(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145344
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】電池モジュールおよびそのパッケージ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20220926BHJP
A62D 1/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01M50/204 401F
A62D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046708
(22)【出願日】2021-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(72)【発明者】
【氏名】溝口 朋
【テーマコード(参考)】
2E191
5H040
【Fターム(参考)】
2E191AA06
2E191AB51
2E191AB54
5H040AA37
5H040AS01
5H040AS04
5H040AT06
5H040AY04
5H040LL04
(57)【要約】
【課題】小型化の要求に応え、かつ単電池が発火した際の安全性が確保され燃え広がりが抑制される電池モジュールおよびそのパッケージの提供を目的とする。
【解決手段】筐体2と当該筐体2の内部の単電池1とを備えた電池モジュール10であって、前記単電池1の上面側又は側面側に消火シート4を配置したことを特徴とする電池モジュール10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と当該筐体の内部の単電池とを備えた電池モジュールであって、前記単電池の上面側又は側面側に消火シートを配置したことを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記筐体の内部に複数の前記単電池が配列されており、当該複数の単電池の上面側に消火シートを配設した請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記単電池がリチウムイオン電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、又はナトリウム硫黄電池である請求項1又は2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
消火シートがカリウム化合物又はナトリウム化合物が練りこまれたものである請求項1~3のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項5】
ラックを有し、当該ラック内に請求項1~4のいずれか1項に記載の電池モジュールを複数配列して設置した電池パッケージ。
【請求項6】
前記ラックが蓋を有し、当該蓋の内側に消火シートを配設し、複数のモジュールにわたって、前記筐体内の単電池の上側に消火シートが配置された形態とする請求項5に記載の電池パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池モジュールおよびそのパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリーパック内に消火安全装置を設置する技術が開示されている(特許文献1)。具体的には、消火安全装置が消火剤とそれを収容する容器からなり、発火・爆発が生じた際に消火剤を噴霧しバッテリーパック内の温度上昇を抑える。
【0003】
また、モジュール電池の上蓋の裏面に、耐熱性の延焼防止板を配置することが提案されている(特許文献2)。これにより、モジュール内部で火災が発生しても、パッケージ内の他のモジュールまで延焼することを抑えることができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-20088号公報
【特許文献2】特開2014-67654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、単電池を配列した電池モジュールでは火災が発生することが懸念され、その対応として
図3のように単電池1の上部に空間3を設けた従来のモジュール20が使用されている。火災が起きた際にも、この空間3があることにより、火やガスの逃げ道となり、他のモジュール20に燃え広がることが抑制される。一方、このような空間3を有するモジュール20はその分体積が大きくなり、電池モジュールの小型化の要求には応えられない。
【0006】
そこで本開示は、小型化の要求に応え、かつ単電池が発火した際の安全性が確保され燃え広がりが抑制される電池モジュールおよびそのパッケージの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電池モジュールは筐体と当該筐体の内部の単電池とを備えた電池モジュールであって、前記単電池の上面側又は側面側に消火シートを配置したことを特徴とする。
【0008】
さらに本開示の電池モジュールは、前記筐体の内部に複数の前記単電池が配列されており、当該複数の単電池の上面側に消火シートを配設したものであることが好ましい。
【0009】
また、前記単電池がリチウムイオン電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、又はナトリウム硫黄電池であることが好ましい。
【0010】
また、消火シートがカリウム化合物又はナトリウム化合物が練りこまれたものであることが好ましい。
【0011】
さらに、ラックを有し、当該ラック内に前記電池モジュールを複数配列して設置した電池パッケージとしてもよい。
【0012】
また、前記ラックが蓋を有し、当該蓋の内側に消火シートを配設し、複数のモジュールにわたって、前記筐体内の単電池の上側に消火シートが配置された形態としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、小型化の要求に応え、かつ単電池が発火した際の安全性が確保され燃え広がりが抑制される電池モジュールおよびそのパッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の実施形態に係る電池モジュールの構成の一例を模式的に示す斜視図(A)及びA-A線断面図(B)である。
【
図2】本開示の電池モジュールを複数搭載した電池パッケージの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】従来の電池モジュールの構成の一例を模試的に示す斜視図(A)及びB-B線断面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0016】
図1は、本開示の実施形態に係る電池モジュールの一例を模式的に示す斜視図である。本開示の電池モジュール10は筐体2の内部に8個の単電池1を配列している。配列された単電池1の上側には消火シート4が載置されている。消火シート4は薄いことが好ましく、発火した単電池1を消火するのに必要な量の消火剤が練り込まれていれば、薄いほどパッケージの小型化に資することとなる。上述した従来の電池モジュール20(
図3)では、単電池1の上側に空間3を設けており、小型化の阻害要因となっていた。本開示の電池モジュール10ではそのような空間は設けず、より薄い消火シート4を採用することにより小型化を実現している(
図1参照)。
【0017】
図2は、本開示の電池モジュール10を複数搭載した電池パッケージ100の一例を示す斜視図である。本開示の実施形態では、電池モジュール10が複数、ラック5内に収められ、全体として電池パッケージ100を構成している。このように電池モジュール10は通常狭い空間に多数収められるため、1つのモジュールで発火が生じた場合には、その火が燃え広がるリスクがある。本開示の電池パッケージ100においては、上述のように電池モジュール10が消火シート4を具備しているため、発火した場合にも消火シート4が溶け出しその火を消し止めて、他のモジュール10への燃え広がりを抑制することができる。
【0018】
消火シート4は単電池1の上に載置してもよいが、図示しない上蓋の内側に貼り付ける態様で適用してもよい。このとき複数のモジュールにわたって上蓋およびその内側の消火シートをかぶせる態様であってもよい。すなわち、モジュール単位に限らず、パッケージ単位で消火シートを配設した態様も挙げられる。
【0019】
電池パッケージ100の形態は図示したものに限らず、別の形態であってもよい。例えば、住宅に設置する際には図示した縦置きのパッケージが都合良い。車載バッテリーとして使用する場合には、横置きで電池モジュール10を連接し車体の床部分に適合する形態としてもよい。そのような横置きのパッケージ100でも本開示の電池モジュール10において、単電池の上面側だけでなく側面側(前面側、後面側、左面側、右面側)にも消火シートを適用することができ、所望の効果を奏し有用である。また、パッケージには角型以外に円筒やパウチ型のものがあり、それらにも本開示のモジュールおよびそのパッケージが適用可能である。なお、上面側又は側面側の消火シートは単電池と隙間(空間)があったり、他の機能性のシートなどを介在したりしていてもよい。
【0020】
本開示に使用される単電池1は二次電池でも一次電池でもよいが、発火のしやすさという観点では、二次電池を用いた際により効果的である。二次電池はどのようなものでもよく、例えば、リチウムイオン電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ナトリウム硫黄電池等が挙げられる。単電池1の構造は特に限定されないが、一例を挙げると、一方に負極活物質、他方には正極活物質を配し、両者をリチウムイオンまたはナトリウムイオンといったイオンに対して選択的な透過性を有する固体電解質(不図示)で隔離した構造が挙げられる。そこでは、固体電解質の壁面を前記イオンが移動することによって、充放電が行われる。
【0021】
本開示に使用される消火シート4はどのようなものであってもよいが、消火剤として、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン塩酸類(リン酸二水素アンモニウム)、炭酸水素カリウムと尿素の組合せなどが挙げられる。本開示においては、なかでもカリウム化合物又はナトリウム化合物が練り込まれた消火シート4であることが好ましく、カリウム化合物が練り込まれた消火シート4であることがより好ましい。消火シート4は単電池1に直接当接する形で配置されていることが好ましいが、必要に応じて、他の機能性のシート等を介在させてもよい。
【0022】
本開示の電池モジュール10及びそのパッケージ100は、各モジュール電池10に配列された単電池1の上に消火シート4を配置した構造であるから、何れかのモジュールにおいて火災が発生した場合にもモジュール間での延焼を防止することができる。このため万一の場合にも火災はモジュール内部で収まり、大規模な火災となるおそれはない。
【0023】
さらに、本開示の電池モジュール10によれば、発火による対応が即座に消火剤により行われる点で、安全性が高められている。他方、筐体2の大きさが従来の空間3を必要とするものと比べ小さくなり、体積エネルギー密度が高まる。つまり、本開示の電池モジュールによれば、高い安全性と高い体積エネルギー密度とを両立することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 単電池
2 筐体(電池ケース)
3 空間
4 消火シート
5 ラック
10 電池モジュール
20 比較例(従来)の電池モジュール
100 電池パッケージ