(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145524
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/16 20060101AFI20220926BHJP
F16B 2/14 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B62D1/16
F16B2/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020166
(22)【出願日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2021045737
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】及川 達也
(72)【発明者】
【氏名】村木 俊洋
【テーマコード(参考)】
3D030
3J022
【Fターム(参考)】
3D030DD02
3D030DF00
3D030DG01
3J022DA12
3J022EA03
3J022FB13
3J022GA06
3J022GB01
(57)【要約】
【課題】組付け作業が容易で高い剛性を有するステアリング装置を得る。
【解決手段】ステアリングシャフトを内包し姿勢変更可能なコラムハウジングCと、コラムハウジングCに近接配置されたブラケットBと、コラムハウジングC及びブラケットBの間にあってコラムハウジングC及びブラケットBを押圧するテンショナ機構Tとを備え、テンショナ機構Tが、コラムハウジングC或いはブラケットBに設けられるケーシング1と、ケーシング1に設けられ、コラムハウジングCとブラケットBの対向方向に交差する方向に移動可能なテンショナ本体2と、テンショナ本体2を付勢する付勢部材3と、を備え、テンショナ本体2が、コラムハウジングCに向く第1面と、ブラケットBに向く第2面とを有し、第1面と第2面が付勢方向下手側ほど間隔が狭くなるテーパー状に構成されたステアリング装置S。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵に係るステアリングシャフトを内包し、前記車両の軸支部に支持されて姿勢変更可能なコラムハウジングと、
前記車両の側の前記軸支部とは異なる位置で前記コラムハウジングに近接配置されたブラケットと、
前記コラムハウジングおよび前記ブラケットの間に設けられ、前記コラムハウジングおよび前記ブラケットに対する押圧力を生じさせるテンショナ機構と、を備えており、
前記テンショナ機構が、
前記コラムハウジング或いは前記ブラケットに設けられるケーシングと、
前記ケーシングに設けられ、前記コラムハウジングと前記ブラケットとの対向方向に交差する方向に移動可能なテンショナ本体と、
前記テンショナ本体を前記交差する方向に付勢する付勢部材と、と備え、
前記テンショナ本体が、前記コラムハウジングの側に向く第1面と、前記ブラケットの側に向く第2面とを有し、前記第1面と前記第2面とが、前記付勢部材による付勢方向の下手側に位置するほど互いの間隔が狭いテーパー状に構成されているステアリング装置。
【請求項2】
前記ケーシングに、前記第1面或いは前記第2面との当接によって前記対向方向に押されると共に、前記ケーシングが設けられていない側の前記ブラケット或いは前記コラムハウジングに当接する中間部材を備えている請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記中間部材に、先端に膨出部を備えつつ弾性変形可能な凸状の抜止め部が設けられ、前記抜止め部が係入する固定孔が前記ケーシングに設けられている請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記テンショナ本体を前記付勢方向と反対の方向に移動させた状態で互いに係合する係止部と被係止部とを、前記テンショナ本体および前記ケーシングに振り分け形成してある請求項1から3の何れか一項に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記テンショナ本体が前記付勢方向に延出する棒状部を備え、前記係止部が、前記棒状部の先端に前記付勢方向と直交する方向に弾性変形可能な状態で設けられた爪部であり、
前記被係止部が、前記ケーシングに設けられ、前記爪部が係止可能な凹部を備えつつ前記棒状部の端部を受け入れ可能な孔部である請求項4に記載のステアリング装置。
【請求項6】
前記テンショナ本体に、前記付勢方向に直交する方向に突出する脚部と、当該脚部の先端に設けられたフランジ部とが形成され、前記ケーシングに、前記脚部および前記フランジ部の移動を抜け止め可能に案内する溝部が設けられている請求項1から5の何れか一項に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係るステアリング装置は、車両の操舵に係るステアリングシャフトを内包し車両の軸支部に支持されて姿勢変更可能なコラムハウジングと、車両側の軸支部とは異なる位置でコラムハウジングに近接配置されたブラケットとを有し、コラムハウジングおよびブラケット間に押圧力を作用するテンショナ機構を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このようなステアリング装置としては例えば特許文献1に示すものがある(〔0011〕,〔0016〕段落および
図2、
図5、
図6参照)。
【0003】
この従来のステアリング装置においては、ステアリングコラムが車両側に固定されるメインブラケットに軸支され、テンショナ機構としての加圧部材がメインブラケットとステアリングコラムとの間に設けてある。加圧部材は板バネやコイルバネで構成され、この加圧部材によってメインブラケットからステアリングコラムに対して圧力が一方的に付与される。これによりステアリングコラムの左右方向の剛性を高めてステアリングホイールに伝達される振動の抑制を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のステアリング装置は、バネによる押し付け荷重を用いてステアリングコラムの剛性確保が行われる。そのため、ステアリングコラムはメインブラケットに対してバネでフローティングした状態となる。そのため、車両の振動の影響を受けたステアリングコラムには必ず幾らかの振動が生じ、ステアリングの操作感覚として剛性感が不足するものとなる。振動が長期間付与されることで加圧部材が疲労破壊する恐れも生じる。
【0006】
また、ステアリング装置を車両に組み付ける際には、加圧部材を圧縮させつつステアリングコラムをメインブラケットに挿入させる必要があり、組付け作業が極めて煩雑なものとなる。一方、組付け性を改善するには加圧部材のバネ荷重を制限しなければならず、これはステアリングコラムの保持剛性の悪化を招来する。
【0007】
このように、従来技術に係るステアリング装置では種々の解決すべき課題があり、従来から、組付け作業が容易で高い剛性を有するステアリング装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(特徴構成)
本発明に係るステアリング装置の特徴構成は、
車両の操舵に係るステアリングシャフトを内包し、前記車両の軸支部に支持されて姿勢変更可能なコラムハウジングと、
前記車両の側の前記軸支部とは異なる位置で前記コラムハウジングに近接配置されたブラケットと、
前記コラムハウジングおよび前記ブラケットの間に設けられ、前記コラムハウジングおよび前記ブラケットに対する押圧力を生じさせるテンショナ機構と、を備えており、
前記テンショナ機構が、
前記コラムハウジング或いは前記ブラケットに設けられるケーシングと、
前記ケーシングに設けられ、前記コラムハウジングと前記ブラケットとの対向方向に交差する方向に移動可能なテンショナ本体と、
前記テンショナ本体を前記交差する方向に付勢する付勢部材と、と備え、
前記テンショナ本体が、前記コラムハウジングの側に向く第1面と、前記ブラケットの側に向く第2面とを有し、前記第1面と前記第2面とが、前記付勢部材による付勢方向の下手側に位置するほど互いの間隔が狭いテーパー状に構成されている点にある。
【0009】
(効果)
本構成のテンショナ機構にあっては、テンショナ本体に互いにテーパー状となるように設けた第1面と第2面が、コラムハウジング或いはブラケットとケーシングとに常に当接する。このため、コラムハウジングとブラケットとが弾性的に相対変位することがない。よって、コラムハウジングの保持剛性が非常に高いものとなる。
【0010】
また、テーパー状の第1面と第2面とによる楔効果を利用して、コラムハウジングとブラケットとの相対位置を規定するため、テンショナ本体を軸心の方向に付勢する付勢部材は小さなもので済む。よって、テンショナ機構がコンパクトになり、搭載性にも優れたステアリング装置を得ることができる。
【0011】
(特徴構成)
本発明に係るステアリング装置は、前記ケーシングに、前記第1面或いは前記第2面との当接によって前記対向方向に押されると共に、前記ケーシングが設けられていない側の前記ブラケット或いは前記コラムハウジングに当接する中間部材を備えると好都合である。
【0012】
(効果)
本構成のようにケーシングにこのような中間部材を設け、ケーシングからの中間部材の押出し量を変えることで、テンショナ機構自体の厚みを変更することができる。このため、ブラケットとコラムハウジングとの隙間寸法に製造誤差等がある場合でも、中間部材の位置調整によって寸法誤差を吸収することができる。
【0013】
また、中間部材が、ブラケットあるいはコラムハウジングに当接する構成では、コラムハウジングのチルト作動に際して中間部材はブラケット等と摺動することになる。そのためブラケットやコラムハウジングの摩耗等による耐久性が懸念される。しかし、中間部材は比較的簡単な構成にすることができ、中間部材の材質を適宜選択することでブラケット等の摩耗損傷を防止することができる。よって、耐久性に優れたステアリング装置を得ることができる。
【0014】
(特徴構成)
本発明に係るステアリング装置においては、前記中間部材に、先端に膨出部を備えつつ弾性変形可能な凸状の抜止め部が設けられ、前記抜止め部が係入する固定孔が前記ケーシングに設けられていると好都合である。
【0015】
(効果)
本構成のように、弾性変形可能な凸状の抜止め部を固定孔に係入する構成であれば、ケーシングに対する中間部材の組付け作業が容易となる。
【0016】
また、ケーシングに対する中間部材の仮止めが可能な本構成であれば、例えばテンショナ機構を取り付けたコラムハウジングをブラケットの所定位置に設置する際に、中間部材が不用意に脱落することがなく、コラムハウジングの組付け作業が極めて容易となる。
【0017】
(特徴構成)
本発明に係るステアリング装置においては、前記テンショナ本体を前記付勢方向と反対の方向に移動させた状態で互いに係合する係止部と被係止部とを、前記テンショナ本体および前記ケーシングに振り分けて形成しておくことができる。
【0018】
(効果)
本構成の係止部と被係止部を備えることで、例えばテンショナ機構を組み込んだコラムハウジングをブラケット対する所定位置に設置する際に、テンショナ本体の機能発揮を保留することができる。つまり、組付け作業に際してテンショナ本体の第1面あるいは第2面がブラケットなど相手方の部材に作用することがなく、コラムハウジングの組付け作業が容易となる。その後、コラムハウジングの組付け作業が終了したのち係止部と被係止部との係合を解除することでテンショナ機構を機能させることができ、ステアリング装置の設置作業が迅速化される。
【0019】
(特徴構成)
本発明に係るステアリング装置は、前記テンショナ本体が前記付勢方向に延出する棒状部を備え、前記係止部が、前記棒状部の先端に前記付勢方向と直交する方向に弾性変形可能な状態で設けられた爪部であり、前記被係止部が、前記ケーシングに設けられ、前記爪部が係止可能な凹部を備えつつ前記棒状部の端部を受け入れ可能な孔部であると好都合である。
【0020】
(効果)
本構成の係止部および被係止部を備えることで、テンショナ本体の棒状部をケーシングの孔部に押し込むことでテンショナ本体を簡単に位置固定することができる。よって、テンショナ機構の存在が障害になることなくコラムハウジングの取付け作業が円滑なものとなる。
【0021】
また、テンショナ本体が棒状部を備えることで、例えば付勢部材をコイルバネとしつつ棒状部に外挿させておくこともできる。よって、付勢部材の保持機能とテンショナ本体の係止機能とを併せ持つテンショナ機構を合理的に構成することができる。
【0022】
(特徴構成)
本発明に係るステアリング装置は、前記テンショナ本体に、前記付勢方向に直交する方向に突出する脚部と、当該脚部の先端に設けられたフランジ部とが形成され、前記ケーシングに、前記脚部および前記フランジ部の移動を抜け止め可能に案内する溝部が設けられた構成とすることができる。
【0023】
(効果)
本構成であれば、テンショナ本体をケーシングに取り付ける際、あるいは、テンショナ本体を取り付けたコラムハウジングをブラケットに設置する際に、テンショナ本体がケーシングから脱落するのを防止することができる。
【0024】
また、脚部や溝部によってテンショナ本体の移動軌跡が安定化するから、テンショナ本体による押圧機能が確実に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1の実施形態に係るステアリング装置の構成を示す分解斜視図
【
図2】第1の実施形態に係るテンショナ機構の要部を示す分解斜視図
【
図3】第1の実施形態に係るテンショナ機構の動作態様を示す断面図
【
図4】第2の実施形態に係るテンショナ機構の構成を示す断面図
【
図5】第3の実施形態に係るテンショナ機構の構成を示す断面図
【
図6】第4の実施形態に係るテンショナ機構の構成を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
(概要)
本発明に係るステアリング装置Sは、車両の操舵に係るステアリングシャフトを内包し車両の軸支部に支持されて姿勢変更可能なコラムハウジングCと、車両側の軸支部とは異なる位置でコラムハウジングCに近接配置されたブラケットBとを有し、コラムハウジングCおよびブラケットBの間に押圧力を作用するテンショナ機構Tを備えたものに関する。以下、各図を参照しつつ本発明のステアリング装置Sについての各実施形態を説明する。
【0027】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係るステアリング装置Sの例を
図1乃至
図3に示す。本装置のテンショナ機構Tは、コラムハウジングCのチルト動作を可能としつつ、コラムハウジングCが車両に対して不用意に移動しないように、ブラケットBを用いてコラムハウジングCの移動を防止するものである。本構成のテンショナ機構Tは、車両の使用中におけるコラムハウジングCの移動を確実に抑え、かつ、車両への取付けに際して良好な作業性を発揮するものであって以下の構成を有する。
【0028】
図1乃至
図3に示すように、テンショナ機構Tは、コラムハウジングCとブラケットBとに亘って設けられる。主な構成としては、ケーシング1と、当該ケーシング1に設けられてコラムハウジングCとブラケットBとの対向方向に交差する方向に移動可能なテンショナ本体2と、このテンショナ本体2を前記交差する方向に付勢する付勢部材3とを備えている。
【0029】
このうちテンショナ本体2は、コラムハウジングCの側に向く第1面F1と、ブラケットBの側に向く第2面F2とを備えており、第1面F1と第2面F2とが非平行に構成されている。つまり、第1面F1および第2面F2は、付勢部材3による付勢方向の下手側に位置するほど互いの間隔が狭くなるテーパー状に構成されている。本構成により、後述する如くテンショナ本体2を付勢することで、楔効果によりコラムハウジングCとブラケットBとを互いに押し付けることができる。
【0030】
〔テンショナ機構〕
テンショナ機構Tのより詳細な構成を以下に示す。
図2および
図3に示すように、ここでのテンショナ機構Tは、ケーシング1と、ケーシング1に取り付けられたテンショナ本体2、テンショナ本体2を付勢する付勢部材3、テンショナ本体2と当接する中間部材4で構成される。ケーシング1はコラムハウジングCに設けられているが、ブラケットBに設けられていても良い。
【0031】
ケーシング1は、長尺状の部材であり、本実施形態ではコラムハウジングCに対してアルミダイカストによって一体形成されている。勿論、コラムハウジングCと別体に構成したものをネジなどによってコラムハウジングCに取り付けるものであっても良い。ケーシング1の中央にはテンショナ本体2をスライド可能に保持する溝部11が形成してある。
【0032】
テンショナ本体2は、例えばヘッド部21と棒状部22とを備えている。ヘッド部21は、コラムハウジングCとブラケットBを互いに離間する方向に押圧する部位であり、ケーシング1のうち溝部11を挟んで形成された長尺状の受面12に当接する第1面F1と、ブラケットBの側の部材に当接する第2面F2とを備えている。ここでは、第1面F1は、コラムハウジングCの軸心Xと平行であり、第2面F2が軸心Xに対して傾斜している。
【0033】
テンショナ本体2のヘッド部21のうち第1面F1の中央位置からは、付勢方向に直交する方向つまりケーシング1に向く方向に突出する脚部23が形成されている。また、脚部23の先端にはフランジ部24が形成されている。脚部23の一部およびフランジ部24はケーシング1の溝部11に挿入され、フランジ部24の一部が溝部11の裏面に当接する。これにより、脚部23およびフランジ部24が溝部11の内部に保持される。
【0034】
尚、溝部11の一部にはフランジ部24が挿通可能な幅広部13を設けてある。この幅広部13はテンショナ本体2をケーシング1に装着するときにのみ用いるものであり、テンショナ本体2が稼働状態にあるときには脚部23およびフランジ部24は幅広部13の位置に来ることはない。
【0035】
本構成であれば、テンショナ本体2をケーシング1に取り付ける際、あるいは、テンショナ本体2を取り付けたコラムハウジングCをブラケットBに設置する際に、テンショナ本体2がケーシング1から脱落するのを防止することができる。また、脚部23や溝部11によってテンショナ本体2の移動軌跡が安定化するから、テンショナ本体2による押圧機能が確実に発揮される。
【0036】
テンショナ本体2のヘッド部21からは、軸心Xに沿う方向に棒状部22が延出している。この棒状部22には、例えばコイルスプリング31で構成する付勢部材3を外挿させてある。つまり、棒状部22の延出方向は付勢部材3の付勢方向でもある。棒状部22の先端には係止部25が設けてある。当該係止部25は具体的には爪部251であり、この爪部251は付勢方向と直交する方向に弾性変形可能である。
図2に示すように棒状部22の先端が一対の腕部252を有するフォーク状に形成され、夫々の腕部252の先端部に爪部251が互いに反対方向を向くように形成されている。
【0037】
一方のケーシング1には、係止部25が係止可能な被係止部14が形成してある。具体的には、棒状部22の端部を受け入れ可能な孔部141が形成してあり、さらに孔部141の内側面に、爪部251が係止可能な凹部142が形成してある。この実施形態では、凹部142は孔部141の縁部である。
【0038】
図3(a)に示すように、本構成の係止部25および被係止部14であれば、テンショナ本体2の棒状部22をケーシング1の孔部141に押し込むことで付勢部材3が圧縮された状態でテンショナ本体2をケーシング1に仮固定することができる。よって、テンショナ機構Tを備えたコラムハウジングCをブラケットBに設置する際のテンショナ機構Tの機能保留作業が容易なものとなる。
【0039】
テンショナ本体2が仮固定の状態にあるとき、テンショナ本体2の第1面F1あるいは第2面F2がブラケットBなど相手方の部材に作用することがなく、コラムハウジングCの組付け作業が容易となる。その後、コラムハウジングCの組付け作業が終了したのち係止部25と被係止部14との係合を解除する(
図3(b))。その場合には、一対の腕部252に対して直交方向から作業用の工具を当接させ、一対の腕部252の間隔を縮めることで爪部251が凹部142から容易に離脱する。このように本構成の係止部25および被係止部14を設けることで、ステアリング装置Sの設置作業が容易となり、通常の稼働時にはコラムハウジングCの振動を確実に防止できるテンショナ機構Tが合理的に構成される。
【0040】
〔中間部材〕
図2に示すように、テンショナ機構Tには、テンショナ本体2からブラケットBに押圧力を作用させるべく、ヘッド部21に当接する中間部材4を備えている。中間部材4もテーパ状に構成してあり、ヘッド部21の第2面F2に当接する第3面F3と、ブラケットBに当接する第4面F4とを備えている。ヘッド部21の第2面F2が中間部材4の第3面F3に当接した状態では第1面F1と第4面F4とが平行になる。
【0041】
このような中間部材4であれば、中間部材4の厚みを適宜設定することで、ケーシング1とブラケットBとの隙間寸法に拘わらずテンショナ本体2の配置位置が一定となり、ブラケットBに対する適切な押圧力の付与が容易となる。このように、ブラケットBとコラムハウジングCとの隙間寸法に製造誤差がある場合でも寸法誤差を吸収してテンショナ機構Tを適切に機能させることができる。
【0042】
また、中間部材4がブラケットBに当接する場合、コラムハウジングCのチルト作動に際して中間部材4の第4面F4はブラケットBに対して摺動することになる。そのためブラケットBが摩耗するなどテンショナ機構Tの耐久性が懸念される。しかし、中間部材4の材質やブラケットBに対する当接面積を適宜設定することでブラケットB等の摩耗損傷を防止することができ、耐久性に優れたステアリング装置Sを得ることができる。
【0043】
中間部材4には、ケーシング1に対する取り付けを容易にするために膨出部41を設けてある。
図2に示すように、膨出部41は中間部材4の一部からケーシング1に向けて突出形成された抜止め部42の先端に設けてあり、弾性的に開き変形可能な鉤状に構成してある。一方、ケーシング1には膨出部41および抜止め部42が多少の弾性変形を伴って係入可能な固定孔15が設けられている。
【0044】
尚、抜止め部42が固定孔15に係入した状態で、中間部材4はケーシング1からは脱落しないが、ケーシング1からブラケットBに向かう方向に沿っては所定距離の移動が可能である。
【0045】
本構成であれば、例えばテンショナ機構Tを取り付けたコラムハウジングCをブラケットBに組み付ける際に中間部材4が不用意に脱落することがなく、コラムハウジングCの組付け作業が容易となる。また、弾性変形可能な抜止め部42を固定孔15に係入する構成であるから、ケーシング1に対する中間部材4の組付け作業も極めて容易である。
【0046】
本構成のテンショナ機構Tであれば、付勢部材3によってヘッド部21を軸心Xの方向に押し、楔効果を利用して中間部材4をブラケットBに押し付けることができる。よって、付勢部材3の付勢力を大きく設定する必要がなく、コンパクトな付勢部材3を用いることができ、テンショナ機構Tが省スペースなものとなる。中間部材4がブラケットBに押し付けられた状態では、ヘッド部21と中間部材4がケーシング1とブラケットBの間に密に当接した状態となる。よって、コラムハウジングCはブラケットBに対して移動する余地がなく強固に位置保持されることとなる。
【0047】
〔第2の実施形態〕
図4には、中間部材4を省略しテンショナ機構Tを簡略化した例を示す。本構成では、ヘッド部21の第1面F1とケーシング1の受面12とを傾斜面とし、ブラケットBの側の第2面F2は軸心Xと平行な平面としている。この場合、種々のステアリング装置Sに共通部材として利用可能なブラケットBに特段の加工を施す必要がなく、テンショナ機構Tのみで押圧機能を発揮させることができ、種々のステアリング装置Sへの適用が容易となる。
【0048】
尚、この場合でも、コラムハウジングCとブラケットBとの隙間寸法のバラつきを吸収するために、ヘッド部21とコラムハウジングCとの間あるいはヘッド部21とブラケットBとの間に中間部材4を設けることができる。その場合には、例えば単なる平面状のシム部材を対向する何れかの部材に取り付けると良い。
【0049】
〔第3の実施形態〕
図5も、
図4の例と同様に中間部材4を省略するものである。ただし、ヘッド部21の構成は第1の実施形態と同様に、ブラケットBに向く第2面F2を傾斜面としてある。
【0050】
この場合には、ブラケットBにも傾斜面B1を形成する必要がある。ただし、ヘッド部21は軸心Xに沿って移動し軸心Xに交差する方向には変位しないからヘッド部21の押圧機能が安定的なものとなる。
【0051】
尚、本構成においても、ヘッド部21あるいはブラケットBに平面状のシム部材を取り付けることができる。これにより、ヘッド部21とブラケットBとの隙間が埋められ、軸心Xに沿ったヘッド部21の機能発揮位置を適切な位置に調整することができる。
【0052】
〔第4の実施形態〕
図6(a)(b)には、付勢部材3を予め圧縮した状態でテンショナ本体2などを仮組みし、これをケーシング1に取り付ける例を示す。
【0053】
本構成においてもテンショナ本体2にはヘッド部21と棒状部22が備えられる。ただし、端部の係止部25の形状が異なる。即ち、係止部25は棒状部22の端部において軸心Xに沿って延出する一つの腕部253を有し、当該腕部253の端部に爪部254が形成されている。当該爪部254は、軸心Xに交差する方向に揺動可能である。
【0054】
本実施形態では、一方の被係止部14をケーシング1から分離して構成する。即ち、被係止部14はブロック状の受け部材5に設けることとし、棒状部22を挿入可能な孔部143と、当該孔部143に挿通された爪部254が係止する凹部144とで構成する。この凹部144は軸心Xに対する径方向に沿って受け部材5の壁部を貫通形成した切欠きである。
【0055】
図6(b)に示すように、テンショナ本体2等をケーシング1に取り付ける際には、棒状部22に付勢部材3を挿通し、棒状部22を受け部材5の孔部143に挿入する。付勢部材3を縮めつつ押し込むことで爪部254が凹部144に係止し、付勢部材3が圧縮された状態でテンショナ本体2と被係止部14とが一体化される。
【0056】
図6に示すように、受け部材5の裏面には突起部51が形成され、溝部11の幅広部13から挿通されて溝部11の裏面に係合可能に構成してある。これにより、付勢部材3を圧縮した状態のテンショナ本体2がケーシング1に取り付けられる。このようにテンショナ本体2を圧縮した状態で受け部材5との組付けをケーシング1から離間した状態で行えることで当該組付け作業が極めて容易となる。
【0057】
ケーシング1にテンショナ本体2が固定されたあと、コラムハウジングCをブラケットBに対する所定位置に固定し、爪部254の係止を解除する。その際には、爪部254を軸心Xの側に押すだけで係止状態が簡単に解除される。このように本構成のテンショナ機構Tを備えることで、組付け作業が極めて容易なステアリング装置Sを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のステアリング装置は、例えば、ブラケットに対してチルト動作可能にコラムハウジングが取り付けられたステアリング装置に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 ケーシング
11 溝部
14 被係止部
141 孔部
142 凹部
144 凹部
15 固定孔
2 テンショナ本体
22 棒状部
23 脚部
24 係止部
251 爪部
24 フランジ部
3 付勢部材
4 中間部材
41 膨出部
42 抜止め部
B ブラケット
C コラムハウジング
F1 第1面
F2 第2面
S ステアリング装置
T テンショナ機構