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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145698
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/22 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
C07K1/22
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022112994
(22)【出願日】2022-07-14
(62)【分割の表示】P 2018546772の分割
【原出願日】2016-11-25
(31)【優先権主張番号】1520903.4
(32)【優先日】2015-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】516238625
【氏名又は名称】キュービーディー(キューエス-アイピー)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】ルノー ニール
(72)【発明者】
【氏名】ロブ アンドリュー ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】ロブ ジャニーヌ スコット
(72)【発明者】
【氏名】ロブソン デイヴィッド クーパー
(57)【要約】
【課題】抗原に結合できる化合物/分子、例えば抗体型の化合物/分子を、精製、抽出および/または選択することができる方法を開示する。
【解決手段】本方法を使用して、混合組成物から特定のタイプの結合因子を精製、抽出または選択してもよい。本方法を使用して、他の抗原に結合しうる他の因子を含む混合組成物から特定の結合因子を抽出または精製してもよい。本方法により、血液型抗原抗体の精製のための方法としての具体的な適用を得てもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体を精製する方法であって、
抗体の供給源と抗原を発現する細胞とを、抗原と供給源中のいずれかの抗体との間の結合を可能にする条件下で接触させる工程、および
いずれかの結合した抗体を単離する工程
を含む方法。
【請求項2】
精製される抗体が、細胞の抗原またはそれらのエピトープに対して特異的であるまたは選択性、特異性および/または親和性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つまたは複数の抗原を発現する1つまたは複数の細胞を使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
精製しようとする抗体が結合するエピトープを有するまたは内部に保有する抗原を発現する細胞を使用する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記供給源が混合組成物である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記供給源が血液、血液生成物、血清および/または血漿である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記血液、血液生成物、血漿および/または血清が、血液を供与する意思のある対象(供血者)および/または特定の標的に対して抗体を産生するように免疫化された対象由来であるまたはそれらの対象から提供された、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞が赤血球である、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞が支持体、支持基質またはポリマーにコンジュゲートされていない、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
細胞膜断片またはストロマを利用しない、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ある血液型抗原または特定の血液型抗原に対する特異性を有する抗体を精製するために使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
血液型抗体を精製する方法であって、
血液型抗体の供給源と、精製しようとする抗体が結合しうる抗原である血液型抗原を発現する細胞とを、抗原と抗体とが結合できるような条件下で接触させる工程、および
結合した抗体を単離する工程
を含む方法。
【請求項14】
結合した抗体を単離する前記工程が、細胞の表面に吸着したまたは結合した抗体を解離させることおよび/または溶離することを伴う、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記解離/溶離手順が、加温、急速凍結/解凍、超音波槽、細胞溶解、酸ベースの溶離/解離、冷やした酸、有機溶媒、キシレン、クロロホルム、改良された加温/撹拌およびクロロキン二リン酸の使用を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
結合した抗体を単離する前記工程が、溶離緩衝液の使用を伴い、抗体/細胞複合体(洗浄したペレットの中に存在しうる)を前記溶離緩衝液と接触させてもよい、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶離緩衝液が、酸溶離により抗体の解離をもたらすように調合されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記溶離緩衝液が、グリシン-HClおよびNaClを含むか、から本質的になるか、からなる、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が、使用に先立ち、抗原ブロッキングまたは中和のプロセスまたはプロトコールにかけられる、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗原ブロッキングまたは中和のプロセスまたはプロトコールが、精製しようとしていない抗体に結合しうる抗原を遮断または中和する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗原ブロッキングまたは中和のプロセスまたはプロトコールが、ブロッキングまたは中和因子として抗体を使用する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
抗体を精製する方法であって、
抗体の供給源と、精製しようとする抗体に対して特異的な抗原を発現する細胞とを、抗原と供給源中の抗体との間の結合を可能にする条件下で接触させて、抗体/細胞複合体を形成させる工程、
抗体/細胞複合体から抗体を解離させる工程、および
解離した抗体を精製する工程
を含む方法。
【請求項23】
精製しようとする抗体に対して特異的な抗原を含む/発現する細胞を含む、抗体の精製のためのキット。
【請求項24】
前記細胞が1つまたは複数の特異的血液型抗原を発現する赤血球である、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
希釈剤、溶離/中和緩衝液、アフィニティクロマトグラフィーの材料および/または使用説明書をさらに含む、請求項23または24のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、抗体、詳細には、ヒト由来血液型抗体などの結合因子の精製のための方法を提供する。本発明の方法は、供血者および患者試料のヒト赤血球(エリスロサイト)に関して血液型を検出する輸血前血液適合性試験における使用のための(ポリクローナルおよびモノクローナル)抗体の精製に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
混入因子により生じる非特異的結合を低減するために、また、検査システム中に濃縮された抗体量が存在することを確保するために、抗体をある診断システムで使用する前に精製することは通常の業務である。
多くの血液型抗原には、利用可能なモノクローナル抗体発現細胞株はない。したがって、これらのまれな血液型特異的抗体を供給するためには、ポリクローナル物質の獲得および精製が必要とされる。
ヒト血漿は、広範囲の異なる抗原に多重特異性であるIgGアイソフォームなど、様々なタイプのタンパク質を多く含んでいる。現在のモノクローナルな精製方法は、1つの抗原に特異的な抗体の抽出を可能とすることに十分に焦点があてられていない。既存の方法は、溶液から同じサイズ/同じ構造の抗体をすべて適切に抽出するまたは精製することになるが、特異的選択性または親和性を有する抗体を選択的に精製できないことになる。既存のモノクローナル抗体精製プロセスを用いてポリクローナル抗体を精製すると、試料から抗体タイプのほとんど(確実にすべてのIgG抗体)を精製することになる。ここでは、多重特異性を有する抗体を含み、特異的標的と結合しうる抗体は比較的低レベルである生成物が得られることになる。したがって、多量の特異的抗血液型抗原抗体が必要とされる場合には、従来技術のモノクローナル抗体精製手順では、必要な生成物は得られないことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、赤血球上に存在する血液型抗原などのある抗原に特異的な結合因子(例えば、ポリクローナル抗体などの抗体)の精製のための手順が必要とされる。さらに、よりまれな血液型抗原に対する特異性/親和性を有する抗体の場合、必要とされる特異性を有する抗体は、多重血液型抗体を産生する個体の中に存在することが多い。したがって、混合物から、特異的でよりまれな血液型抗体の抽出(精製)を容易にするまたは可能とする方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、抗原に結合しうる化合物/分子、例えば抗体タイプの化合物/分子を、精製、抽出または選択することができる方法を提供する。本明細書に記載の方法を使用して、混合組成物から特定のタイプの結合因子を精製、抽出または選択してもよい。例えば、この方法を使用して、他の抗原に結合しうる他の因子を含む混合組成物から、特定の結合因子を抽出または精製してもよい。
本発明の方法を使用して混合物から任意のタイプの抗原結合因子を精製、抽出または選択することができる一方で、この方法により、抗体を精製、抽出または選択するための方法としての具体的な適用が得られることを理解されたい。したがって、便宜上、本発明は、「抗体」の精製、抽出および/または選択に関するものとして記述することとする。
さらに、本発明の方法を使用して、多様な混合組成物から特定の抗原結合因子/抗体を「精製する」、「抽出する」または「選択する」ことができるが、簡潔に、これらおよびすべての同様の用語を、「精製する」、「精製」および/または「精製すること」というひとつの用語にまとめる。したがって、本発明は、以下、「抗体を精製する方法」に関して記述することとする。
【0005】
結合因子および/または抗体に適用される「特異的な」という用語は、特定の抗原(またはそれらのエピトープ)に結合する結合因子/抗体を包含することを意図している。したがって、「特異的な」抗体または結合因子は、特定の抗原(またはそれらのエピトープ)に結合する抗体または結合因子であってよい。したがって、特異的な結合因子/抗体は、特定の抗原/エピトープに対するある選択性、特異性および/または親和性を示してもよい。したがって、本発明の方法は、特異的な抗体、すなわち特定の抗原またはそれらのエピトープに結合する抗体の精製のための方法を提供する。
同様に、「抗体に対して特異的な抗原」という句は、特定の抗体が結合する抗原を指す。特定の抗体が結合する抗原は、特定の抗体のパラトープが結合する1つまたは複数のエピトープを含む。
本発明は、抗体の精製のための、吸着に基づく方法を提供する。
【0006】
第1の態様において、本発明は、抗体を精製する方法であって、
抗原と供給源中のいずれかの抗体との間の結合を可能にする条件下で、抗体の供給源と抗原を発現する細胞とを接触させる工程、および
いずれかの結合した抗体を単離する工程
を含む方法を提供する。
本発明の方法により精製される抗体は、特異的な抗体であってもよい。すなわち、それらは、特定の抗原に結合する、または特定の抗原またはそれらのエピトープに対する選択性、特異性および/または親和性を示す。
したがって、本発明の方法において使用される細胞により発現される抗原は、精製しようとする抗体に対して特異的であってよい。
【0007】
したがって、本発明は、供給源から(特定の)抗体を精製する方法であって、
抗体の供給源と、精製しようとする抗体に対して特異的な抗原を発現する細胞とを、抗原と供給源中のいずれかの(特定の)抗体との間の結合を可能にする条件下で接触させる工程、および
いずれかの結合した抗体を単離する工程
を含む方法をさらに提供する。
本発明の方法は、抗原特異的抗体を精製する方法とみなしてもよい。
当業者であれば、抗原(例えばタンパク質および/または炭水化物抗原)が1つまたは複数のエピトープを含みうることを認識するはずである。どの任意の宿主内にも、抗原上に存在する1つまたは複数のエピトープに対する特異性を有する抗体がありうる。したがって、本明細書に記載の方法における使用のための細胞は、精製しようとする抗体が結合する抗原(または少なくともそれらの抗原の(エピトープを含む)断片)を含んでもよい。記載のように、本発明の方法の生成物は、事実上、特定の抗原またはエピトープに対する特異性、選択性および/または親和性を有する(単離されたまたは精製された)抗体である。本発明を使用して、必ずしも抗原上の同じエピトープである必要はないが、そのすべてが同じ抗原に結合するポリクローナル抗体を精製してもよい。
【0008】
「細胞」という用語は、本発明の方法が1つまたは複数の細胞を利用してよいと上記で使用していることに留意されたい。細胞の集団を使用する場合、細胞はすべて、同じまたは同様の抗原プロファイルを有する同じタイプであってもよい。あるいは、本発明における使用のための細胞の集団は、2つ以上の異なる細胞のタイプを含む異種集団であってもよい。使用のための細胞集団が異種である場合、集団の各細胞は同じまたは同様の抗原プロファイルを示してもよい。別法として、集団における細胞の抗原プロファイルは多様であってもよく、集団が全体として必要な抗原プロファイルを示してもよい。便宜上、「細胞または細胞(複数)」という用語は、ここで「細胞」という用語で置き換えるとし、よって、「細胞」という用語は、1つまたは複数の細胞(例えば細胞の集団)を意味すると理解されたい。さらに、「抗原を発現する細胞」という用語は、1つまたは複数の特定の抗原を発現する単一の細胞だけなく、1つまたは複数の特定の抗原をそれぞれにまたは集合的に発現する2つ以上の細胞(細胞の集団など)を包含する。本発明における使用のための細胞は、精製しようとする抗体が結合するエピトープをそれ自体が有するまたは内部に保有する抗原を発現するかつ/または内部に保有してもよい。
【0009】
使用のための細胞は、抗原ブロッキングまたは中和の手順またはプロトコールの何らかの方法で処理してもよい。例えば、本発明の方法における細胞の使用に先立ち、細胞表面上にある抗原の1つまたは複数を遮断してもよい。当業者であれば、抗原を遮断するのに利用できる多くの方法があり、この中には、例えば、抗原に結合して中和する結合因子または抗体の使用などがあることを認識するはずである。「中和する」という用語は、抗原に結合して、この抗原(またはそれらの何らかのエピトープ)が他のどの因子とも結合または相互作用できないようにする何らかの因子の使用を意味するものとして使うこととする。抗体は特定の抗原/エピトープに結合でき、このような抗体を使用して、これらの抗原/エピトープを中和することができる。したがって、本発明の方法における使用のための細胞を使用に先立ち、ブロッキング因子、例えば抗体と、接触させるまたはそれらで処理してもよい。このようにして、どの任意の細胞も、細胞が発現する1つまたは複数の抗原が選択的に遮断されうる。追加的に、または別法として、使用のための細胞を、表面上に発現された1つまたは複数の抗原を、抗体が結合できなくなるように処理してもよい。例えば、細胞を、エピトープを除去する酵素または何らかの方法でエピトープを中和するもしくは破壊する酵素と接触させてもよい。抗原の全部または一部を細胞表面から切断してもよい。読者は、いずれの場合も、目的が、精製しようとしていない抗体に結合する抗原だけ中和することであることを認識するはずである。使用者が精製したい任意の抗体に結合する抗原は、それらが自由に抗体に結合するようにそのままにしておく必要がある。ブロッキングの手順またはプロトコールにより、使用のための「遮断された細胞」を得てもよい。本明細書に記載の方法における遮断された細胞の使用により、本発明の方法の選択性/感受性を向上させることができ、使用者は、この方法により所定の結合因子の純粋(または実質的に純粋)な調製物(例えば何らかの血液型特異的抗体)が得られるという強い確信をもって進めることができる。例として、本発明の方法が特定の血液型抗原抗体を精製するために使用される場合、最初に、使用する細胞を、対象ではないまたは精製すべきでない抗体に結合しうる抗原/エピトープを遮断するもしくは中和するまたは破壊するプロセスまたはプロトコールにかけることにより、抗体調製物の混入の可能性を最小限に(またはおそらく(実質的に)排除)することができる。目的は、精製しようとする抗体に結合する当該抗原(例えば当該血液型抗原)を除いて、細胞の抗原プロファイルをほぼ完全に中和することでありうる。
【0010】
「細胞」という用語は、細胞断片、例えば細胞膜調製物または「ストロマ」を包含しないこともある。さらに、「細胞」という用語は、何らかの形態の支持体にコンジュゲートされた本明細書に記載のタイプの細胞を含まないこともある。例えば、この用語は、例えば何らかの形態のポリマー(例えばジアゾアミノ架橋を介するベンゼノイド核を含むポリマー)に結合したまたは会合した細胞またはそれらが変化した断片(例えばストロマ)を含まないこともある。したがって、「細胞」という用語は、コンジュゲートとして調製された、細胞(例えば赤血球)または膜(例えば赤血球膜)を包含しないこともある。
【0011】
本発明の方法によって、抗体の任意の供給源から、特定のタイプの抗体または特定の抗体の精製が可能である。この方法は、特定の結合因子(例えば抗体)の組成物(例えば血漿、血清または同様のもの)の除去に使用されないこともある。言い換えると、この方法は、組成物(例えば血漿、血清または同様のもの)からの特定の結合因子(例えば抗体)の除去に使用されないこともある。
供給源は、複数のタイプの抗体だけでなく他のタンパク質、化合物および分子を含む混合組成物であってもよい。例えば、対象の抗体(すなわち精製しようとする抗体)に加えて、供給源は、異なる抗原/エピトープに対する特異性または親和性を有する抗体をさらに含んでいてもよい。したがって、本発明の方法を使用して、他の抗原親和性/特異性を有する供給源から、特定の抗原に対して特異的な抗体を精製してもよい。
【0012】
本方法を使用して、液体(混合)組成物、例えば、血液および他の血液由来生成物などから、特定のタイプの抗体を精製してもよい。例えば、本方法を使用して、血漿から抗体を精製してもよい。追加的に、または別法として、本方法を使用して、細胞培地などの液体組成物から抗体を精製してもよい。実際、当業者であれば、本出願に記載の方法が幅広い種類の組成物からの抗体の精製に適用できることを認識するはずである。
【0013】
本発明の方法が、ある特異性または親和性を有する抗体を精製または抽出するための供給源として血漿または血清を利用する場合、血漿または血清は、任意の好適なまたは標準的な調製プロトコール用いて、または例えばプラズマフェレシスにより、全血から調製してもよい。特定の技術に縛られることを望むものではないが、血漿を調製するために、全血を採取して抗凝固薬と接触させてもよい。その後、例えば遠心分離により、エリスロサイトおよび血小板を除去または分離してもよい。得られた上清が血漿である。血漿を使用する場合、さらに、(血漿を提供するまたはそこから血漿を得る)対象の血清学的力価を考慮することもある。当業者であれば、対象の血清中に存在する標的抗体(すなわち精製しようとする抗体)が多いほど、より多くの抗体が本発明の方法により得られることを認識するはずである。したがって、ある任意の抗原に対し、方法は最低限の「血清学的力価反応」を考慮してもよい。これは、抗原に対してどのくらいの抗体が循環しているかの指標である。ある閾値未満の血清学的力価反応を示す対象者から得られる供給物質は、十分な抗体を含まないと考えられる。
【0014】
使用のための血漿および/または血清は、血液を供与する対象(供血者)、患者および/または特定の標的に対し抗体を産生するように免疫化された対象を含む、任意の好適な対象に由来であってもまたは提供されてもよい。当業者であれば、抗体の供給源として血清または血漿を使用することにより、精製されたポリクローナル抗体調製物が得られることを認識するはずである。本発明を使用してヒト抗体を精製してもよいが、供給源によっては、本明細書に開示した方法を使用して別の種から抗体を精製することができることを理解されたい。例えば、本方法を使用して、哺乳動物全種類の抗体(例えばウシ、ヒツジ、ウマおよびげっ歯類抗体)を精製してもよい。
【0015】
「抗体」という用語は、ポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体を含んでもよい。ポリクローナル抗体は、抗原またはそれらの抗原機能をもつ誘導体で免疫化された動物の血清由来の抗体分子の異種集団である。ポリクローナル抗体を産生するために、宿主動物、例えばウサギ、ヒツジ、ブタ等を特定の抗原で(おそらく注射して)免疫化する(ここでは、抗原にアジュバントを添加してもよい)。モノクローナル抗体は、特定の抗原またはそれらのエピトープへのまたはこれらに対する特異性/親和性を有する抗体の同種集団である。モノクローナル抗体は、培養中の継代細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技術により得ることができる。これらには、ハイブリドーマ技術(Kohler and Milstein (1975), Nature 256:495-497、および米国特許第4,376,110号)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al., 1983, Immunology Today 4:72; Cole et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:2026-2030)、およびEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., 1985, Monoclonal Anti-bodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.77-96)などがあるが、それらだけに限定されない。
本方法を使用して、例えば、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびそれらの任意のサブクラスを含む、任意の免疫グロブリンクラスの抗体を精製してもよい。
【0016】
本方法を使用して、天然に生じる抗体、例えば、対象により生成されかつその対象の血液および血漿中に存在する、ある特異性または親和性を有する抗体を精製してもよい。本方法を使用して、モノクローナル抗体を精製してもよい。本方法を使用して、抗体断片を精製してもよい。このような場合には、断片は抗原結合部分を含むこととなる。抗体断片はFabフラグメント、単鎖抗体および同様のものを含んでもよい。本方法を使用して、キメラ型抗体および/またはヒト化/表面再構成抗体を精製してもよい。実際に、本方法を使用して、あらゆるタイプの抗体(または結合因子)を精製してもよい。ただ1つの必要条件は、抗体が抗原/エピトープ結合断片、モノクローナル、天然、ポリクローナル、ヒト化、キメラ型または合成抗体(または場合によっては結合因子であることもある)であろうと、その抗体が、細胞により発現される抗原に対する特異性または親和性を示すことである。
【0017】
細胞は、対象の抗体(精製しようとする抗体)が結合する抗原を発現する任意の細胞であってもよい。細胞は、天然に生じる細胞および/または改変されて1つまたは複数の抗原を発現する細胞であってもよい。細胞は、血球、例えば赤血球(エリスロサイト)であってもよい。細胞は、抗体または対象の抗体に結合する1つまたは複数の抗原を発現するように創出された人工細胞であってもよい。「細胞」に加えて、当業者が読めば、別の部分、おそらく合成部分を使用して、これらの方法の吸着段階に影響を与えてもよいことを認識するはずである。例えば特異的抗原(例えば特異的血液型抗原)で被覆した基質(例えばビーズおよび同様のものなど)を使用してもよい。このように、本発明は、細胞を利用する方法に言及することにより記述されているが、本方法では、任意の好適な面もしくは基質に結合させたまたは固定化させた抗原を利用することも可能である。このような場合には、本発明の方法は、抗原と供給源中のいずれかの抗体との間の結合を可能にする条件下で、抗体の供給源を抗原と接触させる最初の工程を含んでもよい。抗原は、好適な面上に固定化してもよい。
【0018】
本発明の方法において使用される細胞が赤血球である場合、本方法を使用して、ある(特定の)血液型抗原に対する特異性を有する抗体を精製してもよい。一般的に、この抗体は「血液型抗体」として知られる。このように、本明細書に記載の方法を使用して血液型抗体を精製してもよい。
したがって、本発明は、血液型抗体を精製する方法であって、
血液型抗体の供給源と、精製しようとする抗体が結合しうる抗原である血液型抗原を発現する細胞とを、抗原と抗体との間の結合を可能にする条件下で接触させること、および
結合した抗体を単離すること
を含む方法を提供する。
【0019】
「血液型抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、血液型抗原に対する特異性および/または親和性を有する任意の抗体を指す。血液型抗原は、赤血球の表面上に存在する一連のマーカーのうちの1つである。これらの抗原のマーカーは、血液型判定の手段として用いられることが非常に多い。例えば、ABO式血液型判定は、赤血球の表面上の「A」および/または「B」型抗原が存在するかしないかに基づく。抗原型「A」を発現するこれらの赤血球は、血液型「A」に属するとみなされる。抗原型AおよびBを発現するこれらの赤血球は「AB」型であると分類される。AおよびB抗原のどちらも欠く赤血球は「O」型と分類される。さらに、赤血球は、Rh陽性または陰性のいずれかとして分類されることも多い。この場合もまた、Rh(「D」)抗原が存在するかしないかに依存しており、「D」抗原を発現する細胞はRh陽性と分類される。「血液型抗原」という用語は、本明細書において使用される場合、ABO、MNS、P1Pk、RH、LU、KEL、LE、FY、JK、DI、YT、XG、SC、DO、CO、LW、CH/RG、H、XK、GE、CROM、KN、IN、OK、RAPH、JMH、I、GLOB、GIL、PHAG、FORS、JR、LAN、VELおよびCD59式のいずれか1つに属するとして分類される(本明細書に既載の抗原のいずれかを含む)任意の抗原を包含する。血液型抗原の分類および型の全リストは、以下のウェブサイトでみることができる(その全内容は参照により本明細書に組み込む)。http://www.isbtweb.org/fileadmin/user_upload/files-2015/red%20cells/links%20tables%20in%20introduction%20text/Table%20blood%20group%20antigens%20within%20systems%20v4.0%20141124.pdf
本発明の方法は、本明細書に記載の抗体を含む、任意のタイプの血液型抗原に対して特異的なまたは親和性を有する抗体を精製する手段として利用してもよい。
【0020】
本発明は、具体的にはヒト抗体に関して記述されているが、本明細書に記載の方法を適用して、他の種から抗体を精製してもよいということに留意されたい。実際、種に拘わらず、原理は同じである。つまり、精製しようとする抗体の供給源(その供給源は動物からの血漿であってもよい)と、精製しようとする抗体が結合する抗原を発現する細胞とが必要である。
本発明の方法により得られた抗体は(ポリクローナルとモノクローナルのいずれにせよ)、様々な適用が可能である。例えば、これらは、実験上、治療上、予防上および/または診断上の有用性を有してもよい。赤血球を使用して血液型抗原に対する特異性/親和性を有する抗体を精製するこれらの方法により、供血者および患者試料のヒト赤血球上の血液型の検出のための輸血前血液適合性試験に適用できる抗体を得てもよい。
【0021】
抗体供給源が(ヒト)血漿である場合、血漿には広範囲の異なる抗原に多重特異性であるIgGアイソフォームなど、様々なタイプのタンパク質が多く含まれることを理解しておく必要がある。さらに、一部のよりまれな血液型抗原に対する抗体は、多重血液型抗体を産生する個体により作られることが多い。したがって、本発明の方法は、タンパク質、抗体および血漿である他の化合物との複合物ならびに異種混合物の中から、しばしばみられるまれな抗体タイプを特異的に精製することができるため、特に有用である。
【0022】
現在の抗体精製システムは、例えば血漿供与物からモノクローナル抗体を精製することまたは抗体のサブクラスを抽出することに最適化されている。当業者であれば、血漿には多様な標的の全種類に対する抗体が含まれ、例えば、血漿には病原体上に存在する抗原に特異的な抗体(例えば、存在する抗体としては、抗風疹、抗インフルエンザ等がありうる)を含みうることを認識するはずである。従来技術による精製手順は、ポリクローナル抗体精製には不適当であるか、特異的な抗体を含む生成物(すなわち、特定の抗原に特異的な抗体を含む生成物)を得ることができないかのいずれかであり、むしろ、その代わり、生成物は、供給源中に存在する類似のタイプ/構造の抗体をすべて含みうることになる。
【0023】
従来技術によるモノクローナル抗体精製方法は、1つの抗原に特異的な抗体の抽出を可能にすることには十分に焦点があてられておらず、むしろ、同じサイズ/同じ構造の抗体すべてを精製するよう影響するため、本発明は、これらの従来技術による方法を全般にわたり改善したものである。例えば、患者血漿からのポリクローナル抗体の精製に既存のモノクローナル抗体精製プロトコールを適用すると、試料からIgGのすべてのタイプが精製されることとなり、その結果、多重抗体特異性を有しかつ所望の特異的抗体が比較的低レベルである溶液が得られることになる。
本発明のさらなる利点は、ある抗原に結合する(または特異性を示す)抗体を得る迅速な方法であるということである。本明細書に記載の方法は、おそらく、所望の特異性を有するモノクローナル抗体を作製するための任意の従来技術による方法より、安価で簡便である。赤血球(RBC)型抗原に対する特異性を有する抗体の分野においては、(MosaiQ(商標)装置による検査が必要な血液型抗原などの)血液型抗原のすべてが発現細胞株から得られる対応する抗体をもっているわけではない場合、このことは特に重要である。したがって、ポリクローナル抗体の精製が必要とされる。
したがって、本発明の方法は、診断、血液型判定試験、供血者/患者交差適合試験、MosaiQ(商標)プラットフォームおよび研究における使用のための抗体を提供する。
【0024】
最初に抗体の供給源と、特定の抗原を発現する細胞とを接触させることにより、この特定の抗原に対する特異性および/または親和性を有する抗体だけを抽出または精製することが可能である。血液型抗体の精製において赤血球(エリスロサイト)を利用することのさらなる利点は、赤血球の抗原プロファイルが、実質的に、血液型抗原を含むプロファイルに限定される、したがって所望しない抗体に結合しうる抗原は他にないということである。さらに、抗原の任意の組合せのほとんどによって赤血球を同定することが可能である(すなわち、ほとんどの任意の「抗原」プロファイルによって赤血球を同定することが可能である)。したがって、1つまたは複数の必要とされる抗原を呈する1つまたは複数の赤血球を選択することができる。使用者は、このようにして、慎重に細胞を選択することにより、精製しようとする抗体に対してある程度コントロールすることができる。例えば、単一の血液型抗原特異性を有する抗体が求められる場合、使用者は、適切な血液型抗原プロファイルを示す赤血球(好ましくは対象の抗体が結合する抗原だけを発現する赤血球)を選択する必要がある。
【0025】
記載のように、抗体供給源と細胞とを、細胞の抗原に対して特異的な供給源中の任意の抗体が抗原に結合できる条件下で接触させる。条件は、供給源中に存在する抗体が細胞表面上に存在する抗原に吸着できるように設定してもよい。これらの条件は、細胞と供給源とをインキュベートする期間を含んでもよい。例えば細胞と供給源とを、所定の時間および/または所定の温度で一緒に接触させてもよい。接触(またはインキュベーション)後、抗体/細胞複合体は、細胞表面の抗原に結合した抗体を含む抗体/細胞複合体を形成していてもよい。
【0026】
任意の抗体/細胞複合体は、任意の好適な手段により供給源から分離してもよい。例えば、細胞と供給源とを接触させた後、細胞/供給源混合物を遠心分離などの機械的分離技術にかけてもよい。当業者であれば、遠心分離が、供給源の液相および/または細胞に結合していないタンパク質、炭水化物もしくは供給源の他の成分などの供給源の他の成分からの任意の抗体/細胞複合体の分離に影響を及ぼすことを認識するはずである。
供給源が液体供給源(例えば血漿)である場合、任意の機械的分離ステップ(例えば遠心分離)の後、上清は、遠心分離中に形成された任意のペレット、すなわちペレット化された細胞/抗体複合物を含むペレットを崩さない方法で除去してもよい。ペレットは、洗浄手順にかけてもよい。例えば多量の好適な希釈剤(例えば生理食塩液)を加えてペレットを再懸濁し、再度、何らかの形態の分離手順にかけてもよい。洗浄プロトコールは、1回または複数回繰り返してもよい。
【0027】
抗体を単離して最終的には精製するために、結合した抗体(すなわち細胞の表面に吸着した抗体)を解離または溶離する。例えば、加温、両極端な温度(急速凍結/解凍)、超音波槽、細胞溶解、低いpH(酸溶離/解離)、冷やした酸、有機溶媒、キシレン、クロロホルム、改良された加温(および撹拌)およびクロロキン二リン酸を使用する溶離/解離などの多数の好適な解離/溶離手順のうちの任意の1つを使用してもよい。例として、抗体/細胞複合体(洗浄したペレット中に存在しうる)を溶離緩衝液と接触させてもよい。溶離緩衝液は、細胞からの抗体の解離に働くように調合してもよい。溶離緩衝液は、酸溶離(低pH)による抗体解離に働くように調合してもよい。好適な溶離技術および/または緩衝液は、当業者には既知であろう。例えば、好適な溶離技術を使用して、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断、胎児・新生児ABO溶血性疾患(HDFN)の診断、患者血清または血漿中に多重抗体が存在する場合の特異性の同定ならびに直接抗グロブリン試験(DAT)陽性患者の赤血球の表現型決定を支援してもよい。好適な溶離技術に関するさらなる情報は、「Elution techniques in blood bank」;2006, Roberts, Continuing Education Topics & Issues; (http://www.americanmedtech.org/files/step_online_articles/301.pdfを参照)で得られるが、その全内容は参照によって組み入れている。
代表的な溶離緩衝液は、例えば、グリシン-HClおよびNaClを含んでいても、これらから本質的になっていても、または、これらからなっていてもよい。
抗体/細胞混合物は、何らかの解離または溶離プロトコールの下で所定時間のインキュベーションを行った後、任意の溶離または解離プロセス/緩衝液を中止または中和するよう設計された何らかのプロトコールまたはプロセスにかけてもよい。
【0028】
溶離/解離工程の完了(および中止/中和)後、細胞抗体混合物を何らかの形態の分離プロセスにかけてもよい。例えば、抗体/細胞混合物を遠心分離にかけてペレットおよび上清を得てもよい。上清は、解離された/溶離された抗体を含んでもよく、したがって、取り出して保管してもよい。
【0029】
次に、解離された/溶離された抗体(上清中に存在しうる)を、具体的には、抗体(例えば、上清中に存在する抗体)を除去する、結合させるまたは固定するプロセスにかけてもよい。例えば、上清をアフィニティクロマトグラフィープロセスにかけてもよい。任意の好適なアフィニティクロマトグラフィープロセスを使用してもよく、抗体精製に好適なこれらのプロセスは、当業者には周知である。例えば、プロテインGカラムを使用してもよい。簡単には、抗体を含む調製物(例えば上清)を、好適なアフィニティ精製カラムに導入してその中を通流させてもよい。任意の洗浄手順の後、結合した抗体をアフィニティ精製カラムから溶離し、溶離物として回収してもよい。溶離物を、さらなる洗浄、濃縮および/または透析手順にかけて、使用のための抗体調製物を得てもよい。
(後に続く濃縮および/または透析工程とともに)アフィニティベースの精製方法を使用して、精製されたおよび/または濃縮された抗体調製物を得るだけでなく、任意の混入物、例えば溶離中の細胞溶解により放出された混入物を確実に除去してもよい。
【0030】
本発明の方法により調製された抗体調製物は、単一の特異性および/または親和性、すなわち、特定の抗原に対する特異性および/または親和性を有する抗体を、含むか、からなるか、から本質的になることを理解されたい。方法が特定の血液型抗原を発現する赤血球(エリスロサイト)を利用する場合、本発明のプロトコールを用いて得られる抗体は、この血液型抗原に対する親和性および/または特異性を有する血液型抗体であってもよい。使用する抗体供給源により、抗体はポリクローナルおよび/またはモノクローナルであってもよい。
【0031】
上記を考慮して、本発明は、抗体を精製する方法であって、
抗体の供給源と、精製しようとする抗体に対して特異的な抗原を発現する細胞とを、抗原と供給源中の抗体との間の結合を可能にする条件下で接触させて、抗体/細胞複合体を形成させること、
抗体/細胞複合体から抗体を解離させること、および
解離した抗体を精製すること
を含む方法を提供する。
結合した抗体の解離に先立ち、任意の抗体/細胞複合体を、例えば遠心分離により、供給源の他の成分から分離してもよい。遠心分離の後、上清を廃棄し、ペレット化した抗体/細胞複合体を1回または複数回、洗浄してもよい。
記載のように、(細胞に結合したまたは吸着した抗体の)解離は、(酸性)溶離緩衝液の使用を含みうる何らかの形態の解離/溶離プロトコールを使用することにより行ってもよい。
【0032】
解離した抗体の精製に先立ち、解離した抗体を遠心分離により細胞材料から分離してもよい。遠心分離の後、その上清は、精製のための溶離された/解離された抗体を含んでいてもよい。
記載のように、アフィニティクロマトグラフィーベースの技術を使用することにより、解離された抗体の精製を達成してもよい。
本発明に記載の方法により精製された抗体は、例えば、HPLCおよび/またはゲル電気泳動などの任意の好適な定性的/定量的プロセスにより特性決定してもよい。
さらなる態様において、本発明は、抗体の精製のためのキットであって、精製しようとする抗体に対して特異的な抗原を含む/発現する細胞(または例えばビーズもしくは同様の他の物体)を含むキットを提供する。キットは、1つまたは複数の特異的血液型抗原を含む/発現する血球(または例えばビーズもしくは同様の他の物体)を含んでもよい。キットは、好適な希釈剤、溶離/中和緩衝液(例えば本明細書に記載の酸溶離緩衝液)、アフィニティクロマトグラフィーの材料および使用説明書をさらに含んでもよい。
ここで、下記の図を参照にして本発明を詳細に記述することにする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1-1】供給源プレートのスライドプリント用の割り付けを示す表である。
図1-2】供給源プレートのスライドプリント用の割り付けを示す表である。
図1-3】供給源プレートのスライドプリント用の割り付けを示す表である。
図1-4】供給源プレートのスライドプリント用の割り付けを示す表である。
図2-1】ミニアレイ毎に当てたスポットの配置の概要である。
図2-2】ミニアレイ毎に当てたスポットの配置の概要である。
図3】ポリクローナル抗DおよびポリクローナルKアフィニティ精製実験のクロマトグラムである。
図4-1】スライド1~4のアッセイの結果より得られた画像である(試料希釈剤:4%デキストラン、4%PEGを含有する2%BSA/PBS)。
図4-2】スライド1~4のアッセイの結果より得られた画像である(試料希釈剤:4%デキストラン、4%PEGを含有する2%BSA/PBS)。
図4-3】スライド1~4のアッセイの結果より得られた画像である(試料希釈剤:4%デキストラン、4%PEGを含有する2%BSA/PBS)。
図4-4】スライド1~4のアッセイの結果より得られた画像である(試料希釈剤:4%デキストラン、4%PEGを含有する2%BSA/PBS)。
図5-1】アッセイの全穴の結果を示す図である。
図5-2】アッセイの全穴の結果を示す図である。
図5-3】アッセイの全穴の結果を示す図である。
図5-4】アッセイの全穴の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[実施例]
実験結果
序論
(MosaiQ(商標)装置による試験が必要な赤血球型抗原を含む)赤血球(RBC)型抗原のすべてが、発現細胞株から得られる対応する抗体を有するわけではい。したがって、ポリクローナル抗体の精製が必要である。(ヒト血漿などの)血漿中には多様な抗原に対し多重特異性であるIgGアイソフォームなど、多様な抗体クラスが存在するため、現在の精製の方法は十分ではない。抗体、特に血液型抗体、具体的にはポリクローナル抗体の精製のための効率的な方法が必要である。
本例で詳述する実験の目的は、吸着技術、低いpHでの溶離手順および(IgG)アフィニティ精製を利用する方法により、患者血漿からポリクローナル抗体を精製することである。
このラージスケールの実験では、25mLのポリクローナル血漿を使用した。現行の手作業による抗原判定アッセイを利用して、スライド上で精製分画の特異性評価も行った。
【0035】
材料および方法
ポリクローナルな吸着および低いpHでの溶離手順
抗Dを含む血漿を、50%ヘマトクリット値のRhD陽性赤血球と2:1(血漿50mL:細胞25mL)比で、1時間、37℃でインキュベートした。抗Kおよび抗Fyaを含む血漿についても、対応する赤血球を用いて同じ手順を行った。より高いヘマトクリット値、例えば約55%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%の細胞を利用してもよいことに留意されたい。さらなる代替の血漿の細胞に対する比を、使ってもよい。例えば、血漿の細胞に対する比は約3:1または約4:1であってもよい。赤血球のヘマトクリット値が約50%超である場合、血漿の細胞に対する比は約2:1超であってもよい。
【0036】
吸着後、赤血球に結合した抗体の溶離を行った。
・インキュベーションに先立ち、溶血性細胞を抽出するために、赤血球溶液を生理食塩液で6回洗浄した(3000rpm、5分間、加速:9、減速:3)。
・次に、細胞を2:1容量(溶離緩衝液50mL:細胞25mL)で、室温で2分間、インキュベートした。
・中和緩衝液+154mM%NaClの(細胞混合物量の10%の)容量を加えて混和し、2000×gで60秒間、遠心分離した。
・上清を取り、清潔な試験管に移した。
・プロテインGアフィニティ精製のための調製として、溶離物は5mLまで濃縮し、プロテインG結合緩衝液で1:10に希釈した。
【0037】
判定基準:
・開始に先立ち、赤血球の有効性および特異性を試験してもよい。
・赤血球の有効性基準
・ホモ接合体およびヘテロ接合体の細胞と反応すること(すなわち、細胞は、抗原発現のレベル(強い(ホモ接合体)または弱い(ヘテロ接合体))に関係なく選択され、さらに抗体に結合しうる)
・対象の抗原を発現する細胞を選択すること。使用のための細胞は、特異性が限定または制限されていてもよい。すなわち、細胞は対象の抗原を発現するが対象外の他の抗原は欠いていてもよい。
・赤血球は50%ヘマトクリット値であってもよいが、有効な分析器で測定されたまたは供血時に特定された値とする。
・理想的には、細胞は4週齢未満であること。
【0038】
AKTAによる精製
AKTA Pureによる方法では、連続する2本のIgGプロテインGi Hi Trapカラムを通すアフィニティ精製を、ポジション1、2および3に三列並べた。この方法は、カラムの連続的な平衡化および上向流の溶離を含んだ。試料は試料用ループを通して注入した。試料ロード中は、流速は0.1mL/分まで下げた。

表4:アフィニティ精製のためのインレット
【0039】
プロテインGカラム(カラムポジション1、2および3)は、使用前に、5mLのELIX H2O、続いて25mLのプロテインG結合緩衝液で平衡化した。一般的な実験方法を表5に示す。

表5:アフィニティ精製のためのプロトコールの詳細
ピークの検出後、直ちに、中和緩衝液50μLを含む96ディープウェルプレートの中に0.5mL量を分画した。
【0040】
溶離緩衝液のpHは低いため(0.1MグリシンpH2~3)、精製後は直ちに緩衝液交換が必要であった。これはZeba脱塩カラムを用いて行った。ピークの分画の同定は、AKTAのUVトレースおよび総タンパク質レベルによって行った。
【0041】
判定基準
・アフィニティ精製プロセスの間を通し、1ml/分-1の一定流速および0.5MPa未満の圧力を維持した。
・標準となる試料ロード/カラム洗浄/溶離の相は、ACプロセスのUVクロマトグラムにおいて明確に定まっていた。
【0042】
試料の濃縮
アフィニティ精製後、各特異性からIgG分画を1mL溜め、Ultracel遠心式フィルターを用いて5倍濃縮の200μL容量まで濃縮した(IFUあたりとしての方法)。
【0043】
アレイ上へプリントされた分画

表6:抗原判定アレイ上にプリントされたプローブの濃度
アフィニティ精製の後、精製したポリクローナル抗体をエポキシシランスライド上に、表6に示した濃度でプリントした。アッセイコントロールとして、また、画像分析しやすい格子配置とするために、抗D(ESD1 V140550 B01)、抗-Fya(DG-FYA-02、J25541 B01)および抗K(MS56 J25922 B01)を含めた。
【0044】
16ミニアレイのフォーマットにおいて、スライドに表6に記載の抗体をプリントした。各ミニアレイは12×12の長方形の格子からなっていた。これは、8回の供給源ビジットとスポット当たり4滴によって得た。スライドのプリント中に(プリントヘッドノズル間の)混線および(供給源プレートビジット間の)キャリーオーバーが生じていないかを確認するために、プローブ格子の列中に、50%グリセロール/PBSを互い違いにプリントした(図1および2)。これらのプローブ部位での陽性反応はいずれも、プリントヘッドの不調または非常に高い濃度での抗体のプリントがあったことを強調するものである。キャリーオーバーを抑制するために、5本のプリントヘッドおよびJetspyder浄化剤を使用し、また(Arrayjet緩衝液を満たした)洗浄皿を組み込んで使用した。スライドは、アッセイに先立ち5日間、暗所にて2~8℃でスライドホルダー中に保管した。図1および2に、供給源プレートの割り付けおよび得られたプリントの割り付け(スポットの配置)を示す。
【0045】
判定基準
・プリントが成功したことをスライドおよびスポットを目視によりチェックした。
【0046】
方法例
ポリクローナル抗体の精製のための方法の一例を以下に提供する。
【0047】
さらなる代表的な本発明に記載の方法を以下のようにまとめてもよい。
・処理に先立ち、供血者の赤血球は0.9%生理食塩液で3回洗浄する(3500RPM、5分間、acc:9、dec:7)。
・血漿は、70%ヘマトクリット値の赤血球とともに、3:1(血漿:細胞)の比で、15分毎に穏やかに振盪させながら、37℃で1時間、インキュベートする。
・次に、赤血球/血漿溶液を遠心分離し(3500RPM、5分間、acc:9、dec:7)、赤血球ペレットを崩さないように、上清を除去する。
・次に、上清量を生理食塩液で置き換える。
・次に、この溶液を遠心分離する(3500RPM、5分間、acc:9、dec:7)。
・洗浄プロトコールは、合計6回繰り返す。最後の洗浄の後、上清を除去する。
・次に、圧縮された細胞を、溶離緩衝液と2:1比(溶離緩衝液:細胞)で混和する(溶離緩衝液は0.1Mグリシン-HCl、pH2.7+154mM NaCl)。
・次に、この混合物を、室温で2分間、インキュベートする。
・次に、中和緩衝液(1M Tris-HCl、pH9.0+154mM NaCl)を、溶離緩衝液の総量の5%になるように、細胞混合物に加える。
・次に、この溶液を穏やかに混和して、3500RPMで5分間、遠心分離する(acc:9、dec:7)。
・次に、その上清を清潔な容器に移し、pHを測定し、さらに何らかの調整を行ってpH7にする。
・上清を、プロテインG結合緩衝液で1:1に希釈する。
・プロテインGカラムを結合緩衝液で平衡化する。
・溶離された抗体/結合緩衝液の溶液を、一定の圧力を保ちながら、低流速で、クロマトグラフィーカラムに注入する。
・試料の添加後、非結合の抗体または混入タンパク質を洗い流すために、10カラム容量の結合緩衝液でカラムを洗浄する。
・次に、結合した抗体を溶離するために、10カラム容量のプロテインG溶離緩衝液を、上向流でカラムに流す。
・次に、溶離した抗体をPBS中に透析して濃縮する。
・溶離した抗体を特性決定(ゲルおよび血清学)のために回収する。
・次に、濃縮した抗体を、PBS+50%グリセロールで希釈し、エポキシシラン面にプリントする。その後、手作業による抗原判定試験ならびに陽性および陰性細胞を用いて、結合を調べる。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2-1】
図2-2】
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
【外国語明細書】