(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145446
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】紙臭が抑制された容器詰茶飲料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23F 3/16 20060101AFI20220926BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A23F3/16
C12N1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166750
(22)【出願日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2021046533
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和3年3月25日にキリンビバレッジ株式会社に「キリン午後の紅茶ミルクティープラス」に関する研究について公開 (2)令和3年7月29日にキリングループのウェブサイトにて公開 (3)令和3年7月29日にAP日本橋ルームF+G及びZoomによるオンラインにて行った新商品発表会で公開 (4)令和3年9月9日に有明セントラルタワーホール&カンファレンス内4階ホールB及びZoomによるオンラインにて行った新商品発表会で公開
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 深保子
(72)【発明者】
【氏名】四元 祐子
【テーマコード(参考)】
4B027
4B065
【Fターム(参考)】
4B027FB01
4B027FB08
4B027FB13
4B027FC01
4B027FE06
4B027FE08
4B027FK01
4B027FK02
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4B027FP85
4B027FP90
4B065AA01X
4B065AC20
4B065CA41
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、JCM5805株を含有する容器詰茶飲料において紙臭が生じるところ、かかる紙臭が抑制された容器詰茶飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【解決手段】本発明は、茶ポリフェノール濃度が10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株を含有させ、100℃以上に加熱処理する工程を含む製造方法により得られる容器詰茶飲料に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶ポリフェノール濃度が10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株を含有させ、100℃以上に加熱処理する工程を含む製造方法により得られる容器詰茶飲料。
【請求項2】
JCM5805株の含有量が、60億個/100mL 以上である請求項1に記載の容器詰茶飲料。
【請求項3】
加熱処理が、111~150℃であって、かつ、F0値が1~40となる加熱処理である請求項1又は2に記載の容器詰茶飲料。
【請求項4】
茶ポリフェノール濃度が、10mg/100mL~200mg/100mLである請求項1~3のいずれかに記載の容器詰茶飲料。
【請求項5】
茶抽出液が緑茶抽出液であり、かつ、容器詰茶飲料が容器詰緑茶飲料であるか、又は、茶抽出液が紅茶抽出液であり、かつ、容器詰茶飲料が容器詰紅茶飲料である、請求項1~4のいずれかに記載の容器詰茶飲料。
【請求項6】
乳原料をさらに含有する、請求項1~5のいずれかに記載の容器詰茶飲料。
【請求項7】
容器詰茶飲料の製造において、茶ポリフェノール濃度が10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株を含有させ、100℃以上に加熱処理する工程を含む、容器詰茶飲料の製造方法。
【請求項8】
容器詰茶飲料の製造において、茶ポリフェノール濃度が10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株を含有させ、100℃以上に加熱処理する工程を含む、容器詰茶飲料において、茶成分とJCM5805株により生じる紙臭を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙臭が抑制された容器詰茶飲料、及びその製造方法に関する。より詳細には、容器詰茶飲料に、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805株(以下、単に「JCM5805株」とも表示する。)を含有させると紙臭が生じるところ、かかる紙臭が抑制された容器詰茶飲料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりから、健康増進作用を有する飲食品への注目が高まっている。中でも、緑茶飲料や紅茶飲料などの茶飲料は、カテキンやテアニンなどの健康成分を含んでおり、消費者の需要も増加している。また、茶飲料を場所や時間を問わずに飲用できることから、容器詰緑茶飲料や容器詰紅茶飲料などの容器詰茶飲料が多数上市されている。
【0003】
乳酸菌を飲食品に利用した技術として、例えば特許文献1には、乳酸菌等の死菌体を容器詰コーヒー飲料に配合することによって、コーヒーのコク(飲みごたえ)を向上させる方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、茶ポリフェノール濃度10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株を含有させると紙臭が生じることや、かかる紙臭が100℃以上の加熱処理を施すことで抑制できることはこれまでに知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、JCM5805株を含有する容器詰茶飲料において紙臭が生じるところ、かかる紙臭が抑制された容器詰茶飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
なお、茶ポリフェノール濃度10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株を含有させると、紙臭が生じることは、本発明者らが初めて見いだした新規な課題である。かかる紙臭が発生するメカニズムは解明されていないが、JCM5805株でわずかに感じられる独特の異臭が茶成分の茶ポリフェノールに反応又は合わさることにより、茶飲料の香味に不調和を与えるような紙臭を生じたことが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、本発明の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、茶飲料の製造において、茶抽出液にJCM5805株を含有させ、100℃以上に加熱処理すると、前述の紙臭が抑制され、上記課題を解決し得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)茶ポリフェノール濃度が10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株を含有させ、100℃以上に加熱処理する工程を含む製造方法により得られる容器詰茶飲料;
(2)JCM5805株の含有量が、60億個/100mL 以上である上記(1)に記載の容器詰茶飲料;
(3)加熱処理が、111~150℃であって、かつ、F0値が1~40となる加熱処理である上記(1)又は(2)に記載の容器詰茶飲料;
(4)茶ポリフェノール濃度が、10mg/100mL~200mg/100mLである上記(1)~(3)のいずれかに記載の容器詰茶飲料;
(5)茶抽出液が緑茶抽出液であり、かつ、容器詰茶飲料が容器詰緑茶飲料であるか、又は、茶抽出液が紅茶抽出液であり、かつ、容器詰茶飲料が容器詰紅茶飲料である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の容器詰茶飲料;
(6)乳原料をさらに含有する、上記(1)~(5)のいずれかに記載の容器詰茶飲料;
(7)容器詰茶飲料の製造において、茶ポリフェノール濃度が10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株を含有させ、100℃以上に加熱処理する工程を含む、容器詰茶飲料の製造方法;や、
(8)容器詰茶飲料の製造において、茶ポリフェノール濃度が10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株を含有させ、100℃以上に加熱処理する工程を含む、容器詰茶飲料において、茶成分とJCM5805株により生じる紙臭を抑制する方法;
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、JCM5805株を含有する容器詰茶飲料において紙臭が生じるところ、かかる紙臭が抑制された容器詰茶飲料、及びその製造方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805株と、該株と同等の株(該株に由来する株および該株が由来する株)との間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、
[1]茶ポリフェノール濃度が10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株を含有させ、100℃以上に加熱処理する工程を含む製造方法により得られる容器詰茶飲料;
[2]容器詰茶飲料の製造において、茶ポリフェノール濃度が10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株を含有させ、100℃以上に加熱処理する工程を含む、容器詰茶飲料の製造方法;及び、
[3]容器詰茶飲料の製造において、茶ポリフェノール濃度が10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株を含有させ、100℃以上に加熱処理する工程を含む、容器詰茶飲料において、茶成分とJCM5805株により生じる紙臭を抑制する方法;
などの実施態様を含んでいる。
【0012】
(本発明における容器詰茶飲料)
本発明における容器詰茶飲料は、茶ポリフェノール濃度が10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株を含有させ、100℃以上に加熱処理する工程を含む製造方法により得られる容器詰茶飲料である。
【0013】
(JCM5805株)
本発明における容器詰茶飲料を製造する際に用いる「JCM5805株」としては、JCM5805株の菌体である限り生菌体であっても、死菌体であってもよいが、JCM5805株の死菌体であることが好ましい。かかるJCM5805株としては、JCM5805株の乾燥物であっても非乾燥物であってもよいが、保存安定性の好ましさの観点や、課題となる紙臭が生じ易いことなどの観点から、好ましくはJCM5805株の乾燥物(好ましくはJCM5805株の死菌体の乾燥物)が挙げられ、より好ましくはJCM5805株の乾燥粉末(好ましくはJCM5805株の死菌体の乾燥粉末)が挙げられる。
乾燥粉末化の方法としては特に指定されないが、凍結乾燥、熱風乾燥又は噴霧乾燥などの処理を行い乾燥粉末化することができ、噴霧乾燥による粉末化が好ましい。
なお、本発明における容器詰茶飲料を製造する際にJCM5805株の生菌体を用いた場合であっても、加熱処理工程により、基本的には、乳酸菌の多くは死菌体となる。
【0014】
本発明における「JCM5805株」には、本発明の効果が得られる限り、JCM5805株と同等の菌株も、該菌株に含まれる。ここで、同等の菌株とは、JCM5805株から由来している菌株(菌株A)、JCM5805株が由来する菌株(菌株B)、又は、前述の菌株A若しくは菌株Bの子孫菌株をいう。同等の菌株は他の菌株保存機関に保存されている場合もある。
図1に、JCM5805株に由来する菌株、及び、JCM5805株が由来する菌株を示す。
図1に記載のJCM5805株の同等の菌株であっても、紙臭が生じ、かかる紙臭が100℃以上の加熱処理を施すことで抑制できる限り、本発明における「JCM5805株」として用いることができる。
【0015】
JCM5805株の菌体の調製方法は特に制限されず、JCM5805株の生菌体の調製方法としては、例えば、JCM5805株を培養した培地から、ろ過、遠心分離等により菌体を集菌する方法を挙げることができる。また、JCM5805株の死菌体の調製方法としては、例えば、JCM5805株を培養した培地を殺菌してから、ろ過、遠心分離等により菌体を集菌する方法や、JCM5805株を培養した培地から、ろ過、遠心分離等により菌体を集菌してから、殺菌する方法などを挙げることができ、必要に応じてさらに乾燥処理や破砕処理を行うことができる。
なお、殺菌の手段は特に制限されず、加熱のみならず、紫外線やγ線照射など、菌を死滅させる常套手段を用いることができる。
【0016】
本発明において、容器詰茶飲料におけるJCM5805株の含有量としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されないが、紙臭の抑制の程度の好ましさ、及び、容器詰茶飲料の全体の香味の好ましさの観点から、容器詰茶飲料100mL当たりのJCM5805株の菌体の個数として、例えば、「60億個/100mL」以上が挙げられ、好ましくは60~5000億個/100mL、より好ましくは150~4800億個/100mL又は60~4500億個/100mL、さらに好ましくは160~4500億個/100mL、より好ましくは160~3000億個/100mL、さらに好ましくは160~1500億個/100mL、より好ましくは250~500億個/100mLが挙げられる。
JCM5805株の菌体の個数は、直接鏡検法、粒子電気的検知帯法、PCR法、フローサイトメトリー法等にて計測することができる。
なお、JCM5805株の菌体の乾燥物1g当たりの菌体の個数は前述した計測法により測定することができ、容器詰茶飲料におけるJCM5805株の配合量を調整することができる。
容器詰茶飲料中のJCM5805株の菌体個数は、直接鏡検法、フローサイトメトリー法等にて計測することができる。より正確には飲料中のその他原料由来の粒子の影響も考慮した方法を用いることができる。
【0017】
(茶抽出液)
本発明における「茶抽出液」とは、茶葉(抹茶等の茶葉粉砕物を含む)を抽出処理に付することにより得られる、抽出液を意味する。本発明に用いられる茶抽出液としては、茶葉からの抽出液(茶葉抽出液)それ自体や、その加工品類(例えば、濃縮液体エキス、粉末エキス)の希釈液などが挙げられ、従来、茶飲料の製造に用いられている茶抽出原料(好ましくは緑茶抽出原料、紅茶抽出原料及び/又は烏龍茶抽出原料)であれば、特に限定されず、適宜選択することができる。本明細書において、「茶抽出液」として、不発酵茶抽出液(例えば緑茶抽出液)、発酵茶抽出液(例えば紅茶抽出液)、半発酵茶抽出液(例えば烏龍茶抽出液)が挙げられ、中でも、緑茶抽出液、紅茶抽出液、烏龍茶抽出液が好ましく挙げられ、中でも、緑茶抽出液や紅茶抽出液がより好ましく挙げられる。なお、本発明において、抽出処理とは、茶成分が抽出溶媒中に溶出されていればよく、例えば、抹茶等の茶葉粉砕物を溶解させる処理等の態様も含まれる。
【0018】
茶抽出液の調製に用いられる茶葉としては、ツバキ科の常緑樹である茶樹カメリア・シネンシス(Camelliasinensis var.)に属する茶葉を用いることができる。本発明の茶飲料の製造に用いられる茶葉は、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではなく、煎茶、玉露、抹茶、釜炒り茶、深蒸し茶、番茶、ほうじ茶などの緑茶に代表される不発酵茶の茶葉に限らず、烏龍茶のような半発酵茶の茶葉や、紅茶のような発酵茶の茶葉なども用いることができる。本発明に用いられる茶葉として、緑茶葉や紅茶葉が好ましく挙げられる。本発明においてはまた、複数種類の原料および茶葉が使用されてもよい。
【0019】
茶葉の抽出処理の方法としては、特に限定されず、食品加工分野で一般的に用いられている種々の抽出方法を用いることができ、例えば、溶媒抽出、気流抽出、圧搾抽出などが包含され、必要に応じて、沈殿もしくは濾過などの固液分離、濃縮、遠心分離、乾燥(例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥)又は粉末化などの処理をさらに施してもよい。
【0020】
ここで、溶媒抽出で用いられる抽出溶媒としては、水(例えば、硬水、軟水、イオン交換水および天然水)が望ましい。抽出溶媒の量は、当業者が適宜選択することができ、特に限定されない。例えば、抽出溶媒が水の場合は、その量は、茶葉の1~100倍量(質量)である。
【0021】
抽出温度や抽出時間は、当業者が適宜選択することができ、特に限定されない。例えば、抽出溶媒が水の場合は、その温度および時間は、10~120℃で1分~12時間が挙げられる。
【0022】
抽出処理の一例としては、茶葉を、水中に、0~90℃で、1分~24時間浸漬および攪拌し、その後、茶葉を濾過または遠心分離する方法が挙げられる。ここで、抽出時の温度や時間などの条件は、特に限定されず、茶葉の種類や量によって当業者が任意に選択し、かつ設定することができる。
【0023】
茶抽出液の調製において、茶エキスや茶パウダーなどの茶抽出液の濃縮物や精製物を用いてもよく、例えば、ポリフェノン(三井農林社製)、サンフェノン(太陽化学社製)、テアフラン(伊藤園社製)などの市販品を用いることができる。また、これらの茶濃縮物(好ましくは緑茶濃縮物、紅茶濃縮物及び/又は烏龍茶濃縮物など)や茶精製物(好ましくは緑茶精製物、紅茶精製物及び/又は烏龍茶精製物など)は、そのまま、又は水で溶解若しくは希釈したものを単独で使用しても、複数の種類を混合して用いても、茶抽出液と混合して用いてもよい。
【0024】
茶抽出液の茶ポリフェノール濃度としては特に制限されないが、紙臭の課題が生じることから、10mg/100mL以上が挙げられ、紙臭の抑制の程度の好ましさ、及び、容器詰茶飲料の全体の香味の好ましさの観点から、好ましくは10mg/100mL~200mg/100mL、又は、10mg/100mL~100mg/100mL、より好ましくは40mg/100mL~100mg/100mLが挙げられる。
茶抽出液の茶ポリフェノール濃度は、茶飲料の製造に使用する茶葉の量や、茶抽出液の濃縮物や精製物の使用量を調整することによって、調整することができる。
【0025】
なお、茶抽出液の調製に際し茶葉以外の任意の原料を配合してよい。また、本発明に用いられる茶葉や茶抽出液は、本発明の効果が得られる限り、乳酸菌で発酵した茶葉や茶抽出液であってもよいが、乳酸菌で発酵していない茶葉(好ましくは緑茶葉、紅茶葉及び/又は烏龍茶葉)や茶抽出液(好ましくは緑茶抽出液、紅茶抽出液及び/又は烏龍茶抽出液)であることが好ましい。
【0026】
(茶飲料)
本発明における「茶飲料」としては、特に限定されないが、例えば、不発酵茶(例えば、緑茶)飲料、発酵茶(例えば、紅茶)飲料、及び、半発酵茶(例えば、烏龍茶)飲料、並びにこれらの一部または全部のブレンド茶飲料が挙げられ、中でも、緑茶飲料、烏龍茶飲料、紅茶飲料が好ましく、中でも緑茶飲料、紅茶飲料がより好ましく挙げられる。
【0027】
本発明における容器詰茶飲料の茶ポリフェノール濃度としては特に制限されないが、紙臭の課題が生じることから、10mg/100mL以上が挙げられ、紙臭の抑制の程度の好ましさ、及び、容器詰茶飲料の全体の香味の好ましさの観点から、好ましくは10mg/100mL~200mg/100mL、又は、10mg/100mL~100mg/100mL、より好ましくは40mg/100mL~100mg/100mLが挙げられる。
本発明における容器詰茶飲料の茶ポリフェノール濃度は、茶飲料の製造に使用する茶葉の量や、茶抽出液の濃縮物や精製物の使用量を調整することによって、調整することができる。
容器詰茶飲料や茶抽出液の茶ポリフェノール濃度は、茶類のポリフェノール量を評価する際の基準である日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)を用いて測定することができる。この測定方法においては、液中のポリフェノールと、酒石酸鉄試薬とを反応させて生じた紫色成分について、吸光度(540nm)を測定することにより、没食子酸エチルを標準物質として作成した検量線を用いて定量することができる。このようにして得られた定量した値に1.5倍したものを茶ポリフェノール量とすることができる。
茶ポリフェノール濃度の測定は、上記の酒石酸鉄吸光度法の他に、フォーリン・チオカルト法、フォーリン・デニス法等を用いてもよいが、酒石酸鉄吸光度法が適している場合は、酒石酸鉄吸光度法が好ましく挙げられる。フォーリンチオカルト法やフォーリンデニス法は、例えば、乳を含有した茶飲料(例えば紅茶飲料)のポリフェノール濃度を測定する場合などに、特に好適に用いることができる。
【0028】
本発明の容器詰茶飲料では、通常の飲料の製造に用いられている飲料用添加剤、例えば、酸味料、香料、色素、果汁、甘味料(高甘味度甘味料を含む)、乳原料、茶葉粉砕物(抹茶、粉茶など)、食品添加剤(例えば、酸化防止剤、保存料、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤、苦味料)などを添加してもよい。なお、本発明の容器詰茶飲料は、香料を含有していてもよいが、本発明の効果をより多く享受する観点からは、香料を含有していないことが好ましい。
【0029】
本発明における茶飲料は、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類を含んでいなくてもよいが、含んでいることが好ましい。本発明における「アスコルビン酸」や「アスコルビン酸類」としては、飲料への配合が許容されるものであれば特に制限されない。本発明における「アスコルビン酸」には、L-アスコルビン酸のみならず、その異性体(イソアスコルビン酸等)も含まれる。
【0030】
本発明における「アスコルビン酸類」には、アスコルビン酸の塩、アスコルビン酸の誘導体、アスコルビン酸の誘導体の塩が含まれ、中でも、アスコルビン酸の塩が好ましく含まれる。アスコルビン酸の誘導体としては、アスコルビン酸脂肪酸エステル(例えばアスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル等)、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸配糖体等が挙げられる。
【0031】
アスコルビン酸やその誘導体の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸塩;アンモニウム塩、トリシクロヘキシルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等のアルカノールアミン塩等を挙げることができ、中でも、アルカリ金属塩や、アルカリ土類金属塩が好ましく挙げられる。
【0032】
アスコルビン酸の塩として具体的には、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、イソアスコルビン酸ナトリウムが好ましく挙げられる。また、アスコルビン酸の誘導体又はその塩として、より具体的には、アスコルビン酸2,6-ジパルミテート、アスコルビン酸6-ステアレート、アスコルビン酸-2リン酸ナトリウム、アスコルビン酸-2硫酸2ナトリウム、アスコルビン酸2-グルコシド、アスコルビン酸グルコサミン、L-デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸6-パルミテート、テトライソパルミチン酸L-アスコルビン、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、リン酸L-アスコルビルマグネシウム等が挙げられる。
【0033】
本発明に用いる「アスコルビン酸」や「アスコルビン酸類」としては、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、「アスコルビン酸」や「アスコルビン酸類」としては、市販のものを使用することができる。
【0034】
本発明におけるアスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類の使用量(飲料における含有量又は飲料への添加量)としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されないが、容器詰茶飲料中の「アスコルビン酸」及び「アスコルビン酸類」の合計をアスコルビン酸無水物に換算した濃度で、0.01~0.5重量%、0.01~0.2重量%、0.02~0.1重量%、0.03~0.08重量%などが挙げられる。
茶飲料中のアスコルビン酸濃度は、例えばHPLCを用いて分析することができる。
【0035】
上記の「乳原料」としては、例えば、牛乳、水牛乳、羊乳、山羊乳、馬乳、濃縮乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、クリーム、バター、バターミルク、練乳、乳糖、乳タンパク質濃縮物、及び、ホエイタンパク質濃縮物等の動物性乳原料;並びに/或いは、豆乳、オーツミルク、ライスミルク、アーモンドミルク及びココナッツミルク等の植物性乳原料;からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
本発明における容器詰茶飲料(例えば容器詰紅茶飲料)は、乳原料を含んでいてもよいし(すなわち、例えば容器詰ミルクティー飲料)、含んでいなくてもよいが、本発明の意義をより多く享受する観点から、
(x1)乳原料を含有しない、又は、
(y1)乳原料を含有し、前記乳原料の含有量が、乳由来固形分量として、好ましくは5g/100mL以下、より好ましくは3g/100mL以下、さらに好ましくは2g/100mL以下、より好ましくは1g/100mL以下、さらに好ましくは0.5g/100mL以下である
ことが好適に挙げられる。
【0036】
上記の「甘味料」としては、果糖、ブドウ糖、タガトース、アラビノース等の単糖、乳糖、トレハロース、麦芽糖、ショ糖等の二糖、粉末水あめ等の多糖といった結晶性糖類;や、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖;水あめ、異性化液糖(例えば果糖ぶどう糖液糖)等の非結晶性糖類;マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール;スクラロース、ステビア、甘草抽出物、ソーマチン、グリチルリチン、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK等の高甘味度甘味料;を挙げることができる。
本発明における容器詰茶飲料(例えば容器詰紅茶飲料)は、甘味料を含んでいても、含んでいなくてもよいが、本発明の意義をより多く享受する観点から、
(x2)甘味料を含有しない、又は、
(y2)甘味料を含有し、本発明における容器詰茶飲料における前記甘味料のショ糖換算の甘味度(重量%)が、10重量%以下、好ましくは8重量%以下、より好ましくは6重量%以下、さらに好ましくは4重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下である
ことが好適に挙げられる。
【0037】
本発明における「ショ糖換算の甘味度(重量%)」とは、以下の数式により算出される数値を意味する。
【0038】
(数式)
甘味度=甘味料含有量(g/100g)×その甘味料の相対甘味度
【0039】
上記の「甘味料含有量(g/100g)」とは、本発明の飲料100g当たりに含まれる甘味料(g)の濃度(g/100g)を表し、上記の相対甘味度とは、20℃でのショ糖の甘さを1とした場合の、ある特定の種類の甘味料の相対的な甘みの強さを意味する。したがって、本発明における上記「甘味度」は、ショ糖換算した甘味料の濃度(g/100g)を表しており、本発明の飲料を摂取した者が感じる感覚としての甘味の程度を反映したものである。本発明の飲料に2種類以上の甘味料が含まれている場合は、甘味料の種類ごとに「甘味料含有量(g/100g)×相対甘味度」の値を算出し、算出した各数値の総和をその本発明の飲料の甘味度とする。本発明の飲料における甘味料の含有量は、その飲料について例えばHPLC法、GC-MS法、LC-MS法などの公知の方法を適用することにより測定することができる。
【0040】
各種甘味料の相対甘味度は公知であるが、以下に例を挙げる。
ぶどう糖(0.7)、果糖(0.6)、マルトース(0.4)、ソルビトール(0.7)、マルチトール(0.8)、ステビア(150)、グリチルリチン(170)、アセスルファムK(200)、アスパルテーム(200)、サッカリン(300)、スクラロース(600)、アリテーム(2000)、ソーマチン(3000)。
【0041】
本発明の甘味度の算出例として、0.001gのぶどう糖(相対甘味度0.7)と、0.00001gのスクラロース(相対甘味度600)とを含む本発明の飲料の甘味度を求める。この場合、本発明における甘味度は、0.001×0.7で算出される数値(「0.0007」)と、0.000001×600で算出される数値(「0.0006」)の総和で導かれ、0.0013重量%となる。
【0042】
本発明における容器詰茶飲料のpHとしては特に制限されないが、例えば4.5~7.5が挙げられ、好ましくは6~7.3が挙げられる。
茶飲料のpHは、pHメーターを用いて常法により測定することができる。
【0043】
本発明における茶飲料は容器詰茶飲料である。かかる容器とは、内容物と外気との接触を断つことができる密閉容器を意味し、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器などが挙げられる。
【0044】
(容器詰茶飲料の製造)
本発明における容器詰茶飲料は、茶ポリフェノール濃度が10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株の死菌体を配合し、100℃以上に加熱処理すること以外は、容器詰茶飲料の一般的な製造方法により製造することができる。容器詰茶飲料の一般的な製造方法は公知であり、例えば、茶抽出液を調製し、調合工程、充填工程を経て茶飲料を製造することができる。本発明の飲料の製造においては、通常の茶飲料の処方設計に用いられている飲料用添加剤を添加してもよく、これら添加剤の添加時期は特に制限されない。なお、前述の茶飲料の一般的な製造方法としては、より詳細には、例えば、「改訂新版ソフトドリンクス」(株式会社光琳)を参考とすることができる。
【0045】
本発明における「茶ポリフェノール濃度が10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株を含有させる」こととしては、該茶抽出液がJCM5805株を含有するように、JCM5805株を添加することや、容器詰茶飲料がJCM5805株を含有するように、JCM5805株を添加することが好ましく挙げられ、例えば、茶抽出液それ自体にJCM5805株を添加することのほか、茶抽出液の調製に用いる水にJCM5805株を添加することなども含まれる。
本発明において、JCM5805株を含有させる時期は、容器詰茶飲料の製造において、100℃以上に加熱処理する前のいずれかの段階で実施するある限り特に制限されず、例えば、茶抽出工程の茶抽出液に含有させてもよいし、茶抽出工程の水に含有させてもよいし、調合工程の茶抽出液に含有させてもよいし、容器への充填工程の直前又は直後の茶抽出液に含有させてもよい。
【0046】
本発明における「100℃以上に加熱処理する工程」は、容器詰茶飲料の加熱殺菌処理工程と別の工程であってもよいが、簡便性等の観点から、容器詰茶飲料の加熱殺菌処理工程を兼ねた工程であることが好ましい。かかる加熱処理する工程又は加熱殺菌処理する工程は、容器への充填前であっても充填後であってもよい。
【0047】
本発明における加熱処理の条件としては、100℃以上の加熱処理である限り特に制限されないが、紙臭の抑制の程度の好ましさ、及び、容器詰茶飲料の全体の香味の好ましさの観点から、加熱処理の温度及び時間の条件として、例えば、100~150℃(好ましくは111℃から150℃)であって、かつ、F0値が0.1~40となる時間である条件、好ましくは、100~150℃(好ましくは111℃から150℃)であって、かつ、F0値が1~30となる時間である条件、より好ましくは、111~145℃であって、かつ、F0値が4~20となる時間である条件が挙げられる。
なお、F0値は、Z値=10であるとして、加熱温度(T℃)、加熱時間(t分間)に基づいて、以下の数式により算出することができる。
F0値=t×10(T-121)/10
【0048】
本発明の茶飲料の製造において、加熱処理又は加熱殺菌処理を行う場合は、食品分野で一般的に用いられている種々の加熱殺菌方法を用いることができる。かかる加熱殺菌方法としては、例えば、熱水スプレー式、熱水貯湯式若しくは蒸気式のレトルト殺菌装置や、チューブ式若しくはプレート式の液体連続殺菌装置を用いた方法が挙げられる。
【0049】
(紙臭が抑制された容器詰茶飲料)
本発明の容器詰茶飲料は、紙臭が抑制された容器詰茶飲料である。本明細書において、「紙臭が抑制された」容器詰茶飲料とは、100℃以上に加熱処理しないこと以外は、同種の原材料を用いて同じ製造方法で製造した容器詰茶飲料(以下、「本発明におけるコントロール飲料とも表示する」)と比較して、紙臭が抑制された容器詰茶飲料を意味する。
【0050】
ある容器詰茶飲料における、紙臭の程度や、かかる紙臭の程度が本発明におけるコントロール飲料と比較してどのようであるか(例えば、抑制されているかどうか)は、訓練されたパネルであれば、容易かつ明確に決定することができる。評価の基準や、パネル間の評価のまとめ方は、一般的な方法を用いることができる。容器詰茶飲料における紙臭の程度を評価するパネルの人数は1名であってもよいが、客観性がより高い評価を得る観点から、パネルの人数の下限を、例えば3名以上、好ましくは5名以上とすることができ、また、評価試験をより簡便に実施する観点から、パネルの人数の上限を、例えば7名以下とすることができる。パネルが2名以上の場合の容器詰茶飲料における紙臭の程度の評価は、その容器詰茶飲料における紙臭の程度についてのパネル全員の評価の平均を採用してもよい。各評価基準に評価点が付与されている場合、パネル全員の評価点の平均値をその容器詰茶飲料における紙臭の程度の評価として採用してもよい。前述のように、評価点の平均値を採用する場合は、その平均値の小数第1位を四捨五入した値を採用してもよい。なお、パネルが2名以上である場合には、各パネルの評価のばらつきを低減するために、実際の官能評価試験を行う前に、各パネルの評価基準ができるだけ揃うように評価基準を共通化する作業を行っておくことが好ましい。かかる共通化作業としては、紙臭の強さが最も高いときの評価点に相当する紙臭の程度の認識をパネル間であらかじめ共通化した上で、各サンプル飲料の評価を行うことが挙げられる。また、このような評価基準に関する事前の共通化作業により、例えば、評価点が1点;2点;3点;4点;の4段階である場合の、各パネルによる紙臭の程度の評価の標準偏差が0.5以内となるようにしておくことが好ましい。
【0051】
ある容器詰茶飲料における紙臭の程度は、例えば後述の実施例の試験1に記載の官能評価法と同様の方法、好ましくは、同じ方法により評価することができる。より具体的には、コントロール飲料の紙臭の程度を4点としたときに、容器詰茶飲料における紙臭の程度を、「4点:同等(抑制効果無し)」、「3点:やや抑制されている」、「2点:抑制されている」、「1点:大幅に抑制されている(ほぼ紙臭を感じない)」の4段階で評価し、上記4段階評価で紙臭が低下した容器詰茶飲料(すなわち、3点以下)は、紙臭が抑制された容器詰茶飲料と評価することができる容器詰茶飲料として好ましく挙げられる。
【0052】
(紙臭を抑制する方法)
本発明における紙臭を抑制する方法としては、容器詰茶飲料の製造において、茶ポリフェノール濃度が10mg/100mL以上の茶抽出液にJCM5805株を含有させ、100℃以上に加熱処理する工程を含む、容器詰茶飲料において、茶成分とJCM5805株により生じる紙臭を抑制する方法である限り、特に制限されない。
【0053】
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0054】
[試験1]茶抽出液にJCM5805株を含有させることによる、紙臭の発生の確認
茶抽出液にラクトコッカス・ラクティスJCM5805株を含有させることにより、茶飲料の香味にどのような影響を与えるかを調べるために以下の試験を行った。
【0055】
表1記載の配合量(100mL当たりの重量(g))で緑茶葉(秋冬番茶)を75℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、緑茶抽出液を作製した。この緑茶抽出液に、JCM5805株の乾燥死菌体粉末、L-アスコルビン酸、及び、重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加して混合し、試験例5~7の各サンプル飲料を調製した。
また、表1記載の配合量で紅茶葉を85℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、紅茶抽出液を作製した。この紅茶抽出液に、JCM5805株の乾燥死菌体粉末、L-アスコルビン酸、及び、重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加して混合し、試験例36のサンプル飲料を調製した。なお、本願の実施例で用いている紅茶葉はすべてスリランカ産である。
その他、試験例1~4も、表1記載の配合でサンプル飲料を調製した。
なお、本願実施例のいずれの試験(試験1~7)においても、飲料中のJCM5805株の菌体濃度(億個/100mL)は、PBSバッファー(TAKARA社製)で適宜希釈し、BD Cell Viability Kit withBDLiquid Counting Beads(ベクトン・ディッキンソン社製)を用いプロトコールに従ってチアゾールオレンジでの染色を行いサンプルを調製し、フローサイトメーターにより測定した。なお、菌体濃度(億個/100mL)は、表中には、有効数字2桁の概数を記載している。
【0056】
【0057】
試験例1~3、5~7、36におけるJCM5805株の菌体濃度(億個/100mL)を表2に記載する。
また、緑茶葉を用いた試験例4~7のサンプル飲料、及び、紅茶葉を用いた試験例36のサンプル飲料の茶ポリフェノール濃度を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。その結果を表2に示す。
さらに、5名の訓練された官能評価者が、試験例1~7、36のサンプル飲料について、自由な観点から香味評価を実施した。その結果をまとめたものを表2に示す。
【0058】
【0059】
表2の結果から分かるように、JCM5805株と、緑茶成分のいずれか一方では紙臭は生じないものの(試験例1~4)、JCM5805株と緑茶成分が両方含まれると、紙臭が生じることが示された(試験例5~7)。また、この紙臭は、緑茶成分の存在下でJCM5805株の濃度が高くなるほど、強くなることも示された(試験例5~7)。また、JCM5805株と紅茶成分が両方含まれると、紙臭が生じることも示された(試験例36)
【0060】
[試験2]加熱処理による、紙臭の抑制評価1
JCM5805株を含有する緑茶抽出液を加熱処理することにより、緑茶飲料の香味にどのような影響を与えるかを調べるために以下の試験を行った。
【0061】
表3記載の配合量(100mL当たりの重量(g))で緑茶葉(秋冬番茶)を75℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、緑茶抽出液を作製した。この緑茶抽出液に、JCM5805株の乾燥死菌体粉末、L-アスコルビン酸、及び、重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加して混合し、試験例8~15の各サンプル飲料を調製した。試験例9~15のサンプル飲料については、表3に記載の加熱処理条件で加熱を行った。
なお、試験例16のサンプル飲料については、表3に記載の加熱処理条件で加熱を行った後に、JCM5805株の乾燥死菌体粉末を添加した(「後添加」)。
【0062】
【0063】
試験例8~16における菌体濃度(億個/100mL)を表4に記載する。
また、試験例8~16のサンプル飲料の茶ポリフェノール濃度を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。その結果を表4に示す。
【0064】
試験例8~16のサンプル飲料について、5名の訓練された官能評価者が、非加熱のサンプル飲料である試験例8を基準とする紙臭の抑制の程度について、以下の指標に基づいて官能評価を実施した。5名の官能評価者の評価点の平均点(平均点が小数となった場合は小数第1位を四捨五入)を表4に示す。
<紙臭の抑制の程度の指標>
4点:非加熱サンプル飲料と同等の紙臭(紙臭の抑制効果無し)
3点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭がやや抑制されている
2点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭が抑制されている
1点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭が大幅に抑制されている(ほぼ紙臭を感じない)
【0065】
また、試験例8~16のサンプル飲料について、5名の訓練された官能評価者が、前述の紙臭の抑制の程度を含め、緑茶飲料として総合的な香味評価(「総合評価」)を3段階(×、〇、◎)で実施した結果、及び、総合的な評価に関するコメント(「総合コメント」)を表4に記載する。
【0066】
【0067】
表4の結果から分かるように、90℃10分の加熱処理条件では紙臭の抑制が認められなかったが(試験例9)、101℃10分の加熱処理条件では紙臭がやや抑制され(試験例10)、それよりも強い加熱処理条件では紙臭が大幅に抑制された(試験例11~15)。ただし、121℃40分の加熱処理条件では、加熱による酸化臭がやや生じ(試験例14)、121℃60分の加熱処理条件では、加熱による酸化臭が強く生じた(試験例15)。紙臭の抑制の程度と、酸化臭の有無や程度とのバランスなどから、総合評価としては、試験例10及び14が〇評価となり、試験例11~13が◎評価となった。
また、加熱処理の後にJCM5805株を含有させた試験例16では、紙臭の抑制は認められなかった。
【0068】
[試験3]加熱処理による、紙臭の抑制評価2
JCM5805株を含有する緑茶抽出液を加熱処理した場合に、緑茶抽出液の茶ポリフェノール濃度が、緑茶飲料の香味にどのような影響を与えるかを調べるために以下の試験を行った。
【0069】
表5記載の配合量(100mL当たりの重量(g))で緑茶葉(秋冬番茶)を75℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、緑茶抽出液を作製した。この緑茶抽出液に、JCM5805株の乾燥死菌体粉末、L-アスコルビン酸、及び、重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加して混合し、試験例18~23の各サンプル飲料を調製した。なお、試験例22、23についてはさらに、緑茶抽出物であるポリフェノンKN(三井農林社製)を表5記載の配合量で添加した。
試験例18~23のサンプル飲料について、表5に記載の加熱処理条件で加熱を行った。
なお、試験例17のサンプル飲料については、緑茶葉を用いず、加熱処理も行わずに調製した。
【0070】
【0071】
試験例17~23におけるJCM5805株の菌体濃度(億個/100mL)を表6に記載する。
また、緑茶葉を用いた試験例18~23のサンプル飲料の茶ポリフェノール濃度を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。その結果を表6に示す。
【0072】
試験例18のサンプル飲料について、5名の訓練された官能評価者が、加熱前の段階の試験例18のサンプル飲料(すなわち、非加熱の試験例18のサンプル飲料)を基準とする紙臭の抑制の程度について、以下の指標に基づいて官能評価を実施した。同様に、試験例19~23のサンプル飲料についても、それぞれの非加熱のサンプル飲料を基準とする紙臭の抑制の程度について官能評価を実施した。5名の官能評価者の評価点の平均点(平均点が小数となった場合は小数第1位を四捨五入)を表6に示す。
<紙臭の抑制の程度の指標>
4点:非加熱サンプル飲料と同等の紙臭(紙臭の抑制効果無し)
3点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭がやや抑制されている
2点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭が抑制されている
1点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭が大幅に抑制されている(ほぼ紙臭を感じない)
【0073】
また、試験例17~23のサンプル飲料について、5名の訓練された官能評価者が、前述の紙臭の抑制の程度を含め、緑茶飲料として総合的な香味評価(「総合評価」)を3段階(×、〇、◎)で実施した結果、及び、総合的な評価に関するコメント(「総合コメント」)を表6に記載する。
【0074】
【0075】
表6の結果から分かるように、茶ポリフェノール濃度にかかわらず、所定の加熱処理によって、紙臭について一定程度以上の抑制が認められたが(試験例18~23)、茶ポリフェノール濃度が40mg/100mL~100mg/100mLである場合に紙臭の大幅な抑制が認められた(試験例19~21)。
また、紙臭の抑制の程度と、茶感又は茶由来の苦味とのバランスなどから、総合評価としては、試験例18及び22が〇評価となり、試験例19~21が◎評価となった。試験例23は、紙臭は抑制されているものの、茶由来の苦味が大変強く、総合評価は×評価となった。
【0076】
これらの紙臭の抑制評価や総合評価の結果から、茶ポリフェノール濃度は10mg/100mL~200mg/100mLであることが好ましく、40mg/100mL~100mg/100mLであることが特に好ましいことが示された。
【0077】
[試験4]加熱処理による、紙臭の抑制評価3
JCM5805株を含有する緑茶抽出液を加熱処理した場合に、JCM5805株の配合量が、緑茶飲料の香味にどのような影響を与えるかを調べるために以下の試験を行った。
【0078】
表7記載の配合量(100mL当たりの重量(g))で緑茶葉(秋冬番茶)を75℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、緑茶抽出液を作製した。この緑茶抽出液に、JCM5805株の乾燥死菌体粉末、L-アスコルビン酸、及び、重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加して混合し、試験例24~29の各サンプル飲料を調製した。
試験例24~29のサンプル飲料について、表7に記載の加熱処理条件で加熱を行った。
【0079】
【0080】
試験例24~29におけるJCM5805株の菌体濃度(億個/100mL)を表8に記載する。
また、緑茶葉を用いた試験例24~29のサンプル飲料の茶ポリフェノール濃度を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。その結果を表8に示す。
【0081】
試験例24のサンプル飲料について、5名の訓練された官能評価者が、加熱前の段階の試験例24のサンプル飲料(すなわち、非加熱の試験例24のサンプル飲料)を基準とする紙臭の抑制の程度について、以下の指標に基づいて官能評価を実施した。同様に、試験例25~29のサンプル飲料についても、それぞれの非加熱のサンプル飲料を基準とする紙臭の抑制の程度について官能評価を実施した。5名の官能評価者の評価点の平均点(平均点が小数となった場合は小数第1位を四捨五入)を表8に示す。
<紙臭の抑制の程度の指標>
4点:非加熱サンプル飲料と同等の紙臭(紙臭の抑制効果無し)
3点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭がやや抑制されている
2点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭が抑制されている
1点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭が大幅に抑制されている(ほぼ紙臭を感じない)
【0082】
また、試験例24~29のサンプル飲料について、5名の訓練された官能評価者が、前述の紙臭の抑制の程度を含め、緑茶飲料として総合的な香味評価を3段階(×、〇、◎)で実施した結果、及び、総合的な評価に関するコメント(総合コメント)を表8に記載する。
【0083】
【0084】
表8の結果から分かるように、JCM5805株が60~4500億個/100mLである場合に、所定の加熱処理によって、紙臭について一定程度以上の抑制が認められ(試験例24~28)、JCM5805株が150~1500億個/100mLである場合に、紙臭についてより大きな抑制が認められた(試験例25~27)。
なお、JCM5805株が6000億個/100mLである場合は、紙臭とは別の、JCM5805株由来の発酵臭が非常に強いため、非加熱サンプルでも紙臭がごくわずかであり、加熱処理しても紙臭の程度はほとんど変わらなかった(試験例29)。
【0085】
これらの紙臭の抑制評価や総合評価の結果から、JCM5805株は60~4500億個/100mLであることが好ましく、150~1500億個/100mLであることが特に好ましいことが示された。
【0086】
[試験5]加熱処理による、紙臭の抑制評価4
試験1~4で用いた緑茶葉(秋冬番茶)とは異なる種類の緑茶葉を用いた場合や、緑茶原料として緑茶抽出物のみを用いた場合や、緑茶葉ではなく、烏龍茶葉や紅茶葉を用いた場合であっても、紙臭の発生や、加熱処理による紙臭の抑制が認められるかを調べるために以下の試験を行った。
【0087】
表9記載の配合量(100mL当たりの重量(g))で緑茶葉(二番茶)を75℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、緑茶抽出液を作製した。この緑茶抽出液に、JCM5805株の乾燥死菌体粉末、L-アスコルビン酸、及び、重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加して混合し、試験例30のサンプル飲料を調製した。
【0088】
また、表9記載の配合量で、緑茶抽出物であるポリフェノンKN(三井農林社製)、JCM5805株の乾燥死菌体粉末、L-アスコルビン酸、及び、重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加して混合し、試験例31のサンプル飲料を調製した。
【0089】
また、表9記載の配合量でウーロン茶葉を85℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、ウーロン茶抽出液を作製した。このウーロン茶抽出液に、JCM5805株の乾燥死菌体粉末、L-アスコルビン酸、及び、重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加して混合し、試験例32のサンプル飲料を調製した。
【0090】
また、表9記載の配合量で紅茶葉を85℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、紅茶抽出液を作製した。この紅茶抽出液に、JCM5805株の乾燥死菌体粉末、L-アスコルビン酸、及び、重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加して混合し、試験例33のサンプル飲料を調製した。
【0091】
試験例30~33のサンプル飲料について、表9に記載の加熱処理条件で加熱を行った。
【0092】
【0093】
試験例30~33におけるJCM5805株の菌体濃度(億個/100mL)を表10に記載する。
また、試験例30~33のサンプル飲料の茶ポリフェノール濃度を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。その結果を表10に示す。
【0094】
試験例30のサンプル飲料について、5名の訓練された官能評価者が、加熱前の段階の試験例30のサンプル飲料(すなわち、非加熱の試験例30のサンプル飲料)を基準とする紙臭の抑制の程度について、以下の指標に基づいて官能評価を実施した。同様に、試験例31~33のサンプル飲料についても、それぞれの非加熱のサンプル飲料を基準とする紙臭の抑制の程度について官能評価を実施した。5名の官能評価者の評価点の平均点(平均点が小数となった場合は小数第1位を四捨五入)を表10に示す。
<紙臭の抑制の程度の指標>
4点:非加熱サンプル飲料と同等の紙臭(紙臭の抑制効果無し)
3点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭がやや抑制されている
2点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭が抑制されている
1点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭が大幅に抑制されている(ほぼ紙臭を感じない)
【0095】
また、試験例30~33のサンプル飲料について、5名の訓練された官能評価者が、前述の紙臭の抑制の程度を含め、緑茶飲料として総合的な香味評価を3段階(×、〇、◎)で実施した結果、及び、総合的な評価に関するコメント(総合コメント)を表10に記載する。
【0096】
【0097】
表10の結果から分かるように、試験1~4で用いた緑茶葉(秋冬番茶)とは異なる種類の緑茶葉(二番茶)を用いた場合(試験例30)、緑茶原料として緑茶抽出物のみを用いた場合(試験例31)、緑茶葉ではなく、烏龍茶葉を用いた場合(試験例32)、緑茶葉ではなく、紅茶葉を用いた場合(試験例33)のいずれであっても、茶成分とJCM5805株により紙臭が生じること、及び、かかる紙臭が所定の加熱処理により抑制されることが示された。
【0098】
[試験6]加熱処理による、紙臭の抑制評価5
JCM5805株を含有する緑茶抽出液を加熱処理する場合に、試験1~5における加熱処理の加熱温度より高い温度かつより短時間の加熱処理であっても、紙臭の抑制が認められるかを調べるために以下の試験を行った。
【0099】
表11記載の配合量(100mL当たりの重量(g))で緑茶葉(秋冬番茶)を75℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、緑茶抽出液を作製した。この緑茶抽出液に、JCM5805株の乾燥死菌体粉末、L-アスコルビン酸、及び、重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加して混合し、試験例34及び35のサンプル飲料を調製した。これらのサンプル飲料については、表11に記載の加熱処理条件で加熱を行った。
【0100】
【0101】
試験例34、35におけるJCM5805株の菌体濃度(億個/100mL)を表12に記載する。
また、試験例34及び35のサンプル飲料の茶ポリフェノール濃度を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。その結果を表12に示す。
【0102】
試験例34のサンプル飲料について、5名の訓練された官能評価者が、加熱前の段階の試験例34のサンプル飲料(すなわち、非加熱の試験例34のサンプル飲料)を基準とする紙臭の抑制の程度について、以下の指標に基づいて官能評価を実施した。同様に、試験例35のサンプル飲料についても、その非加熱のサンプル飲料を基準とする紙臭の抑制の程度について官能評価を実施した。5名の官能評価者の評価点の平均点(平均点が小数となった場合は小数第1位を四捨五入)を表12に示す。
<紙臭の抑制の程度の指標>
4点:非加熱サンプル飲料と同等の紙臭(紙臭の抑制効果無し)
3点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭がやや抑制されている
2点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭が抑制されている
1点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭が大幅に抑制されている(ほぼ紙臭を感じない)
【0103】
【0104】
表12の結果から分かるように、130.5℃で30秒や、137.5℃で30秒という加熱処理条件であっても、紙臭の抑制が認められることが示された。
【0105】
[試験7]加熱処理による、紙臭の抑制評価6
JCM5805株を含有する紅茶抽出液を加熱処理することにより、紅茶飲料の香味にどのような影響を与えるかを調べるために以下の試験を行った。
【0106】
表13記載の配合量で紅茶葉を85℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、紅茶抽出液を作製した。この紅茶抽出液に、JCM5805株の乾燥死菌体粉末、L-アスコルビン酸、及び、重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加して混合し、試験例37~42のサンプル飲料を調製した。なお、試験例37~42のサンプル飲料については、表13に記載の加熱処理条件で加熱を行った。
【0107】
【0108】
試験例37~42におけるJCM5805株の菌体濃度(億個/100mL)を表14に記載する。
また、紅茶葉を用いた試験例37~42のサンプル飲料の茶ポリフェノール濃度を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。その結果を表14に示す。
【0109】
試験例37のサンプル飲料について、5名の訓練された官能評価者が、加熱前の段階の試験例37のサンプル飲料(すなわち、非加熱の試験例37のサンプル飲料)を基準とする紙臭の抑制の程度について、以下の指標に基づいて官能評価を実施した。同様に、試験例38~42のサンプル飲料についても、それぞれの非加熱のサンプル飲料を基準とする紙臭の抑制の程度について官能評価を実施した。5名の官能評価者の評価点の平均点(平均点が小数となった場合は小数第1位を四捨五入)を表14に示す。
<紙臭の抑制の程度の指標>
4点:非加熱サンプル飲料と同等の紙臭(紙臭の抑制効果無し)
3点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭がやや抑制されている
2点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭が抑制されている
1点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭が大幅に抑制されている(ほぼ紙臭を感じない)
【0110】
また、試験例37~42のサンプル飲料について、5名の訓練された官能評価者が、前述の紙臭の抑制の程度を含め、紅茶飲料として総合的な香味評価(「総合評価」)を3段階(×、〇、◎)で実施した結果、及び、総合的な評価に関するコメント(「総合コメント」)を表14に記載する。
【0111】
【0112】
表14の試験例37及び38の結果から分かるように、101℃10分の加熱処理条件では紙臭がやや抑制され(試験例37)、121℃40分の加熱処理条件では紙臭が抑制された(試験例38)。また、121℃40分の加熱処理条件では、加熱による酸化臭がやや生じた(試験例38)ものの、紙臭の抑制の程度と、酸化臭の有無や程度とのバランスなどから、総合評価としては、試験例37、38のいずれも〇評価となった。
【0113】
また、表14の試験例37~42の結果から分かるように、紅茶葉による茶ポリフェノール濃度が10~100mg/mLである場合や、JCM5805株が60~4500億個/100mLである場合に、所定の加熱処理によって、紙臭について一定程度以上の抑制が認められた(試験例37~42)。また、紙臭の抑制の程度と、茶感又は茶由来の苦味とのバランスなどから、総合評価としては、試験例37~42のいずれも〇評価となった。
【0114】
これらの紙臭の抑制評価や総合評価の結果から、紅茶葉を用いる場合、茶ポリフェノール濃度は10mg/100mL~200mg/100mLや、40mg/100mL~100mg/100mLであることが好ましく、また、JCM5805株は60~4500億個/100mLであることが好ましいことが示された。
また、緑茶葉を用いた表4、6、8の結果、及び、紅茶葉を用いた表14の結果から、緑茶葉に代えて紅茶葉を、茶ポリフェノール濃度が同じになるように用い、かつ、他の条件も同様である場合は、おおむね同程度の紙臭の抑制が認められることが示された。
【0115】
[試験8]加熱処理による、紙臭の抑制評価7
JCM5805株を及び乳成分を含有する紅茶抽出液を加熱処理することにより、紅茶飲料の香味にどのような影響を与えるか等を調べるために以下の試験を行った。
【0116】
表15記載の配合量で紅茶葉を85℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、紅茶抽出液を作製した。この紅茶抽出液に、JCM5805株の乾燥死菌体粉末、L-アスコルビン酸ナトリウム、全粉乳、グラニュー糖及び、重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加して混合し、試験例43のサンプル飲料を調製し、121℃4分の加熱処理条件で加熱を行った。
【0117】
【0118】
試験例43におけるJCM5805株の菌体濃度(億個/100mL)を表16に記載する。
また、紅茶葉を用いた試験例43のサンプル飲料の茶ポリフェノール濃度は、紅茶抽出液の茶ポリフェノール量を日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定したうえで、表16のポリフェノール濃度となるように添加した。
【0119】
試験例43のサンプル飲料について、5名の訓練された官能評価者が、加熱前の段階の試験例43のサンプル飲料(すなわち、非加熱の試験例43のサンプル飲料)を基準とする紙臭の抑制の程度について、以下の指標に基づいて官能評価を実施した。5名の官能評価者の評価点の平均点(平均点が小数となった場合は小数第1位を四捨五入)を表16に示す。
<紙臭の抑制の程度の指標>
4点:非加熱サンプル飲料と同等の紙臭(紙臭の抑制効果無し)
3点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭がやや抑制されている
2点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭が抑制されている
1点:非加熱サンプル飲料と比較して紙臭が大幅に抑制されている(ほぼ紙臭を感じない)
【0120】
また、試験例43のサンプル飲料について、5名の訓練された官能評価者が、前述の紙臭の抑制の程度を含め、紅茶飲料として総合的な香味評価(「総合評価」)を3段階(×、〇、◎)で実施した結果、及び、総合的な評価に関するコメント(「総合コメント」)を表16に記載する。
【0121】
【0122】
表16の試験例43の結果から分かるように、乳成分及び糖を含有する紅茶飲料である場合、乳成分及び糖のいずれも含有しない紅茶飲料である場合と比較して、非加熱品での紙臭はやや弱かったものの、所定の加熱処理によって、紙臭について抑制が認められた。また、試験例37~42では紅茶飲料のpHを6.5に調整したのに対し、試験例43では、紅茶飲料のpHを7.1に調整したものの、所定の加熱処理によって、紙臭について抑制が認められた。なお、試験例43の総合評価は〇評価であった。