(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145659
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】水上中継機と水中航走体との連結システム及びその運用方法
(51)【国際特許分類】
B63C 11/00 20060101AFI20220926BHJP
B63C 11/48 20060101ALI20220926BHJP
G05D 1/00 20060101ALI20220926BHJP
G05D 1/04 20060101ALI20220926BHJP
G01V 11/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B63C11/00 C
B63C11/48 D
G05D1/00 A
G05D1/04
G01V11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043770
(22)【出願日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2021045636
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠野 雅彦
【テーマコード(参考)】
2G105
5H301
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB02
2G105BB17
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105LL07
5H301AA05
5H301CC04
5H301CC07
5H301DD08
5H301DD13
5H301FF11
5H301GG10
5H301GG16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水中航走体で取得された撮像画像等の情報を水上中継機を介して母船等に高速かつ安定に通信する。
【解決手段】中継機推進手段と中継機位置計測手段を有した水上中継機200と、航走体位置推定手段を有した水中航走体100と、水中航走体で得られた画像情報を含む取得情報の伝送を行う情報伝送線と、水上中継機と水中航走体に目標緯度及び目標経度を設定する位置設定手段と、水上中継機と水中航走体を制御する制御手段とを備え、設定された目標緯度及び目標経度と中継機位置計測手段で計測された水上位置に基づいて中継機推進手段を駆動し水上中継機の位置を制御手段で制御するとともに、設定された目標緯度及び目標経度と航走体位置推定手段で推定された水中位置に基づいて水中航走体の位置を制御手段で制御することで、水中航走体と水上中継機が目標緯度及び目標経度まで水面と水中における鉛直位置関係を保持しながら並走するように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継機推進手段と中継機位置計測手段を有した水上中継機と、
航走体位置推定手段を有した水中航走体と、
前記水上中継機と前記水中航走体とを接続し、前記水中航走体で得られた画像情報を含む取得情報の伝送を行う情報伝送線と、
前記水上中継機と前記水中航走体に目標緯度及び目標経度を設定する位置設定手段と、
前記水上中継機と前記水中航走体を制御する制御手段とを備え、
設定された前記目標緯度及び前記目標経度と前記中継機位置計測手段で計測された水上位置に基づいて前記中継機推進手段を駆動し前記水上中継機の位置を前記制御手段で制御するとともに、設定された前記目標緯度及び前記目標経度と前記航走体位置推定手段で推定された水中位置に基づいて前記水中航走体の位置を前記制御手段で制御することで、前記水中航走体と前記水上中継機が前記目標緯度及び前記目標経度まで水面と水中における鉛直位置関係を保持しながら並走することを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムであって、
前記位置設定手段を有する母船を備え、
前記母船と前記水上中継機とが無線通信を利用して前記目標緯度及び前記目標経度及び前記取得情報の伝送を行うことを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムであって、
前記母船から前記水上中継機及び前記水中航走体の少なくとも一方の遠隔操作が可能であることを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムであって、
前記中継機位置計測手段は、衛星測位システム受信機と姿勢方位基準装置(AHRS)を有することを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムであって、
前記航走体位置推定手段は、慣性航法装置(INS)とドップラー対地速度計(DVL)、又は姿勢方位基準装置(AHRS)とドップラー対地速度計(DVL)を有することを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムであって、
前記航走体位置推定手段は、深度計を有し、
前記位置設定手段で設定された深度に前記水中航走体が位置するように前記制御手段で前記水中航走体を制御することを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムであって、前記水上中継機は、前記水中航走体を撮像可能な中継機撮像手段を有することを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムであって、前記水中航走体は、水に対して中性浮力を有することを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムであって、
前記水上中継機、前記水中航走体、前記情報伝送線、及び前記制御手段を複数組備え、前記位置設定手段で前記複数組ごとの前記目標緯度及び前記目標経度を設定することを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システム。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムであって、
前記情報伝送線の中間に他の前記水中航走体を備えることを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システム。
【請求項11】
請求項2及び請求項2を引用する請求項3~10のいずれか1項に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムであって、
前記情報伝送線の複数箇所に複数の受振手段と、音響を水中に発振する音響発振手段を前記母船に有し、前記音響発振手段による音響発振に伴う地層からの反射音響振動を複数の前記受振手段で取得し、取得した前記反射音響振動を音響情報として前記情報伝送線を利用して伝送することを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法であって、
前記水中航走体を水中に投入する航走体投入ステップと、
前記水中航走体を水底に接近させ所定の位置に保持する航走体下降ステップと、
前記水上中継機を水面に投入する中継機投入ステップと、
前記水上中継機と前記水中航走体とを前記鉛直位置関係に臨ませる鉛直位置確保ステップと、
前記鉛直位置関係に臨ませたのちに前記中継機位置計測手段で計測した前記水上位置を前記情報伝送線を介して前記水中航走体に伝送し、前記水中航走体の水中位置の初期位置として入力する初期位置入力ステップとを備えることを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法。
【請求項13】
請求項9を引用する請求項12に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法であって、
前記複数組ごとに、前記航走体投入ステップ、前記航走体下降ステップ、前記中継機投入ステップ、前記鉛直位置確保ステップ、及び前記初期位置入力ステップを繰り返すことを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法。
【請求項14】
請求項10を引用する請求項12に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法であって、
前記航走体投入ステップと航走体下降ステップとの間に、他の前記水中航走体を水中に投入する中間水中航走体投入ステップと、他の前記水中航走体を前記水面と前記水底との中間の位置に保持する中間水中航走体下降ステップを備え、前記鉛直位置確保ステップで他の前記水中航走体を前記鉛直位置関係に臨ませ、前記初期位置入力ステップで前記水上位置を前記情報伝送線を介して他の前記水中航走体に伝送することを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか1項に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法であって、
前記航走体投入ステップの前に前記水中航走体及び前記水上中継機の動作が正常かを確認するステータス確認ステップを備えることを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか1項に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法であって
前記航走体投入ステップと前記航走体下降ステップとの間に、前記水中航走体の前記航走体位置推定手段の前記水中位置の推定値が妥当な値かを判断する推定値判断ステップを備えることを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法。
【請求項17】
請求項12~16のいずれか1項に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法であって、
前記鉛直位置確保ステップにおいて、前記水上中継機と前記水中航走体とが前記鉛直位置関係に臨んでいない場合、操作者が前記水上中継機を操作して前記水中航走体が前記鉛直位置関係に臨むように位置補正して前記鉛直位置関係を確保することを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法。
【請求項18】
請求項12~17のいずれか1項に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法であって、
前記初期位置入力ステップの後、前記位置設定手段から前記水上中継機に前記目標緯度及び前記目標経度を設定する目標位置設定ステップと、
設定された前記目標緯度及び前記目標経度を前記情報伝送線を介して前記水中航走体に伝送し入力する目標位置入力ステップと、
前記目標緯度及び前記目標経度に前記水上中継機と前記水中航走体が前記鉛直位置関係を保持しながら等速で並走して向かうように制御する航走制御ステップと、
前記目標緯度及び前記目標経度に到達後に前記水上中継機と前記水中航走体の位置保持を行う位置保持ステップをさらに備えることを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法。
【請求項19】
請求項18に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法であって、
前記航走制御ステップは、前記中継機位置計測手段で計測された前記水上位置に基づいて前記水上中継機の位置を制御するとともに、前記航走体位置推定手段で推定された前記水中位置に基づいて前記水中航走体の位置を制御することを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法。
【請求項20】
請求項19に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法であって、
前記航走制御ステップは、
前記水上中継機の前記水上位置が前記目標緯度及び前記目標経度の到達範囲内であるか否かを判断する中継機到達判断ステップと、
前記水中航走体の前記水中位置が前記目標緯度及び前記目標経度の前記到達範囲内であるか否かを判断する航走体到達判断ステップを有し、
前記水上中継機と前記水中航走体が前記到達範囲内に至った場合に前記位置保持ステップに移行することを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法。
【請求項21】
請求項20に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法であって、
前記水上中継機と前記水中航走体が前記到達範囲内に至っていない場合に前記水上中継機と前記水中航走体を前記目標緯度及び前記目標経度に向かわせる制御を続行することを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法。
【請求項22】
請求項1~11のいずれか1項に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法であって、
撮像手段を用いて前記水中航走体の位置を確認する航走体位置確認ステップと、
前記水上中継機の直下に前記水中航走体が位置しているかを判断する位置判断ステップと、
前記水上中継機の直下に前記水中航走体が位置している場合に、前記中継機位置計測手段で得られた前記水上位置を情報伝送線を介して前記水中航走体に伝送し、前記水中航走体の水中位置を制御して前記水上中継機と前記水中航走体の前記鉛直位置関係を補正する水中位置補正ステップを備えることを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法。
【請求項23】
請求項22に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法であって、
前記航走体位置確認ステップにおいて操作者が前記水中航走体の位置を確認できない場合に、前記水中航走体の位置を制御して前記水中航走体を前記撮像手段で確認できる位置にまで上昇させる航走体上昇ステップを備えることを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法。
【請求項24】
請求項22又は請求項23に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法であって、
前記位置判断ステップにおいて前記水上中継機の直下に前記水中航走体が位置していないと判断された場合に、前記操作者の操作によって前記水上中継機の位置を制御して前記水中航走体の直上に移動させる位置ずれ補正ステップを備えることを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法。
【請求項25】
請求項2又は請求項3を選択する請求項11に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法であって、
前記目標緯度及び前記目標経度に到達後に前記水上中継機と前記水中航走体の位置を制御して、前記水中航走体の航走体撮像手段で水中を探査する探査ステップと、前記探査で得られた画像情報を含む取得情報を、前記情報伝送線と前記無線通信を介して前記母船に伝送する情報伝送ステップを備えることを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法。
【請求項26】
請求項2又は請求項3を選択する請求項11に記載の水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法であって、
前記目標緯度及び前記目標経度に到達後に前記母船に有した前記音響発振手段から音響を発振する音響発振ステップと、複数の前記受振手段で前記地層からの前記反射音響振動を取得する反射音響振動取得ステップと、取得した前記反射音響振動を音響情報として前記情報伝送線と前記無線通信を介して前記母船に伝送する情報伝送ステップを備えることを特徴とする水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上中継機と水中航走体との連結システム及びその運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉱物資源をはじめとするあらゆる資源の供給源として海底等の水底が注目を集めている。それに伴って、水底調査の必要性も高まりつつある。そこで、水中を航走する水中航走体の位置を高い精度で制御する技術が必要とされている。
【0003】
母船から電波により誘導制御される無人艇と、当該無人艇からケーブルを介して連結された水中航走体とを備え、母船から無人艇を介して水中航走体へ制御信号を伝達することによって水中航走体の位置を制御する技術が開示されている(特許文献1)。
【0004】
水中を走行する水中航走体と、当該水中航走体に追従して水面を航走する水上艇とを備え、水上艇はGPS処理部によって自己位置を取得すると共に、水中音響通信により当該自己位置を水中航走体へ送信するシステムが開示されている(特許文献2)。水上艇の自己位置に基づいて、水中航走体は、水中を自律航走することが可能とされている。
【0005】
同様に、水中を走行する水中航走体と、当該水中航走体に追従して水面を航走する水上航走体とを備え、水上航走体は水中音響通信により水中航走体の位置を取得し、当該水中航走体の位置に基づいて水中航走体に水上航走体を追従させるように制御するシステムが開示されている(特許文献3)。
【0006】
また、遠隔操作ビークル(ROV)、通信中継局として機能するように構成された自律型水上艦(ASV)を使用して海中を調査するシステムが開示されている(特許文献4)。自律型水上艦(ASV)は、制御ステーションから遠隔操作ビークル(ROV)にデータを送信するための中継局として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57-196309号公報
【特許文献2】特開平8-249060号公報
【特許文献3】特開2017-165333号公報
【特許文献4】国際公開第2018/112045号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の自律型水中航走体は、無索の独立した水中航走体であり、母船との通信手段として主に水中音響通信が用いられる。しかしながら、通信速度が限られるため、水中カメラによる映像等の情報を母船上においてリアルタイムに十分な速度で確認することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に対応した水上中継機と水中航走体との連結システムは、中継機推進手段と中継機位置計測手段を有した水上中継機と、航走体位置推定手段を有した水中航走体と、前記水上中継機と前記水中航走体とを接続し、前記水中航走体で得られた画像情報を含む取得情報の伝送を行う情報伝送線と、前記水上中継機と前記水中航走体に目標緯度及び目標経度を設定する位置設定手段と、前記水上中継機と前記水中航走体を制御する制御手段とを備え、設定された前記目標緯度及び前記目標経度と前記中継機位置計測手段で計測された水上位置に基づいて前記中継機推進手段を駆動し前記水上中継機の位置を前記制御手段で制御するとともに、設定された前記目標緯度及び前記目標経度と前記航走体位置推定手段で推定された水中位置に基づいて前記水中航走体の位置を前記制御手段で制御することで、前記水中航走体と前記水上中継機が前記目標緯度及び前記目標経度まで水面と水中における鉛直位置関係を保持しながら並走することを特徴とする。
【0010】
ここで、前記位置設定手段を有する母船を備え、前記母船と前記水上中継機とが無線通信を利用して前記目標緯度及び前記目標経度及び前記取得情報の伝送を行うことが好適である。
【0011】
また、前記母船から前記水上中継機及び前記水中航走体の少なくとも一方の遠隔操作が可能であることが好適である。
【0012】
また、前記中継機位置計測手段は、衛星測位システム受信機と姿勢方位基準装置(AHRS)を有することが好適である。また、前記航走体位置推定手段は、慣性航法装置(INS)とドップラー対地速度計(DVL)、又は姿勢方位基準装置(AHRS)とドップラー対地速度計(DVL)を有することが好適である。
【0013】
また、前記航走体位置推定手段は、深度計を有し、前記位置設定手段で設定された深度に前記水中航走体が位置するように前記制御手段で前記水中航走体を制御することが好適である。
【0014】
また、前記水上中継機は、前記水中航走体を撮像可能な中継機撮像手段を有することが好適である。
【0015】
また、前記水中航走体は、水に対して中性浮力を有することが好適である。
【0016】
また、前記水上中継機、前記水中航走体、前記情報伝送線、及び前記制御手段を複数組備え、前記位置設定手段で前記複数組ごとの前記目標緯度及び前記目標経度を設定することが好適である。
【0017】
また、前記情報伝送線の中間に他の前記水中航走体を備えることが好適である。
【0018】
また、前記情報伝送線の複数箇所に複数の受振手段と、音響を水中に発振する音響発振手段を前記母船に有し、前記音響発振手段による音響発振に伴う地層からの反射音響振動を複数の前記受振手段で取得し、取得した前記反射音響振動を音響情報として前記情報伝送線を利用して伝送することが好適である。
【0019】
請求項12に対応した水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法は、前記水中航走体を水中に投入する航走体投入ステップと、前記水中航走体を水底に接近させ所定の位置に保持する航走体下降ステップと、前記水上中継機を水面に投入する中継機投入ステップと、前記水上中継機と前記水中航走体とを前記鉛直位置関係に臨ませる鉛直位置確保ステップと、前記鉛直位置関係に臨ませたのちに前記中継機位置計測手段で計測した前記水上位置を前記情報伝送線を介して前記水中航走体に伝送し、前記水中航走体の水中位置の初期位置として入力する初期位置入力ステップとを備える。
【0020】
ここで、前記複数組ごとに、前記航走体投入ステップ、前記航走体下降ステップ、前記中継機投入ステップ、前記鉛直位置確保ステップ、及び前記初期位置入力ステップを繰り返すことが好適である。
【0021】
また、前記航走体投入ステップと航走体下降ステップとの間に、他の前記水中航走体を水中に投入する中間水中航走体投入ステップと、他の前記水中航走体を前記水面と前記水底との中間の位置に保持する中間水中航走体下降ステップを備え、前記鉛直位置確保ステップで他の前記水中航走体を前記鉛直位置関係に臨ませ、前記初期位置入力ステップで前記水上位置を前記情報伝送線を介して他の前記水中航走体に伝送することが好適である。
【0022】
また、前記航走体投入ステップの前に前記水中航走体及び前記水上中継機の動作が正常かを確認するステータス確認ステップを備えることが好適である。
【0023】
また、前記航走体投入ステップと前記航走体下降ステップとの間に、前記水中航走体の前記航走体位置推定手段の前記水中位置の推定値が妥当な値かを判断する推定値判断ステップを備えることが好適である。
【0024】
また、前記鉛直位置確保ステップにおいて、前記水上中継機と前記水中航走体とが前記鉛直位置関係に臨んでいない場合、操作者が前記水上中継機を操作して前記水中航走体が前記鉛直位置関係に臨むように位置補正して前記鉛直位置関係を確保することが好適である。
【0025】
また、前記初期位置入力ステップの後、前記位置設定手段から前記水上中継機に前記目標緯度及び前記目標経度を設定する目標位置設定ステップと、設定された前記目標緯度及び前記目標経度を前記情報伝送線を介して前記水中航走体に伝送し入力する目標位置入力ステップと、前記目標緯度及び前記目標経度に前記水上中継機と前記水中航走体が前記鉛直位置関係を保持しながら等速で並走して向かうように制御する航走制御ステップと、前記目標緯度及び前記目標経度に到達後に前記水上中継機と前記水中航走体の位置保持を行う位置保持ステップをさらに備えることが好適である。
【0026】
また、前記航走制御ステップは、前記中継機位置計測手段で計測された前記水上位置に基づいて前記水上中継機の位置を制御するとともに、前記航走体位置推定手段で推定された前記水中位置に基づいて前記水中航走体の位置を制御することが好適である。
【0027】
また、前記航走制御ステップは、前記水上中継機の前記水上位置が前記目標緯度及び前記目標経度の到達範囲内であるか否かを判断する中継機到達判断ステップと、前記水中航走体の前記水中位置が前記目標緯度及び前記目標経度の前記到達範囲内であるか否かを判断する航走体到達判断ステップを有し、前記水上中継機と前記水中航走体が前記到達範囲内に至った場合に前記位置保持ステップに移行することが好適である。
【0028】
また、前記水上中継機と前記水中航走体が前記到達範囲内に至っていない場合に前記水上中継機と前記水中航走体を前記目標緯度及び前記目標経度に向かわせる制御を続行することが好適である。
【0029】
また、操作者が撮像手段を用いて前記水中航走体の位置を確認する航走体位置確認ステップと、前記水上中継機の直下に前記水中航走体が位置しているかを判断する位置判断ステップと、前記水上中継機の直下に前記水中航走体が位置している場合に、前記中継機位置計測手段で得られた前記水上位置を情報伝送線を介して前記水中航走体に伝送し、前記水中航走体の水中位置を制御して前記水上中継機と前記水中航走体の前記鉛直位置関係を補正する水中位置補正ステップを備えることが好適である。
【0030】
また、前記航走体位置確認ステップにおいて前記操作者が前記水中航走体の位置を確認できない場合に、前記水中航走体の位置を制御して前記水中航走体を前記撮像手段で確認できる位置にまで上昇させる航走体上昇ステップを備えることが好適である。
【0031】
また、前記位置判断ステップにおいて前記水上中継機の直下に前記水中航走体が位置していないと判断された場合に、前記操作者の操作によって前記水上中継機の位置を制御して前記水中航走体の直上に移動させる位置ずれ補正ステップを備えることが好適である。
【0032】
また、前記目標緯度及び前記目標経度に到達後に前記水上中継機と前記水中航走体の位置を制御して、前記水中航走体の航走体撮像手段で水中を探査する探査ステップと、前記探査で得られた画像情報を含む取得情報を、前記情報伝送線と前記無線通信を介して前記母船に伝送する情報伝送ステップを備えることが好適である。
【0033】
また、前記目標緯度及び前記目標経度に到達後に前記母船に有した前記音響発振手段から音響を発振する音響発振ステップと、複数の前記受振手段で前記地層からの前記反射音響振動を取得する反射音響振動取得ステップと、取得した前記反射音響振動を音響情報として前記情報伝送線と前記無線通信を介して前記母船に伝送する情報伝送ステップを備えることが好適である。
【発明の効果】
【0034】
請求項1に対応した水上中継機と水中航走体との連結システムによれば、中継機推進手段と中継機位置計測手段を有した水上中継機と、航走体位置推定手段を有した水中航走体と、前記水上中継機と前記水中航走体とを接続し、前記水中航走体で得られた画像情報を含む取得情報の伝送を行う情報伝送線と、前記水上中継機と前記水中航走体に目標緯度及び目標経度を設定する位置設定手段と、前記水上中継機と前記水中航走体を制御する制御手段とを備え、設定された前記目標緯度及び前記目標経度と前記中継機位置計測手段で計測された水上位置に基づいて前記中継機推進手段を駆動し前記水上中継機の位置を前記制御手段で制御するとともに、設定された前記目標緯度及び前記目標経度と前記航走体位置推定手段で推定された水中位置に基づいて前記水中航走体の位置を前記制御手段で制御することで、前記水中航走体と前記水上中継機が前記目標緯度及び前記目標経度まで水面と水中における鉛直位置関係を保持しながら並走することによって、前記水中航走体で取得された撮像画像等の大容量の画像情報を前記水上中継機を介して母船等に高速かつ安定に伝送することができる。
【0035】
ここで、前記位置設定手段を有する母船を備え、前記母船と前記水上中継機とが無線通信を利用して前記目標緯度及び前記目標経度及び前記取得情報の伝送を行うことによって、前記母船から前記水上中継機までをケーブル等の有線で接続することなく、前記母船と前記水上中継機との間の通信を行うことができる。
【0036】
また、前記母船から前記水上中継機及び前記水中航走体の少なくとも一方の遠隔操作が可能であることによって、前記水上中継機及び前記水中航走体をそれぞれの目標位置に移動させ、前記水上中継機と前記水中航走体を適切な相対的な位置関係とすることができる。
【0037】
また、前記中継機位置計測手段は、衛星測位システム受信機と姿勢方位基準装置(AHRS)を有することによって、前記衛星測位システム受信機と前記姿勢方位基準装置(AHRS)を用いて前記水上中継機の位置を計測することができる。また、前記航走体位置推定手段は、慣性航法装置(INS)とドップラー対地速度計(DVL)、又は姿勢方位基準装置(AHRS)とドップラー対地速度計(DVL)を有することによって、前記慣性航法装置(INS)と前記ドップラー対地速度計(DVL)、又は前記姿勢方位基準装置(AHRS)と前記ドップラー対地速度計(DVL)を用いて前記水中航走体の位置を計測することができる。
【0038】
また、前記航走体位置推定手段は、深度計を有し、前記位置設定手段で設定された深度に前記水中航走体が位置するように前記制御手段で前記水中航走体を制御することによって、前記水中航走体を目標となる深度に向けて航走させることができる。
【0039】
また、前記水上中継機は、前記水中航走体を撮像可能な中継機撮像手段を有することによって、前記中継機撮像手段によって撮像された画像において前記水中航走体を確認し、確認された状況に応じて前記水中航走体と前記水上中継機を移動させることができる。
【0040】
また、前記水中航走体は、水に対して中性浮力を有することによって、前記水中航走体の浮力を容易に確保することができる。
【0041】
また、前記水上中継機、前記水中航走体、前記情報伝送線、及び前記制御手段を複数組備え、前記位置設定手段で前記複数組ごとの前記目標緯度及び前記目標経度を設定することによって、同時に広い範囲の資源や水底ケーブル等の検査対象物を調査することができ、調査時間を短縮することができる。
【0042】
また、前記情報伝送線の中間に他の前記水中航走体を備えることによって、中間の他の水中航走体の水平位置(緯度及び経度)及び深度(高度)を制御することによって水上中継機に対してより高い精度の位置制御を実現することができる。
【0043】
また、前記情報伝送線の複数箇所に複数の受振手段と、音響を水中に発振する音響発振手段を前記母船に有し、前記音響発振手段による音響発振に伴う地層からの反射音響振動を複数の前記受振手段で取得し、取得した前記反射音響振動を音響情報として前記情報伝送線を利用して伝送することによって、VCS(Vertical Cable Seimic)解析等の解析を適用して水底や反射面の構造を高い精度で把握することができる。
【0044】
請求項12に対応した水上中継機と水中航走体との連結システムの運用方法によれば、前記水中航走体を水中に投入する航走体投入ステップと、前記水中航走体を水底に接近させ所定の位置に保持する航走体下降ステップと、前記水上中継機を水面に投入する中継機投入ステップと、前記水上中継機と前記水中航走体とを前記鉛直位置関係に臨ませる鉛直位置確保ステップと、前記鉛直位置関係に臨ませたのちに前記中継機位置計測手段で計測した前記水上位置を前記情報伝送線を介して前記水中航走体に伝送し、前記水中航走体の水中位置の初期位置として入力する初期位置入力ステップとを備えることによって、前記水中航走体で取得された撮像画像等の情報を前記水上中継機を介して母船等に高速かつ安定に通信することができる。
【0045】
ここで、前記複数組ごとに、前記航走体投入ステップ、前記航走体下降ステップ、前記中継機投入ステップ、前記鉛直位置確保ステップ、及び前記初期位置入力ステップを繰り返すことによって、同時に広い範囲の資源や水底ケーブル等の検査対象物を調査することができ、調査時間を短縮することができる。
【0046】
また、前記航走体投入ステップと航走体下降ステップとの間に、他の前記水中航走体を水中に投入する中間水中航走体投入ステップと、他の前記水中航走体を前記水面と前記水底との中間の位置に保持する中間水中航走体下降ステップを備え、前記鉛直位置確保ステップで他の前記水中航走体を前記鉛直位置関係に臨ませ、前記初期位置入力ステップで前記水上位置を前記情報伝送線を介して他の前記水中航走体に伝送することによって、同時に広い範囲の資源や水底ケーブル等の検査対象物を調査することができ、調査時間を短縮することができる。
【0047】
ここで、前記航走体投入ステップの前に前記水中航走体及び前記水上中継機の動作が正常かを確認するステータス確認ステップを備えることによって、前記水中航走体及び前記水上中継機が正常であることを確認したうえで前記水中航走体及び前記水上中継機を投入することができる。
【0048】
また、前記航走体投入ステップと前記航走体下降ステップとの間に、前記水中航走体の前記航走体位置推定手段の前記水中位置の推定値が妥当な値かを判断する推定値判断ステップを備えることによって、前記水中航走体の前記航走体位置推定手段の動作を確認したうえで前記水中航走体を水中に降下させることができる。
【0049】
また、前記鉛直位置確保ステップにおいて、前記水上中継機と前記水中航走体とが前記鉛直位置関係に臨んでいない場合、操作者が前記水上中継機を操作して前記水中航走体が前記鉛直位置関係に臨むように位置補正して前記鉛直位置関係を確保することによって、前記水上中継機と前記水中航走体を適切な前記鉛直位置関係にすることができる。
【0050】
また、前記初期位置入力ステップの後、前記位置設定手段から前記水上中継機に前記目標緯度及び前記目標経度を設定する目標位置設定ステップと、設定された前記目標緯度及び前記目標経度を前記情報伝送線を介して前記水中航走体に伝送し入力する目標位置入力ステップと、前記目標緯度及び前記目標経度に前記水上中継機と前記水中航走体が前記鉛直位置関係を保持しながら等速で並走して向かうように制御する航走制御ステップと、前記目標緯度及び前記目標経度に到達後に前記水上中継機と前記水中航走体の位置保持を行う位置保持ステップをさらに備えることによって、前記水上中継機及び前記水中航走体を目標位置に移動させ、前記水上中継機と前記水中航走体の位置関係を保持することができる。
【0051】
また、前記航走制御ステップは、前記中継機位置計測手段で計測された前記水上位置に基づいて前記水上中継機の位置を制御するとともに、前記航走体位置推定手段で推定された前記水中位置に基づいて前記水中航走体の位置を制御することによって、前記水上位置に基づいて前記水上中継機を目標位置に移動させると共に前記水中位置に基づいて前記水中航走体を目標位置に移動させ、前記水上中継機と前記水中航走体の位置関係を保持することができる。
【0052】
また、前記航走制御ステップは、前記水上中継機の前記水上位置が前記目標緯度及び前記目標経度の到達範囲内であるか否かを判断する中継機到達判断ステップと、前記水中航走体の前記水中位置が前記目標緯度及び前記目標経度の前記到達範囲内であるか否かを判断する航走体到達判断ステップを有し、前記水上中継機と前記水中航走体が前記到達範囲内に至った場合に前記位置保持ステップに移行することによって、前記水上中継機及び前記水中航走体をそれぞれ目標位置の到達範囲内に移動させ、前記水上中継機と前記水中航走体の位置関係を保持することができる。
【0053】
また、前記水上中継機と前記水中航走体が前記到達範囲内に至っていない場合に前記水上中継機と前記水中航走体を前記目標緯度及び前記目標経度に向かわせる制御を続行することによって、前記水上中継機及び前記水中航走体をそれぞれ目標位置の到達範囲内に移動させ、前記水上中継機と前記水中航走体の位置関係を保持することができる。
【0054】
また、撮像手段を用いて前記水中航走体の位置を確認する航走体位置確認ステップと、前記水上中継機の直下に前記水中航走体が位置しているかを判断する位置判断ステップと、前記水上中継機の直下に前記水中航走体が位置している場合に、前記中継機位置計測手段で得られた前記水上位置を情報伝送線を介して前記水中航走体に伝送し、前記水中航走体の水中位置を制御して前記水上中継機と前記水中航走体の前記鉛直位置関係を補正する水中位置補正ステップを備えることによって、前記撮像された画像において前記水中航走体を確認し、前記水上中継機の直下に前記水中航走体が位置するように前記水上中継機と前記水中航走体の鉛直方向の位置関係を補正することができる。
【0055】
また、前記航走体位置確認ステップにおいて前記操作者が前記水中航走体の位置を確認できない場合に、前記水中航走体の位置を制御して前記水中航走体を前記撮像手段で確認できる位置にまで上昇させる航走体上昇ステップを備えることによって、前記水中航走体を上昇させて前記撮像された画像において前記水中航走体を確認できる状況とすることができる。
【0056】
また、前記位置判断ステップにおいて前記水上中継機の直下に前記水中航走体が位置していないと判断された場合に、前記操作者の操作によって前記水上中継機の位置を制御して前記水中航走体の直上に移動させる位置ずれ補正ステップを備えることによって、前記水中航走体の直下に前記水上中継機が位置するように前記水上中継機と前記水中航走体の鉛直方向の位置関係を補正することができる。
【0057】
また、前記目標緯度及び前記目標経度に到達後に前記水上中継機と前記水中航走体の位置を制御して、前記水中航走体の航走体撮像手段で水中を探査する探査ステップと、前記探査で得られた画像情報を含む取得情報を、前記情報伝送線と前記無線通信を介して前記母船に伝送する情報伝送ステップを備えることによって、水中航走体によって得られた画像情報を映写したり、解析したりすることができる。
【0058】
また、前記目標緯度及び前記目標経度に到達後に前記母船に有した前記音響発振手段から音響を発振する音響発振ステップと、複数の前記受振手段で前記地層からの前記反射音響振動を取得する反射音響振動取得ステップと、取得した前記反射音響振動を音響情報として前記情報伝送線と前記無線通信を介して前記母船に伝送する情報伝送ステップを備えることによって、VCS(Vertical Cable Seimic)解析等の解析を適用して水底や反射面の構造を高い精度で把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】本発明の実施の形態における水上中継機と水中航走体との連結システムの構成概念図である。
【
図2】本発明の実施の形態における水中航走体の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態における水上中継機の構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における母船の構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態における水中航走体及び水上中継機の投入時の処理を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施の形態における水中航走体及び水上中継機の航走時の処理を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態における水中航走体及び水上中継機の鉛直位置の補正処理を示すフローチャートである
【
図8】変形例1における水上中継機と水中航走体との連結システムの構成概念図である。
【
図9】変形例2における水上中継機と水中航走体との連結システムの構成概念図である。
【
図10】変形例2における水中航走体及び水上中継機の投入時の処理を示すフローチャートである。
【
図11】変形例3における水上中継機と水中航走体との連結システムの構成概念図である。
【
図12】変形例3における音響発振器及び受振器を用いた処理を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の実施の形態における水上中継機と水中航走体との連結システムを用いた測定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
<水上中継機と水中航走体との連結システム>
本発明の実施の形態における水上中継機と水中航走体との連結システムは、
図1に示すように、水中航走体100、水上中継機200及び母船300を含んで構成される。水中航走体100は、水面と水底400との間の水中において使用される。また、水上中継機200は、水面において使用される。
【0061】
水中航走体100と水上中継機200とはケーブル500によって連結される。なお、連結システムの連結とは、単にケーブル500等で水中航走体100と水上中継機200とを連結することのみならず、水中航走体100と水上中継機200とが連係して航走すること、連携して作業を行うこと等も含むものである。また、ケーブル500には、情報を伝送する機能以外に、電力の伝送や曳引の機能等を持たせることもできる。
【0062】
水中航走体100は、水中を自律航走して、目標物である資源や水底ケーブル等の検査対象物を調査するために使用される。水中航走体100の利用範囲は、海中に限定されず、河川、湖、池、沼等や人工のプール等で利用してもよい。水上中継機200は、水中航走体100に追従して水上を航走して、水中航走体100と母船300との間の通信を中継するために使用される。母船300は、水中航走体100から調査に関する情報を受信すると共に、水中航走体100及び水上中継機200に対して航走のための情報を提供する。
【0063】
なお、本実施の形態では、母船300としたが、特に船舶に限定されるものではなく、陸上に配置された基地局であってもよいし、水中に配置した水中母艦であってもよいし、空中を飛行する飛行体としてもよい。特に、水中に配置した水中母艦の場合、例えば、水面近傍に水中母艦を配置し空中に臨ませたアンテナにより電波を利用して水上中継機200と通信をすることや、完全に水中に配置し光通信を利用して水上中継機200と直接通信することも可能である。
【0064】
<水中航走体の構成>
本発明の実施の形態における水中航走体100は、
図2の構成概念図に示すように、艇体10、制御手段12、記憶手段14、通信手段16、航走手段18、航走体位置推定手段20及び航走体撮像手段22を含んで構成される。水中航走体100は、例えば、自律型無人潜水機(AUV)であるが、これに限定されるものではない。
【0065】
艇体10は、艇室等の空間を構成する密閉可能な構造体である。艇体10は、金属や強化プラスチック等により構成され、水中航走体100の構成要素を機械的に支持する役割も果たす。艇体10は、水中航走体100が中性浮力を有するように構成されることが好適である。
【0066】
制御手段12は、水中航走体100における各種機能を制御するための手段である。制御手段12は、コンピュータにおけるCPU等とすることができる。制御手段12は、予め定められた制御プログラムを実行することによって水中航走体100に搭載された各手段を統合的に制御する。
【0067】
記憶手段14は、水中航走体100において利用される情報や水中航走体100の制御プログラムを記憶させておくための手段である。記憶手段14は、例えば、半導体メモリ、ハードディスク等とすることができる。
【0068】
記憶手段14には、水中航走体100の位置の制御において水中航走体100の目標の位置を示す情報が記憶される。目標位置は、例えば、目標緯度及び目標経度を含む初期位置及びウェイポイント(潜航点)として記憶される。すなわち、水中航走体100の艇体10が水中を航走する際の初期位置及び航走の経路を示すウェイポイント(潜航点)が設定及び記憶される。初期位置及びウェイポイントは、艇体10が航走する目標となる水中の経路を離散的な座標点で順に表した情報である。また、初期位置及びウェイポイントは、目標緯度及び目標経度に加えて、水面からの深度の組み合わせとして表してもよい。
【0069】
また、記憶手段14は、後述する航走体位置推定手段20において推定された水中航走体100の自己位置の推定値を記憶する。また、記憶手段14は、後述する航走体撮像手段22において取得された画像情報を記憶する。
【0070】
通信手段16は、水中航走体100と水上中継機200との間で情報を通信するための手段である。通信手段16は、情報伝送線24を介して水上中継機200から情報を受信し、情報伝送線24を介して水中航走体100で取得された情報を水上中継機200へ送信する。情報伝送線24は、ケーブル500の一部とすることができる。通信手段16は、例えば、通信プロトコルとしてイーサネット(Ethernet)を採用すればよい。この場合、情報伝送線24は、イーサネット(Ethernet)ケーブルとされる。
【0071】
ここで、水中航走体100と水上中継機200との間を有線通信とすることで、水中を音響信号で伝達する方法に比べて高速で大容量の通信を行うことができる。これによって、水中航走体100は、水上中継機200及び母船300と高速に通信すること、大容量の画像情報等を伝送することができる。特に、大容量の画像情報等は、時間をかければ水中音響通信により、水中航走体100から水上中継機200に伝送することも可能な技術が出現して来てはいるが、水中航走体100が水中を航走しながら撮像した画像情報等を伝送する場合は、リアルタイム性に欠け水中調査をする目的に合わない。
【0072】
なお、情報伝送線24の長さは、水中航走体100及び水上中継機200の航走予定水域の最大水深に対して余裕を持たせておくことが好適である。例えば、水中航走体100が航走する予定の最大水深が15mである場合、情報伝送線24のケーブル長を20mとしておけばよい。これによって、水中航走体100と水上中継機200の位置関係を適切に保ちつつ並走することが可能になる。ただし、水上中継機200に情報伝送線24の繰り出し・巻き上げ装置を搭載し、水中航走体100と水上中継機200との距離に応じて情報伝送線24を繰り出し又は巻き上げするような構成としてもよい。
【0073】
航走手段18は、艇体10を推進させるための駆動力を発生させ、艇体10を上下左右方向に旋回(回頭)させるための手段である。航走手段18は、例えば、駆動力発生のための機構として主推進器駆動モータ、プロペラ、回転軸等を含んで構成される。主推進器駆動モータは、艇体10に対して駆動力を与えるためのモータである。主推進器駆動モータは、電池からの電力によって、制御手段12からの駆動制御信号に応じた回転数及びトルクで航走手段18の回転軸を回転駆動させる。これにより、駆動軸に接続されたプロペラが回転されて艇体10に推進力が与えられる。また、航走手段18は、例えば、艇体10を上下左右方向に旋回(回頭)させるための舵を含む。垂直舵を艇体10に対して右又は左に傾けることによって、艇体10を左又は右に回頭させることができる。垂直舵は、垂直舵駆動モータによって回転させることができる。垂直舵駆動モータは、制御手段12からの垂直舵制御信号に応じた角度になるように垂直舵を回転駆動させる。水平舵を艇体10に対して上又は下に傾けることによって、艇体10を頭下げ(ピッチダウン)又は頭上げ(ピッチアップ)させることができる。水平舵は、水平舵駆動モータによって駆動することができる。水平舵駆動モータは、制御手段12からの水平舵制御信号に応じた角度になるように水平舵を回転駆動させる。なお、左右にそれぞれ個別の航走手段18を設けておき、垂直舵に依らず、左右の航走手段18の推力のバランスを調整することにより艇体10を左右方向に旋回(回頭)させる構成としてもよい。
【0074】
航走体位置推定手段20は、水中における艇体10の現在の位置(水中位置)を自己位置として推定するため構成要素を含んで構成される。航走体位置推定手段20は、例えば、プログラム可能なマイクロコンピュータによって実現することができる。航走体位置推定手段20で推定された水中航走体100の自己位置は制御手段12に入力される。制御手段12は、入力された水中航走体100の自己位置を記憶手段14に記憶させると共に、水中航走体100の位置の制御に利用する。
【0075】
航走体位置推定手段20は、慣性航法装置(INS)を含む構成とすることができる。慣性航法装置は、水中航走体100の速度を測定する速度計を含んで構成される。速度計は、例えば、ドップラー対地速度計(DVL)によって構成することができる。慣性航法では、速度計で検出された水中航走体100の速度を積分することで水中航走体100の起点からの移動距離を求めることで水中航走体100の自己位置を推定する。
【0076】
また、航走体位置推定手段20は、姿勢方位基準装置(AHRS)を含む構成とすることができる。姿勢方位基準装置は、ジャイロ等を利用した慣性航法装置の一種であり、ドップラー対地速度計(DVL)等の速度計と組み合わされることによって水中航走体100の水中における回転及び直線運動を演算して出力する。航走体位置推定手段20は、姿勢方位基準装置で演算された水中航走体100の回転及び直線運動を積分することで水中航走体100の起点からの移動距離を求めることで水中航走体100の自己位置を推定する。
【0077】
また、航走体位置推定手段20は、水中航走体100の水中での深度を計測するための深度計を含んでもよい。深度計によって計測された水中航走体100の深度は制御手段12へ入力される。制御手段12は、入力された水中航走体100の深度を記憶手段14に記憶させると共に、水中航走体100の深度の制御に利用する。
【0078】
航走体位置推定手段20で推定された自己位置に基づいて艇体10の航走制御が行われる。制御手段12は、記憶手段14に予め設定されたウェイポイントを順に読み出し、当該ウェイポイントと航走体位置推定手段20で推定された艇体10の自己位置との差が小さくなるように航走手段18を制御する。
【0079】
航走手段18の制御は、艇体運動モデルに基づいて行ってもよい。艇体運動モデルは、AUVダイナミクスとも呼ばれ、水中における艇体10の運動性能を表す運動方程式からなる。具体的には、航走手段18における主推進器駆動モータ、垂直舵、水平舵等の応答特性や艇体10の移動特性等に基づいて主推進器駆動モータ、垂直舵、水平舵等の制御を行うようにしてもよい。
【0080】
また、航走体位置推定手段20で推定された艇体10の自己位置を修正する水中航走体修正情報に応じて航走手段18は制御される。制御手段12は、母船300から送信される水中航走体修正情報に応じて航走の目標位置を修正することによって艇体10を目標位置に近づけるように航走手段18を制御する。すなわち、航走手段18は水中航走体修正情報に応じて制御されることになり、艇体10の初期位置やウェイポイントの設定に基づく位置誤差や航走体位置推定手段20における自己位置の推定における位置誤差を補償することができる。
【0081】
航走体撮像手段22は、艇体10の外部を撮像するための構成要素を含んで構成される。航走体撮像手段22は、例えば、静止画像を撮像するためのカメラ、動画を撮像するためのビデオ等とすることができる。航走体撮像手段22で得られた画像や動画に関する画像情報(撮像データ)は記憶手段14に記憶される。また、航走体撮像手段22で得られた画像や動画に関する画像情報(撮像データ)は、通信手段16を用いて情報伝送線24を介して水上中継機200へ送信される。
【0082】
なお、航走体撮像手段22を複数設けて、ステレオ視に基づいて艇体10と目標物との相対的な位置を取得できるようにしてもよい。当該相対的位置情報は、後述する航走体位置推定手段20における水中航走体100の自己位置の推定において誤差の修正に利用することができる。
【0083】
また、本実施の形態として水中航走体100に航走体撮像手段22を設けた構成としたが、水中における状況を水中航走体100において取得できる手段であればよい。例えば、音波や超音波を用いたソナーによって水底の形状等を取得するようにしてもよい。この場合、得られた情報は、記憶手段14に記憶されると共に、通信手段16を用いて情報伝送線24を介して水上中継機200へ送信される。
【0084】
<水上中継機の構成>
本発明の実施の形態における水上中継機200は、
図3の構成概念図に示すように、機体30、制御手段32、記憶手段34、通信手段36、中継機推進手段38、中継機位置計測手段40及び中継機撮像手段42を含んで構成される。水上中継機200は、例えば、自律型無人洋上中継機(ASV)であるが、これに限定されるものではない。
【0085】
機体30は、艇室等の空間を構成する密閉可能な構造体である。機体30は、金属や強化プラスチック等により構成され、水上中継機200の構成要素を機械的に支持する役割も果たす。
【0086】
制御手段32は、水上中継機200における各種機能を制御するための手段である。制御手段32は、コンピュータにおけるCPU等とすることができる。制御手段32は、予め定められた制御プログラムを実行することによって水上中継機200に搭載された各手段を統合的に制御する。なお、水上中継機200の制御手段32と水中航走体100の制御手段12とを集約していずれか一方を備える構成としてもよい。
【0087】
記憶手段34は、水上中継機200において利用される情報や水上中継機200の制御プログラムを記憶させておくための手段である。記憶手段34は、例えば、半導体メモリ、ハードディスク等とすることができる。
【0088】
記憶手段34には、水上中継機200の位置の制御において水上中継機200の目標の位置を示す情報が記憶される。目標位置は、例えば、目標緯度及び目標経度を含む初期位置及びウェイポイント(航走点)として記憶される。すなわち、水上中継機200の機体30が水上を航走する際の初期位置及び航走の経路を示すウェイポイントが設定及び記憶される。初期位置及びウェイポイントは、機体30が航走する目標となる水上の経路を離散的な座標点で順に表した情報である。
【0089】
また、記憶手段34は、後述する中継機位置計測手段40において計測された水上中継機200の自己位置の情報を記憶する。また、記憶手段34は、後述する中継機撮像手段42において取得された画像情報を記憶する。
【0090】
通信手段36は、水上中継機200と水中航走体100との間で情報を通信し、水上中継機200と母船300との間で情報を通信するための手段である。通信手段36は、情報伝送線24を介して水中航走体100から情報を受信し、情報伝送線24を介して情報を水中航走体100へ送信する。また、通信手段36は、無線通信器26を介して母船300から情報を受信し、無線通信器26を介して情報を母船300へ送信する。無線通信器26を用いた通信は、例えば、2.4GHzの周波数帯を用いたWi-Fiシステムとすることができる。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、UHF通信、VHF通信、光通信、衛星通信等の無線通信としてもよい。
【0091】
なお、母船300と水上中継機200との間を無線通信とすることで、有線通信を適用した場合に比べて水中航走体100及び水上中継機200の移動可能範囲を拡げることができる。
【0092】
中継機推進手段38は、機体30を推進させるための駆動力を発生させ、機体30を左右方向に旋回(回頭)させるための手段である。中継機推進手段38は、例えば、駆動力発生のための機構として主推進器駆動モータ、プロペラ、回転軸等を含んで構成される。主推進器駆動モータは、機体30に対して駆動力を与えるためのモータである。主推進器駆動モータは、電池からの電力によって、制御手段32からの駆動制御信号に応じた回転数及びトルクで中継機推進手段38の回転軸を回転駆動させる。これにより、駆動軸に接続されたプロペラが回転されて機体30に推進力が与えられる。また、中継機推進手段38は、例えば、機体30を左右方向に旋回(回頭)させるための舵を含む。垂直舵を機体30に対して右又は左に傾けることによって、機体30を左又は右に回頭させることができる。垂直舵は、垂直舵駆動モータによって回転させることができる。垂直舵駆動モータは、制御手段32からの垂直舵制御信号に応じた角度になるように垂直舵を回転駆動させる。なお、左右にそれぞれ個別の中継機推進手段38を設けておき、垂直舵に依らず、左右の中継機推進手段38の推力のバランスを調整することにより機体30を左右方向に旋回(回頭)させる構成としてもよい。
【0093】
中継機位置計測手段40は、水上における機体30の現在位置を自己位置として計測するため構成要素を含んで構成される。中継機位置計測手段40は、例えば、プログラム可能なマイクロコンピュータによって実現することができる。中継機位置計測手段40で計測された水上中継機200の自己位置は制御手段32に入力される。制御手段32は、入力された水上中継機200の自己位置を記憶手段14に記憶させると共に、水上中継機200の位置の制御に利用する。
【0094】
中継機位置計測手段40は、衛星測位システム(GPS:Global Positioning System)の受信機40aを含む構成とすることができる。中継機位置計測手段40は、受信機40aによって受信されたGPS信号に基づいて水上中継機200の現在の自己位置(水上位置)を計測する。計測された水上中継機200の自己位置は制御手段32に入力され、水上中継機200の位置の制御に利用される。また、中継機位置計測手段40は、姿勢方位基準装置(AHRS)を含む構成とすることができる。姿勢方位基準装置を用いて中継機位置計測手段40で計測される水上中継機200の自己位置の補正することができる。
【0095】
中継機撮像手段42は、機体30の外部を撮像するための構成要素を含んで構成される。中継機撮像手段42は、例えば、静止画像を撮像するためのカメラ、動画を撮像するためのビデオ等とすることができる。中継機撮像手段42で得られた画像や動画に関する画像情報(撮像データ)は記憶手段34に記憶される。また、中継機撮像手段42で得られた画像や動画に関する画像情報(撮像データ)は、通信手段36を用いて無線通信器26を介して母船300へ送信される。
【0096】
中継機位置計測手段40で計測された自己位置に基づいて機体30の航走制御が行われる。制御手段32は、記憶手段34に予め設定されたウェイポイントを順に読み出し、当該ウェイポイントと中継機位置計測手段40で計測された機体30の自己位置との差が小さくなるように中継機推進手段38を制御する。
【0097】
中継機推進手段38の制御は、艇体運動モデルに基づいて行ってもよい。艇体運動モデルは、ASVダイナミクスとも呼ばれ、水上における機体30の運動性能を表す運動方程式からなる。具体的には、中継機推進手段38における主推進器駆動モータ、垂直舵、水平舵等の応答特性や機体30の移動特性等に基づいて主推進器駆動モータ、プロペラ、垂直舵等の制御を行うようにしてもよい。
【0098】
また、中継機位置計測手段40で推定された機体30の自己位置を修正する水上中継機修正情報に応じて中継機推進手段38は制御される。制御手段32は、母船300から送信される水上中継機修正情報に応じて航走の目標位置を修正することによって機体30を目標位置に近づけるように中継機推進手段38を制御する。すなわち、中継機推進手段38は水上中継機修正情報に応じて制御されることになり、機体30の初期位置やウェイポイントの設定に基づく位置誤差や中継機位置計測手段40における自己位置の計測における位置誤差を補償することができる。
【0099】
なお、水上中継機200は、水中航走体100の移動に連れて並走するようにしてもよい。水上中継機200と水中航走体100とが情報伝送線24によって有線接続されている場合、水中航走体100が移動すると情報伝送線24によって水上中継機200が引っ張られることによっても水上中継機200を水中航走体100に連動させることができる。
【0100】
<母船の構成>
本発明の実施の形態における母船300は、水中航走体100及び水上中継機200の基地となる船舶である。母船300は、
図4の構成概念図に示すように、艇体50、測位手段52、位置設定手段54、画像表示手段56、操作手段58、連結手段60及び通信手段62を含んで構成される。
【0101】
艇体50は、母船300の空間を構成する構造体である。艇体50は、金属や強化プラスチック等により構成され、母船300の構成要素を機械的に支持する役割も果たす。また、艇体50には母船300を移動させるための航走手段を設けてもよい。なお、母船300の代わりに陸上に配置された基地局とする場合、艇体50を設ける必要はない。また、母船300の代わりに空中を飛行する飛行体とする場合、艇体50の代わりに飛行体の機体としてもよい。
【0102】
測位手段52は、母船300の現在位置を取得するための装置を含んで構成される。測位手段52は、例えば、衛星測位システム(GPS:Global Positioning System)等の測位手段とすることができる。ただし、これに限定されるものではなく、陸上に配置されている基準点からの距離及び方位に応じて母船300の位置を測位できる構成としてもよい。
【0103】
位置設定手段54は、測位手段52による測位の情報を水中航走体100及び水上中継機200に設定するための手段である。位置設定手段54は、測位手段52によって得られた母船300の測位の情報を水中航走体100の航走体位置推定手段20に初期位置の情報として設定する。すなわち、母船300に水中航走体100が搭載されている状態において、測位手段52による測位位置の情報を航走体位置推定手段20に水中航走体100の初期位置として設定する。また、位置設定手段54は、水中航走体100の航走体位置推定手段20にウェイポイントを設定するためにも使用される。また、位置設定手段54は、水上中継機200の中継機位置計測手段40にウェイポイントを設定するためにも使用される。
【0104】
画像表示手段56、操作手段58及び連結手段60は、母船300における監視手段302を構成する。監視手段302は、水中航走体100の位置、水上中継機200の位置及び水中航走体100と水上中継機200の相対的な位置を監視すると共にこれらの位置を修正するために用いられる。
【0105】
画像表示手段56は、水中航走体100の航走体撮像手段22において撮像された画像を表示する装置を含む。すなわち、画像表示手段56は、後述する通信手段62を介して水中航走体100から取得された画像情報に基づいて、水中航走体100の航走体撮像手段22において撮像された水中の画像を表示する。母船300の搭乗者は、画像表示手段56に表示された画像を観ることによって、水中航走体100が撮像した画像を確認することができる。
【0106】
また、画像表示手段56は、水上中継機200の中継機撮像手段42において撮像された画像を表示する装置を含む。画像表示手段56は、例えば、ディスプレイを含むことができる。すなわち、画像表示手段56は、通信手段62を介して水上中継機200から取得された画像情報に基づいて、水上中継機200の中継機撮像手段42において撮像された水中の画像を表示する。母船300の搭乗者は、画像表示手段56に表示された画像を観ることによって、水上中継機200が撮像した画像を確認することができる。
【0107】
なお、画像表示手段56は、水中航走体100と水上中継機200に対して別々に設けてもよいし、切替スイッチ等によって水中航走体100と水上中継機200を切り替えられる構成としてもよい。
【0108】
操作手段58は、水中航走体100の位置を修正する操作を行う手段を含む。操作手段58は、例えば、水中航走体100の位置を修正するためのジョイスティックやマウス等のポインティングデバイスを含んで構成することができる。母船300に搭乗している管理者が操作手段58を操作することによって、連結手段60において水中航走体100を移動させるための水中航走体修正情報が生成される。
【0109】
また、操作手段58は、水上中継機200の位置を修正する操作を行う手段を含む。操作手段58は、例えば、水上中継機200の位置を修正するためのジョイスティックやマウス等のポインティングデバイスを含んで構成することができる。母船300に搭乗している管理者が操作手段58を操作することによって、連結手段60において水上中継機200を移動させるための水上中継機修正情報が生成される。
【0110】
なお、操作手段58は、水中航走体100と水上中継機200に対して別々に設けてもよいし、切替スイッチ等によって水中航走体100と水上中継機200を切り替えられる構成としてもよい。
【0111】
連結手段60は、画像表示手段56に表示されている画像と操作手段58によって操作される水中航走体100に対する水中航走体修正情報及び水上中継機200に対する水上中継機修正情報とを連結させるための手段である。連結手段60は、例えば、プログラム可能なマイクロコンピュータによって実現することができる。マイクロコンピュータは、画像表示手段56及び操作手段58を制御するための制御装置と共通としてもよい。連結手段60は、操作手段58の操作量に応じて水中航走体100の航走体位置推定手段20で推定された自己位置情報を修正するための水中航走体修正情報を生成する。連結手段60は、操作手段58の操作量が大きい程、水中航走体100の自己位置情報の修正量が大きくなるような水中航走体修正情報を生成する。また、連結手段60は、操作手段58の操作量に応じて水上中継機200の中継機位置計測手段40で計測された自己位置情報を修正するための水上中継機修正情報を生成する。連結手段60は、操作手段58の操作量が大きい程、水上中継機200の自己位置情報の修正量が大きくなるような水上中継機修正情報を生成する。
【0112】
例えば、操作手段58がジョイスティックやマウス等のポインティングデバイスである場合、その操作量と方向に基づいて当該方向に向けて当該操作量に対応する距離だけ水中航走体100を移動させるように水中航走体修正情報を生成する。また、例えば、操作手段58がジョイスティックやマウス等のポインティングデバイスである場合、その操作量と方向に基づいて当該方向に向けて当該操作量に対応する距離だけ水上中継機200を移動させるように水上中継機修正情報を生成する。また、例えば、操作手段58が画像表示手段56と一体化されたタッチパネルである場合、画像表示手段56に表示された目標位置を画面内で移動(スワイプ)させた操作量と方向に基づいて水中航走体100を当該方向と反対の方向(目標位置を撮像画像内で移動させた方向に水中航走体100が移動する方向)に向けて当該操作量に対応する距離だけ水中航走体100を移動させるように水中航走体修正情報を生成する。操作量に対する水中航走体100の移動距離の修正量の関係は予め設定しておけばよい。例えば、操作手段58が画像表示手段56と一体化されたタッチパネルである場合、画像表示手段56に表示された目標位置を画面内で移動(スワイプ)させた操作量と方向に基づいて水上中継機200を当該方向と反対の方向(目標位置を撮像画像内で移動させた方向に水上中継機200が移動する方向)に向けて当該操作量に対応する距離だけ水上中継機200を移動させるように水上中継機修正情報を生成する。操作量に対する水上中継機200の移動距離の修正量の関係は予め設定しておけばよい。
【0113】
これによって、画面内に表示されている目標位置に対して水中航走体100及び水上中継機200に移動させ、正しい位置に臨ませることができる。また、画面内に表示されている目標位置に対して水中航走体100及び水上中継機200をリアルタイムに移動させることができる。
【0114】
通信手段62は、水上中継機200から母船300へ送信されてくる情報を受信したり、母船300から水上中継機200へ情報を送信したりするための装置を含んで構成される。本実施の形態では、水上中継機200を介して水中航走体100と母船300との間の通信が行われるので、母船300は水上中継機200の通信を行う無線通信手段として利用される。水上中継機200の通信が無線で行われる場合、通信手段62は、電波等の通信方法を用いた無線通信のための装置を含む。具体的には、例えば、WiFi通信、UHF通信、衛星通信等の無線通信装置を含めばよい。
【0115】
なお、本実施の形態では、管理者による操作手段58の操作に基づいて連結手段60にて水中航走体修正情報及び水上中継機修正情報を生成する態様としたが、管理者の操作に依らず連結手段60(又は操作手段58)において自動的に水中航走体修正情報及び水上中継機修正情報を生成するようにしてもよい。
【0116】
例えば、水中航走体100から送信されてきた撮像画像を画像処理して、目標物の特徴(形状、色等)から画像内において目標物が表示されている目標位置を特定し、当該目標位置が撮像画像の中心に位置するように水中航走体100を移動させるための水中航走体修正情報を生成するようにしてもよい。すなわち、画像内において画像の中心位置から現在の目標位置のずれの方向及び大きさに基づいて当該方向に向けて当該ずれ量に対応する距離だけ水中航走体100を移動させるように水中航走体修正情報を生成してもよい。同様に、例えば、水上中継機200から送信されてきた撮像画像を画像処理して、目標物(例えば、追従する水中航走体100)の特徴(形状、色等)から画像内において目標物が表示されている目標位置を特定し、当該目標位置が撮像画像の中心に位置するように水上中継機200を移動させるための水上中継機修正情報を生成するようにしてもよい。すなわち、画像内において画像の中心位置から現在の目標位置のずれの方向及び大きさに基づいて当該方向に向けて当該ずれ量に対応する距離だけ水上中継機200を移動させるように水上中継機修正情報を生成してもよい。
【0117】
このとき、撮像画像内における目標物の大きさに基づいて水中航走体100や水上中継機200と目標物との距離を求め、当該距離に応じて水中航走体修正情報や水上中継機修正情報を修正する量を調整するようにしてもよい。
【0118】
なお、連結手段60(又は操作手段58)において自動的に水中航走体修正情報や水上中継機修正情報を生成する場合、画像表示手段56に撮像画像を表示させることによって管理者に状況を把握させる必要がないので、画像表示手段56に実態としての画像を表示しないようにしてもよい。
【0119】
[水中航走体及び水上中継機の投入時の処理]
以下、
図5のフローチャートを参照して、水中航走体100及び水上中継機200の投入時の処理について説明する。本実施の形態では、水上の母船300から水中航走体100及び水上中継機200を投入する処理を行う態様について説明する。
【0120】
なお、
図5~
図7のフローチャートでは、水中航走体100を自律型無人潜水機(AUV)、水上中継機200を自律型無人洋上中継機(ASV)として示すが、上記のとおりこれらに限定されるものではない。
【0121】
ステップS10では、起動処理が行われる。水中航走体100、水上中継機200及び水上の母船300のシステム電源や各部の電源がオンにされる。ステップS11では、母船300において水中航走体100及び水上中継機200のステータスの確認処理が行われる。当該ステップは、ステータス確認ステップに相当する。ステップS12では、水中航走体100及び水上中継機200のステータスが正常であるか否かが判定される。水中航走体100及び水上中継機200の動作が正常であればステップS13に処理を移行させ、正常でなければステップS10に処理を戻す。
【0122】
ステップS13では、母船300から水中航走体100を水中に投入する作業が行われる。当該ステップは、航走体投入ステップに相当する。ステップS14では、水中航走体100による深度(高度)及び速度の計測値が妥当な値であるか否かが判定される。当該ステップは、推定値判断ステップに相当する。水中航走体100の航走体位置推定手段20の水中位置の推定値において深度(高度)及び速度の推定値が妥当な値であればステップS15に処理を移行させ、妥当な値でなければステップS10に処理を戻す。
【0123】
ステップS15では、水中航走体100を水中に降下させる処理が行われる。当該ステップは、航走体下降ステップに相当する。母船300における操作手段58を用いて水中航走体100に対して水中航走体修正情報を送信することによって水中航走体100を水底に接近させ水平位置(緯度及び経度)及び深度(高度)を所定の位置に保持する。また、当該ステップにおいて、航走体撮像手段22による水底の撮像を行い、撮像処理及び撮像画像の送受信処理が適切に実行できるかを確認すると共に、水中航走体100が水底付近に位置していることを確認してもよい。
【0124】
ステップS16では、母船300から水上中継機200を投入する作業が行われる。当該ステップは、中継機投入ステップに相当する。水上中継機200を水上に投入して水平位置(緯度及び経度)を所定の位置に保持する。また、当該ステップにおいて、中継機撮像手段42による水中の撮像を行い、撮像処理及び撮像画像の送受信処理が適切に実行できるかを確認する。
【0125】
ステップS17では、水中航走体100と水上中継機200の鉛直位置関係を確認する処理が行われる。当該ステップは、鉛直位置関係確認ステップに相当する。母船300において、水上中継機200を介して水中航走体100から送信されてくる自己位置における水平位置(緯度及び経度)と水上中継機200から送信されてくる自己位置における水平位置(緯度及び経度)から水中航走体100と水上中継機200とが互いに鉛直な位置関係にあるか否かが判定される。ここで、鉛直な位置関係とは、水中にある水中航走体100と水上にある水上中継機200とが互いに鉛直な位置にあることを意味する。ただし、水中航走体100と水上中継機200とが完全に鉛直な位置関係にある必要はなく、情報伝送線24の余裕等に応じて水中航走体100及び水上中継機200の航走や処理の障害とならない程度に略鉛直な位置関係にあればよい。水中航走体100と水上中継機200が略鉛直な位置関係にある場合にはステップS19に処理が移行され、そうでない場合にはステップS18に処理が移行される。
【0126】
ステップS18では、水中航走体100と水上中継機200の鉛直位置関係を確保する処理が行われる。当該ステップは、鉛直位置確保ステップに相当する。母船300における操作手段58を用いて水上中継機200に対して水上中継機修正情報を送信することによって水上中継機200を水中航走体100に対して略鉛直な位置となるように移動させ、略鉛直な位置を保持するようにする。当該ステップの処理が終了すると、ステップS17に処理を戻す。
【0127】
ステップS19では、水上中継機200の位置情報を水中航走体100の初期位置の位置情報として設定する処理が行われる。当該ステップは、初期位置入力ステップに相当する。水中航走体100と水上中継機200とが略鉛直な位置に保持された状態において、母船300は水上中継機200の自己位置(緯度及び経度)を取得し、水上中継機200の自己位置(緯度及び経度)を水中航走体100へ送信する。水中航走体100は、水上中継機200の自己位置(緯度及び経度)を初期位置(緯度及び経度)として設定する。ステップS20では、母船300において水中航走体100及び水上中継機200のステータスの確認処理が行われる。
【0128】
以上のように、本実施の形態の水上中継機と水中航走体との連結システムにおいて母船300から水中航走体100及び水上中継機200の投入する処理が実現される。なお、本実施の形態では、母船300から水中航走体100及び水上中継機200を投入する処理を行う態様について説明したが、母船300に代えて陸上や他の浮体上から水中航走体100及び水上中継機200を投入する態様としてもよい。
【0129】
[水中航走体及び水上中継機の航走時の処理]
以下、
図6のフローチャートを参照して、水中航走体100及び水上中継機200の航走時の処理について説明する。
【0130】
ステップS30では、母船300から水上中継機200へ目標位置の情報が送信される。当該ステップは、目標位置設定ステップに相当する。操作者の操作等によって、母船300の位置設定手段54によって水上中継機200の目標位置となる初期位置及びウェイポイントの情報が設定され、母船300の通信手段62及び水上中継機200の通信手段36を介して水上中継機200に対して目標位置の設定が行われる。目標位置の情報は、記憶手段34に記憶される。具体的には、水上中継機200に搭載された無線通信器26を用いた無線通信によって水上中継機200に目標位置の設定が行われる。水上中継機200の目標位置は、初期位置及びウェイポイントを示す目標緯度及び目標経度の情報を含む。
【0131】
ステップS31では、水上中継機200を介して母船300から水中航走体100へ目標位置の情報が送信される。当該ステップは、目標位置入力ステップに相当する。操作者の操作等によって、母船300の位置設定手段54によって水中航走体100の目標位置となる初期位置及びウェイポイントの情報が設定され、母船300の通信手段62、水上中継機200の通信手段36を介して水上中継機200に当該目標位置が送信される。さらに、水上中継機200の通信手段36及び水中航走体100の通信手段16を介して水上中継機200から水中航走体100へ当該目標位置が入力される。具体的には、水上中継機200と水中航走体100とを接続する情報伝送線24を用いた有線通信によって水中航走体100に目標位置が入力される。目標位置の情報は、記憶手段14に記憶される。水中航走体100の目標位置は、初期位置及びウェイポイントを示す目標緯度、目標経度及び目標深度の情報を含む。
【0132】
以下、ステップS32~ステップS35の処理において水上中継機200の移動処理について説明する。水上中継機200の制御手段32は、記憶手段34に記憶されている初期位置及びウェイポイントを所定の周期毎に順に読み出して現在の目標位置とし、ステップS32~ステップS35の処理を繰り返すことによって水上中継機200を移動させる処理を行う。
【0133】
ステップS32では、水上中継機200において位置の計測が行われる。水上中継機200では、衛星測位システム(GPS)等を含む中継機位置計測手段40によって機体30の現在の位置が計測される。ステップS33では、水上中継機200が現在の目標位置の到達範囲にあるか否かを判定する処理が行われる。当該ステップは、中継機到達判断ステップに相当する。制御手段32は、中継機位置計測手段40から機体30の現在の位置を取得し、現在の位置が現在の目標位置から所定の到達範囲内にあるか否かを判定する。到達範囲は、現在の目標位置からある程度広がった範囲に設定することができ、例えば、現在の目標位置から所定の半径の円内に設定される。現在の位置が現在の目標位置から所定の到達範囲内にあればステップS40に処理を移行させ、所定の到達範囲内になければステップS34に処理を移行させる。
【0134】
ステップS34では、水上中継機200の航走方向の方位が計測される。当該ステップは、航走制御ステップの一部に相当する。水上中継機200では、姿勢方位基準装置(AHRS)等を含む中継機位置計測手段40によって機体30の現在の航走方向の方位が計測される。ステップS35では、水上中継機200を現在の目標位置に向けて航走させる処理が行われる。当該ステップは、航走制御ステップの一部に相当する。水上中継機200の制御手段32は、ステップS32において計測された現在の位置とステップS34で計測された現在の方位に基づいて、水上中継機200を現在の目標位置へ移動させるように目標進行方向及び目標速度を決定する。そして、制御手段32は、水上中継機200が目標進行方向に対して目標速度で移動するように中継機推進手段38を制御することによって現在の目標位置に向けて水上中継機200を航走させる。
【0135】
以下、ステップS36~ステップS39の処理において水中航走体100の移動処理について説明する。水中航走体100の制御手段12は、記憶手段14に記憶されている初期位置及びウェイポイントを所定の周期毎に順に読み出して現在の目標位置とし、ステップS36~ステップS39の処理を繰り返すことによって水中航走体100を移動させる処理を行う。
【0136】
ステップS36では、水中航走体100において位置の計測が行われる。水中航走体100では、航走体位置推定手段20によって初期位置からの移動に基づいて艇体10の現在の位置が推定される。ステップS37では、水中航走体100が現在の目標位置の到達範囲にあるか否かを判定する処理が行われる。当該ステップは、航走体到達判断ステップに相当する。制御手段12は、航走体位置推定手段20から艇体10の現在の位置の推定値を取得し、現在の位置の推定値が現在の目標位置から所定の到達範囲内にあるか否かを判定する。到達範囲は、現在の目標位置からある程度広がった範囲に設定することができ、例えば、現在の目標位置から所定の半径の球内に設定される。現在の位置が現在の目標位置から所定の到達範囲内にあればステップS40に処理を移行させ、所定の到達範囲内になければステップS38に処理を移行させる。
【0137】
ステップS38では、水中航走体100の航走方向の方位が計測される。当該ステップは、航走制御ステップの一部に相当する。水中航走体100では、姿勢方位基準装置(AHRS)等を含む航走体位置推定手段20によって艇体10の現在の航走方向の方位が計測される。ステップS39では、水中航走体100を現在の目標位置に向けて航走させる処理が行われる。当該ステップは、航走制御ステップの一部に相当する。水中航走体100の制御手段12は、ステップS37において推定された現在の位置とステップS38で計測された現在の方位に基づいて、水中航走体100を現在の目標位置へ移動させるように目標進行方向及び目標速度を決定する。そして、制御手段12は、水中航走体100が目標進行方向に対して目標速度で移動するように航走手段18を制御することによって現在の目標位置に向けて水中航走体100を航走させる。
【0138】
なお、ステップS39における水中航走体100の目標速度は、ステップS35における水上中継機200の目標速度と一致させるようにしてもよい。これにより、水中航走体100と水上中継機200とが同じ速度で航走することになり、航走時においても水中航走体100と水上中継機200とを略鉛直な位置関係に維持することができる。ただし、水中航走体100と水上中継機200と間の距離が離れたとしても、情報伝送線24によってより速く航走している方がより遅く航走している方を引っ張ることになり、水中航走体100と水上中継機200との略鉛直な位置関係は大きくずれることはない。
【0139】
ステップS40~ステップS42では、水中航走体100及び水上中継機200を目標位置に維持する処理が行われる。当該ステップS40~ステップS42の処理は、目標保持ステップに相当する。
【0140】
ステップS40では、水中航走体100及び水上中継機200が共に目標位置に到達して位置を保持しているか否かが判定される。ステップS33において水上中継機200が目標位置の到達範囲内にあることが確認され、ステップS37において水中航走体100が目標位置の到達範囲内にあることが確認されたうえで、水上中継機200及び水中航走体100が共に目標位置を維持しているか否かが判定される。水中航走体100及び水上中継機200が共に目標位置を維持している場合には航走処理を終了する。水上中継機200が目標位置を維持していない場合にはステップS41に処理を移行させる。ステップS41では、水上中継機200が目標位置を維持するように制御を行い、ステップS40へ処理を戻す。水中航走体100が目標位置を維持していない場合にはステップS42に処理を移行させる。ステップS42では、水中航走体100が目標位置を維持するように制御を行い、ステップS40へ処理を戻す。
【0141】
なお、水中航走体100及び水上中継機200が目標位置に到達した後、水中航走体100を操作することによって移動させて作業を行う際、水上中継機200は水中航走体100の水平位置(緯度及び経度)に追従する水中航走体100の追尾モードに設定する。この場合、水中航走体100の航走体位置推定手段20にて推定された自己位置(緯度及び経度)が水上中継機200へ送信し、当該推定された自己位置(緯度及び経度)を目標位置として中継機位置計測手段40で計測された自己位置が当該目標位置に近づくように水上中継機200を航走させればよい。
【0142】
ただし、水中航走体100の航走に伴って水上中継機200が過度に敏感に動き回ることを防ぐために、水中航走体100の水平位置(緯度及び経度)と水上中継機200の水平位置(緯度及び経度)の間の距離に許容範囲を設定してもよい。例えば、水中航走体100の水平位置(緯度及び経度)と水上中継機200の水平位置(緯度及び経度)の間の距離が5m以内であれば水上中継機200が水中航走体100を追尾しないように設定すればよい。
【0143】
以上のように、本実施の形態の水上中継機と水中航走体との連結システムにおいて水中航走体100及び水上中継機200の航走処理が実現される。
【0144】
[水中航走体及び水上中継機の鉛直位置の補正処理]
以下、
図7のフローチャートを参照して、水中航走体100と水上中継機200の鉛直位置の補正を行う処理について説明する。当該処理は、水中航走体100と水上中継機200が略鉛直な位置を保持できていないとき、また略鉛直な位置を保持できているか否かが不明なときに実行することができる。また、水中航走体100及び水上中継機200が航走した後、一定時間毎に水中航走体100と水上中継機200の鉛直方向の相対的な位置関係を揃えるときに実行してもよい。また、水中航走体100及び水上中継機200を投入する際に水中航走体100と水上中継機200の水平位置を補正して互いに略鉛直な位置にするときに実行してもよい。
【0145】
ステップS50では、水上中継機200において水中航走体100を探索する処理が行われる。当該ステップは、航走体位置確認ステップの一部に相当する。母船300から水上中継機200へ撮像制御信号を送信することで、水上中継機200の中継機撮像手段42によって水上中継機200の近傍領域の水中が撮像される。例えば、水上中継機200の直下近傍の領域が撮像される。撮像された画像は、水上中継機200から母船300へ送信され、当該画像が母船300の画像表示手段56に表示される。
【0146】
ステップS51では、水中航走体100を確認可能か否かが判定される。当該ステップは、航走体位置確認ステップの一部に相当する。母船300上の操作者は、ステップS50において画像表示手段56に表示された画像において水中航走体100が確認できるか否かを判定する。また、既存の画像処理によって、ステップS50において画像表示手段56に表示された画像において水中航走体100が確認できるか否かを自動判定する。画像において水中航走体100が確認できればステップS53に処理を移行させ、確認できなければステップS52に処理を移行させる。
【0147】
ステップS52では、水中航走体100を上昇させる処理が行われる。当該ステップは、航走体上昇ステップに相当する。ステップS51において水中航走体100が確認できなかった場合、水上中継機200を介して母船300から水中航走体100へ上昇制御信号が送信される。水中航走体100の制御手段12は、上昇制御信号を受信すると、航走手段18を制御して水中航走体100を上昇させる。このとき、水中航走体100の水平位置(緯度及び経度)は保持することが好適である。そして、水上中継機200によって撮像された画像に水中航走体100が確認できるまで上記ステップS50~S52を繰り返す。
【0148】
ステップS53では、水中航走体100と水上中継機200とが適切な鉛直位置の関係にあるか否かが判定される。当該ステップは、位置判断ステップに相当する。母船300上の操作者は、ステップS50において画像表示手段56に表示された画像において水中航走体100と水上中継機200が略鉛直な位置関係にあるか否かを判定する。また、既存の画像処理によって、ステップS50において画像表示手段56に表示された画像において水中航走体100と水上中継機200が略鉛直な位置関係にあるか否かを自動判定する。画像において水中航走体100と水上中継機200が略鉛直な位置関係にあればステップS55に処理を移行させ、略鉛直な位置関係になければステップS54に処理を移行させる。
【0149】
ステップS54では、水上中継機200を移動させて、水中航走体100と水上中継機200を略鉛直な位置関係にする処理が行われる。当該ステップは、位置ずれ補正ステップに相当する。ステップS53において水中航走体100と水上中継機200が略鉛直な位置関係になかった場合、母船300において画像表示手段56に表示された画像を確認しながら操作者が操作手段58を操作することによって水上中継機200へ移動制御信号が送信される。また、既存の画像処理によって、画像表示手段56に表示された画像に基づいて水中航走体100へ水上中継機200を向かわせる移動制御信号が自動送信される。水上中継機200の制御手段32は、移動制御信号を受信すると、中継機推進手段38を制御して水中航走体100に対して水上中継機200が略鉛直な位置関係となるように水上中継機200を航走させる。そして、水中航走体100と水上中継機200が略鉛直な位置関係となるまで上記ステップS53とステップS54を繰り返す。
【0150】
ステップS55では、水中航走体100の自己位置を補正する処理が行われる。当該ステップは、水中位置補正ステップに相当する。水上中継機200の中継機位置計測手段40によって計測された水上中継機200の自己位置(緯度及び経度)を情報伝送線24を介して水中航走体100へ送信する。水中航走体100では、水上中継機200の自己位置(経度及び緯度)の入力を受けて、水中航走体100の現在の自己位置(緯度及び経度)を水上中継機200の自己位置(経度及び緯度)に一致するように補正する。これにより、水中航走体100と水上中継機200の水平位置(緯度及び経度)の情報が一致し、水中航走体100の航走体位置推定手段20において推定される水中航走体100の自己位置の確度を高めることができる。
【0151】
ステップS56では、水中航走体100を目標深度に降下させる処理が行われる。水中航走体100の制御手段12は、航走手段18を制御することによって目標深度に水中航走体100を降下させる。
【0152】
以上のように、本実施の形態の水上中継機と水中航走体との連結システムにおいて水中航走体100と水上中継機200の鉛直位置の補正を行うことができる。これによって、水中航走体100と水上中継機200が略鉛直な位置を保持することができる。
【0153】
<変形例1>
上記実施の形態では、水中航走体100及び水上中継機200を1組使用する構成を説明した。本変形例1では、
図8に示すように、水中航走体100及び水上中継機200の組を複数使用する構成とする。
【0154】
図5に示した水中航走体100及び水上中継機200の投入時の処理を繰り返して水中航走体100及び水上中継機200の各組について適用する。そして、水中航走体100及び水上中継機200の各組に対してそれぞれ目標緯度及び目標経度の情報を母船300から送信すると共に、
図6に示した水中航走体100及び水上中継機200の航走時の処理を水中航走体100及び水上中継機200の各組について適用する。
【0155】
これによって、複数の組の水中航走体100及び水上中継機200によって、同時に広い範囲の資源や水底ケーブル等の検査対象物を調査することができ、調査時間を短縮することができる。
【0156】
<変形例2>
上記実施の形態では、1つの水中航走体100に対して1つの水上中継機200を組み合わせた構成を説明した。本変形例2では、
図9に示すように、1つの水中航走体100に対して複数の水上中継機200を組み合わせた構成とする。
【0157】
図10は、本変形例1における水中航走体100及び水上中継機200の投入時の処理を示す。
図10において、
図5に示した水中航走体100及び水上中継機200の投入時の処理と同じ処理とするステップには
図5と同じステップ番号を付して説明を省略する。
【0158】
ステップS13~ステップS14の処理によって、母船300から第1番目の水中航走体100を水中に投入する作業が行われる。その後、ステップS60では、母船300から他の水中航走体100、すなわち第1番目の水中航走体100と水上中継機200との間に配置される中間の水中航走体100を水中に投入する作業が行われる。当該ステップは、中間航走体投入ステップに相当する。ステップS61では、水中に投入された他の水中航走体100による深度(高度)及び速度の計測値が妥当な値であるか否かが判定される。当該ステップは、他の水中航走体100に対する推定値判断ステップに相当する。水中航走体100の航走体位置推定手段20の水中位置の推定値において深度(高度)及び速度の推定値が妥当な値であればステップS62に処理を移行させ、妥当な値でなければステップS10に処理を戻す。
【0159】
ステップS62では、他の水中航走体100を水中に降下させる処理が行われる。当該ステップは、他の水中航走体100に対する航走体下降ステップに相当する。母船300における操作手段58を用いて他の水中航走体100に対して水中航走体修正情報を送信することによって当該他の水中航走体100を所望の水平位置(緯度及び経度)及び深度(高度)に位置させ、水平位置(緯度及び経度)及び深度(高度)を当該位置に保持する。具体的には、第1番目の水中航走体100、中間の水中航走体100及び水上中継機200が互いに鉛直位置となるように制御を行うことが好適である。また、当該ステップにおいて、航走体撮像手段22による撮像を行い、撮像処理及び撮像画像の送受信処理が適切に実行できるかを確認すると共に、水中航走体100が所望の水平位置(緯度及び経度)及び深度(高度)に配置されていることを確認してもよい。
【0160】
他の水中航走体100を2つ以上設ける場合、ステップS60~ステップS62の処理を繰り返せばよい。これらの処理の後、ステップS15に処理を移行させる。
【0161】
なお、本変形例2の構成においても、上記変形例1のように水中航走体100及び水上中継機200の組を複数使用する構成としてもよい。この場合、
図10に示した水中航走体100、水上中継機200の投入時の処理を繰り返して水中航走体100及び水上中継機200の各組について適用する。そして、水中航走体100及び水上中継機200の各組に対してそれぞれ目標緯度及び目標経度の情報を母船300から送信すると共に、
図6に示した水中航走体100及び水上中継機200の航走時の処理を水中航走体100及び水上中継機200の各組について適用する。
【0162】
<変形例3>
本変形例3では、母船300に有した発信源からの振動を受振器(ハイドロフォン)を用いて受振するために水中航走体100の水平位置(緯度及び経度)及び深度(高度)を制御する構成とする。
【0163】
図11は、本変形例3における水上中継機と水中航走体との連結システムの構成を示す。本変形例3では、水中航走体100、水上中継機200及び母船300に加えて、母船300に水中に投入された音響発振器600及びケーブル500上に間隔をもって設けられた受振器(ハイドロフォン)602を備える。
【0164】
音響発振器600は、母船300から水中に投入され、水中において音響振動を発生させる水中振源である。音響発振器600は、例えば、エアガン、スパーカー、ブーマー等を含んで構成することができる。音響発振器600から発せられる振動は、例えば、空間分解能の良い数百~数千Hzの周波数帯域とすることが好適である。
【0165】
図11に示すように、音響発振器600から発せられた音響振動は、水中、さらには水底400下を伝搬し、地層境界である反射面402において反射音響振動として反射される。反射音響振動は、水底400下から水中へと伝搬する。
【0166】
受振器602は、水中を伝搬する振動を検知する。受振器602は、少なくとも1つ、好ましくは複数が水中航走体100と水上中継機200とを繋ぐケーブル500に設けられる。受振器602は、それぞれに固有に与えられた識別子等のハイドロフォン情報と共に検知した振動の情報を水上中継機200へ送出する。音響発振器600と受振器602を組み合わせることによって、音響発振器600から発せられ、反射面402において反射された音響振動を受振器602において検知することができる。
【0167】
図12は、本変形例3における音響発振器600及び受振器602を用いた処理を示す。ステップS70では、母船300が目標緯度及び目標経度に到達する。母船300が目標緯度及び目標経度に到達すると、音響発振器600を水中に投入する作業が行われる。ステップS71では、母船300からの制御によって音響発振器600から音響振動が発せられる。
【0168】
ステップS72では、受振器602において水底400下の反射面402において反射された反射音響振動が検知される。このとき、複数の受振器602において反射音響振動を検知することが好適である。ステップS73では、受振器602において検知された反射音響振動をハイドロフォン情報と共に音響情報として水上中継機200へ送信する。複数の受振器602を備える場合、複数の受振器602からの音響情報が水上中継機200へ集約される。ステップS74では、水上中継機200から母船300へ音響情報が転送される。水上中継機200は、自己の位置情報と共に音響情報を母船300へ送信する。なお、複数の受振器602からの音響情報は、水上中継機200の位置情報と共にリアルタイムで母船300へ送信してもよい。
【0169】
ステップS75では、母船300においてVCS(Vertical Cable Seimic)解析が行われる。母船300では、水上中継機200から転送されてきた音響情報を用いてVCS解析が行われる。
【0170】
VCS解析では、反射面402の反射点の分布からケーブル500を中心とする反射面402の構造イメージを得ることができる。このとき、水中航走体100、水上中継機200及びこれらを繋ぐケーブル500の位置や音響発振器600の分布を適切に変えること、又は母船300が移動して音響発振器600の位置を変えること等によって、対象となる範囲の3次元構造を効率的に把握することができる。このとき、鉛直方向に延ばされたケーブル500に複数の受振器602が配置されることで、波動現象による分解能の劣化(フレネルボリュームの拡大)を抑制できる。また、水中に受振器602を配置することによって、波浪によるノイズを低減させることができる。これによって、鉛直方向及び水平方向ともに従来の海上反射法(MCS)に比べて分解能を向上させることができる。
【0171】
さらに、上記変形例1のように複数組の水中航走体100、水上中継機200及びこれらを繋ぐケーブル500を同時に用いる構成に本変形例3の構成を組み合わせることによって、対象となる範囲の3次元構造をより効率的に把握することができる。また、上記変形例2のように複数の水中航走体100、水上中継機200及びこれらを繋ぐケーブル500を同時に用いる構成に本変形例3の構成を組み合わせることによって、ケーブル500を高い精度で鉛直方向に設置した状態でVCS解析を適用することができるので、対象となる範囲の3次元構造をより高い精度で把握することができる。
【0172】
[水上中継機と水中航走体との連結システムを用いた測定処理]
図13は、上記実施の形態及び各変形例における水上中継機と水中航走体との連結システムを用いた測定処理を示す。
【0173】
ステップS80では、母船300が目標緯度及び目標経度に到達する。ステップS81では、上記実施の形態における水中航走体100及び水上中継機200の投入時の処理及び水中航走体100及び水上中継機200の航走時の処理を適用することによって水中航走体100及び水上中継機200の位置制御が行われる。
【0174】
ステップS82では、水中航走体100の航走体撮像手段22を用いて水中の探査が行われる。ステップS83では、水中航走体100の航走体撮像手段22を用いて水中や水底の画像が取得される。ステップS84では、ステップS83において取得された画像情報が水中航走体100から水上中継機200へ送信される。このとき、水中航走体100から画像情報に関連する関連情報も併せて水上中継機200へ送信することが好適である。関連情報は、例えば水中航走体100の現在の緯度及び経度並びに水面からの深度等が挙げられる。また、関連情報は、例えば画像を取得した日時等が挙げられる。
【0175】
ステップS85では、水上中継機200から母船300へ画像情報が転送される。画像情報に関連情報が付加されている場合、水上中継機200から母船300へ画像情報と共に関連情報を転送することが好適である。ステップS86では、母船300において画像情報に対する処理が行われる。母船300では、例えば、画像情報に基づく画像を映写する処理や画像情報の解析処理が行われる。画像情報に関連情報が付加されている場合、母船300において関連情報に基づく映写や解析を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明は、自律型水中航走体における高精度の航走制御や目標物の監視等に適用することができる。すなわち、水中航走体と水上中継機との位置関係を保持しつつ水中航走体による水中の目標物の検査、監視、修繕等において作業効率を高めることができる。例えば、水底の環境調査(海草、海藻、珊瑚等)、水底下の調査(水底下構造)、水産資源調査(底生魚、貝類等)、水産設備検査(生け簀、魚礁等)、港湾設備の水中部分の検査(岸壁、防波堤等)、洋上風力発電設備の水中部分の検査、石油ガス設備の水底パイプライン検査、船底検査、ダム湖の水中部分の検査等に利用することができる。
【符号の説明】
【0177】
10 艇体、12 制御手段、14 記憶手段、16 通信手段、18 航走手段、20 航走体位置推定手段、22 航走体撮像手段、22 記憶手段、24 情報伝送線、26 無線通信器、30 機体、32 制御手段、34 記憶手段、36 通信手段、38 中継機推進手段、40 中継機位置計測手段、40a 受信機、42 中継機撮像手段、50 艇体、52 測位手段、54 位置設定手段、56 画像表示手段、58 操作手段、60 連結手段、62 通信手段、100 水中航走体、200 水上中継機、300 母船、302 監視手段、400 水底、402 反射面、500 ケーブル、600 音響発振器、602 受振器。