(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145495
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ハニカム構造体および該ハニカム構造体を用いた電気加熱型担体
(51)【国際特許分類】
B01J 27/224 20060101AFI20220926BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20220926BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20220926BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20220926BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B01J27/224 A
B01J35/02 G ZAB
B01J35/04 301F
F01N3/24 L
F01N3/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001686
(22)【出願日】2022-01-07
(31)【優先権主張番号】P 2021045377
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 真
(72)【発明者】
【氏名】井上 崇行
(72)【発明者】
【氏名】山田 昂平
【テーマコード(参考)】
3G091
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091BA02
3G091BA10
3G091BA11
3G091BA25
3G091CA03
3G091FB03
3G091FC08
3G091GA06
3G091GA07
3G091GA09
3G091GA16
3G091GB10X
3G091GB13X
3G091GB17X
3G091HA05
4G169AA01
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BB01A
4G169BB01B
4G169BC69A
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD05A
4G169BD05B
4G169CA09
4G169DA06
4G169EA18
4G169EB15X
4G169EC30
4G169EE03
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】高温環境下における耐酸化性と耐熱衝撃性とのバランスに優れたハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態によるハニカム構造体は、第1端面から第2端面まで延びて流体の流路を形成するセルを規定する隔壁と、外周壁と、を有し、隔壁および外周壁は、炭化珪素と珪素とを含有するセラミックスで構成されている。1つの実施形態においては、珪素表面には、厚み0.1μm~5.0μmの酸化膜が形成されている。別の実施形態においては、ハニカム構造体は1.0質量%以上のクリストバライトを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端面から第2端面まで延びて流体の流路を形成するセルを規定する隔壁と、外周壁と、を有し、
該隔壁および該外周壁が、炭化珪素と珪素とを含有するセラミックスで構成されており、
珪素表面に厚み0.1μm~5.0μmの酸化膜が形成されている、
ハニカム構造体。
【請求項2】
第1端面から第2端面まで延びて流体の流路を形成するセルを規定する隔壁と、外周壁と、を有し、
該隔壁および該外周壁が、炭化珪素と珪素とを含有するセラミックスで構成されており、
1.0質量%以上のクリストバライトを含む、
ハニカム構造体。
【請求項3】
前記ハニカム構造体の熱膨張率が4.00ppm/K~5.30ppm/Kである、請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記ハニカム構造体の熱膨張率が4.00ppm/K~4.60ppm/Kである、請求項3に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記ハニカム構造体の熱膨張率が4.20ppm/K~4.35ppm/Kである、請求項4に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記酸化膜の厚みが0.1μm~0.2μmであり、および、前記ハニカム構造体の熱膨張率が4.20ppm/K~4.35ppm/Kである、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記クリストバライトの含有量が1.5質量%~3.5質量%であり、および、前記ハニカム構造体の熱膨張率が4.20ppm/K~4.35ppm/Kである、請求項2に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のハニカム構造体と、
該ハニカム構造体の中心軸を挟んで、前記外周壁の外面上に配設された一対の電極層と、
該一対の電極層上に接続された一対の金属端子と、
を有する、電気加熱型担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体および該ハニカム構造体を用いた電気加熱型担体に関する。
【背景技術】
【0002】
コージェライトや炭化珪素を材料とするハニカム構造体に触媒を担持したものが、自動車エンジンから排出された排ガス中の有害物質の処理に用いられている。このようなハニカム構造体の代表例としては、第1端面から第2端面まで延びて排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有する柱状のハニカム構造体が挙げられる。ハニカム構造体に担持した触媒によって排ガスを処理する場合、触媒を所定の温度まで昇温する必要があるところ、エンジン始動時には触媒温度が低いため、排ガスが十分に浄化されないという問題があった。このような問題を解決するために、導電性セラミックで構成されたハニカム構造体に電極を配設し、通電によりハニカム構造体自体を発熱させることにより、ハニカム構造体に担持された触媒をエンジン始動前またはエンジン始動時に活性温度まで昇温する電気加熱触媒(EHC)と呼ばれるシステムの開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EHCは、使用時(自動車の走行時)に高温の酸化雰囲気に曝されて導電経路の遮断および/または導電体の減少が生じ、抵抗上昇が大きくなる場合がある。また、EHCは、高温における耐熱衝撃性が不十分である場合がある。
本発明の主たる目的は、高温環境下における耐酸化性と耐熱衝撃性とのバランスに優れたハニカム構造体、およびこのようなハニカム構造体を用いた電気加熱型担体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によるハニカム構造体は、第1端面から第2端面まで延びて流体の流路を形成するセルを規定する隔壁と、外周壁と、を有し、該隔壁および該外周壁は、炭化珪素と珪素とを含有するセラミックスで構成されている。1つの実施形態においては、珪素表面には、厚み0.1μm~5.0μmの酸化膜が形成されている。別の実施形態においては、ハニカム構造体は1.0質量%以上のクリストバライトを含む。
上記ハニカム構造体の熱膨張率は、例えば4.00ppm/K~5.30ppm/Kであり、また例えば4.00ppm/K~4.60ppm/Kであり、また例えば4.20ppm/K~4.35ppm/Kである。
1つの実施形態においては、上記酸化膜の厚みは0.1μm~0.2μmであり、および、上記ハニカム構造体の熱膨張率は4.20ppm/K~4.35ppm/Kである。
1つの実施形態においては、上記クリストバライトの含有量は1.5質量%~3.5質量%であり、および、上記ハニカム構造体の熱膨張率は4.20ppm/K~4.35ppm/Kである。
本発明の別の局面によれば、電気加熱型担体が提供される。当該電気加熱型担体は、上記のハニカム構造体と、該ハニカム構造体の中心軸を挟んで、上記外周壁の外面上に配設された一対の電極層と、該一対の電極層上に接続された一対の金属端子と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、高温環境下における耐酸化性と耐熱衝撃性とのバランスに優れたハニカム構造体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態によるハニカム構造体を含む電気加熱型担体の概略斜視図である。
【
図2】
図1の電気加熱型担体の排ガスの流路方向に平行な方向の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
図1は、本発明の1つの実施形態によるハニカム構造体を含む電気加熱型担体の概略斜視図であり、
図2は、
図1の電気加熱型担体の排ガスの流路方向に平行な方向の概略断面図である。まず、ハニカム構造体について説明し、電気加熱型担体についてはB項で後述する。
【0010】
A.ハニカム構造体
A-1.ハニカム構造体の構成
図示例のハニカム構造体100は、第1端面10aから第2端面10bまで延びて流体の流路を形成するセル20を規定する隔壁30と、外周壁40と、を有する。なお、
図2において、流体は、紙面の左右のいずれの方向にも流れることができる。流体としては、目的に応じた任意の適切な液体または気体が挙げられる。例えば、ハニカム構造体が後述する電気加熱型担体に用いられる場合には、流体は好ましくは排ガスである。
【0011】
隔壁30および外周壁40は、炭化珪素および珪素(以下、炭化珪素-珪素複合材と称する場合がある)を含有するセラミックスで構成されている。セラミックスは、炭化珪素および珪素を合計で例えば90質量%以上、また例えば95質量%以上含有する。このような構成であれば、ハニカム構造体の25℃における体積抵抗率を所定の範囲(例えば0.1Ω・cm~200Ω・cm、また例えば1Ω・cm~200Ω・cm、さらに例えば10Ω・cm~100Ω・cm)とすることができる。その結果、例えば200V以上の高電圧電源によりハニカム構造体に通電した場合であっても電流が過剰に流れることを抑制でき、かつ、適切な電流が流れることにより所望の発熱を実現することができる。セラミックスには、炭化珪素-珪素複合材以外の物質が含まれていてもよい。このような物質としては、例えばアルミニウム、ストロンチウムが挙げられる。
【0012】
炭化珪素-珪素複合材は、代表的には、骨材としての炭化珪素粒子と、炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素と、を含む。炭化珪素-珪素複合材は、例えば、複数の炭化珪素粒子が炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして珪素により結合されている。すなわち、炭化珪素-珪素複合材を含む隔壁30および外周壁40は、例えば多孔体であり得る。
【0013】
本発明の実施形態においては、珪素表面には、厚み0.1μm~5.0μmの酸化膜が形成されている。珪素表面にこのような酸化膜を形成することにより、高温環境下における耐酸化性と耐熱衝撃性とのバランスに優れたハニカム構造体を実現することができる。より詳細には、高温酸化雰囲気下におけるハニカム構造体の抵抗上昇を抑制することができ、かつ、ハニカム構造体の熱膨張率(熱膨張係数)を小さくすることができる。酸化膜の厚みは、好ましくは0.1μm~2.0μmであり、より好ましくは0.1μm~1.0μmであり、さらに好ましくは0.1μm~0.5μmであり、特に好ましくは0.1μm~0.2μmである。酸化膜の厚みをこのような範囲とすることにより、高温酸化雰囲気下における抵抗上昇をさらに抑制し、かつ、熱膨張率をさらに小さくすることができる。なお、酸化膜の厚みは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)の画像から求めることができる。
【0014】
酸化膜は、例えば、ハニカム構造体を加熱処理することにより形成され得る(なお、後述するように、当該加熱処理により所定量以上のクリストバライトも形成することができる)。加熱処理における加熱温度は、例えば1300℃以下であり、また例えば1200℃以下であり、また例えば1150℃以下であり、また例えば1100℃以下であり、また例えば1050℃以下であり、また例えば1000℃以下であり、また例えば950℃以下である。一方、加熱温度は、例えば750℃以上であり、また例えば800℃以上である。加熱温度がこのような範囲であれば、上記所定の厚みの酸化膜を形成することができる。結果として、高温酸化雰囲気下におけるハニカム構造体の抵抗上昇を抑制することができ、かつ、ハニカム構造体の熱膨張率を小さくすることができる。好ましくは、加熱温度を1150℃以下とすることにより、このような効果がより顕著なものとなる。加熱時間は、加熱温度に応じて変化し得る。例えば加熱温度が1200℃以上である場合には、加熱時間は、好ましくは20分~100時間であり、より好ましくは30分~80時間であり、さらに好ましくは30分~40時間であり、特に好ましくは5時間~10時間である。例えば加熱温度が1150℃以下である場合には、加熱時間は、好ましくは1時間以上であり、より好ましくは5時間以上であり、さらに好ましくは10時間以上であり、特に好ましくは20時間~70時間である。加熱時間が長すぎると、熱膨張率が高くなり、耐熱衝撃性が低下するという問題が生じる場合がある。加熱時間が短すぎると、酸化膜(および/または後述のクリストバライト)が十分に形成されない場合がある。加熱処理は、大気雰囲気下で行ってもよく、水蒸気雰囲気下(例えば、加熱処理時に、窒素ベースで水蒸気量を10体積%~30体積%に調整したガスを供給することを含む)で行ってもよい。同一の加熱条件であれば、加熱処理を水蒸気雰囲気下で行うことにより、より好ましい厚みの酸化膜(および/または後述のより好ましい量のクリストバライト)を形成することができ、抵抗上昇抑制効果および熱膨張率を小さくする効果をさらに促進することができる。
【0015】
酸化膜は、実質的には、酸化珪素で構成されている。酸化膜は、上記のとおり結合材としての珪素表面に形成されていればよい。したがって、酸化膜は、珪素表面に加えて、炭化珪素粒子表面に形成されていてもよく、隔壁および外周壁の構造内の他の部分に形成されていてもよい。実質的には、高温環境下での珪素の酸化が主となって、抵抗上昇の原因となるため、予めハニカム構造体の珪素表面に所定の酸化膜を形成することで、抵抗上昇抑制効果および熱膨張率を小さくする効果を効率的に得ることができる。
【0016】
本発明の実施形態においては、さらに/あるいは、ハニカム構造体は、ハニカム構造体(実質的には、隔壁および外周壁)の全質量に対して1.0質量%以上のクリストバライトを含む。ハニカム構造体がクリストバライトを含むことにより、珪素表面に酸化膜が形成される場合と同様に、高温環境下における耐酸化性と耐熱衝撃性とのバランスに優れたハニカム構造体を実現することができる。より詳細には、高温酸化雰囲気下におけるハニカム構造体の抵抗上昇を抑制することができ、かつ、ハニカム構造体の熱膨張率を小さくすることができる。クリストバライトの含有量は、好ましくは1.0質量%~7.5質量%であり、より好ましくは1.0質量%~6.0質量%であり、さらに好ましくは1.2質量%~4.0質量%であり、特に好ましくは1.5質量%~3.5質量%である。クリストバライトの含有量をこのような範囲とすることにより、高温酸化雰囲気下における抵抗上昇をさらに抑制し、かつ、熱膨張率をさらに小さくすることができる。クリストバライトは、代表的には、上記の加熱処理により形成される酸化膜中に形成され得る。実質的には、高温環境下での珪素の酸化が主となって、抵抗上昇の原因となるため、予めハニカム構造体の珪素表面にクリストバライトを含む酸化膜を形成することで、抵抗上昇抑制効果および熱膨張率を小さくする効果を効率的に得ることができる。クリストバライトの含有量は、例えばX線回折法により測定され得る。
【0017】
ハニカム構造体の熱膨張率は、例えば4.00ppm/K~5.30ppm/Kであり、好ましくは4.00ppm/K~4.75ppm/Kであり、より好ましくは4.00ppm/K~4.60ppm/Kであり、さらに好ましくは4.10ppm/K~4.50ppm/Kであり、特に好ましくは4.20ppm/K~4.35ppm/Kである。本発明の実施形態によれば、珪素表面に酸化膜を形成することにより、および/または、ハニカム構造体が所定量以上のクリストバライトを含有することにより、このような熱膨張率を実現することができる。その結果、優れた耐熱衝撃性を有するハニカム構造体を実現することができる。例えば、加熱冷却耐久試験(825℃以上の指定温度と100℃の環境下に置き換える)において、耐熱衝撃性が高いハニカム構造体を実現することができる。
【0018】
ハニカム構造体の強度/ヤング率比σ/Eは、好ましくは0.40以上であり、より好ましくは0.45~0.90であり、さらに好ましくは0.65~0.85である。本発明の実施形態によれば、珪素表面に酸化膜を形成することにより、および/または、ハニカム構造体が所定量以上のクリストバライトを含有することにより、このような強度/ヤング率比σ/Eを実現することができる。その結果、優れた耐熱衝撃性を有するハニカム構造体を実現することができる。なお、ヤング率EはJIS R1602に準拠して測定され得、強度σは代表的にはJIS R1601に準拠して測定され得る4点曲げ強度である。
【0019】
以下、ハニカム構造体の代表的な構成について説明する。
【0020】
ハニカム構造体の形状は目的に応じて適切に設計され得る。図示例のハニカム構造体100は円柱状(セルの延びる方向に直交する方向の断面形状が円形)であるが、ハニカム構造体は、断面形状が例えば楕円形または多角形(例えば、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形)の柱状であってもよい。ハニカム構造体の長さは、目的に応じて適切に設定され得る。ハニカム構造体の長さは、例えば5mm~250mmであり得、また例えば10mm~150mmであり得、また例えば20mm~100mmであり得る。ハニカム構造体の直径は、目的に応じて適切に設定され得る。ハニカム構造体の直径は、例えば20mm~200mmであり得、また例えば30mm~100mmであり得る。なお、ハニカム構造体の断面形状が円形でない場合には、ハニカム構造体の断面形状(例えば、多角形)に内接する最大内接円の直径をハニカム構造体の直径とすることができる。
【0021】
隔壁30および外周壁40は、上記のとおり、炭化珪素-珪素複合材を含む多孔体であり得る。炭化珪素-珪素複合材における珪素の含有比率は、好ましくは10質量%~40質量%であり、より好ましくは15質量%~35質量%である。珪素の含有比率が10質量%以上であれば、ハニカム構造体の強度が十分なものとなる。珪素の含有比率が40質量%以下であれば、ハニカム構造体の焼成時に精度よく形状を保持することができる。
【0022】
炭化珪素粒子の平均粒子径は、好ましくは3μm~50μmであり、より好ましくは3μm~40μmであり、さらに好ましくは10μm~35μmである。炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であれば、ハニカム構造体の体積抵抗率を上記のような適切な範囲とすることができる。炭化珪素粒子の平均粒子径は、例えばレーザー回折法により測定され得る。
【0023】
隔壁30および外周壁40の平均細孔径は、好ましくは2μm~20μmであり、より好ましくは2μm~15μmであり、さらに好ましくは4μm~8μmである。隔壁の平均細孔径がこのような範囲であれば、体積抵抗率を上記の適切な範囲とすることができる。平均細孔径は、例えば水銀ポロシメータにより測定され得る。
【0024】
隔壁30および外周壁40の気孔率は、好ましくは30%~60%であり、より好ましくは35%~45%である。気孔率が30%以上であれば、ハニカム構造体の焼成時の変形を十分に抑制することができる。気孔率が60%以下であれば、ハニカム構造体の強度が十分なものとなる。気孔率は、例えば水銀ポロシメータにより測定され得る。
【0025】
隔壁30の厚みは、目的に応じて適切に設定され得る。隔壁30の厚みは、例えば50μm~0.3mmであり、また例えば150μm~250μmであり得る。隔壁の厚みがこのような範囲であれば、ハニカム構造体の機械的強度を十分なものとすることができ、かつ、開口面積(断面におけるセルの総面積)を十分なものとすることができ、ハニカム構造体を触媒担体として用いた場合に排ガスを流した時の圧力損失を抑制することができる。
【0026】
隔壁30の密度は、目的に応じて適切に設定され得る。隔壁30の密度は、例えば0.5g/cm3~5.0g/cm3であり得る。隔壁の密度がこのような範囲であれば、ハニカム構造体を軽量化することができ、かつ、機械的強度を十分なものとすることができる。密度は、例えばアルキメデス法により測定され得る。
【0027】
外周壁40の厚みは、1つの実施形態においては、隔壁30の厚みより大きい。このような構成であれば、外力(例えば、外部からの衝撃、排ガスと外部との温度差による熱応力)による外周壁の破壊、割れ、クラック等を抑制することができる。外周壁40の厚みは、例えば0.05mm以上であり、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.15mm以上である。但し、外周壁を厚くしすぎると熱容量が増加し、外周壁の内周側と内周側の隔壁との間で温度差が大きくなり、耐熱衝撃性が低下することから、外周壁の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、さらに好ましくは0.5mm以下である。
【0028】
セル20は、セルの延びる方向に直交する方向において、任意の適切な断面形状を有する。図示例においては、セルを規定する隔壁30が互いに直交し、外周壁40と接する部分を除いて四角形(正方形)の断面形状を有するセル20が規定される。セル20の断面形状は、正方形以外に、三角形、五角形、六角形以上の多角形などの形状としてもよい。セルの断面形状は、好ましくは四角形または六角形である。このような構成であれば、排ガスを流したときの圧力損失が小さく、浄化性能が優れるという利点がある。
【0029】
セル20の延びる方向に直交する方向におけるセル密度(すなわち、単位面積当たりのセル20の数)は、目的に応じて適切に設定され得る。セル密度は、好ましくは4セル/cm2~150セル/cm2であり、より好ましくは50セル/cm2~150セル/cm2であり、さらに好ましくは70セル/cm2~100セル/cm2である。セル密度がこのような範囲であれば、ハニカム構造体の強度および有効GSA(幾何学的表面積、すなわち、触媒担持面積)を十分に確保するとともに、排ガスを流した際の圧力損失を抑制することができる。
【0030】
A-2.ハニカム構造体の製造方法
ハニカム構造体は、任意の適切な方法により製造され得る。以下、代表例について説明する。
【0031】
まず、炭化珪素粉末に、金属珪素粉末、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を調製する。金属珪素粉末は、上記A-1項に記載のとおり、炭化珪素粉末の質量と金属珪素粉末の質量との合計に対して好ましくは10質量%~40質量%となるように配合され得る。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、上記A-1項に記載のとおり、好ましくは3μm~50μmである。金属珪素粉末における金属珪素粒子の平均粒子径は、好ましくは2μm~35μmである。金属珪素粒子の平均粒子径が小さすぎると、得られるハニカム構造体の体積抵抗率が過度に小さくなる場合がある。金属珪素粒子の平均粒子径が大きすぎると、得られるハニカム構造体の体積抵抗率が過度に大きくなる場合がある。炭化珪素粉末および金属珪素粉末の合計含有量は、得られるハニカム構造体に所望される構成に応じて適切に設定され得る。当該合計含有量は、成形原料全体の質量に対して好ましくは30質量%~78質量%である。なお、金属珪素粒子の平均粒子径は、例えばレーザー回折法により測定され得る。
【0032】
バインダとしては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールが挙げられる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量もまた、得られるハニカム構造体に所望される構成に応じて適切に設定され得る。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、好ましくは2質量部~10質量部である。
【0033】
界面活性剤としては、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコールが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。界面活性剤の含有量もまた、得られるハニカム構造体に所望される構成に応じて適切に設定され得る。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、好ましくは0.1質量部~2質量部である。
【0034】
造孔材としては、焼成により消失して気孔を形成する限りにおいて任意の適切な材料を用いることができる。造孔材としては、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲルが挙げられる。造孔材の含有量もまた、得られるハニカム構造体に所望される構成に応じて適切に設定され得る。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、好ましくは0.5質量部~10質量部である。造孔材の平均粒子径は、好ましくは10μm~30μmである。造孔材の平均粒子径が小さすぎると、気孔を十分に形成できない場合がある。造孔材の平均粒子径が大きすぎると、成形時に成形原料が口金に詰まる場合がある。なお、造孔材の平均粒子径は、例えばレーザー回折法により測定され得る。
【0035】
水の含有量もまた、得られるハニカム構造体に所望される構成に応じて適切に設定され得る。水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、好ましくは20質量部~60質量部である。
【0036】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。混練手段としては、任意の適切な装置・機構が採用され得る。具体例としては、ニーダー、真空土練機が挙げられる。
【0037】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を形成する。押出成形に際しては、ハニカム構造体の所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等に対応した構成を有する口金を用いることができる。口金の材質としては、例えば、摩耗し難い超硬合金を用いることができる。ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等(すなわち、口金の構成)は、後述する乾燥および焼成における収縮を考慮し、得られるハニカム構造体の所望の構成に対応して適切に設定することができる。
【0038】
次に、ハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を得る。乾燥方法としては、任意の適切な方法を用いることができる。具体例としては、マイクロ波加熱乾燥、誘電加熱乾燥(例えば、高周波誘電加熱乾燥)等の電磁波加熱方式;熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式;が挙げられる。1つの実施形態においては、2段階の乾燥が行われ得る。2段階の乾燥は、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることを含む。このような2段階の乾燥によれば、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる。より詳細には、2段階の乾燥は、電磁波加熱方式により、乾燥前のハニカム成形体の水分量に対して30質量%~99質量%の水分を除去した後、外部加熱方式により、ハニカム乾燥体の水分量を3質量%以下とすることを含む。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0039】
次に、ハニカム乾燥体を焼成してハニカム焼成体を得る。1つの実施形態においては、焼成の前に仮焼成が行われ得る。仮焼成を行うことにより、バインダ等を良好に除去することができる。仮焼成は、例えば、大気雰囲気において、400℃~500℃で0.5時間~20時間行われ得る。焼成は、例えば、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400℃~1500℃で1時間~20時間行われ得る。仮焼成および焼成は、任意の適切な手段を用いて行われ得る。仮焼成および焼成は、例えば、電気炉、ガス炉を用いて行われ得る。
【0040】
最後に、ハニカム焼成体を加熱処理することにより、珪素表面に酸化膜を形成し、および/または、構造内にクリストバライトを形成し、ハニカム構造体を得る。加熱処理の条件は、上記A-1項に記載のとおりである。
【0041】
B.電気加熱型担体
図示例の電気加熱型担体200は、ハニカム構造体100と、ハニカム構造体100、100の外周上に(代表的には、ハニカム構造体の中心軸を挟んで対向するようにして)配設された一対の電極層120、120と、を備える。電極層120、120には、それぞれ金属端子(図示せず)が接続されている。一方の金属端子は電源(例えば、バッテリ)のプラス極に接続され、他方の金属端子は(例えば、バッテリ)のマイナス極に接続されている。
【0042】
電極層は、ハニカム構造体100の両端面間の例えば80%以上の長さに亘って、好ましくは90%以上の長さに亘って、より好ましくは全長に亘って延びている。このような構成であれば、電極層の軸方向へ電流が広がりやすいという利点がある。
【0043】
電極層の厚みは、0.01mm~5mmであることが好ましく、0.01mm~3mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより均一発熱性を高めることができる。電極層の厚みは、厚みを測定しようとする箇所をセルの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、電極層の外面の当該測定箇所における接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0044】
電極層の体積抵抗率をハニカム構造体の体積抵抗率より低くすることにより、電極層に優先的に電気が流れやすくなり、通電時に電気がセルの流路方向及び周方向に広がりやすくなる。電極層の体積抵抗率は、ハニカム構造体の体積抵抗率の例えば1/200以上であり、1/10以下であることが好ましく、1/100以上、1/20以下であることがより好ましい。電極層の体積抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値とする。
【0045】
電極層の材質は、導電性セラミックス、金属、又は金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)を使用することができる。金属としては、例えばCr、Fe、Co、Ni、Si又はTiの単体金属又はこれらの金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金が挙げられる。導電性セラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)が挙げられ、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられる。金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)の具体例としては、金属珪素と炭化珪素の複合材、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と金属珪素と炭化珪素の複合材、更には上記の一種又は二種以上の金属に熱膨張低減の観点から、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素及び窒化アルミ等の絶縁性セラミックスを一種又は二種以上添加した複合材が挙げられる。
【0046】
金属端子は、一方の金属端子が、他方の金属端子に対して、ハニカム構造体の中心軸を挟んで対向するように配設される一対の金属端子であってもよい。金属端子は、電極層を介して電圧を印加すると通電してジュール熱によりハニカム構造体を発熱させることが可能である。このため、電気加熱型担体はヒーターとしても好適に用いることができる。印加する電圧は、目的等に応じて適切に設定され得る。印加する電圧は、12V~900Vが好ましく、48V~600Vが更に好ましい。
【0047】
金属端子の材質としては、金属であれば特段の制約はなく、単体金属及び合金等を採用することもできる。耐食性、電気抵抗率及び線膨張率の観点から、例えば、Cr、Fe、Co、Ni及びTiよりなる群から選択される少なくとも一種を含む合金とすることが好ましく、ステンレス鋼及びFe-Ni合金がより好ましい。
【0048】
電気加熱型担体200においては、代表的には、触媒がハニカム構造体100の触媒が隔壁30に担持され得る。隔壁に触媒を担持させることにより、セル20に排ガスを流す場合に排ガス中のCO、NOx、炭化水素などを触媒反応によって無害な物質にすることが可能となる。触媒は、好ましくは、貴金属(例えば、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、バリウム、およびこれらの組み合わせを含有し得る。これらの元素は、金属単体、金属酸化物、またはそれ以外の金属化合物として含有され得る。触媒の担持量は、例えば0.1g/L~400g/Lであり得る。
【0049】
電気加熱型担体200においてハニカム構造体100に電圧を印加すると通電し、ジュール熱によりハニカム構造体を発熱させることができる。これにより、ハニカム構造体(実質的には、隔壁)に担持された触媒をエンジン始動前またはエンジン始動時に活性温度まで昇温することができる。その結果、エンジン始動時においても排ガスを十分に処理(代表的には、浄化)することができる。本発明の実施形態によれば、上記A項に記載のとおり、高温酸化雰囲気下におけるハニカム構造体の抵抗上昇を抑制することができ、かつ、ハニカム構造体の熱膨張率を小さくすることができる。その結果、電気加熱型担体は、長期間にわたって安定した排ガス処理(代表的には、浄化)性能を維持するとともに、エンジンの始動および停止を繰り返してもハニカム構造体の破壊、割れおよびクラック等を抑制することができる。
【0050】
電気加熱型担体は、代表的には、任意の適切な筒状部材に収容されて、排ガス処理装置が構成される。排ガス処理装置は、代表的には、自動車のエンジンからの排ガスを流すための排ガス流路の途中に設置される。
【実施例0051】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価項目は以下のとおりである。
【0052】
(1)酸化膜の厚み
実施例および比較例で得られたハニカム構造体の隔壁または外周壁内部について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて画像を撮像し、SEM-EDXにより、Si表面上に珪素元素(Si)と酸素元素(O)が確認される箇所を酸化膜と特定し、その厚みを求めた。
【0053】
(2)クリストバライト量の定量
クリストバライトの量を以下のように測定した。X線回折装置(Bruker AXS社製、D8 ADVANCE)を用いて酸化膜のX線回折パターンを得た。(主な測定条件:CuKαの特性X線、管球電圧10kV、管球電流20mA、回析角2θ=5°~100°)。次に、解析ソフトTOPAS(Bruker AXS社製)を用いて、リートベルト法により得られたX線回折データを解析して、クリストバライトの回折線ピーク強度を定量した。
【0054】
(3)抵抗上昇率
実施例および比較例で得られたハニカム構造体から試験サンプルを切り出した。切り出した試験サンプルの体積抵抗率R0を測定した。この試験サンプルを、950℃、水蒸気雰囲気で250時間の耐久試験に供し、試験後の試験サンプルの体積抵抗率R250を測定した。比R250/R0を抵抗上昇率(無単位)とした。
【0055】
(4)熱膨張率
実施例および比較例で得られたハニカム構造体から縦3mm×横3mm×長さ20mmの試験サンプルを切り出した。この試験サンプルについて、JIS R1618:2002に準拠し、試験サンプルの長さ方向における40℃~800℃での平均線熱膨張係数(熱膨張率)を測定した。
【0056】
(5)強度/ヤング率比
実施例および比較例で得られたハニカム構造体から縦3mm×横4mm×長さ70mmの試験サンプルを切り出した。この試験サンプルについて、JIS R1602に準拠し、室温でのヤング率E(GPa)を測定した。また、ヤング率を測定したサンプルについてJIS R1601に準拠し、室温での4点曲げ強度σ(MPa)を測定した。比σ/Eを強度/ヤング率比と定義した。得られた強度/ヤング率比σ/Eを以下の基準でランク分けした。
AA:比σ/Eが0.65以上0.85以下
A :比σ/Eが0.45以上0.65未満
【0057】
(6)耐熱衝撃性
ハニカム構造体を収納する金属ケースと、当該金属ケース内に加熱ガスを供給することができるプロパンガスバーナーと、を備えたプロパンガスバーナー試験機を用いてハニカム構造体の加熱冷却試験を実施した。上記加熱ガスは、ガスバーナー(プロパンガスバーナー)でプロパンガスを燃焼させることにより発生する燃焼ガスとした。そして、上記加熱冷却試験によって、ハニカム構造体にクラックが発生するか否かを確認することにより、耐熱衝撃性を評価した。具体的には、まず、プロパンガスバーナー試験機の金属ケースに、得られたハニカム構造体を収納(キャニング)した。そして、金属ケース内に、プロパンガスバーナーにより加熱されたガス(燃焼ガス)を供給し、ハニカム構造体内を通過するようにした。金属ケースに流入する加熱ガスの温度条件(入口ガス温度条件)を以下のようにした。まず、5分で指定温度まで昇温し、指定温度で10分間保持し、その後、5分で100℃まで冷却し、100℃で10分間保持した。このような昇温、冷却、保持の一連の操作を「昇温、冷却操作」と称する。その後、ハニカム構造体のクラックを確認した。そして、指定温度を825℃から25℃ずつ上昇させながら上記「昇温、冷却操作」を繰り返した。以下の評価基準に基づき、ハニカム構造体の耐熱衝撃性の評価を行った。
評価AA:指定温度1000℃でクラックの発生が無い。
評価A :指定温度950℃~975℃でクラックの発生が無く、1000℃でクラックが発生。
評価B :指定温度900℃~925℃でクラックの発生が無く、950℃でクラックが発生。
【0058】
<実施例1>
炭化珪素粉末と金属珪素粉末とを75:25の質量割合で混合してセラミックス原料を調製した。セラミックス原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は炭化珪素粉末と金属珪素粉末の合計を100質量部としたときに8質量部とした。造孔材の含有量は炭化珪素粉末と金属珪素粉末の合計を100質量部としたときに3質量部とした。水の含有量は炭化珪素粉末と金属珪素粉末の合計を100質量部としたときに31質量部とした。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであった。
得られた坏土を最終的に六角形のセル構造となるように押し出した。得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、所定の外形寸法に加工し、ハニカム乾燥体を得た。
得られたハニカム乾燥体をAr雰囲気にて1450℃で0.5時間焼成することにより、円柱状のハニカム焼成体を作製した。得られたハニカム焼成体を、水蒸気雰囲気下、950℃で50時間の加熱処理に供し、ハニカム構造体を得た。
得られたハニカム構造体は、端面が外径(直径)80mmの円形であり、高さ(セルの流路方向における長さ)が80mmであり、外周壁の厚みは0.5mmであった。セル密度は93セル/cm2であり、隔壁の厚みは150μmであり、隔壁の気孔率は40%であり、隔壁の平均細孔径は8μmであった。得られたハニカム構造体においては、炭化珪素-珪素複合材の珪素表面に厚さ0.39μmの酸化膜が形成されていた。また、得られたハニカム構造体におけるクリストバライト量は2.2質量%であった。得られたハニカム構造体を上記(3)~(6)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0059】
<実施例2~12および比較例1>
実施例2~8,11~12,比較例1については、表1に示す条件でハニカム焼成体を加熱処理したこと以外は実施例1と同様にしてハニカム構造体を得た。実施例9~10については、表1に示す条件でハニカム焼成体を加熱処理したこと、および、造孔材の量を制御してハニカム構造体の気孔率を実施例1に比べて増加させたこと以外は実施例1と同様にしてハニカム構造体を得た。得られたハニカム構造体における酸化膜の厚みおよびクリストバライト含有量は、表1に示すとおりであった。得られたハニカム構造体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0060】
<比較例2>
ハニカム焼成体に加熱処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様にしてハニカム構造体を得た。得られたハニカム構造体における酸化膜の厚みおよびクリストバライト含有量は、表1に示すとおりであった。得られたハニカム構造体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0061】
【0062】
表1から明らかなとおり、ハニカム構造体を構成する炭化珪素-珪素複合材の珪素表面に所定厚みの酸化膜を形成し、および/または、ハニカム構造体におけるクリストバライト含有量を所定値以上とすることにより、加熱冷却耐久試験後のハニカム構造体の抵抗上昇率を許容範囲内に抑制することができ、かつ、ハニカム構造体の熱膨張率を小さくすることができる。さらに、実施例1~5と実施例6~8とを比較すると明らかなとおり、加熱処理の温度を低温とし、加熱処理の時間を長時間とすることにより、上記の特性がさらに向上する傾向にあることがわかる。より詳細には、実施例1~5では、加熱冷却耐久試験後のハニカム構造体の抵抗上昇率を許容範囲内に抑制しつつ、ハニカム構造体の熱膨張率を非常に小さくすることができる。一方、実施例6~8では、抵抗上昇率は良好に抑えられるが、熱膨張率は十分に小さくならず、加熱処理条件によっては耐熱衝撃性が不十分となる場合がある。加えて、実施例11および12から明らかなように、高温で長時間の加熱処理を行うことにより、ハニカム構造体におけるクリストバライト含有量を顕著に増大させることができ、その結果、抵抗上昇率を顕著に抑制し、かつ、強度/ヤング率比を良好なものとすることができる。また、実施例4(気孔率小)と実施例10(気孔率大)、ならびに、実施例8(気孔率小)と実施例9(気孔率大)とを比較すると明らかなように、同一条件で加熱処理した場合であっても、気孔率を増加させることにより強度/ヤング率比を良好なものとすることができる。