(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145649
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】結腸直腸癌の予防における使用のためのN-パルミトイル-エタノールアミド
(51)【国際特許分類】
A61K 31/164 20060101AFI20220926BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220926BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220926BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220926BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220926BHJP
A23L 33/12 20160101ALI20220926BHJP
【FI】
A61K31/164
A61P35/00
A61P1/00
A61P43/00 105
A61K9/20
A23L33/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022042976
(22)【出願日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】102021000006494
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】515128150
【氏名又は名称】エピテック・グループ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】EPITECH GROUP S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】デッラ ヴァッレ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】デッラ ヴァッレ,マリア フェデリカ
(72)【発明者】
【氏名】ゴミエロ,キアーラ
(72)【発明者】
【氏名】ボレッリ,フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】カパッソ,ラッファエーレ
(72)【発明者】
【氏名】イッツォ,アンジェロ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】パガーノ,エステル
(72)【発明者】
【氏名】ロマーノ,バルバラ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LE01
4B018LE02
4B018MD08
4B018MD18
4B018ME08
4C076AA36
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB29
4C076BB31
4C076CC16
4C076CC27
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA03
4C206GA26
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA75
4C206MA77
4C206MA80
4C206MA83
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA66
4C206ZB21
4C206ZB26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】結腸直腸癌(CRC)に対する抗腫瘍療法におけるN-パルミトイルエタノールアミドの使用を提供する。
【解決手段】本発明は、結腸直腸癌、腺腫性ポリープおよび/または前腫瘍性ACF病変の予防における使用のためのパルミトイルエタノールアミドに関する。さらに、本発明は、パルミトイルエタノールアミドが、健康な細胞ではなく腫瘍細胞に対して選択的な抗増殖作用を発揮する、結腸直腸癌の抗腫瘍療法における使用のためのパルミトイルエタノールアミドに関する。該パルミトイルエタノールアミドが、体積パーセントによって定義され、そしてレーザー光散乱法により測定され、6μm未満かつ0.5μm超のモードを有する分布曲線により表される、粒子径分布を有する、超微細化形態である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結腸直腸癌、腺腫性ポリープおよび/または前腫瘍性ACF病変の予防における使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項2】
パルミトイルエタノールアミドが、健康な細胞ではなく腫瘍細胞に対して選択的な抗増殖作用を発揮する、結腸直腸癌の抗腫瘍療法における使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項3】
PEAが、G2/M期の腫瘍性細胞の細胞周期を停止することによって腫瘍細胞に対して選択的な抗増殖作用を発揮する、請求項2に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項4】
パルミトイルエタノールアミドが、体積パーセントによって定義され、そしてレーザー光散乱法により測定され、6μm未満かつ0.5μm超のモードを有する分布曲線により表される、粒子径分布を有する、超微細化形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項5】
体積パーセントによって定義され、そしてレーザー光散乱法により測定され、フラウンホーファー計算アルゴリズムを備えたマルバーンマスターサイザー3000装置で測定される、粒子径分布を有し、粒子の少なくとも95体積%、好ましくは少なくとも99体積%が、6μm未満の粒子径を有する、請求項4に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項6】
パルミトイルエタノールアミドが、体積パーセントによって定義され、そしてレーザー光散乱法により測定され、フラウンホーファー計算アルゴリズムを備えたマルバーンマスターサイザー3000装置で測定され、2~4μmのモードを有し、10μmより小さい粒子が100体積%であり、3μmより小さい粒子が少なくとも60%である、粒子径分布を有する、請求項4に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項7】
パルミトイルエタノールアミドが、用量単位当たり10mg~1500mgまたは100mg~900mgのPEAの用量で、1日1~4回投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項8】
パルミトイルエタノールアミドが、医薬または獣医用製剤に含まれ、経口、バッカル、非経口、直腸または経皮投与のための剤形に製剤化される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項9】
パルミトイルエタノールアミドが、食事組成物、栄養補助食品、または特別医療目的用食品(FSMP)に含まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項10】
パルミトイルエタノールアミドが慢性投与で使用される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍療法におけるN-パルミトイルエタノールアミドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
結腸直腸癌(CRC)は、極めて一般的な腫瘍性疾患であり、世界中で発生率が急速に増加している主要な死因である。米国では、2020年に147,950人がCRCの新たな診断を受け、そのうち17,930人(12%)が50歳未満の人であると推定された。ヨーロッパでは、CRCは2018年の癌による死亡のランキングで2位であった。
【0003】
イタリアでは、毎年約53,000人が新たに結腸直腸癌(CRC)と診断されると推定されており、この疾患は男性と女性の両方で頻度の順で2番目になっている。2000年代半ば以降、CRCの発生率は、CRCの発症を支持する危険因子の増加により着実に上昇している。
【0004】
ライフスタイル、バランスの悪い食事、遺伝的要因、腸微生物叢の変化、炎症性腸疾患(IBD)、ならびにクローン病、潰瘍性大腸炎、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)およびリンチ症候群などの他の疾患を含む、多くの要因がこの腫瘍の発症メカニズムを引き起こす。
【0005】
CRCの発生率は、スクリーニングおよび固形腫瘍の出現リスクを低減することが示されている物質の使用からなる薬物予防(drug-prevention)または化学的予防(chemo-prevention)プログラムの導入と同時に減少し始めた。
【0006】
化学的予防は、癌を発症するリスクが高い可能性のある健康な人を対象とし、分子変化プロセスが癌を引き起こす間の広い時間枠で行動しようとする腫瘍学の分野である。このため、予防戦略は、発癌性物質への曝露を排除または低減し、リスクのある対象体を特定し、発癌のプロセスを中断するために薬理学的および/または食事療法により介入することを目的とする。化学的予防は、活性化段階および増殖の両方に作用することにより、腫瘍性形質転換を妨げようとする。
【0007】
化学療法との違いは極めて大きいため、2つのアプローチを混同してはならない:予防的処置は、健康な細胞、したがってそれらに対象とされる人の健康に有害な影響を及ぼさない物質の使用を含む。逆に、化学療法処置では、罹患した細胞だけでなく健康な細胞にも向けられた有害な化学物質が使用される。したがって、化学的予防は、細胞の制御されない再生を防ぐために、一定の恒常性バランスを作り、維持することを目的とする。
【0008】
ヒトにおけるCRCは、消化管の最後の部分で発生し、腸粘膜細胞の制御されていない増殖に続くポリープの悪性形質転換によるものである。ポリープは良性病変に該当するが、前癌性の形態と見なされる。
【0009】
ほとんどの場合、CRCは良性腺腫性ポリープとして始まり、そこから高度に形成異常の腺腫が発生し、その後、遺伝子の安定性が徐々に損なわれることを決定付ける遺伝的および後成的変化の蓄積により浸潤性癌に進行する。
【0010】
結腸直腸領域の正常から癌への腸粘膜細胞の形質転換プロセスは、癌化する可能性のある変異の蓄積から細胞を保護する、細胞周期の進行を阻止するために用いられる腫瘍抑制遺伝子の突然変異により生じる。このような阻止が欠落している場合、細胞は制御されていない方法で癌細胞への形質転換に向かって進行する。
【0011】
現在まで、CRCを根絶することを目的とした治療は手術であり、しばしば温存的な介入を実行し、可能であれば、いわゆるオストミーを回避するために、化学療法および放射線療法が先行することが増えている。CRCの処置において最も活性のある抗癌剤は、フルオロピリミジン(静注5-フルオロウラシル、経口カペシタビン)、オキサリプラチンおよびイリノテカンを含む。
【0012】
上記、特に結腸直腸癌の発生に関して言いたかったことは、したがって、そのような腫瘍形態の発症を予防でき、そして、そのような疾患に既に罹患している対象の場合には、安全な処置、すなわち、癌細胞にのみ選択的に作用し、健康な細胞に影響を与えない処置を提供できる、治療を提供する必要があることは明らかであることである。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、パルミトイルエタノールアミド(PEA)が、好ましくは超微粉化形態で使用される場合、結腸直腸癌(CRC)の形成および良性腺腫性ポリープの形成に対して予防効果ならびに腫瘍細胞に対する特異的抗腫瘍効果を発揮できるという驚くべき発見に由来する。
【0014】
本発明は、結腸直腸癌、腺腫性ポリープおよび/または前腫瘍性ACF病変の予防における使用のためのパルミトイルエタノールアミドに関する。
【0015】
本発明はまた、パルミトイルエタノールアミドが、健康な細胞ではなく腫瘍細胞に対して選択的な抗増殖作用を発揮する、結腸直腸癌の抗腫瘍療法における使用のためのパルミトイルエタノールアミドに関する。
【0016】
添付の特許請求の範囲に概説するこれらおよび更なる対象は、以下の説明において記載される。特許請求の範囲の本文は、記載の十分性を評価する目的で、記載に含まれるとみなされなければならない。
【0017】
本発明の更なる特徴および利点は、非限定的な例として与えられた好ましい実施態様の以下の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、超微細化形態のパルミトイルエタノールアミドの粒子径分布グラフを示す。
【0019】
【
図2】
図2A、2Bおよび2Cは、超微細化PEAの存在下または非存在下での24時間のHCT116細胞(A)、Caco-2細胞(B)、および健康なヒト結腸上皮細胞HCEC(C)の細胞増殖率のグラフを示し、結果は、細胞増殖パーセンテージを平均±SEMとして表す。対照群と比較して*P<0.05および***P<0.001であり、スチューデントのt検定で評価した(ns=有意ではない)。
【0020】
【
図3】
図3A、3Bおよび3Cは、超微細化PEAによる細胞周期停止の誘導のグラフを示す。(A)超微細化PEA(30μMで24時間)の存在下または非存在下でのHCT116細胞のフローサイトメトリーによる細胞周期分析、スチューデントのt検定で評価した対照に対して、*P<0.05および****P<0.0001。超微細化PEA(30μMで24時間)の存在下または非存在下でのHCT116細胞におけるサイクリンB1(B)およびサイクリン依存性キナーゼ1(CDK1)(C)の遺伝子発現。遺伝子の発現をリアルタイムPCRで測定し、結果は平均±SEMとして表す。対照群と比較して*P<0.05および***P<0.001であり、スチューデントのt検定で評価した。
【0021】
【
図4】
図4A、4Bおよび4Cは、結腸癌のAOMマウスモデルにおける超微細化PEA処置の効果のグラフを示す:化学的予防の効果を評価するために、最初のAOM投与の前の週から開始する実験期間中(13週間)1週間に3回経口投与する、超微細化PEA 10mg/kgによって処置したかまたは処置していないマウスにおける、AOMの投与(実験の第1、第2、第3および第4週の開始時に10mg/kg(腹腔内投与で合計40mg/kgに対応))に由来する(A)ACF、(B)ポリープ、および(C)腫瘍の総数。結果は平均±SEMとして表す。AOM単独で処理した対照群と比較して*P<0.05および**P<0.01であり、スチューデントのt検定を用いた。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1態様において、本発明は、結腸直腸癌(CRC)予防における使用のためのパルミトイルエタノールアミド(PEA)に関する。
【0023】
用語「予防」は、活性化段階および増殖の両方に作用することにより、良性形成の腫瘍性変化または腫瘍性形質転換の発生を妨げるための、健康な患者、好ましくは結腸直腸癌のリスクのある患者の薬理学的処置を意味する。
【0024】
特に、本発明により、腫瘍および炎症性バイオマーカーの検索に供され、そのようなバイオマーカーについて陽性と診断されるCRCのリスクのある患者は、慢性PEA療法、特に超微粉化PEAに供されて、CRCの発症に対抗するおよび/または遅らせるために正しい腸内環境を回復させることができる。
【0025】
第2態様において、本発明は、PEAが、健康な細胞ではなく腫瘍細胞に対して選択的な抗増殖作用を発揮する、CRCの抗腫瘍療法における使用のためのパルミトイルエタノールアミド(PEA)に関する。
【0026】
特に、本発明は、PEAが、G2/M期の腫瘍性細胞の細胞周期を停止することによって腫瘍細胞に対して選択的な抗増殖作用を発揮する、CRCの抗腫瘍療法における使用のためのパルミトイルエタノールアミド(PEA)に関する。
【0027】
好ましくは、PEAは、超微細化形態である。
【0028】
「超微細化形態のパルミトイルエタノールアミド(またはPEA)」という用語は、PEAが、体積パーセントによって定義され、そしてレーザー光散乱法により測定され、6μm未満かつ0.5μm超のモードを有する分布曲線により表される、粒子径分布を有することを意味する。
【0029】
一実施態様において、超微細化形態のPEAは、フラウンホーファー(Fraunhofer)計算アルゴリズムを備えたマルバーンマスターサイザー3000(Malvern Mastersizer 3000)装置で測定され、上に定義した粒子径分布を有し、粒子の少なくとも95体積%、より好ましくは少なくとも99体積%が、6μm未満の粒子径を有する。
【0030】
特に好ましい実施態様において、超微細化形態のPEAは、フラウンホーファー計算アルゴリズムを備えたマルバーンマスターサイザー3000装置で測定され、2~4μmのモードを有し、10μmより小さい粒子が100体積%であり、3μmより小さい粒子が少なくとも60%である、上に定義した粒子径分布を有する。
【0031】
微粉化は、機械的エネルギーの代わりに運動エネルギーを利用して粒子を粉砕できる圧縮空気または窒素ジェットを用いたらせん技術で動作する流体ジェットシステム(例えば、Jetmill(登録商標)モデルシステム)で実施し得る。このような装置は、従来からあるものであり、したがって、以下の特徴に関連することを除いて、これ以上説明しない:
- 微粉化チャンバーの内径約300mm;
- 流体ジェット圧力10~12バール;
- 生成物供給9~12kg/h。
【0032】
本発明の目的のために、PEAは、医薬または獣医用製剤に含まれ得て、経口、バッカル、非経口、直腸または経皮投与のための剤形に製剤化され得る。
【0033】
経口投与について、医薬組成物は、例えば、錠剤または硬もしくは軟カプセル剤の形態であり得て、医薬的に許容される添加剤、例えば結合剤(例えばアルファ化コーンスターチ、ポリビニルピロリドンまたはメチルセルロースヒドロキシプロピル);賦形剤(例えばラクトース、結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ばれいしょデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または阻害剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)を用いて従来の方法で製造し得る。錠剤は、当技術分野で周知の方法でコーティングし得る。経口投与用の液体製剤は、例えば、液剤、シロップ剤または懸濁剤の形態であり得るか、またはそれらは、使用前に、水または他の適切なビヒクルで再構成される凍結乾燥または造粒された製剤であり得る。このような液体製剤は、医薬的に許容される添加剤、例えば懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体または食用硬化脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコールまたは分画植物油);および防腐剤(例えば、メチル-またはプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸またはソルビン酸)を用いて従来の方法で製造し得る。製剤はまた、香味料、色素および甘味剤を好都合に含み得る。
【0034】
経口投与のための製剤は、有効成分の制御放出を可能にするために適切に製剤化し得る。
【0035】
バッカル投与について、組成物は、バッカル粘膜のレベルでの吸収に適合した、従来の方法で製剤化した錠剤または丸薬の形態であり得る。典型的なバッカル製剤は、舌下投与のための錠剤である。
【0036】
本発明の組成物は、注射による非経腸投与のために製剤化し得る。注射製剤は、防腐剤を添加した単回投与として、例えばバイアルに入れて提供され得る。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤またはエマルション剤としてこの形態で提供され得て、懸濁化液、安定化剤および/または分散化剤などの製剤の物質を含み得る。あるいは、有効成分は、使用前に、適切なビヒクル、例えば滅菌水で再構成される粉末の形態であり得る。
【0037】
本発明の組成物はまた、例えばカカオバターまたは他のグリセリドなどの一般的な坐剤の基礎成分を含む、坐剤または停留浣腸などの直腸製剤に従って製剤化し得る。
【0038】
上記の組成物に加えて、本発明の組成物はまた、デポ剤として製剤化し得る。このような長時間作用型製剤は、埋め込み(例えば皮下、経皮または筋肉内)または筋肉内注射により投与し得る。したがって、例えば、組成物は、適切なポリマーまたは疎水性材料(例えば、適切な油中のエマルションの形態で)またはイオン交換樹脂を用いて、または最小限の可溶性の誘導体として製剤化し得る。
【0039】
本発明によれば、ヒト(体重約70kg)への投与に提言されるPEAの用量は、用量単位あたり10mg~1500mgまたは100mg~900mgのPEAの範囲である。用量単位は、例えば、1日1~4回投与され得る。用量は、PEAが投与される形態、すなわち、非微細化PEA、微細化PEA、または超微細化PEAのいずれが投与されるかに依存する。用量はまた、投与のために選択された経路に依存する。患者の年齢および体重、ならびに処置すべき臨床状態の重症度に応じて、投与量を継続的に変更する必要がある場合があることを考慮すべきである。正確な投与量および投与経路は、最終的には担当医または獣医の裁量に委ねられる。
【0040】
予防的処置について、PEAは、毒性が極めて低いことにより、長期間または慢性予防的処置のために投与できる。
【0041】
本発明はさらに、健康な対象におけるCRCの発症の予防に使用するための、PEA、好ましくは超微細化PEAを含む、食事組成物、栄養補助食品および特別医療目的用食品(FSMP)に関する。
【0042】
用語「特別医療目的用食品(food for special medical purposes)」は、規則(EU)2016/128に従って承認された製品を意味する。このような用語は、医学的な、したがって、そのようなFSMPを薬物と同等とする、監督の下で投与される製品を指す。
【0043】
本発明による製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences Handbook, Mack Pub. Co., N.Y., USA, 17th edition, 1985に記載のものなどのの従来の方法に従って製造し得る。
【実施例0044】
(微細化手順)
【0045】
PEAを、前記のように微細化した。
【0046】
超微細化を、圧縮空気ジェット「らせん技術」で動作する流体ジェットシステム(特に、Jetmill(登録商標)モデルシステム)で実施した。
【0047】
最適な微細化条件:
- 微粉化チャンバーの内径300mm;
- 流体ジェット圧力8バール;
- 生成物供給9~12kg/h。
【0048】
(粒子径分布の決定)
【0049】
粒子径分布の決定を、1分間の超音波処理後、湿潤試料で実施した。
【0050】
LALLS(低角レーザー光散乱)技術およびフラウンホーファー計算アルゴリズムで動作するマルバーンマスターサイザー3000装置を用いた。
【0051】
【0052】
(生物学的実験)
【0053】
インビトロ実験では、不死化ヒト結腸癌(HCT116)およびヒト結腸直腸腺癌細胞株(Caco-2)および不死化健康ヒト結腸上皮細胞(HCEC)を、10%ウシ胎児血清(FBS、Sigma Aldrich)を添加したDMEM増殖培地(Sigma Aldrich)で培養し、5%CO2雰囲気のインキュベーター内で37℃に保った。
【0054】
生存率を評価するために、細胞をトリパンブルーで染色し、超微細化PEA(1~30μM)の存在下または非存在下で、BrdU増殖ELISAキット(Roche、Milan、Italy)を用いて細胞増殖を測定した。
【0055】
HCT116細胞の細胞周期分析を、BD PharmingenTM BrdU Flow Kit(BD Biosciences、USA)で報告されているプロトコルに従って実施した。この研究では、1.5×105個の細胞を6ウェルプレートに播種し、超微細化PEA(30μM)の存在下または非存在下で無血清培地中に24時間保存した。細胞を、そのBrdU(ブロモデオキシウリジン)および7-AAD(7-アミノアクチノマイシンD)含有量に従って、BriCyteフローサイトメーター(Mindray、Italy)で検出した。得られたデータを、FlowJo v10ソフトウェア(tree Star、USA)で分析し、様々な細胞周期段階でのHCT116の分布を把握した。
【0056】
CDK1およびCYCLIN B1遺伝子の発現を、特定のプライマーを用いた定量リアルタイムPCR法によって評価した。
【0057】
インビボ試験を、6週齢(25~30g)の雄性CD1マウスを自由に摂食させ、睡眠/覚醒サイクルを制御したケージに収容して実施した。実験開始前に、イタリア保健省によって承認された実験動物の管理の原則に準拠し、ARRIVEガイドラインを尊重し、すべての実験手順とプロトコルを考慮して、動物を1週間の順化期間に供した(Curtis MJ et al. Experimental design and analysis and their reporting II: updated and simplified guidance for authors and peer reviewers. Br J Pharmacol, 2018; 175: 987-993)。
【0058】
動物をAOM(アゾキシメタン、合計40mg/kg)で化学的に処置して(Neufert C et al. An inducible mouse model of colon carcinogenesis for the analysis of sporadic and inflammation-driven tumor progression. Nat Protoc 2007; 2: 1998-2004)、CRCの形成を誘発した。実験の第1、第2、第3および第4週の開始時に、AOMの単回投与を10mg/kgの濃度で腹腔内注射した(Pagano E et al. Pharmacological inhibition of MAGL attenuates experimental colon carcinogenesis, Pharmacol Res 2017; 119: 227-236)。
【0059】
動物を、各7匹の動物からなる2つの群に無作為化した:
群1を、超微細化PEAを懸濁するために使用されるビヒクルである2%カルボキシメチルセルロース(CMC)を用いて経口で処置した。
群2を、化学的予防効果を評価するためにAOMの最初の投与の前の週から開始して、実験期間中、週に3回、10mg/kgの濃度の2%CMC中の超微細化PEAを用いて経口で処置した(Pagano E et al. Pharmacological inhibition of MAGL attenuates experimental colon carcinogenesis, Pharmacol Res 2017; 119: 227-236)。
【0060】
最初のAOM注射の12週間後に動物を安楽死させ、結腸直腸領域を収集した。
【0061】
実験室での経験に基づいて、用いるAOMのタイミングおよび投与量は、かなりの数のACF、ポリープ、および腫瘍の出現を確保した(Izzo AA et al. Increased endocannabinoid levels reduce the development of precancerous lesions in the mouse colon. J Mol Med (Berl) 2008; 86: 89-98)。
【0062】
ACF、ポリープおよび結腸直腸腫瘍の検出および定量を、Pagano E et al. Pharmacological inhibition of MAGL attenuates experimental colon carcinogenesis, Pharmacol Res 2017; 119: 227-236のプロトコルに従って実施した。
【0063】
(結果)
【0064】
(インビトロでのHCT116およびCaco-2細胞の増殖)
超微細化PEAは、インビトロでのHCT116およびCaco-2細胞の増殖を著しく減少させる;特に、超微細化PEAを用量を増加させて(1~30μM)使用すると、24時間の曝露中のHCT116細胞の増殖速度が低下する(
図2A)。さらに、30μMの超微細化PEAは、非転移性Caco-2細胞の増殖を著しく減少させることができる(
図2B)。驚くべきことに、超微細化PEAの抗増殖効果は、健康な上皮細胞株HCECの増殖速度に影響を与えず(
図2C)、腫瘍細胞に対する選択的効果を有効に示した。このデータは、副作用の大幅な低下を可能にするため、極めて重要である。
【0065】
(インビトロでのHCT116細胞のG2/M期における細胞周期停止)
フローサイトメトリーは、超微細化PEAでのHCT116細胞の処理(30μMで24時間)が、G2/M期の腫瘍性細胞をブロックし、同時にS期の細胞の割合を著しく減少させることができることを明らかにした(
図3A)。G2/M転換はサイクリンB1/CDK1複合体によって制御されることが知られているため(Malumbres M and Barbacid M, 2005)、超微細化PEAの存在下でのそのような複合体の挙動を調査し:超微細化PEAでの細胞の処理が、サイクリンB1/CDK1複合体の発現を増加させることを見出した(
図3B~C)。これらのデータは、超微細化PEAが、G2/M期の腫瘍性細胞の停止だけでなく、上記段階の細胞周期の停止に必要なサイクリンB1/CDK1複合体の活性化にも積極的に関与することができることを示している。
【0066】
(CRCの動物モデルにおける腫瘍発生の予防)
発癌物質AOM(アゾキシメタン)の投与は、ACF(
図4A)、ポリープ(
図4B)および腫瘍(
図4C)として知られる異常な腺窩のいくつかの病巣の形成を誘発する。最初のAOM投与の前の週から開始する実験期間中(13週間)1週間に3回経口投与する、超微細化PEA 10mg/kgによる動物の処置は、発癌物質AOMによって誘発された、前腫瘍性ACF病変の数(
図4A)および腫瘍の総数(
図4C)を著しく減少させる。超微細化PEAは、ポリープの数も減少させる強い傾向を示した(
図4B)。
【0067】
これらの結果に照らして、超微細化PEAの予防的投与は、腸粘膜細胞の腫瘍細胞への形質転換を遅らせることにより、CRCの発生を減少させるのに効果的であると考えられる(化学療法予防効果)。このデータは、超微細化PEAの予防的摂取が、完全に安全であることに加えて、どのようにCRCの攻撃性を著しく弱め、余命を効果的に改善するかを示している。
【0068】
さらに、粘膜細胞のゆっくりとした形質転換は、診断時に、小さなCRC、そしておそらくまだ攻撃的ではない初期の段階での処置を可能にする。
【0069】
得られたデータは、PEA、特に超微細化PEAによる化学的予防処置が、CRCの発生をどのように減少させることができるかを初めて示している。
【0070】
次に、以下の製剤例を用いて本発明をさらに説明する。
【0071】
(製剤例)
PEA-UM=超微細化パルミトイルエタノールアミド
【0072】
実施例1
各錠剤は以下を含む:
PEA-UM 300.00mg
結晶セルロース 78.47mg
クロスカルメロースナトリウム 45.00mg
ポリビニルピロリドン 10.00mg
ステアリン酸マグネシウム 4.0mg
ポリソルベート80 2.00mg
【0073】
実施例2
各錠剤は以下を含む:
PEA-UM 600.00mg
結晶セルロース 156.94mg
クロスカルメロースナトリウム 90.00mg
ポリビニルピロリドン 20.00mg
ステアリン酸マグネシウム 8.00mg
ポリソルベート80 4.00mg
【0074】
実施例3
5gの用量の口腔内崩壊性微小顆粒は以下を含む:
PEA-UM 500.00mg
非齲蝕性糖 200.00mg
必要に応じて5.00gまでの許容される添加剤
【0075】
実施例4
適切なコーティングで耐胃性にした硬ゼラチンカプセル剤は以下を含む:
PEA-UM 400mg
大豆レシチン 100mg
乳糖 80mg
【0076】
実施例5
耐胃性層でコーティングした錠剤は以下を含む:
PEA-UM 500mg
微細化PEA 250mg
ポリビニルピロリドン 30mg
クロスカルメロースナトリウム 80mg
ステアリン酸マグネシウム 7mg
【0077】
実施例6
坐剤は以下を含む:
PEA-UM 300mg
非微細化PEA 500mg
必要に応じて坐剤の親油性基剤を3gまで
【0078】
実施例7
2.5mlのオイリージェルは以下を含む:
PEA-UM 600.00mg
モノステアリン酸グリセリル 40.00mg
必要に応じて2.50mlまでの植物油