(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145345
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】オイル貯留構造及び、バッフルプレート
(51)【国際特許分類】
F01M 11/00 20060101AFI20220926BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
F01M11/00 U
F02F7/00 302Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046709
(22)【出願日】2021-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今峰 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】大沼 俊裕
【テーマコード(参考)】
3G015
3G024
【Fターム(参考)】
3G015BB07
3G015CA07
3G024AA64
3G024BA01
3G024FA07
(57)【要約】
【課題】オイルパン内のオイルストレーナ周囲にオイルを効果的に保持することで、オイルストレーナからの空気の吸い込みを防止する。
【解決手段】有底箱状に形成されると共に、長手方向の一端側に第1底部11A、長手方向の他端側に第2底部11Bを有するケース11と、第2底部11Bに設けられた開口12を下方から塞ぐように設けられてオイルを貯留するオイルパン20と、オイルパン20内のオイルに浸漬されたオイルストレーナ22と、第1底部11Aと第2底部11Bとの間から上方に延びると共に、長手方向と直交する幅方向に延び、ケース11内の空間を第1底部11A側と第2底部11B側とに仕切るバッフルプレート30とを備えた。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底箱状に形成されると共に、長手方向の一端側に第1底部、長手方向の他端側に第2底部を有するケースと、
前記第2底部に設けられた開口を下方から塞ぐように設けられてオイルを貯留するオイルパンと、
前記オイルパン内のオイルに浸漬されたオイルストレーナと、
前記第1底部と前記第2底部との間から上方に延びると共に、前記長手方向と直交する幅方向に延び、前記ケース内の空間を前記第1底部側と前記第2底部側とに仕切るバッフルプレートと、を備える
ことを特徴とするオイル貯留構造。
【請求項2】
前記バッフルプレートの上端を前記オイルストレーナ側に屈曲させた折り曲げ部をさらに備える
請求項1に記載のオイル貯留構造。
【請求項3】
前記第2底部は、前記第1底部に対して前記幅方向に長く形成されており、
前記バッフルプレートの両端部には、フランジ部が設けられており、
該フランジ部は、前記ケースの側壁のうち、前記第2底部が前記第1底部よりも前記幅方向に突出する部分の側壁と所定の隙間を隔てて対向することによりクランクを形成する
請求項1又は2に記載のオイル貯留構造。
【請求項4】
前記第2底部は、前記第1底部に対して下方に低く形成されており、
前記バッフルプレートの両端部には、前記第2底部側に斜めに突出する傾斜部が設けられており、
前記傾斜部には、該傾斜部の下端と前記第1底部との隙間を塞ぐフラップが設けられている
請求項1から3の何れか一項に記載のオイル貯留構造。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のバッフルプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オイル貯留構造及び、バッフルプレートに関し、特に、エンジンオイルの貯留に好適な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンの下部には、エンジオイルを貯留するオイルパンが設けられている。オイルパン内のエンジオイルは、オイルポンプにより汲み上げられて各潤滑要素に供給された後、オイルパンに戻されて循環するようになっている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-185121号公報
【特許文献2】特開2011-179482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オイルパン内のエンジオイルには、オイルポンプにより汲み上げられるエンジオイルから異物を除去するための濾過器としてのオイルストレーナが浸漬されている。車両の制動時等にオイルストレーナ周囲のエンジオイルがオイルパン内から前方に移動すると、オイルストレーナの吸入口が空気に曝されることで、該吸入口から空気を吸い込んでしまう場合がある。
【0005】
本開示の技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、オイルパン内のオイルストレーナ周囲にオイルを効果的に保持することで、オイルストレーナからの空気の吸い込みを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の技術は、有底箱状に形成されると共に、長手方向の一端側の第1底部と他端側の第2底部とを有するケースと、前記第2底部に設けられた開口を下方から塞ぐように設けられてオイルを貯留するオイルパンと、前記オイルパン内のオイルに浸漬されたオイルストレーナと、前記第1底部と前記第2底部との間から上方に延びると共に、前記長手方向と直交する幅方向に延び、前記ケース内の空間を前記第1底部側と前記第2底部側とに仕切るバッフルプレートと、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記バッフルプレートの上端を前記オイルストレーナ側に屈曲させた折り曲げ部をさらに備えることが好ましい。
【0008】
また、前記第2底部は、前記第1底部に対して前記幅方向に長く形成されており、前記バッフルプレートの両端部には、前記ケースの側壁のうち、前記第2底部が前記第1底部よりも前記幅方向に突出する部分の側壁と所定の隙間を隔てて対向することによりクランクを形成するフランジ部が設けられていることが好ましい。
【0009】
また、前記第2底部は、前記第1底部に対して低く形成されており、前記バッフルプレートの両端部には、前記第2底部側に斜めに突出する傾斜部が設けられており、前記傾斜部には、該傾斜部の下端と前記第1底部との隙間を塞ぐフラップが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の技術によれば、オイルパン内のオイルストレーナ周囲にオイルを効果的に保持することで、オイルストレーナからの空気の吸い込みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るオイル貯留構造を備えたエンジンの下部構造を示す模式的な縦断面図である。
【
図2】本実施形態に係るオイル貯留構造を上方から視た模式的な平面図である。
【
図3】本実施形態に係るオイル貯留構造を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本実施形態に係るオイル貯留構造及び、バッフルプレートを説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0013】
[全体構成]
図1は、本実施形態に係るオイル貯留構造を備えたエンジン10の下部構造を示す模式的な縦断面図である。
【0014】
図1に示すように、エンジン10の下部構造は、主として、クランクケース11(本開示のケース)と、オイルパン20とを有する。クランクケース11の上部には、不図示のシリンダブロックが設けられており、該シリンダブロックの上部には、不図示のシリンダヘッドが設けられている。
【0015】
本実施形態において、エンジン10は、クランクケース11の長手方向の一端側(
図1の左側)が前側、クランクケース11の長手方向の他端側(
図1の右側)が後側となるように車両に搭載される。なお、以下の説明では、クランクケース11の長手方向と直行する方向を単に幅方向という。
【0016】
クランクケース11は、一端側の第1底部11Aが他端側の第2底部11Bよりも高くなるように、言い換えれば、第2底部11Bが第1底部11Aよりも低くなるように形成されており、これら各底部11A,11Bの間には段差面部11Cが設けられている。また、クランクケース11の第2底部11Bには、略矩形状の開口12が設けられている。
【0017】
オイルパン20は、上方に開放する断面凹状の容器状に形成されており、クランクケース11の第2底部11Bに設けられた開口12を下方から塞ぐように、不図示のボルト等で取り付けられている。オイルパン20内にはエンジオイルが貯留されており、該エンジオイルには、不図示のオイルポンプにより汲み上げられるエンジオイルから異物を除去するためのオイルストレーナ22が浸漬されている。
【0018】
本実施形態において、クランクケース11の第1底部11Aと第2底部11Bとの間には、クランクケース11内の空間を第1底部11A側と第2底部11B側とに仕切るバッフルプレート30が設けられている。このバッフルプレート30は、オイルパン20内のエンジオイルが車両の急制動時等に、第2底部11B側(オイルパン20側)から第1底部11A側(前側)に移動することを規制するように機能する。以下、バッフルプレート30の詳細について説明する。
【0019】
[バッフルプレート]
図2は、本実施形態に係るオイル貯留構造を上方から視た模式的な平面図であり、
図3は、本実施形態に係るオイル貯留構造を示す模式的な斜視図である。なお、
図3においては、クランクケース11及び、オイルパン20の一部を切り欠いて示してあり、オイルストレーナ22は図示を省略している。
【0020】
図2,3に示すように、クランクケース11の第2底部11Bは、第1底部11Aよりも幅方向に長く形成されており、これらの間には、段差面部11Cの各端部から幅方向に延びる一対の側壁面部11D,11Eが設けられている。
【0021】
バッフルプレート30は、段差面部11Cの上端縁から上方に延びると共に、クランクケース11の幅方向に延びる主プレート部31と、主プレート部31の幅方向の端部から第2底部11B側に突出するように斜めに延びる一対の傾斜プレート部32,33とを有する。すなわち、オイルストレーナ22の周囲のうち、段差面部11Cに臨む約半分がバッフルプレート30の主プレート部31及び、傾斜プレート部32,33によって囲われるようになっている。このように、オイルストレーナ22の前側の約半分を主プレート部31及び、傾斜プレート部32,33によって囲うことで、車両の制動時等にオイルストレーナ22周囲のエンジオイルが第2底部11B側から第1底部11A側に移動することを効果的に抑止できるようになる。
【0022】
主プレート部31の上端及び、各傾斜プレート部32の上端には、該上端をオイルストレーナ22が位置する第2底部11B側に屈曲させた折り曲げ部34が設けられている。このような折り曲げ部34を設けることで、車両の急制動時等にオイルパン20側から段差面部11Cやバッフルプレート30の側面に沿って上方に向かうエンジンオイルの流れが堰き止められるようになり、エンジオイルの第1底部11A側への移動を確実に防止できるようになる。
【0023】
傾斜プレート部32,33の下端には、段差面部11Cの上端に向かって延びる一対のフラップ36,37(
図2にのみ示す)が設けられている。このフラップ36,37は、傾斜プレート部32,33の下端と段差面部11Cの上端との隙間を塞ぐよう、上方視で略三角形状に形成されている。このようなフラップ36,37をバッフルプレート30の両端に設けることで、オイルパン20内から上方に向かうエンジオイルがバッフルプレート30の両端の隙間からクランクケース11の第1底部11A側に流出することを効果的に防止できるようになる。
【0024】
傾斜プレート部32,33の端部には、該端部から幅方向に延びる一対のフランジ部38,39がそれぞれ設けられている。このフランジ部38,39のうち、フランジ部38は、幅方向に延びてクランクケース11の側壁面部11Dと所定の隙間を隔てて対向することにより、これらの間にクランクを形成する。このようなクランクを設けることで、エンジン10の各潤滑要素からクランクケース11の第1底部11Aに戻されたエンジオイルを傾斜プレート部32,33の側面に沿って整流しながらオイルパン20側に戻しつつ、オイルパン20内のエンジオイルが第1底部11A側に流出することを効果的に防止できるようになる。なお、図示例において、フランジ部39は、後ろ向きに折り返されているが、各フランジ部38,39の向きは、周辺レイアウトに応じて適宜に設定することができる。
【0025】
ここで、バッフルプレート30をクランクケース11のどの位置に設けるかは、エンジン10の具体的な仕様等に応じて適宜に設定すればよい。
【0026】
例えば、バッフルプレート30をオイルストレーナ22に近づけ過ぎると、バッフルプレート30とオイルパン20とで画定されるオイル貯留空間S(
図1,2参照)は狭くなり、オイルストレーナ22周囲に保持できるエンジンオイルが少なくなってしまう。この場合、車両の急制動時等、クランクケース11の第1底部11A側から第2底部11B(オイルパン22)側にエンジンオイルが流入しにくい状況で、エンジンオイルがオイルポンプによって各潤滑要素に供給され続けてしまうと、オイルストレーナ22周囲のエンジンオイルが極端に減少することで、オイルストレーナ22から空気を吸い込んでしまう可能性がある。
【0027】
一方、バッフルプレート30をオイルストレーナ22から遠ざけ過ぎると、バッフルプレート30とオイルパン20とで画定されるオイル貯留空間Sは広くなる。オイル貯留空間Sが広いと、オイルストレーナ22の周囲に十分なエンジンオイルを貯めにくくなり、結果としてオイルストレーナ22から空気を吸い込んでしまう可能性がある。
【0028】
このような観点から、バッフルプレート30は、バッフルプレート30とオイルパン20とで画定されるオイル貯留空間Sに、適量なエンジンオイルを常時保持できる位置に設けることが好ましい。具体的には、車両の制動から停車するまでの期間に亘って、オイルストレーナ22周囲にエンジンオイルを確実に保持・貯留しておくことができる位置を基準に設けることが好ましい。
【0029】
以上詳述した本実施形態によれば、クランクケース11の第1底部11Aと第2底部11Bとの間に、クランクケース11内の空間を第1底部11A側と第2底部11B側とに仕切るバッフルプレート30を設けたことで、車両の急制動時等にエンジンオイルが第2底部11B側に配置されたオイルストレーナ22の周囲から前方に移動することを効果的に防止できるようになる。これにより、オイルストレーナ22周囲にエンジオイルが効果的に保持できるようになり、オイルストレーナ22からの空気の吸い込みを確実に防止することが可能となる。
【0030】
また、クランクケース11にバッフルプレート30を取り付ける簡素な構成を採用したことで、バッフルプレート30とオイルパン20とで画定されるオイル貯留空間Sをエンジンの各種仕様やクランクケース11の具体的な形状等に応じて適宜に設定できるようになり、設計変更や仕様変更に効果的に対応することも可能となる。
【0031】
[その他]
なお、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0032】
例えば、上記実施形態において、オイル貯留構造は、エンジンオイルの貯留構造を一例に説明したが、変速機やクラッチ装置、デファレンシャルギヤ装置等の他のオイル貯留構造にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 エンジン
11 クランクケース(ケース)
11A 第1底部
11B 第2底部
12 開口
20 オイルパン
22 オイルストレーナ
30 バッフルプレート
31 主プレート部
32,33 傾斜プレート部
34 折り曲げ部
36,37 フラップ
38,39 フランジ部