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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145557
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20220926BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20220926BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20220926BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20220926BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01F27/29 Q
H01F17/04 N
H01F27/06 103
H01F27/06 101
H01F27/28 152
H01F27/30 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028742
(22)【出願日】2022-02-26
(31)【優先権主張番号】202110295427.9
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(71)【出願人】
【識別番号】512010122
【氏名又は名称】田村(中国)企業管理有限公司
【氏名又は名称原語表記】TAMURA CORPORATION OF CHINA LIMITED
【住所又は居所原語表記】13F,Block A,International Shopping Centre Shanghai No.527 Huaihai Zhong Road,Shanghai,China
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 潤二
(72)【発明者】
【氏名】王 堅
(72)【発明者】
【氏名】呂 俊
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AB02
5E043EA01
5E043EA06
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA08
5E070DB02
5E070DB04
5E070EA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】回路基板に直接実装可能なコイル装置の組み立てを容易にする。
【解決手段】リアクトル(コイル装置)は、コアとコイルを備えた素子部と、コイルの引出線を案内するガイド部品50と、Z方向に垂直な回路基板上に配置され、素子部及びガイド部品を回路基板に対して位置決めする台座と、を備える。ガイド部品は、コア上に配置されたZ方向に垂直なY方向に延びる柱状の頭部51を備え、頭部の外周部に、頭部の周方向に延びた、引出線を案内するガイド溝55と、頭部の周方向に延びた、コア上のガイド部品の転動又は回転摺動を案内する曲面である回転案内面(53c、53d、53e、51d、51e)と、が形成され、ガイド部品が、引出線がガイド溝から脱出しないようにガイド溝とは反対側から引出線を押さえる押さえ部54を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとコイルを備えた素子部と、
前記コイルの引出線を案内するガイド部品と、
回路基板上に配置され、前記素子部及び前記ガイド部品を前記回路基板に対して位置決めする台座と、
を備え、
前記ガイド部品が、前記コア上に配置された、前記回路基板の垂直方向であるZ方向に垂直なY方向に延びる柱状の頭部を備え、
前記頭部の外周部に、
前記頭部の周方向に延びた、前記引出線を案内するガイド溝と、
前記頭部の周方向に延びた、前記コア上の前記ガイド部品の転動又は回転摺動を案内する曲面である回転案内面と、が形成され、
前記ガイド部品が、前記引出線が前記ガイド溝から脱出しないように前記ガイド溝とは反対側から前記引出線を押さえる押さえ部を備えた、
コイル装置。
【請求項2】
前記ガイド部品が、前記頭部の前記Y方向及び前記Z方向に垂直なX方向における一端部から前記回路基板に向かって前記Z方向に延びたベースを備え、
前記ベースは、背面を前記コアに向けて配置され、
前記ガイド溝が、前記ベースの正面の前記Z方向における全長に亘って延長した、
請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記ガイド溝の一対の側壁が、それぞれ、前記ベースの先端より先へ延長した延長部を有し、
一対の前記延長部が、前記押さえ部を介して連結され、
前記Z方向において、前記ベースと前記押さえ部とが所定の間隔を空けて配置された、
請求項2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記コアが、前記台座を介して前記回路基板上に直立し、前記Y方向に延びた壁部を有し、
前記コイルの本体部が前記壁部の背面側に配置され、
前記ガイド部品の前記頭部が前記壁部の上に配置され、
前記引出線が、前記ガイド部品の前記頭部に形成された前記ガイド溝に沿ってU字状に曲げられ、前記引出線の先端部が前記壁部の正面側に配置された、
請求項2に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記頭部の下面と前記ベースの背面は、互いに垂直な平面であり、
前記頭部の下面と前記ベースの平面により形成された隅部に、前記コアの前記壁部の上面と外側面により形成された角部が収容された、
請求項4に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記台座が、
前記回路基板に対して前記台座を位置決めする台座位置決め手段と、
前記台座に対して前記素子部を位置決めする素子部位置決め手段と、
前記ガイド部品と嵌合する第1の嵌合部と、を備え、
前記ガイド部品が、
前記第1の嵌合部と嵌合して、前記台座に対して前記ガイド部品を位置決めする第2の嵌合部を備えた、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記第2の嵌合部が、前記ガイド部品の先端部であり、
前記第1の嵌合部が、前記ガイド部品の先端部が嵌め込まれる第1の嵌合溝を有する、
請求項6に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記ガイド部品の先端部の両側面には、背面に向かって幅が徐々に狭くなるように斜面が形成された、
請求項7に記載のコイル装置。
【請求項9】
前記第1の嵌合溝の縁に、前記第2の嵌合部の前記第1の嵌合溝からの脱出を阻止する突起が形成された、
請求項7に記載のコイル装置。
【請求項10】
前記第1の嵌合部に、前記引出線が嵌め込まれる第2の嵌合溝が形成された、
請求項7に記載のコイル装置。
【請求項11】
前記第1の嵌合部が、
前記第1の嵌合溝の両側面から突出する一対の対向する突出部を有し、
一対の前記突出部の先端面と前記第1の嵌合溝の底面によって前記第2の嵌合溝が形成された、
請求項10に記載のコイル装置。
【請求項12】
前記突出部の上面が、前記ガイド部品の先端と接触して、前記Z方向において前記ガイド部品を位置決めする、
請求項11に記載のコイル装置。
【請求項13】
前記台座位置決め手段が、
前記コアと嵌合して、前記台座に対して前記素子部を位置決めする凹部を含む、
請求項6に記載のコイル装置。
【請求項14】
前記台座の底に、前記コイルの本体部を通す開口部が形成された、
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回路基板に実装可能なコイル部品が記載されている。特許文献1に記載のコイル部品はボビンを備えていて、ボビンにはコイルの引出線を収容する溝が形成されている。また、ボビンには、回路基板に半田付けされるピン端子が植え込まれていて、コイルの引出線はピン端子に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-34429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のコイル部品では、コイルの引出線をピン端子に接続する工程が必要になるため、組み立て作業の工数が多い。また、コイルに断面積が大きく剛性が高い導線が使用される場合は、手作業で導線を曲げて湾曲した溝に嵌め込むことは難しく、治工具を使用して導線を曲げることが必要になり、組み立て作業の工数が更に多くなる。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、回路基板に直接実装可能なコイル装置の組み立てを容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るコイル装置は、コアとコイルを備えた素子部と、コイルの引出線を案内するガイド部品と、Z方向に垂直な回路基板上に配置され、素子部及びガイド部品を回路基板に対して位置決めする台座と、を備え、ガイド部品が、コア上に配置された、Z方向に垂直なY方向に延びる柱状の頭部を備え、頭部の外周部に、頭部の周方向に延びた、引出線を案内するガイド溝と、頭部の周方向に延びた、コア上のガイド部品の転動又は回転摺動を案内する曲面である回転案内面と、が形成され、ガイド部品が、引出線がガイド溝から脱出しないようにガイド溝とは反対側から引出線を押さえる押さえ部を備えたものである。
【0007】
上記のコイル装置において、ガイド部品が、頭部のY方向及びZ方向に垂直なX方向における一端部から回路基板に向かってZ方向に延びたベースを備え、ベースは、背面をコアに向けて配置され、ガイド溝が、ベースの正面のZ方向における全長に亘って延長した構成としてもよい。
【0008】
上記のコイル装置において、ガイド溝の一対の側壁が、それぞれ、ベースの先端より先へ延長した延長部を有し、一対の延長部が、押さえ部を介して連結され、Z方向において、ベースと押さえ部とが所定の間隔を空けて配置された構成としてもよい。
【0009】
上記のコイル装置において、コアが、台座を介して回路基板上に直立し、Y方向に延びた壁部を有し、コイルの本体部が壁部の背面側に配置され、ガイド部品の頭部が壁部の上に配置され、引出線が、ガイド部品の頭部に形成されたガイド溝に沿ってU字状に曲げられ、引出線の先端部が壁部の正面側に配置された構成としてもよい。
【0010】
上記のコイル装置において、頭部の下面とベースの背面は、互いに垂直な平面であり、頭部の下面とベースの平面により形成された隅部に、コアの壁部の上面と外側面により形成された角部が収容された、構成としてもよい。
【0011】
上記のコイル装置において、台座が、回路基板に対して台座を位置決めする台座位置決め手段と、台座に対して素子部を位置決めする素子部位置決め手段と、ガイド部品と嵌合する第1の嵌合部と、を備え、ガイド部品が、第1の嵌合部と嵌合して、台座に対してガイド部品を位置決めする第2の嵌合部を備えた構成としてもよい。
【0012】
上記のコイル装置において、第2の嵌合部が、ガイド部品の先端部であり、第1の嵌合部が、ガイド部品の先端部が嵌め込まれる第1の嵌合溝を有する構成としてもよい。
【0013】
上記のコイル装置において、ガイド部品の先端部の両側面には、背面に向かって幅が徐々に狭くなるように斜面が形成された構成としてもよい。
【0014】
上記のコイル装置において、第1の嵌合溝の縁に、第2の嵌合部の第1の嵌合溝からの脱出を阻止する突起が形成された構成としてもよい。
【0015】
上記のコイル装置において、第1の嵌合部に、引出線が嵌め込まれる第2の嵌合溝が形成された構成としてもよい。
【0016】
上記のコイル装置において、第1の嵌合部が、第1の嵌合溝の両側面から突出する一対の対向する突出部を有し、一対の突出部の先端面と第1の嵌合溝の底面によって第2の嵌合溝が形成された構成としてもよい。
【0017】
上記のコイル装置において、
突出部の上面が、ガイド部品の先端と接触して、回路基板に垂直なZ方向においてガイド部品を位置決めする構成としてもよい。
【0018】
上記のコイル装置において、台座位置決め手段が、コアと嵌合して、台座に対して素子部を位置決めする凹部を含む構成としてもよい。
【0019】
上記のコイル装置において、台座の底に、コイルを通す開口部が形成された構成としてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態によれば、回路基板に直接実装可能なコイル装置の組み立てを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るリアクトルの外観図である。
図2】本発明の一実施形態に係るリアクトルの外観図である。
図3】本発明の一実施形態に係るリアクトルの分解図である。
図4】本発明の一実施形態に係る台座の外観図である。
図5】本発明の一実施形態に係るガイド部品の外観図である。
図6】本発明の一実施形態に係るガイド部品の外観図である。
図7】本発明の一実施形態に係るガイド部品の縦断面図である。
図8】ガイド部品を用いて引出線を折り曲げる手順を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の又は対応する事項には、同一の又は対応する符号を付して、重複する説明を省略する。また、各図において、符号が共通する事項が複数表示される場合は、当該複数の表示の一部について符号の付記を適宜省略する。
【0023】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係るリアクトル1(コイル装置)の外観図である。図3は、リアクトル1の分解図である。
【0024】
以下の説明において、図1における右上から左下へ向かう方向をX方向、左上から右下へ向かう方向をY方向、下から上へ向かう方向をZ方向と定義する。X方向及びY方向は互いに直交する水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。なお、リアクトル1は、図1におけるX方向、Y方向、Z方向及びそれらの中間の方向のいずれの方向を鉛直に向けて使用してもよい。
【0025】
以下に説明する本発明の実施形態に係るリアクトル1は、専用の(具体的には、後述するコイル10の螺旋部11を通す開口部が形成された)回路基板に実装可能に構成されている。なお、Z方向は、回路基板の垂直方向である。
【0026】
図3に示されるように、リアクトル1は、電気的機能を担う素子部1aと、素子部1aを回路基板に取り付けるためのソケット1bを備えている。
【0027】
素子部1aは、コイル10(巻線)と、コア20(磁心)と、コイル10とコア20との絶縁を確保するための絶縁シート31及び32を備えている。
【0028】
コイル10は、エナメル等の絶縁被膜又は絶縁被覆が施された導線を螺旋状(弦巻線状)に巻いたものである。導線には、例えば、銅やアルミニウム等から形成された平角線や丸線が使用される。より具体的には、本実施形態のコイル10は、平角線をエッジワイズ巻きしたものであるが、導線の断面形状や巻き方はこの構成に限定されない。
【0029】
コイル10は、導線が螺旋状に巻かれた螺旋部11(本体部)と、螺旋部11の両端から延びる一対の引出線12を有している。
【0030】
コア20は、略矩形筒状のO形コア21(枠形磁心)と長円柱状のI形コア22(棒形磁心)とを組み合わせて形成された8字形の圧粉磁心である。図1に示されるように、O形コア21は、コア20の外脚20bとなるX方向に延びる一対の直線部と、コア20のヨーク20cとなるY方向に延びる一対の直線部とが枠状に連結したものである。
【0031】
I形コア22は、長さ方向をX方向に向けて、一対の外脚20bの間に配置され、コア20の中脚部となる。I形コア22は、コイル10の中空部に通され、コイル10と共にO形コア21の中空部に収容される。
【0032】
O形コア21の内周面は、絶縁シート31によって覆われ、O形コア21とコイル10との絶縁が確保されている。また、I形コア22の外周面は、絶縁シート32によって覆われ、I形コア22とコイル10との絶縁が確保されている。
【0033】
本実施形態のO形コア21は、2つの略矩形筒状のO形コアユニット211を同心に(すなわち、中心線が一致するように)重ねて接合することによって形成されている。2つのO形コアユニット211は、例えば溶接、ろう付け又は接着等によって接合される。O形コア21は、単一のO形コアユニット211から構成されてもよく、3つ以上の複数のO形コアユニット211から構成されてもよい。O形コア21を構成するO形コアユニット211の数を変えることにより、リアクトル1の性能(例えば、インダクタンス値等)を調整することができる。O形コア21のユニットシステム化により、単一のサイズのO形コアユニット211から多様な性能のリアクトル1を製造することが可能になるため、部品の共通化による製造コストの削減が可能になる。
【0034】
ソケット1bは、素子部1a(直接的にはコア20)を回路基板に対して位置決めする台座40と、コイル10の引出線12を案内するガイド部品50を備えている。台座40及びガイド部品50は、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等の電気絶縁性を有する材料から形成される。
【0035】
図2に示されるように、台座40の底面の四隅には、それぞれ円柱状の足411が形成されている。足411を設けることにより、回路基板の上面に台座40を平行かつ安定に載置することが可能になる。
【0036】
また、台座40の底面には、2本の位置決めピン42(台座位置決め手段)が垂直に植え込まれている。2本の位置決めピン42は、台座40の底面の一方の対角方向に離れた位置に設けられている。位置決めピン42は、リアクトル1が回路基板に取り付けられると、回路基板に設けられた位置決め孔に嵌め込まれて半田付けされる。これにより、リアクトル1は、X軸及びY方向において回路基板に対して位置決めされ、固定される。
【0037】
位置決めピン42は、例えば鋼線等の金属線材から形成され、回路基板に半田付けできるように、錫メッキ等の表面処理が施されている。位置決めピン42は、圧入又はインサート成形により台座40の底面に植え込まれている。
【0038】
図4は、台座40の斜視図である。台座40の上面には、コア20の底部を収容する矩形の凹部44(素子部位置決め手段)が形成されている。凹部44は、コア20の底部が略隙間なく嵌る大きさに形成されている。そのため、コア20の底部を凹部44に嵌め込むことにより、素子部1aが台座40に対してX方向、Y方向及びZ方向において位置決めされる。
【0039】
凹部44の底の中央には、コイル10の螺旋部11を通す開口部43が形成されている。台座40が取り付けられる回路基板にも開口部43と対応する位置に同じ大きさの開口部が形成されている。また、回路基板の裏側には冷却板が配置される。リアクトル1を回路基板に取り付けると、螺旋部11の下部が台座40の開口部43と回路基板の開口部を通り、冷却板に接触する。これにより、使用中にリアクトル1で発生する熱が冷却板へ放出され、リアクトル1が適切な温度に維持されるため、リアクトル1の性能が安定化する。
【0040】
台座40には、台座40の底面の他方の対角方向(すなわち、位置決めピン42が設けられていない対角方向)に離れた2箇所に嵌合部40f(第1の嵌合部)が形成されている。嵌合部40fは、ガイド部品50の先端部に形成された後述する嵌合部50f及び引出線12と嵌合し、ガイド部品50及び引出線12を台座40に対して位置決めする。
【0041】
嵌合部40fは、台座40の上面から上方に突出した突出部45を有している。突出部45の正面(コア20とは反対側の面)には、上下に延びる角溝46(第1の嵌合溝)
が形成されている。角溝46には、ガイド部品50の嵌合部50fが収容される。角溝46の一対の側面46aの下部には、角溝46の縁に沿って延びる小さな線状の突起である爪49が形成されている。一対の爪49の間隔はガイド部品50の嵌合部50fの幅よりも狭いため、一対の爪49によって角溝46からの嵌合部50fの脱出が阻止される。本実施形態の線状の爪49に替えて、単一の又は角溝46の縁に沿って並ぶ複数の点状の突起を設けてもよい。
【0042】
角溝46は、ガイド部品50の嵌合部50fが略隙間なく嵌る大きさに形成されている。そのため、嵌合部50fを角溝46に嵌め込むと、ガイド部品50が台座40に対してX軸及びY方向において位置決めされる。
【0043】
角溝46は、台座40の下端まで延長している。角溝46の下部には、両側面46aから垂直に突出する一対の板状の突出部47が形成されている。一対の突出部47の先端面47aと角溝46の底面46bによって角溝48(第2の嵌合溝)が形成されている。
【0044】
角溝48の幅は、引出線12が略隙間なく嵌る大きさに形成されている。また、ガイド部品50の嵌合部50fと台座40の嵌合部40fとが嵌合すると、ガイド部品50の後述する押さえ部54により引出線12が角溝48の底に押さえ付けられる。そのため、引出線12が先端に近い部分で、台座40に対してX方向及びY方向において位置決めされる。
【0045】
図5及び図6はガイド部品50の外観図であり、図7はガイド部品50をY方向に垂直な平面で切断した断面図である。なお、以下のガイド部品50の説明において、図5-7におけるX方向の正方向を向く面をガイド部品50の正面といい、X方向の負方向を向く面をガイド部品50の背面という。
【0046】
ガイド部品50は、Y方向に延びる柱状の頭部51と、頭部51の前端部(X方向における一端部)から下方に延びる平板状のベース52と、頭部51及びベース52の幅方向(Y方向)における両端部に直立する一対の平行な側壁53を有している。側壁53は、ベース52の正面から頭部51の上面にかけて形成されている。頭部51とベース52は、それぞれ引出線12とコア20との間に介在し、両者の絶縁を確実にする。頭部51及びベース52と一対の側壁53により、Z方向に延びる角溝である溝55(ガイド溝)が形成される。また、側壁53は、ベース52の先端よりも先へ延長している。側壁53のベース52の先端よりも先へ延長した部分を延長部531と呼ぶ。ガイド部品50の下部には、一対の延長部531を連結する平板状の押さえ部54が形成されている。
【0047】
ベース52と押さえ部54は、それぞれX方向に垂直に形成されている。また、ベース52と押さえ部54は、コイル10の引出線12の厚さtと同じ又は僅かに長い距離だけX方向に間隔を空けて形成されている。
【0048】
側壁53の延長部531の先端部532において、側壁53の後端面532aが正面側に退避して、段差533が形成されている。また、延長部531の先端部532の両側面には、ガイド部品50の幅(Y方向における両端間の距離)が背面に向かって徐々に狭くなるように斜面532bが形成されている。なお、押さえ部54は、延長部531の先端部532において、一対の側壁53を連結する。一対の側壁53の先端部532と押さえ部54によりガイド部品50の嵌合部50f(第2の嵌合部)が構成される。
【0049】
ガイド部品50の嵌合部50fが台座40の嵌合部40fと嵌合すると、ガイド部品50の下部(すなわち、嵌合部50fを構成する一対の側壁53の先端部532と押さえ部54)は、台座40の嵌合部40fの角溝46に収容される。側壁53の先端部532に段差533を設けることにより、台座40の突出部45の背板451とガイド部品50との干渉が回避される。
【0050】
図7に示されるように、ガイド部品50の頭部51の外周面は、直線部51a、曲線部51b、直線部51c、曲線部51d及び直線部51eを有している。直線部51a、51c及び51eは平面であり、曲線部51b及び51dは円柱面である。直線部51a、曲線部51b、直線部51c、曲線部51d及び直線部51eは、この順で滑らかに(すなわち、曲率が連続するように)連結されている。なお、直線部51eは、頭部51の下面51eである。頭部51の下面51eはベース52の背面52bに垂直に接続し、頭部51の下面51eとベース52の背面52bにより隅部50c(図8(c))が形成されている。隅部50cには、コア20のヨーク20c(壁部)の上面と外側面により形成された角部20dが収容される。
【0051】
また、ガイド部品50の側壁53の端面は、頭部51の外周に形成された直線部53a、曲線部53b、直線部53c、曲線部53d及び直線部53eを有している。直線部53a、53c及び53eは平面であり、曲線部53b及び53dは円柱面である。直線部53a、曲線部53b、直線部53c、曲線部53d及び直線部53eは、この順で滑らかに連結されている。また、図7に示されるように、Y方向に垂直な平面への投影において、頭部51の曲線部51dは、側壁53の曲線部53dと滑らかに接続されている。そのため、頭部51(又は、頭部51の外周に形成された側壁53)をコア20の上面に押し当てながら、頭部51を通るY方向に平行な軸(Y軸)の周りにガイド部品50をスムーズに回転摺動させることができる。
【0052】
図8(a)-(c)は、ガイド部品50を取り付ける手順を説明する図である。図8に示されるように、素子部1aの組み立て後、コイル10の引出線12は螺旋部11の端から上に真っすぐ伸びた状態となっている。
【0053】
ガイド部品50を取り付ける工程において、まず、図7に示されるガイド部品50の頭部51が下に向けられ、溝55の直線部55aに引出線12の先端部が嵌め込まれる。溝55に引出線12が嵌った状態でガイド部品50を降下させると、ベース52と押さえ部54との間に引出線12が通される。更にガイド部品50が降下され、ガイド部品50の頭部51の直線部53aがコア20の上面に突き当てられる。
【0054】
次に、図8(b)-(c)に示されるように、ガイド部品50の頭部51(又は、頭部51の外周に形成された側壁53)をコア20の上面に接触させながら、頭部51を中心にY軸周りにガイド部品50を回転させると、押さえ部54によって引出線12がガイド部品50の回転方向(すなわち、回転軸を中心とする円の周方向)に押されて、ガイド部品50と共に引出線12が回転する。
【0055】
図8(a)-(c)に示されるように、ガイド部品50は頭部51がコア20の上面に接触した状態で180°回転する。このとき、引出線12は、ガイド部品50の頭部51の外周面(直線部51a、曲線部51b、直線部51c及び曲線部51d)に沿ってU字状に曲げられる。
【0056】
ガイド部品50が回転するときに、コア20の上面と接触する面が、図7に示される側壁53の直線部53cから、曲線部53d、直線部53e、頭部51の曲線部51d、そして直線部51eへと順に切り替わる。直線部53c、曲線部53d、直線部53e、曲線部51d及び直線部51eは、Y方向に垂直な平面への投影において滑らかに連結されているため、ガイド部品50をコア20上でスムーズに回転(転動又は回転摺動)させることが可能になっている。すなわち、直線部53c、曲線部53d、直線部53e、曲線部51d及び直線部51eにより、ガイド部品50の回転を案内する曲面である回転案内面が構成されている。
【0057】
また、ガイド部品50の嵌合部50fは、台座40の嵌合部40f(図4)に正面から(すなわち、X方向から)嵌め込まれる。このとき、ガイド部品50の嵌合部50fは、一対の斜面532bによって台座40の嵌合部40fの角溝46に案内される。ガイド部品50の嵌合部50fが台座40の角溝46に完全に収容されると、台座40の嵌合部40f(具体的には、角溝46の縁)に形成された一対の爪49によって嵌合部50fの角溝46からの脱出が阻止される。また、ガイド部品50の下端から突き出た引出線12の先端部は、台座40の嵌合部40fに形成された一対のガイド斜面47bによって角溝48に案内される。
【0058】
ガイド部品50の嵌合部50fが台座40の嵌合部40fと嵌合すると、ガイド部品50は、ベース52の背面52bがコア20の側面と接触し(又は、近接して対向し)、頭部51の下面51eがコア20の側面と接触する(又は、近接して対向する)ように配置される。
【0059】
ガイド部品50の嵌合部50fが台座40の嵌合部40fと嵌合することにより、ガイド部品50に保持された引出線12の先端部が、X軸及びY方向において台座40に対して位置決めされると共に、台座40に固定される。
【0060】
ガイド部品50に保持された引出線12の延長方向であるZ方向において、ガイド部品50のベース52と押さえ部54とは所定の間隔dを空けて配置されている。ベース52と押さえ部54とのX方向における間隔は、引出線12の厚さと略同じ大きさになっている。そのため、例えば、ベース52と押さえ部54とをZ方向に間隔を空けずに(或いは、一部が重なるように)設けると、ベース52と押さえ部54との間に引出線12を通す際に隙間が少なくなるため、引出線12を通しにくくなる。本実施形態では、ベース52と押さえ部54が所定の間隔dを空けて配置されているため、ベース52と押さえ部54との間に引出線12を通し易くなっている。また、位置決めを行うX方向ではなく、Z方向に引出線12を通すための空間を広げるため、位置決め精度を低下させることなく、引出線12を通し易くすることができる。
【0061】
図2に示されるように、引出線12の先端部は、台座40の下面から突出している。引出線12の先端部は、リアクトル1を回路基板に取り付ける際に、回路基板上の対応する位置に形成されたスルーホールに差し込まれて、半田付けされる。
【0062】
台座40の下面には、引出線12の先端部の周囲に座繰り412が形成されている。なお、本実施形態の座繰り412は、角溝46の下端部と一対の突出部47の下面から形成されている。座繰り412を設けることにより、回路基板上で引出線12が固定される位置と台座40上で引出線12が固定される位置との距離が長くなるため、スルーホールと嵌合部40fとの位置ずれによって引出線12に加わる力が緩和される。
【0063】
本実施形態のリアクトル1は、ガイド部品50を備えたことにより、引出線12の折り曲げを容易にする。また、ガイド部品50を使用して引出線12を配線することにより、引出線12が図8(c)において矢印Pで示されるX方向外側に引っ張られながら折り曲げられるため、コイル10の螺旋部11と引出線12との間に間隔を設けることができる。これにより、引出線12が螺旋部11と擦れることによって生じる絶縁不良を防止することが可能になる。
【0064】
また、折り返された引出線12とコア20との間に所定の厚さのベース52を介在させることにより、引出線12を折り返すときに引出線12が矢印P(図8(c))の方向へ引っ張られる距離がベース52の厚さ分だけ延びる。これにより、引出線12を張った状態で固定することができるため、コイル10の螺旋部11と引出線12との間により確実に間隔を設けることが可能になる。
【0065】
以上が本発明の実施形態の説明であるが、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば明細書中に記載された一つ以上の実施形態の技術構成の少なくとも一部と公知の技術構成とを適宜組み合わせたものも本発明の範囲に含まれる。
【0066】
上記の実施形態では、ガイド部品50の溝55が角溝であるが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、溝55の断面形状は収容する引出線12の断面形状に合わせて決定される。例えば、引出線12に丸線が使用される場合は、断面形状が円弧状又はU字状の溝55が形成される。
【0067】
上記の実施形態では、回転案内面が溝55の両側に設けられているが、溝55の片側のみに回転案内面を設けてもよい。
【0068】
上記の実施形態では、コイル10とコア20との絶縁を確保するために絶縁シート31及び32が使用されているが、コイル10又はコア20に十分な絶縁被覆が施されている場合は、絶縁シート31及び32は使用しなくてもよい。
【0069】
上記の実施形態のO形コア21は、複数のO形コアユニット211から構成されているが、O形コア21を単一の部材から構成してもよい。また、I形コア22を、例えば、複数のI形コアユニットを長さ方向に連結した構成としてもよい。
【0070】
上記の実施形態のコア20は、O形コア21とI形コア22を組み合わせたものであるが、例えば、E形コアをI形コアとを組み合わせたEIコア、2つのE形を組み合わせたEEコア、EEコアの変形であるEERコアやPQコア、あるいはポット形コア(例えば、PP形コア、RM形コア、EP形コア)等の他の形態のコアを使用してもよい。また、2つのU形コアを組み合わせてO形コア21を形成してもよい。
【0071】
上記の実施形態のコア20は圧粉磁心であるが、他の種類のコア(例えば、積層鋼板、フェライトコア、ナノクリスタルコア、磁性体の粒子を含む樹脂から形成されたメタルコンポジットコア等)を使用してもよい。
【0072】
上記の実施形態は、本発明をリアクトルに適用した例であるが、本発明は、リアクトルに限らず、例えば、トランスやチョークコイル等の別の種類のコイル装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 リアクトル
10 コイル
20 コア
40 台座
50 ガイド部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8