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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145957
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ヨーグルト
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/13 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
A23C9/13
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128942
(22)【出願日】2022-08-12
(62)【分割の表示】P 2020161910の分割
【原出願日】2015-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 悠記
(72)【発明者】
【氏名】新井 陽一
(72)【発明者】
【氏名】塩屋 靖
(57)【要約】
【課題】酸味が少なく、且つ滑らかな食感を有するヨーグルトの提供。
【解決手段】乳脂肪球皮膜成分を0.5質量%以上含有するヨーグルト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質の含有量が10質量%以上、かつ脂質の含有量が60質量%以下である乳脂肪球皮膜成分を1.0質量%以上含有するヨーグルト。
【請求項2】
乳脂肪球皮膜成分中のスフィンゴミエリンの含有量が25質量%以下である請求項1記載のヨーグルト。
【請求項3】
乳脂肪球皮膜成分の含有量が1.0~4質量%である請求項1又は2記載のヨーグルト。
【請求項4】
ヨーグルト中のリン脂質の含有量が0.1質量%を超え3質量%以下である請求項1~3のいずれか1項記載のヨーグルト。
【請求項5】
ヨーグルト中のスフィンゴミエリンの含有量が0.015~2質量%である請求項1~4のいずれか1項記載のヨーグルト。
【請求項6】
ソフトヨーグルトである請求項1~5のいずれか1項記載のヨーグルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳脂肪球皮膜成分を含有するヨーグルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーグルトは、原料乳を乳酸菌又は酵母で発酵させて製造するものであり、乳の栄養性に加え、乳酸菌の働きによる効果も期待できることから消費者に特に強く支持される乳製品である。
原料乳の乳酸発酵では、乳酸をはじめとした有機酸が産生され、これによって乳中のタンパク質が凝固し、また、ヨーグルトに酸味が付与される。
酸味はヨーグルトの特徴的な風味の一つであるが、近年酸味の少ないマイルドな風味を求める風潮が強い。そこで酸味を抑制する方法が検討され、例えば、特許文献1には発酵乳に対して乳清タンパクを添加することにより酸味を低減する方法、特許文献2には1,3-オクタンジオール等の化合物で発酵乳製品の酸味や渋味をマスキングする方法が開示されている。
加えて、ヨーグルトには食べ易い滑らかな口当たりが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-312739号
【特許文献2】特開2010-200636号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】三浦晋、FOOD STYLE21、2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法ではヨーグルトの風味を残しながら酸味を低減し、且つ滑らかな食感を付与するには十分ではなかった。
したがって、本発明は、酸味が少なく、且つ滑らかな食感を有するヨーグルトを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、所定量の乳脂肪球皮膜成分を含有するヨーグルトは酸味が少なくマイルドな風味を有し、また、非常に滑らかで口当たりの良くなることを見出した。
乳脂肪球皮膜成分は、乳腺より分泌される乳脂肪球を被覆している膜成分である(非特許文献1)。
【0007】
すなわち、本発明は、乳脂肪球皮膜成分を0.5質量%以上含有するヨーグルトを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、酸味が少なく、且つ滑らかな食感で口当たりの良いヨーグルトを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ヨーグルトは、厚生労働省の乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令、最終改正:平成26年12月25日)において「発酵乳」して位置づけられ、「発酵乳」は「乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状又は液状にしたもの又はこれらを凍結したものをいう。」と定義されている。
「発酵乳」の成分規格は、無脂乳固形分:8.0%以上、乳酸菌数又は酵母数(1ml当たり):10,000,000以上(ただし、発酵させた後において、摂氏75度以上で15分間加熱するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌したものは、この限りでない。)、大腸菌群:陰性である。
前記「糊状にしたもの」に分類される発酵乳としてハードヨーグルト、ソフトヨーグルト、「液状にしたもの」に分類される発酵乳として飲むヨーグルト(ドリンクヨーグルト)、「凍結したもの」に分類される発酵乳としてフローズンヨーグルトが挙げられる。
本発明のヨーグルトは、効果を有効に発現する点から、ハードヨーグルト、ソフトヨーグルト又はフローズンヨーグルトが好ましく、ソフトヨーグルトがより好ましい。
【0010】
本発明のヨーグルトは乳脂肪球皮膜成分を含有する。
乳脂肪球皮膜成分は、乳脂肪球を被覆している膜、及び膜を構成する成分の混合物と定義されている。乳脂肪球皮膜は、一般的に、乾燥重量の約半分が脂質で構成され、当該脂質としては、トリグリセライドやリン脂質、スフィンゴ糖脂質が含まれることが知られている(三浦晋、FOOD STYLE21、2009及びKeenan TW、Applied Science Publishers、1983、pp89-pp130)。
リン脂質としては、スフィンゴミエリン等のスフィンゴリン脂質、ホスファチジルコリンやホスファチジルエタノールアミン等のグリセロリン脂質が含まれることが知られている。
また、脂質以外の成分としては、ミルクムチンと呼ばれる糖タンパク質が含まれることが知られている(Mather、Biochim Biophys Acta、1978)。
【0011】
本発明で用いられる乳脂肪球皮膜成分は、ヨーグルトの酸味を低減し、且つ滑らかな口当たりを付与する点から、脂質の含有量が、10質量%(以下、単に「%」とする)以上、更に20%以上、更に30%以上であるのが好ましく、また、風味・ハンドリングの点から、100%以下、更に90%以下、更に60%以下であるのが好ましい。乳脂肪球皮膜成分中の脂質の含有量は、10~100%、更に20~90%、更に30~60%が好ましい。
【0012】
また、乳脂肪球皮膜成分は、ヨーグルトの酸味を低減し、且つ滑らかな口当たりを付与する点から、リン脂質の含有量が5%以上、更に8%以上、更に10%以上、更に15%以上であるのが好ましく、また、風味・ハンドリングの点から、100%以下、更に85%以下、更に70%以下、更に60%以下であるのが好ましい。乳脂肪球皮膜成分中のリン脂質の含有量は、5~100%、更に8~90%、更に10~70%、更に15~60%が好ましい。
さらに、乳脂肪球皮膜成分は、ヨーグルトの酸味を低減し、且つ滑らかな口当たりを付与するという点から、リン脂質としてスフィンゴミエリンを含むのが好ましく、乳脂肪球皮膜成分中のスフィンゴミエリンの含有量が、1%以上、更に2%以上、更に3%以上であるのが好ましく、また、風味・ハンドリングの点から、50%以下、更に30%以下、更に25%以下、更に20%以下であるのが好ましい。乳脂肪球皮膜成分中のスフィンゴミエリンの含有量は、1~50%、更に2~30%、更に3~25%、更に3~20%が好ましい。
同様の点から、乳脂肪球皮膜成分の全リン脂質中のスフィンゴミエリン含有量が、3%以上、更に5%以上、更に10%以上、更に15%以上であるのが好ましく、また、50%以下、更に40%以下、更に35%以下、更に30%以下であるのが好ましい。乳脂肪球皮膜成分の全リン脂質中のスフィンゴミエリン含有量は、3~50%、更に5~40%、更に10~35%、更に15~30%が好ましい。
なお、本明細書において、乳脂肪球皮膜成分中の脂質、リン脂質及びスフィンゴミエリンの含有量、並びに乳脂肪球皮膜成分の全リン脂質中のスフィンゴミエリン含有量は、乳脂肪球皮膜成分の乾燥物に対する質量割合とする。
【0013】
上記の乳脂肪球皮膜成分は、原料乳から遠心分離法や有機溶剤抽出法等の公知の方法により得ることができる。例えば、特開平3-47192号公報に記載の乳脂肪球皮膜成分の調製方法を用いることができる。また、特許第3103218号公報、特開2007-89535号公報に記載の方法等を用いることができる。さらに、透析、硫安分画、ゲルろ過、等電点沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、溶媒分画等の手法により精製することにより純度を高めたものを用いてもよい。
乳脂肪球皮膜成分の形態は、特に限定されず、室温(15~25℃)で液状、半固体状(ペースト等)、固体状(粉末、固形、顆粒等)等のいずれでもよく、これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
乳脂肪球皮膜成分の原料乳としては、牛乳やヤギ乳等が挙げられる。なかでも、食経験が豊富であり、安価な点から、牛乳が好ましい。また、原料乳には、生乳、全粉乳や加工乳等の乳の他、乳製品も含まれ、乳製品としては、バターミルク、バターオイル、バターセーラム、ホエータンパク質濃縮物(WPC)等が挙げられる。
バターミルクは、牛乳等を遠心分離して得られるクリームからバター粒を製造する際に得られ、当該バターミルク中に乳脂肪球皮膜成分が多く含まれているので、乳脂肪球皮膜成分としてバターミルクをそのまま使用してもよい。同様に、バターオイルを製造する際に生じるバターセーラム中にも乳脂肪球皮膜成分が多く含まれているので、乳脂肪球皮膜成分としてバターセーラムをそのまま使用してもよい。
【0015】
乳脂肪球皮膜成分は、市販品を用いることもできる。斯かる市販品としては、メグレジャパン(株)「BSCP」、雪印乳業(株)「ミルクセラミドMC-5」、(株)ニュージーランドミルクプロダクツ「Phospholipid Concentrate シリーズ(500,700)」等が挙げられる。
【0016】
本発明のヨーグルト中、乳脂肪球皮膜成分の含有量は0.5%以上であるが、ヨーグルトの酸味を低減し、且つ滑らかな口当たりを付与するという点から、1%以上が好ましい。また、乳脂肪球皮膜成分の量が増えるとヨーグルトの粉っぽさが増す傾向があることから、上限は4%以下が好ましく、更に3.5%以下、更に3%以下が好ましい。ヨーグルト中の乳脂肪球皮膜成分の含有量は、0.5%以上4%以下が好ましく、0.5%以上3.5%以下がより好ましく、1%以上3%以下が更に好ましい。
【0017】
また、本発明のヨーグルト中、リン脂質の含有量は、効果を有効に発現する点から、0.05%以上、更に0.1%以上であるのが好ましく、また、風味の点から、3%以下が好ましく、更に2%以下が好ましい。ヨーグルト中のリン脂質の含有量は、0.05~3%が好ましく、0.1~3%がより好ましく、0.1~2%が更に好ましい。
【0018】
また、本発明のヨーグルト中、スフィンゴミエリンの含有量は、効果を有効に発現する点から、0.015%以上、更に0.03%以上であるのが好ましく、また、風味の点から、2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。ヨーグルト中のスフィンゴミエリンの含有量は、0.015~2%が好ましく、0.03~2%がより好ましく、0.03~1%が更に好ましい。
乳脂肪球皮膜成分中又はヨーグルト中の脂質及びリン脂質の含有量は、酸分解法、比色法又は薄層クロマトグラフ法により測定することができる。
尚、本発明のヨーグルトにおける乳脂肪球皮膜成分の含有量、リン脂質の含有量及びスフィンゴミエリンの含有量には、乳脂肪球皮膜成分として配合されたもの以外にも他のヨーグルト原料由来のものが含まれる。但し、牛乳に含まれる乳脂肪球皮膜成分は0.2%程度と僅かなため影響は小さい。
【0019】
ヨーグルトの原料である乳としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、加工乳、これらと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等が挙げられる。
【0020】
本発明のヨーグルトは、上記成分の他に本発明の効果を損なわない範囲において、発酵の前に配合し得る他の成分や、発酵の後に配合し得る他の成分を含有してもよい。当該他の成分としては、例えば、クリーム、ホエータンパク質(例えば、ホエータンパク質濃縮物(WPC)、ホエータンパク質単離物(WPI))、甘味料(例えば、単糖、少糖、糖アルコール、合成甘味料)、安定剤(例えば、ゼラチン、ペクチン、カラギナン、キサンタンガム)、果汁、果肉、香料等が挙げられる。
【0021】
ヨーグルトの製造方法は、原料をタンクで発酵させ、容器に充填する前発酵タイプと、原料を容器に充填した後に発酵させる後発酵タイプの2つの方法に大別される。本発明のヨーグルトは、いずれの方法で製造してもよい。乳脂肪球皮膜成分は、どの段階で混合してもよいが、発酵が終了した後に混合するのが好ましい。
更に、酸味を少なくし、滑らかな食感とする点から、乳脂肪球皮膜成分を混合したヨーグルトを撹拌やホモゲナイザー等により均質化することが好ましい。
【0022】
スターター(種菌)として使われる乳酸菌は、特に制限はなく、例えば、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)に属する乳酸球菌、ラクトバチルス(Lactobacillus)に属する乳酸桿菌、ビフィズス菌(Bifidobacterium)等が挙げられる。
【0023】
本発明のヨーグルト中の水分含有量は70%以上であることが好ましく、更に80%以上、更に85%以上が好ましい。
【0024】
後記実施例に示すとおり、本発明のヨーグルトは、所定量の乳脂肪球皮膜成分を含むことにより、粘度が高くなり、滑らかな口当たりを有する。
本発明のヨーグルトの粘度は、滑らかな口当たりを付与する点から、0.6Pa・s以上0.9Pa・s以下であるのが好ましい。
また、ヨーグルトに所定量の乳脂肪球皮膜成分を含有させることでヨーグルトの酸味が低減されたことから、乳脂肪球皮膜成分は、ヨーグルトの粘度付与剤、滑らかさ改善剤、或いは酸味低減剤として有用であり、ヨーグルトの粘度付与、滑らかさの改善、或いは酸味低減のために使用することができる。
【0025】
本発明のヨーグルト1つあたりの容量は200g、更に150g、更に100gとするのが有効性の点で好ましい。本発明のヨーグルトは、乳脂肪球皮膜成分を高濃度で含むことから、乳脂肪球皮膜成分摂取用のヨーグルトとしても好適である。
【実施例0026】
〔乳脂肪球皮膜成分〕
乳脂肪球皮膜成分1は牛乳から調製したものを使用した。
乳脂肪球皮膜成分1の含水量は3.6%であった。乳脂肪球皮膜成分1の組成は、乾燥物換算で、炭水化物:11.3%、脂質:25.1%、タンパク質:53.6%であった。また、乳脂肪球皮膜成分1中、リン脂質の含有量は乾燥物換算で16.6%であり、スフィンゴミエリンの含有量は3.6%であった。
【0027】
乳脂肪球皮膜成分2として、ミルクセラミドMC-5(雪印乳業(株)製)を用いた。
乳脂肪球皮膜成分2の含水量は1.6%であった。乳脂肪球皮膜成分2の組成は、乾燥物換算で、炭水化物:26.5%、脂質:44%、タンパク質:21.5%であった。また、乳脂肪球皮膜成分2中、リン脂質含有量は乾燥物換算で33.3%であった。スフィンゴミエリン含有量は8.03%であった。
【0028】
〔全粉乳〕
(株)明治製の全粉乳を用いた。
全粉乳の含水量は3.7%であった。全粉乳の組成は、乾燥物換算で、炭水化物:38%、脂質:23.6%、タンパク質:26.1%であった。また、全粉乳中、リン脂質含有量は乾燥物換算で0.34%であった。スフィンゴミエリン含有量は0%であった。
【0029】
上記の乳脂肪球皮膜成分及び全粉乳の分析は次のとおり行った。
(1)タンパク質の分析
タンパク質量はケルダール法を用いて、窒素・タンパク質換算係数6.38として求めた。
【0030】
(2)脂質の分析
脂質量は酸分解法で求めた。試料を1g量りとり、塩酸を加え分解した後、ジエチルエーテル及び石油エーテルを加え、攪拌混和した。エーテル混合液層を取り出し、水洗した。溶媒を留去させ、乾燥させた後、重量を秤量することで脂質量を求めた、
【0031】
(3)炭水化物の分析
炭水化物量は試料の質量から試料中のタンパク質量、脂質質量、灰分量、及び水分量を除くことにより求めた。
なお、灰分量は直接灰化法 (550℃で試料を灰化させ重量測定)、水分量は常圧加熱乾燥法 (105℃4時間乾燥させ重量測定)により求めた。
【0032】
(4)リン脂質の分析
試料1gを量りとり、クロロホルム及びメタノールの2:1(V/V)混液150mL、100mL、及び20mL中でホモジナイズ後、0.88質量%(W/V)塩化カリウム水溶液93mLを添加し、一晩室温で放置した。脱水ろ過、溶媒留去後、クロロホルムを添加し総量を50mLとした。そのうち2mLを分取し、溶媒留去後、550℃16時間加熱処理により灰化した。灰分を6M塩酸水溶液5mLに溶解後、蒸留水を添加し、総量を50mLとした。3mLを分取し、モリブデンブルー発色試薬5mL、5質量%(W/V)アスコルビン酸水溶液1mL及び蒸留水を添加し総量を50mLとし、710nmの吸光度を測定した。リン酸2水素カリウムを用いた検量線からリン量を求め、リン量に25.4をかけた値をリン脂質量とした。
【0033】
(5)スフィンゴミエリンの分析
試料1gを量りとり、クロロホルム及びメタノールの2:1(V/V)混液150mL、100mL、及び20mL中でホモジナイズ後、0.88質量%(W/V)塩化カリウム水溶液93mLを添加し、一晩室温で放置した。脱水ろ過、溶媒留去後、クロロホルムを添加し総量を50mLとした。そのうち10mLを分取し、シリカカートリッジカラムに添加した。カラムをクロロホルム20mLで洗浄後、メタノール30mLでリン脂質を溶出し、溶媒留去後クロロホルム1.88mLに溶解した。シリカゲル薄層プレートに20μLを負荷し、1次元展開溶媒としてテトラヒドロフラン:アセトン:メタノール:水=50:20:40:8(V/V)、2次元展開溶媒としてクロロホルム:アセトン:メタノール:酢酸:水=50:20:10:15:5(V/V)を用いて2次元展開を行った。展開後の薄層プレートにディトマー試薬を噴霧し、スフィンゴミエリンのスポットをかきとり、3質量%(V/V)硝酸含有過塩素酸溶液2mL添加後、170℃3時間の加熱処理を行った。蒸留水5mL添加後モリブデンブルー発色試薬5mL、5質量%(W/V)アスコルビン酸水溶液1mL及び蒸留水を添加し総量を50mLとし、710nmの吸光度を測定した。リン酸2水素カリウムを用いた検量線からリン量を求め、リン量に25.4をかけた値をスフィンゴミエリン量とした。
【0034】
試験例1~11
〔ヨーグルトの調製〕
市販プレーンヨーグルト1(明治ブルガリアヨーグルトLB81 プレーン、(株)明治製)を開封し、表1に記載の配合組成で各原料成分を混合し、ヨーグルト100gを得た。
市販プレーンヨーグルト1中のリン脂質含有量は42mg/100g、スフィンゴミエリン含有量は10mg/100gであった。含水量は83.9%であった。
【0035】
〔官能試験〕
上記で得た試験品について官能評価を行なった。具体的には、製造直後のヨーグルト2gを食したときの舌上に感じる滑らかさと酸味について、試験例1のヨーグルトを基準品として、下記評価基準により他の品について相対評価を行った。専門パネル2名の協議により評点を決定した。結果を表1に示す。
【0036】
(滑らかさ)
5:基準品に比べて非常に滑らか
4:基準品に比べてやや滑らか
3:基準品と同様の食感
2:基準品に比べてややざらつきが多い
1:基準品に比べてざらつきが非常に多い
(酸味)
5:基準品に比べて酸味を非常に弱く感じる
4:基準品に比べて酸味を弱く感じる
3:基準品と同様の酸味を感じる
2:基準品に比べて酸味を強く感じる
1:基準品に比べて酸味を非常に強く感じる
【0037】
〔粘度〕
上記で得た試験品について、20℃で、粘度計(Viscometer TV-10、12r/min,ローターNo.4、2分)により粘度を測定した。
結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
試験例12~22
〔ヨーグルトの調製〕
市販プレーンヨーグルト2(小岩井生乳100%ヨーグルト、小岩井乳業(株)製)を開封し、表2に記載の配合組成で各原料成分を混合し、ヨーグルト100gを得た。
市販プレーンヨーグルト2中のリン脂質含有量は35mg/100g、スフィンゴミエリン含有量は0mg/100gであった。含水量は87.7%であった。
【0040】
〔官能試験〕
上記で得た試験品について上記官能試験と同様にして、官能評価を行なった。具体的には、試験例1の代わりに試験例12のヨーグルトを基準品として、ヨーグルト2gを食したときの舌上に感じる滑らかさと酸味について、上記記評価基準により他の品について相対評価を行った。専門パネル2名の協議により評点を決定した。結果を表2に示す。
【0041】
〔粘度〕
上記で得た試験品について、上記と同様に粘度を測定した。
結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表1及び表2から明らかなように、乳脂肪球皮膜成分を0.5%以上含むヨーグルトは、酸味が低減されてマイルドな風味を有し、且つ口当たりは滑らかであった。また、ヨーグルトの粘度は、基準品と比べて高かった。
これに対して、乳脂肪球皮膜成分の量が本発明の規定よりも少ないと、効果がみられなかった(試験例2、3、13及び14)。また、乳脂肪球皮膜成分の代わりに全脂粉乳を用いたものは、効果がみられず、むしろ全脂粉乳の粉っぽさが感じられた(試験例11及び22)。