IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日動電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-鳥害防止器具用の線条体 図1
  • 特開-鳥害防止器具用の線条体 図2
  • 特開-鳥害防止器具用の線条体 図3
  • 特開-鳥害防止器具用の線条体 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145805
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】鳥害防止器具用の線条体
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/32 20110101AFI20220926BHJP
【FI】
A01M29/32
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126224
(22)【出願日】2022-08-08
(62)【分割の表示】P 2018224504の分割
【原出願日】2018-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】390009999
【氏名又は名称】日動電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100121474
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】元家 正信
(57)【要約】
【課題】配送時は勿論、高所作業時においても、線条体の取扱いが容易になる鳥害防止器具用の線条体を提供する。
【解決手段】電柱間に架設された電線の上側に線条体Lを離隔した状態で保持するようにした鳥害防止器具用の線条体Lである。この線条体Lは、展開前の状態において、一定の長さごとに巻回された上で接着によりコイル状に保形されている。かかる構成の結果、この線条体Lは、搬送時にはこの状態のまま施工現場まで搬送することができる。また、線条体Lを展伸させることでコイルが解けて張設できるので、高所作業となる鳥害防止器具の電線へのセットが格段に楽になり、作業効率の向上を期待できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱(P)間に架設された電線(W)の上側に線条体(L)を離隔した状態で保持するようにした鳥害防止器具用の線条体(L)であって、
該線条体(L)は、展開前の状態において、一定の長さごとに接着によりコイル状に巻回保形されていることを特徴とする鳥害防止器具用の線条体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線に取り付けることにより、鳥の飛来や営巣を防ぐ鳥害防止器具用の線条体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
架空電線に鳥類が飛来すると、電気設備の事故や排泄物による公害の原因となるため、架空電線への鳥類の飛来を防止すべく、従来から、架空電線に各種鳥害防止器具が取り付けられている。
【0003】
このような鳥害防止器具として、従来、電柱間に架設された電線の両端側に取り付けられる一対の固定支持具と、この固定支持具間で電線の上方に離隔した状態で架け渡される線条体と、この線条体及び電線に沿って指定の間隔を空けて取り付けられる一つまたは複数の自由支持具とで構成したものが提案されている(特許文献1)。
【0004】
ところが、前述の鳥害防止器具では、固定支持具と自由支持具とがそれぞれ独立部品として構成されていることから、高所作業になる架空電線への設置作業時に高所作業車のバケットに乗り込んだ作業者が固定支持具と自由支持具とに係合した線条体を引き延ばすようにして自由支持具及び遊端側の固定支持具を電線に固定していかなければならず、作業性に欠けるきらいがあった。
【0005】
そこで、線条体を留付保持した複数の支持具を離脱容易な状態に連結させて一組とし、両端に位置する支持具を電線に固定可能にするとともに、各支持具の連結部分に線条体の収容部を形成して、線条体の展開を容易にできるようにしたものも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4669277号公報
【特許文献2】特開2017-38488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの従来技術はいずれも展開前(張設前)の線条体の構成について格別の工夫をなすものではなかった。
【0008】
本発明は、このような点に鑑み提案されたもので、搬送時の取り扱いが容易で、電線への設置作業を簡略化できる鳥害防止器具用の線条体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電柱間に架設された電線の上側に線条体を離隔した状態で保持するようにした鳥害防止器具用の線条体であって、
該線条体は、展開前の状態において、一定の長さごとに接着によりコイル状に巻回保形されていることを特徴としている。なお、コイル状に保形するための接着は、線条体を展伸させることで、コイルが解ける程度の接着力に設定される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る鳥害防止器具用の線条体は、展開前の状態において、一定の長さごとに接着によりコイル状に巻回保形されているため、搬送時の取り扱いが容易なうえ、線条体を展伸させることでコイルが解けて張設できるので、高所作業となる鳥害防止器具の電線へのセットが格段に楽になり、作業効率の向上を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る鳥害防止器具の使用状態を示す概略図である。
図2】本発明に係る鳥害防止器具を連結した状態での正面図である。
図3】本発明に係る鳥害防止器具の枠本体を示す全体斜視図である。
図4】本発明に係る鳥害防止器具の蓋板を跳ね上げた姿勢での枠本体を示す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係る鳥害防止器具(B)を電柱(P)間に架設した電線(W)に装着した状態での概略図である。この鳥害防止器具は(B)は、電線(W)に取り付け固定される一対の固定支持具(F)(F)とこの固定支持具(F)(F)の間で電線(W)に対して揺動自在に配置される自由支持具(S)とで構成されている。これら固定支持具(F)と自由支持具(S)とは電線(W)の上側に離隔して架け渡されている線条体(L)で接続されている。
【0013】
固定支持具(F)及び自由支持具(S)は同一構造で形成してあり、略C型の枠体からなる枠本体(1)と、この枠本体(1)の上壁(2)から上方に起立突出させた線条体係合部(3)と、枠本体(1)内に電線(W)を挟持固定する電線固定機構(C)及び枠本体(1)の開口部を閉塞可能な蓋板(4)とで構成してある。
【0014】
この電線固定機構(C)は、枠本体(1)の底壁(5)を貫通螺合しているねじ体(6)と、このねじ体(6)の先端部に装着され、枠本体(1)の内部を昇降移動する押し板(7)とで構成してあり、この押し板(7)は枠本体(1)の底壁側に降下している非保持姿勢と、ねじ体(5)の回転作動に伴って押し板(7)が上昇移動することで枠本体(1)に挿入した電線(W)を枠本体(1)の上壁内面に押し付ける保持姿勢とに切り替え可能になっている。 そして押し板(7)の上昇量を加減して、電線(W)を枠本体(1)の上壁内面に強く当接させないようにすると、枠本体(1)が電線(W)に固定されることがなくなるので揺動可能な自由支持具(S)となる。
【0015】
枠本体(1)の開口部を閉塞可能な蓋板(4)は、枠本体(1)の上壁(2)の開口端部にその上端部が揺動可能に枢支されており、蓋板(4)の蓋板部(4a)の側端面(4b)での上部から枠空間の奥部方向に向かって、アーム部(9)が延出してあり、蓋板部(4a)を跳ね上げた際に、アーム部(9)が枠空間部分に位置できるように構成してある。
【0016】
また、枠本体(1)での蓋板枢支部(10)の外周面に蓋板(4)の上端面と接当する係止突部(11)が突設してあり、蓋板(4)の上端面がこの係止突部(11)を乗り越えることで、枠本体(1)の開口部を開放する姿勢に蓋板(4)を維持できるようにしてある。
【0017】
前記したように、押し板(7)は、枠本体(1)の底壁(5)を貫通螺合しているねじ体(6)の上端部分に相対回転自在な状態で組付けられるとともに、固定枠本体(1)の立ち上がり壁(12)の側端縁を抱き込むように形成してあり、ねじ体(6)の回転操作に伴ってねじ体(6)が枠本体(1)の底壁に対して出退作動することで、押し板(7)は回転することなく枠本体(1)内を上下方向に平行移動するようにしてある。また、この押し板(7)の開口側端部に蓋板(4)の側端縁部が挿通する蓋板挿通溝(13)が形成してある。蓋板(4)の側端縁部は、押し板(7)が下降側の一定範囲では蓋板(4)の蓋板挿通溝(13)と嵌り合わないように形成してありその状態では蓋板(4)は揺動可能であるが、押し板(7)が枠本体(1)の底壁(5)から一定高さ離隔すると、蓋板挿通溝(13)と蓋板(4)の側端縁部とは嵌り合い、蓋板(4)の揺動、すなわち蓋板(4)の開閉が抑制されるように構成してある。
【0018】
また、枠本体(1)の底壁(5)の一側面から二股フォーク状連結片(17)が連出形成してある。この連結片(17)に形成したねじ体(6)を跨ぐU字溝(18)を併置した鳥害防止器具(B)での枠本体(1)の底壁(5)部分と押し板(7)との間に挿入して、ねじ体(6)を下降側に作動させることで、連結片(17)を押し板(7)の下面と枠本体の底壁(5)の上面との間に挟持させることで隣り合う鳥害防止器具(B)同士を連結するようにしてある。
【0019】
線条体(L)は、対候性に優れたテグスで構成してある。この線条体(L)は一定の長さ(例えば、4m)ごとに巻回接着してコイル状に保形してある。また、枠本体(1)の上壁(2)から上方に起立突出させた線条体係合部(3)は、それぞれ線条体(L)を通過させる線条体通過部(14)と線条体(L)を係着させる2個所の線条体係着部(15)(16)を有している。なお、このコイル状に保形するための接着は、線条体(L)を展伸させることで、コイルが解ける程度の接着力に設定してある。
【0020】
上述の構成からなる鳥害防止器具(B)は、図2に示すように枠本体(1)の底壁(5)の一側面から連出した連結片(17)で隣り合って配置された枠本体(1)同士を離脱可能な状態で接続するようにしてある。底壁(5)の一側面から連出されている連結片(17)は、二股フォーク状に形成してあり、この二股フォーク状連結片(17)を枠本体(1)の底壁上面と押し板(7)の下面との間にねじ体(6)を跨ぐ状態で挿入するように構成してあり、ねじ体(6)を押し板降下側に作動させることで固定枠本体(1)の底壁(5)と押し板(7)の下面とで挟持して、複数の固定枠(1)を一体化するようにしてある。そして、一体化した複数の枠本体(1)の上壁(2)から上方に起立突出させた線条体係合部(3)同士間にコイル状に保形形成した線条体(L)を位置させた状態にして施工現場まで搬送される。
【0021】
なお、二股フォーク状連結片(17)は、連出先端側となるねじ挿通溝(18)が形成されている部分が連結片の肉厚分だけ上方にずれて形成されている。このように形成することで、複数の鳥害防止器具(B)を連結した際に全体のレベルが揃うことになる。
【0022】
この鳥害防止器具(B)を電柱(P)間に架設した電線(W)に取り付ける場合、連結片(17)を介して一体に連結された状態で施工現場に搬送されるが、固定支持具(F)となる枠本体(1)も自由支持具(S)となる枠本体(1)も同じ構造であることから、連結片(17)が押し板(7)と枠本体(1)の底壁(5)とで挟持されており、略C形に形成されている枠本体(1)の開口部に配置した蓋板(4)は自由に揺動できることになる。
【0023】
従って、一連の鳥害防止器具(B)の蓋板(4)を開放させた状態で、鳥害防止器具(B)を絶縁ヤットコ等の活線工具を使用して一挙に電線(W)に装着することが出来る。この電線(W)への装着時に電線(W)が枠本体(1)の枠内に侵入する際にアーム部(9)に接触することで、蓋板(4)の枠本体(1)への係合が外れ、蓋板(4)で枠本体(1)の開口部が閉塞される。この状態で端部に位置する枠本体(1)のねじ体(6)を操作して、押し板(7)を上昇させる。すると、押し板(7)に形成した蓋板挿通溝(13)に蓋板(4)の側端縁部が嵌り込み、蓋板(4)の開閉揺動が抑制され、枠本体(1)の電線からの離脱が防止される。
【0024】
そして、この端部に位置する枠本体(1)での押し板(7)の上昇動作で電線(W)を該枠本体(1)の上壁内面と押し板(7)とで挟持することになるから、該枠本体(1)は一定の姿勢に保持できることになるとともに、押し板(7)の上昇作動により、押し板(7)と枠本体(1)の底壁とで挟持されていた連結片(17)での拘束力が解除されることから、その連結片(17)で連結されていた次の枠本体(1)は電線(W)に固定された枠本体(1)から離れて電線に沿って移動できることになる。
【0025】
中間に位置する枠本体(1)は、電線(W)に係合させた後、押し板(7)を軽く作動させて枠本体(1)の上壁内面との間に電線(W)を挟持しない姿勢まで押し上げることで、連結片(17)の固定状態を解除することで中間に位置する枠本体(1)を電線(W)に対して揺動可能に保持させることになる。
【0026】
一連の枠本体(1)を電線(W)に装着して展開させると、すべての枠本体(1)は線状体(L)で連結されていることから、該線条体(L)が電線(W)の上側に張設されることになる。この線条体(L)がピンと張られた位置で他端に位置する枠本体(1)のねじ体(6)を操作して、押し板(7)を上昇させ、押し板(7)と枠本体(1)の天井壁内面とで電線(W)を挟持して、他方の枠本体(1)を所定位置に固定することで、両端の枠本体(1)が固定で中間の枠本体(1)が電線(W)周りに揺動可能な状態に設置されることになる。これにより、線条体(L)に鳥類が止まろうとしても自由支持具(S)となっている中間に位置している枠本体(1)が電線(W)との接触点を支点として揺動することになって、鳥は線条体(L)に止まることができない。
【0027】
上記の実施形態では、蓋板(4)の蓋板部(4a)の両側端面(4b)での上部から枠空間の奥部方向に向かって、アーム部(9)を延出したものについて説明したが、このアーム部(9)は蓋板(4)の一方の側面上部だけに形成してもよい。また、蓋板(4)の開口幅中間の上部に突出形成させたものでもよい。
【0028】
また、枠本体(1)の底壁(5)から連出させた連結片(17)は、中間に段差のない平板であってもよい。
【0029】
このように、本発明に係る鳥害防止器具(B)にあっては、電線に固定するための電線固定機構(C)を利用して、固定支持具(F)と自由支持具(S)とを確りと一体化して搬送時の取り扱いを容易にすることが出来るうえ、固定支持具(F)の電線(W)への固定作業に伴って固定支持具(F)と自由支持具(S)とを分離可能にすることが出来るから、電線(W)への鳥害防止器具(B)の設置作業を容易にすることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る鳥害防止器具は、電柱間距離が比較的短い市街地において電柱間に架設した電線に装着する鳥害防止器具として適している。
【符号の説明】
【0031】
P…電柱、W…電線、L…線条体、C…電線固定機構、1…枠本体、4…蓋板、2…枠本体の上壁、3…線条体係合部、5…枠本体の底壁、6…ねじ体、7…押し板、9…アーム部、10…枢支部、11…係止突部、13…蓋板挿通溝部。
図1
図2
図3
図4