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特開2022-145377抗菌性光触媒コーティング組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145377
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】抗菌性光触媒コーティング組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/16 20060101AFI20220926BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20220926BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A01N59/16 Z
A01N59/16 A
A01N25/02
A01P3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079455
(22)【出願日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2021044275
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】720005024
【氏名又は名称】株式会社出田精密
(72)【発明者】
【氏名】出田 光行
(72)【発明者】
【氏名】太田 修平
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011BA06
4H011BB16
4H011BB18
4H011BC03
4H011CD13
4H011DA13
4H011DC05
4H011DF04
(57)【要約】
【課題】優れた抗菌性及び抗ウイルス性並びに良好な防汚性を透明な間仕切り等に容易に付与でき、さらに優れた持続効果を有する抗菌性光触媒コーティング組成物と、前記抗菌性光触媒コーティング組成物を工業的有利に製造できる製造方法とを提供する。
【解決手段】低級アルコールに、0.01~0.1体積%の配合割合にてチタン及びアルコキシ基を少なくとも含む化合物を加えて混合して第1の混合液を得て、前記第1の混合液よりも多くの量の水に、銀を含む水溶性金属塩を加えて混合して第2の混合液を得る。そして、前記第1の混合液と前記第2の混合液とを混合して抗菌性光触媒コーティング組成物を得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低級アルコールに、0.01~0.1体積%の配合割合にてチタン及びアルコキシ基を少なくとも含む化合物を加えて混合して第1の混合液を得る第1の工程、前記第1の混合液よりも多くの量の水に、銀を含む水溶性金属塩を加えて混合して第2の混合液を得る第2の工程、及び前記第1の混合液と前記第2の混合液とを混合して抗菌性光触媒コーティング組成物を得る第3の工程を含むことを特徴とする抗菌性光触媒コーティング組成物の製造方法。
【請求項2】
前記化合物が下記式(A)で表される化合物である請求項1記載の製造方法。
【化1】
(式中、Mはチタンを表し、R、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数3~5の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基を表すか、又はR、R、R及びRのうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成していてもよい。)
【請求項3】
前記化合物が、チタンテトライソプロポキシドである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記低級アルコールが炭素数3~5のアルコールである請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記配合割合が0.05~0.1体積%である請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1の混合液に対して前記水が150~500体積%の割合となるようにして、前記水に前記水溶性金属塩を加える請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記水溶性金属塩が硝酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩又はこれらのいずれか2種以上の組合せから選択される請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記水溶性金属塩が硝酸銀を含む請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記水溶性金属塩を前記水に対して0.01~1体積%加える請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記第1の混合液に前記第2の混合液を滴下することにより加える請求項1~9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
銀、光触媒、炭素数3~5のアルコール及び水を含む抗菌性光触媒コーティング組成物であって、
無色透明であることを特徴とする抗菌性光触媒コーティング組成物。
【請求項12】
銀、光触媒、炭素数3~5のアルコール及び水を含む抗菌性光触媒コーティング組成物であって、
実質的に無色透明な液体であることを特徴とする抗菌性光触媒コーティング組成物。
【請求項13】
pHが中性である請求項11又は12に記載の抗菌性光触媒コーティング組成物。
【請求項14】
前記光触媒がアモルファスTiOナノ粒子である請求項11~13のいずれかに記載の抗菌性光触媒コーティング組成物。
【請求項15】
銀、光触媒、炭素数3~5のアルコール及び水を含む抗菌性光触媒コーティング組成物であって、
pHが中性であることを特徴とする抗菌性光触媒コーティング組成物。
【請求項16】
コーティング組成物でコーティングされてなる製品であって、前記コーティング組成物が、請求項11~15のいずれかに記載の抗菌性光触媒コーティング組成物を含むことを特徴とする製品。
【請求項17】
コーティング組成物を被コーティング物にコーティングする方法であって、前記コーティング組成物が、請求項11~15のいずれかに記載の抗菌性光触媒コーティング組成物を含むことを特徴とするコーティング方法。
【請求項18】
前記被コーティング物が、透明又は半透明である請求項17記載のコーティング方法。
【請求項19】
前記被コーティング物が、ガラス又はアクリルを構成材料として含む請求項17又は18に記載のコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性光触媒コーティング組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等において、前部席側と後部席側とを仕切るカーテン等が知られており、冷暖房の節約や防犯等を目的として検討されている(特許文献1等)。
しかしながら、このような間仕切りは、空間を分割するには適しているが、一方で、汚れやすく、衛生面において必ずしも満足のいくものではなかった。そのため、汚れにくい間仕切りが待ち望まれており、さらには、最近では、ウイルス感染等の問題も生じてきており、上記に加え、ウイルス感染を防ぐような抗ウイルス性を有していたり、人の飛沫を防いだりするような間仕切りが待ち望まれていた。
【0003】
なお、間仕切り等に、防汚処理や抗ウイルス処理等を施すことも検討されているが、抗ウイルス作用を有する抗ウイルス剤は、間仕切り等に対し、抗ウイルス性を付与できるが、逆に透明性を損なうことになり、一方で透明性を確保しようと抗ウイルス剤の濃度を薄くすると、抗ウイルス性が持続しなかったりして、必ずしも満足のいくものではなかった。例えば、特許文献2には、光触媒前駆体のチタンテトライソプロポキシドとイソプロピルアルコールとを混合し、ついで、純水及びイソプロピルアルコールの混合液体に加え、攪拌することにより、白色のスラリー物質を得て、ろ過分離後、純水で洗浄することにより、白色粒子を得ることが記載されており、さらに、前記白色粒子に過酸化水素水を加えて、自己熱反応させ、橙色のゲル状物質を得た後、アンモニア水を加えて、橙色の透明な液体を得ることが記載されているが、透明な基材に用いることが基材の透明性を損なうため困難であり、また、白色のスラリー等の発生により、製造工程が煩雑になってしまうといった問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3002230号
【特許文献2】特開2019-6613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた抗菌性及び抗ウイルス性並びに良好な防汚性を透明な間仕切り等に容易に付与でき、さらに優れた持続効果を有する抗菌性光触媒コーティング組成物と、前記抗菌性光触媒コーティング組成物を工業的有利に製造できる製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、低級アルコールに、0.01~0.1体積%の配合割合にて下記式(A)で表される化合物を加えて混合して第1の混合液を得る第1の工程、前記第1の混合液よりも多くの量の水に、銀を含む水溶性金属塩を加えて混合して第2の混合液を得る第2の工程、及び前記第1の混合液と前記第2の混合液とを混合して抗菌性光触媒コーティング組成物を得る第3の工程を経て、抗菌性光触媒コーティング組成物を製造すると、容易に透明かつ光触媒の触媒活性と銀の抗菌性との相乗作用に優れた抗菌性光触媒コーティング組成物を得ることができ、得られた抗菌性光触媒コーティング組成物が、優れた抗菌性及び抗ウイルス性並びに良好な防汚性を間仕切り等に容易に付与でき、さらに優れた持続効果を有することを知見し、このような抗菌性光触媒コーティング組成物が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 低級アルコールに、0.01~0.1体積%の配合割合にてチタン及びアルコキシ基を少なくとも含む化合物を加えて混合して第1の混合液を得る第1の工程、前記第1の混合液よりも多くの量の水に、銀を含む水溶性金属塩を加えて混合して第2の混合液を得る第2の工程、及び前記第1の混合液と前記第2の混合液とを混合して抗菌性光触媒コーティング組成物を得る第3の工程を含むことを特徴とする抗菌性光触媒コーティング組成物の製造方法。
[2] 前記化合物が下記式(A)で表される化合物である前記[1]記載の製造方法。
【化1】
(式中、Mはチタンを表し、R、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数3~5の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基を表すか、又はR、R、R及びRのうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成していてもよい。)
[3] 前記化合物が、チタンテトライソプロポキシドである前記[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 前記低級アルコールが炭素数3~5のアルコールである前記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記配合割合が0.05~0.1体積%である前記[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記第1の混合液に対して前記水が150~500体積%の割合となるようにして、前記水に前記水溶性金属塩を加える前記[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前
記水溶性金属塩が硝酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩又はこれらのいずれか2種以上の組合せから選択される前記[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 前記水溶性金属塩が硝酸銀を含む前記[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9] 前記水溶性金属塩を前記水に対して0.01~1体積%加える前記[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10] 前記第1の混合液に前記第2の混合液を滴下することにより加える前記[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11] 銀、光触媒、炭素数3~5のアルコール及び水を含む抗菌性光触媒コーティング組成物であって、無色透明であることを特徴とする抗菌性光触媒コーティング組成物。
[12] 銀、光触媒、炭素数3~5のアルコール及び水を含む抗菌性光触媒コーティング組成物であって、実質的に無色透明な液体であることを特徴とする抗菌性光触媒コーティング組成物。
[13] pHが中性である前記[11]又は[12]に記載の抗菌性光触媒コーティング組成物。
[14] 前記光触媒がアモルファスTiOナノ粒子である前記[11]~[13]のいずれかに記載の抗菌性光触媒コーティング組成物。
[15] 銀、光触媒、炭素数3~5のアルコール及び水を含む抗菌性光触媒コーティング組成物であって、pHが中性であることを特徴とする抗菌性光触媒コーティング組成物。
[16] コーティング組成物でコーティングされてなる製品であって、前記コーティング組成物が、前記[11]~[15]のいずれかに記載の抗菌性光触媒コーティング組成物を含むことを特徴とする製品。
[17] コーティング組成物を被コーティング物にコーティングする方法であって、前記コーティング組成物が、前記[11]~[15]のいずれかに記載の抗菌性光触媒コーティング組成物を含むことを特徴とするコーティング方法。
[18] 前記被コーティング物が、透明又は半透明である前記[17]記載のコーティング方法。
[19] 前記被コーティング物が、ガラス又はアクリルを構成材料として含む前記[17]又は[18]に記載のコーティング方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の抗菌性光触媒コーティング組成物は、優れた抗菌性及び抗ウイルス性並びに良好な防汚性を透明な間仕切り等に容易に付与でき、さらに優れた持続効果を有しており、本発明の製造方法は、このような抗菌性光触媒コーティング組成物を工業的有利に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例における試験評価の結果を示す図である。縦軸はATP量(/cm)を示す。
図2】実施例における試験評価の結果を示す図である。縦軸はATP量(/cm)を示す。
図3】実施例において製作した抗菌性光触媒コーティング組成物の外観写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の抗菌性光触媒コーティング組成物の製造方法は、低級アルコールに、0.01~0.1体積%の配合割合にてチタン及びアルコキシ基を少なくとも含む化合物を加えて混合して第1の混合液を得る第1の工程、前記第1の混合液よりも多くの量の水に、銀を含む水溶性金属塩を加えて混合して第2の混合液を得る第2の工程、及び前記第1の混合液と前記第2の混合液とを混合して抗菌性光触媒コーティング組成物を得る第3の工程を含むこと特長とする。
【0011】
前記化合物は、チタン及びアルコキシ基を少なくとも含む化合物であれば特に限定されないが、下記式(A)で表される化合物であるのが好ましい。
【化2】
(式中、Mはチタンを表し、R、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数3~5の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基を表すか、又はR、R、R及びRのうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0012】
前記化合物(A)としては、例えばチタンアルコキシド等が挙げられるが、本発明においては、前記化合物(A)がチタンテトライソプロポキシドであるのが好ましい。
【0013】
前記低級アルコールは、公知の低級アルコールであってよく、分岐状のアルコールであってもよい。前記低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール等が挙げられるが、本発明においては、前記アルコールが、炭素数3~5のアルコールであるのが好ましく、イソプロパノールであるのがより好ましい。
【0014】
前記第1の工程では、前記低級アルコールに、0.01~0.1体積%の配合割合にて前記化合物を加えて混合して第1の混合液を得る。前記の低級アルコールに対する前記化合物の配合割合は、通常、約0.01~0.1体積%であるが、本発明においては、0.05~0.1体積%であるのが好ましい。このような好ましい範囲である場合、より水に対する分散性に優れた混合液を得ることができ、触媒活性をより良好なものとすることができる。
【0015】
前記第1の工程において用いられる混合手段は、特に限定されず、公知の混合手段であってよく、前記混合手段に、撹拌等を適宜用いてもよく、撹拌機、混合器等も適宜用いてよい。前記の好適な第1の工程を実施することにより、無色透明の第1の混合液をより効率よく白濁等することなく容易に得ることができる。
【0016】
前記第2の工程では、前記第1の混合液よりも多くの量の水に、銀を含む水溶性金属塩を加えて混合して第2の混合液を得る。
【0017】
前記水は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。前記水としては、例えば、純水、超純水、精製水、イオン交換水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、海水などが挙げられる。本発明においては、前記水が精製水、イオン交換水、純水又は超純水であるのが好ましい。
【0018】
前記第1の混合液に対する前記水の配合量は、前記混合液よりも多くの量であれば特に限定されないが、本発明においては、前記第1の混合液に対して前記水が150~500体積%の割合となる量であるのが好ましい。このような好ましい範囲によれば、触媒活性とコーティング液性(粘性)との両方をより良好なものとすることができ、銀等による抗菌性の効果をより長く持続させることができるようになる。
【0019】
前記水溶性金属塩は、水に溶解可能な金属塩であって、銀を含んでいれば特に限定されない。前記金属塩としては、特に限定されないが、好適には例えば、硝酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩又はこれらのいずれか2種以上の組合せから選択される金属塩が挙げられる。本発明においては、前記水溶性金属塩が、硝酸銀を含むのが好ましく、硝酸銀であるのがより好ましい。
【0020】
前記水溶性金属塩の前記水に対する配合割合は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、0.01~1体積%であるのが好ましい。前記第2の工程において用いられる混合手段は、特に限定されず、公知の混合手段であってよく、前記第1の工程において用いられる混合手段と同様であってよい。
【0021】
前記第3の工程では、前記第1の混合液と前記第2の混合液とを混合して抗菌性光触媒コーティング組成物を得る。本発明においては、通常、前記第1の工程で得られた前記第1の混合液と、前記第2の工程で得られた前記第2の混合液とをそのまま混合するが、本発明の目的を阻害しない範囲内において、適宜、配合割合を変えてもよいし、公知の添加剤を加えてもよい。なお、本発明においては、添加剤(特にバインダーや界面活性剤等)を用いないのが抗菌性をより優れたものとすることができるので好ましい。また、本発明においては、前記添加剤としてバインダーを用いる場合には、前記バインダーが水溶性バインダーであるのが抗菌性をより均質に奏することができるので好ましい。
【0022】
前記第3の工程において用いられる混合手段は、前記第1の工程において用いられる混合手段と同じであってよいが、本発明においては、前記第3の好適において、前記第1の混合液に前記第2の混合液を滴下することにより加えるのが好ましい。このようにすることにより、抗菌性光触媒コーティング組成物を、実質的に無色透明な液体又はpHが中性である液体として、より容易に得ることができる。
【0023】
上記のように得られた抗菌性光触媒コーティング組成物は、通常、銀、光触媒、前記の炭素数3~5のアルコール及び前記水を含む抗菌性光触媒コーティング組成物であって、実質的に無色透明な液体であるか、又はpHが中性であり、このような抗菌性光触媒コーティング組成物も本発明に包含される。また、前記製造方法の好適な態様によれば、アモルファスTiOナノ粒子を光触媒として容易に得ることができ、光触媒の触媒活性をより良好なものとすることができる。
【0024】
前記銀は、Ag原子が含まれていれば特に限定されず、イオンの形態で含まれていてもよい。前記銀の含有量は特に限定されないが、抗菌剤として用いられる公知の含有量の範囲であってよい。
【0025】
前記光触媒は、通常、光を照射すると、酸化作用および還元作用の少なくともいずれかが促進されるものをいい、その結果、雑菌や細菌や臭気物質などの有機物を分解する分解作用と、表面が水に濡れやすい親水作用と、菌の繁殖を抑制するあるいは菌の活動を停止させる抗菌作用とを得ることができる。本発明においては、前記光触媒が酸化チタンであるのが好ましい。前記光触媒の含有量は特に限定されないが、光触媒として用いられる公知の含有量の範囲であってよい。
【0026】
前記抗菌性光触媒コーティング組成物における前記の炭素数3~5のアルコールと前記水との含有比率は、特に限定されないが、前記アルコールに対して、水の含有量が150~500体積%であるのが好ましい。
【0027】
本発明において「実質的に無色透明」とは、着色が認められないかほとんど認められず、透き通っている状態を意味し、具体的には、可視光領域(420nm以上700nm以下の波長範囲)の光の透過率が80%以上、好ましくは90%以上であることを意味する。
【0028】
また、「中性」とは、通常、25℃におけるpH5.8以上8.6以下の範囲内を意味するが、本発明においては、環境省で定められる一律排水基準における水素イオン濃度許容限度範囲(海域以外の公共用水域に排出されるもの)と同じであってよい。
【0029】
また、前記抗菌性光触媒コーティング組成物は、本発明の目的を阻害しない限り、さらに公知の増粘剤等の添加剤を加えて、ゾル状等の液状以外の形態にして用いてもよい。
【0030】
前記抗菌性光触媒コーティング組成物は被コーティング物にコーティングされる。前記コーティングに用いられるコーティング手段は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知のコーティング手段であってよい。前記コーティング手段としては、例えばスプレー、塗布、浸漬、含浸等のコーティング手段が挙げられる。
【0031】
前記被コーティング物は、材質や形状等特に限定されず、製品(中間製品を含む)の全部又は一部等であってもよい。本発明においては、前記被コーティング物が、透明又は半透明であるのが好ましく、透明であるのがより好ましく、ガラス又はアクリルを構成材料として含むのがコーティングの相性がより良好であるので最も好ましい。前記透明とは、透き通っている状態を意味し、具体的には、可視光領域(420nm以上700nm以下の波長範囲)の光の透過率が80%以上、好ましくは90%以上であることを意味する。また、前記透明又は半透明とは、具体的には、可視光領域(420nm以上700nm以下の波長範囲)の光の透過率が50%以上であることを意味する。
【0032】
また、本発明においては、前記のコーティングを、前記抗菌性光触媒コーティング組成物を前記被コーティング物にスプレーすることにより行うのが好ましく、前記のコーティングを、前記抗菌性光触媒コーティング組成物を前記被コーティング物にスプレーし、ついで拭くことにより行うのが、よりムラなくより効率的に効果を優れたものとすることができるので、より好ましい。また、本発明においては、前記のコーティングを、2度以上繰り返し行うのも好ましい。2度以上繰り返すことにより、光触媒の触媒活性をより向上させることができ、抗菌性をより長時間持続させることができる。
【実施例0033】
(実施例1)
1.抗菌性光触媒コーティング組成物の調整
イソプロパノール100mLに、50μLのチタンイソプロポキシド(Ti(OPr))を滴下し、攪拌した後、第1の混合液を得た。また、精製水200mLに50μLの硝酸銀を滴下し、撹拌した後、第2の混合液を得た。第1の混合液に、第2の混合液を滴下し、撹拌することにより、液状でかつ無色透明の抗菌性光触媒コーティング組成物を得た。
【0034】
2.コーティング及び抗菌性試験評価
上記1.で得た抗菌性光触媒コーティング組成物をスプレーボトルに移し替え、無色透明なガラスに、抗菌性光触媒コーティング組成物を吹き付けた。吹き付け後、ガラス表面の抗菌性光触媒コーティング組成物の液滴をペーパータオルで軽く拭き取った後、コーティング面を、ルミテスターPD-20(キッコーマンバイオケミファ株式会社製)を用いて、ATP(アデノシン三リン酸)の量を測定した。コーティング処理前、処理直後、さらに処理後1時間後の測定結果を図1に示す。また、同様に、処理後3日後及び10日後のコーティング面のATP量も測定した。測定結果を図2に示す。図1及び図2から、本発明の抗菌性光触媒コーティング組成物は優れた抗菌性及び抗ウイルス性等を有していることが分かる。特に図2より、長期にわたり抗菌性を有することが分かる。また、図3に示すように、上記1.で得た抗菌性光触媒コーティング組成物を観察したところ、着色が認められず、透き通っている状態であることを確認し、さらに、可視光領域(420nm以上700nm以下の波長範囲)の光の透過率が90%以上であることも確認した。また、pHも中性であった。
【0035】
(比較例1)
比較用に、硝酸銀を用いなかったこと以外、実施例1と同様にして抗菌性光触媒コーティング組成物を得た。
【0036】
上記2.と同様にして、比較例1で得られた抗菌性光触媒コーティング組成物についてもATPの量を測定した。測定結果を、実施例1の抗菌性光触媒コーティング組成物の結果とともに表1に示す。なお、表1において、1000/cm以上のものは「不合格」とした。表1から明らかなとおり、本発明品が、10日以上にもわたり抗菌性を良好に維持することができ、比較例品に比べ優れた抗菌性を有していた。
【0037】
【表1】
【0038】
(比較例2)
比較用に、酸化チタンを用いなかったこと以外、実施例1と同様にして抗菌性光触媒コーティング組成物を得た。そして、上記2.と同様にして、比較例2で得られた抗菌性光触媒コーティング組成物についてATPの量を測定したところ、処理直後が202/cmであり、1時間後が301/cmであった。そのため、比較例1と同様、本発明品は比較例2のような銀のみの場合に比べても優れた抗菌性を有していることがわかった。
【0039】
(実施例2)
精製水200mLに50μLの硝酸銀を滴下したものに、さらに添加剤としてバインダー(PVA)を少量加え、撹拌したこと以外、実施例1と同様にして透明な抗菌性光触媒コーティング組成物を得た。透明性は実施例1と同様の透明性を有していた。また、得られた抗菌性光触媒コーティング組成物の抗菌性を実施例1と同様にして評価した。結果を、表2に実施例1並びに比較例1及び2の結果と合わせて示す。なお、表2の抗菌性において、1000/cm以上を「×」とし、400/cm以上1000/cm未満を「△」とし、100/cm以上400/cm未満を「〇」とし、100/cm未満を「◎」とした。
【0040】
【表2】
【0041】
表2より、実施例1及び2の本発明品は、比較例1及び2の比較例品に比べ、抗菌性に優れていることがわかった。また、バインダーを用いた実施例2よりも、バインダーを用いなかった実施例1の方が、抗菌性試験結果の数値がより低い傾向があった。
【0042】
また、実施例1の手順を変え、精製水200mLにイソプロパノール100mLを加えて撹拌した後、50μLのチタンイソプロポキシド(Ti(OPr))と、50μLの硝酸銀とを滴下したところ、白濁し、実施例1のような無色透明の抗菌性光触媒コーティング組成物は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の抗菌性光触媒コーティング組成物及びその製造方法は、抗菌処理や抗ウイルス処理が望まれる製品等に有用であり、特に透明な間仕切り等に好適に利用可能である。
図1
図2
図3