(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145455
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】タッチセンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220926BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20220926BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G06F3/041 662
G06F3/041 495
H05K1/09 A
G06F3/044 122
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179541
(22)【出願日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】202110286091.X
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519308156
【氏名又は名称】ティーピーケイ アドバンスド ソリューションズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TPK ADVANCED SOLUTIONS INC
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ガン イーペン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジアンシャン
(72)【発明者】
【氏名】リウ カンユー
(72)【発明者】
【氏名】グオ シャオピン
【テーマコード(参考)】
4E351
【Fターム(参考)】
4E351AA02
4E351AA04
4E351AA13
4E351BB01
4E351BB31
4E351CC11
4E351DD04
4E351DD05
4E351DD06
4E351DD19
4E351EE14
4E351GG06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】業界で一般的に認知されている狭ベゼル設計の要件を満たすだけでなく、接触インピーダンスの要件も満たすことができるタッチセンサ及びタッチセンサの製造方法を提供する。
【解決手段】可視領域及び可視領域の少なくとも1つの側に周辺領域を有するタッチセンサ100は、基板110、金属ナノワイヤ層120及び金属層130を含む。金属ナノワイヤ層は、基板上に配置され、可視領域に対応する第1の部分120aと、周辺領域に対応する第2の部分120bと、を有する。金属層は、基板上に、周辺領域PAに対応して配置され、金属層の一部は、金属ナノワイヤ層の第2の部分の少なくとも一部と重なって接触して、重複領域Aが形成され、重複領域の接触面積が0.09mm
2~1.20mm
2であり、重複領域の接触インピーダンスが50Ω未満である。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視領域と、前記可視領域の少なくとも一方の側に周辺領域とを有するタッチセンサであって、
基板と、
前記基板上に配置され、前記可視領域に対応する第1の部分及び前記周辺領域に対応する第2の部分を有する金属ナノワイヤ層と、
前記基板上に、前記周辺領域に対応して配置された金属層と、を備え、
前記金属層の一部が前記金属ナノワイヤ層の前記第2の部分の少なくとも一部と重なって接触することにより重複領域が形成され、前記重複領域の接触面積が0.09mm2~1.20mm2であり、前記重複領域の接触インピーダンスが50Ω未満である、
タッチセンサ。
【請求項2】
前記接触面積は、前記基板上の前記重複領域の垂直投影面積である、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項3】
前記接触面積が0.09mm2~0.60mm2である、請求項1又は2に記載のタッチセンサ。
【請求項4】
前記接触インピーダンスが40Ω未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のタッチセンサ。
【請求項5】
前記金属ナノワイヤ層は、マトリクスと、複数の第1の金属ナノワイヤと、複数の第2の金属ナノワイヤとを備え、前記第1の金属ナノワイヤの各々は、前記マトリクス内に完全に埋め込まれており、前記第2の金属ナノワイヤの各々は、前記マトリクス内に部分的に埋め込まれている、請求項1~4のいずれか一項に記載のタッチセンサ。
【請求項6】
前記金属ナノワイヤ層の前記第2の部分における前記第2の金属ナノワイヤの各々は、前記マトリクス内に埋め込まれた第1の部分と、前記マトリクスの上面から突出する第2の部分とを有し、前記第2の金属ナノワイヤの前記第2の部分は前記金属層内に埋め込まれている、請求項5に記載のタッチセンサ。
【請求項7】
前記第2の金属ナノワイヤの各々は、前記マトリクス内に埋め込まれた第1の部分と、前記マトリクスの上面から突出する第2の部分とを有する、請求項5に記載のタッチセンサ。
【請求項8】
前記金属ナノワイヤ層は、複数の第1の膜構造及び複数の第2の膜構造をさらに備え、
前記第1の膜構造の各々は、前記マトリクスと前記第1の金属ナノワイヤの各々との間の界面に配置され、
前記第2の膜構造の各々は、前記マトリクスと、前記第2の金属ナノワイヤの各々の前記第1の部分との間の界面に配置される、
請求項6又は7に記載のタッチセンサ。
【請求項9】
前記第1の膜構造の各々は、前記第1の金属ナノワイヤの各々を覆い、第1の被覆構造を形成し、前記第2の膜構造の各々は、前記第2の金属ナノワイヤの各々の前記第1の部分を覆い、第2の被覆構造を形成する、請求項8に記載のタッチセンサ。
【請求項10】
前記金属ナノワイヤ層の前記第1の部分は、タッチ感知電極を構成し、前記金属層の前記第2の部分は、周辺回路を構成する、請求項1~9のいずれか一項に記載のタッチセンサ。
【請求項11】
可視領域と、前記可視領域の少なくとも一方の側に周辺領域とを有するタッチセンサの製造方法であって、
基板を準備する工程と、
前記基板上に前記可視領域および前記周辺領域に対応する金属ナノワイヤ層を形成する工程と、
前記金属ナノワイヤ層の表面処理を実施する工程と、
前記基板上に前記周辺領域に対応する金属層を形成する工程と、を備え、
前記金属層の一部が、表面処理が施された前記金属ナノワイヤ層と重なって接触することにより、重複領域が形成され、前記重複領域の接触面積が0.09mm2~1.20mm2であり、前記重複領域の接触インピーダンスが50Ω未満である、
タッチセンサの製造方法。
【請求項12】
前記金属ナノワイヤ層に対して前記表面処理を実施する工程は、
前記金属ナノワイヤ層に対して真空プラズマ処理を行う工程を含み、
前記真空プラズマ処理を、出力2kW~8kW、流量1500sccm~2500sccmのアルゴンプラズマにより行い、前記真空プラズマ処理の時間を20分~30分である、請求項11に記載のタッチセンサの製造方法。
【請求項13】
前記金属ナノワイヤ層は、マトリクスと、複数の金属ナノワイヤと、複数の膜構造とを含み、
前記金属ナノワイヤの各々は、前記マトリクス内に埋め込まれた第1の部分と、前記マトリクスの上面から突出する第2の部分とを有し、
前記膜構造の各々は、前記金属ナノワイヤの各々を覆い、
前記金属ナノワイヤ層に対して前記表面処理を実施する工程は、前記金属ナノワイヤの各々の前記第2の部分が露出されるように、前記金属ナノワイヤの各々の前記第2の部分を覆う前記膜構造の各々を除去する工程を含む、請求項11又は12に記載のタッチセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサ及びタッチセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチセンサは、ユーザと電子機器との間の情報通信チャネルとして、携帯電話、ノートパソコン、衛星ナビゲーションシステム、デジタルAVプレーヤなどの携帯電子デバイスに広く用いられている。
【0003】
狭ベゼルの電子製品に対する需要が徐々に増加するにつれて、業界は、ユーザのニーズを満たすために、電子製品のベゼルのサイズを縮小することに熱心に取り組んでいる。タッチセンサでは、周辺領域のサイズを小さくする必要がある。一般に、タッチセンサは、タッチ電極と周辺回路とを備えており、通常、タッチ電極と周辺回路とは周辺領域において互いに重なり合って導電路又はループを形成している。タッチセンサの周辺領域の大きさに影響を与える要因としては、通常、タッチ電極と周辺回路との重なり公差、タッチ電極と周辺回路との接触面積、周辺回路の線幅及び線間隔が挙げられる。タッチ電極と周辺回路との接触面積を小さくすることによって周辺領域を小さくすると、接触面積が小さくなるためタッチ電極と周辺回路との接触インピーダンスが大きくなり、タッチセンサの信号伝達に悪影響を及ぼすことが多い。以上のことから、業界で一般的に認知されている狭ベゼル設計の要件を満たすだけでなく、接触インピーダンスの要件も満たすことができるタッチセンサをどのように提供するかは、現在検討に値する。
【発明の概要】
【0004】
本開示のいくつかの実施形態によると、可視領域と、可視領域の少なくとも一方の側に周辺領域とを有するタッチセンサは、基板、金属ナノワイヤ層、及び金属層を含む。金属ナノワイヤ層は、基板上に配置され、可視領域に対応する第1の部分と、周辺領域に対応する第2の部分とを有する。金属層は、基板上に、周辺領域に対応して配置され、金属層の一部は、金属ナノワイヤ層の第2の部分の少なくとも一部と重なって接触することにより重複領域が形成され、重複領域の接触面積は、0.09mm2~1.20mm2であり、重複領域の接触インピーダンスは、50Ω未満である。
【0005】
本開示のいくつかの実施形態において、接触面積は、基板上の重複領域の垂直投影面積である。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態において、接触面積は0.09mm2~0.60mm2である。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態において、接触インピーダンスは、40Ω未満、30Ω未満、20Ω未満、又は10Ω未満である。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ層は、マトリクスと、複数の第1の金属ナノワイヤと、複数の第2の金属ナノワイヤとを含み、第1の金属ナノワイヤの各々は、マトリクス内に完全に埋め込まれ、第2の金属ナノワイヤの各々は、マトリクス内に部分的に埋め込まれている。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ層の第2の部分における第2の金属ナノワイヤの各々は、マトリクス内に埋め込まれた第1の部分と、マトリクスの上面から突出する第2の部分とを有し、第2の金属ナノワイヤの第2の部分は、金属層内に埋め込まれている。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態において、第2の金属ナノワイヤの各々は、マトリクス内に埋め込まれた第1の部分と、マトリクスの上面から突出する第2の部分とを有する。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ層は、複数の第1の膜構造及び複数の第2の膜構造をさらに含み、第1の膜構造の各々は、マトリクスと第1の金属ナノワイヤの各々との間の界面に配置され、第2の膜構造の各々は、マトリクスと第2の金属ナノワイヤの各々の第1の部分との間の界面に配置される。
【0012】
本開示のいくつかの実施形態において、第1の膜構造の各々は、第1の金属ナノワイヤの各々を覆い、第1の被覆構造を形成し、第2の膜構造の各々は、第2の金属ナノワイヤの各々の第1の部分を覆い、第2の被覆構造を形成する。
【0013】
本開示のいくつかの実施形態において、第1の膜構造及び第2の膜構造の各々の材料は、ポリエチレン誘導体を含む。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態において、金属層の材料は、感光性の銀を含む。
【0015】
本開示のいくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ層の第1の部分は、タッチ感知電極(touch sensing electrode)を構成し、金属層の第2の部分は、周辺回路を構成する。
【0016】
本開示のいくつかの他の実施形態によると、可視領域と、可視領域の少なくとも1つの側に周辺領域とを有するタッチセンサの製造方法は、基板を準備する工程と;基板上に可視領域および周辺領域に対応する金属ナノワイヤ層を形成する工程と;金属ナノワイヤ層の表面処理を実施する工程と;基板上に周辺領域に対応する金属層を形成する工程と;を備え、金属層の一部が、表面処理が施された金属ナノワイヤ層と重なって接触することにより、重複領域が形成され、重複領域の接触面積が0.09mm2~1.20mm2であり、重複領域の接触インピーダンスが50Ω未満である。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ層に対して表面処理を実施する工程は、金属ナノワイヤ層に対して真空プラズマ処理を行う工程を含み、真空プラズマ処理を、出力2kW~8kW、流量1500sccm~2500sccmのアルゴンプラズマにより行い、真空プラズマ処理の時間は、20分~30分である。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ層は、マトリクスと、複数の金属ナノワイヤと、複数の膜構造とを含み、金属ナノワイヤの各々は、マトリクス内に埋め込まれた第1の部分と、マトリクスの上面から突出する第2の部分とを有し、膜構造の各々は、金属ナノワイヤの各々を覆い、金属ナノワイヤ層に対して表面処理を実施する工程は、金属ナノワイヤの各々の第2の部分が露出されるように、金属ナノワイヤの各々の第2の部分を覆う膜構造の各々を除去する工程を含む。
【0019】
本開示のいくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ層は、マトリクスと、複数の金属ナノワイヤと、複数の膜構造とを含み、膜構造は、マトリクスの上面および内部に分布され、金属ナノワイヤ層に対する表面処理を実施する工程は、マトリクスの上面が露出されるように、マトリクスの上面上に分布された膜構造を除去する工程を含む。
【0020】
本開示のいくつかの実施形態において、表面処理が施された金属ナノワイヤ層は、マトリクスと、複数の金属ナノワイヤとを含み、金属ナノワイヤの各々は、マトリクス内に埋め込まれた第1の部分と、マトリクスの上面から突出する第2の部分とを有し、金属層は、周辺領域内の金属ナノワイヤの各々の第2の部分が金属層内に埋め込まれるように、周辺領域に対応して形成される。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態において、基板上に金属ナノワイヤ層を形成する工程は、金属ナノワイヤ層にパターン化工程を実施し、タッチ感知電極を形成する工程を含む。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態において、基板上に金属層を形成する工程は、金属層にパターン化工程を実施し、周辺回路を形成する工程を含む。
【0023】
本開示の前述の実施形態によると、本開示のタッチセンサは、周辺領域において金属ナノワイヤ層の一部と金属層の一部とを重ね合わせることによって形成される重複領域を有する。本開示の金属ナノワイヤ層は、金属層および金属ナノワイヤ層によって形成される重複領域は、必要な接触面積を有しつつ、良好な接触効果を提供できるように、適切な表面処理を施してもよい。したがって、本開示のタッチセンサは、業界で一般的に認識されている狭ベゼル設計の要件を満たすだけでなく、接触インピーダンスの要件も満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本開示は、以下の添付図面を参照して実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより、より完全に理解することができる。
【
図1A】本開示のいくつかの実施形態による、異なる工程における金属ナノワイヤ層への表面処理の方法を示す概略断面図である。
【
図1B】本開示のいくつかの実施形態による、異なる工程における金属ナノワイヤ層への表面処理の方法を示す概略断面図である。
【
図1C】本開示のいくつかの実施形態による、異なる工程における金属ナノワイヤ層への表面処理の方法を示す概略断面図である。
【
図1D】本開示のいくつかの実施形態による、異なる工程における金属ナノワイヤ層への表面処理の方法を示す概略断面図である。
【
図1E】本開示のいくつかの実施形態による、異なる工程における金属ナノワイヤ層への表面処理の方法を示す概略断面図である。
【
図2A】本開示のいくつかの実施形態によるタッチセンサを示す概略平面図である。
【
図2B】本開示のいくつかの実施形態による、線2B-2Bに沿う、
図2Aのタッチセンサを示す概略断面図である。
【
図2C】本開示のいくつかの実施形態による、
図2Bにおけるタッチセンサの領域Rを示す概略部分拡大図である。
【
図3】重複領域の接触インピーダンスの測定方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面に例示されている本開示の本実施形態を詳細に参照する。図面及び説明においては、可能な限り同一の参照番号を使用して、同一又は類似の部分を参照する。
【0026】
本明細書では、用語「第1」、「第2」及び「第3」を使用して、様々な要素、構成要素、領域、層、及び/又は部分を記述することができるが、これらの要素、構成要素、領域、層、及び/又は部分は、これらの用語によって制限されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、又は部分を、別の要素、構成要素、領域、層、又は部分と区別するためにのみ使用される。したがって、以下に説明する「第1の要素」、「構成要素」、「領域」、「層」又は「部分」は、本開示の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、又は部分とも呼ぶことができる。
【0027】
さらに、「下方(lower)」又は「最下部(bottom)」及び「上方(upper)」又は「最上部(top)」などの相対的な用語は、本明細書では、図に示すように、1つの要素と別の要素との関係を記述するために使用することができる。相対的な用語は、図に示されたもの以外のデバイスの異なる向きを含むことが意図されていることを理解されたい。例えば、ある図のデバイスが裏返されると、他の要素の「下方」側にあると記述された要素は、他の要素の「上方」側に向く。したがって、例示的な用語「下方」は、図面の特定の向きに応じて、「下方」及び「上方」の向きを含み得る。同様に、1つの図のデバイスが裏返されると、他の要素の「下(below)」として説明される要素は、他の要素の「上(above)」に向く。したがって、例示的な用語「下」は、「上」及び「下」の向きを含むことができる。
【0028】
本開示は、業界で一般的に認識されている狭ベゼルサイズの要件を満たすだけでなく、接触インピーダンスの要件も満たすタッチセンサを提供する。本開示は、金属ナノワイヤ層(すなわち、金属ナノワイヤを含む層)に表面処理を実施する方法と、表面処理が施された金属ナノワイヤ層によって製造されたタッチセンサとを含む。本開示では、説明の明確性と便宜性のために、金属ナノワイヤ層に対して表面処理を実施する方法が優先的に議論されることを理解されたい。
【0029】
図1A~
図1Eは、本開示のいくつかの実施形態による、異なる工程における金属ナノワイヤ層120への表面処理の方法を示す概略断面図である。
図1Aを参照する。まず、分散液10が準備される。いくつかの実施形態において、分散液10は、例えば、溶媒、フィラー、及び金属ナノワイヤ122の混合物であってもよく、フィラー及び溶媒は均一に混合され、金属ナノワイヤ122は、混合されたフィラー及び溶媒中に分散される。いくつかの実施形態において、溶媒は、水、アルコール、ケトン、エーテル、炭化水素、芳香族溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン等)又はそれらの組合せであってもよい。いくつかの実施形態において、フィラーは絶縁材料を含むことができる。例えば、絶縁材料は、非導電性樹脂又は他の有機材料、例えばポリアクリレート、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリ(シリコン-アクリル)、ポリ(スチレンスルホン酸)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、セラミック材料、又はこれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ122は、例えば、銀ナノワイヤ、金ナノワイヤ、銅ナノワイヤ、ニッケルナノワイヤ、又はそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書で使用される用語「金属ナノワイヤ」は、集合名詞であり、複数の金属元素、金属合金、または金属化合物(金属酸化物を含む)を含む金属ワイヤの集合を指し、その中に含まれる金属ナノワイヤの数は、本開示の範囲に影響しないことを理解されたい。いくつかの実施形態において、単一の金属ナノワイヤの断面サイズ(例えば、断面の直径)は、500nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満とすることができる。いくつかの実施形態において、金属ナノワイヤは、大きなアスペクト比(長さ:断面の直径)を有する。具体的には、金属ナノワイヤのアスペクト比は、10~100,000であってもよい。より詳細には、金属ナノワイヤのアスペクト比は、10超、好ましくは50超、より好ましくは100超であってもよい。さらに、絹、繊維、又はチューブのような他の用語もまた、上述の断面寸法およびアスペクト比を有しており、これらも本開示の範囲内にある。
【0031】
いくつかの実施形態において、分散液10は、金属ナノワイヤ122、溶媒、及びフィラーの間の相溶性、並びに溶媒及びフィラーにおける金属ナノワイヤ122の安定性を向上するためのポリマーバインダーを含むことができる。いくつかの実施形態において、ポリマーバインダーは、ポリビニルピロリドン(PVP)などのポリエチレン誘導体を含むことができる。いくつかの実施形態において、分散液10は、添加剤及び/又は界面活性剤をさらに含み得る。具体的には、添加剤及び/又は界面活性剤は、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロース、フルオロ界面活性剤、スルホサクシネートスルホネート、サルフェート、ホスフェート、ジスルホネート、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0032】
図1Bを参照する。次に、基板110が準備され、金属ナノワイヤ122を含む分散液10が、基板110の表面111上にコーティングされる。微視的スケールで見ると、金属ナノワイヤ122は、分散液10内に方向性なくランダムに分布しており、金属ナノワイヤ122の一部は分散液10の液面11の近くに分布しているため、分散液10の液面11は、不均一かつ波状である。いくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ122は、導電性ネットワークを形成するように、連続的な電流経路を提供するために互いに接触することができる。すなわち、金属ナノワイヤ122は、その交差位置で接触し、電子を移動させる経路を形成する。銀ナノワイヤを例にとると、1つの銀ナノワイヤともう1つの銀ナノワイヤは、それらの交差位置で直接接触を形成して、電子を移動させるための低抵抗経路を形成することができる。さらに、基板110の表面111上にコーティングされた分散液10は、分散液10中の金属ナノワイヤ122の各々を完全に覆うことができ、分散液10中の溶媒およびフィラーは、コーティング中およびコーティング後に凝集物または沈殿物を生成することなく均一に混合される。
【0033】
図1Cを参照する。次に、硬化/乾燥工程を実施して、基板110の表面111上にコーティングされた分散液10を光、熱、又は他の方法によって完全に硬化させ、それによって、金属ナノワイヤ層120を形成する。詳細には、硬化/乾燥工程の後、分散液10中の溶媒が揮発し、フィラーが硬化してマトリクス124が形成され、金属ナノワイヤ122がマトリクス124内にランダムに分布することができる。いくつかの実施形態において、分散液10中のポリマーバインダーも硬化されて、金属ナノワイヤ層120中に複数の膜構造126を形成する。より詳細には、硬化/乾燥工程の前に、ポリマーバインダーの一部は分散液10の内部にあってもよく、ポリマーバインダーの一部が分散液10の上方の層(一部)にあってもよい。したがって、硬化/乾燥工程の後に、膜構造126の一部をマトリクス124の内部に形成することができ、膜構造126の一部をマトリクス124の上面125に形成することができる。いくつかの実施形態において、マトリクス124の内部の膜構造126は、例えば、マトリクス124内にランダムに分布させることができ、マトリクス124の上面125上の膜構造126は、例えば、マトリクス124の上面125を全体的に覆ってフィルム層126を形成することができる。
【0034】
いくつかの実施形態において、分散液10の内部のポリマーバインダーは、硬化/乾燥工程中に金属ナノワイヤ122の表面に沿ってさらに硬化させることができる。したがって、膜構造126のいくつかは、金属ナノワイヤ122とマトリクス124との間の界面に形成することができ、膜構造126のいくつかは、マトリクス124内の隣り合う金属ナノワイヤ122の間に単独で存在することができる。いくつかの実施形態において、膜構造126は、金属ナノワイヤ122の各々を覆って、被覆構造126を形成することができる。いくつかの実施形態において、被覆構造126は、例えば、金属ナノワイヤ122の各々の表面の一部を覆ってしてもよい。他のいくつかの実施形態において、被覆構造126は、例えば、金属ナノワイヤ122の各々の表面全体を覆ってもよい。いくつかの実施形態において、被覆構造126の被覆率は、金属ナノワイヤ122の総表面積の約80%超、約90%~約95%、約90%~約99%、又は約90%~100%であってもよい。なお、被覆構造126の被覆率が100%と言われる場合は、金属ナノワイヤ122の表面全体が露出していないことを意味することを理解されたい。本開示の金属ナノワイヤ122は、互いに接触して導電性ネットワークを形成することができるので、被覆構造126は、導電性ネットワーク全体を覆うように、互いに接触する金属ナノワイヤ122の表面全体に実質的に連続的に形成され、金属ナノワイヤ122間の接触に影響を与えないことは注目に値する。いくつかの実施形態において、被覆構造126は、例えば、金属ナノワイヤ122の各々の表面をコンフォーマルな方法(conformal manner)で覆ってもよい。
【0035】
金属ナノワイヤ層120の上面121近傍の金属ナノワイヤ122は、金属ナノワイヤ122の各々が、マトリクス124に埋め込まれた第1の部分122aと、マトリクス124の上面125から突出する第2の部分122bとを有し、金属ナノワイヤ122の各々の表面が、被覆構造126によって覆われる。換言すると、金属ナノワイヤ122の第1の部分122aを覆う被覆構造126は、マトリクス124と金属ナノワイヤ122との間の界面に配置され(すなわち、マトリクス124と金属ナノワイヤ122の第1の部分122aは、被覆構造126によって互いに離間している)、金属ナノワイヤ122の第2の部分122bを覆う被覆構造126は、マトリクス124の外部に露出される。金属ナノワイヤ層120を全体として見ると、金属ナノワイヤ層120は、マトリクス124、金属ナノワイヤ122及び膜構造126を含むことができる。膜構造126は、マトリクス124の内部に単独で存在してもよく、マトリクス124の上面125を覆ってフィルム層126を形成してもよく、又は金属ナノワイヤ122の各々を覆って被覆構造126を形成してもよく、膜構造126の材料は、ポリビニルピロリドンなどのポリエチレン誘導体を含んでもよい。
【0036】
図1Dを参照する。続いて、硬化/乾燥された金属ナノワイヤ層120は、表面処理が施されてもよい。表面処理が施された金属ナノワイヤ層120は、他の導電層(例えば、具体的な構造を以下に詳述する金属層)と電気的に重なるように、より低い表面抵抗を有することができる。表面処理の方法については、例えば、金属ナノワイヤ層120が形成された後、金属ナノワイヤ層120に対して真空プラズマ処理を行って、マトリクス124の上面125上の膜構造(フィルム層)126、及び金属ナノワイヤ122の第2の部分122bを覆う膜構造(被覆構造)126を除去し、マトリクス124の上面125及び金属ナノワイヤ122の第2の部分122bを露出させることができる。いくつかの実施形態において、表面処理は、金属ナノワイヤ層120に対して、出力2kW~8kW及び流量1500sccm~2500sccm(好ましくは流量1900sccm~2100sccm)のアルゴンプラズマ(AP)による真空プラズマ処理を20分間~30分間実行することによって行われる。表面処理が施された金属ナノワイヤ層120は、
図1Eに示すように、マトリクス124の上面125上の膜構造(フィルム層)126及び金属ナノワイヤ122の第2の部分122bを覆う膜構造(被覆構造)126が除去され、マトリクス124内に膜構造126が残されている(金属ナノワイヤ122を覆う膜構造(被覆構造)126と、マトリクス124内に単独で存在する膜構造126とを含む)。表面処理後、マトリクス124の上面125付近の金属ナノワイヤ122の第2の部分122bは、膜構造126によって覆われることなく完全に露出することができるため、表面処理が施された金属ナノワイヤ層120はより低い表面抵抗を有し、当該表面抵抗は、表面処理が施されていない金属ナノワイヤ層120の表面抵抗と比較して、約5%~約10%低下させることができる。よって、金属ナノワイヤ層120は、続いて形成される他の導電層と重なる場合、より低い重なりインピーダンスを有することができる。
【0037】
本開示の上記方法は、タッチセンサの製造に適用することができる。具体的には、
図2A及び
図2Bを参照する。
図2Aは、本開示のいくつかの実施形態によるタッチセンサ100を示す概略平面図であり、
図2Bは、本開示のいくつかの実施形態による、
図2Aの線2B-2Bに沿うタッチセンサ100を示す概略断面図である。いくつかの実施形態において、タッチセンサ100は、基板110と、金属ナノワイヤ層120と、金属層130とを含んでもよい。基板110は、金属ナノワイヤ層120及び金属層130を支持するように構成され、例えば、硬質透明基板又は可撓性透明基板であってもよい。いくつかの実施形態において、基板110の材料は、ガラス、アクリル、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、無色ポリイミド又はこれらの組合せなどの透明材料を含むが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、タッチセンサ100は、可視領域VAと周辺領域PAとを有し、周辺領域PAは、可視領域VAの側方に配置される。例えば、周辺領域PAは、可視領域VAの周囲(すなわち、右側、左側、上側、及び下側を含む)に配置された枠状の領域であってもよい。他の例として、周辺領域PAは、可視領域VAの左側及び下側に配置されたL字状の領域であってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ層120と金属層130は、基板110上及び周辺領域PA内に連続して配置され、金属層130の一部が、金属ナノワイヤ層120の一部と重なって接触して、重複領域Aを形成する。より具体的には、金属ナノワイヤ層120は、可視領域VA内に第1の部分120aと、周辺領域PA内に第2の部分120bとを有している。金属ナノワイヤ層120の第1の部分120aは、タッチ感知電極TEを構成し、金属ナノワイヤ層120の第2の部分120bの少なくとも一部は、周辺領域PAに位置し周辺回路Tを構成する金属層130と重なって接触して、重複領域Aを形成する。金属層130と金属ナノワイヤ層120との重複部分を介して、タッチセンサ100において、可視領域VAと周辺領域PAとを横断する、タッチ制御等の信号伝送のための電子伝送路を形成することができる。なお、本開示でに記載されている金属ナノワイヤ層120と金属層130は、単に積層構造を説明するための便宜上用いられているに過ぎない。実際、金属ナノワイヤ層120は、少なくとも1つのタッチ感知電極TEを含むようにパターン化されてもよく、金属層130は、タッチ感知電極TEに対応する少なくとも1つの周辺回路Tを含むようにパターン化されてもよく、本開示の重複領域Aは、互いに接触している1つの周辺回路Tと1つのタッチ感知電極TEによって形成される領域を指す。
【0039】
いくつかの実施形態において、1つのタッチ感知電極TEは、
図2Aに示される3つの電極線Lのように、第1の方向D1に沿って延びる複数の帯状の電極線Lを含んでもよく、電極線Lは、第2の方向D2に沿って間隔を置いて配置され、第1の方向D1が第2の方向D2に直交するように、並列に接続されてもよい。本実施形態では、タッチ感知電極TEは、波形状の電極パターンを有している。ただし、タッチ感知電極TEの形状や配置はこれに限定されるものではない。他のいくつかの実施形態では、タッチ感知電極TEは、他の適切な形状及び配置を備えてもよい。
【0040】
図2Cは、本開示のいくつかの実施形態による、
図2Bにおけるタッチセンサ100の領域Rを示す概略部分拡大図である。
図2B及び
図2Cを参照する。いくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ層120は、表面処理が施された金属ナノワイヤ層120である。より詳細には、金属ナノワイヤ層120は、マトリクス124と、複数の第1の金属ナノワイヤ122Aと、複数の第2の金属ナノワイヤ122Bとを含んでもよく、第1の金属ナノワイヤ122Aはマトリクス124内に完全に埋め込まれ、第2の金属ナノワイヤ122Bはマトリクス124の上面125の近くにありマトリクス124内に部分的に埋め込まれ、第2の金属ナノワイヤ122Bの各々は、マトリクス124内に埋め込まれた第1の部分122aと、マトリクス124の上面125から突出する第2の部分122bとを有する。さらに、マトリクス124と第1の金属ナノワイヤ122Aの各々との間の界面は、第1の膜構造126Aを有し(すなわち、マトリクス124と第1の金属ナノワイヤ122Aの各々とは、第1の膜構造126Aによって互いに離間している)、マトリクス124と第2の金属ナノワイヤ122Bの各々の第1の部分122aとの間の界面は、第2の膜構造126Bを有する(すなわち、マトリクス124と第2の金属ナノワイヤ122Bの各々の第1の部分122aとは、第2の膜構造126Bによって互いに離間している)。可視領域VAにおける金属ナノワイヤ層120の第1の部分120aから見た場合、第2の金属ナノワイヤ122Bの第2の部分122bは、マトリクス124の上面125から露出される。周辺領域PAにおける金属ナノワイヤ層120の第2の部分120bから見た場合、第2の金属ナノワイヤ122Bの第2の部分122bは、金属ナノワイヤ層120の上の金属層130内に埋め込まれる。
【0041】
いくつかの実施形態において、第1の膜構造126Aは、第1の金属ナノワイヤ122Aの各々の一部または全面をさらに覆って第1の被覆構造126Aを形成してもよく、第2の膜構造126Bもまた、第2の金属ナノワイヤ122Bの各々の第1の部分122aの一部または全面を覆って第2の被覆構造126Bを形成してもよい。いくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ層120は、第1の金属ナノワイヤ122A間、第2の金属ナノワイヤ122B間、及び第1の金属ナノワイヤ122Aと第2の金属ナノワイヤ122B間に、マトリクス124内に単独で存在する複数の第3の膜構造126Cをさらに含んでもよい。換言すると、第3の膜構造126Cは、第1の金属ナノワイヤ122Aまたは第2の金属ナノワイヤ122Bのいずれとも接触していない。
【0042】
上述した真空プラズマ処理を行って金属ナノワイヤ層120に対して表面処理を施し、第2の金属ナノワイヤ122Bの第2の部分122bを覆っている膜構造126を除去し、第2の金属ナノワイヤ122Bの第2の部分122bを露出させることにより、金属ナノワイヤ層120の表面抵抗を効果的に低減させることができる。さらに、金属層130と金属ナノワイヤ層120とが重なると、金属ナノワイヤ層120における第2の金属ナノワイヤ122Bの露出部分が金属層130に直接接触することができるため、金属ナノワイヤ層120と金属層130との間により低い接触インピーダンスが形成され、接触インピーダンスの要件を満たす。また、タッチセンサ100の周辺領域PAのサイズ(例えば、周辺領域PAの幅)は、接触インピーダンスの低減により、より小さなサイズ範囲内に収まるように設計することができ、業界で一般的に認識されている狭ベゼルサイズの仕様を満たすことができる。
【0043】
具体的には、本開示のタッチセンサ100では、周辺領域PAにおける金属層130の一部が、表面処理が施された金属ナノワイヤ層120の第2の部分120bの少なくとも一部と重なっており、形成された重複領域Aの接触面積は0.09mm
2~1.20mm
2であり、重複領域Aの接触インピーダンスは50Ω未満、好ましくは40Ω未満、30Ω未満又は20Ω未満、より好ましくは10Ω未満である。一般に、重複領域Aの接触面積が1.20mm
2以下である場合には、タッチセンサ100の周辺領域PAの設計を柔軟にすることができ、周辺領域PAのサイズを比較的小さくすることができ、タッチセンサ100が業界で一般的に認識されている狭ベゼルサイズの仕様を満たすことができる。
換言すると、本開示のタッチセンサ100は、業界で一般的に認識されている狭ベゼルサイズの仕様および接触インピーダンスの要件を同時に満たすことができる。詳細には、重複領域Aの接触面積が1.20mm
2超の場合には、タッチセンサ100の周辺領域PAのサイズを大きくする必要があり、タッチセンサ100が業界で一般的に認知されている狭ベゼルサイズの仕様を満たすことができない。重複領域Aの接触面積が0.09mm
2未満の場合には、重複領域Aの接触インピーダンスが高くなりすぎるため(例えば50Ω以上)、タッチセンサ100が接触インピーダンスの要件を満たすことができなくなる。さらに、接触面積が0.09mm
2未満であると、構造内に有効かつ信頼性のある重なりを形成することができなくなり、金属層130および金属ナノワイヤ層120は、容易に剥離し、分離される。他のいくつかの実施形態では、より小さいサイズの製品(例えば、腕時計のようなウェアラブルデバイス)について、タッチセンサ100の重複領域Aは、さらに、0.09mm
2~0.6mm
2の接触面積を有してもよく、重複領域Aの接触インピーダンスは、業界で一般的に認識されている狭ベゼルサイズの仕様を満たすように、50Ω未満、好ましくは40Ω未満、30Ω未満又は20Ω未満、より好ましくは10Ω未満である。なお、本開示における重複領域Aの形状は、当該技術分野で一般的に設計されている四角形を例示したものであり、「接触面積」とは、第1の方向D1と第2の方向D2とで形成される平面上に位置する、平面視(
図2Aの視野角)で見たときの長さL1と幅W1とで形成される重複領域Aの平面領域の面積を意味することを理解されたい。より具体的には、「接触面積」とは、基板110上の重複領域Aの垂直投影面積であり、タッチセンサ100の周辺領域PAのサイズに実際に影響を与える領域である。
【0044】
表1は、表面処理の前後で金属ナノワイヤ層120と金属層130とを重ね合わせることにより重複領域Aを形成した場合の、各比較例及び実施例における重複領域Aの接触インピーダンスを具体的に示したものである。具体的には、各比較例における金属ナノワイヤ層120は表面処理が施されておらず、各実施例における金属ナノワイヤ層120は、上述の工程を介して表面処理が施されており、各実施例における金属ナノワイヤ層120は、出力6kW及び流量2000sccmのアルゴンプラズマによって26分間真空プラズマ処理されている。また、各比較例及び実施例における重複領域Aの測定は、対応する1つの周辺回路Tに1つのタッチ感知電極TEを重ねて構成された構造を用いて行われている。各比較例及び実施例における重複領域Aの接触インピーダンスの測定方法について、
図3を参照して説明すると、
図3は、重複領域Aの接触インピーダンスの測定方法を示す概略図である。測定装置はKeysight(商標)B2912A型プローブ付電力測定装置であり、常温環境下で測定を行う。測定中、一定の入力電流(10μA)が各測定セクション(例えば、X-Yセクション、X-Zセクション、及びW-Yセクション)に供給され、出力電圧が測定され、さらにオームの法則によって抵抗インピーダンスに変換される。
【0045】
具体的には、重複領域Aの接触インピーダンスの測定方法は、以下のステップを含む。ステップ1:電力測定装置の第1のプローブを周辺回路Tの任意の位置(点X)に接触させ、第2のプローブをタッチ感知電極TEの任意の位置(点Y)に接触させて、インピーダンス(X-Y)を得る。ステップ2:第1のプローブを周辺回路Tの点Xに接触させたまま、重複領域Aの端部(点Z)で周辺回路Tに接触するように第2のプローブを移動させて、インピーダンス(X-Z)を得る。ステップ3:電力測定装置の第1のプローブをタッチ感知電極TEの点Yに接触させ、第2のプローブを重複領域Aの端部(点W)でタッチ感知電極TEに接触させて、インピーダンス(W-Y)を得る。インピーダンス(X-Y)、インピーダンス(X-Z)、インピーダンス(W-Y)を各々求めた後、重複領域Aの接触インピーダンス(すなわち、インピーダンス(W-Z))は、[インピーダンス(X-Y)-インピーダンス(X-Z)-インピーダンス(W-Y)]=インピーダンス(W-Z)で求めることができる。各比較例及び実施例の重複領域Aのその他の詳細な説明及び測定結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
注:インピーダンスの測定結果が1Ω未満の場合、インピーダンスは1Ωとして記録される。
【0047】
表1の測定結果から、表面処理が施されていない金属ナノワイヤ層120と金属層130とを重ね合わせて形成された重複領域Aの接触面積が小さい場合(例えば、接触面積0.09mm2~1.20mm2)、接触インピーダンスは50Ω超であることがわかる。一方、表面処理が施された金属ナノワイヤ層120と金属層130とを重ね合わせて形成された重複領域Aの接触面積が小さい場合(例えば、接触面積0.09mm2~1.20mm2)、接触インピーダンスは50Ω未満である(または接触インピーダンスは1Ω以下であってもよい)。換言すると、本開示のタッチセンサ100は、業界で一般的に認識されている狭ベゼルサイズの仕様を満たしつつ、低接触インピーダンスの要件を依然として満たすことができる。なお、重複領域Aの接触面積が1.2mm2超の場合(例えば、表1の接触面積1.6mm2)、金属ナノワイヤ層120に対する表面処理を行わなくても接触インピーダンスは50Ω未満にすることができるものの、接触面積が1.2mm2超の重複領域Aを有するタッチセンサ100は、業界で一般的に認識されている狭ベゼルサイズの仕様を満たすことができない。
【0048】
表2は、表面処理の前後で金属ナノワイヤ層120と金属層130とを重ね合わせることにより形成された重複領域Aの、各比較例及び実施例における常温環境下での測定結果を具体的に示したものであり、重複領域Aは高温高湿環境下に置かれ、高温高湿環境はHS6590環境である(すなわち、温度65℃、相対湿度90%)。具体的には、各比較例における金属ナノワイヤ層120は表面処理が施されておらず、各実施例における金属ナノワイヤ層120は、上述の工程を介して表面処理が施されており、各実施例における金属ナノワイヤ層120は、2000sccmの流量を有するアルゴンプラズマにより26分間真空プラズマ処理されている。また、常温環境下で使用される測定方法及び測定装置は、前述の表1の測定方法及び測定装置と同一である。各比較例及び実施例の重複領域Aのその他の詳細な説明及び測定結果を表2に示す。
【0049】
【0050】
表2の測定結果から、重複領域Aの接触面積が0.09mm2~1.20mm2の場合、表面処理が施されていない金属ナノワイヤ層120と金属層130とを重ね合わせて形成されたタッチセンサ100は、高温高湿環境下に置かれる前であっても、50Ω未満の接触インピーダンスを有することができないことがわかる。これに対して、表面処理が施された金属ナノワイヤ層120と金属層130とを重ね合わせて形成されたタッチセンサ100は、高温高湿環境下に120時間置いた後でも、常温環境下で50Ω未満の接触インピーダンスを有することができる。測定結果は、表面処理が施された金属ナノワイヤ層120を有するタッチセンサ100が、業界で一般的に認識されている狭ベゼルサイズの仕様を満たしつつ、高温高湿環境下に置かれた後でも、低い接触インピーダンスの要件を満たすことができることを示している。
【0051】
なお、タッチセンサ100が複数のタッチ感知電極TEを有する場合、表面処理が施された金属ナノワイヤ層120と金属層130とを重ね合わせて形成された本開示のタッチセンサ100では、異なるタッチ感知電極TEに対応する接触インピーダンスの差を±2.5Ω以内に維持することができる。一方、表面処理が施されていない金属ナノワイヤ層120と金属層130とを重ね合わせて形成されたタッチセンサ100では、異なるタッチ感知電極TEに対応する接触インピーダンスの差が±30Ωに達することがある。したがって、本開示のタッチセンサ100は、より低い接触インピーダンスを提供するだけでなく、異なるタッチ感知電極TEの接触インピーダンス間のより良好な均一性も提供する。
【0052】
以下の説明では、
図1A~1Eに示すように、表面処理が施され、基板110上に形成された金属ナノワイヤ層120と、
図2A~2Cに示すタッチセンサ100を例に、本開示のタッチセンサ100の製造方法をさらに説明する。上述した構成要素の構成、接続関係、及び利点は、以下では繰り返さないことを理解されたい。
【0053】
タッチセンサ100の製造方法は、ステップS10~ステップS40を含んでもよく、ステップS10~ステップS40は連続して実施してもよい。ステップS10では、基板110を準備する。ステップS20では、基板110上に可視領域VAおよび周辺領域PAに対応する金属ナノワイヤ層120を形成する。ステップS30では、金属ナノワイヤ層120に表面処理を施す。ステップS40では、基板110上に周辺領域PAに対応して金属層130が形成され、金属層130の一部が表面処理が施された金属ナノワイヤ層120と重なって接触し、重複領域Aが形成される。
【0054】
いくつかの実施形態において、ステップS10の後に、基板110に対して後処理を行ってもよく、例えば、表面改質プロセスを行うか、又は、基板110の表面111上に接着剤層若しくは樹脂層を追加でコーティングして、基板110と他の層(例えば、金属ナノワイヤ層120及び/又は金属層130)との間の接着を強化する。
【0055】
いくつかの実施形態において、ステップS20は、金属ナノワイヤ層120にパターン化処理を実施することをさらに含んでもよい。具体的には、金属ナノワイヤ122を含む分散液10を基板110の表面111上にコーティングし、硬化/乾燥させて金属ナノワイヤ層120を基板110の表面111に接着させた後、金属ナノワイヤ層120に対してパターン化処理を実施し、可視領域VAと周辺領域PAの金属ナノワイヤ層120を各々そのパターンで画定することができる。詳細には、可視領域VA内の金属ナノワイヤ層120は、少なくとも1つのタッチ感知電極TEを形成するようにパターン化することができ、周辺領域PA内の金属ナノワイヤ層120は、続いて、金属層130と重なる重複部分(第1の重複部分とも呼ぶ)を形成するようにパターン化することができる。いくつかの実施形態において、金属ナノワイヤ層120は、エッチング処理によってパターン化することができる。いくつかの実施形態において、可視領域VAおよび周辺領域PAにおける金属ナノワイヤ層120は、エッチングマスク(例えばフォトレジスト)の補助を用いて同時にエッチングすることができ、パターンを有する金属ナノワイヤ層120が、可視領域VAおよび周辺領域PAに同一プロセスで形成される。より詳細には、金属ナノワイヤ層120内の金属ナノワイヤ122が銀ナノワイヤである場合、銀材料を除去するために、エッチング液の主成分をH3PO4(エッチング液中のH3PO4の体積比が約55%~約70%)とHNO3(エッチング液中のHNO3の体積比が約5%~約15%)とすることができる。他のいくつかの実施形態において、エッチング液の主成分は、塩化第二鉄/硝酸又はリン酸/過酸化水素であってもよい。さらに、いくつかの実施形態において、ステップS30の後にパターン化処理を実施することもできる。すなわち、ステップS20を実施して基板110上に金属ナノワイヤ層120を形成した後、ステップS30を実施して金属ナノワイヤ層120に表面処理を施し、その後パターン化処理を実施する。換言すると、金属ナノワイヤ層120のパターン化処理は、金属ナノワイヤ層120の表面処理の前または後に実施することができ、本開示はこれに限定されるものではない。
【0056】
続いて、ステップS40において、表面処理が施された金属ナノワイヤ層120に金属層130が部分的に重なるように(すなわち、第1の重複部分)、周辺領域PAに金属層130を形成し、重複領域Aを形成する。いくつかの実施形態において、感光性金属(例えば感光性銀)を含む金属層130を、基板110の周辺領域PAの表面全体に形成して、第1の重複部分を部分的に覆ってもよい。次に、金属層130をパターン化して、金属層130のパターンを画定し、金属ナノワイヤ層120の第1の重複部分と重なる少なくとも1つの周辺回路Tおよび第2の重複部分を形成してもよい。金属層130の材料が感光性銀である場合は、感光性銀を直接露光および現像して金属層130のパターンを形成することができる。より具体的には、金属層130の材料として感光性銀を用いることにより、フォトレジストを塗布する工程、フォトレジストを露光及び現像する工程、並びに現像されたフォトレジストを介して金属層130をエッチングする工程を省略することができる。したがって、金属層130のパターンを形成するために実施されるエッチングプロセスによる金属ナノワイヤ層120のパターンの損傷を防止することができる。以上の工程を経て、金属層130の一部と金属ナノワイヤ層120の一部との間の周辺領域PAにおける重なりと接触により形成された重複領域Aを有するタッチセンサ100を製造することができる。
【0057】
本開示のタッチセンサは、タッチ機能を有するディスプレイのような他の電子デバイスと組み立てることができる。例えば、基板をディスプレイデバイス(例えば、液晶ディスプレイデバイスまたは有機発光ダイオードディスプレイデバイス)に接着することができ、光学接着剤または他の接着剤を用いてそれらの間を接着することができる。タッチセンサは、光学接着剤を介して外側カバー層(例えば保護ガラス)と接着されてもよい。本開示のタッチセンサは、携帯電話、タブレット、ノートパソコン等の電子デバイスにも適用することができ、また、柔軟な製品にも適用することができる。本開示のタッチセンサは、偏光子(例えば、偏光子はタッチセンサの基板として直接使用することができる)、ウェアラブルデバイス(例えば、時計、眼鏡、スマートウェア、スマートシューズ)、および自動車デバイス(例えば、ダッシュボード、ドライブレコーダ、バックミラー、ウィンドウなど)にも適用することができる。
【0058】
本開示の前述の実施形態によると、本開示のタッチセンサは、金属ナノワイヤ層の一部と金属層の一部とが周辺領域で互いに重なって形成された重複領域を有する。本開示の金属ナノワイヤ層は、金属層および金属ナノワイヤ層によって形成される重複領域は、必要な接触面積を有しつつ、良好な接触効果を提供できるように、適切な表面処理を施してもよい。したがって、本開示のタッチセンサは、業界で一般的に認識されている狭ベゼル設計の要件を満たすだけでなく、接触インピーダンスの要件も満たすことができる。
【0059】
本開示は、その特定の実施形態を参照してかなり詳細に説明してきたが、他の実施形態も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および範囲は、本明細書に含まれる実施形態の説明に限定されるべきではない。
【0060】
本開示の範囲や精神から逸脱することなく、本開示の構造に対して様々な修正や変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。上記に鑑みて、本開示は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある限り、本開示の修正および変形をカバーすることが意図される。