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特開2022-145737ライトシート顕微鏡及び試料観察方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145737
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ライトシート顕微鏡及び試料観察方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20220926BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20220926BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/36
G01N21/64 E
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119541
(22)【出願日】2022-07-27
(62)【分割の表示】P 2018034362の分割
【原出願日】2018-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 優
(72)【発明者】
【氏名】田中 るみか
(72)【発明者】
【氏名】高本 尚宜
(57)【要約】
【課題】高速且つ安定的な観察を実現することができるライトシート顕微鏡及び試料観察方法を提供する。
【解決手段】ライトシート顕微鏡1は、照射光学系10と、検出光学系20と、光検出器30と、を備える。照射光学系10は、時間と共に波長が変化する光を励起光L1として出力する波長掃引光源11と、波長掃引光源11から出力された励起光L1が入射し、励起光L1の波長に応じた出射角θで励起光L1を出射する分光素子12と、分光素子12から出射された励起光L1が出射角θに応じた入射角で入射するシリンドリカルレンズ16を含むリレー光学系14と、リレー光学系14によって導光された励起光L1を集光し、シート状の励起光L1を試料Sに照射する第1対物レンズ15と、を有する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を励起させる波長を含む励起光を前記試料に照射する照射光学系と、
前記励起光の照射に伴って前記試料から発せられる検出光を導光する検出光学系と、
前記検出光学系によって導光された前記検出光を検出する光検出器と、を備え、
前記照射光学系は、
時間と共に波長が変化する光を前記励起光として出力する波長掃引光源と、
前記波長掃引光源から出力された前記励起光が入射し、前記励起光の波長に応じた出射角で前記励起光を出射する分光素子と、
前記分光素子から出射された前記励起光が前記出射角に応じた入射角で入射するシリンドリカルレンズを含むリレー光学系と、
前記リレー光学系によって導光された前記励起光を集光し、シート状の前記励起光を前記試料に照射する第1対物レンズと、を有する、ライトシート顕微鏡。
【請求項2】
前記シリンドリカルレンズは、前記シリンドリカルレンズの光軸上において、前記分光素子の出射面から前記シリンドリカルレンズの焦点距離と等しい距離だけ離れて配置されている、請求項1に記載のライトシート顕微鏡。
【請求項3】
前記分光素子は、前記波長掃引光源から入射した前記励起光が出射する出射面を有し、
前記シリンドリカルレンズは、前記リレー光学系を構成しており、前記リレー光学系は、前記シリンドリカルレンズに入射した前記励起光を、前記第1対物レンズの瞳が前記分光素子の前記出射面と共役関係となるように前記第1対物レンズの瞳に伝送する瞳伝送光学系を構成している、請求項1又は2に記載のライトシート顕微鏡。
【請求項4】
前記分光素子は、回折格子である、請求項1~3のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡。
【請求項5】
前記分光素子は、プリズムである、請求項1~3のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡。
【請求項6】
前記検出光学系は、前記検出光が入射する第2対物レンズと、前記波長掃引光源から出力される前記励起光の波長の変化と同期して、前記第2対物レンズの焦点位置を変化させる焦点位置調節器と、を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡。
【請求項7】
前記焦点位置調節器は、液体レンズである、請求項6に記載のライトシート顕微鏡。
【請求項8】
前記照射光学系は、前記波長掃引光源を複数有し、
前記複数の波長掃引光源は、互いに中心波長が異なる光を前記励起光として出力し、
前記複数の波長掃引光源から出力される前記励起光は、その中心波長に応じた入射角で前記分光素子に入射する、請求項1~7のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡。
【請求項9】
前記分光素子と前記シリンドリカルレンズとの間の位置関係を維持しつつ、前記波長掃引光源、前記分光素子及び前記シリンドリカルレンズを前記シリンドリカルレンズの光軸に沿って移動させる移動機構を更に備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡。
【請求項10】
前記第1対物レンズから出射された前記励起光を前記試料に向けて反射する反射部を更に備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡。
【請求項11】
前記試料が配置される容器を更に備え、
前記容器には、前記反射部が設けられている、請求項10に記載のライトシート顕微鏡。
【請求項12】
前記検出光学系は、前記検出光が入射する第2対物レンズを有し、
前記第2対物レンズの光軸は、前記第1対物レンズの光軸と平行である、請求項1~11のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡。
【請求項13】
試料を励起させる波長を含む励起光を前記試料に照射するステップと、
前記励起光の照射に伴って前記試料から発せられる検出光を導光するステップと、
前記検出光を検出するステップと、を備え、
前記励起光を前記試料に照射するステップは、
時間と共に波長が変化する光が前記励起光として波長掃引光源から出力されるステップと、
前記波長掃引光源から出力された前記励起光が分光素子に入射し、前記励起光の波長に応じた出射角で前記励起光が前記分光素子から出射するステップと、
前記分光素子から出射された前記励起光が前記出射角に応じた入射角でシリンドリカルレンズに入射するステップと、
前記シリンドリカルレンズを含むリレー光学系によって導光された前記励起光が集光され、シート状の前記励起光が前記試料に照射されるステップと、を含む、試料観察方法。
【請求項14】
前記シリンドリカルレンズは、前記シリンドリカルレンズの光軸上において、前記分光素子の出射面から前記シリンドリカルレンズの焦点距離と等しい距離だけ離れて配置されている、請求項13に記載の試料観察方法。
【請求項15】
シート状の前記励起光が前記試料に照射される前記ステップでは、前記リレー光学系によって導光された前記励起光が第1対物レンズによって集光され、シート状の前記励起光が前記第1対物レンズから前記試料に照射され、
前記分光素子は、前記波長掃引光源から入射した前記励起光が出射する出射面を有し、
前記シリンドリカルレンズは、前記リレー光学系を構成しており、前記リレー光学系は、前記シリンドリカルレンズに入射した前記励起光を、前記第1対物レンズの瞳が前記分光素子の前記出射面と共役関係となるように前記第1対物レンズの瞳に伝送する瞳伝送光学系を構成している、請求項13又は14に記載の試料観察方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライトシート顕微鏡及び試料観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の励起光を試料に照射し、励起光の照射に伴って試料から発せられる検出光を検出するライトシート顕微鏡が知られている(例えば特許文献1参照)。このようなライトシート顕微鏡では、試料を収容する容器がホルダによって保持されており、試料の観察の際には、ホルダを移動又は回転させることにより、試料に対する励起光の照射位置が走査される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006-509246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなライトシート顕微鏡では、観察中に試料が揺れ動くおそれがあり、安定的に観察することができない場合がある。また、励起光の走査速度がホルダの移動速度で決まるため、観察を高速化することは難しい。試料をステージ上に配置し、ステージを移動又は回転させることも考えられるが、安定性及び高速化の観点においてホルダを移動又は回転させる場合と同様の課題がある。
【0005】
本発明は、高速且つ安定的な観察を実現することができるライトシート顕微鏡及び試料観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のライトシート顕微鏡は、試料を励起させる波長を含む励起光を試料に照射する照射光学系と、励起光の照射に伴って試料から発せられる検出光を導光する検出光学系と、検出光学系によって導光された検出光を検出する光検出器と、を備え、照射光学系は、時間と共に波長が変化する光を励起光として出力する波長掃引光源と、波長掃引光源から出力された励起光が入射し、励起光の波長に応じた出射角で励起光を出射する分光素子と、分光素子から出射された励起光が出射角に応じた入射角で入射するシリンドリカルレンズを含むリレー光学系と、リレー光学系によって導光された励起光を集光し、シート状の励起光を試料に照射する第1対物レンズと、を有する。
【0007】
このライトシート顕微鏡では、時間と共に波長が変化する光が励起光として波長掃引光源から出力され、波長掃引光源から出力された励起光が波長に応じた出射角で分光素子から出射され、分光素子から出射された励起光が当該出射角に応じた入射角でシリンドリカルレンズに入射する。これにより、シート状の励起光の照射位置を試料に対して走査することができる。その結果、観察の際に試料を移動又は回転させる必要がないため、試料が揺れ動くのを抑制することができ、試料を安定的に観察することができる。また、波長掃引光源、分光素子及びシリンドリカルレンズを用いて試料に対する励起光の照射位置を走査するため、試料に対する励起光の走査を高速化することができる。よって、このライトシート顕微鏡によれば、高速且つ安定的な観察を実現することができる。
【0008】
本発明のライトシート顕微鏡では、分光素子は、回折格子であってもよいし、プリズムであってもよい。これらの構成によれば、高速且つ安定的な観察を実現することができるとの上記作用効果が顕著に奏される。
【0009】
本発明のライトシート顕微鏡では、検出光学系は、検出光が入射する第2対物レンズと、波長掃引光源から出力される励起光の波長の変化と同期して、第2対物レンズの焦点位置を変化させる焦点位置調節器と、を有していてもよい。この構成によれば、試料に対する励起光の照射位置を高速に走査した場合でも、検出光を精度良く検出することができる。
【0010】
本発明のライトシート顕微鏡では、焦点位置調節器は、液体レンズであってもよい。この構成によれば、試料に対する励起光の照射位置を高速に走査した場合でも、検出光を精度良く検出することができるとの上記作用効果が顕著に奏される。
【0011】
本発明のライトシート顕微鏡では、波長掃引光源は、複数の中心波長の間で励起光の中心波長を切り替え可能に構成されており、分光素子は、波長掃引光源から出力される励起光の中心波長に応じて回転させられてもよい。この構成によれば、複数の中心波長の励起光を試料に照射することができる。
【0012】
本発明のライトシート顕微鏡では、照射光学系は、波長掃引光源を複数有し、複数の波長掃引光源は、互いに中心波長が異なる光を励起光として出力し、複数の波長掃引光源から出力される励起光は、その中心波長に応じた入射角で分光素子に入射してもよい。この構成によれば、複数の中心波長の励起光を試料に照射することができる。
【0013】
本発明のライトシート顕微鏡は、分光素子とシリンドリカルレンズとの間の位置関係を維持しつつ、波長掃引光源、分光素子及びシリンドリカルレンズをシリンドリカルレンズの光軸に沿って移動させる移動機構を更に備えてもよい。この構成によれば、第1対物レンズから出射される励起光のビームウェストの位置、すなわち試料に対する励起光の照射方向におけるシート状の励起光の形成位置を調整することができる。
【0014】
本発明のライトシート顕微鏡では、第1対物レンズから出射された励起光を試料に向けて反射する反射部を更に備えてもよい。また、本発明のライトシート顕微鏡では、試料が配置される容器を更に備え、容器には、反射部が設けられていてもよい。この構成によれば、容器の壁部の影響なく、試料に対してシート状の励起光を照射することができる。
【0015】
本発明のライトシート顕微鏡では、検出光学系は、検出光が入射する第2対物レンズを有し、第2対物レンズの光軸は、第1対物レンズの光軸と平行であってもよい。この構成によれば、倒立顕微鏡又は正立顕微鏡等の顕微鏡への組み込みを容易化することができる。
【0016】
本発明の試料観察方法は、試料を励起させる波長を含む励起光を試料に照射するステップと、励起光の照射に伴って試料から発せられる検出光を導光するステップと、検出光を検出するステップと、を備え、励起光を試料に照射するステップは、時間と共に波長が変化する光が励起光として波長掃引光源から出力されるステップと、波長掃引光源から出力された励起光が分光素子に入射し、励起光の波長に応じた出射角で励起光が分光素子から出射するステップと、分光素子から出射された励起光が出射角に応じた入射角でシリンドリカルレンズに入射するステップと、シリンドリカルレンズを含むリレー光学系によって導光された励起光が集光され、シート状の励起光が試料に照射されるステップと、を含む。
【0017】
この試料観察方法では、時間と共に波長が変化する光が励起光として波長掃引光源から出力され、波長掃引光源から出力された励起光が波長に応じた出射角で分光素子から出射され、分光素子から出射された励起光が当該出射角に応じた入射角でシリンドリカルレンズに入射する。これにより、シート状の励起光の照射位置を試料に対して走査することができる。その結果、観察の際に試料を移動又は回転させる必要がないため、試料が揺れ動くのを抑制することができ、試料を安定的に観察することができる。また、波長掃引光源、分光素子及びシリンドリカルレンズを用いて試料に対する励起光の照射位置を走査するため、試料に対する励起光の走査を高速化することができる。よって、このライトシート顕微鏡によれば、高速且つ安定的な観察を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高速且つ安定的な観察を実現することができるライトシート顕微鏡及び試料観察方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係るライトシート顕微鏡の構成を示す図である。
図2】分光素子を説明するための図である。
図3】X軸方向から見た場合の照射光学系を示す図である。
図4】(a)及び(b)は、Y軸方向から見た場合の照射光学系を示す図である。
図5】(a)~(c)は、ビームウェストの位置の調整について説明するための図である。
図6】(a)及び(b)は、試料が配置される容器周辺の構成を示す図である。
図7】(a)~(c)は、変形例を示す図である。
図8】他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0021】
図1に示されるライトシート顕微鏡1は、シート状(面状)の励起光L1を試料Sに照射し、励起光L1の照射に伴って試料Sから発せられる検出光L2を検出することで、試料Sの画像を取得する装置である。ライトシート顕微鏡1では、励起光L1の照射位置が試料Sに対して走査され、各照射位置において試料Sの画像が取得される。ライトシート顕微鏡1では、励起光L1が試料Sに照射される領域が狭いため、例えば光退色又は光毒性等の試料Sの劣化を抑制することができると共に、画像の取得を高速化することができる。
【0022】
試料Sは、例えば、蛍光色素又は蛍光遺伝子等の蛍光物質を含む細胞又は生体等のサンプルである。試料Sは、所定の波長域の光が照射された場合に、例えば蛍光等の検出光L2を発する。試料Sは、例えば、少なくとも励起光L1及び検出光L2に対する透過性を有する容器5内に配置されている。容器5の詳細については後述する。
【0023】
図1に示されるように、ライトシート顕微鏡1は、照射光学系10と、検出光学系20と、光検出器30と、制御部40と、を備えている。照射光学系10は、励起光L1を試料Sに照射する。検出光学系20は、励起光L1の照射に伴って試料Sから発せられる検出光L2を光検出器30へ導光する。光検出器30は、検出光学系20によって導光された検出光L2を検出する。制御部40は、照射光学系10、検出光学系20及び光検出器30等の動作を制御する。
【0024】
照射光学系10は、波長掃引光源11と、分光素子12と、リレー光学系14と、第1対物レンズ15と、を有している。リレー光学系14は、シリンドリカルレンズ16と、レンズ17と、を含んでいる。
【0025】
波長掃引光源11は、試料Sを励起させる波長を含む励起光L1を出力する。波長掃引光源11は、時間と共に波長が変化する光を励起光L1として出力する。より詳細には、波長掃引光源11は、出力する励起光L1の波長を高速且つ周期的に変化させることによって所定の波長範囲において波長掃引を行なう光源である。
【0026】
波長掃引光源11は任意の光源であってよいが、波長掃引時に出射角度が変化しないものが好ましい。そのような波長掃引光源11としては、例えば、キャビティ長の変化、又は温度若しくは電流値の変化によって出力光の波長が可変である半導体レーザ光源が挙げられる。波長掃引光源11は、白色のレーザ光を出力する光源と、特定の波長域の光を選択的に透過させるAOTF(Acousto-Optic Tunable Filter)とを組み合わせたユニットであってもよい。或いは、波長掃引光源11は、リトロー型の外部共振器型半導体レーザ光源、垂直共振器面発光型レーザ(VCSEL : Vertical Cavity Surface Emitting Laser)光源、又はKTN結晶を用いた外部共振器型半導体レーザ光源であってもよい。
【0027】
波長掃引光源11は、コヒーレント光を出射してもよい。コヒーレント光を出力するレーザ光源としては、連続波(Continuous Wave)を発振する光源が用いられてもよいし、超短パルス光等のパルス光を発振する光源、又は強度変調光を出力する光源が用いられてもよい。更に、これらの光源と、光シャッタ又はパルス変調用のAOM(Acousto-Optic Modulator)とを組み合わせたユニットが用いられてもよい。
【0028】
図1及び図2に示されるように、分光素子12には、波長掃引光源11から出力された励起光L1が入射する。分光素子12は、入射した励起光L1の波長に応じた出射角θで励起光L1を出射する。本実施形態では、分光素子12は、入射した励起光L1の波長に応じた出射角θで励起光L1を回折する反射型のブレーズド回折格子である。出射角θは、例えば、分光素子12における格子面12aの法線Nに対する、分光素子12から出射する励起光L1の光軸の角度である。図2では、波長λ1,λ2,λ3をそれぞれ有し、互いに異なる出射角θで分光素子12から出射された3つの励起光L1が例示されている。
【0029】
分光素子12から出射された励起光L1は、出射角θに応じた入射角でシリンドリカルレンズ16に入射する。分光素子12は、例えば、波長掃引光源11による波長掃引における中心波長の励起光L1が分光素子12から出射された場合に当該励起光L1がシリンドリカルレンズ16の光軸上を進行するように、配置されている。シリンドリカルレンズ16は、その光軸上において、分光素子12の格子面12a(出射面)からシリンドリカルレンズ16の焦点距離と等しい距離(光学距離)だけ離れて配置されている。シリンドリカルレンズ16に入射した励起光L1は、レンズ17を介して第1対物レンズ15へ導光される。第1対物レンズ15は、リレー光学系14によって導光された励起光L1を集光し、シート状の励起光L1を試料Sに照射する。第1対物レンズ15及びレンズ17は、シリンドリカルレンズ16の光軸上に配置されている。なお、分光素子12は、必ずしも上記のように配置されていなくてもよい。
【0030】
図3及び図4を参照しつつ、照射光学系10によって励起光L1がシート状に成形される様子を説明する。シリンドリカルレンズ16の表面は、その光軸Cと直交する一の方向(以下、X軸方向という)に沿って湾曲している一方、光軸C及びX軸方向と直交する方向(以下、Y軸方向)に沿っては湾曲しておらず直線状に形成されている。図3は、X軸方向から見た場合の照射光学系10を示す図であり、図4(a)及び図4(b)は、Y軸方向から見た場合の照射光学系10を示す図である。
【0031】
図3に示されるように、分光素子12から出力される励起光L1のうちY軸方向成分に対しては、シリンドリカルレンズ16はレンズとして機能しない。X軸方向から見た場合、シリンドリカルレンズ16を透過した励起光L1は、レンズ17によって第1対物レンズ15の瞳に集光される。レンズ17は、例えば、両凸レンズ、平凸レンズ等の凸レンズである。これにより、第1対物レンズ15からは、一定の幅(Y軸方向における幅)Wを有する帯状の励起光L1が出射される。この幅Wは、試料Sに照射されるシート状の励起光L1の幅Wである。シート状の励起光L1の幅Wは、レンズ17の焦点距離によって調整することができる。或いは、シート状の励起光L1の幅Wは、波長掃引光源11と分光素子12との光路上にアパーチャを挿入し、ビーム径を変化させることによって調整されてもよいし、レンズ17の焦点距離を変更することによって調整されてもよい。
【0032】
図4(a)及び図4(b)に示されるように、分光素子12から出力される励起光L1のうちX軸方向成分に対しては、シリンドリカルレンズ16はレンズとして機能する。Y軸方向から見た場合、シリンドリカルレンズ16及びレンズ17は瞳伝送光学系を構成しており、シリンドリカルレンズ16に入射した励起光L1は、レンズ17を介して第1対物レンズ15の瞳に伝送される。これにより、第1対物レンズ15からは、光軸Cと平行な線状の励起光L1が出射される。よって、3次元的に見た場合、第1対物レンズ15から出射される励起光L1は、シート状を呈する。
【0033】
図4(b)に示されるように、上述した出射角θは、Y軸方向から見た場合における分光素子12からの励起光L1の出射角である。すなわち、分光素子12は、Y軸方向から見た場合に、励起光L1の波長に応じた出射角θで励起光L1を出射する。
【0034】
第1対物レンズ15から出射されるシート状の励起光L1の高さ(X軸方向における光軸Cからの距離)Hは、シリンドリカルレンズ16に入射する励起光L1の入射角に対応する。これは、リレー光学系14によって第1対物レンズ15の瞳面が格子面12aと共役関係となるためである。すなわち、高さHは、分光素子12から出射される励起光L1の出射角θに対応する。換言すれば、照射光学系10では、出射角θが、第1対物レンズ15から出射されるシート状の励起光L1の高さHに変換される。したがって、波長掃引光源11から出力される励起光L1の波長を高速に変化させ、分光素子12から出射される励起光L1の出射角θを高速に変化させることで、第1対物レンズ15から出射されるシート状の励起光L1の高さHを高速に変化させることができる。
【0035】
図5(a)~図5(c)を参照しつつ、第1対物レンズ15から出射される励起光L1のビームウェスト(Y軸方向から見た場合にシート状励起光の厚さが最小となる部分)Bの位置の調整について説明する。ビームウェストBにおける励起光L1がシート状の励起光L1として試料Sに照射される。すなわち、ビームウェストBの位置は、試料Sに対する励起光L1の照射方向におけるシート状の励起光L1の形成位置に相当する。
【0036】
ビームウェストBの位置を調整するための手段として、ライトシート顕微鏡1は、分光素子12とシリンドリカルレンズ16との間の位置関係(光学距離)を維持しつつ、波長掃引光源11、分光素子12及びシリンドリカルレンズ16を光軸Cに沿って移動させる移動機構3を更に備えている。移動機構3は、例えば可動ステージ等である。移動機構3は、制御部40と電気的に接続されており、制御部40によってその駆動が制御される。
【0037】
図5(a)及び図5(b)に示されるように、移動機構3によって波長掃引光源11、分光素子12及びシリンドリカルレンズ16をレンズ17から遠ざかるように移動させることにより、ビームウェストBを第1対物レンズ15側に移動させることができる。図5(a)及び図5(c)に示されるように、移動機構3によって波長掃引光源11、分光素子12及びシリンドリカルレンズ16をレンズ17に近づくように移動させることにより、ビームウェストBを第1対物レンズ15とは反対側に移動させることができる。なお、波長掃引光源11は、ファイバ、コリメータレンズ等の光学部材を介して分光素子12と光学的に接続されていてもよく、その場合、それらの光学部材も移動機構3によって波長掃引光源11、分光素子12及びシリンドリカルレンズ16と一体的に移動させられる。
【0038】
図6(a)及び図6(b)に示されるように、試料Sは容器5内に配置されている。容器5は、例えばガラス又はプラスチック等によって構成されており、底壁部51及び側壁部52を有している。底壁部51は、例えばカバーガラス又はガラスボトムディッシュ等である。側壁部52は、例えば、底壁部51の縁部から底壁部51と直交する方向に沿って延在し、円筒状又は角筒状を呈している。容器5は、例えば、底壁部51が側壁部52に対して鉛直下側に位置するように配置されている。試料Sは、例えば、底壁部51と側壁部52とによって画定される収容空間内に培養液と共に配置されている。試料Sは、底壁部51上に載置されている。なお、試料が乾燥物の場合、容器5は用いられなくてもよい。
【0039】
図6(a)に示されるように、第1対物レンズ15は、例えば水浸対物レンズであり、培養液内に浸かるように配置されている。容器5の底壁部51には、第1対物レンズ15から出射された励起光L1を試料Sに向けて所定角度で(例えば垂直に)反射するミラー(反射部)53が設けられている。ミラー53は、第1対物レンズ15の光軸及び底壁部51のそれぞれに対して45度傾斜して延在する反射面54aを有している。試料Sに対するシート状の励起光L1の走査方向は、矢印Aで示される方向(第1対物レンズ15の光軸(光軸C)に沿った方向)である。なお、ミラー(反射部)53は、容器5に設けられなくてもよい。例えば、ミラー53は、第1対物レンズ15にアタッチメントを介して取り付けられてもよい。
【0040】
図6(b)に示されるように、第1対物レンズ15は、乾燥対物レンズであってもよく、培養液の外部に配置されてもよい。乾燥対物レンズのワーキングディスタンスは、水浸対物レンズのワーキングディスタンスよりも長い。この場合、容器5の底壁部51には、第1対物レンズ15から出射された励起光L1を試料Sに向けて所定角度で(例えば垂直に)反射するプリズム(反射部)54が設けられる。プリズム54は、第1対物レンズ15の光軸及び底壁部51のそれぞれに対して45度傾斜して延在する反射面54aを有している。試料Sに対するシート状の励起光L1の走査方向は、矢印Aで示される方向である。なお、プリズム(反射部)54は、容器5に設けられなくてもよい。例えば、プリズム54は、第1対物レンズ15にアタッチメントを介して取り付けられてもよい。
【0041】
反射部がミラー53である場合、ワーキングディスタンスが短い水浸対物レンズを用いることができる。この場合、第1対物レンズ15と試料Sとの間に同一の媒質が存在し、異種の媒質の界面を通過する際に発生する収差を補正する必要がないため、第1対物レンズ15の開口数(NA)を高めることができる。一方、反射部がプリズム54である場合、ワーキングディスタンスの長い乾燥対物レンズを用いることができる。この場合、レンズ洗浄の手間を省くことができると共に、試料Sを頻繁に交換するような測定、第1対物レンズ15を侵襲する液体を用いた測定、及び長期間の測定等を容易に行うことができる。
【0042】
検出光学系20は、第2対物レンズ21と、液体レンズ(焦点位置調節器)22と、を有している。第2対物レンズ21は、励起光L1の照射に伴って試料Sから発せられる検出光L2を光検出器30側へ導光する。第2対物レンズ21は、底壁部51を介して試料Sと対向するように配置されている。図1図6(a)及び図6(b)に示されるように、第2対物レンズ21の光軸は、第1対物レンズ15の光軸と平行であり、試料Sに照射されるシート状の励起光L1が形成される平面と直交している。本実施形態では、第1対物レンズ15から出射され、鉛直方向下向きに進行する励起光L1が、ミラー53又はプリズム54によって反射されて水平方向に進行し、試料Sに照射される。励起光L1の照射に伴って試料Sから発せられ、鉛直方向下向きに進行する検出光L2が、第2対物レンズ21に入射する。
【0043】
液体レンズ22は、入力信号に応じて焦点距離が可変なレンズである。検出光学系20では、液体レンズ22の焦点距離を変化させることで、第2対物レンズ21の焦点位置を調節することができる。ライトシート顕微鏡1では、第2対物レンズ21の焦点位置が試料Sに対する励起光L1の照射位置に一致するように、波長掃引光源11から出力される励起光L1の波長の変化と同期して、液体レンズ22の焦点距離が変化する。これにより、検出光L2を光検出器30に結像させることが可能となる。したがって、試料Sに対する励起光L1の照射位置を高速に走査した場合でも、検出光L2を精度良く検出することができる。なお、検出光学系20は、第2対物レンズ21と液体レンズ22との間に配置された凸レンズを更に有していてもよい。この場合、液体レンズ22による第2対物レンズ21の焦点位置の調節範囲を拡大することができる。
【0044】
光検出器30は、第2対物レンズ21によって導光された検出光L2を撮像する。光検出器30としては、例えば、CMOSカメラ、CCDカメラ、マルチアノードの光電子増倍管、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)等の2次元イメージセンサ、又はラインセンサ等が挙げられる。或いは、光検出器30は、アバランシェフォトダイオード等のポイント光センサ、又は分光器であってもよい。
【0045】
制御部40は、例えば、プロセッサ及びメモリ等を含むコンピュータにより構成されている。制御部40は、プロセッサにより、移動機構3、波長掃引光源11、液体レンズ22及び光検出器30等の動作を制御し、各種の制御を実行する。例えば、制御部40は、分光素子12から出射される励起光L1の出射角θが時間と共に変化するように、波長掃引光源11から出力される励起光L1の波長を時間と共に変化させる。また、制御部40は、第2対物レンズ21の焦点位置が試料Sに対する励起光L1の照射位置に一致するように、波長掃引光源11から出力される励起光L1の波長の変化と同期して、液体レンズ22の焦点距離を変化させる。なお、第1対物レンズ15及び第2対物レンズ21の少なくとも一方は、ピエゾアクチュエータ又はステッピングモータ等の駆動素子により、その光軸に沿って移動可能となっていてもよい。この場合、制御部40は、当該駆動素子の動作をも制御する。
【0046】
以上説明したように、ライトシート顕微鏡1では、時間と共に波長が変化する光が励起光L1として波長掃引光源11から出力され、波長掃引光源11から出力された励起光L1が波長に応じた出射角θで分光素子12から出射され、分光素子12から出射された励起光L1が当該出射角θに応じた入射角でシリンドリカルレンズ16に入射する。これにより、シート状の励起光L1の照射位置を試料Sに対して走査することができる。その結果、観察の際に試料Sを移動又は回転させる必要がないため、試料Sが揺れ動くのを抑制することができ、試料Sを安定的に観察することができる。また、波長掃引光源11、分光素子12及びシリンドリカルレンズ16を用いて試料Sに対する励起光L1の照射位置を走査するため、試料Sに対する励起光L1の走査を高速化することができる。よって、ライトシート顕微鏡1によれば、高速且つ安定的な観察を実現することができる。また、例えばガルバノミラー等を用いて試料Sに対するシート状の励起光L1の照射位置を機械的に走査する場合と比べて、安定性に優れると共に部品の寿命が長く、しかも、一層の高速化を図ることができる。更に、試料Sに対して照射される励起光L1の中心波長及び波長掃引範囲を時間と共に変化させることができる。そのため、試料Sに対する照射光の中心波長及び波長掃引範囲を時間と共に変化させることが求められる観察に好適に用いることできる。例えば、測定対象の化学組成等が時間と共に変化し、吸収スペクトルのピークが変化する場合に、当該変化に応じて照射光の中心波長及び波長掃引範囲を補正(校正)することができる。或いは、時間と共に観察対象自体が変わる場合に、照射光の中心波長及び波長掃引範囲を観察対象の物質の吸収スペクトルに好適な中心波長及び波長掃引範囲に変更することができる。
【0047】
ライトシート顕微鏡1では、分光素子12が回折格子である。これにより、高速且つ安定的な観察を実現することができるとの上記作用効果が顕著に奏される。
【0048】
ライトシート顕微鏡1では、検出光学系20が、波長掃引光源11から出力される励起光L1の波長の変化と同期して、第2対物レンズ21の焦点位置を変化させる液体レンズ22(焦点位置調節器)を有している。これにより、試料Sに対する励起光L1の照射位置を高速に走査した場合でも、検出光L2を精度良く検出することができる。
【0049】
ライトシート顕微鏡1は、分光素子12とシリンドリカルレンズ16との間の位置関係を維持しつつ、波長掃引光源11、分光素子12及びシリンドリカルレンズ16を光軸Cに沿って移動させる移動機構3を備えている。これにより、第1対物レンズ15から出射される励起光L1のビームウェストBの位置、すなわち試料Sに対する励起光L1の照射方向におけるシート状の励起光L1の形成位置を調整することができる。反射部がプリズム54である場合、励起光L1にプリズム54を通過させることにより、光路長が変化してビームウェストBの位置がずれるのを抑制することができる。
【0050】
ライトシート顕微鏡1では、容器5には、第1対物レンズ15から出射された励起光L1を試料Sに向けて反射するミラー53又はプリズム54(反射部)が設けられている。これにより、容器5の側壁部52の影響なく、試料Sに対してシート状の励起光L1を照射することができる。また、励起光L1を導光するための反射部を容器5に一体化することができ、部品数の低減及び装置の小型化を図ることができる。また、反射部が容器5と別体である場合と比べて、励起光L1を試料Sに対して確実に精度良く照射することができる。また、第1対物レンズ15及び第2対物レンズ21を互いの光軸が平行となるように配置することができ、倒立顕微鏡又は正立顕微鏡等の顕微鏡への組み込みを容易化することができる。なお、ミラー53又はプリズム54は、容器5に設けられなくてもよい。例えば、ミラー53又はプリズム54は、第1対物レンズ15にアタッチメントを介して取り付けられてもよい。ますなわち、分光素子12による角度変調を高さ変調に変換して、シート状の励起光L1の進行方向を変えることで、汎用の顕微鏡への組み込みを容易化することができる。また、反射部による反射角度を設定することで、第1対物レンズ15及び第2対物レンズ21を互いに干渉しない範囲で3次元的に自在に配置することが可能となる。また、マイクロセルチャンバ又はマイクロ流路との組み合わせを容易化することができ、確実な観察を実現することができる。
【0051】
ライトシート顕微鏡1では、第2対物レンズ21の光軸が第1対物レンズ15の光軸と平行である。これにより、倒立顕微鏡又は正立顕微鏡等の顕微鏡への組み込みを容易化することができる。
【0052】
ライトシート顕微鏡1による試料観察方法は、試料Sを励起させる波長を含む励起光L1を試料Sに照射するステップと、励起光L1の照射に伴って試料Sから発せられる検出光L2を導光するステップと、検出光L2を検出するステップと、を備える。励起光L1を試料Sに照射するステップは、時間と共に波長が変化する光が励起光L1として波長掃引光源11から出力されるステップと、波長掃引光源11から出力された励起光L1が分光素子12に入射し、励起光L1の波長に応じた出射角θで励起光L1が分光素子12から出射するステップと、分光素子12から出射された励起光L1が出射角θに応じた入射角でシリンドリカルレンズ16に入射するステップと、シリンドリカルレンズ16を含むリレー光学系14によって導光された励起光L1が集光され、シート状の励起光L1が試料Sに照射されるステップと、を含む。この試料観察方法によれば、上述した理由により、高速且つ安定的な観察を実現することができる。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。
【0054】
図7(a)に示されるように、分光素子12は、透過型回折格子であってもよい。このような分光素子12は、例えばスリットを有して構成される。図7(b)に示されるように、分光素子12は、プリズムであってもよい。この場合、分光素子12は、Y軸方向周りに回転可能に構成され、照射光学系10は、分光素子12をY軸周りに回転駆動させる駆動部を有する。この駆動部は、例えばステッピングモータ又はピエゾアクチュエータ等である。駆動部は、制御部40と電気的に接続されており、制御部40によってその駆動が制御される。分光素子12は、光軸C上において分光素子12から励起光L1が出射されるように、駆動部により、波長掃引光源11から出力される励起光L1の波長に応じて、Y軸周りに回転させられる。図7(c)に示されるように、分光素子12は、回折格子とプリズムが組み合わされたグリズムであってもよい。これらの変形例によっても、上記実施形態の場合と同様に、高速且つ安定的な観察を実現することができる。また、分光素子12がグリズムである場合、中心波長の光の進行方向が入射前後で変化しないため、光学系の設計を容易化することができる。
【0055】
上記実施形態において、波長掃引光源11は、複数の中心波長の間で励起光L1の中心波長を切り替え可能に構成されてもよい。この場合、分光素子12は、Y軸方向周りに回転可能に構成され、照射光学系10は、分光素子12をY軸周りに回転駆動させる駆動部を有する。この駆動部は、例えばステッピングモータ又はピエゾアクチュエータ等である。駆動部は、制御部40と電気的に接続されており、制御部40によってその駆動が制御される。分光素子12は、中心波長の励起光L1が光軸C上を進行するように、駆動部により、波長掃引光源11から出力される励起光L1の中心波長に応じて、Y軸方向周りに回転させられる。この変形例によっても、上記実施形態の場合と同様に、高速且つ安定的な観察を実現することができる。また、複数の中心波長の励起光L1を試料Sに照射することができる。
【0056】
図8に示されるように、照射光学系10は、互いに中心波長が異なる光を励起光L1として出力する複数の波長掃引光源11A,11Bを有していてもよい。この場合、各波長掃引光源11A,11Bから出力される励起光L1は、その中心波長に応じた入射角で分光素子12に入射する。すなわち、波長掃引光源11A,11Bは、当該入射条件が満たされるように配置されている。具体的には、波長掃引光源11Aから出力される励起光L1Aは、中心波長の励起光L1Aが光軸C上を進行するように、励起光L1Aの中心波長に応じた入射角φ1で分光素子12に入射する。波長掃引光源11Bから出力される励起光L1Bは、中心波長の励起光L1Bが光軸C上を進行するように、励起光L1Bの中心波長に応じた入射角φ2で分光素子12に入射する。入射角φ1,φ2は互いに異なる。この変形例によっても、上記実施形態の場合と同様に、高速且つ安定的な観察を実現することができる。また、複数の中心波長の励起光L1を試料Sに照射することができる。なお、この変形例では、複数の波長掃引光源11の少なくとも1つと分光素子12との間に、反射角度が可変であるミラー等が配置されてもよい。複数の波長掃引光源11の少なくとも1つから分光素子12へは、光ファイバを介して励起光L1が出力されてもよい。
【0057】
上記実施形態において、液体レンズ22が省略されてもよい。この場合、第2対物レンズ21がピエゾアクチュエータ等によって機械的に移動させられてもよいし、第2対物レンズ21と光検出器30との間に配置されたズームレンズが機械的に移動させられてもよい。ただし、上記実施形態では、液体レンズ22を用いた電気的な制御によって第2対物レンズ21の焦点位置を高速に変化させるため、第2対物レンズ21の焦点位置を、分光素子12から出射される励起光L1の出射角θの変化に確実に同期させることができる。或いは、液体レンズ22が省略される場合、第2対物レンズ21として焦点深度が深い対物レンズを用い、第2対物レンズ21の焦点深度内において試料Sに対してシート状の励起光L1を走査してもよい。この場合、第2対物レンズ21の焦点位置の調節を省略することができる。
【0058】
シリンドリカルレンズ16は、シリンドリカルレンズに対応した位相パターンに従って励起光L1を変調する空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)によって構成されてもよい。焦点位置調節器は、第2対物レンズ21の焦点位置を調節可能であればよく、液体レンズ22以外によって構成されてもよい。移動機構3は省略されてもよい。ミラー53又はプリズム54は、容器5とは別体に構成されてもよい。第1対物レンズ15の光軸と第2対物レンズ21の光軸とは、互いに交差(例えば直交)していてもよい。検出光学系20は、例えば第2対物レンズ21と液体レンズ22との間に、第2対物レンズ21により導光された光から励起光L1と検出光L2とを分離し、抽出された検出光L2を光検出器30側へ出力する光学フィルタを更に有していてもよい。分光素子12は、空間光変調器によって構成されてもよい。例えば、分光素子12は、回折格子パターンに従って励起光L1を変調する空間光変調器によって構成されてもよい。この場合、回折格子パターンを変更することで格子定数を変化させることができる。シリンドリカルレンズ16及び分光素子12が1つの空間光変調器によって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…ライトシート顕微鏡、3…移動機構、5…容器、10…照射光学系、11…波長掃引光源、12…分光素子、14…リレー光学系、15…第1対物レンズ、16…シリンドリカルレンズ、20…検出光学系、21…第2対物レンズ、22…液体レンズ(焦点位置調節器)、30…光検出器、53…ミラー(反射部)、54…プリズム(反射部)、B…ビームウェスト、C…光軸、L1…励起光、L2…検出光、S…試料、θ…出射角。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8