(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145509
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】干渉性色の被覆が施された計時器又は宝飾品用の外側部品、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 1/10 20150101AFI20220926BHJP
G02B 1/12 20060101ALI20220926BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20220926BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20220926BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G02B1/10
G02B1/12
G02B5/26
G02B5/22
C23C14/06 N
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022009852
(22)【出願日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】21163489.4
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】コリーナ・バルボス
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・ジャンルノー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・キスリング
【テーマコード(参考)】
2H148
2K009
4K029
【Fターム(参考)】
2H148CA01
2H148CA05
2H148CA09
2H148CA14
2H148CA17
2H148CA24
2H148FA05
2H148FA07
2H148FA09
2H148FA15
2H148FA22
2K009BB01
2K009BB06
2K009BB11
2K009CC02
2K009CC03
2K009CC14
2K009CC24
2K009CC38
2K009DD03
4K029AA02
4K029AA04
4K029AA11
4K029BA02
4K029BA05
4K029BA07
4K029BA08
4K029BA12
4K029BA13
4K029BA17
4K029BA43
4K029BA44
4K029BA45
4K029BA46
4K029BA47
4K029BA48
4K029BA49
4K029BA58
4K029BB02
4K029BC07
4K029BD06
4K029BD07
4K029CA01
4K029DB21
4K029EA01
4K029EA02
(57)【要約】
【課題】 計時器又は宝飾品用の外側部品に干渉性色を与える。
【解決手段】 本発明は、被覆(12)が施された基材(11)を備える外側部品(10)に関し、被覆(12)は、600nm~780nmの波長に対して少なくとも90%の反射率を有するように構成している不透明又は準不透明の反射層(121)と、630nmの波長に対して1.45~2.8の屈折率を有する透光性又は準透光性の透光層(122)と、及び吸収層(123)とが順に重なり合う層によって構成しており、これらの層は、被覆(12)に所定の干渉性色を与える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆(12)が施された基材(11)を備える外側部品(10)であって、
前記被覆(12)は、
600nm~780nmの波長に対して少なくとも90%の反射率を有するように構成している不透明又は準不透明の反射層(121)と、
630nmの波長に対して1.45~2.8の屈折率を有する透光性又は準透光性の透光層(122)と、及び
吸収層(123)と
が順に重なり合う層によって構成しており、
これらの層は、前記被覆(12)に所定の干渉性色を与え、
前記被覆(12)は、D65光源下におけるCIELAB色空間において、パラメーターL*が25~35であり、パラメーターa*が8~15であり、パラメーターb*が0~7である赤色を呈する
ことを特徴とする外側部品(10)。
【請求項2】
前記反射層(121)は、Cu、Au、Rh、Ptから選択される金属性材料によって作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の外側部品(10)。
【請求項3】
前記反射層(121)は、Cuによって作られる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の外側部品(10)。
【請求項4】
前記反射層(121)は、少なくとも40nmの厚みを有する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の外側部品(10)。
【請求項5】
前記反射層(121)は、100nmの厚みを有する
ことを特徴とする請求項4に記載の外側部品(10)。
【請求項6】
前記透光層(122)は、SiO2、TiO2、Al2O3、HfO2、ZrO2、Ta2O5、SnO2、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO、MgO、Si3N4、AlNから選択される材料によって作られる
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の外側部品(10)。
【請求項7】
前記透光層(122)は、SiO2によって作られる
ことを特徴とする請求項6に記載の外側部品(10)。
【請求項8】
前記透光層(122)は、10nm~50nmの厚みを有する
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の外側部品(10)。
【請求項9】
前記透光層(122)は、30nmの厚みを有する
ことを特徴とする請求項8に記載の外側部品(10)。
【請求項10】
前記吸収層(123)は、Ti、Ni、又はCrから選択される材料によって作られる
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の外側部品(10)。
【請求項11】
前記吸収層(123)は、Crによって作られる
ことを特徴とする請求項10に記載の外側部品(10)。
【請求項12】
前記吸収層(123)は、5nm~8nmの厚みを有する
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の外側部品(10)。
【請求項13】
前記被覆(12)は、350nm~600nmの波長に対して10%未満、620nm~780nmの波長に対して10%以上の反射率を有する
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の外側部品(10)。
【請求項14】
前記被覆(12)は、前記吸収層(123)上に重なり合っており630nmの波長に対して1.48~1.51の屈折率を有するアクリル及び/又はニトロセルロースの保護層(124)を有する
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の外側部品(10)。
【請求項15】
計時器又は宝飾品用の外側部品(10)を製造する方法であって、
基材(11)上に600nm~780nmの波長に対して90%よりも大きい反射率を有するように構成している不透明な反射層(121)を堆積させるステップ(101)と、
630nmの波長に対して1.45~2.8の屈折率を有する透光層(122)を堆積させるステップ(102)と、及び
吸収層(123)を堆積させるステップ(103)と
を行うことによって、基材(11)の表面上に被覆(12)を作る
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記反射層(121)、前記透光層(122)及び前記吸収層(123)の各堆積(101、102及び103)は、電子銃蒸発を伴う物理蒸着法によって行う
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記透光層(122)を堆積させるステップ(102)は、0.01nm/秒~0.1nm/秒の堆積速度で行う
ことを特徴とする請求項15又は16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記吸収層(123)を堆積させるステップ(103)は、0.01nm/秒~0.05nm/秒の堆積速度で行う
ことを特徴とする請求項15~17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
630nmの波長に対して1.48~1.51の屈折率を有するように構成している保護層(124)を堆積させる最終ステップ(104)を行う
ことを特徴とする請求項15~18のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携行型時計製造又は宝飾品の分野に関連し、特に、干渉性色を与える被覆が施された計時器又は宝飾品用の外側部品、及びその製造方法に関する。
【0002】
本テキストにおいて、「外側部品」という用語は、ユーザーから見えるように意図されている、例えば、ケース、表盤、表盤アプリーク、ブレスレットなどを含む、携行型時計製造又は宝飾品の分野における任意の装飾性の物を意味する。
【0003】
好ましくは、本発明は、干渉性色が赤の色合いである被覆が施された計時器又は宝飾品用の外側部品に関する。
【背景技術】
【0004】
携行型時計製造や宝飾品の分野、より一般的には装飾性の物の分野、において、塗装、ワニス塗り、エナメル加工による堆積方法が常に採用されているわけではない。
【0005】
実際に、一方では、装飾される物の表面に堆積される材料の層が、ブラシド処理、太陽光線処理、サンドブラスト処理、レーザー構造化処理された表面のような表面構造を見えるようにするには厚すぎ、他方では、この層の耐久性、したがってその色の耐久性、は必ずしも満足できるものではない。
【0006】
したがって、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、原子層堆積法(ALD)のような薄膜真空堆積技術が好ましい。
【0007】
これらの堆積技術は多くの色の被覆を得ることを可能にするが、これらの方法を実行しても、赤の色合いのような特定の色を工業規模で得ることを可能にするわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、弱め合う干渉と強め合う干渉を付与することによって発生する所定の干渉性色を呈する外側部品を作るための手法を提供することによって、前記課題を解決する。本テキストにおいて、光干渉現象によって発生する色を「干渉性色」と呼ぶ。
【0009】
このために、本発明は、被覆が施された基材を備える外側部品に関し、前記被覆は、600nm~780nmの波長に対して少なくとも90%の反射率を有するように構成している不透明又は準不透明の反射層と、630nmの波長に対して1.45~2.8の屈折率を有する透光性又は準透光性の透光層と、及び吸収層とが順に重なり合う層によって構成している。
【0010】
これらの層は、前記被覆に所定の干渉性色を与える。
【0011】
好ましいことに、前記所定の色は、金属光沢を有する赤の色合いである。特に、前記所定の色は、バーガンディレッド又はパープルレッドの色合いである。この所定の色は、被覆の層によって定められる光学的スタックの特定の構成によって得られる。
【0012】
また、被覆は、非常に薄い厚みを有し、通常は3μm未満であり、これによって、表面構造を有する又は複雑な幾何学的形状を有する任意の装飾性の物を覆うように構成することができる。
【0013】
本発明の別の利点は、被覆の厚みを大きく変更することなく、非常に広い範囲の赤の色合いを得ることができることに基づいている。例えば、前記被覆の厚みは、前記被覆が有する可能性のあるすべての赤の色合いの間で、高々3nm未満の値だけ変わる。
【0014】
特定の実施形態において、本発明は、単独で又は技術的に可能なすべての組み合わせにしたがって、以下の特徴のうちの1つ又は複数をさらに有することができる。
【0015】
特定の実施形態において、前記反射層は、銅(Cu)、金(Au)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)から選択される金属性材料によって作られる。
【0016】
特定の実施形態において、前記反射層は、Cuによって作られる。
【0017】
特定の実施形態において、前記反射層は、少なくとも40nmの厚みを有する。
【0018】
特定の実施形態において、前記反射層は、100nmの厚みを有する。
【0019】
特定の実施形態において、前記透光層は、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、アルミナ(Al2O3)、二酸化ハフニウム(HfO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、二酸化スズ(SnO2)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)から選択される材料によって作られる。
【0020】
特定の実施形態において、前記透光層は、SiO2によって作られる。
【0021】
特定の実施形態において、前記透光層は、10nm~50nmの厚みを有する。
【0022】
特定の実施形態において、前記透光層は、30nmの厚みを有する。
【0023】
特定の実施形態において、前記吸収層は、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、又はクロム(Cr)から選択される材料によって作られる。
【0024】
特定の実施形態において、前記吸収層は、Crによって作られる。
【0025】
特定の実施形態において、前記吸収層は、5nm~8nmの厚みを有する。
【0026】
特定の実施形態において、前記被覆は、350nm~600nmの波長に対して10%未満、620nm~780nmの波長に対して10%以上の反射率を有する。
【0027】
特定の実施形態において、前記被覆は、D65光源下におけるCIELAB色空間において、パラメーターL*が25~35であり、パラメーターa*が8~15であり、パラメーターb*が0~7である赤色を呈する。
【0028】
特定の実施形態において、前記被覆は、前記吸収層上に重なり合っており630nmの波長に対して1.48~1.51の屈折率を有するアクリル及び/又はニトロセルロースの保護層を有する。
【0029】
別の目的にしたがって、本発明は、計時器又は宝飾品用の外側部品を製造する方法に関し、基材上に600nm~780nmの波長に対して90%以上の反射率を有するように構成している不透明な反射層を堆積させるステップと、630nmの波長に対して1.45~2.8の屈折率を有する透光層を堆積させるステップと、及び吸収層を堆積させるステップとを行うことによって、基材の表面上に被覆を作る。
【0030】
特定の実施形態において、前記反射層、前記透光層及び前記吸収層の各堆積は、電子銃蒸発を伴う物理蒸着法によって行う。
【0031】
特定の実施形態において、前記透光層を堆積させるステップは、0.01nm/秒~0.1nm/秒の堆積速度で行う。
【0032】
特定の実施形態において、前記吸収層を堆積させるステップは、0.01nm/秒~0.05nm/秒の堆積速度で行う。
【0033】
特定の実施形態において、この方法は、630nmの波長に対して1.48~1.51の屈折率を有するように構成している保護層を堆積させる最終ステップを行う。
【0034】
以下の添付の図面を参照しながら例として与えられる下記の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の好ましい例示的な実施形態に係る外側部品の断面図を概略的に示している。
【
図2】本発明に係る被覆に対して分光比色計によって測定した分光反射率曲線を示している。
【
図3】保護層をさらに含む本発明に係る被覆に対して分光比色計によって測定した分光反射率曲線を示している。
【
図4】本発明の別の態様による外側部品の製造方法のフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、ユーザーに見えるように意図されている表面上にて所定の干渉性色を外側部品に与えることを可能にするいくつかの順に重なり合う層によって構成している被覆12が施された基材11を備える外側部品10に関する。
【0037】
好ましくは、前記所定の干渉性色は、赤の色合いである。
【0038】
基材11は、金属性材料、セラミックス材料又はポリマー材料によって作ることができる。また、基材11をガルバニック下層で被覆することができる。
【0039】
基材11上に、600nm~780nmの波長を反射するように構成している、不透明性又は準不透明性の反射層121が堆積される。
【0040】
特に、反射層121は、好ましくは、600nm~780nmの波長に対して0.9よりも大きい反射係数を有する。
【0041】
反射層121は、ゼロではない透過率を有し得るという意味で準不透明であることができるが、透過率は、可視スペクトルの波長範囲にわたって15%以下でなければならない。
【0042】
この反射層121は、好ましくは、金属性材料によって作られており、少なくとも40nmの厚みを有する。
【0043】
好ましくは、反射層121は、Cu、Au、Rh又はPtから選択される材料によって作られる。反射層121の材料は、その600nm~780nmの波長を反射する光学的能力のために選択される。この範囲は、光スペクトルにおける赤の色合いを表す。また、この材料は、赤色の波長の吸収率が低いために選択される。
【0044】
また、好ましくは、反射層121は、特に経済的理由及び実行の容易さのために、Cuによって作られる。
【0045】
反射層121は、PVD法、直流電気めっき、又は他の任意の適切な薄膜堆積法によって作ることができる。
【0046】
透光層122は、反射層121上に重なり合う。
【0047】
また、透光層122は、特定の波長範囲、例えば、前記透光層122がTiO2によって作られる場合に500nm未満、の波長にわたって光を吸収することができ、別の波長範囲においては透光性であるという意味で、準透光性であることができる。
【0048】
この透光層122の材料は、その光学的な透過性のために選択される。例として、透光層122は、SiO2、TiO2、Al2O3、HfO2、ZrO2、Ta2O5、SnO2、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO、MgO、Si3N4、AlNから選択される材料によって作られる。好ましくは、透光層122は、特に、経済的理由、実装の容易さ、及び再現性のために、SiO2によって作られる。
【0049】
例えば、透光層122は、好ましいことに、630nmの波長に対して1.45~2.8の屈折率を有し、この透光層122の屈折率に応じて10nm~50nmの厚みを有する。
【0050】
透光層122を、PVD、CVD、ALD法、又は他の任意の適切な薄膜堆積方法によって、反射層121上に堆積させることができる。
【0051】
最後に、
図1に示しているように、吸収層123が透光層122上に重なり合う。
【0052】
この吸収層123は、光吸収性のために選択される金属性材料によって作られる。例えば、吸収層123は、Ti、Ni又はCrによって作られる。好ましくは、吸収層123は、クロムによって作られる。
【0053】
吸収層123は、4nm~10nm、好ましくは5nm~8nm、さらに好ましくは7.2nm~7.8nm、の厚みを有する。
【0054】
ここで、本発明は、好ましいことに、被覆12のおかげで、赤の色合いの干渉性色を得ることができることがわかる。この被覆12は、非常に薄い厚みを有し、数千分の1mmのオーダーであり、より詳細には3μmよりも薄い。
【0055】
被覆12は、好ましいことに、前記特徴のおかげで、350nm~580nmの波長に対して、10%未満の反射率を有するように、また、8%~3%にわたる反射率を有するように、580nm~750nmの波長に対して3%~24%の反射率を有するように構成している。これらの値は、分光比色計によって行う被覆12の測定によって得られた
図2のスペクトル反射率曲線によってグラフで表されている。
【0056】
これらの反射率は、好ましいことに、赤の色合いに含まれる色のユーザーの視覚に対応する反射スペクトルを定めることができる。
【0057】
本発明の好ましい例示的な実施形態において、被覆12は、好ましいことに、吸収層123上に重なり合うアクリル及び/又はニトロセルロースの保護層124をさらに含み、可能性のある化学的及び/又は機械的攻撃から他の層を保護することができる。
【0058】
また、このような保護層124、例えば、3μmの厚みを有し630nmの波長に対して屈折率が1.5に近く、例えば1.48~1.51であるもの、の追加によって、弱め合う干渉を発生させることが可能になる。このような弱め合う干渉は、好ましいことに、350nm~550nmに対する反射率を低減して、580nm~780nmの波長が被覆12の色を形成することを可能にする。
【0059】
すなわち、本発明の好ましい例示的な実施形態において、保護層124は、好ましいことに、最終的な被覆12の赤色を得ることに寄与する。
【0060】
保護層124があることで、被覆12は、350nm~550nmの波長の範囲内において5%以下、550nm~750nmの波長において5~21%の反射率を有する。これらの値は、分光比色計によって行う被覆12の測定によって得られた
図3のスペクトル反射率曲線によってグラフで表されている。
【0061】
したがって、本発明の好ましい例示的な実施形態において、被覆12は、D65光源下におけるCIELAB色空間において、25~35のパラメーターL*、8~15のパラメーターa*、及び0~7のパラメーターb*の特徴がある赤色を呈する。
【0062】
なお、保護層124は必須ではなく、本発明の他の実施形態において、被覆12は、前記保護層124なしで、例えばCIELAB色空間における前記パラメーターの特徴を有する、赤色を呈することができる。
【0063】
本発明は、さらに、例えば上記のような、計時器又は宝飾品用の外側部品10、を製造する方法に関する。この方法の順次的なステップが、
図4のフローチャートによって表されており、所定の干渉性色を発生させるために基材11の表面上に被覆12を作ることを伴う。
【0064】
具体的には、この方法は、
- 基材11上に600nm~780nmの波長を反射するように構成している不透明な反射層121を堆積させるステップ101と、
- 630nmの波長に対して1.45~2.8の屈折率を有する透光層122を堆積させるステップ102と、及び
- 吸収層123を堆積させるステップ103と
を順次的に行う。
【0065】
下において詳細に示している製造方法の例は、真空堆積技術を用いて、反射層121、透光層122及び吸収層123を堆積させる。
【0066】
特に、好ましい実施形態において、電子銃蒸発を伴う物理蒸着法を用いる。
【0067】
しかし、これらの層の堆積は、反応性媒体におけるマグネトロンスパッタリングのような他のPVD法、又はALD法やプラズマ化学気相成長法(PECVD)のようなCVD法によって実行できる。
【0068】
反射層121の堆積101は、例えば、前記反射層121が100nmの厚みを有するように行われる。反射層121を構成するように考慮することができる材料のうち、Cu、Au、Rh又はPt、Cuが好ましい。
【0069】
次に、透光層122は、反射層121上にて、好ましくは30nmの厚みを有するように、堆積される。透光層122を構成するように考慮することができる材料のうち、SiO2、TiO2、Al2O3、HfO2、ZrO2、Ta2O5、SnO2、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO、MgO、Si3N4、又はAlN、SiO2が好ましい。
【0070】
例として、透光層122の堆積の再現性を良好にするために、堆積速度は、0.01nm/秒~0.1nm/秒、好ましくは0.1nm/秒、であるように選択され、酸素(O2)の流量は、5sccmである。また、これらのパラメーターは、透光層122の材料密度及び厚みを非常に正確に制御することを可能にする。
【0071】
次に、吸収層123は、透光層122上にて、好ましくは、例えば、5nm~8nm、好ましくは7.2nm~7.8nm、の厚みを有するように堆積される。好ましくは、吸収層123はクロムによって作られる。
【0072】
例として、吸収層123の堆積の再現性を良好にするために、堆積速度は、0.01nm/秒~0.05nm/秒、好ましくは0.02nm/秒、であるように選択され、アルゴン(Ar)の流量は、2sccmであり、これによって、吸収層123の堆積の再現性に対するエンクロージャの壁の汚れの影響を最小限に抑えることができる。
【0073】
本発明の実装の好ましい例において、本製造方法は、さらに、保護層124を堆積させる最終ステップ104を行う。この保護層124は、好ましいことに、630nmの波長に対して約1.48~1.51の屈折率を有するように構成している。
【符号の説明】
【0074】
10 外側部品
11 基材
12 被覆
121 反射層
122 透光層
123 吸収層
124 保護層
【外国語明細書】