(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014545
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】緯糸張力付与装置
(51)【国際特許分類】
D03D 47/27 20060101AFI20220113BHJP
D03D 47/30 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
D03D47/27
D03D47/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116908
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】八木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】木口 祐一郎
【テーマコード(参考)】
4L050
【Fターム(参考)】
4L050AA15
4L050AB03
4L050CB06
4L050CB11
4L050CB13
4L050CB83
4L050CB84
4L050CB96
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で十分な強さの張力を緯糸に付与することができる緯糸張力付与装置を提供する。
【解決手段】ストレッチ機構は、緯糸案内通路に沿って延びる緯糸飛走通路50と、緯糸飛走通路50に沿う方向にエアを噴射するエアブローノズル63と、緯糸飛走通路50に沿う方向とは異なる方向にエアを噴射するストレッチエア噴射口74とを備え、エアブローノズル63は、エアを噴射して緯糸飛走通路50に緯糸23を導入し、ストレッチエア噴射口74は、緯糸飛走通路50に導入された緯糸23にエアを噴射する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筬に設けられた緯糸案内通路に沿って緯糸を緯入れするエアジェット織機の、前記筬の前側に設けられる緯糸張力付与装置であって、
前記緯糸案内通路に沿って延びる緯糸飛走通路と、
前記緯糸飛走通路に沿う方向にエアを噴射する第1のエア噴射部と、
前記緯糸飛走通路に沿う方向とは異なる方向にエアを噴射する第2のエア噴射部と
を備え、
前記第1のエア噴射部は、エアを噴射して前記緯糸飛走通路に前記緯糸を導入し、
前記第2のエア噴射部は、前記緯糸飛走通路に導入された前記緯糸にエアを噴射する緯糸張力付与装置。
【請求項2】
前記緯糸飛走通路は、屈曲部を有する請求項1に記載の緯糸張力付与装置。
【請求項3】
前記第2のエア噴射部は、前記屈曲部においてエアを噴射する請求項2に記載の緯糸張力付与装置。
【請求項4】
前記第1のエア噴射部は、前記第2のエア噴射部がエアを噴射した後に、エアの噴射を停止する請求項1~3のいずれか一項に記載の緯糸張力付与装置。
【請求項5】
前記第1のエア噴射部は、前記第2のエア噴射部がエアを噴射した後に、エアの噴射を継続する請求項1~3のいずれか一項に記載の緯糸張力付与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアジェット織機の緯糸張力付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアジェット織機において品質の良い織布を製織するためには、緯入れされた緯糸に適度な張力を付与し、緯糸の緩みを抑制することが必要である。緯糸に張力を付与するための緯糸張力付与装置として、特許文献1に記載の緯糸張力付与装置が知られている。特許文献1に記載の緯糸張力付与装置は、エアジェット織機の後方側に設けられたエア噴射ノズルからエアジェット織機の前方側へエアを噴射することで緯糸を前方側に屈曲させて、エアジェット織機の前方側に設けられたストレッチパイプ内に導入することで緯糸に張力を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の緯糸張力付与装置は、エアジェット織機の後方側から前方側への一方向にのみ、緯糸を屈曲させることで緯糸に張力を付与するため、十分な強さの張力を緯糸に付与することができないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡単な構成で十分な強さの張力を緯糸に付与することができる、緯糸張力付与装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る緯糸張力付与装置は、筬に設けられた緯糸案内通路に沿って緯糸を緯入れするエアジェット織機の、筬の前側に設けられ、緯糸案内通路に沿って延びる緯糸飛走通路と、緯糸飛走通路に沿う方向にエアを噴射する第1のエア噴射部と、緯糸飛走通路に沿う方向とは異なる方向にエアを噴射する第2のエア噴射部とを備える。第1のエア噴射部は、エアを噴射して緯糸飛走通路に緯糸を導入し、第2のエア噴射部は、緯糸飛走通路に導入された緯糸にエアを噴射する。
【0007】
また、緯糸飛走通路は、屈曲部を有してもよい。
また、第2のエア噴射部は、屈曲部においてエアを噴射してもよい。
また、第1のエア噴射部は、第2のエア噴射部がエアを噴射した後に、エアの噴射を停止してもよい。
また、第1のエア噴射部は、第2のエア噴射部がエアを噴射した後に、エアの噴射を継続してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る、緯糸張力付与装置によれば、第1のエア噴射部は、緯糸飛走通路に沿う方向にエアを噴射して緯糸飛走通路に緯糸を導入し、第2のエア噴射部は、緯糸飛走通路に導入された緯糸に、緯糸飛走通路とは異なる方向にエアを噴射するため、簡単な構成で十分な強さの張力を緯糸に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る織機の概略を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す緯糸案内通路を示す右側面図である。
【
図4】
図1に記載のストレッチ機構を示す斜視図である。
【
図5】
図3に記載のストレッチ機構の底面図である。
【
図6】
図3に記載のストレッチ機構の機構上部の平面端面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るストレッチ機構の動作を示す機構上部の正面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る織機の概略を示す斜視図であって、エアジェット織機の右側端部の構成を示している。
図2は、
図1に示す緯糸案内通路を示す右側面図である。エアジェット織機の緯糸の飛走方向に延びるスレイ13の上側に、変形筬10が設けられている。変形筬10は、緯糸の飛走方向に延びるように形成されており、その前面に緯糸の飛走する緯糸案内通路11が形成されている。緯糸は、緯入れ用の図示しないメインノズル及びサブノズルのエア噴射作用により、エアの流れに沿って上流から下流へ緯糸案内通路11を飛走する。なお、変形筬10は筬を構成している。
【0011】
緯糸に適度な張力を付与し緯糸の緩みを抑制するためのストレッチ機構40が、変形筬10の前側、すなわちエアジェット織機の前側に設けられている。ストレッチ機構40の機構上部41には、直方体の管状の緯糸飛走通路50が形成されている。緯糸飛走通路50は、緯糸案内通路11に配置されており、緯糸案内通路11に沿って延びている。緯糸飛走通路50は、上流側に緯糸が導入される糸入口51を有し、下流側に緯糸が導出される糸出口52を有している。そのため、変形筬10の緯糸案内通路11を飛走する緯糸は、緯糸飛走通路50を飛走可能である。ストレッチ機構40は、樹脂及び金属等の適当な材質により形成されている。なお、ストレッチ機構40は、緯糸張力付与装置を構成している。
【0012】
ストレッチ機構40の機構上部41には、エアジェット織機の前側に向けてストレッチ機構40の本体部分から突出する突出部42が形成されている。エアジェット織機正面から見て突出部42の左側、すなわち、緯糸飛走方向の上流側には、緯糸飛走通路50において緯糸にエアブローを行うためのエアブロー穴60が形成されている。エアブロー穴60には、エアブロー接手61を介して、エアブローホース62が接続されている。エアブローホース62は、図示しない周知の空気弁を介して、工場内の図示しないエア供給源に接続されている。
【0013】
ストレッチ機構40の機構下部43には、緯糸飛走通路50において緯糸にストレッチエアを噴射するためのストレッチエア穴70が形成されている。ストレッチエア穴70には、ストレッチエア接手71を介して、ストレッチエアホース72が接続されている。ストレッチエアホース72は、図示しない周知の空気弁を介して、工場内の図示しないエア供給源に接続されている。また、エアジェット織機にはエアブロー穴60及びストレッチエア穴70へのエアの供給を制御する図示しない制御装置が設けられている。
【0014】
図3は、
図1に示す織機の概略を示す平面図であって、緯糸案内通路11に沿って水平方向に、変形筬10及びストレッチ機構40の断面を示した平面断面図である。変形筬10は、緯糸飛走方向に対して垂直に等間隔に並ぶ複数の筬羽12を有している。各筬羽12の間には、緯糸23とともに織布31を構成する経糸21と、緯糸23とともに捨て耳32を構成する耳糸22とが通っている。緯糸23は、変形筬10の緯糸案内通路11と、緯糸案内通路11に配置された緯糸飛走通路50とを飛走する。また、ストレッチ機構40のエアジェット織機正面から見て右側、すなわち緯糸飛走方向の下流側には、緯糸23のロングピック及び吹き切れを検出する、周知の光学式の緯糸検出器14が設けられている。
【0015】
図4は、
図1に記載のストレッチ機構を示す斜視図である。
図4に示すように、ストレッチ機構40のエアブロー穴60は、ストレッチ機構40の突出部42の左側面に開口している。一方、緯糸飛走通路50の上面には、エア抜き穴53が開口している。エア抜き穴53は、緯糸飛走通路50に接続されている。ストレッチ機構40は、内部に上下方向に延びるストレッチエア通路73を有している。緯糸飛走通路50は、ストレッチエア通路73に接続されている。ストレッチエア通路73は、機構下部43のストレッチエア穴70に接続されている。したがって、ストレッチエア穴70は、ストレッチエア通路73及び緯糸飛走通路50を経由して、エア抜き穴53に連通するように構成されている。
図5は、
図3に記載のストレッチ機構の底面図である。
図5に示すように、ストレッチエア穴70は機構下部43の底面の中央部に開口している。
【0016】
図6は、
図3に記載のストレッチ機構の機構上部の平面端面図である。
図6に示すように、ストレッチ機構40の緯糸飛走通路50は、その通路内部の、糸入口51及び糸出口52の間の突出部42の付近に屈曲部54を有する。屈曲部54は、エアジェット織機の後方側から前方側へ突出するように台形状に形成されている。ここで、緯糸飛走通路50の幅を、エアジェット織機の前後方向に沿う水平方向の幅とすると、屈曲部54における緯糸飛走通路50の幅は、糸入口51及び糸出口52における緯糸飛走通路50の幅よりも、狭くなるように形成されている。また、これにより緯糸飛走通路50は、その中心線が屈曲部54においてエアジェット織機の前方向に屈曲するように形成されている。
【0017】
屈曲部54には、ストレッチエア通路73(
図4参照)に接続されたストレッチエア噴射口74が、緯糸飛走通路50の最も狭い部分において略鉛直方向上方に向かって開口している。すなわち、ストレッチエア穴70は、ストレッチエア通路73を経由して、ストレッチエア噴射口74に連通している。ストレッチエア噴射口74とエア抜き穴53とは、鉛直方向から見て略重なるように開口している。なお、ストレッチエア噴射口74は、第2のエア噴射部を構成している。
【0018】
突出部42には、エアブロー穴60をエアの流入口として有する、エアブローノズル63が形成されている。エアブローノズル63は、緯糸飛走通路50の内壁のうち、屈曲部54と糸出口52との間との内壁の向きに沿って、屈曲部54と糸出口52との間まで延びている。エアブローノズル63は、先端にエアブロー噴射口64を有している。エアブロー噴射口64は、緯糸飛走通路50の、屈曲部54に対して右側、すなわち糸出口52の側の、屈曲部54と糸出口52との間に開口している。また、エアブロー噴射口64は、屈曲部54と糸出口52との間の内壁との間に間隙を有しており、その間隙を緯糸23が通過可能に形成されている。なお、エアブローノズル63は、第1のエア噴射部を構成している。
【0019】
次に、この実施の形態におけるストレッチ機構40の動作について説明する。
図3に示すように、緯糸23の緯入れ時には、メインジェットノズル及びサブジェットノズルの噴射するエアの作用により、緯糸23は変形筬10の緯糸案内通路11を図示の織機の左側から右側、すなわち、メインノズルからのエアの流れの上流から下流へ飛走する。耳糸22の位置まで緯糸23が飛走した後、ストレッチ機構40の緯糸飛走通路50へ、緯糸23が糸入口51から導入される。
【0020】
図4に示すように、緯糸23が糸入口51から矢印A方向へ導入されるときには、制御装置により空気弁が開かれ、エア供給源からエアブローホース62(
図3参照)を経由してエアブロー穴60に矢印F方向へエアが供給される。
【0021】
エアブロー穴60に矢印F方向へ供給されたエアは、
図6に示すように、エアブローノズル63の先端のエアブロー噴射口64から矢印G方向へ噴射される。すなわち、エアブローノズル63は、緯糸飛走通路50に沿う方向、より詳述すれば、屈曲部54と糸出口52との間の内壁に沿う方向にエアを噴射する。このエアブローにより、緯糸23が糸入口51に導入されるときに、緯糸23は糸出口52側である矢印B方向へ吸引される。そのため、緯糸23の糸入口51への導入がスムーズに行われる。
【0022】
次に、緯糸23は、屈曲部54においてエアジェット織機の前方へ屈曲しながら矢印B方向へ飛走する。そのため、緯糸23は屈曲部54に接触しながら飛走する。屈曲部54における屈曲と、接触による屈曲部54との摩擦とによって、緯糸23には第1の張力が付加される。緯糸23の先端部が屈曲部54を通過し、糸出口52より導出された後に、制御装置により空気弁が開かれエア供給源からストレッチエアホース72(
図3参照)を経由して、
図4に示すストレッチエア穴70に矢印C方向にストレッチエアが供給される。ストレッチエア穴70に供給されたストレッチエアは、ストレッチエア通路73を、上方である矢印D方向へ流動する。そして、ストレッチエアは、
図6に示すストレッチエア噴射口74から略鉛直方向上方に噴射される。すなわち、このストレッチエア噴射口74は、緯糸飛走通路50に沿う方向とは異なる方向にストレッチエアを噴射する。
【0023】
このストレッチエア噴射のタイミングは、緯糸23が飛走して伸び切ったタイミングであることが望ましい。その後、ストレッチエアは主に緯糸飛走通路50の上側のエア抜き穴53(
図4参照)から流出する。
【0024】
緯糸23は、屈曲部54において、緯糸飛走通路50に沿う方向とは異なる略鉛直方向上方へのストレッチエアの噴射を、ストレッチエア噴射口74から受ける。これにより、
図7に示すように、緯糸23は略鉛直方向上方である矢印H方向へ屈曲し、屈曲部54の内壁上面及びエア抜き穴53の角部53aに押し付けられる。そのため、緯糸23と屈曲部54の内壁上面との摩擦及び緯糸23とエア抜き穴53の角部53aとの摩擦によって、緯糸23には第2の張力が付加される。
【0025】
屈曲部54により緯糸23が屈曲しつつ飛走することによる、緯糸23への第1の張力の付加と、ストレッチエアにより緯糸23が矢印H方向へ押し付けられることによる、緯糸23への第2の張力の付加とにより、緯糸23に強力な張力を付加することができる。このため、緯糸23に第1の張力の付加又は第2の張力の付加のいずれか一方の張力の付加しか行わない場合と比較して、緯糸23の緩みを抑制し製織品質を向上させることができる。
【0026】
ストレッチエアがストレッチエア噴射口74から噴射された後、制御装置はエアブロー穴60へのエアの供給を停止する。よって、エアブロー噴射口64からのエアブローが停止する。これにより、エアの消費を抑制し、製織工程のコストを低減することができる。
【0027】
また、緯糸23に張力を付加する他の方法としては、
図6に示すエアブローノズル63からの、緯糸飛走通路50に沿う方向へのエアブローをより強力に実施する方法が考えられる。しかしながら、緯糸23にカバーリング糸を用いている場合には、緯糸23のカバーヤーンが分離して先に飛走し、糸出口52から導出される場合がある。すると、
図3に示すように、ストレッチ機構40の右側に設けられている、緯糸23の緯糸検出器14に、分離したカバーヤーンが検出されてしまい、ロングピック及び吹き切れの検出が過剰に行われてしまう可能性がある。そのため、この方法においては製織工程の無駄な停止が生じ、製織のコストが増大する可能性がある。
【0028】
一方、この実施の形態によれば、エアブローノズル63からの、緯糸飛走通路50に沿う方向への強力なエアブローを行わないため、緯糸23にカバーリング糸を用いてもカバーリング糸の分離が抑制される。そのため、製織工程の無駄な停止の発生確率が低減される。
【0029】
また、エアジェット織機における緯糸張力付与装置には、エアジェット織機の後方側、すなわち筬の背面側に緯糸を屈曲させることにより、緯糸に張力を付与するものが知られている。しかしながら、そのような緯糸張力付与装置では、筬の背面側に緯糸を屈曲させることにより、経糸が緯糸に引っ張られて筬の背面側に屈曲し、筬羽をかき分けるために、特に高密度の筬羽を有する筬が損傷する可能性がある。
【0030】
一方、この実施の形態によれば、エアブローノズル63は、緯糸飛走通路50に沿う方向にエアを噴射し、ストレッチエア噴射口74は、緯糸飛走通路50に導入された緯糸に、略鉛直方向上方である矢印H方向にエアを噴射する。このため、糸が変形筬10の筬羽をかき分けることがないため、変形筬10の損傷を防止することができる。
【0031】
このように、本実施の形態に係るストレッチ機構40は、変形筬10に設けられた緯糸案内通路11に沿って緯糸23を緯入れするエアジェット織機の、変形筬10の前側に設けられ、緯糸案内通路11に沿って延びる緯糸飛走通路50と、緯糸飛走通路50に沿う方向にエアを噴射するエアブローノズル63と、緯糸飛走通路50に沿う方向とは異なる方向にエアを噴射するストレッチエア噴射口74とを備えている。そして、エアブローノズル63は、エアを噴射して緯糸飛走通路50に緯糸23を導入し、ストレッチエア噴射口74は、緯糸飛走通路50に導入された緯糸23にエアを噴射するため、簡単な構成で十分な強さの張力を緯糸23に付与することができる。
【0032】
また、本実施の形態に係るストレッチ機構40によれば、緯糸飛走通路50は、屈曲部54を有するため、緯糸23と屈曲部54との摩擦により、強力な張力を緯糸23に付与することができる。
【0033】
また、本実施の形態に係るストレッチ機構40によれば、ストレッチエア噴射口74は、屈曲部54においてエアを噴射する。このため、屈曲部54においてエアジェット織機の前方に屈曲している緯糸23が、略鉛直方向上方である矢印H方向へ屈曲して、屈曲部54の内壁上面及びエア抜き穴53の角部53aに押し付けられることで大きな摩擦力を生ずる。これにより、さらに強力な張力を緯糸23に付与することができる。
【0034】
また、本実施の形態に係るストレッチ機構40によれば、エアブローノズル63は、ストレッチエア噴射口74がエアを噴射した後に、エアの噴射を停止するため、エアの消費を抑制し、製織工程のコストを低減することができる。
【0035】
なお、この実施の形態では、ストレッチエア噴射口74がエアを噴射した後に、エアブローノズル63はエアブローを停止していた。しかし、緯糸23がフィラメント糸等の分離しにくい糸である場合には、ストレッチエア噴射口74がエアを噴射した後に、エアブローノズル63からのエアブローを継続してもよい。
【0036】
このように、本実施の形態に係るストレッチ機構40によれば、エアブローノズル63は、ストレッチエア噴射口74がエアを噴射した後に、エアの噴射を継続するため、上述した第1の張力及び第2の張力に加えて、緯糸飛走通路50の方向へのエアブローによる第3の張力を緯糸23に付与することで、より強力な張力を緯糸23に付与することができる。
【0037】
また、飛走する緯糸23の伸び切り量を拡大するため、及び緯糸23の伸び切っている時間を拡大するために、ストレッチエア噴射口74がエアを噴射した後に、エアブローノズル63からのエアブローを継続してもよい。さらに、エアブローノズル63とは異なる位置に、エアブローノズルをさらに設けて追加のエアブローを行ってもよい。
【0038】
また、ストレッチエア噴射口74は、略鉛直方向上方に開口していたが、エアブローノズル63によるエアブロー方向とは異なる方向であれば、これ以外の方向へ開口していてもよい。例えば、ストレッチエア噴射口74は、エアジェット織機の前方、すなわち変形筬10から離れる方向に向かって開口していてもよい。これにより、この実施の形態と同様に、ストレッチ機構40は、緯糸23の飛走通路に沿う方向とは異なる方向にストレッチエアを噴射し、緯糸23に張力を付与することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 変形筬(筬)、11 緯糸案内通路、23 緯糸、40 ストレッチ機構(緯糸張力付与装置)、50 緯糸飛走通路、54、屈曲部、63 エアブローノズル(第1のエア噴射部)、74 ストレッチエア噴射口(第2のエア噴射部)。