(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145464
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】荷物搬送プレート及び荷物搬送方法
(51)【国際特許分類】
B65G 67/02 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
B65G67/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189729
(22)【出願日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2021044110
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591206500
【氏名又は名称】株式会社 ダイサン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小瀧 大蔵
【テーマコード(参考)】
3F076
【Fターム(参考)】
3F076AA02
3F076CA01
3F076CA04
3F076CA07
3F076DA01
3F076DB09
3F076GA10
(57)【要約】
【課題】荷積み作業において、作業員の負担を抑制し、荷物を安定的に搬送することが可能な、簡易で安価な構造の荷物搬送プレート及び荷物搬送方法を提供する。
【解決手段】荷物搬送プレート10は、両面に複数の突起18又は滑動層が形成されたプレート部12と、プレート部12の片面に設けられた滑り止め部14と、プレート部12の縁に連接して上方へ延出する牽引部16と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に複数の突起又は滑動層が形成されたプレート部と、
前記プレート部の片面に設けられた滑り止め部と、
前記プレート部の縁に連接して上方へ延出する牽引部と、
を有する荷物搬送プレート。
【請求項2】
前記プレート部の面積は、載置される荷物の底面面積より小さく、
前記滑り止め部の幅は、前記プレート部の幅より狭く、前記牽引部が設けられた側の前記プレート部の縁から荷物搬送方向へ延設されている、
請求項1に記載の荷物搬送プレート。
【請求項3】
前記プレート部は、平面視で長方形の樹脂製又は金属製の板材であり、
前記プレート部の幅は、荷物底面幅の50/100以下であり、
前記滑り止め部の長さは、前記プレート部の長さの85/100以下である、
請求項2に記載の荷物搬送プレート。
【請求項4】
前記プレート部は、長さ方向に複数のリブが並設された樹脂プレートであり、
前記滑り止め部は、前記リブの上に接着された柔軟素材のシートである、
請求項1~3の何れか一項に記載された荷物搬送プレート。
【請求項5】
両面に複数の突起、又は、滑動層が形成されたプレート部と、前記プレート部の片面に設けられた滑り止め部と、前記プレート部の縁に連接して上方へ延出する牽引部と、を有する荷物搬送プレートを床面上に配置するステップと、
前記プレート部の前記片面上に荷物を載せるステップと、
前記荷物を押して、前記荷物搬送プレートごと前記荷物を前記床面上で摺動させて、目的の場所まで搬送するステップと、
前記牽引部を引いて前記荷物搬送プレートを前記床面と前記荷物の間から引き抜くステップと、
を有する荷物搬送方法。
【請求項6】
両面に複数の突起又は滑動層が形成され、荷物が載せられるプレート部と、
前記プレート部の後方端部に連設され、押圧力が加えられる押圧部と、
前記押圧部に形成され、前記荷物と当接する当接面と、
前記押圧部に形成され、前記プレート部を引き抜く牽引部材が連結される牽引部と、
を有する荷物搬送プレート。
【請求項7】
前記押圧部は、前記プレート部から後方に向かって反り上がる湾曲部が形成されている、
請求項6に記載の荷物搬送プレート。
【請求項8】
前記プレート部は、長さ方向に複数のリブが並設された樹脂プレートである、
請求項6又は請求項7に記載された荷物搬送プレート。
【請求項9】
請求項6~請求項8の何れか一項に記載の荷物搬送プレートを床面に配置し、荷物を前記プレート部の上に載置するステップと、
前記押圧部を押して、前記荷物搬送プレートごと前記荷物を目的の場所まで搬送するステップと、
前記押圧部の前記牽引部に牽引部材を連結し、前記荷物の下から前記プレート部を引き抜くステップと、
を有する荷物搬送方法。
【請求項10】
前記荷物搬送プレートを引き抜くステップで、
荷物制止装置を前記荷物の側面に当てて前記荷物を押えることによって前記荷物を制止させる、
請求項5又は請求項9に記載の荷物搬送方法。
【請求項11】
前記荷物制止装置は、平面状の底面と前記底面から垂直に立ち上がる側面を有するブロックであり、前記ブロックを荷物搬送プレートが通過可能な間隔をあけて床面に2箇所配置し、前記ブロックの立上がり面を前記荷物の側面に当て前記荷物を制止させる、
請求項10に記載の荷物搬送方法。
【請求項12】
前記荷物制止装置は、フォークリフトに取り付けられている、
請求項10に記載の荷物搬送方法。
【請求項13】
前記荷物制止装置は、荷物を作業現場で捌くために用いられる荷捌き装置に取り付けられている、
請求項10に記載の荷物搬送方法。
【請求項14】
前記荷物制止装置は、前記床面に吸着される吸盤を有する吸着部材であり、前記吸着部材を荷物搬送プレートが通過可能な間隔をあけて前記床面に配置し、前記吸着部材を前記荷物の側面に当て前記荷物を制止させる、
請求項10に記載の荷物搬送方法。
【請求項15】
前記荷物制止装置は、前記床面に滑らないように載置された板材に吸着される吸盤を有する吸着部材であり、前記吸着部材を荷物搬送プレートが通過可能な間隔をあけて前記板材に配置し、前記吸着部材を前記荷物の側面に当て前記荷物を制止させる、
請求項10に記載の荷物搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物搬送プレート及び荷物搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷積ヤードにおける荷役作業として、例えばトラックの荷室や、海上輸送用コンテナ或いはトラックや列車等に積載されるコンテナ(以下、合わせて「コンテナ」とも称する。)の内側に、外側から荷物を積み込む荷積み作業(バンニング)が知られている。こうした荷積み作業で作業員を補助する装置として、特許文献1には、車両のコンテナへの荷積み装置が開示されている。この荷積み装置では、コンテナの内側に、上側に載置された荷物が滑り易い上面を有する荷物滑走ベルトが配置される。
【0003】
荷物滑走ベルトは、出荷場所であるトラックヤードのプラットホームに荷積みされる車両が入車していない場合には、荷積み装置のプラットホーム側に設置されたベルト巻き取りドラムに巻き取られて収納されている。また、プラットホームに車両が接近して停車した場合には、荷物滑走ベルトがベルト巻き取りドラムから引き出されてコンテナの床面の上に敷設され、荷物滑走ベルトの上面上で荷物がコンテナの奥に向かって押し込まれる。ベルト巻き取りドラムにはモータが接続されており、モータの駆動によって得られる回転力によって、荷物滑走ベルトは、搬送後、荷物の下から引き抜かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の場合、荷物滑走ベルトを巻き取り収納するためのベルト巻き取りドラム、ベルト巻き取りドラムを荷積み装置に支持する部材、モータ等の比較的大掛かりな部材や設備を設置する構成となっている。このため、荷積み装置全体の構造が複雑になり、コストや取り扱い負担が大きくなる。
【0006】
荷物滑走ベルトに関しては、大掛かりな部材や設備を要するモータ等の動力を用いる代わりに、荷物滑走ベルトの敷設作業と同様に人力で荷物滑走ベルトの巻き取り作業を行う方法も考えられる。しかし、通常、荷物積載効率を高めるため、コンテナの床面全面に荷物を積載することが求められ、従って、荷物滑走ベルトもコンテナの床面全面上に敷設される程度の面積を有する場合が多い。結果、荷物滑走ベルトの寸法や重量が比較的大きくなるので、人力による荷物滑走ベルトの敷設作業に加えて巻き取り作業も人力で行う場合、作業員の負担が大きくなり、今度は人員コストの増加要因となる。
【0007】
更に、特許文献1の場合、荷物がコンテナ内に押し込まれる距離は、スクリュー軸のスパンで定まり、押し込み部材を蝶番で伸ばして再度押し込んでも、スクリュー軸のスパンの2倍が限度であり、奥行きが深いコンテナの場合、特に荷物の量が少なく荷物の奥行きが小さいときには、最奥部まで荷物を押し込むためには、スクリュー軸のスパンを大きくするか、或いは長尺の押し込み部材に取り替えるなど、いずれにしてもコスト高や手間を要するという問題がある。
【0008】
本発明は上記した問題に着目して為されたものであって、荷積み作業において、作業員の負担を抑制し、荷物を安定的に搬送することが可能な、簡易で安価な構造の荷物搬送プレート及び荷物搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の荷物搬送プレートは、両面に複数の突起又は滑動層が形成されたプレート部と、プレート部の片面に設けられた滑り止め部と、プレート部の縁に連接して上方へ延出する牽引部と、を有する。
【0010】
上記構成によれば、荷物搬送プレートのプレート部を牽引部が上向くように床面に置き、滑り止め部が設けられた方のプレート部の片面(おもて面)に荷物(荷物がパレットに載せられている場合はパレットも含めて荷物とする)を載せ、荷物を押して目的の場所まで搬送する。ここで、プレート部の裏面には複数の突起、又は、滑動層が形成されているので、床面との間の摩擦力が低減され、重い荷物でも人力で押すことが可能となる。また、プレート部のおもて面には、滑り止め部が設けられているので、荷物を押して搬送しても荷物がプレート部の上で滑らず、荷物が荷物搬送プレートごと一緒に搬送される。
【0011】
荷物を目的の場所まで搬送したら、例えば牽引部にワイヤー等の牽引部材を取り付け、牽引部を引いて荷物搬送プレートを床面と荷物の間から引き抜き、次の荷物を搬送するのに使用することができる。ここで、例えば、プレート部のおもて面に、滑り止め部が部分的に設けられている場合には、プレート部のおもて面全面に滑り止め部を設けた荷物搬送プレートと比較すると、小さい力で荷物搬送プレートを引き抜くことができ、作業員の負担が軽減される。
【0012】
また、牽引部をプレート部の縁から上方へ張り出すことで、牽引部を牽引するときに、牽引索などの牽引部材が荷物に干渉しない。また、荷物搬送プレートが、プレート部、滑り止め部及び牽引部といった比較的簡易な部材の組み合わせによるコンパクトな構造であるため、作業員による設置、撤去、運搬、保管などの取り扱いが一人であっても容易に行えると共に、製作コストも比較的低いという利点がある。
【0013】
請求項2に記載の荷物搬送プレートでは、プレート部の面積は、載置される荷物の底面面積より小さく、滑り止め部の幅(荷物搬送方向を横断する方向の長さ)は、プレート部の幅より狭く、牽引部が設けられた側のプレート部の縁から荷物搬送方向へ延設されている。このため、荷物搬送プレートは比較的コンパクトとなり、狭い場所にでも保管できる。
【0014】
また、プレート部の厚さ分、荷物の底面と床面には隙間があくので、プレート部が荷物底面の全面を覆っていなくても搬送時に荷物が床面に触れて損傷することはなく、また、そのような損傷の可能性を許容範囲に収めるようにプレート部の厚さと面積を選ぶことができ、或いは荷物をパレットに載せることで荷物が直接損傷しないようにできる。
【0015】
さらに、滑り止め部は、プレート部の幅より狭くしてあり、牽引部が設けられた側のプレート部の縁から荷物搬送方向へ延設されているので、滑り止め部をプレート部のおもて面全面に設ける構成と比較すると、荷物搬送プレートを荷物の下から引き抜き易い。
【0016】
なお、プレート部の幅を荷物底面幅より狭くすることによってプレート部の面積を荷物底面面積より小さくする場合、本発明の効果を得る上で特にその幅に制約はないが、幅が一定以上狭くなるとプレート部に載せた荷物が搬送方向の左右いずれかに傾いて荷物の片側のみが床面に接触することでバランスを崩し易くなることを防ぐために、複数の荷物搬送プレートを平行に並べて荷物の下に敷いて搬送することを妨げない。また、荷物の下に複数の荷物搬送プレートを敷く場合、荷物搬送プレート同士を棒状、板状、その他任意の形状の連結部材を用いて脱着可能に又は固定的に連結することを妨げない。
【0017】
請求項3に記載の荷物搬送プレートでは、プレート部は、平面視で長方形の樹脂製又は金属製板材であり、プレート部の幅は、荷物底面幅の50/100以下であり、滑り止め部の長さは、プレート部の長さの85/100以下である。
【0018】
プレート部をこの寸法範囲に限ることにより、床面とプレート部で覆われた部分を含む荷物底面全面との間の摩擦抵抗(摩擦力)を適切に低減して、床面上で荷物を摺動することにより搬送できる効果を維持しながら、荷物搬送プレートの材料コストを低減できると共に軽量化して取り扱いやすくできる。
【0019】
また、滑り止め部をこの寸法範囲に限ることにより、プレート部と荷物底面との間の摩擦抵抗を適切に付与して、搬送中にプレート部上で荷物が滑ることを防止できる効果を維持しながら、荷物搬送プレートの滑り止め材料コスト及び滑り止め加工コストを低減できる。
【0020】
また、プレート部と滑り止め部をこの寸法サイズの範囲内で適切に組合せることにより、300キログラム程度以下の荷物であれば作業員一人、それ以上の重さの荷物であっても作業員数人の人力で、荷物搬送プレートに載せた荷物をコンテナの所定の位置まで搬送し、その後荷物搬送プレートを荷物の下から引き抜くことが可能になる。本発明では、動力を用いた搬送作業或いは引き抜き作業を排除するものではない。
【0021】
請求項4に記載の荷物搬送プレートでは、プレート部は、長さ方向に複数のリブが並設された樹脂プレートであり、滑り止め部は、リブの上に接着された柔軟素材のシートである。樹脂プレートは射出成形による成形が可能であり、形状設計の自由度が高く、量産も容易である。また、柔軟素材シートは、ゴム製シート、繊維を織った布状シート、不織布シート、それらの複合品や化工品など、市販品も多く入手が容易なものを採用できる。また、接着材若しくは接着材付柔軟素材シートも入手が容易であり、裁断加工も容易であるため、製造コストの面でも有利である。なお、樹脂プレートは、リブ間に表裏貫通孔を複数有するネット状であることを妨げない。
【0022】
請求項5に記載の荷物搬送方法は、両面に複数の突起、又は、滑動層が形成されたプレート部と、プレート部の片面に設けられた滑り止め部と、プレート部の縁に連接して上方へ延出する牽引部と、を有する荷物搬送プレートを床面上に配置するステップと、プレート部の片面上に荷物を載せるステップと、荷物を押して、荷物搬送プレートごと荷物を床面上で摺動させて、目的の場所まで搬送するステップと、牽引部を引いて荷物搬送プレートを床面と荷物の間から引き抜くステップと、を有する。
【0023】
この搬送方法によれば、請求項1に係る荷物搬送プレートと同様の荷物搬送プレートを用いることにより、搬送中に荷物がプレート部の上を滑ることがなく、従って荷物が荷物搬送プレート上から脱落しないよう注意を払う必要がなく、作業員の負担が軽減される。
また、荷物を目的の場所まで搬送した後、牽引部を引いて荷物搬送プレートを床面と荷物の間から引き抜き、次の荷物を搬送するのに使用できる。すなわち、荷物搬送プレートの使い回しが効率よくできるようになる。
【0024】
請求項6に記載の荷物搬送プレートは、両面に複数の突起又は滑動層が形成され、荷物が載せられるプレート部と、プレート部の後方(以下、荷物搬送方向を前方とし、反対方向を後方とする。)端部に連設され、押圧力が加えられる押圧部と、押圧部に形成され、荷物と当接する当接面と、押圧部に形成され、プレート部を引き抜く牽引部材が連結される牽引部と、を有する。
【0025】
上記構成によれば、荷物搬送プレートのプレート部をプレート部から延出する押圧部が上方に位置するように床面に置き、そのプレート部に荷物を載せ、プレート部の後方端部に連接されている押圧部を押して荷物を目的の場所まで搬送する。ここで、プレート部の床面に接する側である裏面には複数の突起、又は、滑動層が形成されているので、床面との間の摩擦力が低減され、重い荷物でも人力等の比較的小さい力で押すことが可能となる。また、押圧部の前部には、当接面が設けられているので、押圧部を押して荷物を搬送する際にプレート部に載置された荷物が後方にずれ動いても、荷物が当接面に当接した段階で、当接面がそれ以上荷物がずれ動くことを阻止するため、荷物が荷物搬送プレートごと一緒に搬送される。
【0026】
荷物を目的の場所まで搬送した後、押圧部に設けられている牽引部にワイヤー等の牽引部材を取り付け、牽引部を引くことにより荷物搬送プレートを床面と荷物の間から引き抜けば、その荷物搬送プレートを次の荷物を搬送するのに使用することができる。ここで、上記構成のようにプレート部の後方端部に押圧部が設けられている荷物搬送プレートの場合には、プレート部の後方端部に押圧部が設けられずに、プレート部のおもて面に滑り止め部を設けた構成の荷物搬送プレートと比較すると、荷物とプレート部との間の摩擦力が小さいため、小さい力で荷物搬送プレートを引き抜くことができ、人力で引抜作業をする作業員、動力で引き抜く作業をする搬送機器等の牽引手段の負担が軽減される。
【0027】
また、荷物搬送プレートが、プレート部、牽引部といった比較的簡易な部材の組み合わせによるコンパクトな構造であるため、作業員による設置、撤去、運搬、保管などの取り扱いが一人であっても容易に行え、また、トラック荷台の荷物の隙間、床下等の狭隘なスペースに収納して携行することができると共に、製作コストも比較的低く、荷積作業用ロボット等の高価な装置を導入する余裕のない流通業者であっても容易に荷積作業の効率化が図れるという利点がある。
【0028】
請求項7の発明では、押圧部は、底面にプレート部から後方に向かって反り上がる湾曲部が形成されている。押圧部の後方端部が床面から離れるように反り上がっていることで、荷物搬送プレートを荷物の下から引き抜くステップにおいて、後方端部の底面エッジが床面の微小突起など障害物に衝突することが避けられるため、荷物搬送プレートをより容易に引き抜くことができる。
【0029】
請求項8の発明では、プレート部は、長さ方向に複数のリブが並設された樹脂プレートである。樹脂プレートは射出成形による成形が可能であり、形状設計の自由度が高く、量産も容易である。なお、樹脂プレートは、リブ間に表裏貫通孔を複数有するネット状であることを妨げない。
【0030】
請求項9の発明では、請求項6~請求項8の何れか一項に記載の荷物搬送プレートを床面に配置し、荷物をプレート部の上に載置するステップと、押圧部を押して、荷物搬送プレートごと荷物を目的の場所まで搬送するステップと、押圧部の牽引部に牽引部材を連結し、荷物の下からプレート部を引き抜くステップと、を有する。
【0031】
この搬送方法によれば、請求項6に係る荷物搬送プレートと同様の荷物搬送プレートを用いることにより、プレート部に載置した荷物を押すことなく、プレート部に連接されている押圧部を押すことで荷物の搬送が行われるため、搬送中に荷物がプレート部の上を前方に滑ることがなく、従って、荷物が荷物搬送プレート上から脱落しないよう注意を払う必要がなく、作業員の負担が軽減される。
また、この搬送方法によれば、プレート部に載置した荷物を押すことなく、プレート部に連接されている押圧部を押すことで荷物の搬送が行われるため、プレート部の上面に滑り止め部を設ける必要がなく、従って、荷物を目的の場所まで搬送した後、牽引部を引いて荷物搬送プレートを床面と荷物の間から引き抜くとき、滑り止め部がある場合に比べ小さい力で素早く引き抜いて次の荷物を搬送するのに使用できる。すなわち、作業員の負担が軽減されると共に、荷物搬送プレートの使い回しが効率よくできるようになる。
【0032】
請求項10に記載の荷物搬送方法では、荷物搬送プレートを引き抜くステップで、荷物制止装置を荷物の側面に当てて荷物を押えることによって荷物を制止させる。この搬送方法によれば、荷物搬送プレートを荷物の下から引き抜く際、荷物が荷物搬送プレートと一緒に動いて荷物の位置ズレが生じることを防止できる。荷物制止装置で荷物を押さえる位置は、荷物の安定を保つ上で、荷物の左右2箇所とし、また、比較的低い位置とすることが望ましいが、押さえる箇所や位置はこれに限らない。
【0033】
請求項11に記載の荷物搬送方法では、荷物制止装置は、平面状の底面と底面から垂直に立ち上がる側面を有するブロックであり、前記ブロックを荷物搬送プレートが通過可能な間隔をあけて床面に2箇所配置し、ブロックの立上がり面を荷物の側面に当て荷物を制止させる。この搬送方法によれば、押さえ棒などを用いて荷物を制止させる方法に比べ、荷物制止装置を簡単でコンパクトな構造にすることができると共に、搬送を終えた荷物に接して床面に配置するだけでよいので、荷物制止装置の設置作業も容易である。
【0034】
荷物制止装置のブロックは、荷物搬送プレートを荷物の下から引き抜く際に荷物が一緒に引き動かされないよう、荷物が引かれる力に抗するだけの摩擦抵抗が得られる重さと底面の摩擦係数を有するよう適宜設計する。また、ブロックの形状は、L字形の形状が望ましいが、L字形に限定されない。また、ブロックは、荷物搬送プレートが通過可能な間隔をあけて上部を連結して一体化してもよく、こうすることによってブロックの設置作業を更に容易にできる。
【0035】
請求項12に記載の荷物搬送方法では、荷物制止装置は、フォークリフトに取り付けられている。この運搬方法によれば、荷物を荷物搬送プレートの上まで搬送するために使用されるフォークリフトを荷物制止装置として兼用できる。この搬送方法における荷物制止装置は、フォークリフトのフォークに伸縮自在に取り付けられた必要な長さの棒状又はT字状押え具が望ましいが、それに限定されない。
【0036】
請求項13に記載の荷物搬送方法では、荷物制止装置は、荷物を作業現場で捌くために用いられる荷捌き装置に取り付けられている。この搬送方法(運搬方法)によれば、荷積み・荷卸し作業現場で荷物の引き回し作業或いは荷物搬送プレートの引き抜き作業で使用される荷捌き装置を荷物制止装置として兼用できる。この搬送方法における荷物制止装置は、例えば、小型荷捌き装置に伸縮自在に取り付けられた必要な長さの棒状又はT字状の押え具が望ましいが、それに限定されない。
【0037】
請求項14の発明では、前記荷物制止装置は、前記床面に吸着される吸盤を有する吸着部材であり、前記吸着部材を荷物搬送プレートが通過可能な間隔をあけて前記床面に配置し、前記吸着部材を前記荷物の側面に当て前記荷物を制止させる。この搬送方法によれば、押さえ棒などを用いて荷物を制止させる方法に比べ、荷物制止装置を簡単でコンパクトな構造にすることができると共に、搬送を終えた荷物に接して床面に配置するだけでよいので、荷物制止装置の設置作業も容易である。
【0038】
請求項15の発明では、前記荷物制止装置は、前記床面に滑らないように載置された板材に吸着される吸盤を有する吸着部材であり、前記吸着部材を荷物搬送プレートが通過可能な間隔をあけて前記板材に配置し、前記吸着部材を前記荷物の側面に当て前記荷物を制止させる。この搬送方法によれば、押さえ棒などを用いて荷物を制止させる方法に比べ、荷物制止装置を簡単でコンパクトな構造にすることができると共に、搬送を終えた荷物に接して床面に配置するだけでよいので、荷物制止装置の設置作業も容易である。なお、前記板材は、前記床面に対してずれ動くことを防ぐため、前記床面と接触する面に摩擦力強化部が別部材として又は一体化して設けられていることを妨げない。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、荷積み作業において、作業員の負担を抑制し、荷物を安定的に搬送することが可能な、簡易で安価な構造の荷物搬送プレート及び荷物搬送方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】第一実施形態に係る荷物搬送プレートを説明する平面図である。
【
図2】第一実施形態に係る荷物搬送プレートを説明する底面図である。
【
図5】第一実施形態に係る荷物搬送プレートを用いた荷物搬送方法を、一部を破断して説明する正面図である(その1)。
【
図6】第一実施形態に係る荷物搬送プレートを用いた荷物搬送方法を、一部を破断して説明する正面図である(その2)。
【
図7】第一実施形態に係る荷物搬送プレートを用いた荷物搬送方法を、一部を破断して説明する正面図である(その3)。
【
図8】第一実施形態に係る荷物搬送プレートを用いた荷物搬送方法を、一部を破断して説明する正面図である(その4)。
【
図9】第一実施形態に係る荷物搬送方法において荷物搬送プレートを引き抜く際に使用される荷物制止装置としてのブロックを説明する正面図である。
【
図10】第1変形例に係る荷物搬送方法において荷物搬送プレートを引き抜く際に使用される荷物制止装置としてのブロックを説明する平面図である。
【
図11】第2変形例に係る荷物搬送方法において荷物搬送プレートを引き抜く際に使用される荷物制止装置としての吸盤を有する吸着部材を説明する図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【
図12】第2変形例に係る荷物搬送方法において荷物搬送プレートを引き抜く際に使用される荷物制止装置としての吸盤を有する吸着部材の配置を説明する平面図である。
【
図13】第3変形例に係る荷物搬送方法において荷物搬送プレートを引き抜く際に使用される荷物制止装置としての吸盤を有する吸着部材と吸着力を高めるための板材の配置を説明する正面図である。
【
図14】第4変形例に係る荷物搬送方法において荷物搬送プレートを引き抜く際に使用される荷物制止装置としてのフォークリフトのアタッチメントを説明する平面図である。
【
図15】第二実施形態に係る荷物搬送プレートを説明する線断面図である。
【
図16】第二実施形態に係る荷物搬送プレートを用いた荷物搬送方法を、一部を破断して説明する正面図である。
【
図17】実施例に係る荷物搬送プレートを説明する表である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
<第一実施形態>
以下に本発明の第一実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一の部分及び類似の部分には、同一の符号又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0042】
<荷物搬送プレート>
第一実施形態に係る荷物搬送プレート10を、
図1~
図4を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、第一実施形態に係る荷物搬送プレート10は、プレート部12と、滑り止め部14と、牽引部16とを有する。
【0043】
(プレート部)
第一実施形態では、プレート部12は、1枚のスライダーボード(表面の滑動性を高めるように特に加工された単体板材)を用いて構成されている、平面視で長方形の板部材である。前記スライダーボードは、例えば、ポリアセタールを主原料とする樹脂製ボードである。プレート部12の面積は、載置される荷物20の底面面積より小さい。
図1中では、荷物20は仮想の破線で例示されている。なお、本発明では、これに限定されず、例えば、1枚のプレート部12の板部材は、複数枚のスライダーボードを縦方向及び/又は横方向に連結することによって構成されてもよい。
【0044】
図3及び
図4に示すように、プレート部12は、基板13と、上側に載置された荷物20が摺動可能な複数のリブ状の突起18を備えている。複数のリブ状の突起18は、プレート部12の長さ方向に沿って延び、幅方向に沿って並設されている。プレート部12の長さ方向は、荷物搬送方向Mと平行である。プレート部12の幅方向は、荷物搬送方向Mと直交している。第一実施形態では、プレート部12の幅は、荷物底面幅の50/100以下である。
【0045】
第一実施形態では、突起18は、スライダーボードのおもて面と裏面との両面に形成されている。なお、第一実施形態における突起18は、荷物20を円滑に搬送できるように、また、荷物搬送プレートを荷物20の下から円滑に引き出せるように、摺動面の摩擦抵抗を低減する目的で設けたものであり、少なくともスライダーボードの裏面に形成されていることが望ましい。
図1に示したように、突起18は、プレート部12の全長に亘り長さ方向に沿って延びると共に、幅方向に間隔をあけて形成されている。なお、本発明においては、プレート部が滑動性の高い表面層を有する材料で形成されていれば、突起18は必須ではない。
【0046】
図4に示すように、第一実施形態における突起18は、プレート部12の長さ方向に直交する横断面を見た場合、中央の基板13から、上側又は下側に離れるに従って、左右方向の幅が縮径するように突出する三角形状である。なお、本発明では、突起18の形状はこれに限定されず、例えば、頂部が丸められた円弧状、又は円錐状等、他の形状でもよい。また、複数の突起の連なりによって、長さ方向全体に亘る線状の突起18が構成されてもよい。荷物20の底面とプレート部12とが面(面状)接触をすることなく、線(線状)或いは点(点状)接触をし、摩擦抵抗が低減されればよい。
【0047】
本発明では、突起18の形状は、上記のように板部材の長手方向の一端から他端まで線状に連続する形状、鎖線状に離散的に配置された形状、点線状に配置された形状、又は鎖線状と点線状を組合せた形状等、適宜変更できる。さらに、突起18のリブの頂部の断面形状も、エッジ状又は楔状に尖った形状等であってもよく、円弧状でもよく、耐荷重や摺動性を考慮して適宜選択することができる。
【0048】
なお、本発明では、複数の突起18の代わりに、プレート部12に不図示の滑動層が設けられてもよい。滑動層は、例えば、研磨等によって平旦化した表面層又は表面の摩擦係数を低下させる潤滑材を含む被膜等で形成できる。また、第一実施形態では樹脂製ボードであるスライダーボードがプレート部として例示されたが、本発明では、これに限定されず、例えば鋼板等、他の素材からなる板材が採用されてもよい。
【0049】
(牽引部)
第一実施形態における牽引部16は、プレート部12と同様に、ポリアセタール等を主原料とする樹脂製であり、牽引部16とプレート部12とは、一体成形されている。牽引部16は、プレート部12から連続して延びる傾斜部16Aと、傾斜部16Aのプレート部12と反対側の端部からほぼ水平に延びる連結部16Bとを有する。
【0050】
図3に示したように、傾斜部16Aは、プレート部12の荷物搬送方向Mの一方の縁に連接してプレート部12の滑り止め部14が設けられた面よりも上方へ延出している。連結部16Bには、荷物搬送プレート10を引き抜く際、牽引部材のフック等を差し込むことが可能な貫通孔17が設けられている。
【0051】
(滑り止め部)
滑り止め部14は、突起18のリブの上に接着された柔軟素材のゴムシートであり、プレート部12のおもて面(片面)に部分的に設けられている。具体的には、滑り止め部14は、両面テープや接着剤等によって、プレート部12のおもて面に接合している。滑り止め部14によって、上側に載置される荷物20と荷物搬送プレート10との間の実効的摩擦係数が大きくなっている。
【0052】
滑り止め部14は、プレート部12の幅より狭く、牽引部16が設けられたプレート部12の縁(
図1中の左端)から荷物20の押し出し方向(荷物搬送方向Mに沿って右側)へ延設されている。なお、滑り止め部14は、プレート部12のおもて面の全面に設けられてもよい。第一実施形態では、滑り止め部14の長さは、プレート部12の長さの85/100以下である。
【0053】
また、本発明では、滑り止め部は、第一実施形態で摩擦係数の大きい素材として採用したゴムシートに限定されず、プレート部上面に付設した鉄板等であってもよいし、或いは、プレート部に設けられた凹凸部分であってもよい。例えば、プレート部が鋼板であると共に、鋼板のプレート部のおもて面上に、滑り止め部としての鉄板が1枚以上溶接され、プレート上に載置された荷物の摺動が当該鉄板の上縁角や粗面によって抑制されるようにした荷物搬送プレートを構成できる。滑り止め部の素材、形状及び個数等は、適宜変更できる。また、プレート部と滑り止め部とが別部材である必要はなく、一体の部材のおもて面の一部又は全部の領域が適宜加工された領域が滑り止め部として構成されてもよい。
【0054】
<荷物搬送方法>
第一実施形態に係る荷物搬送プレート10を用いた荷物搬送方法を、
図5~
図10を参照して説明する。まず、トラック30のコンテナ32の搬出入口の近辺の床面34上に、荷物搬送プレート10を配置する。
【0055】
そして、
図5に示すように、荷物搬送プレート10は、長さ方向が荷物搬送方向Mと平行な状態で、床面34上に配置される。そして、コンテナ32の外側から内側にフォークリフト等により荷物20を運び込む。荷物20が複数個の場合、例えば、不図示の透明樹脂製シート等が複数個の荷物20全体を覆うように巻回されることによって、複数個の荷物20を搬送し易いように一体化することができる。
【0056】
次に、フォークリフト等により荷物搬送プレート10のプレート部12のおもて面上に荷物20を載せる。なお、第一実施形態では、荷物20は、プレート部12の上に直接載置されているが、本発明では、これに限定されず、例えば、荷物20が搬送用のパレット等の上に載せ、この荷物20を載せたパレット等をプレート部12の上に載置してもよい。
【0057】
次に、
図5に示したように、作業員36が荷物20を押して、荷物搬送プレート10ごと荷物20を床面34上で摺動させて、目的の場所まで搬送する。そして、
図6に示すように、搬送完了後、牽引部16の貫通孔17に、牽引部材38のフックを差し込む。フックには、ワイヤー等の紐状部材が連結されている。牽引部16と床面34との間には隙間が形成されているため貫通孔17にフックを差し込み易い。
【0058】
そして、
図7に示すように、作業員36が紐状部材を引き、牽引部材38を作業員36側に向かって牽引する。これによって、牽引部16が荷物20から離れるように引かれ、荷物搬送プレート10が床面34と荷物20の間から引き抜かれる。
【0059】
なお、牽引部16を引く方法としては、フックを有する牽引部材38を用いる方法に限定されない。例えば、万力やクリップ等の把持器具を連結部16Bに把持させ、把持器具を介して牽引部16を引いてもよい。また、滑車を用いてもよい。また、人力によらず、ウィンチ等動力を用いて引いてもよい。プレート部12の形状にもよるが、例えば荷重が約300キログラム以下の場合、荷物搬送プレート10を人力で引き抜くことができる場合が多い。
【0060】
上記の一連のステップによって、第一実施形態に係る荷物搬送方法を実施できる。そして、
図8に示すように、コンテナ32の奥側(
図8中の左側)から搬出入口側(
図5中の右側)に向かって、複数の荷物20を順次搬送して床面34上に載置すればよい。
【0061】
また、牽引部16を引いて荷物搬送プレート10を床面34と荷物20の間から引き抜き、次の荷物20を搬送するのに使用できる。すなわち、荷物搬送プレート10の使い回しが可能となる。
【0062】
(作用効果)
第一実施形態では、荷物搬送プレート10を床面34に置き、部分的に滑り止め部14が設けられたプレート部12のおもて面に荷物20を載せ、荷物20を押して目的の場所まで搬送する。ここで、プレート部12の裏面には複数の突起18が形成されているので、床面34との間の摩擦力が低減され、重い荷物20でも人力で押すことが可能となる。また、プレート部12の表面には、滑り止め部14が設けられているので、荷物20を押して搬送しても荷物20がプレート部12の上で滑らず、荷物20が荷物搬送プレート10ごと一緒に搬送される。
【0063】
荷物20を目的の場所まで搬送したら、例えば牽引部16にワイヤー等の牽引部材38を取り付け、牽引部16を引いて荷物搬送プレート10を床面34と荷物20の間から引き抜き、次の荷物20を搬送するのに使用する。ここで、プレート部12のおもて面には、滑り止め部14が部分的に設けられているので、プレート部12のおもて面全面に滑り止め部14を設けた荷物搬送プレート10と比較すると、小さい力で荷物搬送プレート10を引き抜くことができ、作業員36の負担が軽減される。
【0064】
また、牽引部16がプレート部12の縁から斜めに面外方向へ張り出すことで、牽引部16を牽引するときに、牽引部材38が荷物20に干渉しない。また、荷物搬送プレート10が、プレート部12、滑り止め部14及び牽引部16といった比較的簡易な部材の組み合わせによるコンパクトな構造であるため、作業員36による設置、撤去、運搬、保管などの取り扱いが容易であると共に、製作コストも比較的低いという利点がある。
【0065】
また、第一実施形態では、プレート部12の面積を載置する荷物20の底面面積より小さくすることで、荷物搬送プレート10は比較的コンパクトとなり、狭い場所にでも保管できる。また、プレート部12の厚さ分、荷物20の底面と床面34には隙間があくので、プレート部12が荷物20の底面全面を覆っていなくても荷物20が床面34に触れて破損する可能性は小さい。さらに、滑り止め部14は、プレート部12の幅より狭くして、牽引部16が設けられた側のプレート部12の縁から荷物20の搬送方向へ延設されているので、滑り止め部14をプレート部12のおもて面全面に設ける構成と比較すると、荷物搬送プレート10を荷物20の下から引き抜き易い。
【0066】
また、第一実施形態では、プレート部12の幅は、荷物底面幅の50/100以下であり、滑り止め部14の長さは、プレート部12の長さの85/100以下である。プレート部12をこの寸法範囲に限ることにより、床面34とプレート部12で覆われた部分を含む荷物底面全面との間の摩擦抵抗(摩擦力)を適切に低減して、床面34上で荷物を摺動することにより搬送できる効果を維持しながら、荷物搬送プレート10の材料コストを低減できると共に軽量化して取り扱いやすくできる。
【0067】
また、滑り止め部14をこの寸法範囲に限ることにより、プレート部12と荷物底面との間の摩擦抵抗を適切に付与して、搬送中にプレート部12上で荷物が滑ることを防止できる効果を維持しながら、荷物搬送プレート10の滑り止め材料コスト及び滑り止め加工コストを低減できる。
【0068】
また、第一実施形態では、プレート部12は、プレート長の方向に複数のリブが並設された樹脂プレートであり、滑り止め部14は、リブの上に接着されたゴムシートである。樹脂プレートは射出成形による成形が可能であり、ゴムシート及び接着材若しくは接着材付ゴムシートも入手が容易であるため、製造コストが安い。
【0069】
また、第一実施形態では、上記構成の荷物搬送プレート10を用いることにより、搬送中に荷物20がプレート部12の上を滑ることがなく、従って荷物20が荷物搬送プレート10上から脱落しないよう注意を払う必要がなく、作業員36の負担が軽減される。
【0070】
また、第一実施形態では、荷物搬送プレート10を荷物20の下から引き抜くステップで、荷物搬送プレート10が通過できる間隔をあけて、荷物制止装置のブロック40を荷物20の荷物搬送プレートを引き抜く側の側面に当てて荷物20を押える。ブロック40によって荷物20を制止させるので、荷物搬送プレート10を荷物20の下から引き抜く際、荷物20が荷物搬送プレートと一緒に動いて荷物20の位置ズレが生じることを防止できる。
【0071】
<第1変形例>
次に、第1変形例に係る荷物搬送方法を、
図9を参照して説明する。荷物20の重量が大きくなると、荷物20とプレート部12の裏面と床面34との間の摩擦抵抗及び荷物20と滑り止め部14を設けたプレート部12のおもて面との間の摩擦抵抗が大きくなるので、荷物搬送プレート10を荷物20の下から引き抜くためには大きな牽引力が必要になる。
【0072】
また、荷物20の重量が大きくなると、荷物20がプレート部12からはみ出て床面34に接触している部分の床面34との摩擦抵抗も大きくなる。この荷物20が床面34と接触している部分の摩擦抵抗が、荷物20と滑り止め部14を設けたプレート部12のおもて面との間の摩擦抵抗より大きい場合には、荷物搬送プレート10を引っ張るだけで、荷物20は動かずに荷物搬送プレート10が荷物20の下から引き抜かれる。
【0073】
一般に摩擦抵抗は摺動面に掛かる重量に比例するので、重量が軽くても重くてもこの関係は変わらないが、荷物20がプレート部12に載置されており、プレート部12の厚みによってプレート部12の部分では荷物20が床面34から浮いており、荷物20の左右端に近い部分のみが床面34に接触して摩擦抵抗を生じているため、荷物20の重量変化分がそのまま荷物20が床面34と接触した部分の摩擦抵抗に正確に反映されない現象が生じる。
【0074】
このため、荷物搬送プレート10を荷物20の下から引き抜こうとした場合、荷物20の重量の変動に起因して、荷物搬送プレート10と共に荷物20も牽引方向に移動し、荷物20が搬送した位置からズレが生じる懸念がある。なお、このような懸念は、荷物20の重量の他、プレート部12の厚さや幅、荷物20底面の硬さや可撓性にも依存する。このような懸念がある場合には、荷物搬送プレート10を荷物20の下から引き抜くときに、荷物20を何らかの手段で押さえておく必要がある。そこで、第1変形例では、荷物搬送プレート10を荷物20の下から引き抜く際、
図9中に例示した荷物制止装置としてのブロック40を用いる。
【0075】
(ブロック)
図9に示すように、ブロック40は、L字型であり、平面状の底面を有する底部42と、底面から垂直に立ち上がる側面を有する立上がり壁44とを備える。底部42と立上がり壁44とは、例えば鋼板を屈曲させることによって、一体的に作製できる。また、底部42及び立上がり壁44は、例えば角柱の鋼材を屈曲させて作製することもできる。また、底部42及び立上がり壁44の素材は、例えば木材等、鋼板以外の金属製であってもよく、適宜採用できる。また、底部42と立上がり壁44とは、互いに別々に製造された部材を、溶接やボルト締め等で接合されることによって作製されてもよい。
【0076】
(摩擦力強化部)
底部42の床面34側の裏面(
図9中の下面)には、摩擦力強化部46が設けられている。摩擦力強化部46は、例えばゴムシート等の部材であり、底部42に接着或いはピン止め等によって固定されている。摩擦力強化部46によって、ブロック40と床面34との間の摩擦係数が高められている。
【0077】
なお、本発明では、摩擦力強化部46は、ゴムシート等の部材に限定されず、例えば、底部42の裏面に、摩擦係数の高いシリコーン等の材質をコーティングすることによって形成された被膜であってもよい。また、底部42の裏面を、ざらついた表面に仕上げることによって、摩擦力強化部46が実現されてもよい。摩擦力強化部46は、底部42の裏面全面に設けられてもよいし、裏面に部分的に設けられてもよい。摩擦力強化部46が底部42の裏面に部分的に設けられる場合、摩擦力強化部46を形成する部分の個数は、1個以上、任意である。
【0078】
第1変形例では、
図10に示すように、荷物搬送プレート10を引き抜く際には、引き抜き前に予め、ブロック40は、荷物搬送プレート10の両側に1個ずつ配置される。立上がり壁44の側面は、荷物搬送プレート10を荷物20の下から引き抜く際、荷物20の荷物搬送プレート10を引き抜く側の側面に接触する。なお、本発明では、1個の荷物搬送プレート10に対して配置されるブロック40の個数は、位置ズレを防止できる限り、適宜変更できる。第1変形例に係る荷物搬送プレート10の構成については、
図1~
図9に示した荷物搬送プレート10と同様である。
【0079】
第1変形例に係る荷物搬送方法によれば、荷物搬送プレート10を引き抜くステップで、荷物搬送プレートが通過可能な間隔をあけて、ブロック40を荷物20の側面2箇所に当てて床面に2箇所配置し荷物20を押えることによって荷物20を制止させる。このため、引き抜きの際、荷物20の位置ズレを生じずに、荷物搬送プレート10のみを円滑に引き抜くことができる。また、ブロック40は、L型形状であり、ブロック40の立上がり壁44を荷物20の側面に当て荷物20を制止させる簡単でコンパクトな構造であり、製作コストが安価という利点がある。第1変形例に係る荷物搬送方法の他の効果は、第一実施形態の場合と同様である。
【0080】
<第2変形例>
図11及び
図12は、第2変形例に用いられる荷物制止装置の変形例を示す図である。
図11に示す通り、第2変形例では、荷物制止装置として吸盤を有する吸着部材41を荷物制止装置として用いる。
【0081】
(吸着部材)
図11に示す吸着部材41は、略円筒型の硬質部41Hと、硬質部41Hの内側に設けられた弾性部41Eと、硬質部41Hと弾性部41Eに囲まれている減圧空間41Vと、弾性部41Eの中央部に固定され、硬質部41Hの天井部を摺動自由に貫通し、硬質部41Hの上部に突出する軸部41Sと、硬質部41Hの上部で回転可能に軸部41Sと連結され、回転することによって軸部41Sを上下するレバー41Lとを有する吸盤であり、硬質部41Hの下面円周部が、平滑面を有する床面等の被吸着部材に吸着される吸着面41Aとされている。
【0082】
第2変形例に係る吸着部材41では、
図11(A)及び
図11(B)中に二点鎖線で示すように、吸着部材41の上部に設けられているレバー41Lを倒すことで、弾性部41Eに固定された軸部41Sが上方に引き上げられる。これにより、弾性部41Eが引き伸ばされ、被吸着部材と弾性部41Eとの間の減圧空間41Vが拡大することで減圧され真空状態となるため、吸着部材41は、大気圧に押されて被吸着部材に吸着する。
【0083】
なお、本発明では、吸着部材は、荷物制止装置として機能する程度に被吸着部材である床面に吸着するものであれば、どのような形状や構造の物でもよい。すなわち、本発明では、第2変形例で説明する吸着部材41に限らず、市販されている吸盤を適宜選択して用い、吸着部材とすることができる。
【0084】
そして、
図12に示すように、第2変形例に係る吸着部材41を、第1変形例に係るブロック40と同様に荷物搬送プレート10の引き抜かれる側の側面に接する床面34に配置し、固定する。より具体的には、
図9に示す第1変形例に係るブロック40の代わりに、吸着部材41を配置し、床面34に吸着させて固定する。
【0085】
なお、第2変形例に係る荷物制止装置を用いるにあたり、吸着部材41を吸着させるため、床面34は、平滑面であることが望ましい。より具体的には、床面34に予め塗装を施す方法、硬質の板を敷設する方法等によって平滑面とされていることが望ましい。
【0086】
第2変形例では、
図12に示すように、第1変形例に係るブロック40の代わりに、吸着部材41が荷物搬送プレート10の両側の荷物20に接する位置の床面34に1個ずつ配置される。そして、荷物搬送プレート10を引き抜くステップにおいて、第1変形例と同様に、吸着部材41が荷物20の側面に当接する。
【0087】
ここで、吸着部材41は、床面34に吸着して固定されているため、吸着した位置からずれにくい。すなわち、第2変形例に係る吸着部材41は、第1変形例と同様に荷物20の下から荷物搬送プレート10を引き抜く際に荷物20が一緒に動くことを制止するストッパーとして機能する。
【0088】
第2変形例に係る荷物搬送方法によれば、第1変形例に係る荷物搬送方法で用いられるブロック40の代わりに、吸着部材41を用いることによって、荷物搬送プレート10を引き抜くステップで荷物20を制止させる。
【0089】
そして、本発明では、吸着部材は、市販されている吸盤を適宜選択して用いることができるため、第1変形例に係る荷物搬送方法に比して、本発明の構成を実施するコストを低減することができる。
【0090】
また、吸着部材41は、一般的に軽量であるため、第1変形例に係る荷物搬送方法に比して、さらに荷物制止装置の取り扱いを容易にすることが可能となる。
【0091】
なお、第1変形例に係る荷物搬送方法で得られる他の効果は、第2変形例に係る荷物搬送方法でも得ることができる。
【0092】
また、本発明は、第2変形例における荷物制止装置の配置箇所及び個数に限定されず、適宜選択できる。
【0093】
<第3変形例>
図13は、本発明の荷物搬送方法に係る、第3変形例を示す図である。
図13に示す通り、第3変形例では、第2変形例に係る荷物制止装置としての吸着部材41に対して、吸着部材41の吸着力を高めるために床面34に載置された板材BDと、板材BDと床面34との間に配置された別部材としての摩擦力強化部46とを有している点で異なる。このような板材DBを用いることで、床面34に傷や塵埃など異物があって、吸着部材41が十分に吸着できない場合にあっても、吸着部材41を荷物制止装置として機能させることができる。
【0094】
(板材)
図13に示すように、板材BDは、平滑面を有する平板であり、上面で吸着部材41に吸着されると共に、下面で摩擦力強化部46と接している。
【0095】
なお、本発明では、板材は、吸着部材が吸着可能とされていればどのような形状でもよいが、他の機械や装置等を用いずに作業員が人力で搬送可能な程度の大きさとされていることが望ましい。
【0096】
また、本発明では、板材は、吸着部材が吸着可能とされていればどのような材質で作られていてもよいが、例えば、硬質性プラスチックで作られていることが好ましい。
【0097】
摩擦力強化部46は、第1変形例に係る荷物制止装置と同様に、ゴムシートである。すなわち、第3変形例において、吸着部材41は、水平方向への摩擦力が強化された板材BDに吸着した状態で、荷物制止装置として用いられる。
【0098】
なお、本発明では、摩擦力強化部は、板材と床面との間に配置されていればどのように設けられていてもよい。すなわち、摩擦力強化部は、板材と接合されていてもよく、接合されずに分離されていてもよい。
【0099】
また、本発明では、摩擦力強化部は、板材の水平方向に対する摩擦力を強化することが可能とされていればどのような形状、材質でもよいが、他の機械や装置等を用いずに作業員が搬送可能な程度の大きさとされていることが望ましい。
【0100】
第3変形例では、
図13に示すように、荷物搬送プレート10を引き抜くステップにおいて、摩擦力強化部46上に板材BDが配置された状態で、板材BDに荷物制止装置を吸着させる。
【0101】
すなわち、第3変形例に係る荷物制止装置は、第2変形例に係る荷物制止装置とは異なり、吸着部材41が床面34ではなく、作業員36によって搬送可能とされた板材BD及び摩擦力強化部46の上に配置されている。
【0102】
従って、予め塗装を施す方法、硬質の板材BDなどを敷設する方法等によって床面34を平滑面とする必要がなくなるため、第2変形例に係る荷物搬送方法と比して、さらにコストを低減することができる。
【0103】
ところで、吸着性を向上させる目的で床面34に予め塗装をした場合には、作業員36の移動や荷物20の搬送などにおいて様々な部材が接触するため、塗装が剥がれる可能性があり、塗装の代わりに硬質の板を床面34に広く敷設する場合には、部材が多量に必要になる可能性がある。
【0104】
ここで、第3変形例に係る荷物制止装置では、床面34に予め塗装を施す方法、硬質の板材BDなどを敷設する方法等とは異なり、板材BD及び摩擦力強化部46が搬送可能とされているため、荷物搬送プレート10を引き抜く際以外には、板材BD及び摩擦力強化部46を片付けておくことが可能であり、また、トラック等で携行することも容易である。
【0105】
従って、荷物搬送プレート10を引き抜く際のみ板材BD及び摩擦力強化部46を使用するため、板材BD及び摩擦力強化部46の劣化を抑えることが可能となり、板材BD及び摩擦力強化部46の運用コストを更に低減することができる。
【0106】
なお、第1変形例及び第2変形例に係る荷物搬送方法が有している他の効果は、第3変形例に係る荷物搬送方法でも得ることができる。
【0107】
また、第3変形例に係る荷物制止装置では、板材BDは、摩擦力強化部46を間に挟んで床面34に配置されていたが、本発明では、これに限らない。例えば、荷物搬送プレートを引き抜く際に、荷物制止装置が水平方向にずれなければ、摩擦力強化部を有していなくともよい。
【0108】
また、本発明の第3変形例における荷物制止装置の配置箇所及び個数は、上記説明に限定されず、適宜選択できる。
【0109】
<第4変形例>
また、荷物搬送プレート10を引き抜く際の荷物20の位置ズレを抑制する荷物制止装置として、
図14中には、フォークリフト50に取り付け可能なアタッチメント60が例示されている。
【0110】
アタッチメント60は、フォークリフト50のフォーク52の先端が差し込まれる穴部62Aを有する基部62と、基部62から荷物20側に向かって延びる押し部64と、押し部64の基部62と反対側の先端に設けられた押し板66と、を備える。
【0111】
基部62及び押し部64は、棒状部材である。第4変形例では、基部62及び押し部64は、例えば、鋼製で中空の角柱部材によって作製できるが、本発明では、円柱部材であってもよいし、或いは、木材等、他の素材が使用されてもよい。
【0112】
第4変形例では、2本の押し部64が、互いに平行に、かつ、それぞれの一端が1本の基部62と直交するように基部62に対して取り付けられている。第4変形例では、押し板66は、鋼板等によって作製できるが、本発明では、木材等、他の素材が使用されてもよい。基部62、押し部64及び押し板66は、溶接やボルト締め等によって接合できる。
【0113】
図14に示すように、荷物搬送プレート10を引き抜く際には、引き抜き前に予め、押し板66を、荷物20(又は荷物20を載置するパレット等の載置部材)の側面に接触させればよい。第4変形例に係る荷物搬送プレート10の構成については、
図1~
図10に示した荷物搬送プレート10と同様である。
【0114】
第4変形例に係る荷物搬送方法によれば、荷物搬送プレート10を引き抜くステップで、荷物搬送プレートが通過できる間隔をあけて、押し板66を荷物20の側面に当てて荷物20を押えることによって荷物20を制止させる。このため、引き抜きの際、荷物20の位置ズレを防止できると共に、荷物搬送プレート10のみを円滑に引き抜くことができる。また、荷物制止装置のアタッチメント60は、フォークリフト50のフォーク52に取り付けられている。
【0115】
すなわち、荷物20を荷物搬送プレート10の所まで搬送するために使用されるフォークリフト50を荷物制止装置として兼用できるので、荷物制止装置を別装置として新たに用意する負担を低減できる。また、本発明では、荷物制止装置が取り付けられる位置は、フォークリフトのフォークに限定されず、例えば、フォークリフトの本体やフォークの昇降装置等、他の位置に取り付けられてもよい。
【0116】
また、例えば、荷物制止装置として棒状部材が用意され、用意された棒状部材の両端が、トラックの荷室内で荷物搬送方向を挟んで位置する一対の側壁面上に設けられているラシニングベルトの凹凸部分に引っ掛けられることによって、空中に支持されてもよい。また、凹凸部分が形成される位置は、トラックの荷室内の側壁面上でラシニングベルトの位置に限定されず、ラシニングベルトの位置より低い位置でも高い位置でも、荷物の寸法に応じて適宜変更できる。第4変形例に係る荷物搬送方法の他の効果は、第一実施形態の場合と同様である。
【0117】
なお、荷物制止装置は、例えばコンテナ内のような狭隘なスペースなどで荷物の引回しや積替えなどをするために使用されるハンドリフター等の小型荷捌き装置に取り付けられてもよい。トラックヤードなど荷積作業の作業現場で荷物を捌くために日常的に使われている小型荷捌き装置を荷物制止装置として兼用できるので、荷物制止装置を別装置として新たに用意する負担を低減できる。
【0118】
<第二実施形態>
続いて、本発明の第二実施形態を説明する。なお、以下の説明において、第一実施形態と同一の部分又は類似の部分については、第一実施形態と同一の符号又は類似の符号を付し、説明を省略することがある。
【0119】
<荷物搬送プレート>
第二実施形態に係る荷物搬送プレート10を、
図15及び
図16を適宜参照して説明する。
図15に示すように、第二実施形態に係る荷物搬送プレート10は、プレート部12と、プレート部12に対して後方端部に連設された押圧部70とを有する。
【0120】
(プレート部)
第二実施形態では、プレート部12は、滑り止め部14を有していない点で第一実施形態とは異なる。
【0121】
(押圧部)
図15に示したように、第二実施形態に係る押圧部70は、プレート部12の後方端部において、プレート部12の後方端部から後方に向かって上方に反り上がって形成された湾曲部12Eと、押圧具72とされている。
【0122】
第二実施形態に係る押圧具72は、
図15に示すように、プレート部12の後方端部から後方で反り上がった部分の上面側に固定された金具であり、前方の面に当接面72Cが、また、後方の面に押圧面72Pが形成されている。なお、当接面72C及び押圧面72Pは、搬送方向に対して上下方向に直交した面とされている。なお、本発明では、押圧具の材質は、使用時に押圧部としての機能を果たすことができ、破壊や大きな変形が生じない強度を有する限り、金属に限らず、アルミニウム合金、鋼、炭素繊維強化プラスチック、樹脂その他如何なる材質であってもよく、また、荷物に当接する当接面の部分にクッション性を持たせる等の複合材であってもよく、また、押圧部の幅は、プレート部の幅と同等若しくは異なっていてもよく、また、当接面や押圧面は、荷物搬送方向に対して直交せずに傾斜し、湾曲し、又は凹凸面であることを妨げない。
【0123】
また、
図15に示すように押圧具72は、湾曲部12Eによって、床面34に接触しない形状とされている。
【0124】
第二実施形態に係る押圧具72の前後方向の長さは、
図15に示すようにプレート部の長さに比べ短くしてあり、また、左右方向の幅は、プレート部12と同等とされているが、本発明では、これに限らず、搬送する荷物の形状等に応じて、荷物搬送プレートを用いた荷物の搬送を可能とする形状であればよい。
【0125】
ここで、押圧具72には、押圧面72Pに対して更に後方に牽引部16が形成されている。
【0126】
第二実施形態に係る押圧具72の牽引部16は、
図15に示されるように、押圧具72の後方において、押圧具72の後側面に形成された押圧面72Pと、幅方向両側で押圧面72Pから後方に突出した突出部72Eと、両側の突出部72Eの先端部を互いに掛け渡した部材である引掛部16Hと、押圧面72P、突出部72E及び引掛部16Hで囲われた係合孔16Eと、で構成されている。
【0127】
なお、第二実施形態に係る係合孔16Eは、
図16に示されているように、おもて面側から裏面側まで貫通する孔とされているが、本発明では、この係合孔は、係合鉤に係合できる限り、係合鉤の形状に応じて如何なる形状であってもよく、例えば、おもて面側又は裏面側が閉塞していてもよい。
【0128】
また、第二実施形態の係る押圧部70において、
図15に示すように、押圧具72と挟板72Sにより、プレート部12の後端部が延伸して押圧部となっている板状部を挟み込み、押圧具72、前記板状部及び挟板72Sを貫通するボルトによって互いに固定され、一体化されている。なお、本発明では、押圧具の固定方法は、これに限らず、溶接や接着等の方法を用いて固定されていてもよい。
【0129】
なお、第二実施形態における押圧部70は、
図15に示すように、第一実施形態と同様にプレート部12の後端部から後方斜め上方へ延出している。本発明では、同様に後方斜め上方へ延出することが望ましいが、押圧部の機能を果たすことができる限り、これに限らず、例えばプレート部12の後端部に接して垂直に立設されていてもよい。
【0130】
(搬送機器)
第二実施形態で用いる搬送機器51は、
図16に示すように、作業員36がハンドルや操作器を操作することによって動作する。また、搬送機器51は、荷物搬送に通常用いられることが多いフォークリフトのような動力搬送機器に比べ小型であり、フォーク部分52の先に荷物20を載せた荷物搬送プレート10の係合孔16Eを引っ掛けた状態で作業員36が操作し、荷物20を前方に運搬し、又は、荷物20と床面34の間から荷物搬送プレート10を引き抜く。なお、本発明では、搬送機器は、荷物を載せた荷物搬送プレート係合し、押して前方に搬送し、また、荷物と床面の間から荷物搬送プレートを引き抜くことができる限りどのようなものでもよく、例えば、動力装置であってもよく、単なる棒状の器具であってもよく、また、市販されている搬送機器を適宜選択して用いることもできる。
【0131】
第二実施形態に係る係合鉤78は、係合孔16Eに対して係合する形状とされている。すなわち、作業員36が搬送機器51のハンドルを持って前方に傾動してフォーク部分52の先端側を下げ、係合鉤78を係合孔16Eの下方に位置するように搬送機器51を移動させ、搬送機器51の角度を元の角度まで戻した状態で、係合鉤78と係合孔16Eが係合する形状とされている。
【0132】
なお、本発明では、係合鉤と係合孔との形状は、係合鉤が係合孔と係合した状態で、それぞれが互いに回動せずに力を伝達することが出来れば、特に限定されない。例えば、
図16において、係合鉤78は、床面34側から上方へと延びる部材であるが、本発明では、逆に上方側から床面側へ延びる形状とされ、係合鉤が、係合孔に上方から掛かる形状とされていてもよい。
【0133】
また、本発明では、搬送機器の形状、大きさ、搬送能力等は、搬送される荷物の重量、荷姿、作業スペースの広狭、床面の状態を含む周囲の環境等に応じて適宜決定される。
【0134】
<荷物搬送方法>
続いて、第二実施形態に係る荷物搬送プレート10及び搬送機器51を用いた荷物搬送方法を、
図16を参照して説明する。
【0135】
第二実施形態では、まず、
図16に示すように、プレート部12のおもて面上に荷物20が載置されたパレット20Aが搬送開始位置に置かれた状態で、搬送機器51の係合鉤78を荷物搬送プレート10の押圧部70に設けられている係合孔16Eに係合させる。
【0136】
次に、係合鉤78を係合孔16Eに係合させた状態で、
図16に示すように、作業員36が搬送機器51を前方(荷物搬送方向M)に押すことにより、係合鉤78を押圧部70の押圧面72Pに当接させ、荷物搬送プレート10を前進させる押圧力を押圧面72Pに加える。
【0137】
この状態で、作業員36が搬送機器51を押し、押圧面72Pに押圧力を加え続けることにより、搬送機器51と共にパレット20Aを載せた荷物搬送プレート10も一緒に前進する。なお、荷物搬送プレート10を前進させるために必要な力すなわち押圧面72に加え続ける押圧力は、荷物搬送プレート10のプレート部12の底面と床面34との間に働く摩擦抵抗に、載せた荷物の重み等によってパレット20Aの底面に撓みが生じてパレット20Aの左右の端部が床面34に接触するか、又は、プレート部12に載せられたパレット20Aの左右のバランスが崩れて傾き、パレット20Aの左右いずれかの端部が床面34と接触することによってその接触部分に生じる摩擦抵抗を加えた合計摩擦抵抗より大きい力でなければならない。
【0138】
なお、この状態で荷物搬送プレートを前進させているときには、上述のようにパレット20Aの左右の端部又はそのいずれかが床面34と接触し、その接触部分の摩擦抵抗によりパレット20Aの前進が阻害され、プレート部12上でパレット20Aが後方にずれ動きやすい状態になっている。しかし、第二実施形態に係る荷物搬送プレート10を用いた荷物搬送方法では、パレット20Aがプレート部12上で後方にずれ動いた場合でも、パレット20Aの後側面が押圧部70の当接面72Cに当接するようになっており、パレット20Aの後側面が当接面72Cに当接した段階で、パレット20Aがプレート部12上においてそれ以上ずれ動くことが抑制され、パレット20Aが荷物搬送プレート10の後方から脱落しないようになっている。
【0139】
次に、
図16に示すトラック30のコンテナ32の最奥部の所定の位置まで荷物搬送プレート10及びそのプレート部12上に載置したパレット20A及び荷物20を搬送した後、作業員36がそのままの状態で搬送機器51を後方に引っ張ることにより、押圧具72の牽引部16対し、引張力を与える。
【0140】
すなわち、荷物搬送プレート10を押すために用いられた搬送機器51の係合鉤78は、押圧部70の牽引部16を構成する係合孔16Eに連結されたまま、この作業段階以降、荷物搬送プレート10を引っ張る牽引部材38として機能する。
【0141】
この状態で、作業員36が搬送機器51を引っ張り、牽引部16に牽引力を加え続けることにより、荷物搬送プレート10が荷物20を載せたパレット20Aの下から引き抜かれ、搬送機器51と共に後退する。なお、荷物搬送プレート10をパレット20Aの下から引き抜くために必要な力すなわち牽引部16に加え続ける引張力は、荷物搬送プレート10のプレート部12の底面と床面34との間に働く摩擦抵抗に、荷物搬送プレート10のプレート部12の表面とパレット20Aの底面との間に働く摩擦抵抗を加えた合計摩擦抵抗より大きい力でなければならない。
【0142】
また、この状態で荷物20を載せたパレット20Aの下から荷物搬送プレート10を引き抜くときには、上述のようにパレット20Aの左右の端部又はそのいずれかが床面34と接触し、その接触部分に働く摩擦抵抗がプレート部12の表面とパレット20Aの底面との間に働く摩擦抵抗に比べ大きい場合にのみ、パレット20Aが荷物搬送プレート10と一緒に後退することが阻止され、荷物搬送プレート10のみが後退し、パレット20Aの下から引き抜かれる。第二実施形態では、パレット20Aの端部と床面34の接触部分の間に働く摩擦抵抗は、プレート部12の表面とパレット20Aの底面との間に働く摩擦抵抗より大きいとされる。なお、本発明では、荷物の重さやパレットの剛性などに起因してパレット端部と床面の接触部分の摩擦抵抗が比較的小さく、パレットが荷物搬送プレートと一緒に後退する場合には、補助作業員が荷物を押さえて後退を阻止する又は
図9若しくは
図11に示すような荷物制止装置を用いる等の方法によって、前記接触部分におけるパレット後退を阻止する摩擦抵抗の不足分を補い、パレットの下から荷物搬送プレートを引き抜けるようにしてもよい。
【0143】
このように、第二実施形態では、荷物搬送プレート10を引っ張ると、パレット20Aと床面34との間で荷物搬送プレート10が滑るため、パレット20Aの下からプレート部12を抜き取ることができる。また、抜き取られた荷物搬送プレート10は、別のパレット20Aに載置された荷物20を搬送するために再び使用される。
【0144】
(作用及び効果)
第二実施形態では、荷物搬送プレート10を床面34に置き、プレート部12のおもて面に荷物20を載せたパレット20Aを載置し、パレット20Aを押して目的の場所まで搬送する。プレート部12の後縁には押圧具72を有する押圧部70が設けられており、パレット20Aがプレート部12の上で後方にずれ動いた場合でも、押圧具72の当接面72Cにパレット20Aが当接することで、荷物20が載置されたパレット20Aは、後方に脱落することなく荷物搬送プレート10ごと一緒に搬送される。
【0145】
荷物20が載置されたパレット20Aを目的の場所まで搬送した後、搬送機器51を後方に引いて荷物搬送プレート10を床面34とパレット20Aの間から引き抜き、次の荷物20を搬送するために再び使用する。
【0146】
ここで、第二実施形態に係る荷物搬送プレート10は、第一実施形態に係る荷物搬送プレート10に比べ、滑り止め部14を有していない。すなわち、第二実施形態に係る荷物搬送プレート10は、プレート部12のおもて面が全て同一の表面とされている。なお、本発明においては、プレート部のおもて面は、荷物を載置でき、かつ、良好な滑動性を有する限り、おもて面の全てが同一である必要はない。
【0147】
これにより、プレート部12のおもて面に滑り止め部14を設けた荷物搬送プレート10と比較すると、より小さい力で荷物搬送プレート10を引き抜くことができ、作業員36の負担が軽減される。
【0148】
また、第二実施形態で用いられる搬送機器51は、
図16に示すように、フォークリフト等の大型の動力運搬機器に比べ小型軽量の手動機器である。従って、大型の運搬機器が進入しにくいトラック30のコンテナ32においても、荷物20を載せたパレット20Aの搬送作業の効率化を図ることができる。なお、本発明では、搬送機器は、トラックのコンテナに限らず、狭隘な倉庫内などにおける運搬作業に用いてもよく、また、荷物はパレットに載せられている必要はない。
【0149】
また、第二実施形態に係る荷物搬送プレート10の押圧部70には、プレート部12の後端部から上方に反り上がるように湾曲して延出する湾曲部12Eと、床面34よりも上方に位置するように、延出する湾曲部12Eの先端部に接して押圧具72が設けられている。
【0150】
これにより、押圧具72の牽引部16を後方に牽引して荷物20を載せたパレット20Aの下から荷物搬送プレート10を引き抜くステップにおいて、押圧部70の底面後端部が床面34と曲面で接触するため、床面34に凹凸や異物が存在していた場合においても、押圧部70の後縁が凹凸や異物に衝突して引っかかることなく、湾曲部12Eが存在せず押圧部70後縁の角部が直角に立ち上がっている場合に比べ、荷物搬送プレート10を容易に引き抜くことができる。
【0151】
また、湾曲部12Eの存在によって、押圧部70は、床面34と接触しないため、湾曲部12Eが形成されていない場合と比して、荷物20を搬送するステップ及び荷物搬送プレート10を引き抜くステップにおいて、押圧部70の底面分だけ摩擦抵抗を低減することができ、荷物搬送プレート10を押すこと又は引き抜くことが容易になる。また、押圧具72が比較的高い位置にあるため、押圧具72の牽引部16と搬送機器51の係合鉤78との作業員36による連結作業が容易となるため、運搬作業の効率化を図ることができる。
【0152】
本発明の第二実施形態に係るその他の作用及び効果は、第一実施形態と同様である。
【0153】
第二実施形態に係る荷物搬送プレート10は、本発明においては、さらに次に示されるように変形されていてもよい。
【0154】
第二実施形態に係る荷物搬送プレート10においては、
図15に示すように、押圧部70の押圧具72は、湾曲部12Eより前方まで伸びているが、本発明では、これに限らず、例えば、押圧部の押圧具は、湾曲部よりも後方に位置するように設けられてもよい。
【0155】
また、第二実施形態に係る荷物搬送プレート10においては、
図15に示すように、押圧部70に設けられた押圧具72の牽引部16は、突出部72E及び引掛部16Hで構成されているが、本発明では、これに限らず、例えば、突出部及び引掛部に代えて、押圧部後側面に脱着自在に取り付けたアイボルト又は押圧具の上部に固定して取り付けたアイボルトを牽引部としてもよい。
【実施例0156】
本発明者は、
図17に示すように、第一実施形態に係る荷物搬送プレートの実施例として、プレート部及び滑り止め部についてそれぞれの素材及び寸法を変化させた17個の荷物搬送プレートを作製した。
【0157】
実施例で使用されたプレート部の種類は、樹脂板(スライダーボード)、リボン鋼、鉄板、PPシート、塩化ビニル(塩ビ)シートであった。リボン鋼は、焼入れリボン鋼を使用した。プレート部は、平面視で長方形であった。
【0158】
また、実施例で使用された滑り止め部としてのシートは、ナイロン等の合成繊維とゴムとからなる化工品であった。なお、ウレタン、シリコーン、アクリル、塩化ビニル等の素材を単体で滑り止め部として使用することもできる。なお、実施例では滑り止め部としてのシートが無い場合でも、荷物の重量やプレート部の素材の組合せによっては、プレート部の表面が滑り止め部としての機能を有している。
【0159】
図17に示す実施例を用いた実験は、床面上に荷物搬送プレートを置き、この荷物搬送プレートの上にパレットを載置し、このパレットの上に荷物を積載した状態で行われた。実験に用いた荷物の重量は、
図17中に荷物の重量として示されており、約700キログラム又は1トンであった。
【0160】
また、パレットの平面視での寸法は、幅1100ミリメートル×長さ1100ミリメートルであった。パレット表面の全面に均等に荷物が積載されたわけではないが、実験中においてはパレット上での荷物の移動はなく両者を一体として扱えることから、荷物の底面の幅及び長さも、パレットと同じとした。本実験は本発明の効果や凡その数量的傾向を確認することが主な目的であり、すなわち、床面と荷物搬送プレート底面の間の摩擦抵抗、パレット底面が荷物搬送プレートからはみ出して床面に接している部分と床面の摩擦抵抗、パレット底面と荷物搬送プレートおもて面の間の摩擦抵抗が部材の形状や荷重とどのような関係にあるかを傾向的に評価することである。
【0161】
何れの摩擦抵抗も荷物の重量に加えて、パレットの重量及び荷物搬送プレートの重量の影響も受けるのであるが、パレットの重量や荷物搬送プレートの重量は合計しても荷物の重量である700キログラムや1トンに比して数パーセント程度であるので、傾向を見る上では無視できるとして、
図17では荷物の重量のみを代表として記載してある。
【0162】
なお、床面と荷物搬送プレート底面の間の摩擦抵抗及びパレット底面が荷物搬送プレートからはみ出して床面に接している部分と床面の摩擦抵抗の合計が荷物を押す際に必要な力を定める要素である。また、荷物を押す際には荷物搬送プレートが荷物と一緒に移動する必要があるが、そのためには、床面と荷物搬送プレート底面の間の摩擦抵抗よりもパレット底面と荷物搬送プレートおもて面の間の摩擦抵抗が大きい必要がある。
【0163】
一方、パレットの下から荷物搬送プレートを引き抜く場合には、床面と荷物搬送プレート底面の間の摩擦抵抗及びパレット底面と荷物搬送プレートおもて面の間の摩擦抵抗の合計が引き抜く際に必要な力を定める要素である。
【0164】
また、パレット底面と荷物搬送プレートおもて面の間の摩擦抵抗がパレット底面が荷物搬送プレートからはみ出して床面に接している部分と床面の摩擦抵抗より小さければ、荷物制止装置などで荷物を押さえておかないでも、パレットの下から荷物搬送プレートを引き抜くことができるが、パレット底面と荷物搬送プレートおもて面の間の摩擦抵抗の方が大きければ、引き抜く際に荷物制止装置などで荷物を押さえておく必要がある。
【0165】
摩擦抵抗は、接触面に掛かる荷重、接触面を構成する両物質間の微視的摩擦係数、及び巨視的表面形状に摩擦抵抗が依存する場合には接触面の面積などで定まるので、実験においては、荷重、床の材質、荷物搬送プレートの材質及び面積形状、滑り止め部の面積形状を変化させて、押す場合に必要な力及び引き抜く場合に必要な力を測定した。
【0166】
図17の実験においては、搬送時に必要な荷物搬送プレートに載置したパレット上の荷物を押す力は、測定器具の便宜上、荷物を載置したパレットを押す場合と同等の摺動条件の下で電動ウィンチ又は手動ウィンチを用いて引いたときの牽引力を測定し、その測定された力を押す力と同等と見做して
図17に記載してある。なお、荷物搬送プレートを引き抜く方法としては、同様に電動ウィンチ又は手動ウィンチを用いてもよい。
【0167】
17個の実施例のいずれにおいても、荷物の下から荷物搬送プレートを引き抜く際、荷物が現在位置に止まるように荷物制止装置(ストッパー)が使用された。また、実施例では、荷物搬送プレートの直下の床面は、コンクリート製の床面、又はプラスチック(樹脂板)が貼られた床面のいずれかであり、これらの床面上で荷物搬送プレートを摺動させ引き抜いた。
【0168】
ここで、プレート部の長さ(荷物搬送方向Mの長さ)をプレート長LP、プレート部の幅をプレート幅BP、滑り止め部の長さを滑り止め長LS、滑り止め部の幅を滑り止め幅BS、荷物の底面の幅を荷物底面幅BM、とそれぞれ定義する。
【0169】
実施例の寸法を変化させた範囲は、
図17中の1番~4番に示したように、樹脂製プレート部のプレート幅BPは約80ミリメートル~200ミリメートル、プレート長LPは約600ミリメートル~1100ミリメートル、滑り止め部の滑り止め幅BSは30ミリメートルから200ミリメートル、滑り止め長LSは400ミリメートル~1100ミリメートルであった。
【0170】
同じく
図17中の5番~8番に示したように、鉄板製プレート部のプレート幅BPは約30ミリメートル~100ミリメートル、プレート長LPは約850ミリメートル~1200ミリメートル、滑り止め部の滑り止め幅BSは0ミリメートルから30ミリメートル、滑り止め長LSは0ミリメートル~900ミリメートルであった。
【0171】
図17中の9番~15番に示したように、リボン鋼(焼き入れあり)製プレート部のプレート幅BPは全て約75ミリメートル、プレート長LPは約1100ミリメートル~1200ミリメートル、滑り止め部の滑り止め幅BSは0ミリメートルから60ミリメートル、滑り止め長LSは0ミリメートル~900ミリメートルであった。
【0172】
図17中の16番に示したように、PPシート製プレート部のプレート幅BPは約60ミリメートル、プレート長LPは約1100ミリメートル、滑り止め部の滑り止め幅BSは約25ミリメートル、滑り止め長LSは約900ミリメートルであった。
【0173】
図17中の17番に示したように、塩ビシート製プレート部のプレート幅BPは約75ミリメートル、プレート長LPは約900ミリメートル、滑り止め部の滑り止め幅BSは約35ミリメートル、滑り止め長LSは約900ミリメートルであった。また、図に示されていないが、荷物底面幅BMは約1100ミリメートルであった。
【0174】
図17に示される実験データ及び図示を省略したその他の実験結果から、本発明による荷物搬送プレートに用いるプレート部の素材として、樹脂ボード、鉄板、リボン鋼、PPシート、塩ビシートの何れも、700キログラム又は1トンの重量の荷物を単にコンクリート床面又はプラスチック床面に置いて押す場合に比して荷物搬送プレートを荷物の下に敷いて押す場合の方が小さい力で押すことができること、その際に適切な滑り止め部を設けることで荷物が荷物搬送プレート上で移動しないこと、また、滑り止め部を設けてあっても荷物の下から荷物搬送プレートを破損することなくスムーズに引き抜けることが確認され、少なくともこれらの素材で本発明の荷物搬送プレートを実施することが可能であることが実証された。
【0175】
また、
図17に示される実験データ及び図示を省略したその他の実験結果から、実験に使用した樹脂ボード、鉄板、リボン鋼、PPシート、塩ビシートの素材の中では、焼き入れを行ったリボン鋼が、荷物を押す際や引き抜く際に要する力は床面の状態によっては樹脂製に少し劣る場合があるものの、材料調達性に優れ、使用時には破損しにくく耐久性があり、軽量であり、丸めて収納でき扱いやすいなどの利点があり、総合的に見て高い評価が得られた。
【0176】
また、
図17に示される実験データ及び図示を省略したその他の実験においては、全ての実施例において荷物をパレットに載せた状態で行われ、従って、荷物底面幅BPは全て約1100ミリメートルと見做され、一方、荷物搬送プレートのプレート幅BPは、約30ミリメートル~200ミリメートルの範囲で、いずれも荷物底面幅BMより小さく、比率にして約27/1000以上、180/1000以下であり、荷物搬送プレートの横幅をコストダウン等のためにかなり小さくして小型化、軽量化しても本発明の効果が得られることが示された。
【0177】
本発明の目的が荷積み作業において、作業員の負担を抑制し、荷物を安定的に搬送することが可能な、簡易で安価な構造の荷物搬送プレート及び荷物搬送方法を提供することであることに鑑み、上記のような本実験の結果は、本発明が発明の目的を十分に達成するものであることを示している。
【0178】
ただ、これらの評価は本実験の限られた条件の下で得られたものであり、荷物が大幅に軽量である場合、荷物底面のサイズが大幅に大きいか又は小さい場合、床面の材質、硬度、平坦度など状態が大きく異なる場合など実際の用途に応じて、荷物搬送プレートに用いる素材その他の設計は適宜変更する必要があり、上記に限定されるものではなく、例えば、プレート幅BPが荷物底面幅BMと同じかそれよりも広いものを排除するものではない。
【0179】
上記のように実験で最も評価の高かった焼き入れしたリボン鋼を用いた実施例に焦点を当てれば、
図17中の9番~15番に示されるように、プレート幅BPは、荷物底面幅BMの3/44であった。また、滑り止め長LSは、プレート長LPの3/4以上、9/11以下であった。また、滑り止め幅BSは、プレート幅BPの7/15以上、52/15以下であった。
【0180】
図17中の9番~15番の寸法範囲内の焼き入れリボン鋼のプレート部を有する荷物搬送プレートでは、床面とプレート部で覆われた部分を含む荷物底面全面との間の摩擦抵抗(摩擦力)を適切に低減できた。結果、荷物を押すことにより確実に搬送できた。また、この寸法サイズの滑り止め部により、搬送中にプレート部上で荷物が滑ることを防止できた。また、作業員一人の力でも荷物搬送プレートを容易に引き抜くことができた。
【0181】
一方、図示を省略するが、
図17中の9番~15番で設定された寸法範囲外の焼き入れリボン鋼についても、同様の条件で測定を行った。結果、9番~15番の寸法範囲外の焼き入れリボン鋼のプレート部を有する荷物搬送プレートでは、寸法範囲内の焼き入れリボン鋼のプレート部を有する荷物搬送プレートと比べ、搬送中にプレート部上で荷物が滑る場合が生じた。また、作業員一人の力で荷物搬送プレートを引き抜くことが困難であった。
【0182】
また、図示を省略するが、焼きを入れないリボン鋼を用いたプレート部を有する荷物搬送プレートを作製し、作製された荷物搬送プレートについても、焼きを入れた場合の
図17中の9番~15番と同様の条件で測定を行い、それぞれの測定結果を対比した。結果、焼きを入れたリボン鋼のプレート部を有する荷物搬送プレートの方が、焼きを入れない場合と比べ、同様の条件であっても、より軽い力で押すことが可能であること、すなわち、滑りがよいことが分かった。
【0183】
また、図示を省略したその他の実験として、以下の実験例1を行った。実験例1では、まず、600キログラムの荷物を1100ミリメートル×1100ミリメートルのパレットに積載して、荷物搬送プレートを使用せず、コンクリートの床面上で直接押す場合の力を測定した。測定された押す力は、日常使用しているコンクリート床面上で実験を行ったためにかなりばらつきを示したものの、凡そ160キログラム~190キログラムの範囲であった。
【0184】
実験例1では、次に、荷物と床面との間で幅方向の中央に、1枚の荷物搬送プレートを配置した。荷物搬送プレートのプレート部は、樹脂板であり、幅75ミリメートル×長さ1165ミリメートル×厚み3.8ミリメートルであった。また、滑り止め部は、鉄板であり、幅70ミリメートル×長さ80ミリメートル×厚み2.0ミリメートルであった。
【0185】
また、荷物搬送プレートを配置した状態で、パレット底面と床面との間の中央部には、荷物搬送プレートの厚みと滑り止め部の厚みにより隙間が出来ていることが確認された。この隙間は、荷物搬送プレートの中心線から左右に約270ミリメートル位置まで形成されており、また、隙間の両側である外側約280ミリメートルの部分では、パレットの下面は床面に接触していた。この状態で、荷物搬送プレートを使用してコンクリートの床面上で押した場合の力を測定したところ、測定された押す力は、平均99.5キログラムであった。実験例1では、荷物搬送プレートによって、押す力を大幅に低減できることが数値的に実証された。
【0186】
また、プレート部の幅を200ミリメートルに変更し、他の条件を実験例1と同一とした実験例2を行った。実験例2では、測定された押す力は、平均114.4キログラムであった。すなわち、実験例1と実験例2の比較により、プレート部の幅が狭い方が、押す力は小さくてよいという結果が得られ、プレート部の幅を狭くして材料費を節減し、扱い易さを向上させることが可能であることが示された。
【0187】
また、実験例1における荷物搬送プレートに関して、プレート部の寸法を、幅80ミリメートル×長さ965ミリメートル×厚み3.8ミリメートルに変更した荷物搬送プレートを用意して、実験例3を行った。実験例3では、荷物搬送プレートを配置した状態で、パレット底面と床面との間に出来る隙間は、中央部で、荷物搬送プレートの中心線から左右に約240ミリメートルの幅の部分に形成されており、また、隙間の両側である外側約310ミリメートルの部分では、パレットの下面は、少なくとも一部分が床面に接触していた。
【0188】
この状態で、荷物搬送プレートを使用してコンクリートの床面上で押した場合の力を測定したところ、測定された押す力は、平均89.8kgであった。実験例3でも、荷物搬送プレートを用いずに直接パレットを押す場合に比べ、荷物搬送プレートによって押す力を低減できることが数値的に実証された。また、実験例1~3の範囲では、実験例3の荷物搬送プレートの条件が最も小さい押す力で済むことを示した。
【0189】
<その他の実施形態>
本発明は上記の開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。例えば、変形例で説明したような荷物制止装置は、あってもなくてもよく、本発明に必須ではない。また、第一実施形態及び第二実施形態では、荷物20の形状は直方体状に例示されていたが、本発明では、これに限定されず、多角形状や円筒状等、適宜変更できる。
【0190】
また、前述のように本発明の主な目的が人力でも容易に取り扱え且つ安価な装置としての荷物搬送プレート10を提供することであることから、荷物を装置に載せてコンテナ内部に押し込み、その後荷物の下から装置を引き抜いて回収できるという装置に求められる機能を発揮できる範囲で、荷物搬送プレート10の全体的寸法を可能な限り小さくして小型化し、また、できるだけ軽い素材を探して用いることで軽量化を図り、そのような小型化、軽量化による材料節約でコストを下げるための工夫を行ったことを踏まえ、
図10などの説明において、荷物搬送プレート10の幅がその上に載置する荷物20の底面幅より小さいように示されているが、本発明では、これに限定されず、荷物搬送プレート10の幅、長さ、厚さなど寸法、形状又は素材を用途に応じて適宜定めることができる。
【0191】
また、本発明では、1個の荷物に対して配置される荷物搬送プレートの枚数は、1枚に限定されず、2枚以上であってよい。また、本発明では、荷物搬送プレートの配置位置は、パレットの幅方向の中央に限定されず、適宜変更できる。例えば荷物搬送プレートが、パレットの幅方向の両端に1枚ずつ配置されてもよい。
【0192】
また、図示を省略するが、2枚の荷物搬送プレート10のそれぞれの搬送方向の端部を対向させ、それぞれのプレート部12とプレート部12とが連結された配置状態を保持する枠部材を設けることができる。枠部材は、例えば、平面視で矩形状であって、アルミニウム等の金属材料からなる一枚板を用意し、一枚板の荷物搬送方向に沿って対向する両端部を、中央平面部を残して立ち上がるように折り曲げることで作製できる。すなわち、枠部材は、厚みが読める方向から見て、U字状である。
【0193】
なお、枠部材の材料としては、金属材料に限定されず、例えば樹脂製、木製等、他の任意の材料を採用できる。また、枠部材の作製方法としては、U字形状の底板と側板とを別々に用意し、互いに溶接やボルト締め等によって一体的に接合されてもよい。
【0194】
枠部材のU字の底部に相当する底板部の幅は、プレート部12の幅とほぼ同じである。枠部材のU字の一対の側壁に相当する側板部は、荷物の搬送方向に沿って互いに平行である。このため、底板部の上面上であって、一対の側板部の間に、2枚の荷物搬送プレート10のプレート部12同士を、僅かな隙間を設けて又は密着させて荷物搬送方向に縦に並べて配置してもよい。
【0195】
具体的には、枠部材の底板部の上面上に、搬送方向の長さの半分程度を有する領域に、一方の荷物搬送プレート10のプレート部12の端部を配置する。また、枠部材の底板部の上面上で、搬送方向の長さの半分程度を有する残りの領域に、他方の荷物搬送プレート10のプレート部12の端部を、一方の荷物搬送プレート10のプレート部12の端部に近接させて収納すればよい。また、側板部の高さは、滑り止め部14の最上部の高さより低い。このため、プレート部の上に荷物を載置しても、側板部が荷物の底面に接触しないので、枠部材が荷物の搬送に干渉しない。
【0196】
枠部材を用いて荷物搬送プレート10同士を縦方向に連結することによって、搬送路の長さを必要に応じて延長することが容易になる。また、搬送路を構成する荷物搬送プレート10の枚数を1枚でなく複数枚に分割可能になるので、荷物搬送プレート10の1枚あたりの長さを短くできる。長さが短くなる分、荷物搬送プレート10の持ち運びを容易にできると共に、荷物搬送プレート10をコンパクトに収納又は保管可能になる。
【0197】
また、
図1~
図17中に示したそれぞれの荷物搬送プレート10の構成を部分的に組み合わせて本発明を構成してもよい。本発明は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むと共に、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。