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特開2022-145697落下速度均一性、落下質量均一性及び落下編成を改善するための方法、システム及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145697
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】落下速度均一性、落下質量均一性及び落下編成を改善するための方法、システム及び装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20220926BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022112934
(22)【出願日】2022-07-14
(62)【分割の表示】P 2019217953の分割
【原出願日】2014-11-17
(31)【優先権主張番号】14/152,728
(32)【優先日】2014-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502122794
【氏名又は名称】フジフィルム ディマティックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】パンチャワフ リシケシュ ヴィ
(72)【発明者】
【氏名】メンゼル クリストフ
(57)【要約】
【課題】マルチレベル波形で液滴吐出装置を駆動するための方法及びシステムを提供する。
【解決手段】液滴吐出装置を駆動する方法は、マルチレベル波形を液滴吐出装置に付与することを含む。マルチレベル波形は、少なくとも1つの補償縁を有する第1区分、及び少なくとも1つの駆動パルスを有する第2区分を含む。補償縁は、液滴吐出装置にわたる液滴速度又は液滴質量の系統的変動に対する補償作用を有する。別の実施形態では、補償縁は、液滴吐出装置間のクロストークに対する補償作用を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチレベル波形の少なくとも1つのパルスに関連した補償縁又は補償パルスを有する
マルチレベル波形を発生し、その補償縁又はパルスは、液滴パラメータの空間的分布に基
づいて選択され、そして複数の液滴吐出装置にわたる系統的な変動を補償するために補償
作用を有し;及び
前記複数の液滴吐出装置の少なくとも1つに前記マルチレベル波形を使用して1つ以上
の液滴を吐出する;
ことを含む方法。
【請求項2】
前記液滴パラメータの空間的分布は、前記複数の液滴吐出装置にわたる液滴速度の空間
的分布を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液滴パラメータの空間的分布は、前記複数の液滴吐出装置にわたる液滴質量の空間
的分布を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
プリントヘッド又はインクジェットシステムの複数の液滴吐出装置にわたる液滴パラメータの空間的分布を決定し;
前記液滴パラメータの空間的分布に基づいて前記マルチレベル波形の画像ピクセルレベ
ルをマッピングするためのマッピングを決定し;
前記空間的分布内の前記複数の液滴装置の第1及び第2のグループを識別し;及び
前記第1グループのピクセルが前記マルチレベル波形の第1レベルに留まる間に前記第
2グループのピクセルを前記マルチレベル波形の第2レベルへ変換する;
ことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記補償縁又はパルスは、前記液滴吐出装置の第2グループにより吐出される液滴の落
下速度を上げ下げする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記補償縁又はパルスは、前記液滴吐出装置により吐出される液滴の落下編成を改善す
る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
インクジェットモジュールを備え、該モジュールは、
流体の液滴を吐出するための複数の液滴吐出装置;及び
前記複数の液滴吐出装置に結合された制御回路;
を備え、動作中に、前記制御回路は、前記複数の液滴吐出装置にマルチレベル波形を付与
することにより前記複数の液滴吐出装置を駆動し、前記マルチレベル波形は、少なくとも
1つの補償縁を有する第1区分、及び少なくとも1つの駆動パルスを有する第2区分を含
み、前記少なくとも1つの補償縁は、前記複数の液滴吐出装置にわたる液滴パラメータの
系統的変動を補償するために補償作用を有する、プリントヘッド。
【請求項8】
前記制御回路は、複数の液滴吐出装置にわたる液滴吐出パラメータの空間的分布を決定
し、そしてその液滴吐出パラメータの空間的分布に基づいてマルチレベル波形の画像ピク
セルレベルをマッピングするためのマッピングを決定する、請求項7に記載のプリントヘ
ッド。
【請求項9】
前記液滴吐出パラメータの空間的分布は、前記複数の液滴吐出装置にわたる液滴速度の
空間的分布を含む、請求項8に記載のプリントヘッド。
【請求項10】
前記液滴吐出パラメータの空間的分布は、前記複数の液滴吐出装置にわたる液滴質量の
空間的分布を含む、請求項8に記載のプリントヘッド。
【請求項11】
前記制御回路は、前記空間的分布内の前記複数の液滴吐出装置の第1及び第2のグルー
プを識別し、そして前記第1グループのピクセルが前記マルチレベル波形の第1レベルに
留まる間に前記第2グループのピクセルを前記マルチレベル波形の第2レベルへ変換し、
前記第1区分は、複数の補償縁又は複数の補償パルスを含む、請求項8に記載のプリント
ヘッド。
【請求項12】
前記少なくとも1つの補償縁は、前記液滴吐出装置により吐出される液滴の落下質量を
増加又は減少させる、請求項7に記載のプリントヘッド。
【請求項13】
前記少なくとも1つの補償縁は、前記液滴吐出装置により吐出される液滴の落下編成を
改善する、請求項7に記載のプリントヘッド。
【請求項14】
前記少なくとも1つの補償縁は、前記液滴吐出装置により吐出される液滴の周波数応答
変動を減少する、請求項7に記載のプリントヘッド。
【請求項15】
複数の液滴吐出装置の画像データを決定し;
その画像データを変換データへと変換して、第1及び第2レベルを有する画像バッファ
に記憶し;
前記変換データを処理して、クロストーク影響データを決定し;及び
マルチレベル波形を前記複数の液滴吐出装置に付与する;
ことを含み、前記マルチレベル波形は、少なくとも1つの補償縁を有する第1区分、及び
少なくとも1つの駆動パルスを有する第2区分を含み、前記少なくとも1つの補償縁は、
複数の液滴吐出装置にわたるクロストーク変動を補償するために補償作用を有するもので
ある、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液滴の吐出に関するもので、より詳細には、マルチレベル画像マッピングを経て補償パルスを付与して、落下速度均一性、落下質量均一性、及び落下編成を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出装置は、種々の目的、最も一般的には、種々の媒体に画像をプリントするために使用されている。液滴吐出装置は、しばしば、インクジェット又はインクジェットプリンタとも称される。ドロップオンデマンド(drop-on-demand)の液滴吐出装置は、融通性や経済性があるために多くの用途で使用されている。ドロップオンデマンド装置は、特定の信号、通常は、単一パルス又は複数パルスを含む電気的波形に応答して1つ以上の液滴を吐出する。液滴を生成するためにマルチパルス波形の異なる部分を選択的にアクチベートすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
液滴吐出装置は、典型的に、流体供給源からノズル経路へ至る流体経路を備えている。ノズル経路は、液滴が吐出されるノズル開口で終る。インクジェットプリントヘッドは、高度に結合された電気的、機械的及び流体的振舞いを示し、そして製造上の変動、クロストーク、荷重及び固有振動数応答から生じる非均一性に敏感である。従って、非常に多数の至近離間ノズルを有するプリントヘッドにわたって落下速度及び質量分布に非均一性が存在する。出力パターンの品質に対するこれら非均一性の影響を低下させることが望まれる。以前の解決策は、製造公差を厳格化するか、又は増幅器及びスイッチのような付加的な電子装置を含んで、個別の波形を使用して種々のノズルを駆動し、変動を補償することである。しかしながら、これら以前の解決策は、付加的な電子装置のために実施するのに多くの費用がかかると共に、個別の波形のためにより多くの時間を要する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
マルチレベル波形で液滴吐出装置を駆動するための方法及びシステムがここに説明される。ある実施形態において、液滴吐出装置を駆動する方法は、マルチレベル波形内の少なくとも1つのパルスに関連した補償縁を有するマルチレベル波形を発生することを含む。その補償縁は、液滴パラメータの空間的分布に基づいて選択され、そして液滴吐出装置にわたる系統的変動を補償するために補償作用を有する。この方法は、液滴吐出装置の少なくとも1つにマルチレベル波形を使用して、1つ以上の液滴を吐出することを含む。
【0005】
別の実施形態において、液滴吐出装置を駆動する方法は、液滴吐出装置の画像データを決定し、その画像データを変換データへ変換して第1及び第2レベルを有する画像バッファに記憶し、その変換データを処理してクロストーク影響データを決定し、そしてマルチレベル波形を液滴吐出装置に付与することを含む。マルチレベル波形は、少なくとも1つの補償縁を有する第1区分と、少なくとも1つの駆動パルスを有する第2区分とを含む。少なくとも1つの補償縁は、液滴吐出装置にわたるクロストーク変動を補償するために補償作用を有する。
【0006】
本発明は、添付図面に一例として示されるが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態によるインクジェットシステムのブロック図である。
図2】一実施形態による圧電インクジェットプリントヘッドを示す。
図3】一実施形態によりインクの液滴を基板に吐出して画像をレンダリングするための圧電ドロップオンデマンドプリントヘッドモジュールを示す。
図4】一実施形態によりプリントヘッド又はインクジェットシステム内の液滴吐出装置をマルチレベル波形で駆動して、液滴吐出装置にわたる少なくとも1つの液滴パラメータの系統的変動を補償するプロセスのフローチャートである。
図5】一実施形態によるマルチレベル波形500を示す。
図6】一実施形態による複数のダイをもつウェハ及びそれに対応する落下速度の空間的分布を示す。
図7】一実施形態による補償パルスを伴うマルチレベル波形700を示す。
図8】一実施形態による補償パルスを伴うマルチレベル波形800を示す。
図9】一実施形態による補償パルスを伴うマルチレベル波形900を示す。
図10】一実施形態による補償パルスを伴うマルチレベル波形1000を示す。
図11】一実施形態による補償パルスを伴うマルチレベル波形1100を示す。
図12】一実施形態による補償パルスを伴うマルチレベル波形1200を示す。
図13】一実施形態により液滴吐出装置間のクロストークを補償するためにプリントヘッド又はインクジェットシステム内の液滴吐出装置をマルチレベル波形で駆動するプロセスのフローチャートである。
図14】一実施形態によるマルチレベル波形1400を示す。
図15a】一実施形態により画像データを低密度バッファへ変換するところを示す。
図15b】一実施形態により画像データを高密度バッファへ変換するところを示す。
図16a】一実施形態による補償パルスを伴う1ビット波形を示す。
図16b】ある周波数において落下編成問題を伴う周波数応答グラフである。
図17a】一実施形態による補償パルスを伴う1ビット波形を示す。
図17b】ある周波数において落下編成問題を伴う周波数応答グラフである。
図18a】一実施形態による補償パルスを伴う2ビット波形を示す。
図18b】ある周波数において落下編成問題を伴う周波数応答グラフである。
図19a】一実施形態による補償パルスを伴う2ビット波形を示す。
図19b】ある実施形態において周波数応答変動を伴う周波数応答グラフである。
図20a】一実施形態による補償パルスを伴う2ビット波形を示す。
図20b】ある実施形態において周波数応答変動を伴う周波数応答グラフである。
図21a】一実施形態による補償パルスを伴う2ビット波形を示す。
図21b】ある実施形態において周波数応答変動を伴う周波数応答グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
マルチパルス波形で液滴吐出装置を駆動するための方法及びシステムがここに説明される。ある実施形態において、液滴吐出装置を駆動する方法は、マルチレベル波形内の少なくとも1つのパルスに関連した補償縁を有するマルチレベル波形を発生することを含む。その補償縁は、液滴パラメータの空間的分布に基づいて選択され、そして液滴吐出装置にわたる系統的変動を補償するために補償作用を有する。この方法は、液滴吐出装置の少なくとも1つにマルチレベル波形を使用して、1つ以上の液滴を吐出することを含む。
【0009】
インクジェットモジュール内の液滴吐出変動源は、ジェット内変動、ジェット対ジェット変動、及び流体クロストークを含む。ジェット内変動は、ジェットの周波数応答、画像形式、及びプリント速度に依存する。ジェット対ジェット変動は、製造公差による系統的変動(例えば、圧電特性又は厚みの変動)によって生じる。ジェット間の流体クロストークは、画像パターンに依存する。
【0010】
マルチレベル又はマルチ区分波形は、落下速度のそれら変動を補償するように速度制御補償パルスで設計される。速度制御補償パルスは、落下速度を加速又は減速することができる。ジェット対ジェットのような系統的変動は、画像ピクセルレベルを使用して補償パルスを選択されたジェットに適当に付与するように対処される。周波数及びクロストークに関連した変動は、画像ピクセルレベルと同様に動的に対処される。落下質量変動も修正するために種々の形式の補償パルスを開発することができる。
【0011】
本発明の波形は、液滴吐出装置間の落下速度変動、落下質量変動、クロストーク及び落下編成変動を補償するために補償作用を与える非液滴発射部分を含む。
【0012】
図1は、一実施形態によるインクジェットシステムのブロック図である。インクジェットシステム1500は、圧電又は熱変換器である圧力変換器1510(例えば、ポンピングチャンバー及びアクチュエータ)に電圧を印加する電圧源1520を備えている。インク供給源1530は、流体フローチャンネル1540へインクを供給し、このチャンネルは、変換器へインクを供給する。変換器は、流体フローチャンネル1542へインクを与える。この流体フローチャンネルは、変換器からの圧力を、オリフィス又はノズルを有する液滴発生装置1550へ伝播させ、そして1つ以上の圧力パルスが充分に大きい場合に1つ以上の液滴を発生させる。インクジェットシステム1500のインクレベルは、インク供給源1530への流体接続を通して維持される。液滴発生装置1550、変換器1540及びインク供給源1530は、流体的接地点に結合され、一方、電圧源は、電気的接地点に結合される。
【0013】
図2は、一実施形態による圧電インクジェットプリントヘッドである。図2に示すように、プリントヘッド12の128個の個々の液滴吐出装置10(図2には1つしか示さない)は、個々の液滴吐出装置10の発射を制御するために供給ライン14及び15を経て供給され且つオンボード制御回路(オンボードコントローラ)19により配電される一定電圧により駆動される。外部コントローラ20は、ライン14及び15を経て電圧を供給し、そして付加的なライン16を経てオンボード制御回路19へ制御データ、論理的電力及びタイミング情報を与える。個々の突出装置10により噴射されるインクは、プリントヘッド12の下を移動する基板18にプリント線17を形成するように付与される。基板18は、単一パスモードでは固定のプリントヘッド12を越えて移動するように示されているが、それとは別に、プリントヘッド12は、スキャニングモードでは基板18を横切って移動することもできる。
【0014】
ある実施形態では、プリントヘッド(例えば、プリントヘッド12)は、流体の液滴を吐出するための液滴吐出装置と、この液滴吐出装置に結合された制御回路(例えば、オンボードコントローラ19)とを含むインクジェットモジュールを備えている。動作中に、制御回路は、液滴吐出装置にマルチレベル波形を付与することにより液滴吐出装置を駆動する。マルチレベル波形は、少なくとも1つの補償縁を有する第1区分と、少なくとも1つの駆動パルスを有する第2区分とを含む。補償縁は、プリントヘッドの液滴吐出装置にわたる液滴パラメータ(例えば、液滴速度、液滴質量)の系統的な変動を補償するために補償作用を有する。
【0015】
制御回路及びコントローラ(例えば、外部コントローラ20、処理システム、等)の少なくとも1つは、液滴吐出装置にわたる液滴吐出パラメータの空間的分布を決定しそしてその液滴吐出パラメータの空間的分布に基づいてマルチレベル波形の画像ピクセルレベルをマッピングするためのマッピングを決定するように、インストラクションを実行するか又は動作を遂行する。それとは別に、異なる処理システムが、液滴吐出装置の空間的分布を与え、そして液滴吐出パラメータの空間的分布に基づいてマルチレベル波形の画像ピクセルレベルをマッピングするためのマッピングを決定する。液滴吐出パラメータの空間的分布は、液滴吐出装置にわたる液滴速度の空間的分布を含む。液滴吐出パラメータの空間的分布は、液滴吐出装置にわたる液滴質量の空間的分布を含む。制御回路及びコントローラの少なくとも1つは、空間的分布内の液滴吐出装置の第1及び第2グループを識別し、そして第1グループのピクセルがマルチレベル波形の第1レベルに留まる間に第2グループのピクセルをマルチレベル波形の第2レベルへと変換するように、インストラクションを実行するか又は動作を遂行する。補償縁又はパルスは、液滴吐出装置により吐出される液滴の落下質量を増加又は減少させる。補償縁又はパルスは、液滴吐出装置により吐出される液滴の周波数応答変動を減少することができる。
【0016】
別の実施形態では、プリントヘッドは、流体の液滴を吐出するための液滴吐出装置と、この液滴吐出装置に結合された制御回路とを含むインクジェットモジュールを備えている。動作中に、制御回路は、液滴吐出装置にマルチレベル波形を付与することにより液滴吐出装置を駆動する。マルチレベル波形は、液滴吐出装置にわたるクロストークを補償するために補償作用を伴う補償パルスを有する第1区分と、少なくとも1つの駆動パルスを有する第2区分とを含む。制御回路及びコントローラの少なくとも一方は、液滴吐出装置の画像データを決定し、その画像データを変換データへと変換して第1及び第2レベルを有する画像バッファに記憶し、そしてその変換データを処理してクロストーク影響データを決定する。クロストークのバッファデータの処理は、クロストークの影響を受けるピクセルを識別することを含む。制御回路及びコントローラの少なくとも一方は、クロストークの影響を受ける識別されたピクセルを第3レベルの画像バッファへシフトするようにインストラクションを実行する。少なくとも1つの補償縁又はパルスは、液滴吐出装置により吐出される液滴の落下速度を上昇又は下降させる。
【0017】
図3は、一実施形態によりインクの液滴を基板に吐出して画像をレンダリングするための圧電ドロップオンデマンドプリントヘッドモジュールの断面図である。このモジュール300は、一連の至近離間されたノズル開口を有し、そこからインクを吐出することができる。各ノズル開口302は、圧電アクチュエータ310によりインクを加圧するポンピングチャンバー304を含む流路により作用を受ける。ここに述べる技術では他のモジュールも使用できる。
【0018】
圧電(PZT)アクチュエータ310は、インクポンピングチャンバー上に置かれる。圧電アクチュエータにより加圧されると、インクは、インクチャンバーからディセンダー320を通してKOHノズル開口302から流出する(矢印で示すように)。更に、プリントヘッドのモジュール本体のベースシリコン層330は、図3に示すように、アッセンダー332、フィード334及びポンピングチャンバー304を画成する。インクは、矢印で示すように、フィードからポンピングチャンバーへ流れ込む。
【0019】
ノズルの一部分は、シリコン層336で形成される。ある実施形態では、ノズルシリコン層336がベースシリコン層に溶融結合されて画成される。ノズルシリコン層の反対側では、メンブレーンシリコン層338がベースシリコン層に溶融結合される。
【0020】
PZT層310の上又は下の1つ以上の金属層340及び342は、接地電極及び駆動電極を形成するのに使用される。金属被覆PZT層が接着材層344によりシリコンメンブレーンに接合される。ある実施形態では、接着材は、ポリマー化ベンゾシクロブテン(BCB)であるが、種々の他の形式の接着材でもよい。介在物360及び362は、メンブレーン層及びベース層の開口に向かう入口/出口364をなす。ベース層及びノズル層は、レーザーダイシング基準370をなす。単一のプリントヘッドダイに複数の噴射構造部を形成することができる。ある実施形態では、製造中に、複数のダイが同時に形成される。
【0021】
PZT部材又は要素(例えば、アクチュエータ)は、駆動電子装置(例えば、制御回路)から印加される駆動パルスに応答してポンピングチャンバーの流体圧力を変化させるように構成される。ある実施形態では、アクチュエータは、ノズルからポンピングチャンバーを経て流体の液滴を吐出する。駆動電子装置は、PZT部材に結合される。
【0022】
図4は、一実施形態によりプリントヘッド又はインクジェットシステム内の液滴吐出装置をマルチレベル波形で駆動して、液滴吐出装置にわたる少なくとも1つの液滴パラメータの系統的な変動を補償するプロセスのフローチャートである。このプロセスの動作は、制御回路、コントローラ、処理システム、又はこれらコンポーネントの幾つかの組み合わせで遂行される。ある実施形態では、液滴吐出装置を駆動するプロセスは、ブロック402において、プリントヘッド又はインクジェットシステムの液滴吐出装置にわたる液滴パラメータ(例えば、液滴速度、液滴質量)の空間的分布を決定することを含む。このプロセスは、ブロック404において、空間的分布内で液滴吐出装置の第1及び第2グループを識別する。例えば、液滴速度パラメータについては、第1グループは、速い液滴速度で液滴を吐出する液滴吐出装置を含み、そして第2グループは、ゆっくりとした液滴速度で液滴を吐出する液滴吐出装置を含む。液滴質量パラメータについては、第1グループは、重い液滴質量をもつ液滴を吐出するノズルを含み、そして第2グループは、軽い液滴質量をもつ液滴を吐出するノズルを含む。このプロセスは、ブロック406において、液滴吐出パラメータの空間的分布に基づいてマルチレベル波形の画像ピクセルレベルをマッピングするためのマッピングを決定することを含む。マッピングの決定は、第2グループのピクセルをマルチレベル波形の第2レベルへ変換することを含む。第1グループのピクセルは、デフォールトによりマルチレベル波形の第1レベルに留まるか又は第1レベルへマップされる。このプロセスは、ブロック408において、マルチレベル波形を液滴吐出装置に適用する。マルチレベル波形は、液滴吐出装置にわたる液滴パラメータの系統的変動を補償するために補償作用を伴う少なくとも1つの補償縁又は少なくとも1つの補償パルスを有する第1区分と、少なくとも1つの駆動パルスを有する第2区分とを含む。このプロセスは、ブロック408においてマルチレベル波形が液滴吐出装置の1つ以上に適用されるのに応答して、ブロック410において、液滴吐出装置が液滴を吐出するようにさせる。
【0023】
ある実施形態では、補償パルス又は複数の補償パルスである少なくとも1つの補償縁によって生じる圧力応答波は、少なくとも1つの駆動パルスの圧力波に対して共振(即ち、同相)であるか又はほぼ共振である。それとは別に、補償パルス又は複数の補償パルスである少なくとも1つの補償縁によって生じる圧力応答波は、少なくとも1つの駆動パルスの圧力応答波に対してほぼ反共振(即ち、位相ずれ)である。補償縁又は補償パルスのピーク電圧は、少なくとも1つの駆動パルスのピーク電圧より低い。補償パルスのパルス巾は、少なくとも1つの駆動パルスのパルス巾と同様である。
【0024】
補償縁又は補償パルスは、液滴を吐出しないように設計される。又、補償縁又は補償パルスは、液滴の吐出を回避するために駆動パルスに比して最大電圧振幅が低い。
【0025】
ある実施形態では、各液滴吐出装置は、マルチレベル波形のパルスに応答するか或いは付加的なマルチレベル波形のパルスに応答して、付加的な流体液滴を吐出する。波形は、互いに連結される一連の区分を含む。各区分は、固定期間(例えば、1から3マイクロ秒)及び関連データ量を含むある数のサンプルを含んでいる。サンプルの期間は、駆動電子装置の制御ロジックが次の波形区分に対して各噴射ノズルをイネーブル又はディスエイブルするに充分な長さである。ある実施形態では、波形データは、一連のアドレス、電圧及びフラグビットサンプルとしてテーブルに記憶され、ソフトウェアでアクセスすることができる。波形は、単一サイズの液滴及び種々の異なるサイズの液滴を生成するに必要なデータを与える。例えば、波形は、20キロヘルツ(kHz)の周波数で動作し、そして波形の異なるパルスを選択的にアクチベートすることにより3つの異なるサイズの液滴を生成する。これらの液滴は、ほぼ同じターゲット速度で吐出される。
【0026】
図5は、一実施形態によるマルチレベル波形500を示す。波形の区分1は、補償パルス510を含み、そして区分2は、駆動パルス520を含む。区分1は、波形のほぼ3マイクロ秒の期間に対応し、そして区分2は、波形の残りのほぼ5マイクロ秒に対応する。補償パルス510は、プリントヘッドの液滴吐出装置にわたる系統的変動を補償するために補償作用を有する。補償パルスの発射からその後の駆動パルスの発射までの期間は、ほぼ共振期間である。
【0027】
テーブル1は、波形500の区分マッピングを示す。

テーブル1:区分マッピング

【0028】
図6は、一実施形態による複数のダイをもつウェハ及びそれに対応する落下速度の空間的分布を示す。ダイ602-608は、落下速度の空間的分布610-617を含む。落下速度の空間的分布は、ウェハ600上のダイ位置に依存する系統的シグネチャーを有する。ここに述べる補償パルスは、異なるダイ位置にわたる系統的落下速度変動を補償するように設計される。ある実施形態では、各ダイ位置は、異なるプリントヘッドに対応する。例えば、ダイ602は、一般的にダイにわたり左から右へ低下する落下速度の分布610を含む。落下速度の分布610のゆっくりとした落下速度に対応する液滴吐出装置は、それら液滴吐出装置の落下速度を加速し且つ系統的落下速度変動を減少するために補償パルスで補償される。
【0029】
図7-12は、液滴吐出装置にわたる系統的な落下速度又は落下質量の変動を修正するための異なるタイプのマルチレベル波形を示す。図7は、一実施形態による補償パルスを伴うマルチレベル波形700を示す。この波形は、補償パルス710(例えば、区分1に位置する)、駆動パルス720-760(例えば、区分2に位置する)を含み、そして非液滴発射部分770は、液滴直線化機能を有する噴射直線化縁772と、エネルギー打ち消し機能を有する打ち消し縁774及び776とを含む。駆動パルスは、液滴吐出装置が流体の液滴を吐出するようにさせる。補償パルス710は、液滴吐出装置にわたる系統的な変動を補償するために補償作用を有する。補償パルスそれ自体は、液滴を発射しない。補償パルス710は、1つ以上のその後の駆動パルスの落下速度及び落下質量を増加するために液滴吐出装置にエネルギーを付加する。補償パルスの発射からその後の駆動パルスの発射までの期間は、駆動パルスの共振期間とほぼ共振である。
【0030】
図8は、一実施形態による補償パルスを伴うマルチレベル波形800を示す。この波形は、補償パルス810(例えば、区分1に位置する)、駆動パルス820-860(例えば、区分2に位置する)を含み、そして非液滴発射部分870は、液滴直線化機能を有する噴射直線化縁872と、エネルギー打ち消し機能を有する打ち消し縁874及び876とを含む。補償パルス810は、プリントヘッドの液滴吐出装置にわたる系統的な変動を補償するために補償作用を有する。補償パルス810は、1つ以上のその後の駆動パルスの落下速度及び落下質量を減少するために液滴吐出装置へのエネルギーを減少する。補償パルスの発射からその後の駆動パルスの発射までの期間(例えば、補償パルスの先縁から駆動パルスの先縁まで、補償パルスの下降縁から駆動パルスの下降縁まで)は、駆動パルスの共振期間に比してほぼ位相ずれ(反共振)である。
【0031】
図9は、一実施形態による補償パルスを伴うマルチレベル波形900を示す。この波形は、補償パルス910(例えば、区分1に位置する)、駆動パルス920-960(例えば、区分2に位置する)、及びエネルギー打ち消し機能を有する打ち消し縁970を含む。駆動パルスは、液滴吐出装置が流体の液滴を吐出するようにさせる。補償パルス910は、液滴吐出装置にわたる系統的な変動を補償するために補償作用を有する。補償パルスそれ自体は、液滴を発射しない。補償パルス910は、1つ以上のその後の駆動パルスの落下速度及び落下質量を増加するために液滴吐出装置にエネルギーを付加する。補償パルスの発射からその後の駆動パルスの発射までの期間は、駆動パルスの共振期間とほぼ反共振である。
【0032】
図10は、一実施形態による補償パルスを伴うマルチレベル波形1000を示す。この波形は、補償パルス1010(例えば、区分1に位置する)、駆動パルス1020-1060(例えば、区分2に位置する)、及びエネルギー打ち消し機能を有する打ち消し縁870を含む。補償パルス1010は、液滴吐出装置にわたる系統的な変動を補償するために補償作用を有する。補償パルス1010は、1つ以上のその後の駆動パルスの落下速度及び落下質量を減少するために液滴吐出装置へのエネルギーを減少する。補償パルスの発射からその後の駆動パルスの発射までの期間(例えば、補償パルスの先縁から駆動パルスの先縁まで、補償パルスの下降縁から駆動パルスの下降縁まで)は、駆動パルスの共振期間に比してほぼ位相ずれ(反共振)である。
【0033】
図11は、一実施形態による補償パルスを伴うマルチレベル波形1100を示す。この波形は、補償パルス1110(例えば、区分1に位置する)、駆動パルス1120-1160(例えば、区分2に位置する)、及びエネルギー打ち消し機能を有する打ち消し縁1170を含む。駆動パルスは、液滴吐出装置が流体の液滴を吐出するようにさせる。補償パルス1110は、プリントヘッドの液滴吐出装置にわたる系統的な変動を補償するために補償作用を有する。補償パルスそれ自体は、液滴を発射しない。補償パルス1110は、1つ以上のその後の駆動パルスの落下速度及び落下質量を増加するために液滴吐出装置にエネルギーを付加する。補償パルスの発射からその後の駆動パルスの発射までの期間は、駆動パルスの共振期間とほぼ共振である。
【0034】
図12は、一実施形態による補償パルスを伴うマルチレベル波形1200を示す。この波形は、補償縁1210(例えば、区分1に位置する)、駆動パルス1220-1260(例えば、区分2に位置する)、及びエネルギー打ち消し機能を有する打ち消し縁1270を含む。補償縁1210は、液滴吐出装置にわたる系統的な変動を補償するために補償作用を有する。補償縁1210は、1つ以上のその後の駆動パルスの落下速度及び落下質量を増加するために液滴吐出装置にエネルギーを付加する。補償縁の発射からその後の駆動パルスの同様の縁の発射までの期間(例えば、補償パルスの下降縁から駆動パルスの下降縁まで)は、駆動パルスの共振期間に比してほぼ共振である。
【0035】
図7及び8に示す同じセンスの打ち消しパルス(又は打ち消し縁)の前には、駆動パルス間の1つ以上の遅延の電圧レベルと同様の電圧レベルを有する打ち消し縁遅延がある。図9-12に示す逆のセンスの打ち消しパルス(又は打ち消し縁)の前には、駆動パルス間の1つ以上の遅延の電圧レベルとは異なる電圧レベルを有する打ち消し縁遅延がある。打ち消し縁遅延の電圧レベルは、発射パルスに比して、バイアスレベル又は発射パルス間のレベルに対して、逆方向である。
【0036】
図13は、一実施形態により、プリントヘッド又はインクジェットシステムの液滴吐出装置間のクロストークを補償するためにプリントヘッド又はインクジェットシステム内の液滴吐出装置をマルチレベル波形で駆動するプロセスのフローチャートである。マルチレベル波形は、2のビット深さに対して4つのレベル、3のビット深さに対して8つのレベル、等を有する。ある実施形態では、液滴吐出装置を駆動するプロセスは、ブロック1302において、画像データを決定することを含む。このプロセスは、ブロック1304において、画像データを変換データへと変換して画像バッファに記憶する。例えば、画像バッファは、レベル0及びレベル1を含み、レベル1は、画像データのプリントピクセルに対するものである。このプロセスは、ブロック1306において、変換データをクロストークに対して処理することを含む。変換データの処理は、高いクロストークを有するピクセルを識別し、そしてそれを新たなレベル2へシフトすることを含む。例えば、低密度画像を形成する変換データは、クロストークが低く、一方、高密度画像を形成する変換データは、クロストークが高い。画像データがプリントされ、そしてプリントパターンに対して落下速度が測定される。低い落下速度に対応するプリントパターンからのデータは、レベル2へシフトされる。このプロセスは、ブロック1308において、区分マッピングを伴うマルチレベル波形を液滴吐出装置に付与する。マルチレベル波形は、液滴吐出装置間のクロストークを補償するための補償作用と共に少なくとも1つの補償縁又は少なくとも1つの補償パルスを有する第1区分と、少なくとも1つの駆動パルスを有する第2区分とを含む。このプロセスは、ブロック1308においてマルチレベル波形が液滴吐出装置に付与されるのに応答して、液滴吐出装置が、ブロック1310において、液滴を吐出するようにさせる。
【0037】
ある実施形態では、少なくとも1つの補償縁又は少なくとも1つの補償パルスの圧力応答波は、少なくとも1つの駆動パルスの圧力波に対して共振(即ち、同相)又はほぼ共振である。別の実施形態では、少なくとも1つの補償縁又は少なくとも1つの打ち消しパルスの圧力応答波は、少なくとも1つの駆動パルスの圧力応答波に対してほぼ反共振(即ち、位相ずれ)である。補償パルスのピーク電圧は、少なくとも1つの駆動パルスのピーク電圧より低い。打ち消しパルスのピーク電圧は、少なくとも1つの駆動パルスのピーク電圧より低い。
【0038】
図14は、一実施形態によるマルチレベル波形1400を示す。この波形の区分1は、補償パルス1410を含み、そして区分2は、駆動パルス1420を含む。区分1は、波形のほぼ3マイクロ秒の期間に対応し、そして区分2は、波形の残りのほぼ5マイクロ秒に対応する。補償パルス1410は、液滴吐出装置間のクロストークを補償するための補償作用を有する。補償パルスの発射からその後の駆動パルスの発射までの期間は、ほぼ共振期間である。
【0039】
テーブル2は、波形1400の区分マッピングを示す。

テーブル2:区分マッピング

【0040】
図15aは、一実施形態により画像データを低密度バッファに変換するところを示す。画像データ1510は、変換バッファデータへと変換され、次いで、低密度バッファ1520として記憶される。図15aに示す希薄なパターンでは、修正又は補償を必要としない。
【0041】
図15bは、一実施形態により画像データを高密度バッファに変換するところを示す。画像データ1550は、変換バッファデータへと変換され、次いで、高密度バッファ1560として記憶される。図15bに示す濃密なパターンでは、所与のバッファに対して作動される液滴吐出装置の数を決定するためにリアルタイム分析又は前処理が必要となる。あるノズルパターンのノズルが互いに隣接する場合には、おそらくクロストークが発生して、落下速度を変更する(例えば、落下速度を下げる)。そのようなパターンでは、ピクセルがレベル2へシフトされ、そしてクロストークを補償するために補償パルスでプリントされる。補償パルスは、エネルギーを付加し、落下速度を高めることに注意されたい。補償パルスの振幅を増加すると、望ましい又は最適な落下速度が得られるまで落下速度が上げられる。或いは又、補償パルスは、波形のエネルギーを減少し、そして落下速度を下げる。補償パルスの振幅を減少すると、望ましい又は最適な落下速度が得られるまで落下速度が下げられる。
【0042】
少なくとも1つの補償縁又は補償パルスは、落下質量及び速度の非均一性、並びに落下編成の非均一性を修正することができる。落下編成は、プリントヘッドの持続性に影響する。画像前処理を使用する以前の解決策は、電圧を高めて、より多くの液滴衛星又はサブ液滴を生じさせ、時間と共にプリントヘッドにダメージを及ぼす。
【0043】
図16aは、一実施形態による補償パルスを伴う1ビット波形を示す。この1ビット波形1600は、プレパルス又は補償パルス1610及び駆動パルス1620を含む。補償パルス1610は、波形にエネルギーを付加する。この波形は、一実施形態において図16bに示すように、ある周波数では落下編成問題を受け易い。矢印1650-1655は、ある周波数kHzに対する落下編成問題を示している。
【0044】
図17aは、一実施形態による補償パルスを伴う1ビット波形を示す。この1ビット波形1700は、プレパルス又は補償パルス1710及び駆動パルス1720を含む。補償パルス1710は、波形にエネルギーを付加しない。この波形は、一実施形態において図17bに示すように、ある周波数では落下編成問題を受け易い。矢印1750-1754は、ある周波数kHzに対する落下編成問題を示している。
【0045】
図18aは、一実施形態による補償パルスを伴う2ビット波形を示す。この2ビット波形1800は、プレパルス又は補償パルス1810及び駆動パルス1820を含む。補償パルス1810は、波形にエネルギーを付加する。この波形は、一実施形態において図18bに示すように、落下編成問題を低減する。補償パルスは、第1区分に関連し、一方、駆動パルスは、第2区分に関連する。第1区分は、レベル2へとマップされ、一方、第2区分は、レベル1又は2へとマップされる。落下編成は、図18Bに示すように、プレパルスをレベル2に適用し、そして駆動パルスそれ自体でレベル1を周波数範囲1850-1852に適用することにより、改善される。
【0046】
噴射周波数に基づき波形区分の異なる組み合わせを使用して、より均一な周波数応答を得ることができる。従って、落下速度及び落下量の周波数依存変化を減少することができる。
【0047】
図19aは、一実施形態による補償パルスを伴う2ビット波形を示す。この2ビット波形1900は、プレパルス又は補償パルス1910、駆動パルス1920及び1930、並びに非落下編成部分1940を含む。この波形は、一実施形態において図19bに示すように周波数応答変動を有する。補償パルスは、第1区分に関連し、駆動パルス1920は、第2区分に関連し、そして駆動パルス1930は、第3区分に関連している。周波数応答グラフ1950は、区分2及び3により生成される2パルス液滴を示している。矢印1960は、グラフ1950の左から右への周波数上昇により誘起される周波数応答変動を示している。
【0048】
図20aは、一実施形態による補償パルスを伴う2ビット波形を示す。この2ビット波形2000は、プレパルス又は補償パルス2020、駆動パルス2010及び2030、並びに非落下編成部分2040を含む。この波形は、一実施形態において図20bに示すように周波数応答変動を有する。補償パルスは、第2区分に関連し、駆動パルス2020は、第1区分に関連し、そして駆動パルス2030は、第3区分に関連している。周波数応答グラフ2050は、区分1及び3により生成される2パルス液滴を示している。矢印2060-2062は、グラフ2050の左から右への周波数上昇により誘起される周波数応答変動を示している。
【0049】
図21aは、一実施形態による補償パルスを伴う2ビット波形を示す。この2ビット波形2100は、補償パルス2120、駆動パルス2110及び2130、並びに非落下編成部分2140を含む。この波形は、一実施形態において図21bに示すように周波数応答変動を有する。補償パルスは、第2区分に関連し、駆動パルス2010は、第1区分に関連し、そして駆動パルス2130は、第3区分に関連している。周波数応答グラフ2170は、グレースケール(マルチレベル)プリントで区分1、2及び3により生成される2パルス液滴を示している。レベル2区分マッピングは、矢印2143及び2144で示すように、各々、低い周波数及び最高周波数に使用される。レベル3区分マッピングは、領域2180で示すように、中間周波数に使用される。矢印2142及び2182は、グラフ2170の左から右への周波数上昇により誘起される小さな周波数応答変動を示している。
【0050】
ここに開示する波形は、改善された速度及び質量制御で異なる液滴サイズを好都合に与えるよう広範囲な動作周波数に対して使用することができる。又、この波形は、改善されたプリントヘッド持続性のために少ない周波数応答変動で改善された落下編成も与える。
【0051】
以上の説明は、例示に過ぎず、それに限定されるものではないことが理解されよう。当業者であれば、以上の説明を読んで理解したとき多数の他の実施形態が明らかとなろう。それ故、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその等効物を参照することで決定されねばならない。
【符号の説明】
【0052】
10:液滴吐出装置
12:プリントヘッド
14、15:供給ライン
16:付加的なライン
17:プリント線
18:基板
19:オンボード制御ライン
20:外部コントローラ
300:モジュール
302:ノズル開口
304:ポンピングチャンバー
310:圧電アクチュエータ
320:デッセンダー
330:ベースシリコン層
332:アッセンダー
334:フィード
336:シリコン層
338:メンブレーンシリコン層
340、342:金属層
360、362:介在物
364:入口/出口
1500:インクジェットシステム
1520:電圧源
1530:インク供給源
1540、1542:流体フローチャンネル
1550:液滴発生装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15a
図15b
図16a
図16b
図17a
図17b
図18a
図18b
図19a
図19b
図20a
図20b
図21a
図21b
【手続補正書】
【提出日】2022-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液滴吐出装置を駆動するための方法であって、
プリントヘッド又はインクジェットシステムの複数の液滴吐出装置にわたって、液滴速度又は液滴質量である、液滴吐出パラメータの変動の分布を決定し;
前記分布内の前記液滴吐出パラメータの第1変動を有する液滴を吐出する前記複数の液滴吐出装置の第1グループと前記分布内の前記液滴吐出パラメータの第2変動を有する液滴を吐出する前記複数の液滴吐出装置の第2グループとを識別し、この場合、前記第1変動は速い液滴速度を表し、前記第2変動はゆっくりとした液滴速度を表すか、又は前記第1変動は重い液滴質量度を表し、前記第2変動は軽い液滴質量を表し、そして、前記第1変動及び前記第2変動の相違は前記複数の液滴吐出装置にわたって前記液滴吐出パラメータの系統的変動を表し;
複数の液滴吐出装置にわたって、前記滴吐出パラメータの変動の分布に基づくマルチレベル波形のマッピングを決定し、この場合、該マッピングは、少なくとも1つの補償パルスを含む前記マルチレベル波形の第1区分が前記マルチレベル波形の第2レベルにマッピングされ、かつ前記マルチレベル波形の第1レベルにはマッピングされず、そして少なくとも1つの補償パルスを含む前記マルチレベル波形の第2区分が前記マルチレベル波形の第1レベル及び第2レベルにマッピングされる、ことを示しており、そして、
前記液滴吐出パラメータの第1変動を有する1つ以上の液滴を吐出するように液滴吐出装置の前記第1グループに前記補償パルスを有しない前記少なくとも1つの駆動パルスを有する前記マルチレベル波形の前記第1レベルを付与するとともに、前記1つ以上の液滴を吐出するように液滴吐出装置の前記第2グループに前記少なくとも1つの駆動パルスと前記補償パルスを有する前記マルチレベル波形の前記第2レベルを付与することによって、前記マルチレベル波形に対する前記区分マッピングによる1組のピクセルのための前記液滴を吐出する前記複数の液滴吐出装置を制御し;
前記複数の液滴吐出装置にわたる前記複数の前記液滴吐出パラメータの変動の分布に基づいて識別され、液滴吐出装置の前記第2グループによって吐出された前記1つ以上の液滴の前記液滴吐出パラメータの前記第2変動を増加又は減少させる補償効果を持つように、前記補償パルスが、前記液滴吐出装置の第2グループに付与されることにより、前記第1変動と第2変動との違い及び前記複数の前記液滴吐出装置にわたる前記液滴吐出パラメータの系統的変動を減少させる、方法。
【請求項2】
前記第2グループに関連するピクセルを前記マルチレベル波形の第2レベルに、そして前記第1グループに関連するピクセルを前記マルチレベル波形の第1レベルにマッピングすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マルチレベル波形は、液滴直線化機能を有する噴射直線化縁と少なくとも1つのエネルギー打ち消し機能を有する打ち消し縁を有する非液滴発射部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの補償パルスは複数の補償パルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
補償パルスの発射からその後の駆動パルスの発射までの期間は、液滴を吐出するための前記複数の液滴吐出装置の駆動パルスの共振期間である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液滴パラメータの周波数応答変動を減少させるために、前記少なくとも1つの駆動パルスを有する前記第2区分と少なくとも1つの駆動パルスを有する第3区分は前記マルチレベル波形の第3レベルにマッピングされ、前記少なくとも1つの補償パルスを有する前記第1区分は前記マルチレベル波形の第3レベルにマッピングされない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数の液滴吐出装置の画像データを決定し;
その画像データを変換データへと変換して、第1レベルと第2レベルを含む画像バッファに記憶し;
前記変換データからクロストーク影響データを決定し、この場合、クロストークに影響されない前記変換データは、前記画像バッファの前記第1レベルに記憶され、そして前記クロストーク影響データは、前記画像バッファの前記第2レベルに記憶されるようになっており;
前記画像バッファの前記第1レベルに記憶された前記クロストーク影響データに関連した前記複数の液滴吐出装置の第1の数を決定し;
前記画像バッファの前記第2レベルに記憶された前記クロストークに影響されないに関連した前記複数の液滴吐出装置の第2の数を決定し;
前記マルチレベル波形を前記複数の液滴吐出装置に付与し;さらに、
前記少なくとも1つの補償パルス無しの前記少なくとも1つの駆動パルスを有する前記マルチレベル波形の前記第1レベルが前記画像バッファの前記第1レベルに関連した前記複数の液滴吐出装置の第1の数に付与され、前記少なくとも1つの補償パルスと前記少なくとも1つの駆動パルスを有する前記マルチレベル波形の前記第2レベルが、前記画像バッファの前記第2レベルに関連した前記複数の液滴吐出装置の第2の数に付与されて、前記クロストークを減少させ、前記複数の液滴吐出装置にわたる周波数応答均一性を増加させるようになっている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
クロストーク影響データを決定することは、前記クロストークにより影響されるピクセルを識別することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
プリントヘッドであって、
インクジェットモジュールを備え、該モジュールは、
流体の液滴を吐出するための複数の液滴吐出装置;及び
前記複数の液滴吐出装置に結合された制御回路;
を備え、
前記制御回路は、
プリントヘッド又はインクジェットシステムの複数の液滴吐出装置にわたって、液滴速度又は液滴質量である、液滴吐出パラメータの変動の分布を決定し;、
前記分布内の前記液滴吐出パラメータの第1変動を有する液滴を吐出する前記複数の液滴吐出装置の第1グループと前記分布内の前記液滴吐出パラメータの第2変動を有する液滴を吐出する前記複数の液滴吐出装置の第2グループとを識別し;、
この場合、前記第1変動は速い液滴速度を表し、前記第2変動はゆっくりとした液滴速度を表すか、又は前記第1変動は重い液滴質量度を表し、前記第2変動は軽い液滴質量を表し、前記第1変動及び前記第2変動の相違は前記複数の液滴吐出装置にわたって前記液滴吐出パラメータの系統的変動を表しており、
複数の液滴吐出装置にわたって、前記滴吐出パラメータの変動の分布に基づくマルチレベル波形のマッピングを決定し;、
この場合、該マッピングは、少なくとも1つの補償パルスを含む前記マルチレベル波形の第1区分が前記マルチレベル波形の第2レベルにマッピングされ、かつ前記マルチレベル波形の第1レベルにはマッピングされず、そして少なくとも1つの補償パルスを含む前記マルチレベル波形の第2区分が前記マルチレベル波形の第1レベル及び第2レベルにマッピングされる、ことを示しており、
前記制御回路は、さらに、前記液滴吐出パラメータの第1変動を有する1つ以上の液滴を吐出するように前記液滴吐出装置の前記第1グループに前記補償パルスを有しない前記少なくとも1つの駆動パルスを有する前記マルチレベル波形の前記第1レベルを付与するとともに、前記1つ以上の液滴を吐出するように前記液滴吐出装置の第2グループに前記少なくとも1つの駆動パルスと前記補償パルスを有する前記マルチレベル波形の前記第2レベルを付与することによって、前記マルチレベル波形に対する区分マッピングによる1組のピクセルのための前記液滴を吐出する前記複数の液滴吐出装置を制御するように構成されており、
前記複数の液滴吐出装置にわたる前記複数の前記液滴吐出パラメータの変動の分布に基づいて識別され、液滴吐出装置の前記第2グループによって吐出された前記1つ以上の液滴の前記液滴吐出パラメータの前記第2変動を増加又は減少させる補償効果を持つように、前記補償パルスが、前記液滴吐出装置の第2グループに付与されることにより、前記第1変動と第2変動との違い及び前記複数の前記液滴吐出装置にわたる前記液滴吐出パラメータの系統的変動が減少されるように構成されている、プリントヘッド。
【請求項10】
前記制御回路は、さらに、前記第2グループに関連するピクセルを前記マルチレベル波形の第2レベルにマッピングし、前記第1グループに関連するピクセルを前記マルチレベル波形の第1レベルにマッピングするように構成されている、請求項9に記載のプリントヘッド。
【請求項11】
前記マルチレベル波形は、液滴直線化機能を有する噴射直線化縁と少なくとも1つのエネルギー打ち消し機能を有する打ち消し縁を有する非液滴発射部分を含む、請求項9に記載のプリントヘッド。
【請求項12】
前記少なくとも1つの補償パルスは複数の補償パルスを含む,請求項9に記載のプリントヘッド。
【請求項13】
補償パルスの発射からその後の駆動パルスの発射までの期間は、液滴を吐出するための前記複数の液滴吐出装置の駆動パルスの共振期間である、請求項9に記載のプリントヘッド。
【請求項14】
前記少なくとも1つの駆動パルスを有する前記第2区分と少なくとも1つの駆動パルスを有する第3区分は前記マルチレベル波形の第3レベルにマッピングされ、前記少なくとも1つの補償パルスを有する前記第1区分は前記マルチレベル波形の第3レベルにマッピングされず、これにより、前記液滴パラメータの周波数応答変動を減少させるようになっている、請求項9に記載のプリントヘッド。
【請求項15】
前記制御回路は、さらに、
複数の液滴吐出装置の画像データを決定し;
その画像データを変換データへと変換して、第1レベルと第2レベルを含む画像バッファに記憶し;
前記変換データからクロストーク影響データを決定し、この場合、クロストークに影響されない前記変換データは、前記画像バッファの前記第1レベルに記憶され、そして前記クロストーク影響データは、前記画像バッファの前記第2レベルに記憶されるように構成されており;
前記制御回路は、さらに、
前記画像バッファの前記第1レベルに関連した前記複数の液滴吐出装置の第1の数を決定し;
前記画像バッファの前記第2レベルに関連した前記複数の液滴吐出装置の第2の数を決定し;
前記マルチレベル波形を前記複数の液滴吐出装置に付与するように構成されており、
前記少なくとも1つの補償パルス無しの前記少なくとも1つの駆動パルスを有する前記マルチレベル波形の前記第1レベルが、前記画像バッファの前記第1レベルに関連した前記複数の液滴吐出装置の前記第1の数に付与され、前記少なくとも1つの補償パルスと前記少なくとも1つの駆動パルスを有する前記マルチレベル波形の前記第2レベルが、前記画像バッファの前記第2レベルに関連した前記複数の液滴吐出装置の前記第2の数に付与されて、前記クロストークを減少させ、前記複数の液滴吐出装置にわたる周波数応答均一性を増加させる、請求項9に記載のプリントヘッド。
【外国語明細書】