(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145478
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ワーク加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220926BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20220926BHJP
B24B 37/10 20120101ALI20220926BHJP
B24B 1/00 20060101ALI20220926BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20220926BHJP
【FI】
H01L21/304 621Z
H01L21/302 105B
H01L21/304 621D
B24B37/10
B24B1/00 Z
B24B37/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204585
(22)【出願日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2021044350
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(71)【出願人】
【識別番号】591222670
【氏名又は名称】土肥 俊郎
(71)【出願人】
【識別番号】000236687
【氏名又は名称】不二越機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】會田 英雄
(72)【発明者】
【氏名】武田 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】土肥 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】宮下 忠一
(72)【発明者】
【氏名】鍛冶倉 惇
【テーマコード(参考)】
3C049
3C158
5F004
5F057
【Fターム(参考)】
3C049AA07
3C049AA09
3C049AC04
3C049CB03
3C158AA07
3C158AA09
3C158AC04
3C158CB03
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EA26
3C158EB01
5F004AA01
5F004BA06
5F004BB19
5F004BB24
5F004BB29
5F004CA05
5F004CA08
5F004DA22
5F004DB19
5F057AA14
5F057AA31
5F057BB06
5F057BB09
5F057BB40
5F057CA12
5F057DA03
5F057DA11
5F057DA28
(57)【要約】
【課題】難加工材料を用いて形成されたワークに対して、高い加工レートを実現し、短時間で安定的に加工を行うことが可能なワーク加工装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るワーク加工装置1は、保持プレート20の上面に保持されたワークWに対して加工ヘッド14を摺接させて加工を行うワーク加工装置であって、加工ヘッド14は、プラズマを発生させてワークWの被加工面に照射するプラズマ電極30を有し、プラズマ電極30は、径方向中心に設けられる環状もしくは円柱状の中心電極31と、中心電極31に対して径方向外方に設けられる環状の外周電極32とが、境界位置に環状のスリット部36を介して配設されていると共に、スリット部36がプラズマ発生空間として構成されており、中心電極31および外周電極32の底面に加工パッド40が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持プレートの上面に保持されたワークに対して加工ヘッドを摺接させて被加工面の加工を行うワーク加工装置であって、
前記加工ヘッドは、回転可能に設けられ、プラズマを発生させて前記ワークの被加工面に照射するプラズマ電極を有し、
前記プラズマ電極は、径方向中心に設けられる環状もしくは円柱状の中心電極と、前記中心電極に対して径方向外方に設けられる環状の外周電極とが、境界位置に環状のスリット部を介して配設されていると共に、前記スリット部がプラズマ発生空間として構成されており、前記中心電極および前記外周電極の底面に加工パッドが設けられていること
を特徴とするワーク加工装置。
【請求項2】
前記外周電極は、複数個が設けられており、各境界位置に前記スリット部が設けられていること
を特徴とする請求項1記載のワーク加工装置。
【請求項3】
前記プラズマ電極は、前記スリット部を介して対向する側面の少なくとも一方における下端位置に、前記スリット部の離間寸法を小さくする方向に突出する突出部を有すること
を特徴とする請求項1または請求項2記載のワーク加工装置。
【請求項4】
前記突出部は、前記2つの側面の両方における下端位置において、相互に同じ径方向寸法で突出する形状に形成されていること
を特徴とする請求項3記載のワーク加工装置。
【請求項5】
前記2つの側面の径方向の間隔寸法は、前記2つの突出部の径方向の間隔寸法に対して5倍以上となるように構成されていること
を特徴とする請求項4記載のワーク加工装置。
【請求項6】
前記側面は、前記突出部が設けられていない領域が絶縁材料を用いて形成されていること
を特徴とする請求項4または請求項5記載のワーク加工装置。
【請求項7】
前記プラズマ電極は、前記スリット部に環状の追加電極を有し、平面視において、前記スリット部が前記追加電極によって分割された空間となり、それぞれの前記空間がプラズマ発生空間として構成されていること
を特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のワーク加工装置。
【請求項8】
前記加工ヘッドは、相対的に位置が変わる全ての前記ワークの被加工面の全領域に対し、前記スリット部が通過可能で且つ前記加工パッドが摺接可能となる外径および配置で、1個もしくは複数個が設けられていること
を特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のワーク加工装置。
【請求項9】
前記加工パッドは、前記プラズマ電極の側面に対して外方に向かって所定長さ延出して上方に傾斜する延出部を有すること
を特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のワーク加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク加工装置に関し、さらに詳細には、保持プレートに保持されたワークに対して加工ヘッドを摺接させて表面の加工を行うワーク加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パワーデバイスを作製する上でウェハに例示される基板(ワーク)に対し、表面の加工が必須となる。特に、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンドに代表されるワイドバンドギャップ半導体基板は硬く脆いことから、従来の機械的加工では高効率な加工は困難であるという課題がある。なお、本願における「加工」は、例えば、表面を削る研削、面粗度を低減する研磨、平面度を高める平坦化等のように表面の除去を行う加工を広く含むものとする。
【0003】
上記基板の加工に際して、P-CVM(Plasma Chemical Vaporization Machining)という加工方法を用いることが考えられる。この方法は、大気圧雰囲気下でのプラズマを用いた化学的な加工方法であり、その高いラジカル密度から高効率な加工が可能となる。しかしながら、等方性エッチングを行う加工方法であり、表面凸部のみならず表面凹部も加工してしまうため、平坦化目的の場合には向かない点もある。
【0004】
そこで、特許文献1(特開2015-159257号公報)、特許文献2(特開2015-179830号公報)等において、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド等の難加工材料に対して、プラズマ処理と機械加工とを複合させて高効率且つ高精度に加工する方法および装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-159257号公報
【特許文献2】特開2015-179830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に例示される従来のワーク加工装置においては、CMP(Chemical Mechanical Polishing)を行う機構部とプラズマ処理を行う機構部とが別個に配設されており、それぞれの機構部においてワークの加工を交互に繰り返す構成であるため、タクトタイムが長くなり、生産効率が低下してしまう課題があった。
【0007】
一方、特許文献2に例示される従来のワーク加工装置においては、プラズマ処理を行う機構部が定盤に組込まれる構成であるため、当該組込み箇所において、スラリーの固着が生じ、また、スラリーの影響(ウェット環境)によってプラズマ発生が安定しない等の課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、難加工材料を用いて形成されたワークに対して、高い加工レートを実現し、短時間で安定的に加工を行うことが可能なワーク加工装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
本発明に係るワーク加工装置は、保持プレートの上面に保持されたワークに対して加工ヘッドを摺接させて被加工面の加工を行うワーク加工装置であって、前記加工ヘッドは、回転可能に設けられ、プラズマを発生させて前記ワークの被加工面に照射するプラズマ電極を有し、前記プラズマ電極は、径方向中心に設けられる環状もしくは円柱状の中心電極と、前記中心電極に対して径方向外方に設けられる環状の外周電極とが、境界位置に環状のスリット部を介して配設されていると共に、前記スリット部がプラズマ発生空間として構成されており、前記中心電極および前記外周電極の底面に加工パッドが設けられていることを要件とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、難加工材料を用いて形成されたワークであっても、被加工面の改質やエッチングを行いながら加工を行うことができるため、加工レートを高めることが可能となる。また、プラズマ処理工程と加工工程とを同時に、すなわち機構間でワークの配置替えをせずに連続的な処理で行うことができるため、短時間で加工を行うことができ、生産効率の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係るワーク加工装置の例を示す正面断面図である。
【
図3】
図1のワーク加工装置における加工ヘッドの拡大図である。
【
図4】
図1のワーク加工装置における加工ヘッドのプラズマ電極の例を示す斜視図である。
【
図5】
図1のワーク加工装置における加工ヘッドのプラズマ電極の他の例を示す斜視図ある。
【
図6】
図1のワーク加工装置における加工ヘッドの他の例を示す断面図である。
【
図7】
図1のワーク加工装置における加工ヘッドのプラズマ電極の他の例を示す断面図である。
【
図8】
図1のワーク加工装置における加工ヘッドのプラズマ電極の他の例を示す断面図である。
【
図9】
図1のワーク加工装置における加工ヘッドのプラズマ電極の他の例を示す断面図である。
【
図10】本発明の第二の実施形態に係るワーク加工装置の例を示す正面断面図である。
【
図12】
図10のワーク加工装置における加工ヘッドの他の例を示す断面図である。
【
図13】
図10のワーク加工装置における加工ヘッドの他の例を示す断面図である。
【
図15】表1に示す試料におけるプラズマの発生強度を可視化した図である。
【
図16】
図1のワーク加工装置における加工ヘッドのプラズマ電極の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第一の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第一の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係るワーク加工装置1の例を示す正面断面図(概略図)である。また、
図2は、
図1におけるII-II線断面図(概略図)である。また、
図3は、
図1のワーク加工装置1における加工ヘッド14の拡大図(概略図)である。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰返しの説明は省略する場合がある。
【0014】
本実施形態に係るワーク加工装置1は、回転盤12の上面に固定される保持プレート20上のワークWに対し、加工ヘッド14を押圧しながら摺接させて加工(表面加工)を行う装置である。
【0015】
一方、加工対象のワークWは、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド等に例示される、いわゆる難加工材料を用いて形成された基板(一例として、円板状のウェハ)等であり、外径や厚さは特に限定されるものではない(一例として、外径数cm~数十cm程度、厚さ数μm~数mm程度)。
【0016】
また、本実施形態に係る保持プレート20は、保持面(上面)に1枚もしくは複数枚のワークWが保持(貼付)され、そのワークWの被加工面(上面)を加工ヘッド14のワーク加工面(下面)に当接させる作用をなす。本実施形態においては、公知の剥離可能な接着剤によって、ワークWの下面が保持プレート20の保持面(上面)に接着されて貼付されているがこれに限定されるものではなく、真空吸着、凹部形成による嵌め込み等の方法を用いてもよい。なお、この保持プレート20は、平坦精度が高く、変形しにくい材質であることが要求され、一般に、ガラスもしくはセラミックス等を用いて形成されている。
【0017】
次に、本実施形態に係る回転盤12は、金属材料(一例として、ステンレス合金等)を用いて平面視円形状に形成されており、ベアリング44によって支持されて駆動装置(一例として、電気モータを備えた駆動機構)42によって回転駆動される構成となっている(矢印A方向)。なお、保持プレート20は、キャリア22を介して回転盤12上の所定位置に保持(固定)される。このキャリア22は、一般に、金属材料(一例として、ステンレス合金等)を用いて形成されている。
【0018】
ここで、キャリア22は、回転盤12の中心軸と軸心を一致させて配置された太陽ギヤ16とインターナルギヤ18とで挟持された状態で噛合されており、回転盤12の回転によって自転(矢印C方向)且つ公転(矢印D方向)するように回転駆動される。このキャリア22の回転によって、保持プレート20が自転(矢印C方向)且つ公転(矢印D方向)される。なお、本実施形態では、太陽ギヤ16とインターナルギヤ18との間に、4個のキャリア22が配設される構成としているが、これに限定されるものではない。
【0019】
次に、本実施形態に係る加工ヘッド14は、回転盤12の上方位置において、上下動可能に支持されると共に、支持フレーム10に配設された電気モータ等からなる駆動装置(不図示)によって回転可能に構成されている(矢印B方向)。一例として、スプライン等を備えた公知の機構によって構成されている。また、下面がワークWの加工を行うワーク加工面として構成されており、さらに、プラズマを発生させてワークWの被加工面に照射するプラズマ電極30を備えて構成されている。
【0020】
ここで、本実施形態に係るプラズマ電極30は、
図4(底面側斜視図)に示すように、径方向中心に設けられる円柱状の中心電極31と、中心電極31に対して径方向外方に設けられる環状の外周電極32とが、境界位置に環状のスリット部36を介して配設されている。このスリット部36がプラズマ発生空間として構成されている(詳細は後述)。また、プラズマ電極30の変形例として、
図5(底面側斜視図)に示すように、中心電極31が環状に形成される構成としてもよい。なお、
図3に示すように、中心電極31および外周電極32のそれぞれの底面には加工パッド40が設けられているが、上記の
図4、
図5においては、構造をわかり易くするために加工パッド40の図示を省略している。
【0021】
なお、プラズマは、ベースガス(He等の希ガス)および反応ガスを各貯留部(不図示)から配管46を通じてスリット部36に供給しつつ、当該スリット部36を構成する隣接電極間に所定電圧を印加することによって発生させることができる。反応ガスの具体例として、被加工物がSiC等の場合にはフッ素系ガス、酸素ガス、被加工物がGaNの場合には塩素系ガス、酸素ガス、被加工物がダイヤモンドの場合にはフッ素系ガス、酸素ガス、もしくは水素ガスが好適に用いられる。
【0022】
上記の構成によれば、回転盤12を回転(自転)させることにより、キャリア22を介して保持プレート20を自転且つ公転させることができる。同時に、加工ヘッド14を回転(自転)させて、保持プレート20に保持されたワークWに押圧しながら摺接させることができる。このとき、回転状態のプラズマ電極30によりプラズマを発生させてワークWの被加工面に照射することができる。したがって、ワークWの被加工面に対し、プラズマの照射によって改質やエッチング(ワークWの材質、反応ガスの種類によって両方もしくは一方となる)を行いながら、加工を行うことができるため、加工レートを向上させることが可能となる。特許文献1に例示されるようなプラズマ処理工程と加工工程とを別個に配置された機構で交互に行う装置と比べて、本実施形態によれば、それらの工程を同時に、すなわち、ワークWの配置替え等を必要とせず、連続的な処理によって実施することができるため、短時間での加工が可能となり、生産効率の向上が可能となる。
【0023】
本実施形態に係るワーク加工装置1は、各機構の移動(回転)によって相対的に位置が変わる全てのワークWの被加工面の全領域に対して、スリット部36が通過可能で且つ加工パッド40が摺接可能となる外径および配置で、複数個(一例として、2個)の加工ヘッド14が配設される構成としている。これによれば、加工レートを向上させることができ、短時間での加工が可能となる。ただし、加工ヘッド14の配設数は、上記に限定されるものではなく、
図6(
図2に対応する位置の断面図)に示すように3個(もしくはそれ以上)が配設される構成としてもよく、あるいは、1個が配設される構成(不図示)としてもよい。
【0024】
また、本実施形態に係るワーク加工装置1は、スラリーの供給を行うスラリー供給装置を備える構成としている(不図示)。これによれば、ワークWの材質や加工条件に応じて、加工工程におけるスラリーの供給(非供給を含む)について適宜、設定することができる。
【0025】
次に、加工ヘッド14に設けられるプラズマ電極30の実施例について詳しく説明する。本実施形態に係るプラズマ電極30は、底面視が円形状に形成され、径方向中心に設けられる環状(円筒状)もしくは円柱状の中心電極31と、中心電極31に対して径方向外方に設けられる環状(円筒状)の外周電極32とを備えて構成されている。前述の通り、境界位置に設けられる空間部であるスリット部36がプラズマ発生空間として構成される。したがって、スリット部36を介して隣接する電極同士の極性が異なるように構成される。一例として、
図3の拡大図(断面図)および
図4の斜視図に示すように、中心電極31に対して、1個の外周電極32を備えた構成となっている。なお、中心電極31および外周電極32の構成材料は特に限定されないが、導電性材料を用いて形成されている。
【0026】
また、変形例として、
図7(
図3に対応する位置の断面図)に示すように、中心電極31に対して、複数個(個数は特に限定されないが、
図7は2個の場合の例である)の外周電極32(図中の32A、32B)を備えた構成としてもよい。その場合、隣接する外周電極32同士の境界位置にはそれぞれスリット部36が設けられる。これによれば、スリット部36(図中の36A、36B)の個数を多く設定することができるため、加工ヘッド14における1回転あたりのプラズマ発生回数(照射量)を増加させることができ、ワークWにおける被加工面の改質作用やエッチング作用を高め、加工レートおよび生産効率をより一層、向上させることが可能となる。
【0027】
なお、外周電極32の個数に関わらず、その底面に設けられる加工パッド40は、
図3に示すように、プラズマ電極30(より具体的には、中心電極31および外周電極32)の外周面(ここでは、側面)に対して外方(側面と交わる方向)に向かって所定長さ延出して上方に傾斜する延出部40aを有する構成であることが好適である。これによれば、回転状態の加工ヘッド14の底面がワークWに対して押圧状態で摺接する際に、ワークWのエッジを延出部40aの下に潜り込ませる作用が得られるため、加工パッド40が当該エッジに当接して剥がれてしまうことを防止できる。
【0028】
次に、プラズマ電極30の変形例について説明する。具体的には、
図8(
図3に対応する位置の断面図)に示すように、スリット部36に外周電極32の電極面と並行する環状(円筒状)のプレート状(もしくはブロック状)である追加電極34が設けられている。すなわち、平面視において、当該追加電極34によってスリット部36が径方向に分割された空間となり、それぞれの空間がプラズマ発生空間として構成されている。なお、追加電極34の構成材料は特に限定されないが、導電性材料を用いて形成されている。
【0029】
このような構成によれば、加工ヘッド14において、外周電極32の配設数を増加させることなく、スリット部36の配設数、すなわち、プラズマ発生空間を増加させることができるため、加工ヘッド14における1回転あたりのプラズマ発生回数(照射量)を増加させることができ、ワークWにおける被加工面の改質作用やエッチング作用を高め、加工レートおよび生産効率をより一層、向上させることが可能となる。
【0030】
また、プラズマ電極30の別の変形例について説明する。具体的には、
図9(
図3に対応する位置の断面図)に示すように、スリット部36を介して対向する2つの側面31a、32aの少なくとも一方(
図9は、両方に設ける場合の構成例である)における下端位置に、スリット部36の離間寸法(径方向寸法)を小さくする方向に突出する突出部38が設けられている。なお、
図9は対向する中心電極31と外周電極32との場合の構成例であるが、外周電極32が複数個設けられる場合における、対向する外周電極32同士の場合の構成例も同様となる。
【0031】
このような構成によれば、プラズマ電極30における突出部38の位置、すなわち、ワークWにより近い下端位置において、プラズマを集中的に発生させることができる。したがって、ワークWに作用するプラズマ照射量を増加させることができるため、ワークWにおける被加工面の改質作用やエッチング作用を高め、加工レートおよび生産効率をより一層、向上させることが可能となる。
【0032】
ここで、本発明者らは、上記効果をより高めることができるプラズマを発生させるために、突出部38の構成についてさらに研究を行った。一例として、突出部38の構成(
図14参照、ただし図の簡素化のため加工パッド40は不図示)が異なる試料(1)~(5)を用いて行った実験結果を表1および
図15に示す。表1は、プラズマを安定的に発生させるために必要な電力[W]の測定結果を示すものである。一方、
図15は、プラズマ電極30の下面から所定距離(一例として、2mmに設定)離間した位置におけるプラズマの発生強度を、株式会社サクラクレパス製プラズマインジケーター(登録商標)を用いて可視化したものである(色の濃い領域が高い(強い)強度を示す)。
【0033】
【0034】
表1に示すように、突出部38を有する構成(試料(2)~(5))が、突出部38を有しない構成(試料(1))よりも、プラズマを安定的に発生させるために必要な電力を低減できる、すなわち、省エネルギー化を図ることができる結果が得られた。
【0035】
また、
図15A~
図15Eに示すように、突出部38がプラズマ電極30の2つの側面31a、32aの両方に同じ径方向寸法(略同じ寸法を含む)で設けられる構成(試料(4)、(5))が、一方にのみ設けられる構成(試料(2)、(3))よりも、高い(強い)強度のプラズマを発生させることができる、すなわち、ワークWに作用するプラズマ照射量を増加させることができる結果が得られた。併せて、2つの側面31a、32aの径方向の間隔寸法cが、2つの突出部38A、38Bの径方向の間隔寸法aに対して5倍以上となるように構成することが上記の効果を確実に得るために好適であることも確認された。
【0036】
さらに、プラズマ電極30の別の変形例について説明する。具体的には、
図16(
図3に対応する位置の断面図)に示すように、スリット部36を介して対向する2つの側面31a、32aに関して、突出部38が設けられていない領域(この場合、軸方向領域)が絶縁材料を用いて形成された構成を備えている。これによれば、突出部38が設けられていない領域への放電を抑制することができるため、2つの突出部38A、38B間において、より集中的にプラズマを発生させることができる。したがって、ワークWに作用するプラズマ照射量を増加させることができる。
【0037】
上記の絶縁材料の例として、セラミックス、耐熱ガラス、石英、樹脂等が用いられる。ここで、当該樹脂の例として、プラズマ照射時間が相対的に短時間に設定される場合には、POM(ポリアセタール樹脂)、PVC(ポリ塩化ビニル樹脂)、超高分子ポリエチレン樹脂、フェノール樹脂等が好適に用いられる。一方、プラズマ照射時間が相対的に短時間に設定される場合には、耐熱性が必要となり、エポキシ樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等が好適に用いられる。なお、材料の選定や径方向厚さの設定に際しては、加工条件に対する寸法安定性、耐薬品性等が考慮される。
【0038】
(第二の実施形態)
続いて、本発明の第二の実施形態に係るワーク加工装置1について説明する。ここで、
図10は、本実施形態に係るワーク加工装置1の例を示す正面断面図(概略図)である。また、
図11は、
図10におけるXI-XI線断面図(概略図)である。
【0039】
本実施形態に係るワーク加工装置1は、前述の第一の実施形態と基本的な構成は同様であるが、特に、保持プレート20を回転させる機構等において相違点を有する。以下、当該相違点を中心に本実施形態について説明する。なお、前述の
図7~
図9に示す変形例についても、本実施形態に対して同様に適用し得る。
【0040】
具体的に、本実施形態においては、保持プレート20がキャリアを介さずに、回転盤12の中心軸と軸心を一致させて、当該回転盤12上に保持(固定)される構成となっている。すなわち、回転盤12が回転(自転)されることによって(矢印A方向)、保持プレート20が回転(自転)される構成となっている(矢印C方向)。なお、加工ヘッド14に関しては第一の実施形態と同様に回転(自転)される構成となっている(矢印B方向)。
【0041】
前述の第一の実施形態と比較して、回転盤12上に保持される保持プレート20が1つのみとなるため、同時に加工できるワークWの枚数は減少するものの、装置の大幅な小型化を図ることが可能となる。
【0042】
一方、加工ヘッド14に関しては、複数個(一例として、2個)が配設される構成としている。ただし、この構成に限定されるものではなく、変形例として、加工ヘッド14が3個以上配設される構成(不図示)としてもよい。
【0043】
さらに別の変形例として、
図12、
図13(いずれも
図11に対応する位置の断面図)に示すように1個の加工ヘッド14が回転盤12に対して軸心を偏心させて配設される構成としてもよい。
図12は、保持プレート20の保持面(上面)に保持プレート20の半径よりも直径が小径のワークWを複数枚保持(貼付)させて加工を行う場合の例である。一方、
図13は、保持プレート20の保持面(上面)に保持プレート20の半径よりも直径が大径のワークWを1枚保持(貼付)させて加工を行う場合の例である。いずれの場合においても、この構成によれば、1個の加工ヘッド14のみでワークWの全面を加工することが可能となる。したがって、複数個の加工ヘッド14を設ける場合と比較して、簡素な装置構成とすることができるため、装置コストの低減が可能となる。
【0044】
なお、その他の作用効果については、前述の第一の実施形態と同様であるため、繰り返しの説明を省略する。
【0045】
以上、説明した通り、本発明によれば、難加工材料を用いて形成されたワークであっても、被加工面の改質やエッチングを行いながら加工を行うことができるため、加工レートを高めることが可能となる。また、プラズマ処理工程と加工工程とを同時に、すなわち機構間でワークの配置替えをせずに連続的な処理で行うことができるため、短時間で加工を行うことができ、生産効率の向上が可能となる。
【0046】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、様々な実施形態が考えられる。具体的に、保持プレートの回転機構に関し、自転のみ、公転のみ、自転且つ公転、もしくは、非回転のいずれかから選択される構成とし、加工ヘッドの回転機構に関し、自転のみ、公転のみ、自転且つ公転、もしくは、非回転のいずれかから選択される構成とし、それらの組合せ数だけ構成例が考えられる(ただし、保持プレートが非回転、且つ、加工ヘッドが非回転となる組合せを除く)。これらの構成例によっても、上記と同種の効果を得ることができる。
【0047】
ちなみに、前述の第一の実施形態は、保持プレートの回転機構が自転且つ公転を行う構成であり、加工ヘッドの回転機構が自転を行う構成である場合に該当する。また、前述の第二の実施形態は、保持プレートの回転機構が自転を行う構成であり、加工ヘッドの回転機構が自転を行う構成である場合に該当する。特に、これらの実施形態の場合に、加工レートおよび生産効率を向上させる効果が高くなる。
【0048】
なお、加工を行うワークに関しても、円板状のウェハを例に挙げて説明を行ったが、これに限定されるものではなく、他の平板状(特に円板状)のワークに対しても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ワーク加工装置
12 回転盤
14 加工ヘッド
20 保持プレート
22 キャリア
30 プラズマ電極
31 中心電極
32、32A、32B 外周電極
34 追加電極
36、36A、36B スリット部
38 突出部
40 加工パッド
40a 延出部
W ワーク