(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145502
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】接続装置
(51)【国際特許分類】
G01M 9/06 20060101AFI20220926BHJP
G09B 23/12 20060101ALI20220926BHJP
G09B 25/04 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G01M9/06
G09B23/12 Z
G09B25/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004507
(22)【出願日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2021046175
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 浩
【テーマコード(参考)】
2C032
2G023
【Fターム(参考)】
2C032BC03
2C032BC05
2C032DB02
2G023AA01
2G023AB22
2G023AB27
2G023AD07
(57)【要約】
【課題】複数の風圧計測穴を有する風洞実験用模型の風圧センサ機器への接続時間の短縮を図りつつ、接続ミスを低減できる接続装置を提案する。
【解決手段】複数の風圧計測穴72と、複数の風圧計測穴72に連通する複数の風圧取出穴74とが形成された風洞実験用模型70を、風圧センサ機器に接続するための接続装置10である。接続装置10は、複数の風圧取出穴74が形成される部位に取り付けられる基体20と、基体20に支持され、複数の風圧取出穴74に接続可能な複数の接続チューブ30と、複数の接続チューブ30に連結され、複数の接続チューブ30に伝わる風圧を風圧センサ機器に向けて導出する複数の導圧チューブ40と、複数の導圧チューブ40の端部に連結され、風圧センサ機器に接続可能な接続部材50とを備える。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の風圧計測穴と、前記複数の風圧計測穴に連通する複数の風圧取出穴とが形成された風洞実験用模型を、風圧センサ機器に接続するための接続装置であって、
前記複数の風圧取出穴が形成される部位に取り付けられる基体と、
前記基体に支持され、前記複数の風圧取出穴に接続可能な複数の接続チューブと、
前記複数の接続チューブに連結され、前記複数の接続チューブに伝わる風圧を前記風圧センサ機器に向けて導出する複数の導圧チューブと、
前記複数の導圧チューブの端部に連結され、前記風圧センサ機器に接続可能な接続部材とを備えることを特徴とする接続装置。
【請求項2】
前記複数の接続チューブは、シール材を介して前記複数の風圧取出穴に接続されることを特徴とする請求項1に記載の接続装置。
【請求項3】
前記基体には、前記複数の風圧取出穴が形成される部位に前記基体を位置決めするための位置決め手段が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接続装置。
【請求項4】
前記複数の風圧取出穴が形成される部位に対して前記基体を着脱するための着脱手段を備えており、
前記着脱手段は、
前記基体に貫通形成された複数のボルト挿通孔と、
前記複数のボルト挿通孔にそれぞれ挿通され、前記複数の風圧取出穴が形成される部位に螺合される基体取付用のボルトと、
前記複数のボルト挿通孔の内面に形成され、前記基体取付用のボルトに干渉しない取外用の雌ねじ部と、
前記基体と前記複数の風圧取出穴が形成される部位との間に挿入され、前記複数のボルト挿通孔の開口を塞ぐ状態に配置される座板と、
前記基体取付用のボルトよりも外径が大きく前記取外用の雌ねじ部に螺合可能な基体取外用のボルトと、を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風洞実験用模型を用いた風洞実験に使用される接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設が計画される建造物の外壁や屋根に作用する風力を予め評価するために建造物の風洞実験用模型を用いた風洞実験を行うことが知られている(例えば、特許文献1参照)。
風洞実験用模型には、複数の風圧計測穴、例えば、数十から1千程度の風圧計測点となる風圧計測穴が形成されている。各計測穴は、3Dプリンター等の3次元立体造形装置を用いて建物の外郭を形成する際に形成可能であり、また、建物の外形をなすアクリル板等に予め形成しておくことにより設置可能である。各計測穴には、金属製の細いパイプからなる導圧タップが接続される。複数の風圧計測穴における風圧は、各導圧タップに接続された導圧チューブを介して風洞実験用模型の外部に引き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、風洞実験用模型の外面に形成した各風圧計測穴には、これを特定するための計測用の番号(計測点番号)や名称を付している。同様に、風洞実験用模型の外部に引き出される各導圧チューブに対しても対応する計測用の番号や名称が記載されたラベルを付しており、風圧センサ機器への接続時には、このラベルを確認しながら導圧チューブを1本ずつ風圧センサ機器の接続部材に接続している。このため、導圧チューブの接続作業には多大な時間と労力が必要であり、また、接続ミスを確認するための時間と手間も必要であるという課題があった。
本発明は、前記した課題を解決し、複数の風圧計測穴を有する風洞実験用模型の風圧センサ機器への接続時間の短縮を図りつつ、接続ミスを低減できる接続装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、複数の風圧計測穴と、前記複数の風圧計測穴に連通する複数の風圧取出穴とが形成された風洞実験用模型を、風圧センサ機器に接続するための接続装置である。接続装置は、前記複数の風圧取出穴が形成される部位に取り付けられる基体と、前記基体に支持され、前記複数の風圧取出穴に接続可能な複数の接続チューブと、前記複数の接続チューブに連結され、前記複数の接続チューブに伝わる風圧を前記風圧センサ機器に向けて導出する複数の導圧チューブと、前記複数の導圧チューブの端部に連結され、前記風圧センサ機器に接続可能な接続部材とを備えることを特徴とする。
本発明では、基体と、複数の接続チューブと、複数の導圧チューブと、接続部材とを恒久的に組み付けられた一体のユニットとして構成できる。これにより、風洞実験時には、接続装置を介して風洞実験用模型と風圧センサ機器との間を画一的に接続することができるので、従来のような煩雑な作業、つまり、計測用の番号や名称が記載されたラベルを確認しながら導圧チューブを1本ずつ風圧計測穴側や接続部材に接続する作業を行う必要がなくなる。したがって、風圧センサ機器への接続時間の短縮を図りつつ、接続ミスを低減できる。
【0006】
また、前記複数の接続チューブは、シール材を介して前記複数の風圧取出穴に接続されることが好ましい。
このように構成することによって、風圧取出穴と接続チューブとのシール性を高めることができ、精度のよい風洞実験を実現できる。
【0007】
また、前記基体には、前記複数の風圧取出穴が形成される部位に前記基体を位置決めするための位置決め手段が設けられていることが好ましい。
このように構成することによって、複数の風圧取出穴に対して複数の接続チューブを正しく接続することができ、接続ミスを確実に防止できる。また、各風圧取出穴に対する接続チューブの接続が容易になり、接続時間の短縮を図ることができる。
【0008】
また、前記複数の風圧取出穴が形成される部位に対して前記基体を着脱するための着脱手段を備えることが好ましい。前記着脱手段は、前記基体に貫通形成された複数のボルト挿通孔と、前記複数のボルト挿通孔にそれぞれ挿通され、前記複数の風圧取出穴が形成される部位に螺合される基体取付用のボルトと、前記複数のボルト挿通孔の内面に形成され、前記基体取付用のボルトに干渉しない取外用の雌ねじ部と、を備えることが好ましい。また、前記着脱手段は、前記基体と前記複数の風圧取出穴が形成される部位との間に挿入され、前記複数のボルト挿通孔の開口をそれぞれ塞ぐ状態に配置される座板と、前記基体取付用のボルトよりも外径が大きく前記取外用の雌ねじ部に螺合可能な基体取外用のボルトと、を備えることが好ましい。
この構成では、着脱手段を用いて、複数の風圧取出穴が形成される部位に対して基体を着脱できる。基体の取り付け時には、複数のボルト挿通孔に基体取付用のボルトを挿入し、複数の風圧取出穴が形成される部位に対して螺合させる。一方、基体の取り外し時には、各基体取付用のボルトを取り外し、基体と複数の風圧取出穴が形成される部位との間に座板を挿入して複数のボルト挿通孔の開口を塞ぐ。そして、複数のボルト挿通孔に基体取外用のボルトをそれぞれ挿入して雌ねじ部に螺合させ、各基体取外用のボルトを均等に締め付ける。そうすると、各基体取外用のボルトの締め付け圧が座板に作用し、その締め付け圧による反力で、複数の風圧取出穴が形成される部位から基体が略平行に引き離される。これにより、取り付け取り外しの繰返し性(再利用性)に優れた接続装置が得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る接続装置によれば、複数の風圧計測穴を有する風洞実験用模型の風圧センサ機器への接続時間の短縮を図りつつ、接続ミスを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る接続装置を用いた風洞実験装置の概要を示す概略図である。
【
図2A】本発明の第1実施形態に係る接続装置を風洞実験用模型に接続した状態を示す一部断面説明図である。
【
図2B】本発明の第1実施形態に係る接続装置を風洞実験用模型から取り外した状態を示す一部断面説明図である。
【
図3A】本発明の第1実施形態に係る接続装置の基体を示す平面図である。
【
図3B】本発明の第1実施形態に係る接続装置の基体を示す正面図である。
【
図4A】従来の風洞実験における接続の一例を示す一部断面説明図である。
【
図4B】従来の風洞実験における接続の一例を示す一部断面説明図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る接続装置の基体を示す平面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る接続装置を風洞実験用模型に接続した状態を示す一部断面説明図である。
【
図7A】本発明の第3実施形態に係る接続装置の基体及び風洞実験用模型の下部を示す一部断面説明図である。
【
図7B】本発明の第3実施形態に係る接続装置の基体を風洞実験用模型から取り外す際の作用を示す一部断面説明図である。
【
図7C】本発明の第3実施形態に係る接続装置の基体を風洞実験用模型から取り外す際の作用を示す一部断面説明図である。
【
図7D】本発明の第3実施形態に係る接続装置の基体を風洞実験用模型から取り外した状態を示す一部断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照して説明する。以下の実施形態において、同一の部分には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る接続装置を用いた風洞実験装置の概要を示す概略図であり、
図2Aは本発明の第1実施形態に係る接続装置を風洞実験用模型に接続した状態を示す一部断面説明図、
図2Bは同じく風洞実験用模型から取り外した状態を示す一部断面説明図である。
(第1実施形態)
本実施形態の接続装置10は、
図1に示すような風洞実験装置100に適用されるものであり、風洞101内に設けられた風洞実験用模型70に対して取り付けられる装置である。風洞101内には、図示しない送風機により人工的な風の流れが形成される。風洞101内には、風の流れの速さを計測する測定器としてピトー管Pが設置されている。ピトー管Pで計測された全圧及び静圧は、導圧管P1を通じて後段の差圧計(マノメータ)110に入力される。差圧計110は、入力された全圧及び静圧の圧力差に基づき風速を計測する。
【0012】
接続装置10は、基体20と、基体20に取り付けられた複数の接続チューブ30と、各接続チューブ30に連結された導圧チューブ40と、各導圧チューブ40の端部に連結された接続部材50とを備えている。基体20は、金属製の材料、例えば、アルミニウム合金で形成されている。基体20は、
図2Aに示すように、風洞実験用模型70の下部71の下面75に対して取り付けられるものである。
以下では、説明の便宜上、
図3A,
図3Bに示すように、基体20の左右方向をX軸方向とし、前後方向をY軸方向とし、上下方向をZ軸方向として説明する。X軸方向及びY軸方向は、風洞実験装置100が設置される実験設備等の床面に平行な水平方向であり、Z軸方向は実験設備等の床面に直交する鉛直方向である。
基体20は、
図3Aに示すように、平面視で略四角形状を呈している。また、基体20は、各接続チューブ30を直立した状態で安定性よく保持できるようにZ軸方向に所定の厚みを有している(
図3B参照)。基体20には、
図2A,
図3Bに示すように、接続チューブ30を支持する複数の取付穴22がZ軸方向に貫通形成されている。
図3Aに示すように、各取付穴22は、基体20の四角形状を有効に利用してX軸方向及びY軸方向に直線状に並ぶように設けられている(25列×25列)。なお、取付穴22のうち、基体20の右端においてY軸方向に並ぶ取付穴22と、その左隣の取付穴22との間隔は、それ以外の位置において左右に隣合う取付穴22,22の間隔よりも広い。
【0013】
各接続チューブ30は、金属製の材料、例えば、鉄またはステンレス鋼で形成されている。各接続チューブ30は、例えば、内径1.0mm、外径1.5mmのものを使用している。各接続チューブ30は、取付穴22を貫通し、その上部及び下部が基体20から突出する状態に基体20に取り付けられている。各接続チューブ30の上部は、風洞実験用模型70の風圧取出穴74に挿入される挿入部として機能し、また、各接続チューブ30の下部は、導圧チューブ40が連結される連結部として機能する。なお、
図2A,
図2Bでは、取付穴22及び接続チューブ30を模式的に示しており、
図3A及び
図3Bにおける取付穴22の数、配置とは対応していない。
図3Aに示した接続チューブ30の個数や配置(25行×25列)は、設計例の一例である。各取付穴22は、
図2Bに示すように、風洞実験用模型70の下部71の下面75に形成された風圧取出穴74に対応する位置に形成されており、風圧取出穴74の内径よりも小さい外径を有している。これにより、
図2Aに示すように、風洞実験用模型70の下面75に基体20を取り付けることにより、各接続チューブ30が対応する風圧取出穴74に挿入される。各接続チューブ30の上部の根元部分には、シール部材としてOリング23が装着されている(
図2B参照)。各Oリング23は、
図2Aに示すように、風洞実験用模型70の下面75に基体20を取り付けることにより、接続チューブ30の周りにおいて風洞実験用模型70の下面75と基体20の上面との間を密封する。なお、Oリング23に代えて他のシール材を用いてもよい。
なお、風洞実験用模型70には、模型の外面に開口する複数の風圧計測穴72、及び各風圧計測穴72に連通し、他端が風圧取出穴74として開口する導圧路73が形成されている。
【0014】
基体20の周部には、
図3Aに示すように、基体20の側方に突出する複数の取付用フランジ部21が形成されている。各取付用フランジ部21には、ボルト挿通穴24が形成されている。ボルト挿通穴24には、風洞実験用模型70の下面75に基体20を固定するためのボルト(不図示)が挿通される。風洞実験用模型70の下面75には、各ボルト挿通穴24を通じて挿入されたボルトの螺合穴(不図示)が形成されている。取付用フランジ部21のうち、基体20のX軸方向の左端部には、3つの取付用フランジ部21c,21b,21cが配置され、これとは反対側となる右端部には、取付用フランジ部21bが1つ配置されている。つまり、左端部と右端部とでは、取付用フランジ部21の数が異なっている。左端部では、取付用フランジ部21bがY軸方向の中央部に位置し、残りの取付用フランジ部21c,21cがY軸方向の前端及び後端に位置している。また、右端部では、取付用フランジ部21bがY軸方向の中央部に位置している。
一方、基体20のY軸方向の前端部及び後端部には、いずれも、2つの取付用フランジ部21a,21dが配置されている。取付用フランジ部21aは、X軸方向の中央部に位置しており、また、取付用フランジ部21dは、X軸方向の右端に位置している。つまり、前端部及び後端部の各左端には、取付用フランジ部21が配置されていない構成となっている。
このような取付用フランジ部21のレイアウト及び上記のピッチ間隔を異ならせた取付穴22のレイアウトは、風洞実験用模型70の下面75に正しい位置で基体20を取り付けるための構成、つまり、各風圧取出穴74に対応して接続チューブ30が正しく接続されるようにするための位置決め手段となる。
【0015】
各導圧チューブ40は、樹脂製の材料、例えば、ビニル樹脂で形成されている。各導圧チューブ40は、例えば、内径1mm、外径2.3mmのものを使用している。各導圧チューブ40は、一端が接続チューブ30の下部に連結されているとともに、他端が接続部材50の端子部51に連結されており、各接続チューブ30に伝わる風圧を後段の風圧センサ機器(不図示、以下同じ)に導出する役割をなす。各導圧チューブ40と接続チューブ30との連結部分、及び各導圧チューブ40と端子部51との連結部分には、例えば、ワイヤの巻き付けまたは接着剤を使用した固定手段が施されており、恒久的な連結が実現されている。これにより、風洞実験用模型70に対する基体20の取り付け時等に誤って導圧チューブ40が外れることが低減されている。
【0016】
接続部材50は、風圧センサ機器に備わるセンサ端子部(不図示)に対して接続するためのアダプターであり、各導圧チューブ40が連結可能な端子部51を備えている。接続部材50は、取付ネジ等により、風圧センサ機器のセンサ端子部に取り付けられる。なお、各風圧計測穴72から導圧路73、風圧取出穴74、接続チューブ30、導圧チューブ40及び端子部51に至る一連の経路には、風圧計測穴72を特定するための計測用の番号(計測点番号)や名称が振られており、接続部材50を風圧センサ機器のセンサ端子部に装着することで、計測用の番号(計測点番号)や名称に対応した風圧であることを認識できるように予め設定されている。
【0017】
以上のような接続装置10の使用方法について説明する。
はじめに、風洞実験用模型70の下面75に基体20の上面を近づけ、基体20の取付用フランジ部21の位置と風洞実験用模型70の下面のボルト穴の位置とが対応する位置となるように、基体20の向きを調整する。その後、風洞実験用模型70の下面75に基体20をさらに近づけ、風洞実験用模型70の各風圧取出穴74に基体20の各接続チューブ30の先端部を位置合わせして挿入する。その後、基体20を徐々に持ち上げて、風洞実験用模型70の下面75に基体20の上面を密着させる。
この状態で、基体20の各取付用フランジ部21のボルト挿通穴24にボルト(不図示)を挿通し、各ボルトをボルト挿通穴24に螺合する。これにより、風洞実験用模型70の各風圧取出穴74に対して正しく接続チューブ30が接続された状態で、風洞実験用模型70に接続装置10が取り付けられる。
その後、接続部材50を風圧センサ機器の端子部に装着し、取付ネジ等によりこれを固定する。以上により、一体に構成された接続装置10を介して、風洞実験用模型70と風圧センサ機器とを風圧測定可能に接続することができる。
【0018】
図4A,
図4Bに、比較例として従来の風洞実験における接続の一例を示す。
図4Aに示した接続例は、建築物の外形だけを形成した従来の風洞実験用模型70Aに対するものである。風洞実験用模型70Aの内側は、略空洞となっており、各風圧計測穴72に接続される導圧タップ76と、各導圧タップ76に直接接続される導圧チューブ45との配置空間になっている。各導圧チューブ45の端部は、接続部材50に接続されている。
風洞実験時には、計測用の番号(計測点番号)や名称がラベル等に付された導圧チューブ45を、各導圧タップ76に1本ずつ接続し、その後、ラベルを確認しながら導圧チューブ45を1本ずつ接続部材50の端子部51に接続する作業を行う。このため、この接続例では、導圧チューブ45の接続作業に多大な時間と労力が必要であり、また、接続部材50への接続ミスを確認するための時間と手間も必要であった。
【0019】
一方、
図4Bに示した接続例は、建築物の全体を中実に形成した従来の風洞実験用模型70Bに対するものである。風洞実験用模型70Bの下面77には、各風圧計測穴72に連通する導圧路73の開口穴78が形成されている。各開口穴78には、接続管35が接続され、各接続管35には、導圧チューブ45が接続されている。各導圧チューブ45の端部は、接続部材50に接続されている。
風洞実験時には、風洞実験用模型70Bの各開口穴78に接続管35を組み付け、各接続管35に、計測用の番号(計測点番号)や名称がラベル等に付された導圧チューブ45を1本ずつ接続し、その後、ラベルを確認しながら導圧チューブ45を1本ずつ接続部材50の端子部51に接続する作業を行う。このため、この接続例においても、導圧チューブ45の接続作業に多大な時間と労力が必要であり、また、接続部材50への接続ミスを確認するための時間と手間も必要であった。
【0020】
これに対し、本実施形態の接続装置10では、基体20と、複数の接続チューブ30と、複数の導圧チューブ40と、接続部材50とが恒久的に組み付けられた一体のユニットとして構成できる。これにより、風洞実験時には、接続装置10を介して風洞実験用模型70と風圧センサ機器との間を画一的に接続することができる。したがって、従来のような煩雑な作業、つまり、計測用の番号や名称が記載されたラベルを確認しながら導圧チューブ45を1本ずつ接続部材50に接続する作業を行う必要がなくなる。したがって、風圧センサ機器への接続時間の短縮を図りつつ、接続ミスを低減できる。
【0021】
また、各接続チューブ30は、Oリング23を介して風圧取出穴74に接続されているので、風圧取出穴74と接続チューブ30とのシール性を高めることができ、精度のよい風洞実験を実現できる。
【0022】
また、基体20には、上記した位置決め手段により、各風圧取出穴74に対して接続チューブ30を正しく接続することができ、接続ミスを確実に防止できる。また、各風圧取出穴74に対する接続チューブ30の接続が容易になり、接続時間の短縮を図ることができる。
【0023】
(第2実施形態)
図5を参照して本発明の第2実施形態に係る接続装置について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る接続装置の基体を示す平面図である。
図5に示すように、基体20Aは平面視で略正方形状を呈している。なお、図示はしないが、基体20Aも、第1実施形態と同様に、各接続チューブ30を直立した状態で安定性よく保持できるようにZ軸方向に所定の厚みを有している。なお、取付フランジ部は省略している。
本実施形態では、取付穴22が同心円状に形成されており、各接続チューブ30を同心円状に配置している。
基体20Aの上面には、1つの隅部の近傍位置に、ピン25Aが立設されている。ピン25Aは、位置決め手段として機能するものであり、風洞実験用模型70の下面75の対応する位置に設けられたピン挿入用穴(不図示)に挿入可能である。このような、ピン25Aによる位置決めを行うことにより、各風圧取出穴74(
図2A参照)に対して接続チューブ30を正しく接続することができ、接続チューブ30が同心円状である場合にも、接続ミスを確実に防止できる。また、各風圧取出穴74に対する接続チューブ30の接続が容易になり、接続時間の短縮を図ることができる。
なお、ピン25Aに代えて、接続チューブ30を設置し、これを位置決め手段として用いてもよい。
【0024】
本実施形態においても、前記第1実施形態で説明した作用効果と同様の作用効果が得られる。つまり、風洞実験時には、接続装置10を介して風洞実験用模型70と風圧センサ機器との間を画一的に接続することができる。したがって、従来のような煩雑な作業、つまり、計測用の番号や名称が記載されたラベルを確認しながら導圧チューブ45を1本ずつ接続管35、接続部材50に接続する作業を行う必要がなくなる。したがって、風圧センサ機器への接続時間の短縮を図りつつ、接続ミスを低減できる。
【0025】
(第3実施形態)
図6~
図7Dを参照して本発明の第3実施形態に係る接続装置について説明する。
図6は、本発明の第3実施形態に係る接続装置を風洞実験用模型に接続した状態を示す一部断面説明図、
図7Aは、本発明の第3実施形態に係る接続装置の基体及び風洞実験用模型の下部を示す一部断面説明図である。また、
図7B及び
図7Cは、同じく接続装置の基体を風洞実験用模型から取り外す際の作用を示す一部断面説明図、
図7Dは、同じく接続装置の基体を風洞実験用模型から取り外した状態を示す一部断面説明図である。
図6、
図7Aに示すように、本実施形態の接続装置10Aは、風洞実験用模型70Cに対して基体20Bを着脱するための着脱手段60を備えている。
着脱手段60は、複数のボルト挿通孔61と、基体取付用のボルト62と、取外用の雌ねじ部63(
図7A参照)と、座板64(
図7B参照)と、基体取外用のボルト65(
図7B参照)と、を備えている。
【0026】
複数のボルト挿通孔61は、基体20Bの外周部に設けられており、Z軸方向(上下方向)に貫通形成されている。
図6,
図7Aでは、基体20BのX軸方向(左右方向)の左端部及び右端部に形成された2つのボルト挿通孔61を例に挙げて示している。なお、ボルト挿通孔61は、基体20Bの形状に合わせて適宜の位置に複数設けてもよいし、第1実施形態で説明したような取付用フランジ部21(
図3A参照)を利用して複数設けてもよい。
風洞実験用模型70Cに基体20Bを取り付ける時には、各ボルト挿通孔61に基体取付用のボルト62が挿通され、風洞実験用模型70Cから基体20Bを取り外す時には、各ボルト挿通孔61に基体取外用のボルト65が挿通される。基体取付用のボルト62は、基体20Bを貫通して風洞実験用模型70Cの下部71Cに配置された後記するナット7bに螺合される全長を有している。本実施形態では、基体取付用のボルト62として、例えば、ボルト挿通孔61よりも外径の大きい座金が付いたM8の座金付きボルトを使用している。なお、座金の代わりにワッシャを用いて座金を有さないM8のボルトを使用してもよい。
取外用の雌ねじ部63は、各ボルト挿通孔61の内面に形成されており、基体取付用のボルト62に干渉しない内径、すなわち、基体取付用のボルト62の外径よりも小さい内径を有している。本実施形態では、取外用の雌ねじ部63の最大内径を、例えば、8.5mmに設定している。
風洞実験用模型70Cの下部71Cには、複数のボルト挿通孔61に対応する位置に、複数の模型側挿通孔7aが貫通形成されている。各模型側挿通孔7aの上側開口部には、凹部7cが形成されている。各凹部7c内には、基体取付用のボルト62が螺合されるナット7bが嵌入されている。一方、各模型側挿通孔7aの下側開口部には、上側に凹状とされた座板配置スペース7dが形成されている。座板配置スペース7dのZ軸方向の大きさは、例えば、3.0mmに設定されている。
【0027】
図7に示す座板64は、座板配置スペース7dに配置可能な平板状を呈している。座板64は、基体20Bの取り外し時に座板配置スペース7dに挿入される部材であり、各ボルト挿通孔61の上側開口部(各模型側挿通孔7aの下側開口部)をそれぞれ塞ぐ役割をなす。本実施形態では、例えば、厚さ2.3mmの座板64を使用している。なお、座板配置スペース7dは、風洞実験用模型70Cの下面75Cに形成したが、これに限られることはなく、基体20Bの上面側に形成してもよいし、風洞実験用模型70Cの下面75Cと基体20Bの上面との両方に亘って形成してもよい。座板配置スペース7dには、必要に応じて、図示しないワッシャを介在させてもよい。
基体取外用のボルト65は、
図7Bに示すように、基体20Bの取り外し時に使用される。基体取外用のボルト65は、取外用の雌ねじ部63に螺合可能な外径を有している、すなわち、基体取外用のボルト65の外径は、基体取付用のボルト62の外径よりも大きくなっている。本実施形態では、基体取外用のボルト65として、例えば、M10のボルトを使用している。基体取外用のボルト65は、風洞実験用模型70Cの下面75Cから基体20Bを取り外す際に、取外用の雌ねじ部63に螺合され、座板配置スペース54に配置された座板66に対して下方から締め付け圧を付与するように作用し、その締め付け圧による反力で、風洞実験用模型70Cの下面75Cから基体20Bを引き離すように作用する。
基体取外用のボルト65は、螺合による締め付け時に、基体20Bの上面から上方へ突出している各接続チューブ30の突出量よりも大きく突出するように全長が設定されている。
【0028】
次に、着脱手段60を用いて接続装置10Aの基体20Bを着脱する手順を説明する。なお、基体20Bの取り付けに先立って、風洞実験用模型70Cの下面75Cと基体20Bの上面との間を密封するためのシール材を、例えば、基体20Bの上面(接続チューブ30の立上り部分の周囲)に塗布しておく。シール材としては、両者の接続部から圧力漏れを防止する材料であればよく、例えば、コーキング剤、接着剤、ゲル状の材料、グリス等、種々の材料を用いることができる。
基体20Bの取り付け時には、風洞実験用模型70Cの下面75Cに基体20Bの上面を近づけ、基体20Bの各ボルト挿通孔61の位置と風洞実験用模型70Cの各模型側挿通孔7aの位置とが対応する位置となるように、基体20Bの位置を調整する。その後、風洞実験用模型70Cの下面75Cに基体20Bをさらに近づけ、風洞実験用模型70Cの各風圧取出穴74に基体20Bの各接続チューブ30の先端部を位置合わせして挿入する。その後、シール材が乾燥したり固化したりする前に基体20Bを徐々に持ち上げて、風洞実験用模型70Cの下面75Cに基体20Bの上面を密着させる。そして、基体20Bの各ボルト挿通孔61に基体取付用のボルト62を挿通し、さらに各模型側挿通孔7aを通じて各基体取付用のボルト62をナット7bに螺合する。これにより、風洞実験用模型70Cの各風圧取出穴74に対して正しく接続チューブ30が接続された状態で、風洞実験用模型70Cに接続装置10Aが取り付けられる。なお、必要に応じて、座板配置スペース7dに図示しないワッシャを介在させる。
【0029】
基体20Bの取り外し時には、各基体取付用のボルト62の螺合を解除して、各基体取付用のボルト62を各ボルト挿通孔61から抜き取る。その後、座板配置スペース7dにワッシャを介在させている場合には、ワッシャを抜き取る。そして、
図7Bに示すように、座板配置スペース7dに座板64を挿入して各ボルト挿通孔61の上側開口部(各模型側挿通孔7aの下側開口部)を塞ぐ。その後、各ボルト挿通孔61に基体取外用のボルト65を挿入して取外用の雌ねじ部63に螺合させる。
そうすると、各基体取外用のボルト65の先端部が各座板64の下面に当接し、締め付け圧が各座板64に対して作用する。そして、各基体取外用のボルト65を均等にさらに締め付けると、
図7Cに示すように、その締め付け圧による反力で、風洞実験用模型70Cの下面75Cから基体20Bが略平行に引き離される。つまり、各基体取外用のボルト65の締付量(ボルト挿通孔61から突出する基体取外用のボルト65の長さ)を均等に保ちつつ各基体取外用のボルト65を締め付けると、風洞実験用模型70Cの下面75Cに対する基体20Bの平行度を保ちながら、基体20Bを鉛直下方へ引き離すことができる。これにより、仮に、着脱手段60を有さない場合に生じる可能性がある取り外し状況、例えば、取り外し時に基体20Bを手で強く引っ張ることにより、平行度がある一定の許容値を超えて接続チューブ30に負荷がかかるような取り外し状況が起こり難くなるので、接続チューブ30に曲げや破損が生じてしまうことを未然に防止できる。そして、各基体取外用のボルト65を均等にさらに締め付けることにより、
図7Dに示すように、風洞実験用模型70Cの下面75Cから基体20Bを取り外すことができる。なお、各基体取外用のボルト65を均等に締め付けることにより、風洞実験用模型70Cの下面75Cにシール材によって基体20Bが強固に接着されている場合でも、その接着力に抗して基体20Bを好適に引き離すことができる。
【0030】
本実施形態においても、前記第1実施形態で説明した作用効果と同様の作用効果が得られる。加えて、着脱手段60を備えているので、基体20Bの取り外し時に、風洞実験用模型70Cの下面75Cに対して平行度を保ちつつ、下面75Cからの引き離し量を調整しながら基体20Bを引き離すことができる。これにより、基体20Bの取り外し時に生じるおそれのある、接続チューブ30の曲げや破損を未然に防止でき、取り付け取り外しの繰返し性(再利用性)に優れた接続装置10Aが得られる。また、第1実施形態で説明したようなOリング23(
図2B参照)が不要となるので、基体20Bの取付作業が簡単になる。
なお、基体取付用のボルト62の外径、雌ねじ部63の内径及び基体取外用のボルト65の外径は、取付取外手段60の作用効果を奏する範囲内において適宜設定することができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限られず、各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、基体20,20A,20Bに設けられた接続チューブ30の数よりも風圧計測穴72が少ない場合には、風洞実験用模型70の下面に計測に関係のないダミーの風圧取出穴74を形成して、接続チューブ30の全てが挿入されるように構成すればよい。
また、これとは逆に、基体20,20A,20Bに設けられた接続チューブ30の数よりも風圧計測穴72が多い場合には、風洞実験用模型70の下面に複数の基体20,20A,20Bが取り付けられるように構成すればよい。
また、基体20,20A,20Bに設けられた取付穴22(接続チューブ30)の数や配置の形態、隣合う取付穴22(接続チューブ30)の間隔は、適宜設定することができる。
【0032】
また、基体20,20A,20Bは、平面視で四角形状のものを示したが、これに限られることはなく、円形状、楕円形状、三角形状、多角形状等、種々の形状のものを採用することができる。
また、複数の基体20,20A,20Bを、導圧チューブ40を介して1つの接続部材50に繋げてもよいし、単体の基体20,20A,20Bを、導圧チューブ40を介して複数の接続部材50に繋げてもよい。
また、前記第3実施形態では、風洞実験用模型70Cの下部71Cにナット7bを固定して、これに基体取付用のボルト62を螺合させるように構成したが、これに限られることはなく、模型側挿通孔7aの内面に雌ねじ部を形成して基体取付用のボルト62を螺合してもよい。
また、前記第3実施形態では、風洞実験用模型70Cの下面75Cと基体20Bの上面とにシール材を塗布したが、シール材の塗布に代えて、Oリング23(
図2B参照)等の他のシール部材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 接続装置
20,20A 基体
21 取付用フランジ部(位置決め手段)
21a~21d 取付用フランジ部
22 取付穴
23 Oリング(シール部材)
24 ボルト挿通穴(位置決め手段)
25A ピン(位置決め手段)
30 接続チューブ
40 導圧チューブ
50 接続部材
60 着脱手段
61 ボルト挿通孔
62 基体取付用のボルト
63 雌ねじ部
64 座板
65 基体取外用のボルト
70,70C 風洞実験用模型
72 風圧計測穴
74 風圧取出穴
100 風洞実験装置