺動すると、フォーク20も連動して揺動する。
【0017】
上部押さえ板21は、フォーク20に支持されたるつぼ8の変位を規制する規制状態とるつぼ8の変位を規制しない非規制状態との間で変位可能な板状(帯状)の部材である。上部押さえ板21は、一対の支持板202の切欠き203に挿入、脱離可能に設けられている。上部押さえ板21が支持板202の切欠き203に挿入されると、上部押さえ板21がるつぼ8の上部に位置することとなり、るつぼ8がそれ以上に上方に変位することが規制された規制状態となる。このとき、上部押さえ板21の挿入量(後方から前方への切欠き203の深さ)は、るつぼ8からの内容物(例えば、溶融した金属)が、流れ出ることを規制しない量(切欠き203の深さ)であればよい。本形態では、上部押さえ板21が切欠き203に挿入された状態では、るつぼ8の上部の開口部の略中心から後方側を覆い、るつぼ8の上部の開口部の略中心から前方側は開口している。このとき、上部押さえ板21がるつぼ8の上下方向の変位を規制する。
上部押さえ板21が切欠き203に挿入されていない状態では、るつぼ8の上下方向の変位が規制されない非規制状態となる。
【0018】
上部押さえ板21は、幅方向の略中央部の後方側の端部にピン挿入孔210が形成されている。ピン挿入孔210には、ピン211が挿入・脱離される。ピン211は、下方から上方に向かって伸び、前後方向に往復動可能に設けられている。ピン211は、アーム装置2の後方から前方に向かって伸びる押さえレバー212の前方に設けられている。押さえレバー212は前後方向に往復動可能に設けられており、押さえレバー212の往復動に伴ってピン211も往復動する。
【0019】
上部押さえ板21は、ピン211がピン挿入孔210に挿入した状態で前方に移動すると、切欠き203に挿入される。ピン211がピン挿入孔210に挿入した状態で後方に移動すると、切欠き203から脱離する。ピン211及び押さえレバー212の往復動は、上部押え板21が切欠き203に挿入脱離可能な変位を行う。
傾斜機構22は、フォーク20を傾斜させる機構である。傾斜機構22は、傾斜レバー220、リンク221、を備える。
傾斜レバー220は、アーム装置2の後方から前方に向かって伸び、前後方向に往復動可能に設けられている。
【0020】
リンク221は、傾斜レバー220の前方側の端部に、基端が揺動可能な状態で接続されている。リンク221の先端(前方側の端部)は、フォーク20の支持板202の上端部(後方側の端部)に、支持板202に対して揺動可能な状態で接続されている。
【0021】
傾斜機構22は、傾斜レバー220を前方に移動すると、リンク221も前方に移動し、支持板202の上端部を前方に押す。上端部を押された支持板202は、揺動中心を回転中心として回転する。支持板202と一体のフォーク20も追従してその前端が下方側に回転する。傾斜レバー220を後方に移動すると、リンク221も後方に移動し、支持板202の上端部を後方に引く。上端部を引かれた支持板202は、揺動中心を回転中心として回転し、フォーク20の前端が上方側に回転する。傾斜機構22は、フォーク20が水平方向に延在する位置と、フォーク20の前端が下がってるつぼ8を傾斜させる位置と、の間で変位するように、傾斜レバー220の前後方向の移動が設定されている。
【0022】
本体部23は、フォーク20、上部押さえ板21、傾斜機構22を備える部材である。本形態では、略はしご状の形状を有する。本体部23は、その前方側の端部に、フォーク20及び上部押さえ板21が設けられている。
【0023】
移動量調整機構24は、アーム移動装置3がアーム装置2を前後方向に往復動させたときに、その移動量(及び移動位置)を決定するための機構である。移動量調整機構24は、シャフト240、ハンドル部材241、第1ストッパ246、第2ストッパ247を有する。
【0024】
シャフト240は、本体部23に間接的に固定された部材であり、前後方向に延びる棒状の部材である。シャフト240は、一本以上(1本又は2本以上)が、配されている。シャフト240は、複数本(2本以上)の場合、互いに平行な状態で配される。
【0025】
ハンドル部材241は、前後方向に延びる板状(棒状)のハンドルプレート242を備える。本形態では、複数本(具体的には、2本)のハンドルプレート242が互いに平行な状態で配されている。ハンドル部材241は、1対のハンドルプレート242,242が、前端においてリニアブロック243を中心に揺動可能な状態で接続されている。1対のハンドルプレート242,242は、後端において棒状のハンドルにより1体に接合されている。ハンドル部材241は、前端のリニアブロック243を中心に揺動可能な状態で設けられている。
リニアブロック243は、シャフト240が貫通し、ハンドル部材241を本体部23に対して前後方向に往復動可能に設けられている。
【0026】
1対のハンドルプレート242,242は、下方側の端部に、複数の切欠き244が形成されている。複数の切欠き244は、るつぼ8の大きさ(前後方向で配列したるつぼ8の間隔)により決定する。本体部23には、切欠き244に挿入可能な突起(本形態では、左右方向に延びる棒状のシャフト245)が設けられている。
【0027】
ハンドルプレート242は、前端に第1ストッパ246が上方に立設して設けられている。ハンドルプレート242は、所定の位置に、第2ストッパ247が上方に立設して設けられている。第1ストッパ246と第2ストッパ247の間隔は、アーム装置2のプレート20の炉内への挿入量と、モールド部材4のモールド40との関係から決定できる。
【0028】
アーム移動装置3は、図4図5に示すように、アーム装置2を、前後方向(炉内外方向)及び上下方向に移動する装置である。アーム移動装置3は、請求項のアーム移動部に相当する。図4は、アーム移動装置3の斜視図である。図5は、アーム移動装置3の側面図である。
アーム移動装置3は、本体部30、前後方向往復動機構31、位置決めストッパ32、上下方向往復動機構33を有する。
【0029】
本体部30は、アーム装置2を前後方向及び上下方向に往復動可能な状態で支持する部材である。本体部30は、それ自体が移動可能な車輪を備えている。この車輪により、アーム移動装置3は、前後方向,幅方向に移動可能となっている。
【0030】
前後方向往復動機構31は、本体部30に支持されたアーム装置2を前後方向に往復動する機構である。本形態では、その上をアーム装置2が前後方向に往復動可能なレールよりなり、アーム装置2を人力で移動させる。
位置決めストッパ32は、本体部30に固定され、アーム装置2が前後方向に移動したときに第1ストッパ246又は第2ストッパ247に当接し、アーム装置2がそれ以上の移動することを規制する。
【0031】
具体的には、アーム装置2が前方に移動していくと、後方側の第2ストッパ247が位置決めストッパ32に当たり、アーム装置2が更に前方に移動することを規制する。本形態では、この位置は、炉内に配列した複数のるつぼ8(本形態の傾注装置1で取り出するつぼ8)に対応する位置である。アーム装置2が後方に移動していくと、前方側の第1ストッパ246が位置決めストッパ32に当たり、アーム装置2が更に後方に移動することを規制する。この位置は、モールド部材4のモールド40にるつぼ8の内容物を注入可能な位置である。
上下方向往復動機構33は、アーム装置2を上下方向に往復動する機構である。本形態では、電動シリンダ及びその制御装置から形成される。
【0032】
モールド部材4は、図6に斜視図で示すように、るつぼ8の内容物が注入されるモールド40を有する部材である。モールド部材4は、複数の注入孔41が開口したモールド40を有する。モールド40の注入口41が開口する位置が、炉7の外部の所定の位置に相当する。複数の注入孔41は、幅方向及び前後方向に配列している。幅方向に配列する注入孔41は、フォーク20の空隙200に対応した間隔で設けられている。前後方向に配列する注入孔41は、移動量調整機構24のハンドルプレート242の切欠き244に対応した間隔で設けられている。モールド部材4のモールド40は、請求項のモールドに相当する。
モールド部材4は、それ自体が移動可能な車輪を備えている。この車輪により、モールド部材4は、前後方向,幅方向に移動可能となっている。
【0033】
モールド部材4は、モールド40の前方側に、開口部42が開口している。開口部42は、上下方向に貫通する貫通孔43の上方側の開口である。モールド部材4の開口部42は、るつぼ廃棄装置6の開口部60の上方で開口し、るつぼ廃棄装置6の開口部60と連通する。
【0034】
開口部42は、方形形状に開口する。開口部42は、上方側の開口のうち、幅方向の両端部側に、るつぼ回収治具5を係止する切欠き420が形成されている。切欠き420は、るつぼ回収治具5の幅方向(帯状の長手方向)の両端部が嵌合する凹字状に形成されている。
【0035】
るつぼ回収治具5は、るつぼ8を回収する治具である。るつぼ回収治具5は、図7図9に示すように、本体部50、突出棒51、ハンドル52、を有する。るつぼ回収治具5は、請求項の回収治具に相当する。図7は斜視図で、図8は上面図で、図9は側面図で、るつぼ回収治具5をそれぞれ示した。
【0036】
本体部50は、長手方向が幅方向にそって伸びる帯状の板状を有する。本体部50の長手方向に垂直な方向(前後方向)の長さは、るつぼ8の開口部の外径よりも長い。本体部50は、上面50aが上方(好ましくは鉛直方向上方)を向いて配置されている。本体部50の長手方向の長さは、フォーク20からのるつぼ8を回収(支持)可能な長さである。本体部50は、長手方向の一方の端部に上方に伸びるフランジ部53を有する。
【0037】
突出棒51は、本体部50の上面50aから上方(好ましくは鉛直上方)に突出する複数の棒状の部材である。突出棒51は、請求項の突出棒部に相当する。突出棒51は、フォーク20の空隙200の中心に対応する位置にそれぞれ設けられている。空隙200の中心に対応する位置とは、フォーク20を本体部50の上方に配置したときに、るつぼ8の開口部の中心に対応する位置である。
【0038】
ハンドル52は、フランジ部53に固定され、本体部50から離反する方向に伸びる棒状の部材である。ハンドル52は、るつぼ回収治具5を操作するための部材である。ハンドル52は、手動又は自動(機械)で操作する。本形態のハンドル52は、幅方向に沿って伸びる棒状(円柱状)の部材である。
【0039】
フランジ部53は、図10に示すように、前後方向に突出した突起部530を有している。突起部530は、モールド部材4の開口部42の切欠き420に、るつぼ回収治具5の本体部50を嵌合したときに、切欠き420から突出するように形成されている。突起部530は、るつぼ回収治具5をモールド部材4の開口部42に設置したときに、るつぼ回収治具5の位置決め(帯状の形状の長手方向での位置決め)に用いる。
【0040】
るつぼ回収治具5は、モールド部材4の開口部42(及びるつぼ廃棄装置6の開口部60)の上方に配される。すなわち、るつぼ回収治具5は、本体部50がモールド部材4の開口部42及びるつぼ廃棄装置6の開口部60を略閉塞した状態で配される。
【0041】
るつぼ廃棄装置6は、モールド部材4と炉7との間に設けられ、図11に斜視図で示すように、上方に開口部60が形成された略槽状を有する部材である。開口部60は、上部押さえ板21が切欠き203に挿入されていない非規制状態で、その上方でフォーク20を傾斜したときに、落下したるつぼ8が入る位置及び形状に形成されている。
るつぼ廃棄装置6は、それ自体が移動可能な車輪を備えている。この車輪により、るつぼ廃棄装置6は、前後方向,幅方向に移動可能となっている。
【0042】
炉7は、るつぼ8を加熱して、内容物を溶融する加熱炉である。炉7は、側面に方形状の開口部70が開口している。この開口部70は、フォーク2に支持された状態でるつぼ8の通過が可能な大きさで形成されている。炉7は、従来の加熱炉である。
るつぼ8は、従来のるつぼである。るつぼ8は、上面の全面が開口した略槽状の形状を有する。るつぼ8は、上方が拡径した円形の外周形状(すなわち、全体として下部が縮径した円筒形状)を有する。
【0043】
[動作]
本形態の傾注装置1は、以下のように動作する。
【0044】
(炉からの取り出し及び内容物の傾注)
図1に示すように、炉7内には、幅方向及び前後方向に、複数のるつぼ8が配列している。複数のるつぼ8は、幅方向の間隔は、フォーク20の空隙200に対応した間隔で配列している。また、複数のるつぼ8の前後方向の間隔は、ハンドルプレート242の複数の切欠き244の間隔に対応した距離である。
本形態の傾注装置1を、炉7の開口部70の後方の所定の位置に、配置(設置)する。炉7は、内部が加熱され、複数のるつぼ8の内容物が溶融する(溶融した金属となっている)。
【0045】
このとき、移動量調整機構24の1対のハンドルプレート242,242は、図12に部分拡大図で示すように、複数の切欠き244のうち、最も後方側の切欠き244にシャフト245が係合している。上部押さえ板21は、切欠き203に挿入されていない。
【0046】
アーム移動装置3の前後方向往復動機構31は、前後方向で最後方にアーム装置2を位置させている。このとき、前方側の第1ストッパ246は、突出高さが高く、位置決めストッパ32に当接している。また、上下方向往復動機構33は、アーム装置2を、フォーク20が炉7の内底面に略一致する位置に配している。
そして、前後方向往復動機構31により、本体部30に支持されたアーム装置2を前方に移動する。アーム装置2が前方に移動すると、アーム装置2の前端部(例えば、フォーク20)が炉7の内部に挿入される。
【0047】
アーム装置2が更に前方に移動すると、位置決めストッパ32が後方側の第2ストッパ247に当たり、アーム装置2が更に前方に移動することが停止する。この位置では、フォーク20の空隙200のそれぞれの内部に、炉7内に配列したるつぼ8のうち最後方で幅方向に配列した複数のるつぼ8が位置した状態となる。
【0048】
次に、上下方向往復動機構33を動作して、アーム装置2を上方に移動する。アーム装置2が上方に移動すると、フォーク20も上方に移動する。そうすると、フォーク20の歯部201がるつぼ8の外周面に当接し、隣接する2つの歯部201,201がるつぼ8の外周面を両側から支持する。更に所定量上方に移動すると、るつぼ8が炉7の内底面から浮き上がる。上下方向往復動機構33は、アーム装置2をこの位置に保持する。
【0049】
その後、前後方向往復動機構31により、本体部30に支持されたアーム装置2を後方に移動する。アーム装置2が後方に移動すると、アーム装置2の前端部(例えば、フォーク20)が炉7の開口部70から外部に移動し、るつぼ8が取り出される。
【0050】
アーム装置2が更に後方に移動すると、るつぼ廃棄装置6及びモールド部材4の上方を移動する。そして、位置決めストッパ32が前方側の第1ストッパ246に当たり、アーム装置2が更に後方に移動することが停止する。この位置は、モールド部材4のモールド40のうち、最後方で幅方向に配列したモールド40の注入孔41に、るつぼ8の内容物を注入可能な位置である。
【0051】
それから、押さえレバー212を前方に押す。押さえレバー212とともにピン211が前方に移動する。そうすると、ピン211は、それが挿入しているピン挿入孔210を前方に押し、上部押さえ板21を前方に押し、移動させる。前方に移動した上部押さえ板21は、支持板202の切欠き203に挿入され、この状態で保持される。このとき、上部押さえ板21は、フォーク20に支持されたるつぼ8の上部に位置することとなり、るつぼ8がそれ以上に上方に変位することが規制された規制状態となる。
【0052】
そして、傾斜レバー220を前方に押し、フォーク20を揺動する。傾斜レバー220を前方に押すと、リンク221を介して支持板202の上端部を前方に押す。押された支持板202は、揺動中心を回転中心として回転し、フォーク20の前端が下方側に回転する。このとき、るつぼ8は、図13に斜視図で示すように、フォーク20と上部押さえ板21とで上下方向で挟持されており、フォーク20の回転に連動して回転する。この回転は、図14に側面図で示すように、るつぼ8の軸方向が水平方向を向くまで行う。この回転により、るつぼ8の内容物は、るつぼ8の上部の開口部から流れ落ちる。流れ落ちた内容物は、モールド部材4のモールド40の注入孔41に流入する。
以上により、本形態の傾注装置1は、るつぼ8の内容物をモールド40の注入孔41に傾注することができる。
【0053】
(るつぼの回収)
るつぼ8の内容物が流下したら、傾斜レバー220を後方に引く。傾斜レバー220を後方に引くと、リンク221を介して支持板202の上端部が後方に引かれる。引かれた支持板202は、揺動中心を回転中心として回転し、フォーク20の前端が上方側に向かって回転する。
【0054】
前後方向往復動機構31により、本体部30に支持されたアーム装置2を前方に移動する。このアーム装置2の移動は、アーム装置2の前端部のフォーク20が、モールド部材4の開口部42及びるつぼ廃棄装置6の開口部60の略上方に位置するまで行う。
【0055】
押さえレバー212を後方に引く。押さえレバー212とともにピン211が後方に移動する。そうすると、ピン211はそれが挿入しているピン挿入孔210を後方に引き、上部押さえ板21を後方に引いて移動させる。上部押さえ板21は、支持板202の切欠き203から抜き出され、この状態で保持される。このとき、上部押さえ板21は、フォーク20に支持されたるつぼ8の開口部を押さえておらず、るつぼ8の変位を規制しない非規制状態となっている。
【0056】
そして、傾斜レバー220を前方に押し、フォーク20を回転揺動する。このフォーク20の回転により、るつぼ8の軸方向が傾斜し、図15に側面図で示すように、傾斜角が大きくなると、るつぼ8は底部を回転中心として回転する。回転したるつぼ8は、その開口部にるつぼ回収治具5の突出棒51が挿入される。フォーク20から落下する。るつぼ8の落下は、底部を回転中心として回転する。回転したるつぼ8は、その開口部にるつぼ回収治具5の突出棒51が挿入される。そして、るつぼ8が更に回転すると、るつぼ8の内周面は、突出棒51の先端部に沿って落下する。フォーク20が回転してるつぼ8の開口部に突出棒51が挿入される状態を、図16図17に傾注装置1の斜視図で示した。
落下したるつぼ8は、その内部に突出棒51が挿入した状態で、るつぼ回収治具5の本体部50の上面50a上にるつぼ8の開口部が当接し、この状態でるつぼ回収治具5上にるつぼ8が支持される。
【0057】
その後、るつぼ回収治具5のハンドル52を操作し、るつぼ回収治具5を傾注装置1から取り外し所定の位置に移動する。るつぼ8を冷却(例えば、放冷)した後に、るつぼ8を回収する。回収したるつぼ8のうち良品のるつぼ8は、再利用に供する。
以上により、使用済みのるつぼ8が回収される。
【0058】
(るつぼの廃棄)
本形態の傾注装置1は、るつぼ8の回収が不要の場合、るつぼ8を廃棄することができる。るつぼ8の回収が不要な場合とは、例えば、るつぼ8に割れや欠け等の損傷が確認された場合や、るつぼ8で溶融される金属の組成が異なり分析結果に影響を及ぼす場合等の場合をあげることができる。換言すると、本形態の傾注装置1は、るつぼ8の回収が不要でない場合には、るつぼ8の回収・再利用を行うことができる。
【0059】
上記のるつぼ8の回収の時と同様に、つぼ8の内容物をモールド40の注入孔41に傾注することができる。このとき、るつぼ回収治具5のハンドル52を操作し、るつぼ回収治具5を傾注装置1から取り外す。そうすると、モールド部材4の開口部42が露出した状態となる。
【0060】
るつぼ8の内容物が流下し終わったら、上記のるつぼ8の回収の時と同様に、アーム装置2の前端部のフォーク20を、モールド部材4の開口部42及びるつぼ廃棄装置6の開口部50の略上方に位置するまで変位する。
【0061】
押さえレバー212を後方に引く。押さえレバー212とともにピン211が後方に移動する。そうすると、ピン211はそれが挿入しているピン挿入孔210を後方に引き、上部押さえ板21を後方に引いて移動させる。上部押さえ板21は、支持板202の切欠き203から抜き出され、この状態で保持される。このとき、上部押さえ板21は、フォーク20に支持されたるつぼ8の開口部を押さえておらず、るつぼ8の変位を規制しない非規制状態となっている。
【0062】
そして、傾斜レバー220を前方に押し、フォーク20を回転揺動する。このフォーク20の回転により、るつぼ8の軸方向が傾斜し、図15に側面図で示すように、傾斜角が大きくなると、るつぼ8はフォーク20から落下する。落下したるつぼ8は、モールド部材4の開口部42の内部に落下し、モールド部材4の貫通孔43を通ってるつぼ廃棄装置6の開口部60に落下する。そして、るつぼ廃棄装置6の内部に落下する。
以上により、使用済みのるつぼ8が廃棄される。
【0063】
(炉からの取り出し及び内容物の傾注)
次に、移動量調整機構24のハンドル部材241の後端のハンドルを持ち上げる。これにより、1対のハンドルプレート242,242が持ち上げられ(リニアブロック243を中心に1対のハンドルプレート242,242が持ち上げられ)、最も後方側の切欠き244がシャフト245に係合しなくなる。この状態で、ハンドル部材241を後方に移動する。移動量調整機構24は、シャフト240とリニアブロック243により、シャフト240の伸びる前後方向に沿って、後方に移動する。そして、所定量移動した後、移動量調整機構24のハンドル部材241を持ち上げた状態から下ろす。これにより、1対のハンドルプレート242,242は、複数の切欠き244のうち、最も後方側から1つ前方の切欠き244にシャフト245が係合する。この状態は、先の状態から、フォーク20が、るつぼ8の1つ分(前後方向で1列分)だけ前方に位置した状態である。
その後、上記と同様にるつぼ8の取り出しを行うことができる。
これらの操作を繰り返すと、炉7の内部に配列したるつぼ8の全ての取り出し、モールド40への傾注を行うことができる。
【0064】
[効果]
本形態の傾注装置1は、炉7内で幅方向に配列した複数のるつぼ8を取り出し、炉7の外部の所定の位置で複数のるつぼ8を傾けて内容物をモールド40の注入孔41に注ぐ傾注装置である。本形態の傾注装置1は、幅方向に配列した複数のるつぼ8の下部を支持するフォーク20と、フォーク20に支持されたるつぼ8の上部でるつぼ8の変位を規制する規制状態とるつぼ8の変位を規制しない非規制状態との間で変位する上部押さえ板21(るつぼ変位規制部)と、フォーク20を傾斜させる傾斜機構22と、を有するアーム装置2と、フォーク20が炉7の内部と所定の位置との間で変位するようにアーム装置2を移動するアーム移動装置3と、炉7の内部と外部を結ぶ内外方向で所定の位置と異なる位置に配置され、上方から落下するるつぼ8を受けて回収するるつぼ回収治具5と、を有する。そして、フォーク20が所定の位置にあり、かつ上部押さえ板21が規制状態のときに、傾斜機構22がフォーク20を傾斜してるつぼ8を傾けて内容物を注ぎ、フォーク20が前記した異なる位置にあり、上部押さえ板21が非規制状態のときに、傾斜機構22がフォーク20を傾斜してるつぼ8をフォーク20から落下させ、落下したるつぼ8をるつぼ回収治具5で受けて回収するものである。
【0065】
この構成によると、同時に複数の配列したるつぼ8を炉7の内部から取り出し、るつぼ8の内容物を注ぐことができ、内容物を注いだるつぼ8をるつぼ回収治具5で受けて回収することができる。本形態の傾注装置1によると、複数のるつぼ8を回収することで、るつぼ8を再利用に供することができる。
【0066】
本形態の傾注装置1は、るつぼ回収治具5が配置される異なる位置が、炉7の内部と外部を結ぶ内外方向でモールド40と炉7との間に設けられる。この構成によると、るつぼ8を炉7の内部から取り出し、るつぼ8の内容物をモールド40に注入し、るつぼ8を回収する一連の動作におけるアーム装置2(フォーク20)の移動量を最小限の移動量とすることができ、アーム装置2の操作(フォーク20の移動)のために要する作業者の負担を減らすことができる。
【0067】
本形態の傾注装置1は、るつぼ回収治具5が、幅方向に沿って伸びる本体部50と、本体部50の上面50aから突出して設けられるつぼ8の開口部に挿入される複数の突出棒51と、を有する。この構成によると、フォーク20から落下してくるるつぼ8を突出棒51で案内することとなり、るつぼ8を確実に支持することで回収できる。
【0068】
本形態の傾注装置1は、所定の位置の下方に、内容物が注入する複数の注入孔41が幅方向に配列して開口したモールド40を有する。この構成によると、幅方向に配列した複数のるつぼ8の内容物を、モールド40への注入を一度に行うことができる。つまり、より多くのるつぼ8の処理(取り出し~傾注)を行うことができる。
【0069】
本形態の傾注装置1は、モールド40が、幅方向に配列した複数の注入孔41が、炉7の内部と外部を結ぶ内外方向で複数列をなして設けられている。この構成によると、幅方向に配列した複数のるつぼ8が、前後方向にも配列していても、内容物の取り出し(モールド40への注入)を行うことができる。つまり、より多くのるつぼ8の処理(取り出し~傾注)を行うことができる。
【0070】
本形態の傾注装置1は、アーム移動装置3が、フォーク20が炉7の内部に位置する挿入位置と、炉7の外部に位置する取り出し位置と、の間でアーム装置2を移動させ、アーム装置2が、所定の位置、及び他の位置のそれぞれの位置にるつぼ8を位置決めする位置決め手段としてのハンドルプレート242の切欠き244とシャフト245とを有する。この構成によると、前後方向に配列したるつぼ8に対応した位置決めを確実に行うことができる。
【0071】
本形態の傾注装置1は、炉7の内部と外部を結ぶ内外方向でモールド部材4のモールド40と異なる位置に設けられ、上部押さえ板21が非規制状態でフォーク20を傾斜したときに落下するるつぼ8を回収するるつぼ廃棄装置6を有する。この構成によると、使用済みのるつぼ(廃棄品)を集め、廃棄できる。
【0072】
本形態の傾注装置1は、同時に複数の配列したるつぼ8を炉7の内部から取り出し、複数のるつぼ8の内容物をモールド40に流入させることができる。また、内容物をモールド40に傾注した後のるつぼ8は、るつぼ回収治具5に落下させて回収することができる。すなわち、本形態の傾注装置1は、炉7内に配列したるつぼ8を取り出し、内容物をモールド40に注入し、るつぼ8の回収を1つの装置で行うことができる。この結果、本形態の傾注装置1によると、作業者の負担を大きく減らすことができるとともに、作業者の熟練度によらず、安全に複数のるつぼ8の内容物をモールド40に傾注し、使用後のるつぼ8を回収・再利用することができる。
【0073】
本発明の傾注装置1は、更に、モールド部材4が、モールド40を前後方向で複数有する。この構成によると、幅方向に配列した複数のるつぼ8が、前後方向にも配列していても、内容物の取り出し(モールド40への注入)を行った後にるつぼ回収治具5に落下させて回収することができる。つまり、より多くのるつぼ8の処理(取り出し~傾注~るつぼ8の回収)を行うことができる。
【0074】
[変形形態]
本形態の傾注装置1は、るつぼ回収治具5の構成が異なること以外は実施形態1と同様な構成の装置である。
本形態のるつぼ回収治具5は、図18に斜視図で示したとおり、ハンドル52がフランジ部53に着脱可能に設置されている。それ以外の構成は実施形態1のるつぼ回収治具5と同様な構成である。
【0075】
フランジ部53には、本体部50の長手方向に突出した円筒状の外筒部530が形成されている。ハンドル52は、一方の先端部に外筒部530に嵌合可能な縮径部520が形成されている。外筒部530に嵌合した縮径部520は、図示しない固定手段で着脱可能に固定される。固定手段としては、例えば、縮径部520を雄ネジとし、外筒部530を雌ネジとして螺合する方法や、外筒部530を貫通して縮径部520に先端をピン留めする方法、をあげることができる。
本形態によると、実施形態1と同様な効果を発揮できる。
【0076】
さらに、本形態ではハンドル52が着脱可能となることで、フォーク20の操作等のときにハンドル52が作業者の操作を阻害しなくなる。また、るつぼ回収治具5を操作するときだけハンドル52を組み付けることが可能となり、ハンドル52が炉7からの熱を受けることを抑えることができる。つまり、ハンドル52の過熱が抑えられる。
【0077】
[実施形態2]
本形態の傾注装置1は、るつぼ回収治具の形状が異なること以外は実施形態1と同様な構成の装置である。
本形態のるつぼ回収治具9は、図19に斜視図で示したように、本体部90、外周支持部91、ハンドル92、を有する。
本体部90は、実施形態1のるつぼ回収治具5の本体部50と同様な構成である。本体部90は、長手方向の一方の端部に上方に伸びるフランジ部93を有する。
【0078】
外周支持部91は、帯状の板状の支持本体部910と、支持本体部910と本体部90との間隔を所定の間隔に保持する複数の柱部911と、を有する。支持本体部910に開口する複数のるつぼ挿入孔912、を有する。
支持本体部910は、本体部90と略平行に沿って広がる。支持本体部910は、本体部90と略一致する形状を有している。
柱部911は、本体部90と支持本体部910とを接続し、本体部90と支持本体部910との間隔を一定の間隔に保持する。柱部911は、本体部90の外周の周縁部に所定の間隔でもうけられている。
るつぼ挿入孔912は、るつぼ8の開口部の外径よりも大径の円形に開口した孔である。るつぼ挿入孔912は、その中心が、実施形態1のるつぼ回収治具5の突出棒51に対応する位置に設けられている。
ハンドル92は、実施形態1のるつぼ回収治具5のハンドル52と同様な構成である。ハンドル92は、フランジ部93に固定される。
【0079】
本形態によると、実施形態1と同様な効果を発揮できる。
さらに、本形態ではるつぼ回収治具9が、幅方向に沿って伸びる本体部90と、本体部90の上部に設けられるつぼ8の開口部が挿入されるるつぼ挿入孔912を区画する外周支持部91と、を有する。本形態のるつぼ回収治具9は、フォーク20から落下するるつぼ8が、その開口部がるつぼ挿入孔912に挿入される。すなわち、本形態のるつぼ回収治具9は、実施形態1のるつぼ回収治具5と同様に、落下してくるるつぼ8を回収できる。
【0080】
[実施形態3]
本形態の傾注装置1は、るつぼ回収治具の形状が異なること以外は実施形態2と同様な構成の装置である。
本形態のるつぼ回収治具9は、図20に示したように、本体部90、ハンドル92、壁部94、を有する。図20は斜視図でるつぼ回収治具9を示した。
本体部90は、実施形態2のるつぼ回収治具9の本体部90と同様な構成である。本体部90は、長手方向の一方の端部に上方に伸びるフランジ部93を有する。
【0081】
壁部94は、本体部90の外周の端部から上方に立設する。本形態の壁部94は、本体部90の外周形状に沿った方形の筒状を有する。壁部94の立設高さは限定されないが実施形態2の柱部911と同じ高さとすることが好ましい。壁部94は、本体部90の端部の全周に形成されているが、部分的に切れた構成であってもよい。また、壁部94のうち、長手方向の一方の端部側はフランジ部93により形成される。
本形態によると、実施形態2と同様な効果を発揮できる。
【0082】
さらに、本形態ではるつぼ回収治具9が、幅方向に沿って伸びる本体部90と、本体部90の外周の端部から立設する壁部94と、を有する。本形態のるつぼ回収治具9は、本体部90と壁部94(フランジ部93)とで、上部が開口した槽状の形状を形成している。本形態のるつぼ回収治具9は、フォーク20から落下するるつぼ8が、この槽状の形状の内部に落下する。すなわち、本形態のるつぼ回収治具9は、実施形態2のるつぼ回収治具5と同様に、落下してくるるつぼ8を回収できる。
【0083】
[実施形態4]
本形態の傾注装置1は、るつぼ回収治具5の形状が異なること以外は実施形態1と同様な構成の装置である。
本形態のるつぼ回収治具5は、図21図23に示したように、本体部50、突出棒51、ハンドル52、傾斜部54を有する。図21は斜視図で、図22は上面図で、図23は側面図で、るつぼ回収治具5をそれぞれ示した。
【0084】
本体部50は、長手方向が幅方向にそって伸びる帯状の板状を有する。本体部50の長手方向に垂直な方向(前後方向)の長さは、るつぼ8の開口部の外径よりも短い。本体部50は、上面50aが上方(好ましくは鉛直方向上方)を向いて配置されている。本体部50の長手方向の長さは、フォーク20からのるつぼ8を回収(支持)可能な長さである。本体部50は、長手方向の一方の端部に上方に伸びるフランジ部53を有する。
【0085】
本体部50の長手方向に垂直な方向(前後方向)の両側には、それぞれ傾斜部54が一体に設けられている。傾斜部54は、前後方向の端部のうち本体部50に接続しない端部が本体部50よりも上方に位置する。傾斜部54は、本体部50から斜め上方に向かって傾斜した帯状の板状を有する。
【0086】
突出棒51は、本体部50の上面50aから上方(好ましくは鉛直上方)に突出する複数の棒状の部材である。突出棒51は、フォーク20の空隙200の中心に対応する位置にそれぞれ設けられている。空隙200の中心に対応する位置とは、フォーク20を本体部50の上方に配置したときに、るつぼ8の開口部の中心に対応する位置である。
【0087】
ハンドル52は、フランジ部53に固定され、本体部50から離反する方向に伸びる棒状の部材である。ハンドル52は、るつぼ回収治具5を操作するための部材である。ハンドル52は、手動又は自動(機械)で操作する。本形態のハンドル52は、幅方向に沿って伸びる棒状(円柱状)の部材である。
本形態によると、実施形態1と同様な効果を発揮できる。
【0088】
さらに、本形態ではるつぼ回収治具5が、前後方向の両側に傾斜部54を有する。本形態のるつぼ回収治具5は、フォーク20から落下するるつぼ8が、その開口部に突出棒51が挿入される。そして、るつぼ回収治具5に落下したるつぼ8は、開口部が傾斜部54にのった状態で支持(保持)される。この構成では、るつぼ8の開口部がるつぼ回収治具5の本体部50と全周で当接しない。るつぼ8に残留していた内容物(モールド40に傾注した後のるつぼ8の中に残留した内容物)が流下しても、るつぼ8の内周面(及び開口部)に留まることなくるつぼ回収治具5に流下することができる。そして、るつぼ回収治具5に流下した内容物は、るつぼ8を回収した後に回収することができる。例えば、内容物が貴金属等の有価金属の場合には、当該有価金属を無駄なく回収できる。
【0089】
[変形形態]
実施形態4では、本体部50及び傾斜部54によりるつぼ8の内容物を回収しているが、この構成に限定されない。
例えば、本体部50に、凹部を形成しておき、当該凹部に内容物を流下させることができる。
【符号の説明】
【0090】
1:傾注装置、
2:アーム装置、20:フォーク、21:上部押さえ板、22:傾斜機構、23:本体部、24:移動量調整機構、
3:アーム移動装置、30:本体部、31:前後方向往復動機構、32:ストッパ、33:上下方向往復動機構、
4:モールド部材、40:モールド、
5:るつぼ回収治具、50:本体部、51:突出棒、52:ハンドル、53:フランジ部、54:傾斜部、
6:るつぼ廃棄装置、
7:炉、
8:るつぼ、
9:るつぼ回収治具、90:本体部、91:外周支持部、92:ハンドル、93:フランジ部、94:壁部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23