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特開2022-145660引抜き機構を備えた注射デバイスおよび関連する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145660
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】引抜き機構を備えた注射デバイスおよび関連する方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
A61M37/00 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022044011
(22)【出願日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】2102784
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】507125136
【氏名又は名称】ビゴン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トマ・ワルテール
(72)【発明者】
【氏名】レア・カルパンティエ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA02
4C267AA80
4C267CC30
(57)【要約】
【課題】扱いやすく、その操作が患者にとって、より快適な注射デバイスを提供すること。
【解決手段】本発明は、注射デバイス(10)に関し、注射デバイスは、-針支持体(24)と、-針支持体と一体化され、かつ針支持体から離れて配置された自由端(28)を有する注射針(22)と、-針支持体に接続されたベース(52)、および針使用位置と針引抜き位置との間でベースに対して移動可能なプランジャ(54)を備える針引抜き機構(50)と、を備える。ベース(52)は、引抜き機構の非活動位置と、引抜き機構の活動位置と、の間で、針支持体に対して移動可能である。プランジャ(54)は、外側部材と、外側部材に対して、格納プランジャ構成から、プランジャの長さが格納構成におけるものよりも大きい展開したプランジャ構成へと移動可能な内側部材と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 針支持体(24)と、
- 前記針支持体(24)と一体化され、かつ前記針支持体(24)から離れて配置された自由端(28)を有する注射針(22)と、
- 前記針支持体(24)に接続されたベース(52)、および前記注射針(22)の使用位置と前記注射針(22)の引抜き位置との間で前記ベース(52)に対して移動可能なプランジャ(54)を備える、前記注射針(22)を引き抜くための機構(50)であって、前記ベース(52)は、前記引抜き機構(50)の非活動位置と、前記引抜き機構(50)の活動位置との間で、前記針支持体(24)に対して移動可能である、機構(50)と、
を備える注射デバイス(10)であって、
前記プランジャ(54)は、外側部材(70)と、前記外側部材(70)に対して、前記プランジャ(54)の格納構成から、前記プランジャ(54)の長さが前記格納構成におけるものよりも大きい、前記プランジャ(54)の展開構成へと移動可能な内側部材(72)と、を備えることを特徴とする注射デバイス(10)。
【請求項2】
前記内側部材(72)は、前記外側部材(70)の内側通路(78)の中に摺動可能に取り付けられる、請求項1に記載の注射デバイス(10)。
【請求項3】
前記プランジャ(54)は、前記プランジャ(54)が展開構成にあるときに前記内側部材(72)を前記外側部材(70)に対してロックするように適合された可撓性のある連結機構を備える、請求項1または2に記載の注射デバイス(10)。
【請求項4】
前記可撓性のある連結機構は、前記内側部材(72)または前記外側部材(70)のいずれかにより保持される少なくとも1つのスナップイン式タブ(82、102)と、前記内側部材(72)および前記外側部材(70)の他方により画定される少なくとも1つの窪み(86、108)と、を備え、前記スナップイン式タブ(82、102)は、前記プランジャ(54)がその展開構成にあるときに前記窪み(86、108)の中に受け入れられる歯を有する、請求項3に記載の注射デバイス(10)。
【請求項5】
1つ以上の前記窪み(86、108)は、前記プランジャ(54)がその展開構成にあるときに前記歯の1つを受け入れるために、前記内側部材(72)または前記外側部材(70)の他方の第1の端部(76)の近くに位置し、前記可撓性のある連結機構は、前記プランジャ(54)が格納構成にあるときに前記歯を受け入れるために、前記内側部材(72)または前記外側部材(70)の他方の第2の端部(74)の近くに位置する少なくとも第2の窪み(84)をさらに備える、請求項4に記載の注射デバイス(10)。
【請求項6】
前記可撓性のある連結機構は、前記内側部材(72)および前記外側部材(70)の他方の上に延びる少なくとも1つの傾斜部(106)を備え、前記傾斜部(106)は、その上端において前記窪み(108)の1つの範囲を定めており、前記スナップイン式タブ(82)は、前記プランジャ(54)が、前記格納構成から前記展開構成へと移動したとき、前記傾斜部(106)を圧迫する、請求項4または5に記載の注射デバイス(10)。
【請求項7】
前記可撓性のあるスナップイン式機構は、前記プランジャ(54)が前記格納構成にあるとき、前記内側部材(72)を、前記外側部材(70)に対して一時的に保持するように適合される、請求項3から6のいずれか一項に記載の注射デバイス(10)。
【請求項8】
前記プランジャ(54)は、前記展開構成において、前記注射針(22)を受け入れるための内部空間を画定する、請求項1から7のいずれか一項に記載の注射デバイス(10)。
【請求項9】
前記注射デバイス(10)は、前記ベース(52)を前記非活動位置に一時的に固定するための組立体を含み、前記組立体は、前記プランジャ(54)が前記格納構成にあるとき活動状態にあり、また前記プランジャ(54)が前記格納構成から前記展開構成へと移動したとき非活動化される、請求項1から8のいずれか一項に記載の注射デバイス(10)。
【請求項10】
前記一時的な固定組立体は、前記内側部材(72)上で延びる第1のスロット(100)と、前記第1のスロット(100)よりも大きな幅の、前記外側部材(70)上で延びる第2のスロット(90)と、を含み、前記第1のスロット(100)および前記第2のスロット(90)は、前記針支持体に向けて方向付けられており、前記一時的な固定組立体は、前記第1のスロット(100)および前記第2のスロット(90)に係合するように適合されたバー(44)をさらに備え、前記バー(44)は、前記第1のスロット(100)の幅よりも大きくかつ前記第2のスロット(90)の幅よりも小さい長さを有する、請求項9に記載の注射デバイス(10)。
【請求項11】
前記内側部材(72)および前記外側部材(70)は、丸みを帯びたコーナを有する実質的に矩形の横断面を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の注射デバイス(10)。
【請求項12】
針(22)を取り外す前に実施される、患者の体内に前に挿入された前記針(22)を取り外す準備をするための方法であって、
- 請求項1から11のいずれか一項に記載の注射デバイス(10)を提供するステップであって、前記引抜き機構(50)は、その非活動位置を占めており、前記プランジャ(54)が、前記格納構成にある、ステップと、
- 前記内側部材(72)を、前記外側部材(70)に対して移動させて、前記プランジャ(54)をその格納構成からその展開構成へと移動させ、前記プランジャ(54)の長さを増加するステップと、
- 前記ベース(52)を、前記引抜き機構(50)の前記非活動位置から、前記活動位置へと移動させるステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射デバイスに関し、注射デバイスは、
- 針支持体と、
- 針支持体と一体化され、かつ針支持体から離れて配置された自由端を有する注射針と、
- 針支持体に接続されたベース、および針の使用位置と針の引抜き位置との間でベースに対して移動可能なプランジャを備える、注射針を引き抜くための機構であって、ベースは、非活動状態の引抜き機構位置と、活動状態の引抜き機構位置と、の間で、針支持体に対して移動可能である、機構と、
を備える。
【0002】
本発明はまた、このようなデバイスに対する準備プロセスおよび注射方法に関する。
【背景技術】
【0003】
このようなデバイスは、液体の薬物用量を、患者の臓器の中に規則的に、直接注射する必要のあるいくつかの病変を治療するために使用される。
【0004】
そうするために、チャンバを患者の胸部の皮下に恒久的に植え込むことが知られている。このチャンバは、薬物用量が送達される臓器へと支持体を通って延びる管により延びている。植込み可能なチャンバは、皮膚と接触し、その表面に沿った穴開け可能なカバーを備えた貯蔵器を有する。
【0005】
薬物用量を注入するために、デバイスの針は、患者の皮膚を通して植込み可能なチャンバの中へと挿入され、薬物用量が、針を通してチャンバの中に注入される。
【0006】
針を植込み可能なチャンバから取り外すために、従事者は、デバイスホルダをつかみ、針をチャンバの外へと引き出す。
【0007】
しかし、植込み可能なチャンバの膜は比較的強度があるため、針を外すことができるようにするためには、かなりの引張り力を針に加えなくてはならない。
【0008】
針の取外し中に、植込み可能なチャンバにより皮膚に加えられる力を患者が受けないようにするために、特許文献1で述べられるように、原位置での引抜き機構を備えた注射デバイスを使用することが知られている。
【0009】
このようなデバイスは、注射デバイスの針支持体上に取り付けられた機械的な引抜き機構を備え、それは、従事者が、連続的に安全な方法で、単に針を引き抜くことを可能にするプランジャを備える。このために、ホルダによって保持される針は、引抜き中にプランジャの中へと徐々に包み込まれる。
【0010】
引抜き機構は、引抜きデバイスのサイズを低減するために、機構が使用されないとき患者の体に沿って延びた姿勢をとることができるように、針支持体にヒンジで留められる。引抜き機構の動きを低減するために、引抜き機構は、可撓性のある連結機構により延びた姿勢に保持される。
【0011】
このデバイスは、さらに向上させることができる。引抜きデバイスは、延びた姿勢であっても、低減されるべき実質的な底面積を有する。かさばったデバイスは、患者の皮膚に植え込まれた針のため患者に痛みを与える、デバイスに対する偶発的な衝撃など、取扱いエラーの原因となる可能性が高い。
【0012】
加えて、針を引き抜くために可撓性のある連結機構の係合を解除することは、針が、患者の体内に挿入されるとき、不快な揺れを引き起こすおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】仏国特許第2869806号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、したがって、扱いやすく、その操作が患者にとって、より快適な注射デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このために、本発明の目的は、前述のタイプの注射デバイスを提供することであり、プランジャは、外側部分と、外側部分に対して、格納プランジャ構成から、プランジャの長さが格納構成におけるものよりも大きい展開プランジャ構成へと移動可能な内側部分と、を備えることを特徴とする。
【0016】
特定の実施形態によれば、本発明によるデバイスは、単独で、または任意の技術的に実行可能な組合せで使用される以下の特徴のうちの1つまたは複数のものを備える。すなわち、
- 内側部材は、外側部材の内側通路の中に摺動可能に取り付けられる、
- プランジャは、プランジャが展開されたときに外側部材に対して内側部材をロックするように適合された可撓性のある連結機構を備える、
- 可撓性のある連結機構は、内側部材または外側部材のいずれかにより保持される少なくとも1つのスナップイン式タブと、内側部材または外側部材の他方により画定される少なくとも1つの窪みと、を備え、スナップイン式のタブは、プランジャが展開されたときに窪み内に受け入れられる歯を有する、
- 1つ以上の窪みは、プランジャが展開されたときに歯の1つを受け入れるために、内側部材または外側部材の他方の第1の端部の近くに位置し、スナップイン式機構は、プランジャが格納されたときに歯を受け入れるために、内側部材または外側部材の他方の第2の端部の近くに位置する少なくとも第2の窪みをさらに備える、
- 可撓性のある連結機構は、内側部材または外側部材の他方の上に延びる少なくとも1つの傾斜部を備え、傾斜部は、その上端において窪みの1つの範囲を定め、スナップイン式タブは、プランジャが格納構成から展開構成へと移動したとき、傾斜部を圧迫する、
- 可撓性のある連結機構は、プランジャが格納構成にあるとき、内側部材を外側部材に対して一時的に保持するのに適している、
- 展開構成において、プランジャは、針を受け入れるための内部空間を画定する、
- デバイスは、ベースを非活動位置に一時的に固定するための組立体を備え、組立体は、プランジャが格納構成にあるとき活動状態にあり、プランジャが、格納構成から展開構成へと進んだとき非活動化される、
- 一時的な固定組立体は、内側部材上で延びる第1のスロットと、第1のスロットよりも幅が広く、外側部材上で延びる第2のスロットと、を備え、第1および第2のスロットは、針支持体に向けて方向付けられており、一時的な固定組立体は、第1および第2のスロットに係合するように適合されたバーをさらに備え、バーは、第1のスロットの幅よりも大きくかつ第2のスロットの幅より小さい長さを有する、
- 内側部材および外側部材は、実質的に矩形の横断面を有し、丸みを帯びたコーナを備えると有利である、
- ベースは、針が使用状態にある位置と、針が引き抜かれる位置と、の間で、枢動軸回りで、針支持体上で枢動可能であるように取り付けられる、
- 枢動軸は、プランジャの長手方向軸に対して、特に、外側部材に対する内側部材の摺動軸に対して直角である、
- 針支持体またはベースのいずれかは、針支持体に対するベースの枢動をガイドするためのピンを備え、針支持体またはベースの他方は、ピンを受け入れる接続孔を画定する、
- 針引抜き位置においては、針のメインセクションは、プランジャによって画定される内部の受入れ空間の内側で完全に延びる、
- 針は、その自由端の側にメインセクションを有する、
- メインセクションは、針の自由端を画定する、
- 針は、自由端の側において、プランジャの縦軸に沿って延びるメインセクションにより延ばされ、かつ自由端の反対側において、プランジャの長手方向軸に沿って延びる接続セクションにより延ばされた肘部を形成する。
【0017】
本発明はまた、その目的として、前に患者の体内に導入された針を取り外す準備をするために、針を取り外す前に実施される方法を有し、方法は、
- 引抜き機構がその非活動位置にあり、プランジャがその格納位置にある、上記で述べたデバイスを提供するステップと、
- 内側部材を、外側部材に対して移動させて、プランジャをその格納構成からその展開構成へと移動させ、プランジャの長さを増加させるステップと、
- ベースを、引抜き機構の非活動位置から、活動位置へと移動させるステップと、
を含む。
【0018】
注射方法を提供することが本発明のさらなる目的であり、方法は、
- 上記で述べたデバイスを提供するステップと、
- 患者の体内に針を導入するステップであって、その先端が、植込み可能なチャンバのカバーを穿刺する、ステップと、
- 薬物溶液を、針を通して植込み可能なチャンバの中に注入するステップと、
- 上記で述べた方法により、針を取り外す準備をするステップと、
- プランジャを針の使用位置から針の取外し位置へと移動させることにより、針を取り外すステップと、
を含む。
【0019】
本発明による方法は、単独で、または任意の技術的に可能な組合せで使用される以下の特徴のうちの1つまたは複数のものを備えることができる。
- 内部部材を移動させることにより、ベースの一時的な固定機構を非活動化させて、その動きを可能にする、
- 針のメインセクションは、針が取り外された後、プランジャの内側で全体的に延びる。
【0020】
本発明は、例としてだけ示され、かつ添付図面を参照して行われる以下の記述を読めばよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】針の使用構成における、本発明による注射デバイスの3/4(three-quarter)斜視図である。
図2図1のデバイスの側面からの長手方向断面図である。
図3図1のデバイスの上部からの長手方向断面図である。
図4】プランジャが展開構成にある状態の、図1から図3のデバイスの側面からの長手方向断面図である。
図5】プランジャが展開構成にある状態の、図1から図3のデバイスの上部からの長手方向断面図である。
図6】引抜き機構が活動構成にある、図1から図5のデバイスの後方からの3/4斜視図である。
図7】引抜き機構が活動構成にある、図1から図5のデバイスの垂直な断面図である。
図8】針引抜き構成における、図1から図7のデバイスの垂直な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から図8において、本発明による注射デバイス10が示されている。デバイス10は、植込み可能なチャンバ11(図1で概略的に示されている)に接続されて、その中に薬物溶液を注入するように意図されている。
【0023】
それ自体知られているように、植込み可能なチャンバ11は、患者の皮膚12の下に配置される。チャンバ11は、皮膚の内側表面と接触しているその面上に穿刺可能な膜14により範囲が定められた、概して円筒形の貯蔵器13を有する。貯蔵器は、薬物溶液を、薬物用量を送達すべき臓器に送達するための管(図示せず)に接続される。
【0024】
注射デバイス10は、針に接続された管により延長され、針支持体24に、特に接着されて固定される、針支持体24と一体化された針22を備える。注射デバイス10は、本発明による、針支持体24により担持される針22引抜き機構50を備える。
【0025】
針22は、図2で示されるように、実質的に縦軸Z-Zに沿って延びる。
【0026】
針22は、縦軸Z-Zに対して横方向に開くように、湾曲した先端の自由端28を有する。
【0027】
支持体24は、縦軸Z-Zに直角な長手方向軸Y-Yに沿って細長い中心コア30を有する。中心コア30は、実質的に平行六面体である。それは、長手方向軸Y-Yに沿って延びる、針22に液体を運ぶための導管31が一方の側から他方の側へと横断している。針22は、ヘッド32を形成する中心コア30の一端に取り付けられる。
【0028】
針22は、縦軸Z-Zに沿って延びるメインセクション35により、また自由端28の反対側において長手方向軸Y-Yに沿って延びる接続セクション36により、自由端28の側で延びる肘部34(図2を参照)を形成する。接続セクション36は、ヘッド32から中心コア30を通る軸方向のダクト内に係合される。
【0029】
支持体24は、図1で見ることのできる2本のヒンジピン38を備え、それは、ヘッド32の近くで、中心コア30の両側で横方向に突き出ている。ヒンジピン38は、縦軸Z-Zおよび長手方向軸Y-Yに対して直角な横軸X-Xに沿って延びる。
【0030】
支持体24は、2本の下側保持ピン39(その一方を図6で見ることができる)、および2本の上側保持ピン40(その一方を図1で見ることができる)をさらに備え、下側保持ピン39および上側保持ピン40は、横軸X-Xと平行に、中心コア30から横方向に突き出ている。
【0031】
下側保持ピン39は、中心コア30における長手方向軸Y-Yに沿ってヘッド32から遠くの部分から縦軸Z-Zに沿ってヒンジピン38と同じレベルで延びる。
【0032】
上側保持ピン40が、縦軸Z-Zに沿ってヒンジピン38の下で延びる。
【0033】
下側保持ピン39および上側保持ピン40は、横軸X-Xに沿ってヒンジピン38よりも小さい横方向範囲を有する。
【0034】
針22に面する支持体24の側において、支持体24は、支持体24の長さに沿って延びる支持プレート42を有する。ヘッド32は、長手方向軸Y-Yに沿ってこの支持プレート42から突き出ている。
【0035】
針22の反対側の支持体24の側において、支持体24は、引抜き機構50をロックするためのバー44を有する。バー44は、長手方向軸Y-Yに沿って、ヘッド32の反対側において、中心コア30上で延びる。それは、横軸X-Xに平行な方向に、中心コア30の両側から横方向に突き出ている。
【0036】
本発明による注射デバイス10は、針支持体24に恒久的に接続され、かつそれに対して、図1から図5で示される非活動状態の引抜き機構位置と、図6から図8で示される活動状態の引抜き機構50位置と、の間で移動可能である針22引抜き機構50を備える。
【0037】
引抜き機構50は、ベース52と、ベース52に対して摺動可能に取り付けられたプランジャ54と、を含む。ベース52は、支持体24に対して移動することができ、特に、関節ピン38回りで、支持体24に対して関節式連結されている。
【0038】
ベース52は、プランジャ54の循環通路58の範囲を定めるスリーブ56を備える。
【0039】
引抜き機構50が非活動位置にあるとき、スリーブ56は、実質的に長手方向軸Y-Yに平行な方向に延びる。
【0040】
引抜き機構50が、活動位置へと傾いたとき、スリーブ56は、実質的に縦軸Z-Zに平行な方向に延びる。
【0041】
スリーブ56は、支持体の中心コア30の幅に相当する幅にわたって横方向に開いている。スリーブ56はまた、内部通路58の中へと、その上面において開口している保持キャビティ59を画定する。
【0042】
ベース52はまた、中心コア30の回りに係合するのに適した、この開口部の両側においてスリーブ56を延長している2つの側面60を備える。側面60は、2つの関節孔62を有し、その中に関節ピン38が、中心コア30上でベース52の関節動作を行うために受け入れられる。
【0043】
関節軸は、ヘッド32の近傍において、横軸X-Xに対して平行であり、したがって、傾斜した位置では、ヘッド32は、図7で示されるように、通路58の中へと延びる。
【0044】
側面はまた、側面60の内面へと開口している、図7で見ることのできる2つの下側保持孔63と、図1で見ることのできる2つの上側保持孔64と、を有する。
【0045】
下側保持孔63は、引抜き機構50が非活動位置にあるとき、下側保持ピン39を受け入れるように適合され、したがって、引抜き機構50を非活動位置に一時的に保持することが可能になる。
【0046】
同様に、上側保持孔64は、引抜き機構50が活動位置にあるとき、上側保持ピン40を受け入れるように適合され、したがって、引抜き機構50を活動位置に一時的に保持できるようにする。
【0047】
ベース52は、ヘッド32の反対側の端部において、スリーブ56から突き出た2つの側方指受け台65をさらに含む。
【0048】
プランジャ54は、通路58内に受け入れられ、図1から図7で示される針使用位置と、図8で示される針引抜き位置と、の間で摺動可能である。
【0049】
プランジャ54は、ベース52内で摺動可能に取り付けられた外側部材70と、外側部材70と伸縮式に外側部材70に摺動可能に取り付けられた内側部材72と、を備える。プランジャ54は、可撓性のある連結機構をさらに含む。
【0050】
外側部材70は、内部通路58のものと相補的な横断面を有する中空化されたスリーブである。この断面は、丸みを帯びたコーナを備えた実質的に矩形である。
【0051】
外側部材70は、ヘッド32の近くに位置する前端部74において、またヘッド32から離れて位置する後端部76において開いている。外側部材70は、前端部74および後端部76において開口している内側通路78を画定する。
【0052】
外側部材70は、その前端部74の周囲に外側肩部79と、前端部74の近くの上面から突き出ている保持ピン80と、を画定する。保持ピン80は、針22の使用位置において、キャビティ59の中に挿入するのに適している。外側肩部79は、保持ピン80がキャビティ59の中に受け入れられたとき、スリーブ56の前縁に対して当たるように適合される。
【0053】
外側部材70は、針支持体24に向けて方向付けられ、前端部74から後端部76へと開き、内側通路78の中へと開口している外側スロット90を画定する。外側スロット90は、バー44の長さよりも大きい幅を有する。
【0054】
内側部材72は、内側通路78のものと相補的な横断面を有する中空化されたスリーブである。この断面は、実質的に丸みを帯びたコーナを有する矩形である。
【0055】
内側部材72は、開いた前端部92と、後方の指受け台96を備える後端部94と、を有する。内側部材72は、前端部92において開口している内部空間98を画定する。
【0056】
内側部材72は、針支持体24に向けて方向付けられた内側スロット100をさらに画定する。内側スロット100は、前端部92から後端部94へと開いており、内部空間98の中に開口している。内側スロット100は、バーの長さ未満の幅を有する。
【0057】
内側部材72は、プランジャ54の長手方向軸に沿って、外側部材70の内側通路78の中で摺動可能に取り付けられる。内側部材72は、したがって、図1から図3で示される格納プランジャ54構成から、プランジャ54の長さが格納構成におけるものよりも大きい、図4から図8で示される展開プランジャ54構成へと移動可能である。
【0058】
プランジャ54が展開構成にあるとき、外側部材70の内側通路78、および内側部材72の内部空間98は、図8で示されるように、プランジャ54によって画定される連続する内部の針22受入れ空間を形成する。
【0059】
バー44、外側スロット90、および内側スロット100は、非活動位置における、ベース52に対する一時的な固定組立体を形成する。
【0060】
一時的な固定組立体は、図3で示すように、プランジャ54が格納構成にあるとき活動状態にある。バー44は、内部空間98の中へと延びて、外側スロット90および内側スロット100を介して係合される。バー44の長さは、内側スロット100の幅よりも大きいので、バー44は、支持体24から離れてプランジャ54が移動するのを妨げる。ベース52は、したがって、引抜き機構50の非活動位置に固定される。
【0061】
一時的な固定組立体は、図5で示すように、プランジャ54が、格納構成から展開構成へと移動したとき、非活動化される。この構成では、内側部材72は、バー44から離れて長手方向軸Y-Yに沿って移動している。バー44は、この場合、バー44の長さよりも広い外側スロット90に係合されるだけである。ベース52は、次いで、引抜き機構50の活動位置へと移動することができる。
【0062】
連結機構は、プランジャ54が展開構成にあるとき、内側部材72を、外側部材70に対するその動きにおいて、ロックするのに適している。
【0063】
可撓性のある連結機構は、後端部76における上面において、外側部材70により担持される上側スナップイン式タブ82を備える。上側スナップイン式タブ82は、内側通路78に面するその自由端に歯を担持する。
【0064】
可撓性のある連結機構は、2つの側面に沿って、内側部材72により担持される2つの横方向スナップイン式タブ102をさらに備え、各横方向スナップイン式タブ102は、外側に向いた歯を自由端に担持する。連結機構は、図3および図5で示される、外側部材70の側面に画定された前方窪み84および後方窪み86を備える。
【0065】
横方向スナップイン式タブ102の歯は非対称である、すなわち、それらは、阻止側と通過側とを有する。例えば、阻止側の法線は、横方向スナップイン式タブ102と実質的にゼロの角度を形成するが、通過側の法線は、スナップイン式タブ102と30°と60°の間の角度を形成する。
【0066】
可撓性のある連結機構はまた、内側部材72の上面にわたって延びる傾斜部106と、上側窪み108と、を含み、傾斜部106は、その上端において上側窪み108の範囲を定める。
【0067】
展開構成では、図5で示すように、横方向スナップイン式タブ102により担持される歯のそれぞれは、後方窪み86の1つにより受け入れられ、また上側スナップイン式タブ82により担持される歯は、図4で示されるように上側窪み108により受け入れられる。
【0068】
有利には、可撓性のある連結機構は、プランジャ54が格納構成にあるとき、外側部材70に対して内側部材72を一時的に保持するのに適している。
【0069】
一時的に保持するということは、プランジャ54が格納構成を離れるために必要な力は、プランジャ54が、ユーザによる操作なしに展開構成を離れないようにするには十分高いが、プランジャが格納位置を離れるとき、ユーザによるこのような操作が、注射デバイス10を揺らさないように十分低いことを意味する。この力は、6Nと10Nとの間であると有利である。
【0070】
格納構成において、横方向スナップイン式タブ102により担持される歯のそれぞれは、外側部材72により画定される前方窪み84の1つにより受け入れられる。プランジャ54が格納構成から展開構成に移動するとき、歯のそれぞれの通過側が、前方窪み84の縁部に当たり、ユーザが内側部材72を引っ張ったとき、歯が、前方窪み84から出て移動することができ、必要な手間が低減される。
【0071】
反対に、プランジャ54が展開構成にあるとき、横方向スナップイン式タブ102により担持される歯のそれぞれは、後方窪み86の1つにより受け入れられる。歯のそれぞれのロック側は、後方窪み86の縁部に当たり、歯が後方窪み86から外に移動しないようにする。可撓性のある連結機構は、したがって、展開構成から離れる内側部材72の動きに抗う。
【0072】
注射デバイス10を動作させるための、より具体的には、針22を取り外すための方法が次に述べられる。
【0073】
注射デバイス10は、最初は、図1から図3で示される構成にあり、針22は、患者の皮膚12を介して、下にある植込み可能なチャンバ11へと通っている。支持プレート42は、患者の皮膚上に載っている。
【0074】
プランジャ54は、その格納構成にあり、また引抜き機構は、非活動位置にある。プランジャ54は、長手方向軸Y-Yに対して実質的に平行に延びる。
【0075】
プランジャ54は、針22使用位置にあり、外側部材70の前端部74の肩部がヘッド32の近くで、スリーブ56の前部に当たっている。保持タブ80は、針22使用位置において、プランジャ54を保持するように、保持キャビティ59内に係合される。
【0076】
側方スナップイン式タブ102の歯は、前方窪み84の中に係合され、プランジャ54を格納構成に保持する。
【0077】
バー44は、内側部材72の内部空間98に位置し、重なっている内側スロット100と外側スロット90との両方に係合される。バー44の長さは、内側スロット100の幅よりも大きいので、バー44は、中心コア30に対してプランジャ54を完全にロックし、ベース52が活動位置へと傾斜するのを阻止する。
【0078】
プランジャ54の長さは、格納位置では最小化されて、デバイス10が患者を妨げないようにする。
【0079】
第1のステップでは、ユーザは、その格納構成から、図4から図8で示されたその展開構成へとプランジャ54を移動させるために、後方の指受け台96により内側部材72を引っ張る。
【0080】
内側部材72は、軸Y-Yに沿って、外側部材70の中へと摺動する。プランジャ54の長さは増加し、したがって、それは、展開構成において、格納構成長さの120%を超える、好ましくは、125%を超えるようになる。
【0081】
横方向スナップイン式タブ102の歯は、前方窪み84から延び、次いで、展開構成における後方窪み86に係合する。掛止歯は、傾斜部106に沿って移動し、展開構成において、上側窪み108に係合する。連結機構は、次いで、プランジャ54を展開構成にロックする。
【0082】
バー44は、内側スロット100から解放され、外側スロット90に係合するだけである。それは、プランジャ54をもはや中心コア30にロックしていない。底部保持ピン39は、底部保持孔63に係合され、かつ非活動位置にベース52を保持する。
【0083】
第2のステップでは、ユーザが、ベース52を、保持ピンの回りで、非活動位置から活動位置へと傾ける。図6から図8で示される活動位置では、プランジャ54は、縦軸Z-Zに対して、実質的に平行に延びる。
【0084】
ヘッド32は、その場合、内側通路78に受け入れられる。上側保持ピン40は、ベース52を活動位置に固定するように、上側保持孔64に係合される。
【0085】
第3のステップでは、ユーザは、プランジャ54を通路58内で摺動させるために、親指で後方の指受け台96を押し、一方で、2本の他の指で側方指受け台65を保持する。プランジャ54は、次いで、図6および図7で示される針22使用位置から、図8で示される針22引抜き位置へと移動される。
【0086】
針22使用位置から針22引抜き位置へと移動するとき、保持ピン80は、ユーザにより保持キャビティ59から押し出される。
【0087】
外側部材70の前端部74の肩部は、次いで、患者の皮膚に当たって、十分な受け表面を提供し、またユーザがプランジャ54を押すと、ベース52がプランジャ54を上に移動させて、針22を患者の体から引き抜くようにする。プランジャ54は、針22を徐々に包む。
【0088】
針22引抜き位置において、針22のメインセクション35は、プランジャ54受入れ空間内で完全に延び、前端部74は自由端28を越える。こうすることは、偶発的につついてしまう何らかの危険を阻止することによりユーザを保護する。
【0089】
引抜き機構50は、プランジャ54が格納位置にあり、短い長さを有するときは特に、このような注射デバイス10で占める空間が少ないことが考えられる。これは、患者の皮膚上で注射デバイスにより占有される空間を低減し、したがって、薬物溶液の注射中に、操作エラーを起こす危険を低下させ、同様に、プランジャ54の揺れ作用により生ずる傾斜(tipping)の危険を低下させる。注射デバイス10の低減された寸法はまた、患者の快適さを向上させる。
【0090】
加えて、デバイス10は、複数のスナップイン式タブ、および関連する窪みからなる可撓性のある連結機構を備え、それは、プランジャが、確実に、効率的な引抜きを行えるように、展開構成において安全にロックされるようにする。
【0091】
最後に、非活動位置においてベース52を一時的に固定することは、可撓性のある連結機構によりプランジャを格納構成に一時的に保持することと組み合わせて、操作者による外部的な操作を行うことなく、ベース52およびプランジャ54が確実に非活動状態に留まることを可能にする。これは、操作者が間違える危険をさらに低減する。
【符号の説明】
【0092】
10 注射デバイス
11 植込み可能なチャンバ
12 患者の皮膚
13 貯蔵器
14 膜
22 注射針
22 針
24 針支持体
28 自由端
30 中心コア
31 導管
32 ヘッド
34 肘部
35 メインセクション
36 接続セクション
38 ヒンジピン、関節ピン
39 下側保持ピン、底部保持ピン
40 上側保持ピン
42 支持プレート
44 バー
50 引抜き機構
52 ベース
54 プランジャ
56 スリーブ
58 内部通路、循環通路
59 保持キャビティ
60 側面
62 関節孔
63 下側保持孔、底部保持孔
64 上側保持孔
65 側方指受け台
70 外側部材
72 内側部材
74 前端部
76 後端部
78 内側通路
79 外側肩部
80 保持ピン、保持タブ
82 上側スナップイン式タブ
84 前方窪み
86 後方窪み
90 外側スロット
92 前端部
94 後端部
96 後方の指受け台
98 内部空間
100 内側スロット
102 横方向スナップイン式タブ、側方スナップイン式タブ
106 傾斜部
108 上側窪み
X-X 横軸
Y-Y 長手方向軸
Z-Z 縦軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】