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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145339
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ダンパー装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/14 20060101AFI20220926BHJP
   F16F 9/19 20060101ALI20220926BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
F16F9/14 A
F16F9/19
F16F9/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046702
(22)【出願日】2021-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】519184930
【氏名又は名称】株式会社ソミックマネージメントホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】中屋 一正
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA41
3J069AA50
3J069DD50
3J069EE01
(57)【要約】
【課題】外形形状を小型化および単純化して設置場所のバリエーションを増やすことができるダンパー装置を提供する。
【解決手段】ダンパー装置100は、ロータリダンパで構成されておりハウジング101を構成するハウジング本体102に補償装置収容部110が形成されている。補償装置収容部110は、ハウジング本体102の内部に形成された有底円筒状の作動液収容部103の軸方向に沿って延びる有底円筒状に形成されている。この補償装置収容部110は、ハウジング本体102上に張り出して外部に露出する外気面112と作動液収容部103内に張り出す作動液面113をそれぞれ有して構成されている。この場合、補償装置収容部110は、作動液収容部103内を仕切る4つの個室R1~個室R4のうちの個室R1および個室R4の各個室内において固定ベーン104と収容部壁面103bとの間に跨った状態でそれぞれ形成されている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体からなる作動液を液密的に収容する作動液収容部と、
前記作動液収容部内で前記作動液を押しながら摺動する作動液押圧体と、
前記作動液収容部内の前記作動液の体積変化を補償する体積変化補償装置を収容する補償装置収容部とを備えて前記作動液押圧体に入力される力を前記作動液を流動させることで減衰するダンパー装置において、
前記補償装置収容部は、
一部が外気に接触する外気面と、
他の一部が前記作動液収容部内の前記作動液に接触する作動液面とを有していることを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
請求項1に記載したダンパー装置において、
前記補償装置収容部は、
前記外気面の表面積が前記作動液面の表面積よりも大きいことを特徴とするダンパー装置。
【請求項3】
請求項1に記載したダンパー装置において、
前記補償装置収容部は、
前記作動液面の表面積が前記外気面の表面積よりも大きいことを特徴とするダンパー装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したダンパー装置において、
円筒状に形成された前記作動液収容部を有するとともに同作動液収容部内に径方向に沿う壁状に形成されて同作動液収容部内を仕切って前記作動液の周方向の流動を妨げる固定ベーンを有したハウジングと、
軸体の外周部に前記作動液収容部内を仕切りつつ前記作動液を押しながら回動する可動ベーンを有したロータとを備えたロータリダンパで構成されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項5】
請求項4に記載したダンパー装置において、
前記補償装置収容部は、
前記ハウジングに形成されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項6】
請求項5に記載したダンパー装置において、
前記作動液収容部は、
一方が開口するとともに他方に底部を有する有底円筒状に形成されるとともに同開口する部分が蓋体によって閉塞されており、
前記補償装置収容部は、
前記蓋体とは反対側に前記体積変化補償装置を出し入れするための開口部を有していることを特徴とするダンパー装置。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載したダンパー装置において、
前記補償装置収容部は、
前記固定ベーンの両側に張り出して形成されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項8】
請求項4ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載したダンパー装置において、
前記ハウジングは、
前記作動液収容部内が少なくとも2つの個室に仕切られており、
前記補償装置収容部は、
前記少なくとも2つに仕切られた前記個室のうちの相対的に常に低圧となる前記個室に連通して形成されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項9】
請求項4ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載したダンパー装置において、
前記補償装置収容部は、
同補償装置収容部が連通する個室に隣接する位置に形成されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項10】
請求項4ないし請求項9のうちのいずれか1つに記載したダンパー装置において、
前記作動液収容部は、
一方が開口するとともに他方に底部を有する有底円筒状に形成されるとともに同開口する部分が蓋体によって閉塞されており、
前記補償装置収容部は、
前記作動液収容部との間で前記作動液を流通させるための連通流通孔が前記作動液収容部における前記開口する側に開口していることを特徴とするダンパー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を液密的に収容する作動液収容部に接続されて前記液体の体積変化を補償する体積変化補償装置を備えたダンパー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、四輪または二輪の自走式車両または産業用機械器具においては、回動機構において運動エネルギの減衰装置としてロータリダンパが用いられている。例えば、下記特許文献1には、作動油室が形成されたハウジングの外表面に作動油室内の作動油の温度変化による体積変化を補償するために体積変化補償装置としての温度補償機構を備えたロータリダンパが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-82593号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたロータリダンパにおいては、体積変化補償装置としての温度補償機構がハウジングの外表面上に張り出して設けられているため、ロータリダンパが大型化および外形形状が複雑化して設置場所が限定されるという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、外形形状を小型化および単純化して設置場所のバリエーションを増やすことができるダンパー装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、液体からなる作動液を液密的に収容する作動液収容部と、作動液収容部内で作動液を押しながら摺動する作動液押圧体と、作動液収容部内の作動液の体積変化を補償する体積変化補償装置を収容する補償装置収容部とを備えて作動液押圧体に入力される力を作動液を流動させることで減衰するダンパー装置において、補償装置収容部は、一部が外気に接触する外気面と、他の一部が作動液収容部内の作動液に接触する作動液面とを有していることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、ダンパー装置は、体積変化補償装置を収容する補償装置収容部における一部が外気に接触する外気面および他の一部が作動液収容部内の作動液に接触する作動液面をそれぞれ有して構成されている。すなわち、ダンパー装置は、補償装置収容部の一部が外気に面しつつ他の一部が作動液収容部の内部に面するまたは入り込んで形成されているため、ダンパー装置の外表面における補償装置収容部の張り出し量を抑えることができ、ダンパー装置の外形形状を小型化および単純化して設置場所のバリエーションを増やすことができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記ダンパー装置において、補償装置収容部は、外気面の表面積が作動液面の表面積よりも大きいことにある。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ダンパー装置は、補償装置収容部における外気面の表面積が作動液面の表面積よりも大きいため、作動液収容部内への補償装置収容部の入り込み量を抑えて作動液収容部の容量の減少を抑えることができる。また、ダンパー装置は、ロータリダンパで構成されている多場合には、作動液押圧体の摺動量の減少を抑えることができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記ダンパー装置において、補償装置収容部は、作動液面の表面積が外気面の表面積よりも大きいことにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ダンパー装置は、補償装置収容部における作動液面の表面積が外気面の表面積よりも大きいため、ダンパー装置の外表面における補償装置収容部の張り出し量を抑えてダンパー装置の外形形状を小型化および単純化して設置場所のバリエーションを増やすことができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記ダンパー装置において、円筒状に形成された作動液収容部を有するとともに同作動液収容部内に径方向に沿う壁状に形成されて同作動液収容部内を仕切って作動液の周方向の流動を妨げる固定ベーンを有したハウジングと、軸体の外周部に作動液収容部内を仕切りつつ作動液を押しながら回動する可動ベーンを有したロータとを備えたロータリダンパで構成されていることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ダンパー装置は、円筒状に形成された作動液収容部を有するとともに同作動液収容部内に径方向に沿う壁状に形成されて同作動液収容部内を仕切って作動液の周方向の流動を妨げる固定ベーンを有したハウジングと、軸体の外周部に作動液収容部内を仕切りつつ作動液を押しながら回動する可動ベーンを有したロータとを備えたロータリダンパで作動液の体積変化を補償することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記ダンパー装置において、補償装置収容部は、ハウジングに形成されていることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ダンパー装置は、補償装置収容部がハウジングに形成されているため、大きさの大きな補償装置収容部をハウジングの形状に沿って大きく張り出させることなく形成することができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記ダンパー装置において、作動液収容部は、一方が開口するとともに他方に底部を有する有底円筒状に形成されるとともに同開口する部分が蓋体によって閉塞されており、補償装置収容部は、蓋体とは反対側に体積変化補償装置を出し入れするための開口部を有していることにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ダンパー装置は、補償装置収容部が蓋体とは反対側に体積変化補償装置を出し入れするための開口部を有しているため、蓋体の反対側から体積変化補償装置を出し入れすることができ、蓋体に対して補償装置収容部を密着して形成してダンパー装置の外形形状を小型化および単純化して設置場所のバリエーションを増やすことができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記ダンパー装置において、補償装置収容部は、固定ベーンの両側に張り出して形成されていることにある。
【0019】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ダンパー装置は、補償装置収容部が固定ベーンの両側に張り出して形成されているため、補償装置収容部および固定ベーンが相互にお互い補強して剛性を高めることができる。
【0020】
また、本発明の他の特徴は、前記ダンパー装置において、ハウジングは、作動液収容部内が少なくとも2つの個室に仕切られており、補償装置収容部は、少なくとも2つに仕切られた個室のうちの相対的に常に低圧となる個室に連通して形成されていることにある。
【0021】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ダンパー装置は、補償装置収容部が少なくとも2つ形成された個室のうちの相対的に常に低圧となる個室に連通して形成されているため、相対的に高圧となる個室の圧力が体積変化補償装置に吸収されて同個室の圧力が上がり難くなるという不都合を回避することができる。
【0022】
また、本発明の他の特徴は、前記ダンパー装置において、補償装置収容部は、同補償装置収容部が連通する個室に隣接する位置に形成されていることにある。
【0023】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ダンパー装置は、補償装置収容部がこの補償装置収容部が連通する個室に隣接する位置に形成されているため、ダンパー装置の外形形状を小型化および単純化して設置場所のバリエーションを増やすことができる。
【0024】
また、本発明の他の特徴は、前記ダンパー装置において、作動液収容部は、一方が開口するとともに他方に底部を有する有底円筒状に形成されるとともに同開口する部分が蓋体によって閉塞されており、補償装置収容部は、作動液収容部との間で作動液を流通させるための連通流通孔が作動液収容部における開口する側に開口していることにある。
【0025】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ダンパー装置は、補償装置収容部は作動液収容部との間で作動液を流通させるための連通流通孔を有するとともにこの連通流通孔は作動液収容部における開口する側に開口しているため、作動液収容部の開口部を介して連通流通孔を容易かつ精度よく成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るダンパー装置の全体構成を蓋体側から見た斜視図である。
図2図1に示すダンパー装置の外観構成をハウジング本体側から見た斜視図である。
図3図1に示すダンパー装置の内部構造を示す縦断面図である。
図4図1に示すダンパー装置の内部構造を示す横断面図である。
図5図1に示すハウジング本体の全体構成を示す斜視図である。
図6図4に示すダンパー装置のロータが反時計回りに回動した作動状態を説明するためにダンパー装置の横断面の構造を模式的に示した説明図である。
図7図4に示すダンパー装置のロータが時計回りに回動した作動状態を説明するためにダンパー装置の横断面の構造を模式的に示した説明図である。
図8】本発明の変形例に係るダンパー装置の内部構造を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るダンパー装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るダンパー装置100の全体構成を蓋体側から見た斜視図である。また、図2は、図1に示すダンパー装置100の外観構成をハウジング本体側から見た斜視図である。また、図3は、図1に示すダンパー装置100の内部構造を示す横断面図である。また、図4は、図1に示すダンパー装置100の内部構造を示す縦断面図である。
【0028】
なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している部分がある。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。このダンパー装置100は、二輪の自走式車両(バイク)の後輪を上下動可能に支持するスイングアームの基端部に取り付けられて後輪の上下動時に運動エネルギを減衰させる減衰装置である。
【0029】
(ダンパー装置100の構成)
ダンパー装置100は、ハウジング101を備えている。ハウジング101は、後述するロータ140を回転自在に保持しつつダンパー装置100の筐体を構成する部品であり、アルミニウム材、鉄材、亜鉛材、またはポリアミド樹脂などの各種樹脂材によって構成されている。具体的には、ハウジング101は、主として、ハウジング本体102と蓋体130とで構成されている。
【0030】
ハウジング本体102は、体積変化補償装置120、ロータ140の可動ベーン145,146および作動液160をそれぞれ収容するとともにロータ140の軸体141の一方の端部を回転自在に支持する部品であり、筒体における一方端が大きく開口するとともに他方端が小さく開口する有底円筒状に形成されている。より具体的には、ハウジング本体102は、前記筒体における一方の端部がフランジ状に張り出した蓋体取付部102aが形成されるとともにこの蓋体取付部102aの内側に円筒状の作動液収容部103が大きく開口して形成されている。
【0031】
一方、ハウジング本体102における他方の端部には、作動液収容部103の底部103aに連通した状態でロータ支持部107が形成されている。また、ハウジング本体102の外表面には、エア抜き孔108a,108bおよび補償装置収容部110がそれぞれ形成されている。
【0032】
作動液収容部103は、図4および図5にそれぞれ示すように、ロータ140の可動ベーン145,146とともに作動液160を液密的に収容する空間であり、ハウジング本体102内に中央部に配置されたロータ140を介して互いに対向する2つの半円筒の空間で構成されている。これらの作動液収容部103内には、固定ベーン104,105がハウジング本体102と一体的にそれぞれ形成されている。
【0033】
固定ベーン104,105は、ロータ140とともに作動液収容部103内を仕切って個室R1~個室R4を形成する壁状の部分であり、ハウジング本体102の軸線方向に沿って収容部壁面103bから内側に向かって凸状に張り出して形成されている。この場合、2つの固定ベーン104,105は、収容部壁面103bの内周面における周方向上での互いに対向する位置に設けられている。これらの各固定ベーン104,105は、後述する蓋体130およびロータ140の軸体141にそれぞれ対向する先端部分がそれぞれ凹状に凹む溝状に形成されており、これらの各溝内にシール体106が嵌め込まれている。
【0034】
シール体106は、作動液収容部103内に形成される個室R1~個室R4の液密性を確保するための部品であり、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムまたはフッ素ゴムなどの各種ゴム材などの弾性材料を側面視でL字状に形成して構成されている。このシール体106は、蓋体130の内側面およびロータ140の軸体141の外周面にそれぞれ摺動自在な状態で密着するように固定ベーン104,105の各先端部から張り出して取り付けられている。
【0035】
ロータ支持部107は、ロータ140の軸体141における一方の端部を回転自在な状態で支持する円筒状の部分である。このロータ支持部107は、ベアリングおよびパッキンなどのシール材を介してロータ140の軸体141を液密的に支持している。
【0036】
エア抜き孔108a,108bは、個室R1,個室R4にそれぞれ個別に連通しており、個室R1,個室R4内の各空気を抜く際に使用する貫通孔である。これらの各エア抜き孔108a,108bは、プラグによって着脱自在に塞がれている。
【0037】
補償装置収容部110は、体積変化補償装置120を収容する部分であり、ハウジング本体102の外表面上に露出した状態でハウジング本体102と一体的に形成されている。この補償装置収容部110は、外気面112および作動液面113をそれぞれ有してハウジング本体102の軸線方向に沿って延びる有底円筒状に形成されている。この場合、補償装置収容部110は、ロータ支持部107側に開口部111が形成されて外部に向かって開口するとともに蓋体取付部102a側が蓋体取付部102aの一部によって閉塞されている。開口部111は、体積変化補償装置120を出し入れする部分であり、プラグ123によって閉塞される。
【0038】
外気面112は、ハウジング本体102の外表面から露出している補償装置収容部110の外表面である。一方、作動液面113は、作動液収容部103の内部に露出している補償装置収容部110の外表面である。すなわち、補償装置収容部110は、外表面の一部が外気面112を介してハウジング本体102の外表面に張り出した状態で露出するとともに、外表面の他の一部が作動液面113を介して作動液収容部103の内部に張り出した状態で形成されている。本実施形態においては、補償装置収容部110は、内径の半分程度の深さまで作動液収容部103の内部に張り込むように形成されている。これにより、補償装置収容部110は、外気面112の表面積が作動液面113の表面積よりも大きく形成されている。
【0039】
この場合、補償装置収容部110は、作動液収容部103内に形成された固定ベーン104の両壁面から作動液収容部103内の周方向にそれぞれ扇状に張り出すように形成されている。すなわち、補償装置収容部110は、作動液収容部103内を仕切る4つの個室R1~個室R4のうちの個室R1および個室R4の各個室内において固定ベーン104と収容部壁面103bとの間に跨った状態でそれぞれ形成されている。また、補償装置収容部110は、作動液収容部103に連通して連通流通孔114が形成されている。
【0040】
連通流通孔114は、作動液収容部103と補償装置収容部110との間で作動液160を双方向に流通させる部分であり、貫通孔によって構成されている。この連通流通孔114は、補償装置収容部110の底部と作動液収容部103との間に形成されている。この場合、連通流通孔114は、4つの個室R1~個室R4のうちの常時低圧となる個室、本実施形態においては個室R1に連通した状態で形成されている。
【0041】
体積変化補償装置120は、作動液収容部103内の作動液160の温度変化による膨張または収縮による体積変化を補償するための機具である。具体的には、体積変化補償装置120は、主として、シリンダ、ピストン121、押圧弾性体122およびプラグ123によって構成されている。シリンダは、作動液160、ピストン121、押圧弾性体122およびプラグ123をそれぞれ収容する部分であり、前記した補償装置収容部110である。
【0042】
ピストン121は、シリンダ(補償装置収容部110)内において連通流通孔114を介して導かれる作動液160を収容する空間を形成するための部品であり、シリンダ内を軸方向に液密的に摺動する円柱状に形成されている。このピストン121は、連通流通孔114側の面がシリンダ内を塞ぐ大きさの平坦な円板状に形成されるとともにこの連通流通孔114とは反対側が棒状に延びてプラグ123に摺動自在に嵌合している。
【0043】
押圧弾性体122は、ピストン121とプラグ123との間に設けられてピストン121を連通流通孔114側に弾性的に押圧するコイルスプリングである。プラグ123は、押圧弾性体122の反力を受け止める部品であり、シリンダ(補償装置収容部110)の端部にネジ嵌合している。すなわち、体積変化補償装置120は、ハウジング本体102に対して一体的に組み付けられている。
【0044】
蓋体130は、ハウジング本体102に形成されている作動液収容部103を液密的に塞ぐための部品であり、主として、蓋体本体131とロータ支持部133とで構成されている。蓋体本体131は、作動液収容部103を液密的に塞ぐ部分であり、蓋体取付部102aに対応する板状に形成されている。この蓋体本体131には、調整ニードル132a,132bがそれぞれ形成されている。
【0045】
調整ニードル132aは、蓋体本体131の内部に形成されて作動液収容部103内における個室R1と個室R2とを互いに連通させて作動液160を互いに流通させるとともに個室R1および個室R2をそれぞれ外部に連通させるバイパス流路(図示せず)を外部に対して密閉するとともに流通する作動液160の流量を調整するための部品である。この調整ニードル132aは、ドライバなどの工具(図示せず)を使って回動させることにより作動液160の流通量を増減することができる。
【0046】
調整ニードル132bは、蓋体本体131の内部に形成されて作動液収容部103内における個室R1と個室R3とを互いに連通させて作動液160を互いに流通させるとともに個室R1および個室R3をそれぞれ外部に連通させるバイパス流路(図示せず)を外部に対して密閉するとともに流通する作動液160の流量を調整するための部品である。この調整ニードル132bは、ドライバなどの工具(図示せず)を使って回動させることにより作動液160の流通量を増減することができる。なお、図1および図3においては、調整ニードル132a,132bが内蔵される蓋体本体131の筒状部に符号を付している。
【0047】
ロータ支持部133は、ロータ140の軸体141における他方の端部を回転自在な状態で支持する円筒状の部分である。このロータ支持部133は、ベアリングおよびパッキンなどのシール材を介してロータ140の軸体141の外周部を液密的に支持している。この蓋体130は、4つのボルト134によってハウジング本体102における作動液収容部103が開口する蓋体取付部102aに取り付けられている。
【0048】
ロータ140は、ハウジング101の作動液収容部103内に配置されて作動液収容部103内を4つの空間である個室R1、個室R2、個室R3および個室R4にそれぞれ仕切るとともに、この作動液収容部103内で回動することによりこれらの個室R1、個室R2、個室R3および個室R4の各個室の容積をそれぞれ増減させるための部品であり、主として、軸体141と可動ベーン145,146とで構成されている。
【0049】
軸体141は、可動ベーン145,146を支持する丸棒状の部分であり、アルミニウム材、鉄材、亜鉛材、またはポリアミド樹脂などの各種樹脂材によって構成されている。この軸体141は、両端部がそれぞれ筒状に形成されてハウジング本体102のロータ支持部107および蓋体130のロータ支持部133にそれぞれ回転摺動自在な状態で支持されている。また、軸体141の両端部のうちの一方(図3において上側)の端部には、ダンパー装置100が取り付けられる2つの部品間のうちの一方の部品に接続するための連結部142が軸方向に延びて形成されている。本実施形態においては、連結部142は、断面形状が六角形状の棒状に形成されている。
【0050】
また、この軸体141には、軸内双方向連通路143および軸内片方向連通路144がそれぞれ形成されている。軸内双方向連通路143は、可動ベーン145,146の一方への回動によって容積が同時に減少するとともに同可動ベーン145,146の他方への回動によって容積が同時に増加する2つの個室間で相互に作動液160の流通を可能とする通路である。本実施形態においては、軸内双方向連通路143は、可動ベーン145,146の図示反時計回りの回動によって容積が同時に増加するとともに図示時計回りの回動によって容積が同時に減少する個室R2と個室R4とが互いに連通するように軸体141を貫通した状態で形成されている。
【0051】
軸内片方向連通路144は、可動ベーン145,146の前記一方への回動によって容積が同時に増加するとともに同可動ベーン145,146の前記他方への回動によって容積が同時に減少する2つの個室間で一方から他方にのみ作動液160を流通させる通路である。本実施形態においては、軸内片方向連通路144は、可動ベーン145,146の図示反時計回りの回動によって容積が同時に減少するとともに図示時計回りの回動によって容積が同時に増加する個室R1と個室R3との間で軸体141を貫通した状態で形成されている。この場合、軸内片方向連通路144は、個室R1から個室R3にのみ作動液160が流通するように一方向弁を介して軸体141を貫通した状態で形成されている。
【0052】
可動ベーン145,146は、作動液収容部103内を複数の空間に仕切りつつこれらの各空間の容積を液密的にそれぞれ増減させるための部品であり、軸体141(作動液収容部103)の径方向に延びる板状体によってそれぞれ構成されている。この場合、これら2つの可動ベーン145,146は、軸体141を介して互いに反対方向(換言すれば仮想の同一平面上)に延びて形成されている。これらの可動ベーン145,146は、底部103a、収容部壁面103bおよび蓋体130の内側面にそれぞれ対向するC字状(またはコ字状)の先端部分がそれぞれ凹状に凹む溝状に形成されており、これらの各溝内にシール体147が嵌め込まれている。
【0053】
シール体147は、前記シール体106と同様に、作動液収容部103内に形成される個室R1~個室R4の液密性を確保するための部品であり、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムまたはフッ素ゴムなどの各種ゴム材などの弾性材料を側面視でC字状(またはコ字状)に形成して構成されている。このシール体147は、底部103a、収容部壁面103bおよび蓋体130の内側面にそれぞれ摺動自在な状態で密着するように可動ベーン145,146の各先端部から張り出して取り付けられている。
【0054】
これらにより、可動ベーン145,146は、前記固定ベーン104,105と協働して作動液収容部103内に互いに4つの空間である個室R1、個室R2、個室R3および個室R4を互いに液密的に形成する。より具体的には、作動液収容部103内には、固定ベーン104と可動ベーン145とで個室R1が形成され、可動ベーン145と固定ベーン105とで個室R2が形成され、固定ベーン105と可動ベーン146とで個室R3が形成され、可動ベーン146と固定ベーン104とで個室R4が形成される。すなわち、個室R1、個室R2、個室R3および個室R4は、作動液収容部103内において周方向に沿って順次隣接して形成されている。
【0055】
これらの可動ベーン145,146には、ベーン内双方向連通路151およびベーン内片方向連通路152がそれぞれ形成されている。ベーン内双方向連通路151は、軸内双方向連通路143によって連通される2つの連通個室としての個室R2および個室R4のうちの個室R2と、軸内片方向連通路144によって連通される2つの片側連通個室としての個室R1および個室R3のうちの個室R1とが互いに連通するように個室R1と個室R2とを仕切る可動ベーン145に形成されている。
【0056】
このベーン内双方向連通路151は、個室R1側から個室R2側に作動液160を流通させるとともに個室R2側から個室R1側に作動液160を制限しつつ流通させるように構成されている。具体的には、ベーン内双方向連通路151は、一方から他方にのみ流体の流動を許容する一方向弁と流動を制限しつつ双方向に流体の流動を許容する絞り弁とが並列配置されて構成されている。なお、流体の流動を制限しつつとは、一方向弁における流体(作動液160)の流れ易さに対して同一条件(例えば、圧力および作動液の粘度など)下において流体が流れ難いことを意味する。
【0057】
ベーン内片方向連通路152は、ベーン内双方向連通路151が連通していない個室R3と個室R4との間で個室R3側から個室R4側にのみ作動液160を制限しつつ流通させるように個室R3と個室R4とを仕切る可動ベーン146に形成されている。具体的には、ベーン内片方向連通路152は、個室R3側から個室R4側にのみ作動液160を流通させる一方向弁と、作動液160の流動を制限しつつ双方向に流体の流動を許容する絞り弁とが直列配置されて構成されている。
【0058】
これらの軸内双方向連通路143、軸内片方向連通路144、ベーン内双方向連通路151およびベーン内片方向連通路152によってダンパー装置100は、個室R1ないし個室R4間における作動液160の流動が制限されることでロータ140の回動に際して減衰力が発生する。すなわち、本実施形態に係るダンパー装置100は、回転運動時に減衰力を発生させるロータリダンパで構成されている。
【0059】
作動液160は、作動液収容部103を回動する可動ベーン145,146に対して抵抗を付与することによりダンパー装置100にダンパー機能を作用させるための物質であり、作動液収容部103内に満たされている。この作動液160は、ダンパー装置100の仕様に応じた粘性を有する流動性を有する液状、ジェル状または半固体状の物質で構成されている。この場合、作動液160の粘度は、ダンパー装置100の仕様に応じて適宜選定される。本実施形態においては、作動液160は、油、例えば、鉱物油またはシリコーンオイルなどによって構成されている。なお、図4においては、作動液160を破線円内に斜線ハッチングを描いて示している。
【0060】
(ダンパー装置100の作動)
次に、このように構成されたダンパー装置100の作動について説明する。このダンパー装置100は、相対的に回動する2つの器具間に取り付けられて回動時に減衰力を発生させる。例えば、ダンパー装置100は、自走式車両の走行時にスイングアームが上下動する際にスイングアームに対して減衰力を発生させる。
【0061】
具体的には、ダンパー装置100は、図6に示すように、スイングアームが下降した状態から自走式車両の後輪が段差などに乗り上げて上昇した場合にはロータ140が図示反時計回りに回動する。すなわち、ダンパー装置100は、可動ベーン145が固定ベーン104に向かって回動するとともに可動ベーン146が固定ベーン105に向かって回動する。
【0062】
この場合、ダンパー装置100は、軸内双方向連通路143、軸内片方向連通路144、ベーン内双方向連通路151およびベーン内片方向連通路152の作用によって個室R3のみが作動液160の流出が制限されて高圧状態となるため、後述する図示時計回り時の減衰力に比べて小さい減衰力を発生させながらロータ140が図示反時計回りに回動する。
【0063】
一方、ダンパー装置100は、図7に示すように、自走式車両の後輪が段差を乗り越えてスイングアームが上昇した状態から下降した場合にはロータ140が図示時計回りに回動する。すなわち、ダンパー装置100は、可動ベーン145が固定ベーン105に向かって回動するとともに可動ベーン146が固定ベーン104に向かって回動する。
【0064】
この場合、ダンパー装置100は、軸内双方向連通路143、軸内片方向連通路144、ベーン内双方向連通路151およびベーン内片方向連通路152の作用によって個室R2および個室R4が作動液160の流出が制限されてそれぞれ高圧状態となるため、前記した図示反時計回り時の減衰力に比べて大きな減衰力を発生させながらロータ140が図示時計回りに回動する。すなわち、体積変化補償装置120は、ロータ140の図示時計回りおよび反時計回りの両回動時において共に高圧状態となることなく低圧状態が維持される個室R1に連通されている。
【0065】
なお、図6および図7においては、ロータ140の回動方向を太い破線矢印で示すとともに、軸内双方向連通路143、軸内片方向連通路144、ベーン内双方向連通路151およびベーン内片方向連通路152における作動液160の各流通方向を細い破線矢印で示している。また、図6および図7においては、作動液160の圧力が他の個室に対して相対的に高い状態を濃いハッチングで示し、圧力が相対的に低い状態を薄いハッチングで示している。
【0066】
一方、体積変化補償装置120は、前記したロータ140の回動運動に拘らず作動液160の温度変化に基づく体積変化を補償する。具体的には、体積変化補償装置120は、ダンパー装置100内の作動液160の温度が低下した場合においては作動液160全体の体積が減少する。この場合、体積変化補償装置120は、シリンダ(補償装置収容部110)内の作動液160がピストン121に押されて連通流通孔114を介して個室R1に供給されることで作動液収容部103内の作動液160の体積減少が補償される。
【0067】
一方、作動液160の温度が上昇した場合においては、体積変化補償装置120は、ダンパー装置100の作動液160全体の体積が増加する。この場合、体積変化補償装置120は、作動液160の体積増加によってシリンダ(補償装置収容部110)内に個室R1内の作動液160が連通流通孔114を介して供給されることで作動液収容部103内の作動液160の体積増加が補償される。
【0068】
上記作動方法の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ダンパー装置100は、体積変化補償装置120を収容する補償装置収容部110における一部が外気に接触する外気面112および他の一部が作動液収容部103内の作動液160に接触する作動液面113をそれぞれ有して構成されている。すなわち、ダンパー装置100は、補償装置収容部110の一部が外気に面しつつ他の一部が作動液収容部103の内部に入り込んで形成されているため、ダンパー装置100の外表面における補償装置収容部110の張り出し量を抑えることができ、ダンパー装置100の外形形状を小型化および単純化して設置場所のバリエーションを増やすことができる。また、ダンパー装置100は、補償装置収容部110によって作動液収容部103が外部に面する表面積が増加することでロータ140の回動による作動液160の温度上昇を抑えることができる。
【0069】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、各変形例の説明においては、上記実施形態と同様の部分については同じ符号を付して重複する説明は省略する。
【0070】
例えば、上記実施形態においては、補償装置収容部110は、外気面112の表面積が作動液面113の表面積よりも大きく形成されている。これによりダンパー装置100は、作動液収容部103内への補償装置収容部110の入り込み量を抑えて作動液収容部103の容量の減少および可動ベーン145,146の回動摺動量の減少をそれぞれ抑えることができる。しかし、補償装置収容部110は、作動液面113の表面積を外気面112の表面積よりも大きく形成することもできる。これによれば、ダンパー装置100は、ハウジング本体102の外表面における補償装置収容部110の張り出し量を抑えてダンパー装置100の外形形状を小型化および単純化して設置場所のバリエーションを増やすことができる。
【0071】
また、上記実施形態においては、補償装置収容部110は、ハウジング本体102に形成されている。これにより、ダンパー装置100は、大きさの大きな補償装置収容部110をハウジング本体102の形状に沿って大きく張り出させることなく形成することができる。しかし、補償装置収容部110は、外気面112および作動液面113をそれぞれ備えて構成されていればよい。したがって、補償装置収容部110は、ハウジング本体102に代えてまたは加えて蓋体130に形成することもできる。
【0072】
また、上記実施形態においては、ダンパー装置100は、連通流通孔114が連通する個室R1に隣接する位置に補償装置収容部110を形成した。これにより、ダンパー装置100は、ダンパー装置100の外形形状を小型化および単純化して設置場所のバリエーションを増やすことができる。しかし、ダンパー装置100は、連通流通孔114が連通する個室R1以外の個室(例えば、個室R2または個室R3)に隣接する位置に補償装置収容部110を形成することもできる。この場合、連通流通孔114は、連通流通孔114が開口する個室と補償装置収容部110とを連通させるようにハウジング本体102内および/またはハウジング本体102外に延びて形成される。
【0073】
また、上記実施形態においては、連通流通孔114は、作動液収容部103における蓋体130が取り付けられる開口部側に向かって開口するように形成した。これにより、ダンパー装置100は、作動液収容部103の開口部を介して連通流通孔114を容易かつ精度よく成形することができる。しかし、連通流通孔114は、作動液収容部103内の作動液面113の円筒部に形成、すなわち、作動液面113上において作動液収容部103の周方向に向かって開口するように形成することもできる。
【0074】
また、上記実施形態においては、補償装置収容部110は、蓋体130とは反対側に体積変化補償装置120を出し入れするための開口部111を形成した。これにより、ダンパー装置100は、蓋体130の反対側から体積変化補償装置120を出し入れすることができ、蓋体130に対して補償装置収容部110を密着して形成してダンパー装置100の外形形状を小型化および単純化して設置場所のバリエーションを増やすことができる。しかし、補償装置収容部110は、蓋体130側に体積変化補償装置120を出し入れするための開口部111を形成することもできる。
【0075】
また、上記実施形態においては、補償装置収容部110は、固定ベーン104の両側にそれぞれ張り出して形成した。これにより、ダンパー装置100は、補償装置収容部110および固定ベーン104が相互にお互い補強して剛性を高めることができる。しかし、補償装置収容部110は、作動液収容部103内に面してまたは張り出して形成されていればよい。したがって、補償装置収容部110は、作動液収容部103内において固定ベーン104,105に対して離隔した位置の底部103aおよび/または収容部壁面103bに面してまたは張り出して形成することができる。
【0076】
また、補償装置収容部110は、ハウジング101の外表面上に張り出すことなくハウジング101の外形形状に滑らかに連続的に形成されてハウジング101の外部に面するように形成することもできる。また、補償装置収容部110は、例えば、図8に示すように、体積変化補償装置120の全体を作動液収容部103内に位置させるように形成することもできる。この場合、補償装置収容部110は、ロータ140の回動量または回動角度を規定する部品として機能させることができる。この図8に示すダンパー装置100においては、作動液収容部103内を3つの個室R1~R3に仕切っている。なお、図8に示すダンパー装置100においては、可動ベーン145には個室R2側から個室R1側に作動液160を流通させるとともに個室R1側から個室R2側に作動液160を制限しつつ流通させるベーン内双方向連通路151が設けられている。また、可動ベーン146には、個室R2側から個室R3側に作動液160を流通させるとともに個室R3側から個室R2側に作動液160を制限しつつ流通させるベーン内双方向連通路151が設けられている。また、このダンパー装置100においては、軸内双方向連通路143および軸内片方向連通路144は設けられていない。
【0077】
また、上記実施形態においては、補償装置収容部110は、作動液収容部103内に形成された4つの個室R1~R4のうち相対的に常に低圧となる個室R1に連通して形成した。これにより、ダンパー装置100は、相対的に高圧となる個室R2~R4の各圧力が体積変化補償装置120に吸収されてこれらの個室R2~R4の圧力が上がり難くなるという不都合を回避することができる。しかし、補償装置収容部110は、作動液収容部103内に形成された4つの個室R1~R4のうちのいずれに形成してもよいことは当然である。すなわち、作動液収容部103内に形成された4つの個室R1~R4のうち相対的に高圧になる個室R2~R4に連通して形成することができる。
【0078】
また、上記実施形態においては、ダンパー装置100としてロータリダンパを採用した。しかし、本発明に係るダンパー装置は、液体からなる作動液を液密的に収容する作動液収容部と、作動液収容部内で作動液を押しながら摺動する作動液押圧体とを備えて作動液押圧体に入力される力を作動液を流動させることで減衰するダンパー装置に広く適用することができる。
【0079】
この場合、ダンパー装置としては、直線状に延びる円筒体状のシリンダ内に作動液が充填されるとともに、このシリンダ内を軸線方向に作動液を押し退けながら変位するピストンロッドを備えたショックアブソーバのような直動型のダンパー装置で構成することができる。この場合、シリンダが本発明に係る作動液収容部に相当するとともに、ピストンロッドが本発明に係る作動液押圧体に相当する。なお、上記実施形態においては、可動ベーン145,146が本発明に係る作動液押圧体に相当する。また、作動液160は、油以外の液体、例えば、水を採用することもできる。
【0080】
また、上記実施形態においては、ハウジング101は、ハウジング本体102を有底筒状に形成した。しかし、ハウジング101は、ハウジング本体102を筒状に形成するとともに、この筒状体の両端部を蓋体130に相当する板状体で塞いで構成することもできる。
【0081】
また、上記実施形態においては、ダンパー装置100は、1つの作動液収容部103内を固定ベーン104,105および可動ベーン145,146によって4つの個室R1~R4に仕切った。しかし、ダンパー装置100は、1つの作動液収容部103内を少なくとも2つの個室で仕切って構成すればよい。
【0082】
また、上記実施形態においては、ダンパー装置100は、ハウジング101を固定側としロータ140を可動側とした。しかし、ダンパー装置100におけるハウジング101に対するロータ140の回動は相対的なものである。したがって、ダンパー装置100は、ハウジング101を可動側としロータ140を固定側とすることもできることは当然である。
【0083】
また、上記実施形態においては、ベーン内双方向連通路151およびベーン内片方向連通路152は、可動ベーン145,146にそれぞれ設けた。しかし、ベーン内双方向連通路151およびベーン内片方向連通路152は、固定ベーン104,105に設けることもできる。
【0084】
また、上記実施形態においては、ダンパー装置100は、二輪自走式車両のスイングアームに取り付け場合について説明した。しかし、ダンパー装置100は、二輪自走式車両におけるスイングアーム以外の場所(例えば、シートの開閉機構)、二輪自走式車両以外の車両(四輪自走式車両におけるサスペンション機構、シート機構または開閉扉)または自走式車両以外の機械装置、電機装置または器具に取り付けて用いることができる。
【符号の説明】
【0085】
R1~R4…個室、
100…ダンパー装置、101…ハウジング、102…ハウジング本体、102a…蓋体取付部、103…作動液収容部、103a…底部、103b…収容部壁面、104,105…固定ベーン、106…シール体、107…ロータ支持部、108a,108b…エア抜き孔、
110…補償装置収容部、111…開口部、112…外気面、113…作動液面、114…連通流通孔、
120…体積変化補償装置、121…ピストン、122…押圧弾性体、123…プラグ、
130…蓋体、131…蓋体本体、132a,132b…調整ニードル、133…ロータ支持部、134…ボルト、
140…ロータ、141…軸体、142…連結部、143…軸内双方向連通路、144…軸内片方向連通路、145,146…可動ベーン、147…シール体、
151…ベーン内双方向連通路、152…ベーン内片方向連通路、
160…作動液。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8