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  • 特開-ウニ搬送容器およびウニの搬送方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145346
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ウニ搬送容器およびウニの搬送方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/02 20060101AFI20220926BHJP
   A01K 61/30 20170101ALI20220926BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A01K63/02 A
A01K61/30
B65D85/50 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046710
(22)【出願日】2021-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】509298012
【氏名又は名称】公立大学法人宮城大学
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】片山 亜優
(72)【発明者】
【氏名】西川 正純
(72)【発明者】
【氏名】栗田 喜久
【テーマコード(参考)】
2B104
3E035
【Fターム(参考)】
2B104AA38
2B104BA16
3E035AA20
3E035AB10
3E035BA01
3E035BA08
3E035BC02
3E035BD10
3E035CA02
(57)【要約】
【課題】生きているウニを簡単に搬送できるウニ搬送容器およびウニの搬送方法を提供する。
【解決手段】ウニ搬送容器10は、例えば、収納部11Aが形成され上部が開口された本体部12と、この開口を閉鎖する蓋部13とを有する容器11を備えている。本体部12は、例えば、底部12Aと4つの側部12Bとを有しており、発泡プラスチックを除くプラスチック製の部材よりなる付着部材14が袋状部材15を介して接触するように配置されている。これにより、活ウニMが付着部材14に付着できるようになっており、ウニを生きたまま簡単に搬送することができるようになっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
この容器の内側の底部および側部に対応して配置され、発泡プラスチックを除くプラスチック製の部材よりなり、生きているウニを付着させる付着部材と、
を備えたことを特徴とするウニ搬送容器。
【請求項2】
前記容器と前記付着部材との間に防水シートからなる袋状部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のウニ搬送容器。
【請求項3】
容器と、この容器の内側の底部および側部に対応して配置され、発泡プラスチックを除くプラスチック製の部材よりなる付着部材とを備えたウニ搬送容器に、生きているウニと海水又は食塩水とを入れ、前記付着部材に生きているウニを付着させて搬送することを特徴とするウニの搬送方法。
【請求項4】
前記容器と前記プラスチック製部材との間に防水シートからなる袋状部材を設け、この袋状部材の内部に海水又は食塩水を入れ、酸素を封入することを特徴とする請求項3に記載のウニの搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウニを生きたまま搬送するための搬送容器および搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウニを生きたまま搬送する方法としては、例えば、水槽に入れて搬送することが考えられる。しかしながら、水槽で搬送するには、揺れたり、水槽が大がかりになったりするので、輸送が困難であると共に、設備等で費用もかかってしまう。生きているウニ(いわゆる活ウニ;以下、活ウニとも言う)を水槽で搬送するものとしては、例えば、昆布を配置した水槽設備が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-030230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、他の鮮魚のように、活ウニを発泡スチロールに入れて搬送すると、発泡スチロールに棘がささって折れてしまい、弱って死んでしまうという問題があった。また、棘が折れないようにスポンジの上において搬送したりもするが、酸欠になって死んでしまうという問題があった。よって、活ウニを簡単に搬送できる搬送容器および搬送方法の開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、活ウニを簡単に搬送できるウニ搬送容器およびウニの搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のウニ搬送容器は、容器と、この容器の内側の底部および側部に対応して配置され、発泡プラスチックを除くプラスチック製の部材よりなり、生きているウニを付着させる付着部材と、を備えたものである。
【0007】
本発明のウニの搬送方法は、容器と、この容器の内側の底部および側部に対応して配置され、発泡プラスチックを除くプラスチック製の部材よりなる付着部材とを備えたウニ搬送容器に、生きているウニと海水又は食塩水とを入れ、付着部材に生きているウニを付着させて搬送するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容器の内側の底部と側部に対応して、発泡プラスチックを除くプラスチック製の部材よりなる付着部材を配置するようにしたので、生きているウニを付着部材に付着させることができる。よって、棘が折れたりすることを防止することができ、例えば、海水又は食塩水を入れることにより、ウニを生きたまま簡単に搬送することができる。
【0009】
また、容器と付着部材との間に防水シートからなる袋状部材を備えるようにすれば、海水又は食塩水の漏れを防止することができると共に、酸素を封入することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係るウニ搬送容器の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係るウニ搬送容器10の構成を表す断面図である。ウニ搬送容器10は、容器11を有している。容器11は、活ウニMを収納して搬送することができればどのようなものでもよいが、発泡スチロールからなる発泡スチロール容器が好ましい。保温性及び密封性に優れるからである。容器11は、例えば、内部に収納部11Aが形成され上部が開口された本体部12と、この開口を閉鎖する蓋部13とを備えている。本体部12は、例えば、上方から見た形状が矩形状であり、底部12Aと4つの側部12Bとを有している。
【0013】
本体部12の底部12Aには、内側に、発泡プラスチックを除くプラスチック製の部材からなる付着部材14が対応して配置されている。発泡プラスチックは、合成樹脂中にガスを細かく分散させ、発泡状または多孔質形状に成形されたものである。付着部材14は、例えば、板状部材により構成することが好ましい。これにより、活ウニMを付着部材14に付着させることができ、例えば、搬送中に、転がって他の活ウニMに接触して弱ってしまうことを低減することができると共に、容器11に直接接触することを防止できるので、棘が容器11に刺さり弱って死んでしまうことを抑制することができる。なお、金属製又は木材製の部材は活ウニMの付着性が悪く、しかも、金属製又は木材製の部材は活ウニMと共に入れる海水または食塩水が錆等により汚れてしまうので、活ウニMの生態に好ましくない。この点においても、プラスチック製の部材は、海水等が汚れる問題がなく好ましい。
【0014】
付着部材14は、活ウニMを付着させることができる範囲で設けられていればよいが、底部12Aの内側全体とほぼ同じ大きさとすることが好ましい。活ウニMを付着させやすく、また、搬送中に活ウニMが動いて棘が容器11に刺さってしまったり、付着部材14の位置がずれたりしてしまうのを防止することができるからである。
【0015】
本体部12の側部12Bには、内側に、付着部材14が対応して配置されていることが好ましい。活ウニMの棘が側部12Bに刺さってしまうのを防止することができると共に、活ウニMが付着できるからである。付着部材14は、側部12Bの内側全体に対応して配置してもよいが、少なくとも、活ウニMの高さよりも高い位置まで配置していることが好ましい。付着部材14は、例えば、本体部12の底部12Aに対応する部分と、本体部12の側部12Bに対応する部分とが連続して形成されており、折り曲げることにより底部12A又は側部12Bに対応して配置されるように構成されていることが好ましい。容易に本体部12の内側を覆うことができるからである。
【0016】
また、側部12Bに対応して配置する付着部材14の高さは、高い方が好ましく、側部12Bの内側全体に対応して配置することが好ましい。活ウニMと共に入れる海水又は食塩水の量を多くすれば、側部の付着部材14にも活ウニMが付着するので、活ウニMの収容量を増やすことができるからである。
【0017】
なお、付着部材14は、本体部12の底部12A及び側部12Bに対応して配置されていればよく、本体部12の上部には設けられていても、設けられていなくてもよい。図1では、付着部材14を本体部12の上部(すなわち蓋部13)にも対応して設け、活ウニMの上部を覆うように構成した場合について示している。
【0018】
付着部材14の材質としては、活ウニMが付着するものであれば特に制限はされないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、又は、ポリカーボネート(PC)が好ましく挙げられる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル-スチレン樹脂、又は、ポリカーボネートであれば、活ウニMがより良好に付着するのでより好ましい。特に、ポリプロピレンは、活ウニMの付着性に優れ、加工もしやすいことからより好ましい。
【0019】
また、付着部材14は、プラスチック製ダンボールにより形成されていることが好ましい。軽量で弾力があり、また、折り曲げたりすることが容易であるので、例えば、本体部12の底部12Aおよび側部12Bに合わせた形状に加工しやすいからである。
【0020】
容器11と付着部材14との間には、防水シートからなる袋状部材15を備えることが好ましい。活ウニMと共に海水又は食塩水を入れたときに、海水又は食塩水が漏れてしまうのを防止することができると共に、酸素を封入することもできるからである。袋状部材15の材質としては、例えば、ビニールが挙げられる。
【0021】
本発明の一実施の形態に係るウニの搬送方法は、例えば、ウニ搬送容器10を用いて行うことができる。まず、容器11の収納部11Aに袋状部材15を配置し、この袋状部材15の内部に付着部材14を入れて、この付着部材14と、本体部12の底部12Aおよび側部12Bとが、袋状部材15を介して接触するように配置する。続いて、付着部材14の内側、すなわち、袋状部材15の内部に活ウニMおよび海水又は食塩水を入れて、活ウニMが付着部材14の上に載置されるようにする。その際、海水に酸素を吹き込んでもよい。その後、袋状部材15を閉じて、本体部12を蓋部13で閉じて搬送する。これにより、活ウニMは、棘が折れたりすることが防止されると共に、海水又は食塩水の中に入っているので、生きたままの状態で搬送される。
【0022】
このように、本実施の形態によれば、容器11の内側の底部12Aと側部12Bに対応して、発泡プラスチックを除くプラスチック製の部材よりなる付着部材14を配置するようにしたので、活ウニMを付着部材14に付着させることができる。よって、棘が折れたりすることを防止することができる。また、海水又は食塩水に入れたまま搬送できるので、ウニを生きたまま簡単に搬送することができる。
【0023】
また、容器11と付着部材14との間に防水シートからなる袋状部材15を備えるようにすれば、海水又は食塩水を入れても漏れるのを防止することができると共に、酸素を封入することもできる。
【実施例0024】
(実施例1-1~1-8)
容器11の内側に、底部12A及び4方の側部12Bを覆うように付着部材14を設置した。次いで、活ウニM及び海水を、付着部材14で内側を覆った容器11の中に投入した。投入から1分後に、容器11を揺らし、活ウニMが付着していることを確認したうえで、素手で活ウニMを掴み、引き剥がせるかどうかを確認した。付着部材14には、実施例1-1ではポリエチレン製の板状部材、実施例1-2ではポリプロピレン製の板状部材、実施例1-3ではポリスチレン製の板状部材、実施例1-4ではアクリロニトリル-スチレン樹脂製の板状部材、実施例1-5ではアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂製の板状部材、実施例1-6ではポリ塩化ビニル製の板状部材、実施例1-7ではメタクリル樹脂製の板状部材、実施例1-8ではポリエチレンテレフタラート製の板状部材を用いた。なお、実施例1-1~1-8で用いた付着部材14は、いずれも発泡プラスチックではないものである。
【0025】
本実施例に対する比較例1-1~1-3として、付着部材を変えたことを除き、他は実施例1-1~1-8と同様にして、容器11の内側に付着部材を設置し、活ウニの付着性を確認した。付着部材には、比較例1-1ではウレタン製スポンジ、比較例1-2では木(スギ)製の板部材、比較例1-3ではステンレス製の板部材を用いた。
【0026】
表1に活ウニMの付着性の結果を示す。付着性の判断としては、付着部材14に付着せず容器11を揺すると動いた場合は×、容器11を揺すった程度では剥がれないが、素手で全ての個体を付着部材14から剥がせた場合には〇、揺すっても剥がれず、素手でも剥がせない個体がいた場合は◎とした。
【0027】
【表1】
【0028】
表1に示したように、付着部材14に発泡プラスチックを除くプラスチック製の部材を用いた実施例1-1~1-8では、いずれも付着部材14に活ウニMが付着することが確認された。中でも、実施例1-1のポリエチレン製の板状部材、実施例1-2のポリプロピレン製の板状部材、及び、実施例1-4のアクリロニトリル-スチレン樹脂製の板状部材において、より良好に付着し、より好ましいことが分かった。これに対して、発泡プラスチックのウレタン製スポンジを用いた比較例1-1、木製の板部材を用いた比較例1-2、金属製の板部材を用いた比較例1-3では、付着性が悪いことが分かった。
【0029】
(実施例2-1,2-2)
容器11の内側に袋状部材15を配置し、袋状部材15の内部に付着部材14を入れて、付着部材14と、容器11の底部12Aおよび側部12Bとが、袋状部材15を介して接触するように配置した。付着部材14には、発泡プラスチックでないポリプロピレン製の板状部材を用いた。続いて、付着部材14の内側に活ウニMおよび海水を入れて、実施例2-1では海水に酸素を吹き込み、実施例2-2では酸素を吹き込まずに、袋状部材15を閉じた。すなわち、実施例2-1では袋状部材15の中に酸素を封入し、実施例2-2では袋状部材15の中に酸素を封入しなかった。2日間放置した後、活ウニMの状態を観察した。2日後に全個体死亡している場合は生存性×、全個体生存しているがトゲが抜けるなどの衰弱が見られる場合は生存性〇、全個体生存し衰弱もみられない場合は生存性◎とした。表2に結果を示す。
【0030】
【表2】
【0031】
表2に示したように、各実施例について、いずれも活ウニMの生存が確認された。中でも、酸素を封入した実施例2-1において、より良好な状態で生存し、より好ましいことが分かった。
【0032】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、全ての構成要素を備えなくてもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。また、各構成要素の具体的な構成は一例を示したものであり、異なっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
活ウニの搬送に用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
10…ウニ搬送容器、11…容器、11A…収納部、12…本体部、12A…底部、12B…側部、13…蓋部、14…付着部材、15…袋状部材、M…活ウニ
図1