(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145721
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ヒューズ素子
(51)【国際特許分類】
H01H 85/47 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
H01H85/47
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118319
(22)【出願日】2022-07-25
(62)【分割の表示】P 2020141852の分割
【原出願日】2016-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2015201383
(32)【優先日】2015-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】古内 裕治
(57)【要約】
【課題】ヒューズエレメントの低抵抗化による高定格化を図るとともに、小型化を図ることができるヒューズ素子を提供する。
【解決手段】ヒューズ素子1は、ヒューズエレメント2と、冷却部材3とを有し、ヒューズエレメント1は、熱により溶断する遮断部9が冷却部材3から離隔し相対的に熱伝導性の低い低熱伝導部7と、遮断部9以外の部位に冷却部材3と接触もしくは近接し相対的に熱伝導性の高い高熱伝導部8が設けられ、冷却部材3は、遮断部9に応じた位置に溝部10若しくは開放部が形成され、溝部10若しくは開放部上に遮断部9が重畳されており、ヒューズエレメント2は、少なくとも溝部10若しくは開放部上において平坦な板状である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒューズエレメントと、
冷却部材とを有し、
上記ヒューズエレメントは、熱により溶断する遮断部が上記冷却部材から離隔し相対的に熱伝導性の低い低熱伝導部と、上記遮断部以外の部位に上記冷却部材と接触もしくは近接し相対的に熱伝導性の高い高熱伝導部が設けられ、
上記冷却部材は、上記遮断部に応じた位置に溝部若しくは開放部が形成され、上記溝部若しくは上記開放部上に上記遮断部が重畳されており、
上記ヒューズエレメントは、少なくとも上記溝部若しくは上記開放部上において平坦な板状であるヒューズ素子。
【請求項2】
上記ヒューズエレメントは、上記冷却部材に挟持された全面にわたって平坦な板状である請求項1に記載のヒューズ素子。
【請求項3】
上記ヒューズエレメントが上記冷却部材で挟持され、上記ヒューズエレメントによって形成された上記冷却部材間の隙間を有し、上記隙間は上記ヒューズエレメントの溶断時に発生するガスを外部に排出可能である請求項1又は2に記載のヒューズ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流経路上に実装され、溶断することにより当該電流経路を遮断するヒューズ素子に関し、特に小型化、低抵抗化、かつ大電流対応が図られたヒューズ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定格を超える電流が流れた時に自己発熱により溶断し、当該電流経路を遮断するヒューズエレメントが用いられている。ヒューズエレメントとしては、例えば、ハンダをガラス管に封入したホルダー固定型ヒューズや、セラミック基板表面にAg電極を印刷したチップヒューズ、銅電極の一部を細らせてプラスチックケースに組み込んだねじ止め又は差し込み型ヒューズ等が多く用いられている。
【0003】
しかし、上記既存のヒューズエレメントにおいては、リフローによる表面実装ができない、電流定格が低い、といった問題点が指摘されている。
【0004】
また、リフロー実装用の速断ヒューズ素子を想定した場合、リフローの熱によって溶融しないように、一般的には、ヒューズエレメントには融点が300℃以上のPb入り高融点ハンダが溶断特性上好ましい。しかしながら、RoHS指令等においては、Pb含有ハンダの使用は、限定的に認められているに過ぎず、今後Pbフリー化の要求は、強まるものと考えられる。
【0005】
すなわち、ヒューズエレメントとしては、リフローによる表面実装が可能でヒューズ素子への実装性に優れること、定格を上げて大電流に対応可能であることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような要求に応えるために、Cu等の高融点、低抵抗の金属を用いたヒューズエレメントも提案されている。この種のヒューズエレメントとしては、矩形板状に成形され、長手方向の略中央部を部分的に幅を狭めた構造を有する。あるいは、全体として電極サイズよりも細いワイヤー状構造をなすヒューズエレメントも提案されている。このようなヒューズエレメントは、当該幅を狭めた狭小部を高抵抗化させて自己発熱遮断させる遮断部としている。
【0008】
ここで、高融点のヒューズエレメントを用いる場合、溶断時には高温に発熱することから、ヒューズエレメントが接続される電極端子が遮断部に近接していると、端子温度が高融点金属の融点近くにまで上がってしまい、表面実装用の接続はんだを溶解させる等の問題を起こすリスクがある。そのため、ヒューズエレメントの長さを長くし、遮断部と電極端子との距離を確保する必要がある。
【0009】
一方で、ヒューズエレメントの低抵抗化には、ヒューズエレメント長の短縮や、ヒューズエレメント断面積の拡大が効果的であるが、溶断時におけるヒューズエレメントの熱による影響から、さらなる電流定格の向上を図ることが困難であった。また、ヒューズエレメント長を長くとることにより、ヒューズエレメントを用いたヒューズ素子の小型化も困難となる。
【0010】
そこで、本発明は、ヒューズエレメントの低抵抗化による高定格化を図るとともに、小型化を図ることができるヒューズ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明に係るヒューズ素子は、ヒューズエレメントと、冷却部材とを有し、上記ヒューズエレメントは、熱により溶断する遮断部が上記冷却部材から離隔し相対的に熱伝導性の低い低熱伝導部と、上記遮断部以外の部位に上記冷却部材と接触もしくは近接し相対的に熱伝導性の高い高熱伝導部が設けられ、上記冷却部材は、上記遮断部に応じた位置に溝部若しくは開放部が形成され、上記溝部若しくは上記開放部上に上記遮断部が重畳されており、上記ヒューズエレメントは、少なくとも上記溝部若しくは上記開放部上において平坦な板状であるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヒューズエレメントの遮断部の周囲を冷却部材と熱的に接触することで、ヒューズエレメントの過電流時の発熱を抑え定格電流を上昇させるとともに、端子部への影響を抑え、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明が適用されたヒューズ素子を示す図であり、(A)は外観斜視図、(B)は断面図である。
【
図2】
図2(A)はヒューズエレメントが嵌合された冷却部材を示す外観斜視図であり、
図2(B)は冷却部材の外観斜視図である。
【
図3】
図3(A)は遮断部が溶断したヒューズエレメントを示す外観斜視図であり、
図3(B)はヒューズエレメントが溶断したヒューズ素子を示す断面図である。
【
図4】
図4(A)(B)は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の形態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、金属材料からなる冷却部材を形成した支持部材によってヒューズエレメントを挟持したヒューズ素子を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の形態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の形態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の形態を示す図であり、(A)は冷却部材の外観斜視図であり、(B)はヒューズエレメントが嵌合された冷却部材を示す外観斜視図であり、(C)はヒューズ素子の外観斜視図である。
【
図9】
図9は、ヒューズエレメントの遮断部の幅よりも短い溝部を形成した冷却部材を示す外観斜視図である。
【
図10】
図10は、ヒューズエレメントの遮断部に沿って断続的に溝部が形成された冷却部材を示す外観斜視図である。
【
図11】
図11(A)は円柱状のヒューズエレメントが配置された冷却部材の外観斜視図であり、
図11(B)は円柱状のヒューズエレメントを用いたヒューズ素子の外観斜視図である。
【
図12】
図12(A)は3つのヒューズエレメントが並列配置された冷却部材を示す外観斜視図であり、
図12(B)は3つのヒューズエレメントが並列配置されたヒューズ素子の外観斜視図である。
【
図13】
図13(A)は、高融点ヒューズエレメントがヒューズエレメントの間に並列配置された冷却部材を示す外観斜視図であり、
図13(B)は高融点ヒューズエレメントがヒューズエレメントの間に並列配置されたヒューズ素子の外観斜視図である。
【
図14】
図14は、冷却部材のヒューズエレメントとの接触表面に金属層を形成したヒューズ素子を示す断面図である。
【
図15】
図15は、冷却部材のヒューズエレメントとの接触表面に接着剤層を形成したヒューズ素子を示す断面図である。
【
図16】
図16は、低融点金属の溶融、流動により変形したヒューズエレメントを示す断面図である。
【
図17】
図17(A)は変形規制部を形成したヒューズエレメントを配置した冷却部材を示す外観斜視図であり、
図17(B)は変形規制部を形成したヒューズエレメントを用いたヒューズ素子の断面図である。
【
図18】
図18(A)はヒューズエレメントの端子部が裏面側に形成された冷却部材を示す外観斜視図であり、
図18(B)はヒューズエレメントの端子部を冷却部材の裏面側に形成したヒューズ素子の断面図である。
【
図19】
図19(A)はヒューズエレメントの端子部が外側に形成された冷却部材を示す外観斜視図であり、
図19(B)はヒューズエレメントの端子部を冷却部材の外側に形成したヒューズ素子の断面図である。
【
図20】
図20(A)は非貫通孔を形成したヒューズエレメントのリフロー実装前における断面図であり、
図20(B)は、
図20(A)に示すヒューズエレメントのリフロー実装後における断面図である。
【
図21】
図21(A)は、貫通孔内が第2の高融点金属層によって充填されたヒューズエレメントを示す断面図であり、
図21(B)は、非貫通孔内が第2の高融点金属層によって充填されたヒューズエレメントを示す断面図である。
【
図22】
図22(A)は、断面が矩形状の貫通孔を設けたヒューズエレメントを示す断面図であり、
図22(B)は、断面が矩形状の非貫通孔を設けたヒューズエレメントを示す断面図である。
【
図23】
図23は、孔の開口端側の上側まで第2の高融点金属層を設けたヒューズエレメントを示す断面図である。
【
図24】
図24(A)は、非貫通孔を対向して形成したヒューズエレメントを示す断面図であり、
図24(B)は、非貫通孔を対向させずに形成したヒューズエレメントを示す断面図である。
【
図25】
図25は、低融点金属層に第1の高融点粒子を配合したヒューズエレメントを示す断面図である。
【
図26】
図26(A)は、低融点金属層に低融点金属層の厚さよりも粒子径の小さい第1の高融点粒子を配合したヒューズエレメントのリフロー実装前における断面図であり、
図26(B)は、
図26(A)に示すヒューズエレメントのリフロー実装後における断面図である。
【
図27】
図27は、低融点金属層に第2の高融点粒子を圧入したヒューズエレメントを示す断面図である。
【
図28】
図28は、第1の高融点金属層及び低融点金属層に第2の高融点粒子を圧入したヒューズエレメントを示す断面図である。
【
図29】
図29は、第2の高融点粒子の両端に突縁部を形成したヒューズエレメントを示す断面図である。
【
図30】
図30は、ヒューズ素子の回路図であり、(A)はヒューズエレメントの溶断前、(B)はヒューズエレメントの溶断後を示す。
【
図31】
図31(A)は冷却部材に発熱体を形成したヒューズ素子を示す断面図であり、(B)は回路図である。
【
図32】
図32(A)は、発熱体を被覆する絶縁層上に発熱体引出電極を形成したヒューズ素子を示す断面図であり、
図32(B)は回路図である。
【
図33】
図33(A)は、遮断部が複数設けられたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子を示す断面図であり、
図33(B)は回路図である。
【
図34】
図34は、凹部が形成されたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子の一例を示す断面図である。
【
図35】
図35は、凹部が形成されたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子を、一方の冷却部材を省略して示す斜視図である。
【
図36】
図36は、凹部が形成されたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子の一例を示す外観斜視図である。
【
図37】
図37は、凹部が形成されたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子の一例を示す断面図である。
【
図38】
図38(A)は
図34に示すヒューズ素子のヒューズエレメントが溶断した状態を示す断面図であり、
図38(B)はヒューズエレメントが溶断した状態を一方の冷却部材を省略して示す斜視図である。
【
図39】
図39は、両端を端子部としたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子の一例を示す断面図である。
【
図40】
図40は、両端を端子部としたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子を、一方の冷却部材を省略して示す斜視図である。
【
図41】
図41は、両端を端子部としたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子の一例を示す外観斜視図である。
【
図42】
図42は、変形規制部を設けたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子の一例を示す断面図である。
【
図43】
図43は、変形規制部を設けたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子を、一方の冷却部材を省略して示す斜視図である。
【
図44】
図44は、変形規制部を設けたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子の一例を示す外観斜視図である。
【
図45】
図45は、冷却部材の裏面に端子部を設けたヒューズ素子の一例を示す断面図である。
【
図46】
図46(A)は3枚のヒューズエレメントを並列配置したヒューズ素子を、一方の冷却部材を省略して示す斜視図であり、
図46(B)は外観斜視図である。
【
図47】
図47(A)は高融点ヒューズエレメントを配置したヒューズ素子を、一方の冷却部材を省略して示す斜視図であり、
図47(B)は外観斜視図である。
【
図48】
図48は、複数の遮断部が並列されたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子を、一方の冷却部材を省略して示す斜視図である。
【
図49】
図49は複数の遮断部を備える可溶導体の製造工程を説明するための平面図であり、(A)は遮断部の両側を端子部で一体に支持したもの、(B)は遮断部の片側を端子部で一体に支持したものを示す。
【
図50】
図50(A)は冷却部材に発熱体を形成したヒューズ素子の一例を示す断面図であり、(B)は回路図である。
【
図51】
図51(A)は、発熱体を被覆する絶縁層上に発熱体引出電極を形成したヒューズ素子の一例を示す断面図であり、
図51(B)は回路図である。
【
図52】
図52(A)は、遮断部が複数設けられたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子の一例を示す断面図であり、
図52(B)は回路図である。
【
図53】
図53は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の形態を示す断面図である。
【
図54】
図54は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の形態を示す断面図である。
【
図55】
図55は、片面に凹部が形成されたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子を示す断面図である。
【
図56】
図56は、両面に凹部が形成されたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子を示す断面図である。
【
図57】
図57は、金属層を介在させずに、一対の冷却部材によって直接凹部が形成されたヒューズエレメントを挟持したヒューズ素子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明が適用されたヒューズ素子について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
本発明に係るヒューズ素子1は、小型且つ高定格のヒューズ素子を実現するものであり、平面寸法が3~5mm×5~10mm、高さが2~5mmと小型でありながら、抵抗値が0.2~1mΩ、50~150A定格と高定格化が図られている。なお、本発明は、あらゆるサイズ、抵抗値及び電流定格を備えるヒューズ素子に適用することができるのはもちろんである。
【0016】
ヒューズ素子1は、
図1(A)(B)に示すように、外部回路の電流経路上に接続され、定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し当該電流経路を遮断するヒューズエレメント2と、ヒューズエレメント2と接触もしくは近接する冷却部材3とを有する。
【0017】
ヒューズエレメント2は、例えば
図2(A)に示すように矩形板状に形成され、通電方向の両端部が図示しない外部回路の接続電極と接続される端子部5a,5bとされている。ヒューズエレメント2は、上下一対の冷却部材3a,3bによって挟持されるとともに、冷却部材3a,3bの外に一対の端子部5a,5bが導出され、端子部5a,5bを介して外部回路の接続電極と接続可能とされている。なお、ヒューズエレメント2の具体的な構成については、後に詳述する。
【0018】
また、ヒューズ素子1は、上下一対の冷却部材3a,3bによってヒューズエレメント2を挟持することにより、ヒューズエレメント2内に、冷却部材3a,3bから離隔し相対的に熱伝導性の低い低熱伝導部7と、冷却部材3a,3bと接触もしくは近接し相対的に熱伝導性の高い高熱伝導部8とが形成される。冷却部材3は、セラミックス等の熱伝導性の高い絶縁材料を好適に用いることができ、粉体成型等により任意の形状に成型することができる。また、冷却部材3は、熱伝導率が1W/(m・k)以上であることが好ましい。なお、冷却部材3は、金属材料を用いて形成してもよいが、表面を絶縁被覆することが周囲の部品との短絡防止、及びハンドリング性の見地から好ましい。上下一対の冷却部材3a,3bは、例えば接着剤によって互いに結合されることにより素子筐体を形成する。
【0019】
低熱伝導部7は、ヒューズエレメント2の端子部5a,5b間にわたる通電方向と直交する幅方向にわたってヒューズエレメント2が溶断する遮断部9に沿って設けられ、少なくとも一部が冷却部材3a,3bと離隔されることにより熱的に接触せず、ヒューズエレメント2の面内において相対的に熱伝導性が低くされた部位をいう。
【0020】
また、高熱伝導部8は、遮断部9以外の部位で、少なくとも一部が冷却部材3a,3bと接触もしくは近接することにより熱的に接触し、ヒューズエレメント2の面内において相対的に熱伝導性が高くされた部位をいう。なお、高熱伝導部8は、冷却部材3と熱的に接触していればよく、冷却部材3と直接接触する他、熱伝導性を備えた部材を介して接触してもよい。
【0021】
図3(A)(B)に示すように、ヒューズ素子1は、ヒューズエレメント2の面内において、遮断部9に沿って低熱伝導部7が設けられるとともに、遮断部9以外の部位に高熱伝導部8が形成されることにより、定格を超える過電流時においてヒューズエレメント2が発熱した際に、高熱伝導部8の熱を積極的に外部に逃がし、遮断部9以外の部位の発熱を抑えるとともに、遮断部9に沿って形成された低熱伝導部7に熱を集中させて、端子部5a,5bへの熱の影響を抑えつつ遮断部9を溶断することができる。これにより、ヒューズ素子1は、ヒューズエレメント2の端子部5a,5b間が溶断され、外部回路の電流経路を遮断することができる。
【0022】
したがって、ヒューズ素子1は、ヒューズエレメント2を矩形板状に形成するとともに、通電方向に亘る長さを短くすることにより低抵抗化を図り、電流定格を向上させるとともに、外部回路の接続電極と接続用ハンダ等を介して接続される端子部5a,5bの過熱を抑えることで表面実装用の接続用ハンダを溶解させる等の問題を解消し、小型化を実現することができる。
【0023】
ここで、ヒューズエレメント2は、低熱伝導部7の面積よりも高熱伝導部8の面積が広いことが好ましい。これにより、ヒューズエレメント2は、遮断部9を選択的に加熱、溶断するとともに、遮断部9以外の部位の熱を積極的に逃がして端子部5a,5bの過熱による影響を抑え、小型化、高定格化を図ることができる。
【0024】
また、
図2(B)に示すように、ヒューズ素子1は、冷却部材3の遮断部9に応じた位置に溝部10が形成されることにより、ヒューズエレメント2の遮断部9以外の部位と接触もしくは近接するとともに、溝部10上に遮断部9が重畳されている。これにより、ヒューズ素子1は、ヒューズエレメント2の遮断部9が、冷却部材3よりも熱伝導率の低い空気と触れることにより、低熱伝導部7が形成されている。
【0025】
そして、ヒューズ素子1は、ヒューズエレメント2が上下一対の冷却部材3によって挟持されることにより、遮断部9の両面側が溝部10と重畳されている(
図1(B))。これにより、遮断部9と、遮断部9以外の部位との熱伝導性の差が大きくなり、確実に遮断部9で溶断するとともに、高熱伝導部8の冷却効率を向上させ、ヒューズエレメント2の発熱による端子部5a,5bの過熱を抑えることができる。
【0026】
なお、ヒューズ素子1は、
図4(A)に示すように、遮断部9の両側に冷却部材3a,3bを配置、接着することにより、開放部を設け、遮断部9が空気と触れるようにしてもよい。この場合、遮断部9の溶断時におけるヒューズエレメント2の飛散を防止するために、少なくとも遮断部9上を覆うカバー部材を設けることが好ましい。
【0027】
図5は、遮断部9の両側に金属材料からなる冷却部材3a,3bを配置したヒューズ素子1を示す断面図である。金属材料からなる冷却部材3a,3bは、絶縁材料からなる支持部材21に支持されている。そして、ヒューズ素子1は、冷却部材3a,3bが設けられた支持部材21によってヒューズエレメント2が挟持されることにより形成される。支持部材21は、例えばエンジニアリングプラスチック、セラミック基板、ガラスエポキシ基板等、公知の絶縁性材料を用いることができる。
【0028】
冷却部材3a,3bは、ヒューズエレメント2の遮断部9が重畳される位置を除く領域に形成され、例えば
図5に示すように、ヒューズエレメント2の幅方向にわたって設けられた遮断部9の両側に分断して設けられている。そして、ヒューズ素子1は、ヒューズエレメント2が金属材料からなる冷却部材3a,3bを介して支持部材21に挟持されることにより、ヒューズエレメント2の遮断部9が冷却部材3a,3bから離隔し相対的に熱伝導性の低い低熱伝導部7となり、遮断部9の両側が冷却部材3a,3bと接触もしくは近接し相対的に熱伝導性の高い高熱伝導部8となる。なお、冷却部材3a,3bを構成する金属材料層は、遮断部9を支持部材21から十分に離隔し、遮断部9と遮断部9以外の部位との熱伝導性に差を設けて確実に遮断部9を溶断させるのに必要な厚みを備える。金属材料層の厚みは100μm以上が好ましい。
【0029】
なお、冷却部材3a,3bを構成する金属材料層とヒューズエレメント2との間には適宜導電性の接着剤15やハンダ96を介在させてもよい。ヒューズ素子1は、接着剤15あるいはハンダ96を介して冷却部材3a,3bとヒューズエレメント2の高熱伝導部8とが接続されることにより、相互の密着性が高まり、より効率よく熱を冷却部材3a,3bに伝達させることができる。
【0030】
図5に示すヒューズ素子1は、板状のヒューズエレメント2を用いるとともに、ヒューズエレメント2を金属材料層からなる冷却部材3a,3bが形成された支持部材21で挟持することにより形成することができ、凹部や溝部の加工を必要せず、製造工程が容易となる。そして、ヒューズ素子1は、ヒューズエレメント2の面内において、遮断部9に沿って低熱伝導部7が設けられるとともに、遮断部9以外の部位に高熱伝導部8が形成されることにより、定格を超える過電流時においてヒューズエレメント2が発熱した際に、高熱伝導部8の熱を金属材料層からなる冷却部材3a,3bを介して積極的に外部に逃がし、遮断部9以外の部位の発熱を抑えるとともに、遮断部9に沿って形成された低熱伝導部7に熱を集中させて、遮断部9を溶断することができ、外部回路の電流経路を遮断することができる。
【0031】
なお、ヒューズ素子1は、
図5に示すようにヒューズエレメント2の両面で遮断部9の両側に金属材料からなる冷却部材3a,3bが形成されていることが好ましいが、ヒューズエレメント2の少なくとも一方の面において遮断部9の両側に冷却部材3a又は冷却部材3bが形成されていれば、遮断部9と遮断部9以外の部位との間で熱伝導性に差を設けることができる。
【0032】
また、ヒューズ素子は、
図4(B)に示すように、冷却部材3a,3bよりも熱伝導率の低い断熱部材4を有し、ヒューズエレメント2の遮断部9が断熱部材4と接触もしくは近接することにより、相対的に高熱伝導部8よりも熱伝導性の低い低熱伝導部7が形成されてもよい。なお、断熱部材4は、
図1に示す冷却部材3a,3bの溝部10に配設されることにより遮断部9と接触もしくは近接してもよい。
【0033】
なお、ヒューズ素子は、
図6に示すように、ヒューズエレメント2を挟持する上下一対の冷却部材3の一方の冷却部材3aには遮断部9に応じた位置に溝部10を形成して、遮断部9上に溝部10を配置するとともに遮断部9以外の部位と接触もしくは近接させ、他方の冷却部材3bには溝部10を設けず、ヒューズエレメント2の遮断部9及び遮断部9以外の部位と接触もしくは近接させてもよい。
【0034】
図6に示すヒューズ素子20においても、遮断部9と、遮断部9以外の部位とで熱伝導性に差を設け、ヒューズエレメント2の面内において、遮断部9に沿って低熱伝導部7が設けられるとともに、遮断部9以外の部位に高熱伝導部8が形成される。これにより、ヒューズ素子20は、定格を超える過電流時においてヒューズエレメント2が発熱した際に、高熱伝導部8の熱を積極的に外部に逃がし、遮断部9以外の部位の発熱を抑えるとともに、遮断部9に沿って形成された低熱伝導部7に熱を集中させて、遮断部9を溶断することができる。
【0035】
なお、ヒューズ素子は、ヒューズエレメント2の一方の面側に冷却部材3を重畳させ、他方の面側はカバー部材13で覆うようにしてもよい。
図7に示すヒューズ素子30は、ヒューズエレメント2の下面に溝部10が形成された冷却部材3が接触もしくは近接し、上面はカバー部材13によって覆われている。冷却部材3は、溝部10がヒューズエレメント2の遮断部9と重畳され、遮断部9以外の部位と接触もしくは近接されている。
【0036】
図7に示すヒューズ素子30においても、遮断部9と、遮断部9以外の部位とで熱伝導性に差を設け、ヒューズエレメント2の面内において、遮断部9に沿って低熱伝導部7が設けられるとともに、遮断部9以外の部位に高熱伝導部8が形成される。これにより、定格を超える過電流時においてヒューズエレメント2が発熱した際に、高熱伝導部8の熱を積極的に外部に逃がし、遮断部9以外の部位の発熱を抑えるとともに、遮断部9に沿って形成された低熱伝導部7に熱を集中させて、遮断部9を溶断することができる。
【0037】
ヒューズ素子30は、端子部5a,5bが導出され、外部回路が形成された回路基板に実装される実装面側に冷却部材3を配置することで、回路基板側へヒューズエレメント2の熱を伝達させることができ、より効率よく冷却させることができる。
【0038】
なお、ヒューズ素子30は、回路基板への実装面と反対側に冷却部材3を配置し、端子部5a,5bが導出される実装面側にカバー部材13を配置してもよい。この場合、端子部5a,5bはカバー部材13の側面と接することから冷却部材3を介した端子部5a,5bへの熱の伝達が抑えられ、表面実装用の接続用ハンダを溶解させる等のリスクをより低減することができる。
【0039】
また、ヒューズ素子1は、
図2(B)に示すように、冷却部材3のヒューズエレメント2を挟持する表面にヒューズエレメント2を嵌合する嵌合凹部12が設けられている。嵌合凹部12は、上下一対の冷却部材3a,3bがヒューズエレメント2を挟持した際にヒューズエレメント2の両面に接触もしくは近接する深さを有するとともに、端子部5a,5bを外部に導出可能に両端が開放されている。そして、ヒューズ素子1は、上下一対の冷却部材3を付き合わせると、
図1(A)(B)に示すように、端子部5a,5bが導出される開口部を除き密閉されるとともに、上下一対の冷却部材3の各嵌合凹部12がヒューズエレメント2の表面に接触もしくは近接する。
【0040】
なお、以下に説明するヒューズ素子1の構成は、上述したヒューズ素子20,30においても適用することができるものである。ヒューズ素子1は、
図8(A)~(C)に示すように、少なくとも一方の冷却部材3に嵌合凹部12を設けなくともよい。この場合、ヒューズ素子1は、一対の冷却部材3で挟持すると、ヒューズエレメント2によって隙間が形成され、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するエレメント材料が気化したガスを外部に排出することができる。したがって、ヒューズ素子1は、ガスの発生によって内圧が高まることによる筐体の破壊を防止することができる。
【0041】
[溝部]
また、ヒューズ素子1は、ヒューズエレメント2の通電方向と直交する遮断部9の幅方向に亘って溝部10が連続して形成されている。このとき、ヒューズ素子1は、
図2に示すように、溝部10がヒューズエレメント2の幅W
1よりも長い幅W
2を有することにより、ヒューズエレメント2の遮断部9の全幅にわたって低熱伝導部7が形成されている。したがって、ヒューズ素子1は、遮断部9が全幅にわたって加熱され、溶断させることができる。
【0042】
なお、ヒューズ素子1は、
図9に示すように、溝部10の幅W
2をヒューズエレメント2の幅W
1未満として、遮断部9の長さ方向の一部にわたって低熱伝導部7を形成してもよい。あるいは、ヒューズ素子1は、
図10に示すように、複数の溝部10がヒューズエレメント2の幅方向に亘って断続的に形成されることにより、遮断部9の長さ方向に亘って断続的に低熱伝導部7を形成してもよい。
【0043】
図9、
図10に示すように、遮断部9の一部に低熱伝導部7が設けられている場合にも、定格を超える過電流時においてヒューズエレメント2が発熱すると、低熱伝導部7から遮断部9が加熱、溶断し、当該低熱伝導部7の溶融を契機として遮断部9を全幅にわたって溶断させることができる。
【0044】
ここで、冷却部材3に形成する溝部10のヒューズエレメント2の通電方向に亘る長さL
1は、
図2に示すように矩形板状のヒューズエレメント2を用いた場合、ヒューズエレメント2の遮断部9における最小幅以下とすることが好ましく、ヒューズエレメント2の遮断部9における最小幅の1/2以下とすることがさらに好ましい。
【0045】
遮断部9における最小幅とは、矩形板状のヒューズエレメントの表面においてヒューズエレメント2の遮断部9における導通方向と直交する幅方向の最小幅をいい、遮断部9が円弧状、テーパ状、段差状等の形状をなし、遮断部9以外の部位よりも幅狭に形成されている場合にはその最小幅をいい、
図2(A)に示すように遮断部9が遮断部9以外の部位と同じ幅で形成されている場合にはヒューズエレメント2の幅W
1をいう。
【0046】
ヒューズ素子1は、溝部10の長さL1を遮断部9における最小幅以下、また遮断部9における最小幅の1/2以下と狭めることにより、溶断時におけるアーク放電の発生を抑制し、絶縁抵抗を向上させることができる。
【0047】
[棒状ヒューズエレメント]
また、ヒューズ素子は、棒状のヒューズエレメントを用いてもよい。例えば、
図11(A)(B)に示すヒューズ素子40は、円柱状のヒューズエレメント41と、ヒューズエレメント41の両端に設けられた一対の端子片42a,42bと、ヒューズエレメント41を挟持する上下一対の冷却部材3a,3bとを有する。ヒューズ素子40は、冷却部材3a,3bが端子片42a,42bの間に嵌合されることにより端子片42a,42bと面一とされ、冷却部材3a,3b及び端子片42a,42bによって素子筐体が構成されている。
【0048】
ヒューズ素子40は、上下一対の冷却部材3a,3bにヒューズエレメント41の遮断部9に応じた位置に溝部10を形成するとともに、ヒューズエレメント41を挟持することにより、ヒューズエレメント41内に、冷却部材3a,3bから離隔し相対的に熱伝導性の低い低熱伝導部7と、冷却部材3a,3bと接触もしくは近接し相対的に熱伝導性の高い高熱伝導部8とが形成される。
【0049】
ヒューズ素子40は、冷却部材3に形成する溝部10のヒューズエレメント41の通電方向に亘る長さL
1は、ヒューズエレメント2の遮断部9における最小径の2倍以下とすることが好ましい。遮断部9における最小径とは、ヒューズエレメント41の遮断部9における導通方向と直交する幅方向の最小径をいい、遮断部9が中央に向かって漸次縮径する円錐状や、小径の円柱が段差を介して連続する等の形状をなし、遮断部9以外の部位よりも小径に形成されている場合にはその最小径をいい、
図11(A)に示すように遮断部9が遮断部9以外の部位と同じ径で形成されている場合にはヒューズエレメント41の径をいう。
【0050】
ヒューズ素子40は、溝部10の長さL1を遮断部9におけるヒューズエレメント41の最小径の2倍以下と狭めることにより、溶断時におけるアーク放電の発生を抑制し、絶縁抵抗を向上させることができる。
【0051】
また、上述したヒューズ素子1,40は、冷却部材3に形成された溝部10のヒューズエレメント2,41の通電方向に亘る長さL1を、0.5mm以上とすることが好ましい。ヒューズ素子1,40は、長さ0.5mm以上の低熱伝導部7を設けることで、過電流時における高熱伝導部8との温度差を形成し、選択的に遮断部9を溶断させることができる。
【0052】
また、上述したヒューズ素子1,40は、冷却部材3に形成された溝部10のヒューズエレメント2,41の通電方向に亘る長さL1を5mm以下とすることが好ましい。ヒューズ素子1,40は、溝部10の長さL1が5mmを超えると、遮断部9の面積が増大することから、その分溶断に要する時間が延びて速溶断性に劣り、また、アーク放電によるヒューズエレメント2,41の飛散量が増大し、周囲に付着した溶融金属によって絶縁抵抗の低下を招く恐れがある。
【0053】
また、上述したヒューズ素子1,40は、近接するヒューズエレメント2,41の高熱伝導部8と冷却部材3a,3bとの最小隙間は100μm以下とされることが好ましい。上述したように、ヒューズエレメント2,41は、冷却部材3a,3bに挟持されることにより、冷却部材3a,3bと接触もしくは近接する部位が高熱伝導部8とされる。このとき、ヒューズエレメント2,41の高熱伝導部8と冷却部材3a,3bとの最小隙間は100μm以下とされることにより、ヒューズエレメント2,41の遮断部9以外の部位と冷却部材3とをほぼ密着させることができ、定格を超える過電流時における発熱を冷却部材3を介して外部に伝達させ、遮断部9のみを選択的に溶断することができる。一方、ヒューズエレメント2,41の高熱伝導部8と冷却部材3a,3bとの最小隙間が100μmを超えると、当該部位の熱伝導性が落ちてしまい、定格を超える過電流時において遮断部9以外の予期しない部位が高温、溶融する恐れがある。
【0054】
[ヒューズエレメントの並列配置]
また、ヒューズ素子は、ヒューズエレメントとして、複数のヒューズエレメント2を並列に接続してもよい。
図12(A)(B)に示すように、ヒューズ素子50は、例えば冷却部材3aにヒューズエレメント2A,2B,2Cの3枚が並列に配置される。ヒューズエレメント2A~2Cは、矩形板状に形成されるとともに、両端に端子部5a,5bが折り曲げ形成されている。そして、ヒューズエレメント2A~2Cは、各端子部5a,5bが外部回路の共通の接続電極と接続されることにより並列に接続される。これにより、ヒューズ素子50は、1枚のヒューズエレメント2を用いた上述したヒューズ素子1と同等の電流定格を有する。なお、各ヒューズエレメント2A~2Cは、溶断時に隣接するヒューズエレメントに接触しない程度の距離を隔てて並列配置されている。
【0055】
図12(A)に示すように、ヒューズエレメント2A~2Cは、端子部5a,5b間にわたる電流経路を遮断する遮断部9が、冷却部材3aに形成された溝部10と重畳する等により、面内において、遮断部9に沿って低熱伝導部7が設けられるとともに、遮断部9以外の部位に高熱伝導部8が形成されている。そして、ヒューズエレメント2A~2Cは、定格を超える過電流時において発熱すると、高熱伝導部8の熱を冷却部材3を介して積極的に外部に逃がし、遮断部9以外の部位の発熱を抑えるとともに、遮断部9に沿って形成された低熱伝導部7に熱を集中させて、遮断部9を溶断することができる。
【0056】
このとき、ヒューズエレメント2A~2Cは、抵抗値の低いものから多くの電流が流れて、順次溶断する。ヒューズ素子50は、すべてのヒューズエレメント2A~2Cが溶断することにより、外部回路の電流経路を遮断する。
【0057】
ここで、ヒューズ素子50は、ヒューズエレメント2A~2Cに定格を超える電流が通電し、溶断する際に、アーク放電が発生した場合にも、溶融したヒューズエレメントが広範囲にわたって飛散し、飛散した金属によって新たに電流経路が形成され、あるいは飛散した金属が端子や周囲の電子部品等に付着することを防止することができる。
【0058】
すなわち、ヒューズ素子50は、ヒューズエレメント2A~2Cを並列させているため、定格を超える電流が通電されると、抵抗値の低いヒューズエレメント2に多くの電流が流れていき、自己発熱により順次溶断していき、最後に残ったヒューズエレメント2が溶断する際にのみアーク放電が発生する。したがって、ヒューズ素子50によれば、最後に残ったヒューズエレメント2の溶断時にアーク放電が発生した場合にも、ヒューズエレメント2の体積に応じて小規模なものとなり、溶融金属の爆発的な飛散を防止することができ、また溶断後における絶縁性も大幅に向上させることができる。また、ヒューズ素子50は、複数のヒューズエレメント2A~2C毎に溶断されることから、各ヒューズエレメントの溶断に要する熱エネルギーは少なくて済み、短時間で遮断することができる。
【0059】
また、ヒューズ素子50は、複数のヒューズエレメント2のうち一つのヒューズエレメントの遮断部9の幅を他のヒューズエレメントの遮断部9の幅よりも狭くする等により、溶断順序を制御してもよい。また、ヒューズ素子50は、3個以上のヒューズエレメント2を並列配置させ、並列方向の両側以外の少なくとも1つのヒューズエレメント2の幅をその他のヒューズエレメントの幅よりも狭くすることが好ましい。
【0060】
例えば、ヒューズ素子50は、ヒューズエレメント2A~2Cのうち、真ん中のヒューズエレメント2Bの一部又は全部の幅を他のヒューズエレメント2A,2Cの幅よりも狭くし、断面積に差を設けることにより、相対的にヒューズエレメント2Bを高抵抗化する。これにより、ヒューズ素子50は、定格を超える電流が通電されると、先ず比較的低抵抗のヒューズエレメント2A,2Cから多くの電流が通電し溶断していく。これらヒューズエレメント2A,2Cの溶断は自己発熱によるアーク放電を伴うものではないため、溶融金属の爆発的な飛散もない。その後、残った高抵抗化されたヒューズエレメント2Bに電流が集中し、最後にアーク放電を伴って溶断する。これにより、ヒューズ素子50は、ヒューズエレメント2A~2Cを順次溶断させることができる。ヒューズエレメント2A~2Cは、断面積の小さいヒューズエレメント2Bの溶断時にアーク放電が発生するが、ヒューズエレメント2Bの体積に応じて小規模なものとなり、溶融金属の爆発的な飛散を防止することができる。
【0061】
また、ヒューズ素子50は、内側に設けられたヒューズエレメント2Bを最後に溶断させることにより、アーク放電が発生しても、ヒューズエレメント2Bの溶融金属を、先に溶断している外側のヒューズエレメント2A,2Cによって捕捉することができる。したがって、ヒューズエレメント2Bの溶融金属の飛散を抑制し、溶融金属によるショート等を防止することができる。
【0062】
[高融点ヒューズエレメント]
また、ヒューズ素子50は、ヒューズエレメント2よりも溶融温度が高い高融点ヒューズエレメント51を有し、複数のヒューズエレメント2と高融点ヒューズエレメント51とを、所定の間隔を隔てて配置させてもよい。ヒューズ素子50は、例えば
図13に示すように、冷却部材3にヒューズエレメント2A,2Cと高融点ヒューズエレメント51の3枚が並列に配置される。
【0063】
高融点ヒューズエレメント51は、例えばAgやCu、あるいはこれらを主成分とした合金等の高融点金属を用いて形成することができる。また、高融点ヒューズエレメント51は、後述するように低融点金属と高融点金属とから構成してもよい。高融点ヒューズエレメント51は、ヒューズエレメント2と同様に略矩形板状に形成されるとともに、両端部に端子部52a,52bが折り曲げ形成され、これら端子部52a,52bがヒューズエレメント2の各端子部5a,5bとともに外部回路の共通の接続電極と接続されることにより、ヒューズエレメント2と並列に接続される。これにより、ヒューズ素子50は、1枚のヒューズエレメント2を用いた上述したヒューズ素子1と同等以上の電流定格を有する。なお、各ヒューズエレメント2A,2C及び高融点ヒューズエレメント51は、溶断時に隣接するヒューズエレメントに接触しない程度の距離を隔てて並列配置されている。
【0064】
図13に示すように、高融点ヒューズエレメント51は、ヒューズエレメント2A,2Cと同様に、端子部52a,52b間にわたる電流経路を遮断する遮断部9が、冷却部材3に形成された溝部10と重畳する等により、面内において、遮断部9に沿って低熱伝導部7が設けられるとともに、遮断部9以外の部位に高熱伝導部8が形成されている。そして、高融点ヒューズエレメント51は、定格を超える過電流時において発熱すると、高熱伝導部8の熱を積極的に外部に逃がし、遮断部9以外の部位の発熱を抑えるとともに、遮断部9に沿って形成された低熱伝導部7に熱を集中させて、遮断部9を溶断することができる。
【0065】
そして
図13に示すヒューズ素子50は、定格を超える過電流時において、融点の低いヒューズエレメント2A,2Cが先に溶断し、融点の高い高融点ヒューズエレメント51が最後に溶断する。したがって、高融点ヒューズエレメント51は、その体積に応じて短時間で遮断することができ、また、最後に残った高融点ヒューズエレメント51の溶断時にアーク放電が発生した場合にも、高融点ヒューズエレメント51の体積に応じて小規模なものとなり、溶融金属の爆発的な飛散を防止することができ、また溶断後における絶縁性も大幅に向上させることができる。ヒューズ素子50は、すべてのヒューズエレメント2A,2C及び高融点ヒューズエレメント51が溶断することにより、外部回路の電流経路を遮断する。
【0066】
ここで、高融点ヒューズエレメント51は、ヒューズエレメント2とともに複数並列に配置された並列方向の両側以外の場所に配置されていることが好ましい。例えば高融点ヒューズエレメント51は、
図13に示すように、2つのヒューズエレメント2A,2Cの間に配置されることが好ましい。
【0067】
内側に設けられた高融点ヒューズエレメント51を最後に溶断させることにより、アーク放電が発生しても、高融点ヒューズエレメント51の溶融金属を、先に溶断している外側のヒューズエレメント2A,2Cによって捕捉することができ、高融点ヒューズエレメント51の溶融金属の飛散を抑制し、溶融金属によるショート等を防止することができる。
【0068】
[金属層]
また、上述した各ヒューズ素子1,20,30,40,50において、冷却部材3は、ヒューズエレメント2,51との接触表面の一部もしくは全部に金属層14を設けてもよい。以下、
図14を用いてヒューズ素子1を例に説明する。金属層14は、例えばハンダやAg、Cu又はこれらを用いた合金からなる金属ペーストを塗布すること等により形成することができる。金属層14が冷却部材3のヒューズエレメント2との接触表面に設けられることにより、ヒューズエレメント2は、高熱伝導部8の熱伝導性を向上させ、より効率よく冷却させることができる。
【0069】
なお、金属層14は、上下一対の冷却部材3の両方に設けてもよく、いずれか一方にのみ設けてもよい。また金属層14は、冷却部材3のヒューズエレメント2を挟持する表面に加えて、裏面側にも設けてもよい。
【0070】
また、上述した各ヒューズ素子1は、冷却部材3の外部回路の回路基板に実装される裏面に外部回路の接続電極と接続される接続電極を設けるとともに、ヒューズエレメント2に端子部5a,5bを設けないようにしてもよい。この場合、ヒューズ素子1は、金属層14と裏面に形成された接続電極とがスルーホールやキャスタレーション等により導通される。
【0071】
[接着剤]
また、上述した各ヒューズ素子1,20,30,40,50は、ヒューズエレメント2,51を、接着剤15で冷却部材3に接続してもよい。以下、
図15を用いてヒューズ素子1を例に説明する。接着剤15は、冷却部材3とヒューズエレメント2の遮断部9以外の部位に設けられる。これにより、ヒューズ素子1は、接着剤15を介して冷却部材3とヒューズエレメント2の高熱伝導部8との密着性が高まり、より効率よく熱を冷却部材3に伝達させることができる。
【0072】
接着剤15は、公知のいずれの接着剤を用いることができるが、高い熱伝導性を有することがヒューズエレメント2の冷却を促進する上で好ましい(例えば、KJR-9086:信越化学工業株式会社製、SX720:セメダイン株式会社製、SX1010:セメダイン株式会社製)。また、接着剤15は、バインダー樹脂に導電性粒子を含有させた導電性接着剤を用いてもよい。接着剤15として導電性接着剤を用いることによっても、冷却部材3とヒューズエレメント2との密着性を高めるとともに、導電性粒子を介して高熱伝導部8の熱を効率よく冷却部材3に伝達させることができる。また、接着剤15の替わりにハンダで接続してもよい。
【0073】
[ヒューズエレメント]
次いで、ヒューズエレメント2について説明する。なお、以下に説明するヒューズエレメント2の構成は、ヒューズエレメント40,51にも適用することができる。上述したヒューズエレメント2は、ハンダ又はSnを主成分とするPbフリーハンダ等の低融点金属、若しくは低融点金属と高融点金属の積層体である。例えば、ヒューズエレメント2は、内層と外層とからなる積層構造体であり、内層として低融点金属層2a、低融点金属層2aに積層された外層として高融点金属層2bを有する(
図1(B)参照)。
【0074】
低融点金属層2aは、好ましくは、Snを主成分とする金属であり、「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である。低融点金属層2aの融点は、必ずしもリフロー温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。高融点金属層2bは、低融点金属層2aの表面に積層された金属層であり、例えば、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属からなり、ヒューズ素子1,20,30,40,50をリフロー炉によって外部回路基板上に実装する場合においても溶融しない高い融点を有する。
【0075】
ヒューズエレメント2は、内層となる低融点金属層2aに、外層として高融点金属層2bを積層することによって、リフロー温度が低融点金属層2aの溶融温度を超えた場合であっても、ヒューズエレメント2として溶断するに至らない。したがって、ヒューズ素子1は、リフローによって効率よく実装することができる。
【0076】
また、ヒューズエレメント2は、所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、定格よりも高い値の電流が流れると、自己発熱によって低融点金属層2aの融点から溶融を開始し、速やかに端子部5a,5b間の電流経路を遮断することができる。例えば、低融点金属層2aをSn‐Bi系合金やIn‐Sn系合金などで構成した場合、ヒューズエレメント2は、140℃や120℃前後という低温から溶融を開始する。このとき、ヒューズエレメント2は、例えば低融点金属としてSnを40%以上含ませる合金を用いることで、溶融した低融点金属層2aが高融点金属層2bを溶食することにより、高融点金属層2bが溶融温度よりも低い温度で溶融する。したがって、ヒューズエレメント2は、低融点金属層2aによる高融点金属層2bの溶食作用を利用して短時間で溶断することができる。
【0077】
また、ヒューズエレメント2は、内層となる低融点金属層2aに高融点金属層2bが積層されて構成されているため、溶断温度を従来の高融点金属からなるチップヒューズ等よりも大幅に低減することができる。したがって、ヒューズエレメント2は、高融点金属エレメントに比して、幅広に形成するとともに通電方向を短く形成することにより電流定格を大幅に向上させながら小型化を図り、かつ回路基板との接続部位への熱の影響を抑えることができる。また、同じ電流定格をもつ従来のチップヒューズよりも小型化、薄型化を図ることができ、速溶断性にも優れる。
【0078】
また、ヒューズエレメント2は、ヒューズ素子1が組み込まれた電気系統に異常に高い電圧が瞬間的に印加されるサージへの耐性(耐パルス性)を向上することができる。すなわち、ヒューズエレメント2は、例えば100Aの電流が数msec流れたような場合にまで溶断してはならない。この点、極短時間に流れる大電流は導体の表層を流れることから(表皮効果)、ヒューズエレメント2は、外層として抵抗値の低いAgメッキ等の高融点金属層2bが設けられているため、サージによって印加された電流を流しやすく、自己発熱による溶断を防止することができる。したがって、ヒューズエレメント2は、従来のハンダ合金からなるヒューズに比して、大幅にサージに対する耐性を向上させることができる。
【0079】
ヒューズエレメント2は、低融点金属層2aの表面に高融点金属2bを電解メッキ法等の成膜技術を用いることにより製造できる。例えば、ヒューズエレメント2は、ハンダ箔や糸ハンダの表面にAgメッキを施すことにより効率よく製造できる。
【0080】
また、高融点ヒューズエレメント51は、ヒューズエレメント2と同様に製造することができる。このとき、高融点ヒューズエレメント51は、例えばヒューズエレメント2よりも高融点金属層2bの厚さを厚くする、あるいはヒューズエレメント2に用いた高融点金属よりも融点の高い高融点金属を用いる等により、ヒューズエレメント2よりも融点を高くすることができる。
【0081】
なお、ヒューズエレメント2は、低融点金属層2aの体積を、高融点金属層2bの体積よりも多く形成することが好ましい。ヒューズエレメント2は、自己発熱によって低融点金属が溶融することにより高融点金属を溶食し、これにより速やかに溶融、溶断することができる。したがって、ヒューズエレメント2は、低融点金属層2aの体積を高融点金属層2bの体積よりも多く形成することにより、この溶食作用を促進し、速やかに端子部5a,5b間を遮断することができる。
【0082】
[変形規制部]
また、ヒューズエレメント2は、溶融した低融点金属の流動を抑え、変形を規制する変形規制部を設けてもよい。これは、以下の事情による。すなわち、ヒューズ素子の用途が電子機器から産業用機械、電動自転車、電動バイク、クルマ等の大電流用途にまで広がり、さらなる高定格化、低抵抗化が求められていることから、ヒューズエレメントも、大面積化が進んでいる。しかし、大面積化されたヒューズエレメントを用いたヒューズ素子をリフロー実装する場合に、
図16に示すように、高融点金属102に被覆された低融点金属101が内部で溶融し、電極上に流出、あるいは電極上に供給された実装用ハンダの流入によって、ヒューズエレメント100に変形が生じる。これは、大面積化したヒューズエレメント100は剛性が低く、低融点金属101の溶融に伴う張力によって局所的に潰れや膨れが発生することによる。このような潰れや膨れは、ヒューズエレメント100の全体にうねりのように現れる。
【0083】
そして、このような変形が生じたヒューズエレメント100は、低融点金属101の凝集によって膨張した箇所では抵抗値が下がり、反対に低融点金属101が流出した箇所では抵抗値が上がってしまい、抵抗値にばらつきが生じる。その結果、所定の温度や電流で溶断しない、あるいは溶断に時間がかかる、反対に所定の温度や電流値未満で溶断してしまうなど、所定の溶断特性を維持することができない恐れがある。
【0084】
このような問題に対して、ヒューズエレメント2は、変形規制部を設けることによって、ヒューズエレメント2の変形を溶断特性のばらつきを抑える一定の範囲内に抑え、所定の溶断特性を維持することができる。
【0085】
変形規制部6は、
図17(A)(B)に示すように、低融点金属層2aに設けられた1又は複数の孔11の側面11aの少なくとも一部が、高融点金属層2bと連続する第2の高融点金属層16によって被覆されてなる。孔11は、例えば低融点金属層2aに針等の先鋭体を突き刺し、或いは低融点金属層2aに金型を用いてプレス加工を施す等により形成することができる。また、孔11は、所定のパターン、例えば四方格子状あるいは六方格子状に低融点金属層2aの全面にわたって一様に形成されている。
【0086】
第2の高融点金属層16を構成する材料は、高融点金属層2bを構成する材料と同様に、リフロー温度によっては溶融しない高い融点を有する。また、第2の高融点金属層16は、高融点金属層2bと同じ材料で、高融点金属層2bの形成工程において合わせて形成されることが製造効率上、好ましい。
【0087】
このようなヒューズエレメント2は、
図17(B)に示すように、一対の冷却部材3a,3bに挟持された後、ヒューズ素子1が各種電子機器の外部回路基板に搭載され、リフロー実装される。
【0088】
このとき、ヒューズエレメント2は、低融点金属層2aに外層としてリフロー温度においても溶融しない高融点金属層2bを積層するとともに変形規制部6を設けることにより、ヒューズ素子1の外部回路基板へのリフロー実装等において高温環境下に曝された場合にも、変形規制部6によって、ヒューズエレメント2の変形を溶断特性のばらつきを抑える一定の範囲内に抑えることができる。したがって、ヒューズ素子1は、ヒューズエレメント2が大面積化された場合にもリフロー実装が可能となり、実装効率を向上させることができる。また、ヒューズエレメント2は、ヒューズ素子1において、定格の向上を実現できる。
【0089】
すなわち、ヒューズエレメント2は、低融点金属層2aに孔11を開口するとともに、孔11の側面11aを第2の高融点金属層16で被覆した変形規制部6を備えることにより、リフロー炉等の外部熱源によって低融点金属層2aの融点以上の高熱環境に短時間曝された場合にも、孔11の側面11aを被覆する第2の高融点金属層16によって、溶融した低融点金属の流動が抑制されるとともに外層を構成する高融点金属層2bが支持される。したがって、ヒューズエレメント2は、張力によって溶融した低融点金属が凝集して膨張し、あるいは溶融した低融点金属が流出して薄くなり、局所的に潰れや膨れが発生することを抑制することができる。
【0090】
これにより、ヒューズエレメント2は、リフロー実装時の温度において局所的に潰れや膨れ等の変形に伴う抵抗値の変動を防止し、所定の温度や電流で所定の時間で溶断する溶断特性を維持することができる。また、ヒューズエレメント2は、ヒューズ素子1が外部回路基板へリフロー実装された後、当該外部回路基板がさらに別の回路基板にリフロー実装されるなど、リフロー温度下に繰り返し曝された場合にも溶断特性を維持することができ、実装効率を向上させることができる。
【0091】
また、後述するように、ヒューズエレメント2が大判のエレメントシートから切り出されて製造される場合には、ヒューズエレメント2の側面から低融点金属層2aが露出されるとともに、当該側面が、外部回路基板に設けられた接続電極と接続用ハンダを介して接触されている。この場合も、ヒューズエレメント2は、変形規制部6によって溶融した低融点金属の流動を抑制しているため、当該側面から溶融した接続用ハンダを吸い込むことにより低融点金属の体積が増えて局部的に抵抗値が下がることもない。
【0092】
なお、ヒューズエレメント2は、
図18(A)(B)に示すように、冷却部材3aの側面に嵌合させるとともに、両端を冷却部材3aの裏面側に折り曲げ、端子部5a,5bを冷却部材3aの裏面側に形成してもよい。
【0093】
また、ヒューズエレメント2は、
図19(A)(B)に示すように、冷却部材3aの側面に嵌合させるとともに、両端を冷却部材3aの外側に折り曲げ、端子部5a,5bを冷却部材3aの外側に形成してもよい。このとき、ヒューズエレメント2は、
図19(B)に示すように、端子部5a,5bが冷却部材3aの裏面と面一になるように折り曲げてもよく、あるいは、冷却部材3aの裏面から突出するように折り曲げてもよい。
【0094】
図18、
図19に示すように、ヒューズエレメント2は、端子部5a,5bを冷却部材3aの側面からさらに裏面側あるいは外側に折り曲げた位置に形成することにより、内層を構成する低融点金属の流出や、端子部5a,5bを接続する接続用ハンダの流入を抑制し、局所的な潰れや膨張による溶断特性の変動を防止することができる。
【0095】
ここで、孔11は、
図17(B)に示すように、低融点金属層2aを厚さ方向に貫通する貫通孔として形成してもよく、あるいは
図20(A)に示すように、非貫通孔として形成してもよい。孔11を貫通孔として形成した場合、孔11の側面11aを被覆する第2の高融点金属層16は、低融点金属層2aの表裏面に積層された高融点金属層2bと連続される。
【0096】
また、孔11を非貫通孔として形成した場合、
図20(A)に示すように孔11は、底面11bまで第2の高融点金属層16によって被覆されていることが好ましい。ヒューズエレメント2は、孔11を非貫通孔として形成し、リフロー加熱により低融点金属が流動した場合でも、孔11の側面11aを被覆する第2の高融点金属層16によって流動が抑制されるとともに外層を構成する高融点金属層2bが支持されるため、
図20(B)に示すように、ヒューズエレメント2の厚さの変動は軽微であり、溶断特性が変動することにはならない。
【0097】
また、孔11は、
図21(A)(B)に示すように、第2の高融点金属層16によって充填されていてもよい。孔11が第2の高融点金属層16によって充填されることにより、ヒューズエレメント2は、外層を構成する高融点金属層2bを支持する変形規制部6の強度を向上させヒューズエレメント2の変形をより抑制できるとともに、低抵抗化によって定格を向上させることができる。
【0098】
後述するように、第2の高融点金属層16は、例えば孔11が開口された低融点金属層2aに高融点金属層2bを電解メッキする等により形成する際に、同時に形成することができ、孔径やメッキ条件を調整することにより孔11内を第2の高融点金属層16によって埋めることができる。
【0099】
また、孔11は、
図20(A)に示すように、断面テーパ状に形成してもよい。孔11は、例えば低融点金属層2aに針等の先鋭体を突き刺して開口させることにより、当該先鋭体の形状に応じて断面テーパ状に形成することができる。また、孔11は、
図22(A)(B)に示すように、断面矩形状に形成してもよい。ヒューズエレメント2は、例えば低融点金属層2aに断面矩形状の孔11に応じた金型を用いてプレス加工を行う等により断面矩形状の孔11を開口することができる。
【0100】
なお、変形規制部6は、孔11の側面11aの少なくとも一部が高融点金属層2bと連続する第2の高融点金属層16によって被覆されていればよく、
図23に示すように、側面11aの上側まで第2の高融点金属層16によって被覆されていてもよい。また、変形規制部6は、低融点金属層2aと高融点金属層2bとの積層体を形成した後、高融点金属層2bの上から先鋭体を突き刺すことにより、孔11を開口若しくは貫通するとともに高融点金属層2bの一部を孔11の側面11aに押し込むことにより第2の高融点金属層16としてもよい。
【0101】
図23に示すように、孔11の側面11aの開口端側の一部に高融点金属層2bと連続する第2の高融点金属層16を積層することによっても、孔11の側面11aに積層された第2の高融点金属層16によって溶融した低融点金属の流動を抑制するとともに、開口端側の高融点金属層2bを支持し、ヒューズエレメント2の局所的な潰れや膨張の発生を抑制することができる。
【0102】
また、
図24(A)に示すように、変形規制部6は、孔11を非貫通孔として形成するとともに、低融点金属層2aの一方の面及び他方の面に互いに対向させて形成してもよい。また、
図24(B)に示すように、変形規制部は、孔11を非貫通孔として形成するとともに、低融点金属層2aの一方の面及び他方の面に互いに対向させずに形成してもよい。非貫通の孔11を低融点金属層2aの両面に互いに対向又は非対向に形成することによっても、各孔11の側面11aを被覆する第2の高融点金属層16によって溶融した低融点金属の流動が規制されるとともに、外層を構成する高融点金属層2bが支持される。したがって、ヒューズエレメント2は、張力によって溶融した低融点金属が凝集して膨張し、あるいは溶融した低融点金属が流出して薄くなり、局所的に潰れや膨れが発生することを抑制することができる。
【0103】
なお、変形規制部6は、孔11の側面11aに電解メッキによって第2の高融点金属層16を被覆するためにメッキ液が流入可能な孔径を備えていることが製造効率上好ましく、例えば孔の最小径が50μm以上とされ、より好ましくは70~80μmとされている。なお、孔11の最大径は第2の高融点金属層16のメッキ限界やヒューズエレメント2の厚さ等との関係で、適宜設定することができるが、孔径が大きいと初期抵抗値が上がる傾向がある。
【0104】
また、変形規制部6は、孔11の深さを低融点金属層2aの厚さの50%以上とすることが好ましい。孔11の深さがこれよりも浅いと、溶融した低融点金属の流動を抑制することが出来ず、ヒューズエレメント2の変形に伴って溶断特性の変動を招く恐れがある。
【0105】
また、変形規制部6は、低融点金属層2aに形成される孔11を所定の密度、例えば15×15mmあたり1個以上の密度で形成されていることが好ましい。
【0106】
また、変形規制部6は、孔11を、少なくとも過電流時にヒューズエレメント2が溶断する遮断部9に形成されていることが好ましい。ヒューズエレメント2の遮断部9は、溝部10と重畳され、冷却部材3a,3bによって支持されておらず、相対的に剛性が低い部位であるため、当該部位において低融点金属の流動による変形が生じやすい。そのため、ヒューズエレメント2の遮断部9に孔11を開口するとともに側面11aを第2の高融点金属層16によって被覆することにより、溶断部位における低融点金属の流動を抑制し変形を防止することができる。
【0107】
また、変形規制部6は、孔11をヒューズエレメント2の端子部5a,5bが設けられた両端側に設けることが好ましい。ヒューズエレメント2は、端子部5a,5bが内層を構成する低融点金属層2aが露出するとともに、外部回路の接続電極と接続用ハンダ等を介して接続されている。また、ヒューズエレメント2は、両端部が冷却部材3a,3bに挟持されていないことから、剛性が低く変形が生じやすい。そのため、ヒューズエレメント2は、当該両端側に、側面11aが第2の高融点金属層16によって被覆された孔11を設けることにより、剛性を高め、変形を効果的に防止することができる。
【0108】
ヒューズエレメント2は、低融点金属層2aに変形規制部6を構成する孔11を開口した後、低融点金属層2aに高融点金属をメッキ技術を用いて成膜することにより製造できる。ヒューズエレメント2は、例えば、長尺状のハンダ箔に所定の孔11を開口した後、表面にAgメッキを施すことによりエレメントフィルムを製造し、使用時には、サイズに応じて切断することで、効率よく製造でき、また容易に用いることができる。
【0109】
その他、ヒューズエレメント2は、蒸着等の薄膜形成技術や、他の周知の積層技術を用いることによっても、低融点金属層2aと高融点金属層2bとが積層されたヒューズエレメント2において変形規制部6を形成することができる。
【0110】
また、変形規制部6は、低融点金属層2aと高融点金属層2bとの積層体を形成した後、高融点金属層2bの上から先鋭体を突き刺すことにより、孔11を開口若しくは貫通するとともに、粘性あるいは粘弾性を有する高融点金属層2bの一部を孔11の側面11aに押し込むことにより第2の高融点金属層16としてもよい。
【0111】
なお、ヒューズエレメント2は、外層を構成する高融点金属層2bの表面に図示しない酸化防止膜を形成してもよい。ヒューズエレメント2は、外層の高融点金属層2bがさらに酸化防止膜によって被覆されることにより、例えば高融点金属層2bとしてCuメッキ層を形成した場合にも、Cuの酸化を防止することができる。したがって、ヒューズエレメント2は、Cuの酸化によって溶断時間が長くなる事態を防止することができ、短時間で溶断することができる。
【0112】
また、ヒューズエレメント2は、高融点金属層2bとしてCu等の安価だが酸化しやすい金属を用いることができ、Ag等の高価な材料を用いることなく形成することができる。
【0113】
高融点金属の酸化防止膜は、低融点金属層2aと同じ材料を用いることができ、例えばSnを主成分とするPbフリーハンダを用いることができる。また、酸化防止膜は、高融点金属層2bの表面に錫メッキを施すことにより形成することができる。その他、酸化防止膜は、Auメッキやプリフラックスによって形成することもできる。
【0114】
また、ヒューズエレメント2は、大判のエレメントシートから、所望のサイズに切り出してもよい。すなわち、全面にわたって一様に変形規制部6が形成された低融点金属層2aと高融点金属層2bとの積層体からなる大判のエレメントシートを形成し、任意のサイズのヒューズエレメント2を複数切り出すことにより形成してもよい。エレメントシートから切り出されたヒューズエレメント2は、変形規制部6が全面にわたって一様に形成されているため、切断面から低融点金属層2aが露出されていても、変形規制部6によって溶融した低融点金属の流動が抑制されているため、切断面からの接続用ハンダの流入や低融点金属の流出を抑制でき、厚みの変動に伴う抵抗値のばらつき及び溶断特性の変動を防止することができる。
【0115】
また、上述した長尺状のハンダ箔に所定の孔11を開口した後、表面に電解メッキを施すことによりエレメントフィルムを製造し、これを所定の長さに切断する製法では、ヒューズエレメント2のサイズがエレメントフィルムの幅で規定されてしまい、サイズ毎にエレメントフィルムを製造する必要があった。
【0116】
しかし、大判のエレメントシートを形成することにより、ヒューズエレメント2を所望のサイズで切り出すことができ、サイズの自由度が高くなる。
【0117】
また、長尺状のハンダ箔に電解メッキを施すと、電界が集中する長手方向にわたる側縁部に高融点金属層2bが厚くメッキされ、均一な厚みのヒューズエレメント2を得ることが困難であった。そのため、ヒューズ素子上において、ヒューズエレメント2の当該肉厚部位によって冷却部材3との間にクリアランスが生じ、高熱伝導部8における熱伝導率の低下を防止するために当該クリアランスを埋める接着剤15等を設ける必要が生じている。
【0118】
しかし、大判のエレメントシートを形成することにより、ヒューズエレメント2を、当該肉厚部位を避けて切り出すことができ、全面にわたって均一な厚みのヒューズエレメント2を得ることができる。したがって、エレメントシートから切り出されたヒューズエレメント2は、冷却部材3に配置するだけでも冷却部材3との密着性を向上させることができる。
【0119】
また、ヒューズエレメント2は、
図25に示すように、変形規制部6を、低融点金属層2aよりも融点の高い第1の高融点粒子17を低融点金属層2aに配合することにより形成してもよい。第1の高融点粒子17は、リフロー温度でも溶融しない高い融点を有する物質が用いられ、例えばCu、Ag、Ni等の金属やこれらを含む合金からなる粒子、ガラス粒子、セラミック粒子等を用いることができる。また、第1の高融点粒子17は、球状、鱗片状等、その形状は問わない。なお、第1の高融点粒子17は、金属や合金等を用いた場合、ガラスやセラミックに比して比重が大きいことから馴染みが良く分散性に優れる。
【0120】
変形規制部6は、低融点金属材料に第1の高融点粒子17を配合した後、フィルム状に成型する等により第1の高融点粒子17が単層で分散配置された低融点金属層2aを形成し、その後、高融点金属層2bが積層されることにより形成される。また、変形規制部6は、高融点金属層2bの積層後にヒューズエレメント2を厚さ方向にプレスすることにより、第1の高融点粒子17を高融点金属層2bに密着させてもよい。これにより、変形規制部6は、高融点金属層2bが第1の高融点粒子17によって支持され、リフロー加熱によって低融点金属が溶融した場合にも、第1の高融点粒子17によって低融点金属の流動を抑制するとともに高融点金属層2bを支持し、ヒューズエレメント2の局部的な潰れや膨張の発生を抑制することができる。
【0121】
また、変形規制部6は、
図26(A)に示すように、低融点金属層2aの厚さよりも小さい粒子径の第1の高融点粒子17を低融点金属層2aに配合してもよい。この場合も、
図26(B)に示すように、変形規制部6は、第1の高融点粒子17によって溶融した低融点金属の流動を抑制するとともに、高融点金属層2bを支持し、ヒューズエレメント2の局部的な潰れや膨張の発生を抑制することができる。
【0122】
また、ヒューズエレメント2は、
図27に示すように、変形規制部6を、低融点金属層2aよりも融点の高い第2の高融点粒子18を、低融点金属層2aに圧入させることにより形成してもよい。第2の高融点粒子18は、上述した第1の高融点粒子17と同様の物質を用いることができる。
【0123】
変形規制部6は、低融点金属層2aに第2の高融点粒子18を圧入することにより埋め込み、その後、高融点金属層2bを積層することにより形成される。このとき、第2の高融点粒子18は、低融点金属層2aを厚さ方向に貫通することが好ましい。これにより、変形規制部6は、高融点金属層2bが第2の高融点粒子18によって支持され、リフロー加熱によって低融点金属が溶融した場合にも、第2の高融点粒子18によって低融点金属の流動を抑制するとともに高融点金属層2bを支持し、ヒューズエレメント2の局部的な潰れや膨張の発生を抑制することができる。
【0124】
また、ヒューズエレメント2は、
図28に示すように、変形規制部6を、低融点金属層2aよりも融点の高い第2の高融点粒子18を高融点金属層2bと低融点金属層2aとに圧入させることにより形成してもよい。
【0125】
変形規制部6は、低融点金属層2aと高融点金属層2bとの積層体に第2の高融点粒子18を圧入し低融点金属層2a内に埋め込むことにより形成される。このとき、第2の高融点粒子18は、低融点金属層2a及び高融点金属層2bを厚さ方向に貫通することが好ましい。これにより、変形規制部6は、高融点金属層2bが第2の高融点粒子18によって支持され、リフロー加熱によって低融点金属が溶融した場合にも、第2の高融点粒子18によって低融点金属の流動を抑制するとともに高融点金属層2bを支持し、ヒューズエレメント2の局部的な潰れや膨張の発生を抑制することができる。
【0126】
なお、変形規制部6は、低融点金属層2aに孔11を形成するとともに、第2の高融点金属層16を積層し、さらに当該孔11内に第2の高融点粒子18を挿入してもよい。
【0127】
また、変形規制部6は、
図29に示すように、第2の高融点粒子18に、高融点金属層2bに接合する突縁部19を設けてもよい。突縁部19は、例えば、第1の高融点粒子17を高融点金属層2bと低融点金属層2aとに圧入させた後、ヒューズエレメント2を厚さ方向にプレスし、第2の高融点粒子18の両端を潰すことにより形成することができる。これにより、変形規制部6は、高融点金属層2bが第2の高融点粒子18の突縁部19と接合されることによってより強固に支持され、リフロー加熱によって低融点金属が溶融した場合にも、第2の高融点粒子18によって低融点金属の流動を抑制するとともに、突縁部19によって高融点金属層2bを支持し、ヒューズエレメント2の局部的な潰れや膨張の発生をより抑制することができる。
【0128】
このようなヒューズ素子1は、
図30(A)に示す回路構成を有する。ヒューズ素子1は、端子部5a,5bを介して外部回路に実装されることにより、当該外部回路の電流経路上に組み込まれる。ヒューズ素子1は、ヒューズエレメント2に所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、ヒューズ素子1は、定格を超える過電流が通電するとヒューズエレメント2が自己発熱によって遮断部9が溶断し、端子部5a,5b間を遮断することにより、当該外部回路の電流経路を遮断する(
図30(B))。
【0129】
このとき、ヒューズエレメント2は、上述したように、高熱伝導部8における発熱による熱が冷却部材3を介して積極的に冷却され、遮断部9に沿って形成された低熱伝導部7を選択的に過熱させることができる。したがって、ヒューズエレメント2は、端子部5a,5bへの熱の影響を抑えつつ遮断部9を溶断することができる。
【0130】
また、高融点金属層2bよりも融点の低い低融点金属層2aを含有することにより、過電流による自己発熱により、低融点金属層2aの融点から溶融を開始し、高融点金属層2bを浸食し始める。したがって、ヒューズエレメント2は、低融点金属層2aによる高融点金属層2bの浸食作用を利用することにより、高融点金属層2bが自身の融点よりも低い温度で溶融され、速やかに溶断することができる。
【0131】
[発熱体]
また、ヒューズ素子は、冷却部材に発熱体を形成し、この発熱体の発熱によってもヒューズエレメントを溶断してもよい。例えば、
図31(A)に示すヒューズ素子60は、一方の冷却部材3aの溝部10の両側に発熱体61と、発熱体61を覆う絶縁層62とが形成されている。
【0132】
発熱体61は、通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱体61は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合してペースト状にしたものを、冷却部材3a上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。
【0133】
また、発熱体61は、溝部10の両側に形成されることにより、ヒューズエレメント2の遮断部9が形成された低熱伝導部7の近傍に設けられている。したがって、ヒューズ素子60は、発熱体61が発熱した熱が低熱伝導部7にも伝達し遮断部9を溶断することができる。なお、発熱体61は、溝部10の片側のみに形成してもよく、また、他方の冷却部材の溝部10の両側又は片側に形成してもよい。
【0134】
また、発熱体61は、絶縁層62によって被覆されている。これにより、発熱体61は、絶縁層62を介してヒューズエレメント2と重畳される。絶縁層62は、発熱体61の保護及び絶縁を図るとともに、発熱体61の熱を効率よくヒューズエレメント2へ伝えるために設けられ、例えばガラス層からなる。
【0135】
なお、発熱体61は、冷却部材3aに積層された絶縁層62の内部に形成してもよい。また、発熱体61は、溝部10が形成された冷却部材3aの表面と反対側の裏面に形成してもよく、あるいは、冷却部材3aの内部に形成してもよい。
【0136】
図31(B)に示すように、発熱体61は、発熱体電極63を介して外部の電源回路と接続され、外部回路の電流経路を遮断する必要が生じた場合に、外部の電源回路から通電される。これにより、ヒューズ素子60は、発熱体61の発熱により、外部回路の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント2の遮断部9が溶断され、外部回路の電流経路を遮断することができる。外部回路の電流経路が遮断された後、電源回路からの通電が切断され、発熱体61の発熱が停止される。
【0137】
このとき、ヒューズエレメント2は、発熱体61の発熱により、高熱伝導部8を介して発熱体61の熱が放散されるとともに選択的に低熱伝導部7において高融点金属層2bよりも融点の低い低融点金属層2aの融点から溶融を開始し、高融点金属層2bを浸食し始める。したがって、ヒューズエレメント2は、低融点金属層2aによる高融点金属層2bの浸食作用を利用することにより、高融点金属層2bが自身の溶融温度よりも低い温度で遮断部9が溶融され、速やかに外部回路の電流経路を遮断することができる。
【0138】
また、ヒューズ素子70は、
図32(A)に示すように、絶縁層62の溝部10を介した一方、例えば左側の表面のみに発熱体61、絶縁層62及び発熱体引出電極64を形成し、ヒューズエレメント2を接続用ハンダ(図示せず)を介して発熱体引出電極64と接続させてもよい。発熱体61は、一端が発熱体引出電極64と接続され、他端が外部の電源回路と接続された発熱体電極63と接続される。これにより、発熱体61は、発熱体引出電極64を介してヒューズエレメント2と熱的、電気的に接続される。なお、ヒューズ素子70は、発熱体61等が設けられた溝部10の一方側と反対側(
図32(A)の右側)には、熱伝導性に優れた絶縁層62を設けて高さを揃えるようにしてもよい。
【0139】
このヒューズ素子70は、発熱体電極63、発熱体61、発熱体引出電極64及びヒューズエレメント2に至る発熱体61への通電経路が形成される。また、ヒューズ素子70は、発熱体電極63を介して発熱体61に通電させる電源回路と接続され、当該電源回路によって発熱体電極63とヒューズエレメント2にわたる通電が制御される。
【0140】
図32に示すヒューズ素子70は、
図32(B)に示すような回路構成を有する。すなわち、ヒューズ素子70は、端子部5a,5bを介して外部回路と直列接続されたヒューズエレメント2と、ヒューズエレメント2及び発熱体引出電極64を介して通電して発熱することによってヒューズエレメント2を溶融する発熱体61とからなる回路構成である。そして、ヒューズ素子70は、ヒューズエレメント2の端子部5a,5b及び発熱体電極63が、外部回路基板に接続される。
【0141】
このような回路構成からなるヒューズ素子70は、外部回路の電流経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって発熱体61が通電される。これにより、ヒューズ素子70は、発熱体61の発熱により、外部回路の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント2の遮断部9が溶断される。これにより、ヒューズエレメント1は、確実に端子部5a,5b間を溶断させ、外部回路の電流経路を遮断することができる。
【0142】
なお、ヒューズ素子は、ヒューズエレメント2に遮断部9を複数個所設けてもよい。
図33に示すヒューズ素子80は、ヒューズエレメント2に2か所の遮断部9が設けられるとともに冷却部材3aの遮断部9に応じた位置に2か所の溝部10が設けられている。また、
図33に示す冷却部材3aは、2つの溝部10の間における表面上に発熱体61、発熱体を被覆する絶縁層62、及び発熱体61の一端と接続されるとともにヒューズエレメント2と接続される発熱体引出電極64が、この順で設けられている。
【0143】
また、冷却部材3aは、溝部10の発熱体61等が設けられた側と反対側に、絶縁層62が設けられ、発熱体引出電極64と略同じ高さとされている。そして、ヒューズエレメント2は、適宜接続用ハンダを介して、これら発熱体引出電極64及び絶縁層62上に搭載されるとともに、一対の冷却部材3a,3bに挟持されている。これにより、ヒューズエレメント2は、溝部10と重畳する遮断部9が低熱伝導部7とされ、絶縁層62と重畳する部位が高熱伝導部8とされている。
【0144】
発熱体61は、一端が発熱体引出電極64と接続され、他端が外部の電源回路と接続された発熱体電極63と接続される。これにより、発熱体61は、発熱体引出電極64を介してヒューズエレメント2と熱的、電気的に接続される。
【0145】
図33に示すヒューズ素子80は、
図33(B)に示すような回路構成を有する。すなわち、ヒューズ素子80は、端子部5a,5bを介して外部回路と直列接続されたヒューズエレメント2と、発熱体電極63からヒューズエレメント2に至る通電経路を通じて通電され発熱することによってヒューズエレメント2を溶融する発熱体61とからなる回路構成である。そして、ヒューズ素子80は、ヒューズエレメント2の端子部5a,5b及び発熱体電極63が、外部回路基板に接続される。
【0146】
このような回路構成からなるヒューズ素子80は、外部回路の電流経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって発熱体61が通電、発熱される。発熱体61の発熱は絶縁層62及び発熱体引出電極64を通じてヒューズエレメント2に伝わり、左右に設けられた低熱伝導部7が積極的に加熱されるため、遮断部9が溶断される。なお、ヒューズエレメント2は高熱伝導部8において発熱体61からの熱を積極的に冷却するため、端子部5a,5bが加熱されることによる影響も抑制することができる。これにより、ヒューズエレメント2は、確実に端子部5a,5b間を溶断させ、外部回路の電流経路を遮断することができる。また、ヒューズエレメント2が溶断することにより発熱体61の通電経路も遮断されるため、発熱体61の発熱も停止する。
【0147】
[凹部形成エレメント]
次いで、本発明が適用されたヒューズ素子の更なる変形例について説明する。なお、以下に説明するヒューズ素子90~160において、上述したヒューズ素子1,20,30,40,50,60,70,80と同じ部材については同じ符号を付してその詳細を省略する。
【0148】
図34~
図36に示すヒューズ素子90は、外部回路の電流経路上に接続され、定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し当該電流経路を遮断するヒューズエレメント91と、ヒューズエレメント91と接触もしくは近接する冷却部材92とを有する。
【0149】
ヒューズエレメント91は、遮断部9が形成されるとともに冷却部材92から離隔する凹部93が形成されている。凹部93は、ヒューズエレメント91が冷却部材92に搭載されたときに、遮断部9を冷却部材92から離隔させて相対的に熱伝導性の低い低熱伝導部7を形成するものであり、遮断部9に沿って、ヒューズエレメント91の通電方向と直交する幅方向にわたって形成されている。
【0150】
また、凹部93は、
図34に示すように、ヒューズエレメント91の遮断部9に応じた位置を、冷却部材92から離隔するようにブリッジ状に形成されている。ブリッジ状の凹部93は、天面が平坦となるように形成してもよく、また、
図37に示すように、天面が円弧状に湾曲するように形成してもよい。また、ヒューズエレメント91は、ブリッジ状の凹部93が形成された面と反対側の面が凹部93の両側よりも突出する凸部94が形成されている。なお、凹部93は、平板状のヒューズエレメントをプレス成型する等により形成することができる。
【0151】
なお、ヒューズエレメント91は、上述したヒューズエレメント2と同じ構造を有する。すなわち、ヒューズエレメント91は、ハンダ又はSnを主成分とするPbフリーハンダ等の低融点金属、若しくは低融点金属と高融点金属の積層体であり、例えばSnを主成分とする金属からなる低融点金属層91aを内層とし、低融点金属層91aに積層された外層としてAg若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属からなる高融点金属層91bを有する。
【0152】
また、ヒューズエレメント91は、低融点金属層91aの体積を、高融点金属層91bの体積よりも多く形成することが好ましい。ヒューズエレメント91は、自己発熱によって低融点金属が溶融することにより高融点金属を溶食し、これにより速やかに溶融、溶断することができる。したがって、ヒューズエレメント91は、低融点金属層91aの体積を高融点金属層91bの体積よりも多く形成することにより、この溶食作用を促進し、速やかに遮断部9を遮断することができる。
【0153】
ヒューズ素子90は、上下一対の冷却部材92a,92bによってヒューズエレメント91を挟持することにより、ヒューズエレメント91内に、凹部93によって冷却部材92aから離隔し相対的に熱伝導性の低い低熱伝導部7と、冷却部材92a,92bと接触もしくは近接し相対的に熱伝導性の高い高熱伝導部8とが形成される。低熱伝導部7は、ヒューズエレメント91の通電方向と直交する幅方向にわたってヒューズエレメント91が溶断する遮断部9に沿って設けられ、高熱伝導部8は、遮断部9以外の部位で、少なくとも一部が冷却部材92a,92bと接触もしくは近接することにより熱的に接触されている。
【0154】
冷却部材92は、セラミックス等の熱伝導性の高い絶縁材料を好適に用いることができ、粉体成型等により任意の形状に成型することができる。また、冷却部材92は、熱硬化性又は光硬化性の樹脂材料で形成してもよい。あるいは、冷却部材92は、熱可塑性樹脂材料で形成してもよい。さらに、冷却部材92は、シリコーン系樹脂材料又はエポキシ系樹脂材料で形成してもよい。また、冷却部材92は、絶縁基板上に上述した各種樹脂材料からなる樹脂層を形成したものであってもよい。
【0155】
また、冷却部材92は、熱伝導率が1W/(m・k)以上であることが好ましい。なお、冷却部材92は、金属材料を用いて形成してもよいが、表面を絶縁被覆することが周囲の部品との短絡防止、及びハンドリング性の見地から好ましい。上下一対の冷却部材92a,92bは、例えば接着剤によって互いに結合されることにより素子筐体を形成する。
【0156】
ヒューズエレメント91を挟持する一対の冷却部材92a,92bのうち、ヒューズエレメント91の凹部93が形成された面と反対側の面を支持する冷却部材92bは、ヒューズエレメント91と対向する面の、ブリッジ状の凹部93の反対側に突出する凸部94に応じた位置に、溝部10が形成され、凸部94と離隔されている。また、冷却部材92bは、上述した接着剤15によってヒューズエレメント91の遮断部9以外の部位と接続されている。
【0157】
また、ヒューズエレメント91の凹部93が形成された面を支持する冷却部材92aは、ヒューズエレメント91と対向する面が平坦に形成されている。また、冷却部材92aは、高熱伝導部8に応じた位置に金属層95が形成され、ハンダ96等の導電性の接続材料を介して金属層95とヒューズエレメント91とが電気的、機械的に接続されている。なお、冷却部材92aとヒューズエレメント91とを接続材料として導電性を有する接着剤15を用いてもよい。ヒューズ素子90は、接着剤15及びハンダ96を介して冷却部材92a,92bとヒューズエレメント91の高熱伝導部8とが接続されているため、相互の密着性が高まり、より効率よく熱を冷却部材92a,92bに伝達させることができる。
【0158】
金属層95は、凹部93の形成位置に応じた位置を境にヒューズエレメント91の通電方向の両側に分断されている。また、冷却部材92aは、ヒューズエレメント91が搭載される面と反対側の面が、ヒューズ素子90が実装される外部回路基板への実装面とされ、一対の外部接続電極97a,97bが形成されている。これら外部接続電極97a,97bは、当該外部回路基板に形成された接続電極と、ハンダ等の接続材料によって接続される。また、外部接続電極97a,97bは、導電層が形成されたスルーホール98a及び冷却部材92aの側面に形成されたキャスタレーション98bを介して金属層95と接続されている。
【0159】
これにより、ヒューズ素子90は、一対の外部接続電極97a,97b間が、ヒューズエレメント91を介して接続され、ヒューズエレメント91が外部回路の通電経路の一部を構成する。また、ヒューズ素子90は、ヒューズエレメント91が遮断部9において溶断することにより、外部回路の通電経路を遮断することができる。
【0160】
このとき、ヒューズ素子90は、ヒューズエレメント91の面内において、遮断部9に沿って低熱伝導部7が設けられるとともに、遮断部9以外の部位に高熱伝導部8が形成されることにより、
図38に示すように、定格を超える過電流時においてヒューズエレメント91が発熱した際に、高熱伝導部8の熱を積極的に外部に逃がし、遮断部9以外の部位の発熱を抑えるとともに、遮断部9に沿って形成された低熱伝導部7に熱を集中させて、外部接続電極97a,97bへの熱の影響を抑えつつ遮断部9を溶断することができる。これにより、ヒューズ素子90は、ヒューズエレメント91の外部接続電極97a,97b間が溶断され、外部回路の電流経路を遮断することができる。
【0161】
したがって、ヒューズ素子90は、ヒューズエレメント91を略矩形板状に形成するとともに、通電方向に亘る長さを短くすることにより低抵抗化を図り、電流定格を向上させるとともに、外部回路の接続電極と接続用ハンダ等を介して接続される外部接続電極97a,97bの過熱を抑えることで表面実装用の接続用ハンダを溶解させる等の問題を解消し、小型化を実現することができる。
【0162】
ここで、ヒューズエレメント91は、低熱伝導部7の面積よりも高熱伝導部8の面積が広いことが好ましい。これにより、ヒューズエレメント91は、遮断部9を選択的に加熱、溶断するとともに、遮断部9以外の部位の熱を積極的に逃がして外部接続電極97a,97bの過熱による影響を抑え、小型化、高定格化を図ることができる。
【0163】
ここで、ヒューズエレメント91に形成する凹部93のヒューズエレメント91の通電方向に亘る長さL
2は、
図35に示すように略矩形板状のヒューズエレメント91を用いた場合、ヒューズエレメント91の遮断部9における最小幅以下とすることが好ましく、ヒューズエレメント91の遮断部9における最小幅の1/2以下とすることがさらに好ましい。
【0164】
遮断部9における最小幅とは、略矩形板状のヒューズエレメントの表面においてヒューズエレメント91の遮断部9における導通方向と直交する幅方向の最小幅をいい、遮断部9が円弧状、テーパ状、段差状等の形状をなし、遮断部9以外の部位よりも幅狭に形成されている場合にはその最小幅をいい、
図35に示すように遮断部9が遮断部9以外の部位と同じ幅で形成されている場合にはヒューズエレメント91の幅W
1をいう。
【0165】
ヒューズ素子90は、凹部93の長さL2を遮断部9における最小幅以下、また遮断部9における最小幅の1/2以下と狭めることにより、溶断時におけるアーク放電の発生を抑制し、絶縁抵抗を向上させることができる。
【0166】
また、上述したヒューズ素子90は、凹部93のヒューズエレメント91の通電方向に亘る長さL2を、0.5mm以上とすることが好ましい。ヒューズ素子90は、長さ0.5mm以上の低熱伝導部7を設けることで、過電流時における高熱伝導部8との温度差を形成し、選択的に遮断部9を溶断させることができる。
【0167】
また、上述したヒューズ素子90は、凹部93のヒューズエレメント91の通電方向に亘る長さL2を5mm以下とすることが好ましい。ヒューズ素子90は、凹部93の長さL2が5mmを超えると、遮断部9の面積が増大することから、その分溶断に要する時間が延びて速溶断性に劣り、また、アーク放電によるヒューズエレメント91の飛散量が増大し、周囲に付着した溶融金属によって絶縁抵抗の低下を招く恐れがある。
【0168】
また、上述したヒューズ素子90は、近接するヒューズエレメント91の高熱伝導部8と冷却部材92a,92bとの最小隙間は100μm以下とされることが好ましい。上述したように、ヒューズエレメント91は、冷却部材92a,92bに挟持されることにより、冷却部材92a,92bと接触もしくは近接する部位が高熱伝導部8とされる。このとき、ヒューズエレメント91の高熱伝導部8と冷却部材92a,92bとの最小隙間は100μm以下とされることにより、ヒューズエレメント91の遮断部9以外の部位と冷却部材92a,92bとをほぼ密着させることができ、定格を超える過電流時における発熱を冷却部材92a,92bを介して外部に伝達させ、遮断部9のみを選択的に溶断することができる。一方、ヒューズエレメント91の高熱伝導部8と冷却部材92a,92bとの最小隙間が100μmを超えると、当該部位の熱伝導性が落ちてしまい、定格を超える過電流時において遮断部9以外の予期しない部位が過熱、溶融する恐れがある。
【0169】
[端子部]
また、
図39~
図41に示すように、ヒューズ素子90は、ヒューズエレメント2と同様に、ヒューズエレメント91の通電方向の両端部を外部回路の接続電極と接続される端子部5a,5bとしてもよい。端子部5a,5bは、冷却部材92aの側縁に嵌合することにより、冷却部材92aの裏面側に向けられている。
図39に示すヒューズエレメント91は、上下一対の冷却部材92a,92bによって挟持されるとともに、冷却部材92a,92bの外に一対の端子部5a,5bが導出され、端子部5a,5bを介して外部回路の接続電極と接続可能とされている。
【0170】
ヒューズエレメント91に外部回路基板との接続端子となる端子部5a,5bを形成することにより、スルーホール98aやキャスタレーション98b及び外部接続電極97を介して外部回路基板と接続する場合に比して、ヒューズ素子全体の抵抗を低減させ、定格を向上することができる。
【0171】
また、冷却部材92aに外部接続電極97a,97b、スルーホール98a及びキャスタレーション98bを設ける工程が省かれ、生産工程が簡略化される。なお、冷却部材92aは、外部接続電極97a,97b、スルーホール98a及びキャスタレーション98bを設ける必要は無いが、冷却用、あるいは接続強度を向上させるために設けてもよい。
【0172】
[変形規制部]
また、
図42~
図44に示すように、ヒューズエレメント91は、溶融した低融点金属の流動を抑え、変形を規制する変形規制部6を設けてもよい。上述したように、変形規制部6を設けることによって、ヒューズエレメント91の変形を溶断特性のばらつきを抑える一定の範囲内に抑え、所定の溶断特性を維持することができる。したがって、ヒューズ素子90は、ヒューズエレメント91が大面積化された場合にもリフロー実装が可能となり、実装効率を向上させることができ、また、定格の向上を実現できる。
【0173】
なお、ヒューズエレメント91においても、ヒューズエレメント2と同様に、変形規制部6の種々の構成を適用することができる(
図17~
図29参照)。
【0174】
なお、ヒューズエレメント91は、
図45(A)(B)に示すように、冷却部材92aの側面に嵌合させるとともに、両端を冷却部材92aの裏面側に折り曲げ、端子部5a,5bを冷却部材92aの裏面側に形成してもよい。
【0175】
また、ヒューズエレメント91においても、ヒューズエレメント2と同様に、冷却部材92aの側面に嵌合させるとともに、両端を冷却部材92aの外側に折り曲げ、端子部5a,5bを冷却部材92aの外側に形成してもよい(
図19参照)。このとき、ヒューズエレメント91は、端子部5a,5bが冷却部材92aの裏面と面一になるように折り曲げてもよく、あるいは、冷却部材92aの裏面から突出するように折り曲げてもよい。
【0176】
ヒューズエレメント91は、端子部5a,5bを冷却部材92aの側面からさらに裏面側あるいは外側に折り曲げた位置に形成することにより、内層を構成する低融点金属の流出や、端子部5a,5bを接続する接続用ハンダの流入を抑制し、局所的な潰れや膨張による溶断特性の変動を防止することができる。
【0177】
このようなヒューズ素子90は、ヒューズ素子1と同様に、
図30(A)に示す回路構成を有する。ヒューズ素子90は、外部接続電極97a,97b又は端子部5a,5bを介して外部回路に実装されることにより、当該外部回路の電流経路上に組み込まれる。ヒューズ素子90は、ヒューズエレメント91に所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、ヒューズ素子90は、定格を超える過電流が通電するとヒューズエレメント91が自己発熱によって遮断部9が溶断し、外部接続電極97a,97b又は端子部5a,5b間を遮断することにより、当該外部回路の電流経路を遮断する(
図30(B))。
【0178】
このとき、ヒューズエレメント91は、上述したように、高熱伝導部8における発熱による熱が冷却部材92a,92bを介して積極的に冷却され、遮断部9に沿って形成された低熱伝導部7を選択的に過熱させることができる。したがって、ヒューズエレメント91は、外部接続電極97a,97b又は端子部5a,5bへの熱の影響を抑えつつ遮断部9を溶断することができる。
【0179】
また、高融点金属層91bよりも融点の低い低融点金属層91aを含有することにより、過電流による自己発熱により、低融点金属層91aの融点から溶融を開始し、高融点金属層91bを浸食し始める。したがって、ヒューズエレメント91は、低融点金属層91aによる高融点金属層91bの浸食作用を利用することにより、高融点金属層91bが自身の融点よりも低い温度で溶融され、速やかに溶断することができる。
【0180】
[ヒューズエレメントの並列配置]
また、ヒューズ素子は、ヒューズエレメントとして、複数のヒューズエレメント91を並列に接続してもよい。
図46(A)(B)に示すように、ヒューズ素子110は、例えば冷却部材92aにヒューズエレメント91A,91B,91Cの3枚が並列に配置される。ヒューズエレメント91A~91Cは、矩形板状に形成されるとともに、両端に端子部5a,5bが折り曲げ形成されている。そして、ヒューズエレメント91A~91Cは、各端子部5a,5bが外部回路の共通の接続電極と接続されることにより並列に接続される。これにより、ヒューズ素子110は、1枚のヒューズエレメント91を用いた上述したヒューズ素子90と同等の電流定格を有する。なお、各ヒューズエレメント91A~91Cは、溶断時に隣接するヒューズエレメントに接触しない程度の距離を隔てて並列配置されている。
【0181】
ヒューズエレメント91A~91Cは、端子部5a,5b間にわたる電流経路を遮断する遮断部9にわたって凹部93が形成され、冷却部材92aから隔離されるとともに、ブリッジ状の凹部93の反対側に突出する凸部94が冷却部材92bに形成された溝部10と離隔されている。これにより、ヒューズエレメント91A~91Cは、面内において、遮断部9に沿って低熱伝導部7が設けられるとともに、遮断部9以外の部位に高熱伝導部8が形成されている。そして、ヒューズエレメント91A~91Cは、定格を超える過電流時において発熱すると、高熱伝導部8の熱を冷却部材92a,92bを介して積極的に外部に逃がし、遮断部9以外の部位の発熱を抑えるとともに、遮断部9に沿って形成された低熱伝導部7に熱を集中させて、遮断部9を溶断することができる。
【0182】
このとき、ヒューズエレメント91A~91Cは、抵抗値の低いものから多くの電流が流れて、順次溶断する。ヒューズ素子110は、すべてのヒューズエレメント91A~91Cが溶断することにより、外部回路の電流経路を遮断する。
【0183】
ここで、ヒューズ素子110は、上述したヒューズ素子50と同様に、ヒューズエレメント91A~91Cに定格を超える電流が通電し、順次溶断することにより、最後に残ったヒューズエレメント91が溶断する際にアーク放電が発生した場合にも、ヒューズエレメント91の体積に応じて小規模なものとなり、溶融したヒューズエレメントが広範囲にわたって飛散し、飛散したヒューズエレメントによって新たに電流経路が形成され、あるいは飛散した金属が端子や周囲の電子部品等に付着することを防止することができる。また、ヒューズ素子110は、複数のヒューズエレメント91A~91C毎に溶断されることから、各ヒューズエレメントの溶断に要する熱エネルギーは少なくて済み、短時間で遮断することができる。
【0184】
また、ヒューズ素子110は、複数のヒューズエレメント91のうち一つのヒューズエレメントの遮断部9の幅を他のヒューズエレメントの遮断部9の幅よりも狭くする等により相対的に高抵抗化させ、溶断順序を制御してもよい。また、ヒューズ素子110は、3個以上のヒューズエレメント91を並列配置させ、並列方向の両側以外の少なくとも1つのヒューズエレメント91の幅をその他のヒューズエレメントの幅よりも狭くすることが好ましい。
【0185】
例えば、ヒューズ素子110は、ヒューズエレメント91A~91Cのうち、真ん中のヒューズエレメント91Bの一部又は全部の幅を他のヒューズエレメント91A,91Cの幅よりも狭くし、断面積に差を設けることにより、相対的にヒューズエレメント91Bを高抵抗化する。これにより、ヒューズ素子110は、定格を超える電流が通電されると、先ず比較的低抵抗のヒューズエレメント91A,91Cから多くの電流が通電し、アーク放電を伴うことなく溶断していく。その後、残った高抵抗化されたヒューズエレメント91Bに電流が集中し、最後にアーク放電を伴って溶断するが、ヒューズエレメント91Bの体積に応じて小規模なものとなり、溶融金属の爆発的な飛散を防止することができる。
【0186】
また、ヒューズ素子110は、内側に設けられたヒューズエレメント91Bを最後に溶断させることにより、アーク放電が発生しても、ヒューズエレメント91Bの溶融金属を、先に溶断している外側のヒューズエレメント91A,91Cによって捕捉することができる。したがって、ヒューズエレメント91Bの溶融金属の飛散を抑制し、溶融金属によるショート等を防止することができる。
【0187】
[高融点ヒューズエレメント]
また、ヒューズ素子110は、ヒューズエレメント91よりも溶融温度が高い高融点ヒューズエレメント111を有し、一又は複数のヒューズエレメント91と高融点ヒューズエレメント111とを、所定の間隔を隔てて並列配置させてもよい。ヒューズ素子110は、例えば
図47(A)(B)に示すように、冷却部材92aにヒューズエレメント91A,91Cと高融点ヒューズエレメント111の3枚が並列に配置される。
【0188】
高融点ヒューズエレメント111は、高融点ヒューズエレメント51と同様に、例えばAgやCu、あるいはこれらを主成分とした合金等の高融点金属を用いて形成することができる。また、高融点ヒューズエレメント111は、低融点金属と高融点金属とから構成してもよい。
【0189】
また、高融点ヒューズエレメント111は、ヒューズエレメント91と同様に製造することができる。このとき、高融点ヒューズエレメント111は、例えばヒューズエレメント91よりも高融点金属層91bの厚さを厚くする、あるいはヒューズエレメント91に用いた高融点金属よりも融点の高い高融点金属を用いる等により、ヒューズエレメント91よりも融点を高くすることができる。
【0190】
高融点ヒューズエレメント111は、ヒューズエレメント91A,91Cと同様に略矩形板状に形成されるとともに、両端部に端子部112a,112bが折り曲げ形成され、これら端子部112a,112bがヒューズエレメント91A,91Cの各端子部5a,5bとともに外部回路の共通の接続電極と接続されることにより、ヒューズエレメント91A,91Cと並列に接続される。これにより、ヒューズ素子110は、1枚のヒューズエレメント91を用いた上述したヒューズ素子90と同等以上の電流定格を有する。なお、各ヒューズエレメント91A,91C及び高融点ヒューズエレメント111は、溶断時に隣接するヒューズエレメントに接触しない程度の距離を隔てて並列配置されている。
【0191】
図47に示すように、高融点ヒューズエレメント111は、ヒューズエレメント91A,91Cと同様に、端子部112a,112b間にわたる電流経路を遮断する遮断部9にわたって凹部93が形成され、冷却部材92aから隔離されるとともに、ブリッジ状の凹部93の反対側に突出する凸部94が冷却部材92bに形成された溝部10と離隔されている。これにより、高融点ヒューズエレメント111は、面内において、遮断部9に沿って低熱伝導部7が設けられるとともに、遮断部9以外の部位に高熱伝導部8が形成されている。そして、高融点ヒューズエレメント111は、定格を超える過電流時において発熱すると、高熱伝導部8の熱を積極的に外部に逃がし、遮断部9以外の部位の発熱を抑えるとともに、遮断部9に沿って形成された低熱伝導部7に熱を集中させて、遮断部9を溶断することができる。
【0192】
そして
図47に示すヒューズ素子110は、定格を超える過電流時において、融点の低いヒューズエレメント91A,91Cが先に溶断し、融点の高い高融点ヒューズエレメント111が最後に溶断する。したがって、高融点ヒューズエレメント111は、その体積に応じて短時間で遮断することができ、また、最後に残った高融点ヒューズエレメント111の溶断時にアーク放電が発生した場合にも、高融点ヒューズエレメント111の体積に応じて小規模なものとなり、溶融金属の爆発的な飛散を防止することができ、また溶断後における絶縁性も大幅に向上させることができる。ヒューズ素子110は、すべてのヒューズエレメント91A,91C及び高融点ヒューズエレメント111が溶断することにより、外部回路の電流経路を遮断する。
【0193】
ここで、高融点ヒューズエレメント111は、ヒューズエレメント91とともに複数並列に配置された並列方向の両側以外の場所に配置されていることが好ましい。例えば高融点ヒューズエレメント111は、
図47に示すように、2つのヒューズエレメント91A,91Cの間に配置されることが好ましい。
【0194】
内側に設けられた高融点ヒューズエレメント111を最後に溶断させることにより、アーク放電が発生しても、高融点ヒューズエレメント111の溶融金属を、先に溶断している外側のヒューズエレメント91A,91Cによって捕捉することができ、高融点ヒューズエレメント111の溶融金属の飛散を抑制し、溶融金属によるショート等を防止することができる。
【0195】
[遮断部並列エレメント]
また、本発明が適用されたヒューズ素子は、
図48に示すように、複数の遮断部9が並列されたヒューズエレメント112を用いてもよい。なお、ヒューズエレメントの説明において、上述したヒューズエレメント91と同じ構成については同一の符号を付してその詳細を省略する。
【0196】
ヒューズエレメント112は、板状に形成され、両端部に外部回路と接続される端子部5a,5bが設けられている。そして、ヒューズエレメント112は、一対の端子部5a,5b間にわたって複数の遮断部9が形成され、少なくとも一つ、好ましくはすべての遮断部9に、冷却部材92aから離隔する凹部93が形成されている。なお、ヒューズエレメント112は、上述したヒューズエレメント91と同様に低融点金属層と高融点金属層とを含有することが好ましく、また、様々な構成によって形成することができる。
【0197】
以下では、3つの遮断部9A~9Cが並列されたヒューズエレメント112を用いた場合を例に説明する。
図48に示すように、各遮断部9A~9Cは、端子部5a,5b間にわたって搭載されることにより、ヒューズエレメント112の複数の通電経路を構成する。そして、複数の遮断部9A~9Cは、過電流に伴う自己発熱により溶断し、すべての遮断部9A~9Cが溶断することにより、端子部5a,5b間にわたる電流経路を遮断する。
【0198】
なお、ヒューズエレメント112は、定格を超える電流が通電することによる溶断する際にも、各遮断部9A~9Cが順次溶断することから、最後に残った遮断部9の溶断時に発生するアーク放電も小規模なものとなり、溶融したヒューズエレメントが広範囲にわたって飛散し、飛散した金属によって新たに電流経路が形成され、あるいは飛散した金属が端子や周囲の電子部品等に付着することを防止することができる。また、ヒューズエレメント112は、複数の遮断部9A~9C毎に溶断されることから、各遮断部9A~9Cの溶断に要する熱エネルギーは少なくて済み、短時間で遮断することができる。
【0199】
ヒューズエレメント112は、複数の遮断部9A~9Cのうち、一つの遮断部9の一部又は全部の断面積を他の溶断部の断面積よりも小さくすることにより、相対的に高抵抗化してもよい。また、ヒューズエレメント112は、
図48に示すように3つの遮断部9A、9B、9Cを設けるとともに、真ん中の遮断部9Bを最後に溶断させる等、3つ以上の溶断部を設けるとともに、内側の溶断部を最後に溶断させることが好ましい。
【0200】
一つの遮断部9を相対的に高抵抗化させることにより、ヒューズエレメント91は、定格を超える電流が通電されると、比較的低抵抗の遮断部9から多くの電流が通電し溶断していく。その後、残った当該高抵抗化された遮断部9に電流が集中し、最後にアーク放電を伴って溶断する。したがって、ヒューズエレメント112は、遮断部9A~9Cを順次溶断させることができ、また、断面積の小さい遮断部9の溶断時にのみアーク放電が発生するため、遮断部9の体積に応じて小規模なものとなり、溶融金属の爆発的な飛散を防止することができる。
【0201】
また、真ん中の遮断部9Bが最後に溶断する際にアーク放電が発生しても、遮断部9Bの溶融金属を、先に溶断している外側の遮断部9A,9Cによって捕捉することができ、遮断部9Bの溶融金属の飛散を抑制し、溶融金属によるショート等を防止することができる。
【0202】
このような複数の遮断部9が形成されたヒューズエレメント112は、例えば
図49(A)に示すように、板状の低融点金属と高融点金属とを含む板状体113の中央部2か所を矩形状に打ち抜いた後、プレス成型等により凹部93及び端子部5a,5bを形成することにより製造することができる。ヒューズエレメント112は、並列する3つの遮断部9A~9Cの両側が端子部5a,5bによって一体に支持されている。また、設けられたヒューズエレメント112は、端子部5a,5bを構成する板状体と遮断部9を構成する複数の板状体とを接続することにより製造してもよい。なお、
図49(B)に示すように、ヒューズエレメント112は、並列する3つの遮断部9A~9Cの一端が端子部5aによって一体に支持され、他端にはそれぞれ端子部5bが形成されたものでもよい。
【0203】
[発熱体]
また、ヒューズ素子は、冷却部材に発熱体を形成し、この発熱体の発熱によってもヒューズエレメントを溶断してもよい。例えば、
図50(A)に示すヒューズ素子120は、一方の冷却部材92aの低熱伝導部7と対向する位置の両側に発熱体61が形成されるとともに、発熱体61が絶縁層62によって被覆されている。
【0204】
上述したように、発熱体61は、通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなり、冷却部材92a上にスクリーン印刷技術等を用いて形成することができる。
【0205】
また、発熱体61は、ヒューズエレメント91の遮断部9が形成された低熱伝導部7の近傍に設けられている。したがって、ヒューズ素子120は、発熱体61が発熱した熱が低熱伝導部7にも伝達し遮断部9を溶断することができる。なお、発熱体61は、低熱伝導部7と対向する位置の片側のみに形成してもよく、また、他方の冷却部材92bの溝部10の両側又は片側に形成してもよい。
【0206】
また、発熱体61は、絶縁層62によって被覆されている。これにより、発熱体61は、絶縁層62を介してヒューズエレメント91と重畳される。絶縁層62は、発熱体61の保護及び絶縁を図るとともに、発熱体61の熱を効率よくヒューズエレメント91へ伝えるために設けられ、例えばガラス層からなる。
【0207】
なお、発熱体61は、冷却部材92aに積層された絶縁層62の内部に形成してもよい。また、発熱体61は、冷却部材92aの表面と反対側の裏面に形成してもよく、あるいは、冷却部材92aの内部に形成してもよい。
【0208】
図50(B)に示すように、発熱体61は、発熱体電極63を介して外部の電源回路と接続され、外部回路の電流経路を遮断する必要が生じた場合に、外部の電源回路から通電される。これにより、ヒューズ素子120は、発熱体61の発熱により、外部回路の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント91の遮断部9が溶断され、外部回路の電流経路を遮断することができる。外部回路の電流経路が遮断された後、電源回路からの通電が切断され、発熱体61の発熱が停止される。
【0209】
このとき、ヒューズエレメント91は、発熱体61の発熱により、高熱伝導部8を介して発熱体61の熱が放散されるとともに選択的に低熱伝導部7において高融点金属層91bよりも融点の低い低融点金属層91aの融点から溶融を開始し、高融点金属層91bの浸食作用により速やかに遮断部9が溶融され、外部回路の電流経路を遮断することができる。
【0210】
また、ヒューズ素子は、
図51(A)に示すヒューズ素子130のように、絶縁層62の低熱伝導部7と対向する位置の一方側、例えば左側の表面のみに発熱体61、絶縁層62及び発熱体引出電極64を形成し、ヒューズエレメント91を接続用ハンダ(図示せず)を介して発熱体引出電極64と接続させてもよい。発熱体61は、一端が発熱体引出電極64と接続され、他端が外部の電源回路と接続された発熱体電極63と接続される。発熱体引出電極64はヒューズエレメント91と接続されている。これにより、発熱体61は、発熱体引出電極64を介してヒューズエレメント91と熱的、電気的に接続される。なお、ヒューズ素子130は、発熱体61等が設けられた低熱伝導部7の一方側と反対側(
図51(A)の右側)には、熱伝導性に優れた絶縁層62を設けて高さを揃えるようにしてもよい。
【0211】
このヒューズ素子130は、発熱体電極63、発熱体61、発熱体引出電極64及びヒューズエレメント91に至る発熱体61への通電経路が形成される。また、ヒューズ素子130は、発熱体電極63を介して発熱体61に通電させる電源回路と接続され、当該電源回路によって発熱体電極63とヒューズエレメント91にわたる通電が制御される。
【0212】
ヒューズ素子130は、
図51(B)に示すような回路構成を有する。すなわち、ヒューズ素子130は、端子部5a,5bを介して外部回路と直列接続されたヒューズエレメント91と、ヒューズエレメント91及び発熱体引出電極64を介して通電して発熱することによってヒューズエレメント91を溶融する発熱体61とからなる回路構成である。そして、ヒューズ素子130は、ヒューズエレメント91の端子部5a,5b及び発熱体電極63が、外部回路基板に接続される。
【0213】
このような回路構成からなるヒューズ素子130は、外部回路の電流経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって発熱体61が通電される。これにより、ヒューズ素子130は、発熱体61の発熱により、外部回路の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント91の遮断部9が溶断される。これにより、ヒューズエレメント91は、確実に端子部5a,5b間を溶断させ、外部回路の電流経路を遮断することができる。
【0214】
また、ヒューズ素子は、ヒューズエレメント91に遮断部9を複数個所設けてもよい。
図52(A)に示すヒューズ素子140は、ヒューズエレメント91に2か所の遮断部9が設けられるとともに冷却部材92aの遮断部9と対向する位置の間に発熱体61、発熱体を被覆する絶縁層62、及び発熱体61の一端と接続されるとともにヒューズエレメント91と接続される発熱体引出電極64が、この順で設けられている。
【0215】
また、冷却部材92aは、発熱体61の両側にも絶縁層62が設けられ、発熱体引出電極64と略同じ高さとされている。そして、ヒューズエレメント91は、適宜接続用ハンダを介して、これら発熱体引出電極64及び絶縁層62上に搭載されるとともに、一対の冷却部材92a,92bに挟持されている。これにより、ヒューズエレメント91は、凹部93により冷却部材92aと離隔された遮断部9が低熱伝導部7とされ、絶縁層62と重畳する部位が高熱伝導部8とされている。
【0216】
発熱体61は、一端が発熱体引出電極64と接続され、他端が外部の電源回路と接続された発熱体電極63と接続される。これにより、発熱体61は、発熱体引出電極64を介してヒューズエレメント91と熱的、電気的に接続される。
【0217】
図52(A)に示すヒューズ素子140は、
図52(B)に示すような回路構成を有する。すなわち、ヒューズ素子140は、端子部5a,5bを介して外部回路と直列接続されたヒューズエレメント91と、発熱体電極63からヒューズエレメント91に至る通電経路を通じて通電され発熱することによってヒューズエレメント91を溶融する発熱体61とからなる回路構成である。そして、ヒューズ素子140は、ヒューズエレメント91の端子部5a,5b及び発熱体電極63が、外部回路基板に接続される。
【0218】
このような回路構成からなるヒューズ素子140は、外部回路の電流経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって発熱体61が通電、発熱される。発熱体61の発熱は絶縁層62及び発熱体引出電極64を通じてヒューズエレメント91に伝わり、左右に設けられた低熱伝導部7が積極的に加熱されるため、遮断部9が溶断される。なお、ヒューズエレメント91は高熱伝導部8において発熱体61からの熱を積極的に冷却するため、端子部5a,5bが加熱されることによる影響も抑制することができる。これにより、ヒューズエレメント91は、確実に端子部5a,5b間を溶断させ、外部回路の電流経路を遮断することができる。また、ヒューズエレメント91が溶断することにより発熱体61の通電経路も遮断されるため、発熱体61の発熱も停止する。
【0219】
[断熱部材]
また、ヒューズ素子は、冷却部材92a,92bよりも熱伝導率の低い断熱部材4を有し、ヒューズエレメント91の遮断部9が断熱部材4と接触もしくは近接することにより、相対的に高熱伝導部8よりも熱伝導性の低い低熱伝導部7が形成されてもよい。
図53に示すヒューズ素子90では、断熱部材4は、冷却部材92aの、ヒューズエレメント91の凹部93に対応する位置に配設されることにより遮断部9と接触もしくは近接配置される。
【0220】
[カバー部材]
また、ヒューズ素子は、ヒューズエレメント91の一方の面側に冷却部材92aを重畳させ、他方の面側はカバー部材13で覆うようにしてもよい。
図54に示すヒューズ素子150は、ヒューズエレメント91の下面に冷却部材92aが接触もしくは近接し、上面はカバー部材13によって覆われている。冷却部材92aは、凹部93によってヒューズエレメント91の遮断部9と離隔され、遮断部9以外の部位と接触もしくは近接されている。
【0221】
図54に示すヒューズ素子150においても、遮断部9と、遮断部9以外の部位とで熱伝導性に差を設け、ヒューズエレメント91の面内において、遮断部9に沿って低熱伝導部7が設けられるとともに、遮断部9以外の部位に高熱伝導部8が形成される。これにより、定格を超える過電流時においてヒューズエレメント91が発熱した際に、高熱伝導部8の熱を積極的に外部に逃がし、遮断部9以外の部位の発熱を抑えるとともに、遮断部9に沿って形成された低熱伝導部7に熱を集中させて、遮断部9を溶断することができる。
【0222】
ヒューズ素子150は、端子部5a,5bが導出され、外部回路が形成された回路基板に実装される実装面側に冷却部材92aを配置することで、回路基板側へヒューズエレメント91の熱を伝達させることができ、より効率よく冷却させることができる。
【0223】
なお、ヒューズ素子150は、回路基板への実装面と反対側に冷却部材92aを配置し、端子部5a,5bが導出される実装面側にカバー部材13を配置してもよい。この場合、端子部5a,5bはカバー部材13の側面と接することから冷却部材92aを介した端子部5a,5bへの熱の伝達が抑えられ、表面実装用の接続用ハンダを溶解させる等のリスクをより低減することができる。
【0224】
[凹部]
なお、ヒューズエレメント91は、ブリッジ状の凹部93を形成する他に、
図55、
図56に示すように、反対面の遮断部9が遮断部9以外の部位から突出する凸部が形成されない凹部99のみを設けてもよい。凹部99は、例えばヒューズエレメント91の遮断部9に沿ってプレス加工を施す、あるいは遮断部9の両側にさらに金属層を設ける等により、相対的に遮断部9に沿って凹部が形成されるように加工することにより形成することができる。
【0225】
凹部99が設けられたヒューズエレメント91は、遮断部9の両側よりも突出する凸部94が形成されない。そのため、凹部99が設けられたヒューズエレメント91を用いたヒューズ素子160は、ヒューズエレメント91を挟持する上下一対の冷却部材92a,92bの両方を平坦化させることができる。ヒューズ素子160も、遮断部9と、遮断部9以外の部位とで熱伝導性に差を設け、ヒューズエレメント91の面内において、遮断部9に沿って低熱伝導部7が設けられるとともに、遮断部9以外の部位に高熱伝導部8が形成される。これにより、ヒューズ素子160は、定格を超える過電流時においてヒューズエレメント91が発熱した際に、高熱伝導部8の熱を積極的に外部に逃がし、遮断部9以外の部位の発熱を抑えるとともに、遮断部9に沿って形成された低熱伝導部7に熱を集中させて、遮断部9を溶断することができる。
【0226】
なお、ヒューズ素子160は、
図57に示すように、金属層95を設けることなく、直接冷却部材92a,92bによってヒューズエレメント91を挟持してもよい。このとき、冷却部材92a,92bとヒューズエレメント91との間には、適宜接着剤15を介在させることができる。
【0227】
また、冷却部材92bは、遮断部9に応じた位置に溝部10を設けてもよい。また、ヒューズエレメント91は、何れか一方の面に凹部99を設け、又は両面に凹部99を設けてもよい。また、ヒューズエレメント91の両面に形成された凹部99は、対向する位置に形成されていてもよく、対向されていなくともよい。
【符号の説明】
【0228】
1 ヒューズ素子、2 ヒューズエレメント、2a 低融点金属層、2b 高融点金属層、3 冷却部材、5 端子部、6 変形規制部、7 低熱伝導部、8 高熱伝導部、9 遮断部、10 溝部、11 孔、12 嵌合凹部、13 カバー部材、14 金属層、15 接着剤、16 第2の高融点金属層、17 第1の高融点粒子、18 第2の高融点粒子、19 突縁部、20 ヒューズ素子、21 支持部材、30 ヒューズ素子、40 ヒューズ素子、41 ヒューズエレメント、42 端子片、50 ヒューズ素子、51 高融点ヒューズエレメント、52 端子部、60 ヒューズ素子、61 発熱体、62 絶縁層、63 発熱体電極、64 発熱体引出電極、70 ヒューズ素子、80 ヒューズ素子、90 ヒューズ素子、91 ヒューズエレメント、92 冷却部材、93 凹部、94 凸部、95 金属層、96 ハンダ、97 外部接続電極、98a スルーホール、98b キャスタレーション、99 凹部、110 ヒューズ素子、111 高融点ヒューズエレメント、120 ヒューズ素子、130 ヒューズ素子、140 ヒューズ素子、150 ヒューズ素子、160 ヒューズ素子
【手続補正書】
【提出日】2022-08-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒューズエレメントと、
冷却部材とを有し、
上記ヒューズエレメントは、熱により溶断する遮断部が上記冷却部材から離隔し相対的に熱伝導性の低い低熱伝導部と、上記遮断部以外の部位に上記冷却部材と接触もしくは近接し相対的に熱伝導性の高い高熱伝導部が設けられ、
上記冷却部材は、上記遮断部に応じた位置に溝部若しくは開放部が形成され、上記溝部若しくは上記開放部上に上記遮断部が重畳されており、
上記ヒューズエレメントは、少なくとも上記溝部若しくは上記開放部上において平坦な板状であるヒューズ素子。
【請求項2】
上記ヒューズエレメントは、上記冷却部材に挟持された全面にわたって平坦な板状である請求項1に記載のヒューズ素子。
【請求項3】
上記ヒューズエレメントが上記冷却部材で挟持され、上記ヒューズエレメントによって形成された上記冷却部材間の隙間を有し、上記隙間は上記ヒューズエレメントの溶断時に発生するガスを外部に排出可能である請求項1又は2に記載のヒューズ素子。
【請求項4】
上記溝部若しくは開放部は、上記ヒューズエレメントの幅方向に沿って設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載のヒューズ素子。