(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145610
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート、可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20220926BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220926BHJP
B29C 48/10 20190101ALI20220926BHJP
B29C 48/32 20190101ALI20220926BHJP
B29C 48/25 20190101ALI20220926BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20220926BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220926BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220926BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20220926BHJP
B32B 1/02 20060101ALI20220926BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J5/18 CFD
B29C48/10
B29C48/32
B29C48/25
B29C48/92
B32B5/18
B32B27/36
B32B27/26
B32B1/02
C08L67/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038639
(22)【出願日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2021046183
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 治
【テーマコード(参考)】
4F071
4F074
4F100
4F207
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA45
4F071AA46
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4J002FD070
4J002FD090
4J002FD142
4J002FD146
4J002FD320
4J002GG01
(57)【要約】
【課題】熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートにおける特有の臭気の抑制を図る。
【解決手段】熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む発泡層22を有し、前記発泡層22における下記測定方法にて測定される酢酸の溶出量が、100質量ppm以下であることよりなる。(測定方法)熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを粉砕して試料とし、得られた試料に水を加え超音波洗浄抽出を行って抽出液とし、得られた抽出液に含まれる酢酸量をイオンクロマトグラフィー法で測定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む発泡層を有し、
前記発泡層における下記測定方法にて測定される酢酸の溶出量が、100質量ppm以下である、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
(測定方法)
発泡層から採取した試料を粉砕し、粉砕された試料に水を加えて試料液とし、試料液に超音波洗浄抽出を施して抽出液とし、得られた抽出液に含まれる酢酸量をイオンクロマトグラフィー法で測定する。
【請求項2】
前記発泡層は、メタノール抽出におけるアセトアルデヒド及びホルムアルデヒドの溶出量が、25質量ppm以下である、請求項1に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
【請求項3】
前記発泡層の少なくとも一方の面における開口部の数は、走査型電子顕微鏡で観察した際に9mm2当たり50個以下である、請求項1又は2に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
【請求項4】
100℃で2.5分間の加熱処理を施した際に、MD方向及びTD方向の少なくとも一方で、加熱処理後の寸法変化の小さい面における長さに対して、加熱処理後の寸法変化の大きい面における長さの比が0.8以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
【請求項5】
前記発泡層の片面又は両面に、熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む非発泡層を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
【請求項6】
前記発泡層は、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂と発泡剤と、を含む熱可塑性樹脂組成物の発泡硬化物であり、
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とジオールとの重縮合体と、架橋剤と、の溶融混練物であり、
前記架橋剤中の酢酸の含有量は、前記架橋剤の総質量に対して0.1質量%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、植物由来のポリエステル系樹脂を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、リサイクル原料を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
【請求項9】
熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む発泡層を有し、前記発泡層における下記測定方法にて測定される酢酸の溶出量が100質量ppm以下である熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法であって、
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂と、発泡剤と、を含む熱可塑性樹脂組成物をサーキュラーダイから吐出して円筒状の発泡体とする押出発泡工程と、
前記円筒状の発泡体を切り裂いて前記発泡層を得る切開工程と、有し、
前記サーキュラーダイから吐出された直後の前記熱可塑性樹脂組成物の外表面温度は、310℃以下である、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
(測定方法)
発泡層から採取した試料を粉砕し、粉砕された試料に水を加えて試料液とし、試料液に超音波洗浄抽出を施して抽出液とし、得られた抽出液に含まれる酢酸量をイオンクロマトグラフィー法で測定する。
【請求項10】
前記サーキュラーダイの吐出口における前記熱可塑性樹脂組成物に対するせん断速度は、7500s-1以下である、請求項9に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ジカルボン酸とジオールとの重縮合体と架橋剤との溶融混練物である熱可塑性ポリエステル系樹脂と、発泡剤とを含み、
前記架橋剤中の酢酸の含有量は、前記架橋剤の総質量に対して0.1質量%以下である、請求項9又は10に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項12】
熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む発泡層を有し、
前記発泡層における下記測定方法にて測定される酢酸の溶出量が、100質量ppm以下である、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
(測定方法)
発泡層から採取した試料を粉砕し、粉砕された試料に水を加えて試料液とし、試料液に超音波洗浄抽出を施して抽出液とし、得られた抽出液に含まれる酢酸量をイオンクロマトグラフィー法で測定する。
【請求項13】
前記発泡層は、メタノール抽出におけるアセトアルデヒド及びホルムアルデヒドの溶出量が、25質量ppm以下である、請求項12に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
【請求項14】
前記発泡層の少なくとも一方の面における開口部の数は、走査型電子顕微鏡で観察した際に9mm2当たり50個以下である、請求項12又は13に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
【請求項15】
100℃で2.5分間の加熱処理を施した際に、MD方向及びTD方向の少なくとも一方で、加熱処理後の寸法変化の小さい面における長さに対して、加熱処理後の寸法変化の大きい面における長さの比が0.8以上である、請求項12~14のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
【請求項16】
前記発泡層の片面又は両面に、熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む非発泡層を有する、請求項12~15のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
【請求項17】
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、植物由来のポリエステル系樹脂を含む、請求項12~16のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
【請求項18】
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、リサイクル原料を含む、請求項12~17のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
【請求項19】
前記発泡層は、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂と発泡剤と、を含む熱可塑性樹脂組成物の発泡硬化物であり、
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とジオールとの重縮合体と、架橋剤と、の溶融混練物であり、
前記架橋剤中の酢酸の含有量は、前記架橋剤の総質量に対して0.1質量%以下である、請求項12~18のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
【請求項20】
請求項9~11のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法で熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを得る工程と、
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを成形して容器とする工程と、
を有する熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート、可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂を発泡させた樹脂発泡シート及びその成形体は、軽量で断熱性が高いという特徴から、食品容器等に用いられている。
コンビニエンスストア、スーパーマーケット等の小売店で調理済食品を購入し、これを家庭等で喫食する中食市場が拡大している。中食市場においては、電子レンジでの加熱調理に対応できる食品容器が求められている。
耐熱性を高めた容器としては、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを成形してなる容器(熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器)が知られている。
中食市場における商品としては、例えば、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器に調理済食品を盛り付けた、容器入り調理済食品がある。
【0003】
中食市場の拡大に伴い、容器入り調理済食品は、さらに多様化している。このため、単に耐熱性が高いことのみならず、容器由来の臭気への関心が高まっている。
こうした問題に対し、数平均分子量Mn及びZ平均分子量Mzが特定の範囲であるポリエステル系樹脂を含み、アセトアルデヒドの含有量が特定の範囲である、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、加熱時に生じる特有の刺激臭の抑制が未だ充分とは言えない。
そこで、本発明は、刺激臭の抑制を図れる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らが鋭意検討した結果、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの特有の臭気は、熱可塑性ポリエステル系樹脂が分解して生じる酢酸等の有機酸に由来するとの知見を得、本発明を完成するに至った。
【0007】
<1>
熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む発泡層を有し、
前記発泡層における下記測定方法にて測定される酢酸の溶出量が、100質量ppm以下である、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
(測定方法)
発泡層から採取した試料を粉砕し、粉砕された試料に水を加えて試料液とし、試料液に超音波洗浄抽出を施して抽出液とし、得られた抽出液に含まれる酢酸量をイオンクロマトグラフィー法で測定する。
<2>
前記発泡層は、メタノール抽出におけるアセトアルデヒド及びホルムアルデヒドの溶出量が、25質量ppm以下である、<1>に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
<3>
前記発泡層の少なくとも一方の面における開口部の数は、走査型電子顕微鏡で観察した際に9mm2当たり50個以下である、<1>又は<2>に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
<4>
100℃で2.5分間の加熱処理を施した際に、MD方向及びTD方向の少なくとも一方で、加熱処理後の寸法変化の小さい面における長さに対して、加熱処理後の寸法変化の大きい面における長さの比が0.8以上である、<1>~<3>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
<5>
前記発泡層の片面又は両面に、熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む非発泡層を有する、<1>~<4>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
<6>
前記発泡層は、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂と発泡剤と、を含む熱可塑性樹脂組成物の発泡硬化物であり、
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とジオールとの重縮合体と、架橋剤と、の溶融混練物であり、
前記架橋剤中の酢酸の含有量は、前記架橋剤の総質量に対して0.1質量%以下である、<1>~<5>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
<7>
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、植物由来のポリエステル系樹脂を含む、<1>~<6>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
<8>
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、リサイクル原料を含む、<1>~<7>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
【0008】
<9>
熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む発泡層を有し、前記発泡層における下記測定方法にて測定される酢酸の溶出量が100質量ppm以下である熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法であって、
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂と、発泡剤と、を含む熱可塑性樹脂組成物をサーキュラーダイから吐出して円筒状の発泡体とする押出発泡工程と、
前記円筒状の発泡体を切り裂いて前記発泡層を得る切開工程と、有し、
前記サーキュラーダイから吐出された直後の前記熱可塑性樹脂組成物の外表面温度は、310℃以下である、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
(測定方法)
発泡層から採取した試料を粉砕し、粉砕された試料に水を加えて試料液とし、試料液に超音波洗浄抽出を施して抽出液とし、得られた抽出液に含まれる酢酸量をイオンクロマトグラフィー法で測定する。
<10>
前記サーキュラーダイの吐出口における前記熱可塑性樹脂組成物に対するせん断速度は、7500s-1以下である、<9>に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
<11>
前記熱可塑性樹脂組成物は、ジカルボン酸とジオールとの重縮合体と架橋剤との溶融混練物である熱可塑性ポリエステル系樹脂と、発泡剤とを含み、
前記架橋剤中の酢酸の含有量は、前記架橋剤の総質量に対して0.1質量%以下である、<9>又は<10>に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
【0009】
<12>
熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む発泡層を有し、
前記発泡層における下記測定方法にて測定される酢酸の溶出量が、100質量ppm以下である、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
(測定方法)
発泡層から採取した試料を粉砕し、粉砕された試料に水を加えて試料液とし、試料液に超音波洗浄抽出を施して抽出液とし、得られた抽出液に含まれる酢酸量をイオンクロマトグラフィー法で測定する。
<13>
前記発泡層は、メタノール抽出におけるアセトアルデヒド及びホルムアルデヒドの溶出量が、25質量ppm以下である、<12>に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
<14>
前記発泡層の少なくとも一方の面における開口部の数は、走査型電子顕微鏡で観察した際に9mm2当たり50個以下である、<12>又は<13>に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
<15>
100℃で2.5分間の加熱処理を施した際に、MD方向及びTD方向の少なくとも一方で、加熱処理後の寸法変化の小さい面における長さに対して、加熱処理後の寸法変化の大きい面における長さの比が0.8以上である、<12>~<14>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
<16>
前記発泡層の片面又は両面に、熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む非発泡層を有する、<12>~<15>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
<17>
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、植物由来のポリエステル系樹脂を含む、<12>~<16>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
<18>
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、リサイクル原料を含む、<12>~<17>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
<19>
前記発泡層は、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂と発泡剤と、を含む熱可塑性樹脂組成物の発泡硬化物であり、
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とジオールとの重縮合体と、架橋剤と、の溶融混練物であり、
前記架橋剤中の酢酸の含有量は、前記架橋剤の総質量に対して0.1質量%以下である、<12>~<18>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
【0010】
<20>
<9>~<11>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法で熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを得る工程と、
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを成形して容器とする工程と、
を有する熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートによれば、刺激臭の抑制を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの断面図である。
【
図2】植物由来のポリエステル系樹脂の製造工程の一例を示すフロー図である。
【
図3】植物由来のポリエステル系樹脂の製造工程の一例を示すフロー図である。
【
図4】植物由来のポリエステル系樹脂の製造工程の一例を示すフロー図である。
【
図5】熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造装置の一例を示す模式図である。
【
図6】熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造装置の他の例を示す模式図である。
【
図7】リサイクルペレットの製造に用いたリペレットシステムの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート)
本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ということがある)は、熱可塑性ポリエステル系樹脂を含有する発泡層を有する。
図1の発泡シート2Aは、発泡層22と発泡層22の片面に備えられた非発泡層21とを有する。発泡シート2Aは、発泡層22の両面に非発泡層を備えてもよい。
また、発泡シート2Aは、発泡層22のみからなる単層構造でもよい。
なお、発泡層22の片面又は両面に非発泡層21を有する発泡シート2Aを、特に「積層発泡シート」ということがある。
【0014】
発泡シート2Aの厚さTは、用途を勘案して決定でき、例えば、500~4000μmが好ましく、600~3500μmがより好ましい。
【0015】
<発泡層>
発泡層22の厚さT22としては、0.3~5.0mmが好ましく、0.4~4.5mmがより好ましく、0.5~4.0mmがさらに好ましい。厚さT22が上記下限値以上であれば、後述する熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器(以下、「発泡容器」ということがある)の強度をより高められる。厚さT22が上記上限値以下であれば、発泡容器の成形時に発泡シート2Aの内部までより速やかに加熱できる。
なお、厚みT22は、以下の方法で求められる値である。発泡層22のTD方向の任意の10点の厚みをマイクロゲージで測定する。10点の測定値を平均して、発泡層22の厚みとする。
【0016】
発泡層22の坪量としては、250~900g/m2が好ましく、250~800g/m2がより好ましく、300~700g/m2がさらに好ましい。坪量が上記下限値以上であれば、発泡容器の強度をより高められる。坪量が上記上限値以下であれば、発泡容器をより成形しやすい。
【0017】
発泡層22の発泡倍率としては、1.5~15倍が好ましく、2~10倍がより好ましく、2~8倍がさらに好ましい。発泡倍率が上記下限値以上であれば、発泡容器の断熱性をより高められる。発泡倍率が上記上限値以下であれば、容器の成形時に発泡シートの内部までより速やかに加熱できる。「発泡層の発泡倍率」は、1.38を「発泡層の見掛け密度(g/cm3)」で除した値である。熱可塑性ポリエステル系樹脂の密度を1.38(g/cm3)として計算する。
見掛け密度は、JIS K 7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に準拠して測定することによって求められる。
【0018】
発泡層22の平均気泡径は、例えば、80~450μmが好ましい。発泡層22の平均気泡径は、ASTM D2842-69に記載の方法に準拠して測定された値である。
【0019】
発泡層22の独立気泡率は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、80%以上が特に好ましく、90%以上でもよい。発泡層22の独立気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック-連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法により測定される値である。
【0020】
発泡層22の少なくとも一方の面における開口部の数は、走査型電子顕微鏡で観察した際に9mm2当たり50個以下である。発泡層表面における9mm2当たりの開口部の数は、42個以下が好ましく、30個以下がより好ましく、22個以下がさらに好ましく、0個でもよい。発泡層表面における開口部の数が上記上限値以下であれば、発泡層中で熱可塑性ポリエステル系樹脂が分解して酢酸等の酸を生じても、発泡層からの酢酸等の放散量が軽減され、特有の臭気の抑制のさらなる向上を図れる。加えて、開口部の数が上記上限値以下であれば、アセトアルデヒド及びホルムアルデヒドの溶出量を軽減して、臭気の抑制を図れる。発泡層表面の開口部の数は、後述する発泡シートの製造方法において、サーキュラーダイから押し出された直後の熱可塑性樹脂組成物の外表面温度、吐出口におけるせん断速度等の組み合わせによって調節される。
【0021】
≪樹脂≫
発泡層22は、熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む樹脂を含む。
発泡層22に含まれる熱可塑性ポリエステル系樹脂は、未架橋の樹脂でもよいし、架橋型の樹脂でもよい。
未架橋の樹脂としては、ジカルボン酸とジオールとの重縮合体であるポリエステル系樹脂が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリエチレンフラノエート樹脂(PEF)、ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、テレフタル酸とエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールの共重合体、及びこれらの混合物並びにこれらと他の樹脂との混合物等が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。好ましいポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)等の芳香族ポリエステル系樹脂である。特に好ましいポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂である。
【0022】
ポリエステル系樹脂としては、いわゆるバイオPET等、植物由来のポリエステル系樹脂でもよい。また、ポリエステル系樹脂としては、いわゆるリサイクル原料でもよい。リサイクル原料としては、容器の製造工程で生じるスケルトン、使用後の回収品等が挙げられる。スケルトンは、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器を成形する際に、発泡シートを所定の打ち抜いた残部である。リサイクル原料としては、発泡シートと同じ樹脂組成のものが好ましい。
【0023】
植物由来のポリエステル系樹脂は、サトウキビ、トウモロコシ等の植物原料を由来とするポリマーである。「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたポリマーが挙げられる。また、例えば、「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたモノマーが重合されたポリマーが挙げられる。「植物原料から合成され又は抽出されたモノマー」には、植物原料から合成され又は抽出された化合物を原料とし合成されたモノマーが含まれる。植物由来のポリエステル系樹脂は、モノマーの一部が「植物原料を由来とする」ものを含む。
【0024】
植物由来のポリエステル系樹脂について、PET、PEFを例にして説明する。
【0025】
PETの合成反応を(1)式に示す。nモルのエチレングリコールとnモルのテレフタル酸(Benzen-1,4-dicarboxylic Acid)との脱水反応によって、PETが合成される。この合成反応における化学量論上の質量比は、エチレングリコール:テレフタル酸=30:70(質量比)である。
【0026】
【0027】
[(1)式中、nは化学量論係数(重合度)であり、250~1,100の数である。]
【0028】
エチレングリコールは、エチレンを酸化し、水和することで、工業的に製造される。また、テレフタル酸は、パラキシレンを酸化することで、工業的に製造される。
ここで、
図2に示すように、植物由来のエタノール(バイオエタノール)の脱水反応によりエチレンを得、このエチレンから合成されたエチレングリコール(バイオエタノール由来のエチレングリコール)と、石油化学品由来のテレフタル酸からPETを合成する場合、製造されるPETは、植物由来30質量%のPETである。
また、
図3に示すように、植物由来のイソブタノール(バイオイソブタノール)の脱水反応によりパラキシレンを得、このパラキシレンから合成したテレフタル酸と、バイオエタノール由来のエチレングリコールとからPETを合成する場合、製造されるPETは、植物由来100質量%のPETである。
【0029】
PEFの合成反応を(2)式に示す。nモルのエチレングリコールと、nモルのフランジカルボン酸(2,5-Furandicarboxylic Acid)との脱水反応によって、PEFが合成される。
【0030】
PEFの合成反応を(2)式に示す。nモルのエチレングリコールと、nモルのフランジカルボン酸(2,5-Furandicarboxylic Acid)との脱水反応によって、PEFが合成される。
【0031】
【0032】
[(2)式中、nは化学量論係数(重合度)であり、250~1,100の数である。]
【0033】
フランジカルボン酸(FDCA)は、例えば、植物由来のフルクトースやグルコースの脱水反応によってヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を得、HMFを酸化して得られる。
図4に示すように、FDCA及びエチレングリコールの双方が植物由来の場合、製造されるPEFは、植物由来100質量%のPEFである。
【0034】
発泡層22に含まれる樹脂の総質量に対して、熱可塑性ポリエステル系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%でもよい。熱可塑性ポリエステル系樹脂の含有量が上記下限値以上であれば、耐熱性をより高められる。
【0035】
発泡層22の熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量Mnは、5,000~20,000が好ましく、6,000~19,000がより好ましく、7,000~18,000がさらに好ましい。
Mnが上記下限値以上であれば、分解して生じた有機酸がより少なくなり、有機酸等に由来する特有の刺激臭(酸臭)の抑制のさらなる向上を図れる。Mnが上記上限値以下であれば、後述の製造方法において、サーキュラーダイ中でせん断力を受けた際に、酢酸等の有機酸の発生を低減し、酸臭の抑制のさらなる向上を図れる。
Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値を、標準試料として昭和電工株式会社製の製品名「STANDARD SM-105」及び「STANDARD SH-75」を用いて得られる較正曲線に基づき換算した値である。
【0036】
発泡層22の熱可塑性ポリエステル系樹脂のZ平均分子量Mzは、150,000~650,000が好ましく、170,000~620,000がより好ましく、200,000~600,000がさらに好ましい。
Mzが上記下限値以上であれば、分解して生じた有機酸がより少なくなり、酸臭の抑制のさらなる向上を図れる。Mzが上記上限値以下であれば、後述の製造方法において、サーキュラーダイ中でせん断力を受けた際に、酢酸等の有機酸の発生をより低減できる。
Mzは、Mnと同様にして求められる。
【0037】
Mz/Mnで表される比(Mz/Mn比)は、10~80が好ましく、15~77がより好ましく、20~75がさらに好ましい。Mz/Mn比が上記範囲内であれば、酸臭の抑制のさらなる向上を図れる。
【0038】
発泡層22の熱可塑性ポリエステル系樹脂における分子量10,000以下の存在比率は、6.0質量%以下が好ましく、5.5質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下がさらに好ましい。分子量10,000以下の存在比率が上記上限値以下であれば、発泡層の熱可塑性ポリエステル系樹脂の分解物が少なく、分解により生じた有機酸がより少なくなり、酸臭の抑制のさらなる向上を図れる。
分子量10,000以下の存在比率は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値から算出される。
【0039】
≪発泡剤≫
発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン等のフロン、二酸化炭素、窒素等が挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素、窒素が好ましい。これらの発泡剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0040】
発泡剤の含有量は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、0.1~10質量部が好ましい。
【0041】
≪任意成分≫
本発明の発泡シートは、熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む樹脂、結晶化促進剤及び発泡剤以外にその他成分(任意成分)を含有していてもよい。
かかる任意成分としては、気泡調整剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、結晶化促進剤、滑剤、架橋剤、界面活性剤、収縮防止剤、難燃剤、劣化防止剤等が挙げられる。
なお、ポリエステル系樹脂、発泡剤及び任意成分の合計は、100質量%を超えない。
【0042】
架橋剤としては、例えば、無水ピロメリット酸等の酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物等が挙げられる。
架橋剤の含有量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、0.08~0.5質量部が好ましい。
架橋剤中の酢酸の含有量は、架橋剤の総質量に対して、0.1質量%以下が好ましく、0.08質量%以下がより好ましく、0.06質量%以下がさらに好ましく、0質量%でもよい。酢酸の含有量が上記下限値以下であれば、酸臭の抑制をより高められる。
【0043】
気泡調整剤は、例えば、タルク、シリカ等の無機粉末等の混合物等である。これらの気泡調整剤は、発泡層の独立気泡率を高め、発泡層を形成しやすい。
気泡調整剤の含有量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、0.1~3質量部が好ましい。
【0044】
安定剤は、例えば、カルシウム亜鉛系熱安定剤、スズ系熱安定剤、鉛系熱安定剤等である。
安定剤の含有量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以下が好ましい。
【0045】
紫外線吸収剤は、例えば、酸化セシウム系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤等である。
紫外線吸収剤の含有量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以下が好ましい。
【0046】
酸化防止剤は、例えば、酸化セリウム、酸化セリウム/ジルコニア固溶体、水酸化セリウム、カーボン、カーボンナノチューブ、酸化チタン、及びフラーレン等である。
酸化防止剤の含有量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以下が好ましい。
【0047】
着色剤は、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、亜鉛華、沈降性シリカ、カドミウム赤等である。
本発明の発泡シートを食品用の容器に用いる場合には、上記の着色剤の中から衛生協議会登録品を選択することが好ましい。
着色剤の含有量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、2質量部以下が好ましい。
【0048】
結晶化促進剤は、例えば、ケイ酸塩、炭素、金属酸化物等である。ケイ酸塩としては、例えば、含水ケイ酸マグネシウムであるタルクが挙げられる。炭素としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、活性炭、グラファイト、グラフェン、コークス、メソポーラスカーボン、ガラス状炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられ、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラックが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン等が挙げられる。
結晶化促進剤の含有量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、3質量部以下が好ましい。
【0049】
上述した任意成分は、それぞれ1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0050】
発泡層22における無機物の含有量は、発泡層22の総質量に対して7.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましい。無機物の含有量が上記上限値以下であれば、押出機内での剪断によるポリエステル系樹脂の分解をさらに低減し、発泡層中の有機酸の含有量をさらに低減し、発泡シート2Aにおける酸臭の抑制のさらなる向上を図れる。
発泡層における無機物の含有量の下限値は、実質的に0.1質量%以上である。
発泡層における無機物の含有量は、気泡調整剤等の無機系添加剤の添加量によって調節できる。
【0051】
≪酢酸溶出量≫
発泡層22における酢酸溶出量は、100質量ppm以下であり、75質量ppm以下が好ましく、60質量ppm以下がより好ましく、40質量ppm以下がさらに好ましい。酢酸溶出量が上記上限値以下であれば、発泡シート2Aを加熱して発泡容器を形成する際、又は容器入り調理済み食品を電子レンジ等で加熱した際に、酸臭の抑制を図れる。
【0052】
[酢酸溶出量の測定方法]
酢酸溶出量の測定方法は、発泡層22から採取した試料を粉砕し(粉砕工程)、粉砕した試料に水を加えて試験液とし、試験液に超音波洗浄抽出を施して抽出液とし(抽出工程)、得られた抽出液に含まれる酢酸量をイオンクロマトグラフィー法で測定する(測定工程)。
【0053】
粉砕工程における粉砕方法としては、例えば、凍結粉砕等が挙げられる。凍結粉砕の方法としては、例えば、凍結粉砕装置(日本分析工社製、凍結粉砕装置 JFC-300)の専用容器に試料1~3gを計り取り、専用容器を液体窒素等の冷媒に浸漬し、専用容器を振とうすることで、専用容器内の試料を粉砕する。
振とうする前に、試料を入れた専用容器を冷媒に浸漬する時間(浸漬予備冷却時間)は、例えば、5~60分間とされる。10分間程度でもよい。
凍結粉砕法における振とう時間(粉砕時間)は、例えば、5~60分間とされる。30分間程度でもよい。
【0054】
試験液の試料の含有量は、例えば、0.5~5質量%とされる。2質量%程度でもよい。
抽出工程における抽出時間は、例えば、5~20分間とされ、15分間程度が選択される。
抽出工程で印加する超音波の周波数は、例えば、20~50kHzとされ、38kHz程度が選択される。
【0055】
測定工程は、測定試料調製操作と、測定操作とを有する。
測定試料調製操作では、抽出液をろ過して、ろ液を測定試料とする。
測定操作では、測定試料調製操作で得られた測定試料について、IC(イオンクロマト)測定を行う。
【0056】
≪アセトアルデヒド及びホルムアルデヒドの溶出量≫
発泡層22において、メタノール抽出によるアセトアルデヒド及びホルムアルデヒドの溶出量(アルデヒド類溶出量)は、25質量ppm以下が好ましく、23質量ppm以下がより好ましく、21質量%以下がさらに好ましい。アルデヒド類溶出量が上記上限値以下であれば、発泡シート2Aを加熱して発泡容器を形成する際、又は容器入り調理済み食品を電子レンジ等で加熱した際に、臭気の抑制を図れる。
アルデヒド類の溶出量は、アセトアルデヒド及びホルムアルデヒドの合計量として測定される。
【0057】
アルデヒド類の測定方法は、試料をメタノール抽出-ジニトロフェニルヒドラジン誘導化法で処理して測定試料とし、測定試料を超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)で測定し、アセトアルデヒドとホルムアルデヒドの合計値を求める。
メタノール抽出-ジニトロフェニルヒドラジン誘導化法では、例えば、粉砕した試料にメタノールを加えてアルデヒド類を抽出し、この上澄みに2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を加えて測定試料とする。
【0058】
≪寸法変化比≫
発泡層22の寸法変化比は、0.8以上が好ましく、0.85以上がより好ましく、0.9以上がさらに好ましい。寸法変化比が上記下限値以上であれば、発泡シート2Aの発泡層22製造時に、サーキュラーダイから吐出された際の両面の張力の差が少ない。このため、表面の開口部数を低減して、酸臭の抑制のさらなる向上を図れる。
寸法変化率は、100℃で2.5分間の加熱処理を施した際に、MD方向及びTD方向の少なくとも一方で、加熱処理後の寸法変化の小さい面における長さに対して、加熱処理後の寸法変化の大きい面における長さの比として求められる。
【0059】
<非発泡層>
非発泡層21を構成する樹脂は、特に限定されず、発泡層22を構成する樹脂と同様の樹脂が挙げられる。
非発泡層21を構成する樹脂は、発泡層22を構成する樹脂と同じでもよいし、異なってもよい。
【0060】
非発泡層21の厚みT21は、発泡シート2Aの用途等を勘案して決定され、例えば、10~300μmが好ましく、20~200μmがより好ましい。非発泡層21の厚みT21が上記下限値以上であれば、酸臭の抑制のさらなる向上を図れ、発泡シート2Aの強度のさらなる向上を図れる。非発泡層21の厚みT21が上記上限値以下であれば、発泡シート2Aの軽量化を図れる。
【0061】
非発泡層21における無機物の種類は、発泡層22における無機物の種類と同様でもよいし、異なってもよい。非発泡層21における無機物の含有量と、発泡層22における無機物の含有量とは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0062】
(発泡シートの製造方法)
発泡シート2Aの製造方法は、ポリエステル系樹脂を溶融し、溶融したポリエステル系樹脂と発泡剤とを混練して溶融混練物とし、この溶融混練物を押し出し、発泡して発泡層を得る工程を有する。
発泡シート2Aの好適な製造方法としては、公知の発泡シートの製造方法を採用でき、例えば、以下に示す製造方法が挙げられる。
発泡シート2Aの製造方法としては、発泡層22を得る工程(発泡層形成工程)と、発泡層に非発泡層21を設ける工程(積層工程)とを有する方法が挙げられる。
【0063】
≪発泡層形成工程≫
発泡層形成工程としては、例えば、次の方法が挙げられる。
図5の発泡シートの製造装置1は、押出成形により発泡シートを得る装置である。製造装置1は、押出機10と、発泡剤供給源18と、サーキュラーダイ20と、マンドレル30と、2つの巻取機40とを備える。
押出機10は、いわゆるシングル型押出機(
図5)である。押出機10は、ホッパー14を備える。押出機10には、発泡剤供給源18が接続されている。
押出機10には、サーキュラーダイ20が接続されている。サーキュラーダイ20の下流には、カッター32を備えるマンドレル30が設けられている。サーキュラーダイ20とマンドレル30との間には、冷却用送風機(不図示)が設けられている。
なお、製造装置1の押出機10はシングル型押出機以外の押出機でもよい。例えば、押出機10は、いわゆるタンデム型押出機(
図6)でもよい。タンデム型押出機は、第一の押出部11と、第一の押出部11に配管16で接続された第二の押出部12とを備える。第一の押出部11はホッパー14を備える。第一の押出部11には、発泡剤供給源18が接続されている。
第二の押出部12には、サーキュラーダイ20が接続されている。サーキュラーダイ20の下流には、カッター32を備えるマンドレル30が設けられている。サーキュラーダイ20とマンドレル30との間には、冷却用送風機(不図示)が設けられている。
また、製造装置1の押出機10は単軸押出機であってもよいし、二軸押出機等の多軸押出機であってもよい。
【0064】
発泡層を構成する原料をホッパー14から押出機10に投入する。ホッパー14から投入される原料は、発泡層を構成する樹脂、及び必要に応じて配合される任意成分である。
押出機10では、原料を任意の温度に加熱しながら混合して樹脂溶融物とし、発泡剤供給源18から発泡剤を押出機10に供給し、樹脂溶融物に発泡剤を混合して熱可塑性樹脂組成物とする。
加熱温度は、樹脂の種類等を勘案して、樹脂が溶融しかつ任意成分が変性しない範囲で適宜決定される。
【0065】
熱可塑性樹脂組成物に配合されるポリエステル系樹脂(原料ポリエステル系樹脂)のガラス転移温度Tgは、50~100℃が好ましく、60~90℃がより好ましく、70~85℃がさらに好ましい。Tgが上記下限値以上であれば、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。Tgが上記上限値以下であれば、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。なお、「成形性」は、例えば、発泡シート2Aを金型に挟んで熱成形した際に、金型のキャビティに発泡シートが追随して、所望の形状に近づけられることであり、所望の形状に近づくほど、成形性は「良好」である。
【0066】
原料ポリエステル系樹脂の融点は、230~270℃が好ましく、240~260℃がより好ましく、245~255℃がさらに好ましい。融点が上記下限値以上であれば、耐熱強度、加熱寸法安定性をより高められる。融点が上記上限値以下であれば、成形サイクルを短くして生産性を高め、成形性を高められる。
【0067】
原料ポリエステル系樹脂の極限粘度(IV値)は0.50~1.50が好ましく、0.80~1.10がより好ましい。IV値が上記下限値以上であれば、発泡しやすくなり押出発泡シートが得られやすくなる。IV値が上記上限値以下であれば、平滑なシートが得られやすくなる。
IV値は、JIS K7367-5(2000)の方法で測定できる。
【0068】
熱可塑性樹脂組成物は、押出機10にて、さらに混合される。熱可塑性樹脂組成物が架橋剤を含有する場合、熱可塑性樹脂組成物に配合された原料ポリエステル系樹脂の少なくとも一部が架橋される。その後、熱可塑性樹脂組成物は、任意の温度にされた後、サーキュラーダイ20内の樹脂流路に導かれる。
樹脂流路に導かれた熱可塑性樹脂組成物は、サーキュラーダイ20の吐出口から吐出され、発泡剤が発泡して、発泡体である円筒状の発泡シート2aとなる(押出発泡工程)。この発泡シート2aは、発泡層のみで形成されている。
円筒状の発泡シート2aは、冷却用送風機から送風された冷却用のエアーが吹き付けられつつ、マンドレル30に案内される。円筒状の発泡シート2aは、マンドレル30の外面を通過し、任意の温度に冷却されて発泡硬化物となり、カッター32によって2枚に切り裂かれて発泡シート2となる(切開工程)。発泡シート2は各々ガイドロール42とガイドロール44とに掛け回され、巻取機40に巻き取られて発泡シートロール4となる。
【0069】
サーキュラーダイ20の吐出口における熱可塑性樹脂組成物に対するせん断速度は、7500s-1以下が好ましく、6500s-1以下がより好ましく、6000s-1以下でさらに好ましい。せん断速度が上記上限値以下であれば、熱可塑性樹脂組成物中のポリエステル系樹脂の分解を低減し、酸臭の抑制のさらなる向上を図れる。
【0070】
サーキュラーダイ20から吐出された直後の発泡シート2aの表面温度は、305℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、295℃以下がより好ましい。表面温度が上記上限値以下であれば、有機酸の発生をより低減し、酸臭の抑制のさらなる向上を図れる。
表面温度の下限値は、ポリエステル系樹脂の融点を勘案し、例えば、275℃以上とされる。表面温度が上記下限値以上であれば、マンドレル30に対する発泡シート2aの抵抗が低くなり、発泡シート2aの内面における開口部の発生を低減できる。
【0071】
積層工程は、発泡層22の片面又は両面に非発泡層21を設ける工程である。
発泡層形成工程で得られた発泡シートロール4から発泡シート2を繰り出して、これを発泡層22とする。
発泡層22に非発泡層21を設ける方法としては、次の方法等が挙げられる。
(1)発泡層22となる発泡シートと、非発泡層21となる非発泡フィルム又はシートとを各々製造し、非発泡フィルム又はシートと発泡シートとをこの順で重ね、これを加熱圧着する方法(熱圧着法)。
(2)非発泡フィルム又はシートと発泡シートとをこの順で重ね、各層を接着剤で貼り合せる方法(貼合法)。
(3)非発泡層の原料となる樹脂をTダイにより発泡シートの表面に押し出す方法(Tダイ法)。
【0072】
非発泡フィルム又はシートの製造方法としては、従来公知の製造方法が挙げられる。
【0073】
また、発泡シート2Aの製造方法としては、共押出により、発泡層22に非発泡層21が設けられた積層体を得る方法(共押出法)が挙げられる。なお、共押出法においては、発泡層形成工程と積層工程とが一工程で行われる。
【0074】
(熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器)
上述した本発明の発泡シートを成形してなる成形品である。発泡シートは、発泡層のみからなる発泡シートでもよく、積層発泡シートでもよい。積層発泡シートを用いる場合、非発泡層が容器の内側となるように成形されることが好ましい。
容器の形状は特に限定されず、例えば、平面視形状が真円形、楕円形、半円形、矩形、多角形、扇形等のトレー、丼形状の容器、有底円筒状又は有底角筒状等の容器、納豆用容器等の蓋付容器等の種々の容器、容器本体に装着される蓋体等が挙げられる。
これらの容器の用途としては、例えば、食品用容器、耐熱容器、工業用運搬トレー、農業用育苗トレー、自動車用部材等が挙げられる。
【0075】
(発泡容器の製造方法)
発泡容器の製造方法は、上述した本発明の発泡シートを成形して、容器とする方法であってもよいし、上述した本発明の発泡シートの製造方法で発泡シートを得、得られた発泡シートを成形して容器とする方法であってもよい。
かかる発泡容器の好適な製造方法としては、公知の発泡容器の製造方法を採用でき、例えば、以下に示す製造方法が挙げられる。
まず、発泡シートを任意の温度に加熱して、発泡シートを軟化する(予備加熱工程)。
予備加熱工程では、例えば、発泡シートを120~130℃とする。
次いで、任意の温度に加熱した雄型と雌型と(金型)で、軟化した発泡シートを挟み込み、所望の形状に成形する。その後、雄型と雌型とを離間して、成形された容器を取り出す。成形時の金型の温度は、例えば、170~200℃が好ましい。
【0076】
以上説明した通り、本発明の発泡シート又は発泡容器によれば、酢酸溶出量が特定の範囲であるため、特有の臭気を低減できる。
【実施例0077】
(使用原料)
<熱可塑性ポリエステル系樹脂>
・PET1:ポリエチレンテレフタレート、CH611(製品名)、IV値=1.06、遠東新世紀社製。
・PET2:ポリエチレンテレフタレート、SA-0135(製品名)、IV値=0.83、三井化学社製。
・PET3:ポリエチレンテレフタレート、UK31C ペットボトルリサイクル原料(製品名)、IV値=0.64、ウツミケミカル社製。
・PET4:ポリエチレンテレフタレート、リサイクルペレット、IV値=0.65。
・PET5:バイオポリエチレンテレフタレート、植物由来30質量%、CH635(製品名)、IV値=1.0、遠東新世紀社製。
【0078】
≪製造例1≫PET4の製造方法
リペレットシステムを用いて、リサイクルペレット(PET4)を製造した。
PET4の製造に用いたリペレットシステムを
図7に示す。
図7のリペレットシステム100は、二軸押出機110と、カッティング室120と、脱水乾燥機122と、ポンプ124と、水槽126と、加熱振動ふるい機128と、貯留容器130とを有する。二軸押出機110の先端にカッティング室120が設けられている。カッティング室120は、配管121を介して脱水乾燥機122と接続されている。カッティング室120は、配管123を介して脱水乾燥機122と接続されている。配管123には、ポンプ124と水槽126とが設けられている。脱水乾燥機122は、配管127を介して加熱振動ふるい機128と接続されている。加熱振動ふるい機128は、配管129を介して貯留容器130と接続されている。
二軸押出機110は、ホッパー112と、ベント孔114とを有する。
【0079】
PET4の製造方法について説明する。
後述の実施例1で得られた熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを粉砕機にて粉砕して樹脂チップとした。
ポンプ124を起動し、水槽126内の冷却用液体(70℃)を配管123、カッティング室120、配管121の順に通流した。ベント孔114から排気して、二軸押出機110内を減圧した。
樹脂チップをホッパー112に投入し、樹脂チップを二軸押出機110(φ75mm)で溶融混練し、溶融物を先端(φ1.2mm)からカッティング室120内の冷却用液体に押し出し、これをカッターで切断してペレットとした。ペレットを冷却用液体と共に、配管121を介して脱水乾燥機122に移送した。移送されたペレットを脱水乾燥機122で乾燥し、これを配管127を介して加熱振動ふるい機128に移送した。160℃に調温した加熱振動ふるい機128でペレットを分級しつつ結晶化して、所望の粒度のリサイクルペレット(PET4)とした。リサイクルペレットとして貯留容器130に投入した。このリサイクルペレットのIV値は0.65であった。
【0080】
<架橋剤>
・C1:PMDA、酸酢酸含有量=0.001質量%、濮陽盛華徳化工社製。
・C2:PMDA、酢酸含有量=0.12質量%、ダイセル社製。
【0081】
(測定方法)
<寸法変化>
各例の発泡シートを幅方向に3点均等に切り取って、試料とした。試料は、正方形の一辺がMD方向、他の一辺がTD方向に平行となる10cm×10cmの正方形である。試料を100℃の恒温槽で2.5分間、加熱した。加熱後、試料の両面について、MD方向の寸法及びTD方向の寸法を試料の中心点を通るように測定した。測定したMD方向、TD方向の内、加熱後の寸法が小さい面(第一の面)における寸法を他の面(第二の面)における寸法で除して、寸法変化比とした(下記式(s)参照)。
【0082】
寸法変化比=|(加熱後の第一の面の寸法)/(加熱後の第二の面の寸法)| ・・・(s)
【0083】
<発泡シートの開口部数>
発泡シートの幅方向で均等になるように、1cm×1cmの正方形の試料9点をカミソリで切り出した。試料台に導電性テープを貼り付け、導電性テープの上に試料を載せた。日本電子社製のスパッタ装置「オートファインコータ JFC-1300」を用いて、試料をコーティングした。次いで、日立ハイテクノロジーズ社製の走査電子顕微鏡「SU1510」の反射電子検出器(高真空、低真空)を用いて、試料の中心点を50倍に拡大して撮影した。
撮影した写真のうち、中心の領域1mm×1mmに存在する開口部の数を計測した。これを幅方向の9か所で行い、その合計を一方の面の9mm2当たりの開口部数とした。
開口部数の計測を発泡シートの両面に対して行い、開口部数の多い方の面における開口部数を9mm2の開口部数とした。
【0084】
<発泡容器の開口部数>
発泡容器の底面中央部内から、1cm×1cmの正方形の試料を切り出した。試料台に導電性テープを貼り付け、導電性テープの上に試料を載せた。この際、容器内面が観測面となるようにした。日本電子社製のスパッタ装置「オートファインコータ JFC-1300」を用いて、試料をコーティングした。次いで、日立ハイテクノロジーズ社製の走査電子顕微鏡「SU1510」の反射電子検出器(高真空、低真空)を用いて、試料の中心点を50倍に拡大して撮影した。
撮影した写真のうち、中心の領域1mm×1mmに存在する開口部の数を計測した。これを無作為の9か所で行い、その合計を一方の面の9mm2当たりの開口部数とした。
【0085】
<発泡シートの酢酸溶出量>
各例の発泡シートの中央部から試料2gを切り出して採取し、下記「酢酸溶出量の測定方法」によって酢酸イオン量を測定した。得られた酢酸イオン濃度に基づき、発泡シートの質量10-6(g)当たりの酢酸量(g)に換算し、これを酢酸溶出量(質量ppm)とした。
【0086】
≪酢酸溶出量の測定方法≫
凍結粉砕装置(日本分析工社製、凍結粉砕装置 JFC-300)を用い、試料2gを専用容器に入れ、下記粉砕条件で試料を粉砕した。
[粉砕条件]
・液体窒素浸漬予備冷却時間:10分間。
・振とう粉砕時間:30分間。
【0087】
洗浄済みの50mLアイボーイ広口瓶に、粉砕した試料1gを精秤した。広口瓶にイオン交換水50mLを投入し、混合して、試料液とした。試料液に超音波洗浄抽出(38kHz、15分間)を施した。超音波洗浄抽出を施した試料液を水系0.20μmクロマトディスクでろ過し、ろ液についてIC(イオンクロマト)測定を行った。IC測定の条件を下記の通りとした。
【0088】
[IC測定の条件]
・装置:IC-2001、東ソー社製。
・測定元素:CH3COO、NO3Column TSKGEL superIC-AZ。
・カラム温度:40℃。
・ポンプ注入部温度:室温。
・溶媒:3.2mM Na2CO3+1.9mM NaHCO3。
・流量:0.8mL/min。
・測定時間:17分間。
・注入容積:30μL。
・検出器:電気伝導度検出器。
【0089】
<発泡容器の酢酸溶出量>
各例の発泡容器の底部の中央部から試料2gを切り出した以外は、「<発泡シートの酢酸溶出量>」と同様にして、酢酸溶出量を求めた。
【0090】
<アセトアルデヒド・クロロホルムの溶出量>
発泡シート又は発泡容器(底部の中央部)から試料1gを切り出した。試料を専用容器に入れ、下記粉砕条件にて凍結粉砕を行って粉末状にした。
≪粉砕条件≫
・粉砕装置:日本分析工業株式会社製、凍結粉砕装置 JFC-300。
・粉砕条件:液体窒素浸漬による予備冷凍時間=1min、振とう粉砕時間=30min。
【0091】
凍結粉砕した試料0.5gを遠心管に精秤し、LC/MS用メタノール5mLを加え混合して、試料液とした。15分間、超音波洗浄抽出を行い、その後、試料液を攪拌した。
次いで、試料液を3,500rpm×15minで遠心分離し、上澄み液を排水系0.2μmクロマトディスクでろ過した。ろ液を2mLメスフラスコで、2mLとした。
2mLのろ液に、20体積%リン酸(メタノール溶液)40μLと、0.2質量%DNPH(アセトニトリル溶液)誘導体化試薬100μLとを加え、混合した(メタノール抽出―DNPH誘導体化法)。混合後のろ液(測定試料)を室温で12時間静置し、静置した測定試料を下記測定条件に従って超高速液体クロマトグラフィ(UHPLC)法で測定した。
≪測定条件≫
・測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製、超高速液体クロマトグラフLaChromUltra。
・カラム:LaChromUltra C18 2μm(2.0mmI.D.*50mmL。
・カラム温度:40℃。
・注入ポンプ温度:室温。
・溶媒:0.05%TFA(トリフルオロ酢酸)水溶液/アセトニトリル=50/50(体積比)。
・流速:0.6mL/min。
・実行時間:3min。
・注入容積:5μL。
・検知器:アセトアルデヒド(UV=360nm)。
【0092】
≪検量線作成方法≫
アセトアルデヒド・ホルムアルデヒドの溶出量測定用の検量線作成方法を説明する。
1,000質量ppmアルデヒド標準液(和光純薬工業株式会社製)20μLを
2mLメスフラスコに注加し、LC/MS用メタノールで定容した(10質量ppm混合標準液の調製)。
2mLメスフラスコを用いて、10質量ppm混合標準液をLC/MS用メタノールで適宜希釈し、0.2質量ppm標準液、0.1質量ppm標準液、0.05質量ppm標準液、0.02質量ppm標準液、0.01質量ppm標準液、0質量ppm標準液(メタノールのみ)を調製した。調製した各標準液に、20質量%リン酸(メタノール溶液)40μLと、0.2質量%DNPH(アセトニトリル溶液)誘導体化試薬100μLを加え、混合した。混合した各標準液を室温で12時間静置した。静置したろ液を上記測定条件に従って超高速液体クロマトグラフィ(UHPLC)法で測定し、検量線を作成した。
【0093】
<分子量の測定方法>
各例の発泡シートから5mgを量り取ってこれを試料とした。この試料にヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)0.5mLと、クロロホルム0.5mLとをこの順に加え軽く振とうし、6時間放置した。溶解確認後に10mLになるまでクロロホルムを加えて希釈し軽く振とうし、非水系0.45μmシリンジフィルター(島津ジーエルシー社製)でろ過した。このろ液について、下記測定条件で分子量を測定した。
・比較試料:SRM706a及びMS-311、TR-8580。
【0094】
≪測定条件≫
・GPC装置:東ソー社製、HLC-8320GPC(RI検出器・UV検出器内蔵)。
・ガードカラム:TOSOH TSK ガードカラム Hxl-H(6.0mmI.D.×4cm)×1本。
・カラム(リファレンス):TOSOH TSKgel SuperH-RC(6.0mmI.D.×15cm)×2本。
・カラム(サンプル):TOSOH TSKgel GMHxl(7.8mmI.D.×30cm)×2本。
・カラム温度:40℃。
・検出器温度:40℃。
・ポンプ注入部温度:40℃。
・溶媒:クロロホルム。
・流量(リファレンス):0.5mL/min。
・流量(サンプル):1.0mL/min。
・実行時間:26min。
・データ集積時間:10~25min。
・データ間隔:500msec。
・注入容積:15μL(試料とTR-8580)/50μL(ShodexA・B、SRM706a、MS-311)。
・検出器:UV=254nm。
【0095】
<分子量10,000以下の存在比率の測定方法>
下記試料作成方法により試料を用意し、下記測定条件にて分子量を測定した。この測定結果から、得られた微分分子量分布の曲線の面積を100%とし、これを100質量%(総質量)とした時のポリエステル系樹脂における分子量1万以下の分子の面積との比率(存在比率)を質量%として求めた。また、分子量1万以下の分子の面積との比率(質量%)については、微分分子量分布を解析して得られる積分分子量分布(縦軸:面積、横軸:Log10M(M=分子量))にて分子量1万の位置の面積を分子量1万以下の分子の存在比率(質量%)とした。
【0096】
≪試料作成方法≫
各例の発泡シートから5mgを切り取って試料とし、この試料にHFIP0.5mL、クロロホルム0.5mLの順に加え軽く振とうし、6時間放置した。試料の溶解確認後に10mLになるまでクロロホルムを加えて希釈し、軽く振とうし、非水系0.45μmシリンジフィルター(島津ジーエルシー社製)でろ過して、ろ液を得た。
比較試料:SRM706a及びMS-311、TR-8580。
【0097】
≪測定条件≫
・GPC装置:東ソー社製、HLC-8320GPC(RI検出器・UV検出器内蔵)。
・ガードカラム:TOSOH TSK ガードカラム Hxl-H(6.0mmI.D.× 4cm)×1本。
・カラム(リファレンス):TOSOH TSKgel SuperH-RC(6.0mmI.D.×15cm)×2本。
・カラム(サンプル):TOSOH TSKgel GMHxl(7.8mmI.D.×3 0cm)×2本。
・カラム温度:40℃。
・検出器温度:40℃。
・ポンプ注入部温度:40℃。
・溶媒:クロロホルム。
・流量(リファレンス):0.5mL/min。
・流量(サンプル):1.0mL/min。
・実行時間:26min。
・データ集積時間:10~25min。
・データ間隔:500msec。
注入容積:15μL(試料とTR-8580)/50μL(ShodexA・B、SRM706a、MS-311)。
検出器:UV=254nm。
【0098】
(評価方法)
<発泡容器の臭気確認>
各例の発泡容器にアルミホイルで蓋をし、200℃のオーブンで10分間加熱した。その後、前記容器を取り出し、アルミホイルの蓋を外し、臭気を確認した。臭気について、下記評価基準に基づいて評価した。
【0099】
≪評価基準≫
★:酸臭を認識できない。
☆:酸臭がほとんどしない。
◎:わずかに酸臭がするがほとんど分からない。
○:酸臭がし、明らかに認識できる。
△:酸臭がし、わずかに鼻を刺す刺激がある。
×:酸臭が強く、くしゃみが出る程の刺激がある。
【0100】
(実施例1)
<発泡シートの製造方法>
表1に示す組成に従い、発泡シートを製造した。ポリエチレンテレフタレート樹脂(遠東新世紀社製CH611:IV値1.06)100質量部に対して、気泡調整剤としてタルク1.5質量部と、をそれぞれ100℃にて16時間乾燥させた(乾燥処理)。乾燥処理後の各材料と、架橋剤としてPMDA(無水ピロメリット酸:濮陽盛華徳化工社製)0.16質量部と、を混合し、得られた混合物をφ90の短軸押出機に投入した。最高設定温度285℃の押出条件にて混合物を溶融混錬し、265℃に設定したゾーンより窒素ガスを0.55NL/minの流量で注入して、熱可塑性樹脂組成物とした。サーキュラーダイの出口(口径φ135mm、開口幅0.44mm)から、熱可塑性樹脂組成物を吐出量90kg/hにて吐出した。この時のスクリューの回転数は28rpmであり、金型吐出口のせん断速度、引取速度、サーキュラーダイからマンドレルまでの距離及び発泡シートの到達時間を表1のように設定した。吐出された熱可塑性樹脂組成物を冷却し、成形して、厚み0.8mm、坪量330g/m2、幅665mmの発泡シートを得た。
得られた発泡シートについて、寸法変化比、表面の開口部数、酢酸溶出量を測定した。
【0101】
<発泡容器の製造>
得られた発泡シートを90秒間、150℃のヒーター槽で予備加熱して、発泡シート表面温度を125℃にした。
その後、オス型側から圧縮空気を供給してメス型に発泡シートを密着させて、オス型とメス型を6秒間閉じて180℃にて真空圧空成形し、平面視形状が矩形の発泡容器(長さ80mm×幅80mm×高さ30mm)を得た。
得られた発泡容器について、酢酸溶出量、表面の開口部数を測定した。加えて、発泡容器について、臭気を評価し、その結果を表中に示す。
【0102】
(実施例2)
表1に示す組成に従い、発泡シートを製造した。ポリエチレンテレフタレート樹脂(遠東新世紀社製CH611:IV値1.06)100質量部と、気泡調整剤としてタルク0.6質量部と、をそれぞれ100℃にて16時間乾燥させた(乾燥処理)。乾燥処理後の各材料と、架橋剤としてPMDA(無水ピロメリット酸:濮陽盛華徳化工社製)0.14質量部とを混合し、得られた混合物をφ90の短軸押出機に投入した。それ以外は実施例1と同様にして厚み0.75mm、坪量330g/m2、幅645mmの発泡シート及び発泡容器を得た。
【0103】
(実施例3)
表1に示す組成に従い、発泡シートを製造した。ポリエチレンテレフタレート樹脂(三井化学社製SA-135:IV値0.83)70質量部と、ポリエチレンテレフタレート樹脂(遠東新世紀社製:CH611:IV値1.06)30質量部と、気泡調整剤としてタルク0.4質量部と、をそれぞれ130℃にて24時間乾燥させた(乾燥処理)。乾燥処理後の各材料と、架橋剤としてPMDA(無水ピロメリット酸:濮陽盛華徳化工社製)0.20質量部とを混合し、得られた混合物をφ90の短軸押出機に投入した。最高設定温度285℃の押出条件にて溶融混錬し、270℃に設定したゾーンよりブタンガスを0.8kg/hの流量で注入して、熱可塑性樹脂組成物とした。サーキュラーダイの吐出口(口径φ135mm、開口幅0.44mm)から、熱可塑性樹脂組成物を吐出量130kg/hにて吐出した。この時のスクリューの回転数は40rpmであり、金型吐出口のせん断速度、引取速度、サーキュラーダイからマンドレルまでの距離及び発泡シートの到達時間を表1のように設定した。吐出された熱可塑性樹脂組成物を冷却し、成形して、厚み2.0mm、坪量600g/m2、幅645mmの発泡シートを得た。それ以外は実施例1と同様の方法にして発泡容器を得た。
【0104】
(実施例4)
表1に示す組成に従い、発泡シートを製造した。ポリエチレンテレフタレート樹脂(ウツミケミカル社製U31KC:IV値0.64)70質量部と、ポリエチレンテレフタレート樹脂(遠東新世紀社製:CH611:IV値1.06)30質量部と、気泡調整剤としてタルク0.4質量部と、をそれぞれ130℃にて24時間乾燥させた(乾燥処理)。乾燥処理後の各材料と、架橋剤としてPMDA(無水ピロメリット酸:濮陽盛華徳化工社製)0.28質量部とを混合し、得られた混合物をφ90の短軸押出機に投入した。最高設定温度285℃の押出条件にて溶融混錬し、270℃に設定したゾーンよりブタンガスを0.8kg/hの流量で注入して、熱可塑性樹脂組成物とした。サーキュラーダイの吐出口(口径φ135mm、開口幅0.44mm)から、熱可塑性樹脂組成物を吐出量90kg/hにて吐出した。この時のスクリューの回転数は40rpmであり、金型吐出口のせん断速度、引取速度、サーキュラーダイからマンドレルまでの距離及び発泡シートの到達時間を表1のように設定した。吐出された熱可塑性樹脂組成物を冷却し、成形して、厚み2.0mm、坪量600g/m2、幅645mmの発泡シートを得た。それ以外は実施例1と同様の方法にして発泡容器を得た。
【0105】
(実施例5)
表1に示す組成に従い、発泡シートを製造した。ポリエチレンテレフタレート樹脂(ウツミケミカル社製U31KC:IV値0.64)70質量部と、ポリエチレンテレフタレート樹脂(遠東新世紀社製:CH611:IV値1.06)30質量部と、気泡調整剤としてタルク0.4質量部と、をそれぞれ130℃にて24時間乾燥させた(乾燥処理)。乾燥処理後の各材料と、架橋剤としてPMDA(無水ピロメリット酸:濮陽盛華徳化工社製)0.28質量部とを混合し、得られた混合物をφ90の短軸押出機に投入した。最高設定温度285℃の押出条件にて溶融混錬し、270℃に設定したゾーンよりブタンガスを0.6kg/hの流量で注入して、熱可塑性樹脂組成物とした。サーキュラーダイの吐出口(口径φ105mm、開口幅0.72mm)から、熱可塑性樹脂組成物を吐出量90kg/hにて吐出した。この時のスクリューの回転数は30rpmであり、金型吐出口のせん断速度、引取速度、サーキュラーダイからマンドレルまでの距離及び発泡シートの到達時間を表1のように設定した。吐出された熱可塑性樹脂組成物を冷却し、成形して、厚み3.2mm、坪量1000g/m2、幅645mmの発泡シートを得た。それ以外は実施例1と同様の方法にして発泡容器を得た。
【0106】
(実施例6)
表1に示す組成に従い、発泡シートを製造した。ポリエチレンテレフタレート樹脂(三井化学社製SA-135:IV値0.83)70質量部と、ポリエチレンテレフタレート樹脂(遠東新世紀社製:CH611:IV値1.06)30質量部と、気泡調整剤としてタルク0.4質量部と、をそれぞれ130℃にて24時間乾燥させた(乾燥処理)。乾燥処理後の各材料と、架橋剤としてPMDA(無水ピロメリット酸:濮陽盛華徳化工社製)0.20質量部とを混合し、得られた混合物をφ90の短軸押出機に投入した。最高設定温度285℃の押出条件にて溶融混錬し、270℃に設定したゾーンよりブタンガスを0.8kg/hの流量で注入して、熱可塑性樹脂組成物とした。サーキュラーダイの吐出口(口径φ135mm、開口幅0.44mm)から熱可塑性樹脂組成物を吐出量100kg/hにて吐出した。この時のスクリューの回転数は32rpmであり、金型吐出口のせん断速度、引取速度、サーキュラーダイからマンドレルまでの距離及び発泡シートの到達時間を表1のように設定した。吐出された熱可塑性樹脂組成物を冷却し、成形して、厚み2.0mm、坪量300g/m2、幅645mmの発泡シートを得た。それ以外は実施例1と同様の方法にして発泡容器を得た。
【0107】
(実施例7)
表1に示す組成に従い、発泡シートを製造した。ポリエチレンテレフタレート樹脂(遠東新世紀社製CH611:IV値1.06)100質量部と、気泡調整剤としてタルク1.5質量部と、をそれぞれ100℃にて16時間乾燥させた(乾燥処理)。乾燥処理後の各材料と、架橋剤としてPMDA(無水ピロメリット酸:濮陽盛華徳化工社製)0.16質量部とを混合し、得られた混合物をφ90の短軸押出機に投入した。最高設定温度285℃の押出条件にて溶融混錬し、265℃に設定したゾーンより窒素ガスを1.25NL/minの流量で注入して、熱可塑性樹脂組成物とした。サーキュラーダイの吐出口(口径φ135mm、開口幅0.44mm)から、熱可塑性樹脂組成物を吐出量150kg/hにて吐出した。この時のスクリューの回転数は47rpmであり、金型吐出口のせん断速度、引取速度、サーキュラーダイからマンドレルまでの距離及び発泡シートの到達時間を表1のように設定した。吐出された熱可塑性樹脂組成物を冷却し、成形して、厚み0.8mm、坪量330g/m2、幅1052mmの発泡シートを得た。それ以外は実施例1と同様の方法にして発泡容器を得た。
【0108】
(実施例8)
表2に示す組成に従い、発泡シートを製造した。ポリエチレンテレフタレート樹脂(遠東新世紀社製CH611:IV値1.06)100質量部と、気泡調整剤としてタルク1.5質量部と、をそれぞれ100℃にて16時間乾燥させた(乾燥処理)。乾燥処理後の各材料と、架橋剤としてPMDA(無水ピロメリット酸:濮陽盛華徳化工社製)0.16質量部とを混合し、得られた混合物をφ90の短軸押出機に投入した。最高設定温度285℃の押出条件にて溶融混錬し、265℃に設定したゾーンより窒素ガスを1.25NL/minの流量で注入して、熱可塑性樹脂組成物とした。サーキュラーダイの吐出口(口径φ135mm、開口幅0.44mm)から、熱可塑性樹脂組成物を吐出量150kg/hにて吐出した。この時のスクリューの回転数は47rpmであり、金型吐出口のせん断速度、引取速度、サーキュラーダイからマンドレルまでの距離及び発泡シートの到達時間を表2のように設定した。吐出された熱可塑性樹脂組成物を冷却し、成形して、厚み0.8mm、坪量330g/m2、幅665mmの発泡シートを得た。それ以外は実施例1と同様の方法にして発泡容器を得た。
【0109】
(実施例9)
金型吐出口のせん断速度、引取速度、サーキュラーダイからマンドレルまでの距離及び発泡シートの到達時間を表2のように設定した以外は、実施例7と同様にして発泡シート及び発泡容器を得た。得られた発泡シートは、厚み0.8mm、坪量330g/m2、幅1052mmであった。
【0110】
(実施例10)
押出機の最高設定温度を300℃にて溶融混錬し、金型吐出口のせん断速度、引取速度、サーキュラーダイからマンドレルまでの距離及び発泡シートの到達時間を表2のように設定した以外は、実施例7と同様にして発泡シート及び発泡容器を得た。得られた発泡シートは、厚み0.8mm、坪量330g/m2、幅1052mmであった。
【0111】
(実施例11)
金型吐出口のせん断速度、引取速度、サーキュラーダイからマンドレルまでの距離及び発泡シートの到達時間を表2のように設定した以外は、実施例7と同様にして発泡シート・容器を得た。得られた、発泡シート厚み0.8mm、坪量330g/m2、幅1052mmであった。
【0112】
(実施例12)
金型吐出口のせん断速度、引取速度、サーキュラーダイからマンドレルまでの距離及び発泡シートの到達時間を表2のように設定した以外は、実施例1と同様にして発泡シート及び発泡容器を得た。得られた発泡シートは、厚み0.8mm、坪量330g/m2、幅1052mmであった。
【0113】
(実施例13)
表2に従い、発泡シートを製造した。ポリエチレンテレフタレート樹脂(遠東新世紀社製CH611:IV値1.06)100質量部と、気泡調整剤としてタルク1.5質量部と、をそれぞれ100℃にて16時間乾燥させた(乾燥処理)。乾燥処理後の各材料と、架橋剤としてPMDA(無水ピロメリット酸:ダイセル社製)0.16質量部とを押出機に投入したこと以外は、実施例1と同様にして発泡シート及び発泡容器を得た。得られた発泡シートは、厚み0.8mm、坪量330g/m2、幅665mmであった。
【0114】
(実施例14)
表2に従い、発泡シートを製造した。ポリエチレンテレフタレート樹脂(遠東新世紀社製CH611:IV値1.06)100質量部と、気泡調整剤としてタルク1.5質量部と、をそれぞれ100℃にて16時間乾燥させた(乾燥処理)。乾燥処理後の各材料と、架橋剤としてダイセル社製PMDA(無水ピロメリット酸)0.14部と、濮陽盛華徳化工社製PMDA0.04部とを押出機に投入したこと以外は、実施例1と同様にして発泡シート及び発泡容器を得た。得られた、発泡シートは、厚み0.8mm、坪量330g/m2、幅665mmであった。
【0115】
(実施例15)
表3に従い、発泡シートを得た。熱可塑性ポリエステル系樹脂(リサイクルペット、実施例1のリサイクル品)65質量部と、ポリエチレンテレフタレート樹脂(遠東新世紀社製CH611:IV値1.06)35質量部と、発泡調整剤としてタルク0.2質量部と、をそれぞれ130℃にて24時間乾燥させた(乾燥処理)。乾燥処理後の各材料と、架橋剤としてPMDA(無水ピロメリット酸:濮陽盛華徳化工社製)0.28質量部とを混合し、得られた混合物をφ90の単軸押出機投入した。それ以外は実施例4と同様にして発泡シート及び発泡容器を得た。得られた発泡シートは、厚み1.3mm、坪量600g/m2、幅645mmであった。
【0116】
(実施例16)
表3に示す組成に従い、発泡シートを得た。ポリエチレンテレフタレート樹脂(遠東新世紀社製、バイオポリエチレンテレフタレレートC653:IV値1.00)100質量部と、気泡調整剤としてタルク1.5質量部とをそれそれ100℃にて16時間乾燥させた。乾燥後の各材料と、架橋剤としてPMDA(無水ピロメリット酸:濮陽盛華徳化工社製)0.16質量部とを混合した以外は実施例1と同様に製造して発泡シート及び発泡容器を得た。得られた発泡シートは、厚み0.8mm、坪量330g/m2、幅665mmであった。
【0117】
(実施例17)
表3に示す組成に従い、発泡シートを得た。ポリエチレンテレフタレート樹脂(遠東新世紀社製、バイオポリエチレンテレフタレレートC653:IV値1.00)35質量部と、リサイクルペレット(PET4)65質量部と、気泡調整剤としてタルク1.5質量部とをそれそれ130℃にて24h乾燥させた。乾燥させた各材料と、架橋剤としてPMDA(無水ピロメリット酸:濮陽盛華徳化工社製)0.28質量部とを混合した以外は実施例4と同様に製造して発泡シート及び発泡容器を得た。得られた発泡シートは、厚み3.0mm、坪量600g/m2、幅645mmであった。
【0118】
(比較例1)
金型吐出口のせん断速度、引取速度、サーキュラーダイからマンドレルまでの距離及び発泡シートの到達時間を表3のように設定した以外は、実施例1と同様にして発泡シート及び発泡容器を得た。得られた発泡シートは、厚み0.8mm、坪量330g/m2、幅665mmであった。
【0119】
(比較例2)
金型吐出口のせん断速度、引取速度、サーキュラーダイからマンドレルまでの距離及び発泡シートの到達時間を表3のように設定した以外は、実施例1と同様にして発泡シート及び発泡容器を得た。得られた発泡シートは、厚み0.8mm、坪量330g/m2、幅665mmであった。
【0120】
(比較例3)
金型吐出口のせん断速度、引取速度、サーキュラーダイからマンドレルまでの距離及び発泡シートの到達時間を表3のように設定した以外は、実施例7と同様にして発泡シート及び発泡容器を得た。得られた、発泡シートは、厚み0.8mm、坪量330g/m2、幅665mmであった。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
表1~3に示すように、本発明を適用した実施例1~17は、臭気の評価が「★」~「△」であった。
酢酸溶出量が100質量ppm超である比較例1~3は、いずれも臭気の評価が「×」であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、特有の臭気を低減できることを確認できた。