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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145414
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】空気浄化材
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
A61L9/01 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120204
(22)【出願日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2021045428
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】392014760
【氏名又は名称】新光機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蕗澤 武夫
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA19
4C180CC01
4C180CC11
4C180CC15
4C180EA02Y
4C180EA07X
4C180EA08X
4C180EA09Y
(57)【要約】
【課題】従来よりも安価に製造することができる銅の抗菌・抗ウイルス作用を利用した空気浄化材を提供する。
【解決手段】銅素材を機械加工した際に発生した削り屑を、通気性のあるネットの内部に収納した。削り屑は、銅素材を機械加工した際に発生する螺旋状または剥片状または粒状の削り屑とすることができる。これらの削り屑を圧縮した圧縮成形体を、通気性のあるネットの内部に収納し、あるいは圧縮することなく通気性のあるネットの内部に収納した。通気性のあるネットとしては、ステンレスネットまたは布製の袋を用いることができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅素材を機械加工した際に発生した削り屑を、通気性のあるネットの内部に収納したことを特徴とする空気浄化材。
【請求項2】
前記削り屑が、銅素材を機械加工した際に発生する螺旋状または剥片状または粒状の削り屑であることを特徴とする請求項1に記載の空気浄化材。
【請求項3】
前記削り屑を圧縮した圧縮成形体を、通気性のあるネットの内部に収納したことを特徴とする請求項1または2に記載の空気浄化材。
【請求項4】
前記削り屑を、圧縮することなく通気性のあるネットの内部に収納したことを特徴とする請求項1または2に記載の空気浄化材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅の抗菌・抗ウイルス作用を利用した、室内用の空気浄化材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅に抗菌・抗ウイルス作用があることは、従来から広く知られている。そのメカニズムは、銅イオンがウイルスのエンベローブ膜に穴を開けたり、銅イオンによって生成されたフリーラジカルが遺伝物質を分解するためであろうと考えられている。また米国の国立衛生研究所(NHI)の研究チームによれば、新型コロナウイルスの残存時間はプラスチックやステンレスの表面では72時間、段ボールの表面では24時間であるのに対して、銅の表面では4時間であるとのことであり、銅が新型コロナウイルスに対しても抗ウイルス作用を持つことが確認されている。
【0003】
このような抗菌・抗ウイルス作用を利用した材料も従来から提案されており、特許文献1には粒子径を1nmから1μmとした非常に微細な銅合金粉末を物品の表面に分散させることが記載されている。また特許文献2には、銅合金糸を含む複合繊維を用いた抗菌性布帛が記載されている。また特許文献3には、ポルトランドセメントに銅粉末を混合した抗菌組成物が開示されている。
【0004】
しかしこれらの従来の抗菌・抗ウイルス材は表面積を増大させるために銅を微細な粉末または微細な繊維に加工しており、そのために多額の製造コストがかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-65375号公報
【特許文献2】特開2019-143272号公報
【特許文献3】特開2006-249041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、従来よりも安価に製造することができる銅の抗菌・抗ウイルス作用を利用した空気浄化材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は銅製品の加工を業としており、銅素材を旋盤やフライス盤などで機械加工する際に発生する大量の削り屑に着目した。この削り屑は細かい螺旋状または剥片状または粒状であり、螺旋状の場合には、その螺旋の直径は1~10mm程度の物が大部分を占めている。これらの削り屑はこれまで廃棄物として処分されていたのであるが、これを利用すればきわめて安価に銅の抗菌・抗ウイルス作用を利用した空気浄化材を製造できることに思い至った。
【0008】
本発明は上記の知見に基づいてなされたものであって、銅素材を機械加工した際に発生した削り屑を、通気性のあるネットの内部に収納したことを特徴とするものである。
【0009】
なお、前記削り屑は、銅素材を機械加工した際に発生する螺旋状または剥片状または粒状の削り屑とすることができる。これらの削り屑を圧縮した圧縮成形体を、通気性のあるネットの内部に収納し、あるいは圧縮することなく通気性のあるネットの内部に収納することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の空気浄化材は、従来は廃棄物として処分されていた銅素材を切削した際に発生する削り屑を原料としているため、極めて安価に製造することができる。この削り屑は細かい螺旋状または剥片状または粒状であるため、大きい表面積を持つ。この削り屑を圧縮成形体とした場合には、単位体積当たりの表面積を更に増大させることができるとともに、削り屑を相互に絡ませて一定形状とすることができる。更にこれらの切り屑を通気性のあるネットに収納したことにより、空気を流通させながら削り屑の飛散を防止し、室内に設置した場合にも銅の微細片が散乱することがない。
【0011】
本発明の空気浄化材はネットに吊り紐をつけ、室内に吊り下げたり、受け皿に載せて室内に置いたりして使用することができるものであり、室内の空気中に浮遊する細菌やウイルスが銅素材の削り屑の表面に接触すると、その活性を低下させることができる。また銅には抗黴効果や、消臭機能もあるため、室内に発生する黴を抑制したり、室内を消臭することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】削り屑の外観図である。
図2】螺旋状の削り屑の塊りを示す外観図である。
図3】圧縮成形体の外観図である。
図4】第1の実施形態を示す外観図である。
図5】第2の実施形態を示す外観図である。
図6】第3の実施形態を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を説明する。
銅素材を工作機械で機械加工する際に発生する削り屑10は切粉とも呼ばれ、その形状は様々であるが、大部分は図1に示すように螺旋状または剥片状であるか、更に細かい粒状である。特に銅素材を旋盤やフライス盤で切削する際に発生する削り屑10は、細かい螺旋状であり、切削状態によって異なるが、その幅は1~10mm程度、螺旋の直径は1~10mm程度、その厚さは数μmから数10μm程度である。なお本発明で用いる銅素材は純銅であっても銅合金であってもよく、例えば溶接用チップに用いられる少量のジルコニウムやタングステンを含む銅合金であってもよい。ジルコニウムやタングステンなどの添加元素は抗菌・抗ウイルス作用を持つものではないが、銅の抗菌・抗ウイルス作用を阻害することはない。
【0014】
仮に一辺が1cmの立方体状の銅素材を厚さ10μmの削り屑とした場合を想定すると、銅素材の状態における表面積は6cmである。しかし削り屑は1000枚にスライスされているのでその表面積は端面を無視して2000cmとなり、約333倍となる。このように削り屑の表面積は銅素材の表面積に比較して非常に大きくなり、空気との接触面積が増加する。しかも螺旋状または剥片状の切り屑10の内部に形成される空間の形状は複雑に入り組んでいるので、マスクと同様に空気中に浮遊する細菌やウイルスを確実に銅表面で捕捉することができる。このため、空気中に浮遊する細菌やウイルスの活性を低下させる効果も大きくなる。
【0015】
しかもこのような削り屑10はかなりの長さにわたり連続しているので、銅粉末や銅繊維のように空中に飛散することがなく、誤って吸い込むこともない。なお銅は鍋やフライパンなどにも使用されている安全な金属であるから、誤って幼児が触ったり舐めたりしても、人体への悪影響はない。
【0016】
工作機械から回収された削り屑10は図2に示すように絡み合った状態にあり、そのまま寄せ集めても全体の形状が不定形であって取扱いにくいうえ、薄いエッジ部分で手を切ったりするおそれがあるので、第1に実施形態ではこれを図3に示すような圧縮成形体11に加工する。この加工は金型の内部に削り屑10を入れ、プレス加工することによって容易に行うことができる。図3では球形の圧縮成形体11に加工したが、その形状は直方体、板状体など任意である。これにより螺旋状の削り屑10は相互に絡まり合うとともに塑性変形し、一定形状を維持できるようになる。
【0017】
この時のプレス圧は螺旋状の切り屑が切り屑としての形状を保ったまま相互に密着する程度とすることが好ましく、切り屑同士が完全に押し潰されて密着した状態になると、表面積が減少するとともに通気性も損なわれるので好ましくない。よって圧縮比は1/3~2/3程度とすることが好ましい。
【0018】
図4に示すように、本発明ではこの圧縮成形体11を更にネット12に収納して、安全性と取扱い性を高めた空気浄化材とした。ネット12としては耐久性、耐食性、強度に優れたステンレスネットを用いることが好ましい。しかしネット12の材質は必ずしもステンレスに限定されるものではなく、高強度樹脂製や布製とすることもできる。ネット12の目開きは空気の流通を妨げず、切り屑10の先端が飛び出さないように適宜設定することができる。
【0019】
図4に示す第1の実施形態では、ネット12に吊り紐13を取り付け、空気浄化材を室内の天井等から吊り下げることができるようにした。この空気浄化材を窓際や通気口等の空気流路に吊り下げれば、空気中に浮遊する細菌やウイルスを銅の表面に接触させることができ、それらの活性を低下させることができる。また吊り下げるのではなく、図5に示す第2の実施形態のように複数の圧縮成形体11をネット12に収納し、机上に置いたりすることもできる。なお、ネット12としては、開口率の大きいパンチングメタルを用いてもよい。
【0020】
図6に示す第3の実施形態では、削り屑10を圧縮することなく、通気性のあるネットの内部に収納した。この実施形態のネットは通気性のある布袋14であり、口紐15により口部を封鎖している。この実施形態では削り屑10を圧縮していないため、ネットの目開きが大きいと微細な削り屑10が漏れるおそれがあるため、ネットの目開きを小さくしておくことが好ましい。この第3の実施形態の空気浄化材も、空気中に浮遊する細菌やウイルスを表面積の大きい銅の切り屑の表面に接触させ、それらの活性を低下させることができる。
【0021】
第3の実施形態では布袋14を受け皿16の上に載せて室内に置くようにした。布袋14及び受け皿16に装飾を施せば、室内装飾品を兼ねた空気浄化材として利用することができる。口紐15を利用して吊り下げることも可能である。
【0022】
以上に説明したように、本発明の空気浄化材はこれまで廃棄物として処分されていた銅素材の切り屑を利用したものであるから製作コストが安価であり、しかも優れた抗菌・抗ウイルス効果や抗黴、消臭効果を得ることができる。また人体に安全な銅を用いているため、人体に悪影響を及ぼすことはなく、誤って幼児が手に触れても安全であるなど、多くの利点を持つ。
【符号の説明】
【0023】
10 切り屑
11 圧縮成形体
12 ネット
13 吊り紐
14 布袋
15 口紐
16 受け皿
図1
図2
図3
図4
図5
図6