(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145965
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】アルツハイマー病を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220926BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220926BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P25/28
C07K16/18 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022129326
(22)【出願日】2022-08-15
(62)【分割の表示】P 2018563815の分割
【原出願日】2017-06-06
(31)【優先権主張番号】62/346,818
(32)【優先日】2016-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/435,531
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513083820
【氏名又は名称】バイオジェン インターナショナル ニューロサイエンス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ブレンドン フィリップ ブート
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ジョセフ セヴィニー
(72)【発明者】
【氏名】レスリー ルジーン ウイリアムズ
(57)【要約】
【課題】アルツハイマー病を治療する方法の提供。
【解決手段】ヒト被験者への抗ベータアミロイド抗体(例えば、BIIB037)の複数用量投与を含む治療レジメン中にヒト被験者がアミロイド関連画像異常(ARIA)を発症する場合に、アルツハイマー病を治療する方法を必要とするヒト被験者のアルツハイマー病を治療する方法を提供する。本開示は、アルツハイマー病(AD)治療プロトコルの際のアルツハイマー病患者におけるARIA発生率を低下させる方法に対する当該技術分野での要求を満たすものである。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年6月7日に出願された米国仮出願第62/346,818号、及び2016年12月16日に提出された第62/435,531号の優先権の利益を主張するものであり、両者の記載内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は一般に、アルツハイマー病を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD)は、認知障害、行動異常、精神症状、及び日常生活動作における障害を臨床上の特徴とする進行性の神経変性疾患である。これらの臨床像はAD認知症を構成する。
【0004】
AD Internationalは、世界で認知症を抱えて生活している人々の数は、2050年までには現在の3,560万人から1億1,540万人に増加するであろうと推定している。ADは認知症の最も多く見られる原因であり、認知症例の60~80%を占める。米国では、530万人の米国人がADを原因とする認知症を患っており、有効な治療が見つからない限り、有病率は2050年までには2倍または3倍になるであろうと推定される。
【0005】
ADによる認知症の臨床研究基準が近年改訂され、かかる疾患の現在の概念に従い、ADの前認知症(pre-dementia)期(例えば、前駆期AD)を包含する診断の枠組みが作成された。疾患の主な神経病理学的特徴は、(i)凝集したβ-アミロイド(Aβ)ペプチドを含有する細胞外老人斑(senile plaque/neuritic plaque)、及び(ii)異常な高リン酸化タウタンパク質で構成される、神経細胞体内の神経原線維変化(NFT)である。これらの斑及び変化の病因ならびにそれらが臨床症候群に寄与する機構は依然として完全には解明されていないが、有力な仮説である「アミロイドカスケード」では、疾患過程の背景にある駆動力は、脳におけるAβ産生とAβクリアランスの不均衡から生じるAβの蓄積であると提唱している。
【0006】
Aβは、アミロイド前駆体タンパク質の代謝により生成されるペプチドである。いくつかのAβペプチドのアロ型が存在する(例えば、Aβ40、Aβ42)。これらの単量体ペプチドには変動する傾向があり、凝集して高次の二量体及びオリゴマーになる。原線維形成過程で、可溶性オリゴマーは、βプリーツシート構造をした不溶性の沈着物へと移行し得る。これらの沈着物はアミロイド斑とも呼ばれるように、主に線維状のアミロイドで構成される。Aβの可溶性及び線維性の両形態とも疾患過程に寄与すると思われる。
【0007】
バイオマーカー研究、臨床病理学的研究、及びコホート研究は、疾患過程は臨床症状発現の10~20年前に始まっており、初期の病理学的所見の一部として、新皮質の老人斑の沈着ならびに内側側頭のNFT及びその数年後の新皮質のNFTが含まれることを裏付けている。
【0008】
現在のところ、アルツハイマー病の経過を修飾する治療法はない。現在承認されている治療法は症状面でわずかな効能を提供するに過ぎず、疾患の経過を減弱させるものではない。いくつかの有力な疾患修飾薬候補が現在試験中である。これらの候補には、Aβ経路を標的とし、脳及び脳脊髄液(CSF)の可溶性形態または不溶性形態のAβを減少させて治療的利益を提供することを目指す、低分子及び免疫療法(能動及び受動)が含まれる。
【0009】
AD治療用アミロイド修飾剤の治験実施のさまざまな治験依頼者に対しU.S. Food and Drug Administration(FDA)が発行するガイダンスに呼応し、Alzheimer’s Association Research Roundtableにより2010年7月にWorkgroupが結成された。Workgroupはこの領域の専門知識及び関心に基づいて特定された、学術界及び産業界の代表者らで構成された。血管原性浮腫(VE)及び微小出血(mH)を表すと考えられる信号変化を含む、磁気共鳴画像(MRI)異常に関連したFDAの懸案事項に関し専門家による助言を提供するという目的が課せられた。MRI信号変化は最初、β-アミロイドに対するモノクローナル抗体の治験で観察され、以降、他のアミロイド修飾療法薬に関連している。
【0010】
これらのMRI異常の正確な病態生理学的機序は決定されてはいないが、異なるMRIシーケンスではVE及びmHが典型的に検出される。それらは、ADの自然経過及びアミロイド修飾による治療法のいずれの場合にも、基礎にある何らかの共通する病態生理学的機序を共有し得る、あるスペクトルの画像異常を表すと思われる。Workgroupにより、このスペクトルをアミロイド関連画像異常(ARIA)と呼ぶことが提案された。
【0011】
基礎にある機序が共有されている可能性はあるが、具体的な現象を記載したほうが有用な場合がある。そのため、Workgroupでは用語をさらに練り直し、ARIA-Eは、VE及び関連する体液漏出現象を表すと考えられるMR信号の変化を指すとした。ARIA-Hとは、mH及びヘモジデリン沈着症に起因するMR信号の変化を指す。
【0012】
ARIA-Eは、FLAIRまたは他のT2強調シーケンス画像で高いMR信号強度として頭頂葉、後頭葉、及び前頭葉の実質及び/または軟膜において最も頻繁に現われるが、小脳及び脳幹でも観察されている。アポリポタンパク質Eのε4対立遺伝子であるApoE ε4の存在は、ARIA-E発症の有意な危険因子であることがわかっている。
【0013】
現在、アミロイド修飾療法の治験において発生するARIA-Eに関連する臨床経過に関し、公的に入手可能なデータは非常に限られている。Workgroupはバピネオズマブ(bapineuzumab)の治験データを見直したが、他のアミロイド修飾療法で見られたARIAが同様の臨床経過を辿っていくことになるかのかどうかは不明であったことがわかった。いずれにしても、血管原性浮腫の基礎にある病態生理学的機序はまだ解明されていない。
【0014】
mHは一般に、2つ病因、すなわち、小血管のアンギオパチー及び脳アミロイドアンギオパチー(CAA)のうちの1つに起因する。mHの有病率は、心血管危険因子及び/または先の脳血管イベントの証拠を有する高齢者で有意に高い。ADにおいて、mH及び脳表ヘモジデリン沈着症は、CAAの血管からの血液の漏出に起因する。CAAは、血管壁を脆弱化させ、血液が微少漏出して隣接する脳へ入り、mHを形成する危険性を高めると考えられている。さらに、アミロイド修飾療法に関連したARIA-EにおけるmH発症に関する公的に入手可能なデータには限りがある。
【0015】
特定のAβペプチドの産生低下を目指した治療戦略におけるARIA発現についての予備報告では、Aβ1-42の減少または多様なAβ種の比の改変により、ARIAをもたらすアミロイドの産生とクリアランスの動態を変化させ得るであろうと示唆している。血管壁からアミロイドを直接除去した場合、血管完全性が損なわれる恐れがある。あるいは、アミロイド関連の内皮細胞の機能障害により血管透過性が高められる場合があり、このことは、高い透過性との類似性を説明し得る。また、CAA患者からの病理報告で示唆されるように、ARIA-E及びARIA-Hの両方をもたらすような限局性の炎症性成分がある可能性もある。また、正常なCSFも炎症性CAAで報告されており、ARIAの一部の症例において限局性のアミロイド関連血管炎症が役割を果たす場合がある可能性がある。異なる形態の免疫療法または特定の抗体によりARIAに関連する可能性が異なるのかどうかも依然として不明である。
【0016】
アルツハイマー病の治療を受けている患者でのARIA発生率は現在も持続する問題となっている。可能性の高い標的作用機序は多数あるが、問題に対する解決法は見つかっていない。
【0017】
したがって、AD治療プロトコルの際の感受性の高いアルツハイマー病患者におけるARIA発生率を低下させる方法が当該技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示は、アルツハイマー病(AD)治療プロトコルの際のアルツハイマー病患者におけるARIA発生率を低下させる方法に対する当該技術分野での要求を満たすものである。
【0019】
一態様では、本開示は、ADを治療する方法を必要とするヒト被験者におけるAD治療方法を特徴とする。かかる方法では、ヒト被験者に対し抗ベータアミロイド抗体の複数用量を投与し、ここで、被験者は、抗ベータアミロイド抗体を用いた治療中、アミロイド関連画像異常(ARIA)を発症する。ARIAは、例えば、(i)中等度または重度である、臨床症状を伴わないARIA-E、(ii)軽度、中等度、または重度であり、軽度、中等度、または重度の臨床症状、または「他の医学的に重要な」重篤度分類基準を満たす臨床症状を伴うARIA-E、(iii)累積微小出血が5~9である、臨床症状を伴わないARIA-H、(iv)累積微小出血が1~9であり、軽度、中等度、または重度の臨床症状、または「他の医学的に重要な」重篤度分類基準を満たす臨床症状を伴うARIA-H、(v)脳表ヘモジデリン沈着症の累積領域を2つ有する、臨床症状を伴わないARIA-H、または(vi)脳表ヘモジデリン沈着症の累積領域が1または2であり、軽度、中等度、または重度の臨床症状、または「他の医学的に重要な」重篤度分類基準を満たす臨床症状を伴うARIA-Hであり得る。被験者にARIAが発現した後は、ARIAが消失するまで(臨床症状がある場合は、その症状も消失するまで)被験者への抗ベータアミロイド抗体の投与を中止する。方法ではさらに、被験者に対し、かかる被験者がARIA発症直前に投与された用量と同一用量の抗ベータアミロイド抗体の投与を再開する。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗ベータアミロイド抗体の複数用量は同用量である。特定の場合には、複数用量はそれぞれ、被験者の体重あたり1mg/kgである。特定の場合には、複数用量はそれぞれ、被験者の体重あたり3mg/kgである。特定の場合には、複数用量はそれぞれ、被験者の体重あたり6mg/kgである。特定の場合には、複数用量はそれぞれ、被験者の体重あたり10mg/kgである。特定の場合には、複数用量はそれぞれ、被験者の体重あたり12mg/kgである。特定の場合には、複数用量はそれぞれ、被験者の体重あたり15mg/kgである。特定の場合には、複数用量はそれぞれ、被験者の体重あたり18mg/kgである。特定の場合には、複数用量はそれぞれ、被験者の体重あたり20mg/kgである。特定の場合には、複数用量はそれぞれ、被験者の体重あたり24mg/kgである。特定の場合には、複数用量はそれぞれ、被験者の体重あたり30mg/kgである。
【0021】
他の実施形態では、抗ベータアミロイド抗体の複数用量は異なる量の用量を含む。特定の場合には、複数用量は被験者の体重あたり1mg/kg及び3mg/kgを含む。特定の場合には、複数用量は被験者の体重あたり1mg/kg、3mg/kg、及び6mg/kgを含む。特定の場合には、複数用量は被験者の体重あたり3mg/kg及び6mg/kgを含む。特定の場合には、複数用量は被験者の体重あたり1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、及び10mg/kgを含む。特定の場合には、複数用量は被験者の体重あたり3mg/kg、6mg/kg、及び10mg/kgを含む。特定の場合には、複数用量は被験者の体重あたり3mg/kg、6mg/kg、10mg/kg及び12mg/kgを含む。特定の場合には、複数用量は被験者の体重あたり3mg/kg、6mg/kg、10mg/kg及び15mg/kgを含む。
【0022】
被験者がApoE4保因者であるいくつかの実施形態では、複数用量は被験者の体重あたり1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、または10mg/kgのうち2つ以上の用量を含む。被験者がApoE4非保因者であるいくつかの実施形態では、複数用量は被験者の体重あたり1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、または30mg/kgのうち2つ以上の用量を含む。
【0023】
ある実施形態では、方法ではさらに、ARIA消失後の投与再開時に投与する用量よりも高い用量で抗ベータアミロイド抗体の後続投与を行う。
【0024】
いくつかの実施形態では、複数用量を4週間隔で投与する。
【0025】
いくつかの実施形態では、ARIA発現の前に被験者に投与する複数用量数は2~14用量(例えば、2用量、3用量、4用量、5用量、6用量、7用量、8用量、9用量、10用量、11用量、12用量、13用量、または14用量)である。他の実施形態では、ARIA発現の前に被験者に投与する複数用量数は2~5用量である。一実施形態では、ARIA発現の前に被験者に投与する複数用量数は2用量である。一実施形態では、ARIA発現の前に被験者に投与する複数用量数は3用量である。一実施形態では、ARIA発現の前に被験者に投与する複数用量数は4用量である。一実施形態では、ARIA発現の前に被験者に投与する複数用量数は5用量である。
【0026】
ある実施形態では、ヒト被験者に対する抗ベータアミロイド抗体の複数用量投与は、ARIA発現前に、ステップ(a)で開始し、以下の投与ステップの2つ以上を順に実施することを含む:
(a)抗ベータアミロイド抗体を被験者の体重あたり1mg/kgの量で被験者に投与する、
(b)ステップ(a)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり1mg/kgの量で被験者に投与する、
(c)ステップ(b)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与する、
(d)ステップ(c)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与する、
(e)ステップ(d)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与する、
(f)ステップ(e)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与する、
(g)ステップ(f)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与する、及び
(h)ステップ(g)の後、続く4週間の間隔を置いて、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与する。
【0027】
ある実施形態では、方法では、ARIA消失後(かつ臨床症状の消失後)、以下の投与ステップのうち、ARIA発現前に実施しなかったステップを順に実施する:
(a)抗ベータアミロイド抗体を被験者の体重あたり1mg/kgの量で被験者に投与する、
(b)ステップ(a)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり1mg/kgの量で被験者に投与する、
(c)ステップ(b)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与する、
(d)ステップ(c)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与する、
(e)ステップ(d)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与する、
(f)ステップ(e)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与する、
(g)ステップ(f)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与する、及び
(h)ステップ(g)の後、続く4週間の間隔を置いて、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与する。
【0028】
ある実施形態では、方法では、ヒト被験者(被験者はApoE4非保因者またはApoE4保因者である)に対し、ARIA発現前に、抗ベータアミロイド抗体の複数用量を、ステップ(a)から開始する以下の投与ステップの2つ以上を順に実施して行う:
(a)抗ベータアミロイド抗体を被験者の体重あたり1mg/kgの量で被験者に投与する、
(b)ステップ(a)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり1mg/kgの量で被験者に投与する、
(c)ステップ(b)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与する、
(d)ステップ(c)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与する、
(e)ステップ(d)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与する、
(f)ステップ(e)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与する、及び
(g)ステップ(f)の後、続く4週間の間隔を置いて、抗体を被験者の体重あたり10mg/kgの量で被験者に投与する。
【0029】
ある実施形態では、方法は、ARIA消失後、以下の投与ステップのうちARIA発現前に実施しなかったステップを順に実施することを含む:
(a)抗ベータアミロイド抗体を被験者の体重あたり1mg/kgの量で被験者に投与する、
(b)ステップ(a)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり1mg/kgの量で被験者に投与する、
(c)ステップ(b)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与する、
(d)ステップ(c)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与する、
(e)ステップ(d)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与する、
(f)ステップ(e)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与する、及び
(g)ステップ(f)の後、続く4週間の間隔を置いて、抗体を被験者の体重あたり10mg/kgの量で被験者に投与する。
【0030】
ある実施形態では、ヒト被験者(被験者はApoE4保因者である)に対する抗ベータアミロイド抗体の複数用量の投与は、
(a)抗ベータアミロイド抗体を被験者の体重あたり1mg/kgの量で被験者に投与すること、
(b)ステップ(a)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり1mg/kgの量で被験者に投与すること、及び
(c)ステップ(b)の後、続く4週間の間隔を置いて、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与することを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、抗ベータアミロイド抗体の投与再開後、ヒト被験者は第2のARIAを発症する。第2のARIAは、例えば、(i)中等度または重度である、臨床症状を伴わないARIA-E、(ii)軽度、中等度、または重度であり、軽度、中等度、または重度の臨床症状、または「他の医学的に重要な」重篤度分類基準を満たす臨床症状を伴うARIA-E、(iii)累積微小出血が5~9である、臨床症状を伴わないARIA-H、(iv)累積微小出血が1~9であり、軽度、中等度、または重度の臨床症状、または「他の医学的に重要な」重篤度分類基準を満たす臨床症状を伴うARIA-H、(v)脳表ヘモジデリン沈着症の累積領域を2つ有する、臨床症状を伴わないARIA-H、または(vi)脳表ヘモジデリン沈着症の累積領域が1または2であり、軽度、中等度、または重度の臨床症状、または「他の医学的に重要な」重篤度分類基準を満たす臨床症状を伴うARIA-Hであり得る。方法はさらに、第2のARIAが消失するまで(かつ臨床症状がある場合はその症状が消失するまで)被験者への抗ベータアミロイド抗体投与を中止することを含む。方法ではさらに、被験者への抗ベータアミロイド抗体投与の再開を、被験者が第2のARIAを発症する直前に被験者に投与された用量より低い用量で行う。
【0032】
いくつかの実施形態では、ARIAは臨床症状を伴わない。他の実施形態では、ARIAは軽度の臨床症状を伴う。さらに別の実施形態では、ARIAは中等度の臨床症状を伴う。さらに他の実施形態では、ARIAは「他の医学的に重要な」重篤度分類基準を満たす臨床症状を伴う。
【0033】
別の態様では、本開示は、ADを治療する方法を必要とするヒト被験者におけるAD治療方法を特徴とする。かかる方法では、ヒト被験者(被験者はApoE4保因者またはApoE4非保因者である)に対し抗ベータアミロイド抗体(例えば、アデュカヌマブ)の複数用量を投与する。方法は、
(a)抗ベータアミロイド抗体を被験者の体重あたり1mg/kgの量で被験者に投与すること、
(b)ステップ(a)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり1mg/kgの量で被験者に投与すること、
(c)ステップ(b)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与すること、
(d)ステップ(c)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与すること、
(e)ステップ(d)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与すること、
(f)ステップ(e)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与すること、
(g)ステップ(f)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与すること、
(h)ステップ(g)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与すること、
(i)ステップ(h)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与すること、
(j)ステップ(i)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与すること、
(k)ステップ(j)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与すること、及び
(l)ステップ(k)の後、続く4週間の間隔を置いて、抗体を被験者の体重あたり10mg/kgの量で被験者に投与することを含む。ある実施形態では、被験者は、被験者の体重あたり10mg/kgの量の抗体投与を4週間隔で少なくとも連続2回、3回、4回、5回、6回、7回、または8回受ける。
【0034】
別の態様では、本開示は、ADを治療する方法を必要とするヒト被験者におけるAD治療方法を特徴とする。かかる方法では、ヒト被験者(被験者はApoE4保因者またはApoE4非保因者である)に対し抗ベータアミロイド抗体(例えば、アデュカヌマブ)の複数用量を投与する。方法は、
(a)被験者に対し抗ベータアミロイド抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で投与すること、
(b)ステップ(a)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与すること、
(c)ステップ(b)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与すること、
(d)ステップ(c)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与すること、
(e)ステップ(d)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与すること、
(f)ステップ(e)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与すること、
(g)ステップ(f)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与すること、
(h)ステップ(g)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与すること、
(i)ステップ(h)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与すること、及び
(j)ステップ(i)の後、続く4週間の間隔を置いて、抗体を被験者の体重あたり10mg/kgの量で被験者に投与することを含む。ある実施形態では、被験者は、被験者の体重あたり10mg/kgの量の抗体投与を4週間隔で少なくとも連続2回、3回、4回、5回、6回、7回、または8回受ける。
【0035】
別の態様では、本開示は、ADを治療する方法を必要とするヒト被験者におけるAD治療方法を特徴とする。かかる方法では、ヒト被験者(被験者はApoE4保因者またはApoE4非保因者である)に対し抗ベータアミロイド抗体(例えば、アデュカヌマブ)の複数用量を投与する。方法は、
(a)抗ベータアミロイド抗体を被験者の体重あたり1mg/kgの量で被験者に投与すること、
(b)ステップ(a)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり1mg/kgの量で被験者に投与すること、
(c)ステップ(b)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与すること、
(d)ステップ(c)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与すること、
(e)ステップ(d)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与すること、
(f)ステップ(e)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与すること、及び
(g)ステップ(f)の後、続く4週間の間隔を置いて、抗体を被験者の体重あたり10mg/kgの量で被験者に投与することを含む。ある実施形態では、被験者は、被験者の体重あたり10mg/kgの量の抗体投与を4週間隔で少なくとも連続2回、3回、4回、5回、6回、7回、または8回受ける。
【0036】
別の態様では、本開示は、ADを治療する方法を必要とするヒト被験者におけるAD治療方法を特徴とする。かかる方法では、ヒト被験者(被験者はApoE4保因者またはApoE4非保因者である)に対し抗ベータアミロイド抗体(例えば、アデュカヌマブ)の複数用量を投与する。方法は、
(a)被験者に対し抗ベータアミロイド抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で投与すること、
(b)ステップ(a)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり3mg/kgの量で被験者に投与すること、
(c)ステップ(b)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与すること、
(d)ステップ(c)の4週間後、抗体を被験者の体重あたり6mg/kgの量で被験者に投与すること、及び
(e)ステップ(d)の後、続く4週間の間隔を置いて、抗体を被験者の体重あたり10mg/kgの量で被験者に投与することを含む。ある実施形態では、被験者は、被験者の体重あたり10mg/kgの量の抗体投与を4週間隔で少なくとも連続2回、3回、4回、5回、6回、7回、または8回受ける。
【0037】
以下の実施形態は、上記態様のすべてに適用される。
【0038】
ある実施形態では、抗ベータアミロイド抗体をヒト被験者に静脈内投与する。
【0039】
いくつかの実施形態では、抗ベータアミロイド抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHは、配列番号3のアミノ酸配列を有する第1の相補性決定領域(VHCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を有するVHCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVHCDR3を含み、VLは、配列番号6のアミノ酸配列を有するVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するVLCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVLCDR3を含む。特定の場合には、抗体はヒトIgG1定常領域を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、抗ベータアミロイド抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHは配列番号1からなり、VLは配列番号2からなる。特定の場合には、抗体はヒトIgG1定常領域を含む。
【0041】
ある実施形態では、抗ベータアミロイド抗体は重鎖及び軽鎖を含み、ここで、重鎖は配列番号10からなり、軽鎖は配列番号11からなる。
【0042】
特別に定義しない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語はいずれも、本発明の属する分野の当業者に共通して理解される意味と同一の意味を持つ。本発明の実施または試験においては本明細書に記載の方法及び材料と類似または同等のものを使用できるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は参照によりその全体が組み込まれる。矛盾がある場合は、定義も含め、本出願が優先することになる。材料、方法、及び例は例示にすぎず、限定的ではないことが意図される。
【0043】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び請求項から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】抗体BIIB037で治療される被験者の試験における、PETスキャンで決定した、ポジトロン断層撮影(PET)複合標準取込み値比(SUVR)の測定時点別の平均値を示す。
【
図2】ベースラインの臨床病期、すなわち、前駆期または軽度のADによる、被験者のベースラインのPET複合SUVRからの補正平均変化量を示す。
【
図3】被験者のベースラインのApoE4ステータスによる、ベースラインのPET複合SUVRからの補正平均変化量を示す。
【
図4】抗体BIIB037で治療されるAD被験者の試験におけるARIA-E及び/またはARIA-Hの推定発生率を報告する。
【
図5】プラセボ、または1mg/kg、3mg/kg、もしくは10mg/kgの抗体BIIB037を4週間おきに54週間投与された患者の、ベースラインの臨床的認知症尺度評価ボックス合計点(CDR-SB)からの補正平均変化量を示す。
【
図6】プラセボ、または1mg/kg、3mg/kg、もしくは10mg/kgの抗体BIIB037を4週間おきに54週間投与された患者の、ベースラインの精神状態短時間検査(MMSE)+標準誤差(SE)からの補正平均変化量を示す。
【
図7A】アデュカヌマブによるアミロイド斑減少を示す。PD分析集団の経時的複合SUVRの平均を示す。破線は、フロルベタピルでのSUVRカットポイントを示す。
【
図7B】アデュカヌマブによるアミロイド斑減少を示す。PD分析集団全体での第26週及び第54週における複合SUVRのベースラインからの補正平均(±SE)変化量を示す。
【
図7C】アデュカヌマブによるアミロイド斑減少を示す。ApoE ε4保因者での第26週及び第54週における複合SUVRのベースラインからの補正平均(±SE)変化量を示す。
【
図7D】アデュカヌマブによるアミロイド斑減少を示す。ApoE ε4非保因者での第26週及び第54週における複合SUVRのベースラインからの補正平均(±SE)変化量を示す。
【
図7E】アデュカヌマブによるアミロイド斑減少を示す。前駆期AD患者での第26週及び第54週における複合SUVRのベースラインからの補正平均(±SE)変化量を示す。
【
図7F】アデュカヌマブによるアミロイド斑減少を示す。軽度AD患者での第26週及び第54週における複合SUVRのベースラインからの補正平均(±SE)変化量を示す。
【
図8】アデュカヌマブがMMSEに及ぼす効果を示す。
【
図9】アデュカヌマブがCDR-SBに及ぼす効果を示す。
【
図10】ApoE4保因者及びApoE4非保因者に対する選択投与スケジュールを示す。
【
図11】アデュカヌマブがアミロイド斑を減少させる能力を示す。
【
図12】アデュカヌマブによるCDR-SB低下の緩徐化を示す。
【
図13】アデュカヌマブによるMMSE低下の緩徐化を示す。
【
図14】多施設共同無作為二重盲検プラセボ対照反復投与試験であるPRIMEの試験デザインを示す。患者(計画登録者数、N=188)を、時間差用量漸増デザインの治療群(目標登録者数:実薬治療群あたりn=30)9群のうち1群に実薬対プラセボ比3:1で無作為化した。
【
図15】PRIME試験の主要評価項目及び副次評価項目を示す。
【
図16】PRIME評価スケジュールを提供する。1mg/kg、3mg/kg、及び10mg/kgの群では第54週まで、また6mg/kg群では第30週までデータを分析した。
【
図17】PRIME試験の患者の内訳を示す。無作為化した患者166例のうち165例が投与を受け、107例(65%)はApoE ε4保因者、68例(41%)は前駆期ADであった。
【
図18】PRIME試験のベースラインの人口統計学的特性及び疾患特性を示す。
【
図19】ARIA-E発症後のARIA所見及び患者の内訳の概要を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0045】
アルツハイマー病
本明細書でADと略すアルツハイマー病は、主に臨床診断により同定され、疾患マーカーにより確定される認知症である。
【0046】
ADは、疾患進行の段階が運用上特定に定義される連続体である。AD病態は臨床症状の発現前に始まる。例えば、AD病態の一マーカーであるアミロイド斑はAD認知症が発現する10~20年前に形成される。ADで現在認識されている病期には、前臨床期、前駆期、軽度、中等度、及び重度が含まれる。これらの病期はさらに、症状の重症度及びAD進行度尺度に基づいて下位分類に細分され得る。
【0047】
ADは個別の病期で発生するわけではないため、当業者は、特定の臨床場面では患者群間の相違がはっきりしない場合があることを認識するであろう。それでもやはり、臨床的な疾患段階は、尺度、ならびにこれらの尺度の経時的変化、例えば、Aβの蓄積(CSF/PET)、シナプス機能障害(FDG-PET/fMRI)、タウ介在性神経損傷(CSF)、脳構造(容積測定MRI)、認知、及び臨床の機能などによって特徴付けることができる。(Jack CR,et al. Hypothetical model of dynamic biomarkers of the Alzheimer’s
pathological cascade. Lancet Neurol.,2010;9(1):119-28)。
【0048】
現在主要となっている認知症の臨床診断基準はNINCDS-ADRDA診断基準(McKhann GM,V. diagnosis of dementia due to Alzheimer’s disease:Recommendations from the National Inst. on Aging-Alzheimer’s Association workgroups on diagnostic guidelines for Alzheimer’s disease. Alzheimer’s & Dementia,7(2011)263-269)と呼ばれるもので、当該技術分野で公知であり、本発明の実施に採り入れることができる。それらには、新しい情報を取得し、記憶にとどめる能力の障害、推理及び複雑な仕事の取扱いの障害、視空間能力障害、言語機能障害(会話、読字、書字)、ならびに人格、行動、または振る舞いの変化を含む、認知障害または行動障害が含まれる。アルツハイマー病は現在主要診断基準を使用して診断され、典型的に、数か月から数年かけて段階的に発現し、数時間または数日かけて緩徐に発現する(潜行性に発現)症状を特徴とする。アルツハイマー病被験者での報告または所見によると、通常、認知機能の明らかな悪化を過去に経験している。
【0049】
ADに関する新しい情報として進化した他の診断分類体系が利用可能になっている。これらの系には、International Working Group(IWG)のAD診断の新研究基準(Dubois B et al.,Lancet Neurol.,2007;6(8):734-736)、IWG研究基準、(Dubois et al.,Lancet Neurol.,2010;9(11):1118-27)、NIA/AA診断基準(Jack CR et al. Alzheimer’s Dement.,2011;7(3):257-62)、及びDSM-5診断基準(American Psychiatric Association,DSM-5,2013)が含まれる。これらの分類体系も、本開示の方法に従った治療のためのAD被験者診断において利用することができる。
【0050】
患者
用語「患者」には、アルツハイマー病の診断、予後、予防、または治療が望ましいとされる任意のヒト被験者が含まれることが意図され、治療を必要とするヒト被験者が含まれる。治療を必要とするヒト被験者には、すでにADに罹患している被験者、ならびにADに罹患しやすい被験者、またはAD症状を予防すべき被験者が含まれる。典型的な患者は、40~90歳(例えば、45~90歳、50~90歳、55~90歳、60~90歳)の男性または女性であろう。一実施形態では、本開示は、AD患者(前臨床期、前駆期、軽度、中等度、または重度のADに罹患した患者を含むが、これに限定されない)を治療する方法を提供する。さらなる実施形態では、患者は、例えば、ポジトロン断層撮影(PET)画像法により確定されたアミロイド病理を有する。
【0051】
治療を必要とするAD患者の範囲は、アミロイド病理及び初期神経細胞変性のある被験者から、進行性の認知及び機能の障害を伴う広範囲の神経変性及び不可逆性神経細胞消失のある被験者、認知症の被験者までに至る。
【0052】
前臨床ADの患者は、記憶愁訴ならびに出来事記憶及び実行機能の障害の発現を伴う、または伴わない無症状期によって同定することができる。この段階は典型的に、生体内AD分子バイオマーカーの発現及び臨床症状がないことを特徴とする。
【0053】
前駆期AD患者は、主に、認知障害及び疾患の進行に伴う機能障害の発現を特徴とする前認知症段階である。前駆期AD患者は典型的に、精神状態短時間検査(MMSE)スコアは24~30(両端の数字を含む)であり、自発的記憶愁訴があり、自由及び手掛りによる選択的想起検査(FCSRT)での自由再生スコアが<27として定義される客観的記憶喪失であり、臨床的認知症尺度(CDR)総合スコアは0.5であり、他の認知領域において有意なレベルの障害がなく、基本的に日常生活動作は基本的に保たれ、認知症は見られない。
【0054】
軽度AD患者は典型的に、MMSEスコアが20~26(両端の数字を含む)、総合CDRは0.5または1.0であり、National Institute on Aging-Alzheimer’s AssociationによるADほぼ確実(probable)についての主要臨床診断基準(第22節を参照のこと)を満たす。
【0055】
臨床症状に基づくAD診断では、軽度な段階のAD患者は、職場での人目を引く行動、健忘、気分変動、及び注意障害を示すであろう。中等度の段階のAD患者は、認知障害、日常の活動の制限、見当識障害、失行症、失認症、失語症、及び行動異常を示すであろう。重度の段階のAD患者は、自立性の喪失、記憶及び発話の減衰、及び失禁を特徴とする。
【0056】
ある実施形態では、治療は、18F-AV-45によるPETスキャンで評価した場合にアミロイド陽性である初期段階の患者の治療である。患者は、頭痛、錯乱、歩行困難、または視覚障害といった症状がないか、または一過性の症状に過ぎない場合がある。患者は、ApoE遺伝子型決定で決定した場合にApoE4保因者であっても、そうでなくてもよい。
【0057】
他の実施形態では、治療は、被験者の認知障害の寄与因子となり得る任意の疾患または神経性病態(AD以外)、例えば、脳卒中もしくは他の脳血管病態、他の神経変性疾患、臨床上有意な精神疾患の病歴、急性もしくは亜急性の微小出血もしくは大出血、大出血(macrohemorrhage)の既往、または脳表ヘモジデリン沈着症などを有する患者の治療である。これらの患者は、臨床医によるスクリーニング及び選択の後、治療され得る。
【0058】
治療
本明細書で使用する場合、用語「治療する」または「治療」は一般に、所望の薬理学的及び/または生理的な効果を得ることを意味する。効果は、ADまたはその症状を完全または部分的に防ぐ点で予防効果であり得、及び/または、AD及び/またはADに起因する1つ以上の有害作用を部分的または完全に治癒させる点で治療的であり得る。したがって、本明細書で使用する用語「治療」には、(a)ADの素因をもつがADであるという診断をまだされていない被験者にADが発現しないよう予防すること、(b)ADを抑制すること、例えば、その発症を停止させること、(c)ADを軽減させること、例えば、ADを消退させること、または(d)治療を受けなかった場合の期待生存期間よりも生存期間を延長させることが含まれる。
【0059】
一実施形態では、治療は、患者のADまたはその症状を完全または部分的に予防する予防的治療であるか、または治療は、患者のADまたはADに起因する症状を部分的または完全に治癒させる治療法である。
【0060】
別の実施形態では、治療には疾患修飾効果がある。これは、治療により、基礎にある病理学的または病態生理学的疾患の経過が緩徐化または遅延すること、及びプラセボに対しADの臨床徴候及び症状の改善があることを意味する。
【0061】
さらなる実施形態では、治療により症状の改善がもたらされる。症状の改善はたとえ期間が短くても、認知が向上すること、自律性が増すこと、及び/または神経精神的及び行動上の機能障害が改善することからなり得る。
【0062】
いかなる治療法でも、目標は疾患の予防または治癒であるが、本開示は、疾患の臨床的低下もしくは進行の遅延、または症状の軽減を意図することが理解されるであろう。臨床的低下または疾患進行の遅延は、患者及び介護者に直接影響を与える。それにより、障害が遅延し、自立性が維持され、患者はより長い期間、正常な生活を送ることができる。可能な限り最良の程度まで症状を軽減することにより、認知、機能、及び行動上の症状、ならびに気分を徐々に改善することができる。
【0063】
本開示によるAD治療法では、抗ベータアミロイド抗体をヒト患者に投与する。一実施形態では、抗ベータアミロイド抗体はモノクローナル抗体である。別の実施形態では、抗ベータアミロイド抗体は完全ヒト抗体である。さらなる実施形態では、抗ベータアミロイド抗体は組換え型抗体である。別の実施形態では、抗ベータアミロイド抗体は組換え、完全にヒト、モノクローナル抗体である。ある実施形態では、抗ベータアミロイド抗体は可溶性Aβオリゴマー及び線維結合に選択的であり、実質的に単量体と結合しない。こうした特性は、薬物動態(PK)を改善し、抗体シンクを抑制し、APP発現組織との標的外交差反応性を最小限に抑える。これらの診断基準を満たす例示的モノクローナル抗体は抗体BIIB037である。
【0064】
アデュカヌマブとしても知られる抗体BIIB037は、アルツハイマー病の生物学的治療薬である。これは、プラークを含め、凝集形態のAβを認識する抗Aβ抗体である。BIIB037はヒトカッパ軽鎖を含有する。BIIB037は2本の重鎖及び2本のヒトカッパ軽鎖からなり、それらは鎖間ジスルフィド結合により連結されている。「BIIB037」または「アデュカヌマブ」は、配列番号10及び11に記載アミノ酸配列を含む抗Aβ抗体を意味する。
【0065】
インビトロの特性研究により、その蓄積がADの発症及び進行の基礎にあると考えられているAβ凝集体に存在する立体構造エピトープを抗体BIIB037が認識することが確認されている。
【0066】
インビボでの薬理試験は、同様の特性を有する、抗体のマウスIgG2aキメラ型(ch12F6A)は、ADマウスモデルのTg2576老齢マウスの脳内アミロイド斑量を有意に減少させることを示している。実質のアミロイド減少には血管アミロイドの変化は伴わなかったが、これは特定の抗Aβ抗体について報告されているとおりである(Wilcock OM,Colton CA. Immunotherapy,vascular pathology,and microhemorrhages in transgenic mice. CNS & Neurological Disorders Drug Targets,2009 Mar;8(1):50-64)。
【0067】
抗体BIIB037のVH及びVLは、米国特許第8,906,367号に記載の抗体NI-101.12F6AのVH及びVLのアミノ酸配列(表2~4を参照のこと。なお、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)と同一のアミノ酸配列を有する。具体的に、抗体BIIB037は、表1(VH)及び表2(VL)に示すVH及びVLの可変領域、表3に示す対応する相補性決定領域(CDR)、ならびに表4(H)及び表5(L)に示す重鎖及び軽鎖を含む、抗原結合ドメインを有する。
【表1】
【表2】
【表3】
【0068】
BIIB037の成熟重鎖のアミノ酸配列を下記表4に記載する。
【表4】
【0069】
BIIB037の成熟軽鎖のアミノ酸配列を下記表5に記載する。
【表5-1】
【表5-2】
【0070】
抗体BIIB037に加え、本開示は、他の抗ベータアミロイド抗体、例えば、配列番号1を含むかもしくは構成要素とするVH領域または配列番号2を含むかもしくは構成要素とするVL領域を含む抗体、または配列番号1を含むかもしくは構成要素とするVH領域及び配列番号2を含むかもしくは構成要素とするVL領域を含む抗体などの使用を意図し、ここで、VH及び/またはVL領域は1つ以上の置換、欠失、及び/または挿入を有する。いくつかの実施形態では、これらのVH及びVL領域は、最高で25、最高で20、最高で15、最高で10、最高で5、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20のアミノ酸置換を有してよく、なおもベータ-アミロイドと結合してよい。具体的な実施形態では、これらのアミノ酸置換はフレームワーク領域内でのみ発生する。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換(複数可)は保存的アミノ酸置換である。ある実施形態では、VH及びVL領域には、1~5(1、2、3、4、5)のアミノ酸欠失及び/またはアミノ酸付加が含まれてよく、なおもベータ-アミロイドと結合してよい。ある実施形態では、これらの欠失及び/または付加は、VH及び/またはVL領域のN末端及び/またはC末端で行われる。一実施形態では、1つのアミノ酸の欠失及び/または付加をVH領域のN末端及び/またはC末端で行う。一実施形態では、1つのアミノ酸の欠失及び/または付加をVL領域のN末端及び/またはC末端で行う。
【0071】
本開示での使用が意図される他の抗体には、表3の可変重鎖(VH)CDR及び可変軽鎖(VL)CDRを含む抗体が含まれる。したがって、抗ベータアミロイド抗体は、配列番号3~8のアミノ酸配列を含むかまたは構成要素とするCDRを含む。一実施形態では、抗ベータアミロイド抗体は、配列番号4~8のアミノ酸配列を含むかまたは構成要素とするCDRを含み、VH CDR1として、GFAFSSYGMH(配列番号9)を含むかまたは構成要素とするアミノ酸配列が含まれる。いくつかの場合には、本開示は、任意のCDR定義(例えば、Kabat、Chothia、enhanced Chothia、AbM、または接触定義)に基づく、BIIB037のVH CDR及びVL CDRを含む抗ベータアミロイド抗体を包含する。例えば、http://www.bioinf.org.uk/abs/index.htmlを参照のこと。一実施形態では、本開示は、Chothia定義に基づく、BIIB037のVH CDR及びVL CDRを含む抗ベータアミロイド抗体を包含する。一実施形態では、本開示は、enhanced Chothia定義に基づく、BIIB037のVH CDR及びVL CDRを含む抗ベータアミロイド抗体を包含する。別の実施形態では、本開示は、AbM定義に基づく、BIIB037のVH CDR及びVL CDRを含む抗ベータアミロイド抗体を包含する。さらに別の実施形態では、本開示は、接触定義に基づく、BIIB037のVH
CDR及びVL CDRを含む抗ベータアミロイド抗体を包含する。
【0072】
抗体BIIB037及び本発明で使用される他の抗体は、公知の方法を使用して調製することができる。いくつかの実施形態では、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株に抗体を発現させる。
【0073】
本発明に従った治療に対する患者の応答は一般に用量依存的である。本発明の一実施形態は、患者に対し、抗Aβ抗体を少なくとも1回、AD患者の治療に必要とされる最小治療量より少ない量で投与することを含む。この投与に続き、抗Aβ抗体を少なくとも1回、AD患者の治療に必要とされる最小治療量とほぼ等しい量で患者に投与する。その後、抗Aβ抗体を少なくとも1回、最小治療量より多いがAD患者の治療に必要とされる最大耐容量より少ない有効量で患者に投与する。好ましい実施形態では、脳アミロイド量を減少させる。さらに好ましい実施形態では、患者のARIAの易発現性を低下させる。
【0074】
治療的有効量とは、アルツハイマー病に関連する症状または病態を改善するのに十分な抗Aβ抗体量を指す。抗Aβ抗体の治療有効性及び毒性は、標準的な製薬手順によって決定することができる。理想的には、抗Aβ抗体を、アルツハイマー病の場合の正常な行動及び/または認知特性を回復させる、または患者のAD進行を少なくとも遅延させるかもしくは予防するために十分な量で用いる。
【0075】
Tg2576マウスでは、モノクローナル抗体BIIB037(0.3mg/kg~30mg/kg)の長期にわたる投与後、脳アミロイドの用量依存的減少が観察された。3mg/kgで有意なアミロイド減少が観察され、これをこの動物モデルでの抗体BIIB037の最小治療用量とした。
【0076】
抗Aβ抗体の有効量は、アルツハイマー病の治療において臨床上有意な応答を生じさせる抗体量である。1か月あたり約1~30mg/kg(例えば、1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、15mg/kg、18mg/kg、20mg/kg、24mg/kg、25mg/kg、28mg/kg、30mg/kg)の有効量を用いることができる。抗体BIIB037の有効性は、安全性に従って、患者の体重あたり約10mg/kg~約30mg/kgの有効量でプラトーに達することができる。ある実施形態では、患者の体重あたり約3mg/kg~約10mg/kgの有効量が意図される。他の実施形態では、有効量は患者の体重あたり約3mg/kg、約6mg/kg、及び約10mg/kgである。
【0077】
抗Aβ抗体の最大耐容量は、安全性に従ったアルツハイマー病の治療において臨床上有意な応答を生じさせる抗体量である。本発明の方法に従った患者の治療における安全性に関する主な問題は、ARIA、特にARIA-EまたはARIA-Hの発現である。本発明の方法により、これまでの既知プロトコルを使用して実行可能だった用量よりも高い用量の抗体BIIB037をAD患者の治療に用いることが可能になる。
【0078】
用量調節は、治療プロトコルの間に実施可能であることが理解されるであろう。例えば、安全性または有効性の理由により、ADに対する抗Aβ抗体の効果が増強され得るよう用量を増加すること、またはARIAの比率及び重症度が軽減され得るよう用量を減量することができる。投与が1回抜けた場合、好ましくは、患者は、抜けた用量を受けて投与を再開し、その後、記載レジメンに従って継続するべきである。
【0079】
ある実施形態では、抗Aβ抗体を、生理食塩水に希釈してから静脈内注入により患者に投与する。この投与方法を使用する場合、本発明の用量調節レジメンでの各注入ステップは典型的に約1時間を要するであろう。
【0080】
本明細書の用量範囲及び他の数値には、患者のアルツハイマー病治療により示される記述数字の量と効果が同一である量、及び本発明の方法による治療を受けていない個人と比較した場合に、患者のARIA発生率またはARIA易発現性の低下が含まれる。少なくとも、数字による各パラメータは、通常の四捨五入法を適用して、有意な桁数を考慮して解釈されるべきである。さらに、いかなる数値であっても、その測定値の標準偏差からの誤差が本質的に含まれており、そのような値は本発明の範囲内である。
【0081】
組成物
本明細書に記載する抗Aβ抗体(例えば、BIIB037)は、医薬組成物として製剤化することができる。本発明で用いる医薬組成物は、当該技術分野で周知の方法に従って製剤化することができ、例えば、Remington:The Science and
Practice of Pharmacy(2000) by the University of Sciences in Philadelphia,ISBN 683-306472を参照のこと。組成物はさらに、薬理学的に許容される担体を含むことができる。適切な医薬担体の例は当該技術分野において周知であり、それらには、リン酸緩衝食塩液、水、油/水型エマルジョンのようなエマルジョン、各種の湿潤剤、滅菌溶液等が含まれる。
【0082】
さらに、医薬組成物はさらなる薬剤を含んでよい。例えば、アルツハイマー病の治療で使用する場合、さらなる薬剤は、有機小分子、別の抗Aβ抗体、抗タウ抗体、及びその組み合わせからなる群から選択することができる。抗Aβ抗体の非限定的な例は、米国特許第8,906,367号に見出すことができる。抗タウ抗体の非限定的な例は、米国特許第8,940,272号及び米国特許出願公開US2015/0344553号に見出すことができる。
【0083】
組成物の投与は、異なる方法、例えば、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、局所的投与、または皮内投与により実施可能である。
【0084】
標準用量
アルツハイマー病の一治療法では、抗ベータアミロイド抗体(例えば、BIIB037)を、ある期間にわたり、同一用量の抗体(すなわち、標準用量)の複数用量(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12)でヒト患者に投与する。
【0085】
例えば、ヒト患者に、患者の体重あたり3mg/kgの抗ベータアミロイド抗体をある期間にわたって複数回投与してよい。
【0086】
別の例では、ヒト患者に、患者の体重あたり6mg/kgの抗ベータアミロイド抗体をある期間にわたって複数回投与してよい。
【0087】
別の例では、ヒト患者に、患者の体重あたり10mg/kgの抗ベータアミロイド抗体をある期間にわたって複数回投与してよい。
【0088】
さらに別の例では、ヒト患者に、患者の体重あたり15mg/kgの抗ベータアミロイド抗体をある期間にわたって複数回投与してよい。
【0089】
さらなる例では、ヒト患者に、患者の体重あたり20mg/kgの抗ベータアミロイド抗体をある期間にわたって複数回投与してよい。
【0090】
別の例では、ヒト患者に、患者の体重あたり30mg/kgの抗ベータアミロイド抗体をある期間にわたって複数回投与してよい。
【0091】
これらの方法の各々の期間は、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、または8週間に1回であり得る。治療は、医療従事者により有益であるとみなされる期間まで進めることができる。
【0092】
ある実施形態では、抗Aβ抗体を、生理食塩水に希釈してから静脈内注入により患者に投与する。
【0093】
上記のいずれの実施形態においても、抗Aβ抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含んでよく、ここで、VHは、配列番号3または配列番号9のアミノ酸配列を有する第1の相補性決定領域(VHCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を有するVHCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVHCDR3を含み、VLは、配列番号6のアミノ酸配列を有するVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するVLCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVLCDR3を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体はVH及びVLを含み、ここで、VHは、配列番号1のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含み、VLは、配列番号2のVL CDR1、VL CDR2、及びVLCDR3を含み、ここで、CDRはChothia、enhanced Chothia、AbM、または接触定義に基づいて定義される。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体はVH及びVLを含み、ここで、VHは、配列番号1を含むかまたは構成要素とし、VLは、配列番号2を含むかまたは構成要素とする。
【0096】
ある実施形態では、上記の抗Aβ抗体はさらに、ヒトIgG1定常領域を含む。
【0097】
特定の実施形態では、抗Aβ抗体は、配列番号10を含むかまたは構成要素とする重鎖、及び配列番号11を含むかまたは構成要素とする軽鎖を含む。
【0098】
用量調節(逐次用量漸増投与)
抗ベータアミロイド抗体(例えば、BIIB037)で治療されるAD患者におけるARIAの発現は用量依存的である。ARIAは、1mg/kg及び3mg/kgの抗体投与を受ける患者において3回目及び5回目の投与後に観察されている。体重あたり6mg/kg及び10mg/kgという用量で2回目の投与後にARIAが観察されている。本開示の方法には、ARIAの発生率を低下させるために選択される治療レジメンが含まれる。
【0099】
アルツハイマー病の一治療法では、抗ベータアミロイド抗体をある期間にわたって量を漸増させてヒト患者に投与する。患者に抗体を逐次投与するこの手法は、既知濃度の標準化医薬品を、特定の評価項目によって手法完了が確認されるまで慎重に測定した量で投与することから、本明細書では「用量調節」と呼ぶ。本発明では、評価項目には、治療患者集団における、患者のアルツハイマー病に対する治療効果及びARIA、特にARIA-EまたはARIA-Hの発生率低下に対する治療効果が含まれる。
【0100】
本発明の用量調節レジメンの利点の一つは、標準用量レジメンで観察される程度と同じようなARIAを招くことなく、AD患者、特にアポリポタンパク質E4(ApoE4)保因者に対して高用量のモノクローナル抗体の投与が可能になることである。ある実施形態では、高用量は、被験者の体重あたり10mg/kgの抗Aβ抗体という用量(複数可)を含む。特定の機序に限定されることを何ら意図するものではないが、用量調節により、初期アミロイド除去がより低く、治療期間中を通して除去がより緩徐になると考えられる。
【0101】
抗Aβ抗体(例えば、BIIB037)の用量調節は複数用量にして行う。例えば、抗体の2用量を、用量あたり最小治療量より少ない量で患者に投与し、その後、抗体の4用量を、用量あたり最小治療量とほぼ等しい量で患者に投与することができる。その後、このレジメンに続いて、用量あたり、最小治療量より多いが最大耐容量より少ない量で複数用量を、患者のADに許容される変化が現れるまで行うことができる。例えば、用量を、約4週間の間隔を置いて約52週間にわたり投与可能である(合計14用量)。定期的に評価を行って進行を観察することができる。
【0102】
プロトコル(1)とされる本開示の一プロトコルは、
(A)抗ベータアミロイド抗体を患者の体重あたり1mg/kg量で患者に投与すること、
(B)ステップ(A)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり1mg/kgという量で患者に投与すること、
(C)ステップ(B)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり3mg/kgという量で患者に投与すること、
(D)ステップ(C)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり3mg/kgという量で患者に投与すること、
(E)ステップ(D)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり3mg/kgという量で患者に投与すること、
(F)ステップ(E)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり3mg/kgという量で患者に投与すること、
(G)ステップ(F)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり6mg/kgという量で患者に投与すること、及び
(H)ステップ(G)の後、連続4週間の間隔を置き、抗体を、患者の体重あたり6mg/kgという量で患者に投与することを含む。
【0103】
言い換えれば、プロトコル(1)は、抗ベータアミロイド抗体の初回用量を、患者の体重あたり1mg/kgという量で患者に投与し、その後、初回用量から4週間後に1mg/kg体重という量で第2用量を投与することを含む。第2用量の後、4週間隔で、抗体の用量3、用量4、用量5、及び用量6を体重あたり3mg/kgという量で患者に投与する。その後、用量6の投与後、4週間隔で、抗体の用量7及び用量8を体重あたり6mg/kgという量で患者に投与する。
【0104】
プロトコル(1)は、約4週間隔で約52週間にわたり投与される合計14用量を含み、任意選択で、その後、約4週間ごとに用量投与を継続してよく、それにより患者のARIA易発現性が低いAD治療を行い得る。言い換えれば、用量8の投与から4週間後、用量9~14を、6mg/kg体重という量で4週間隔にて患者に投与してよい。いくつかの実施形態では、抗体を体重あたり6mg/kgという量で4週間ごとに少なくとも第76週まで引き続き患者に投与する。言い換えれば、いくつかの実施形態では、方法は、用量8の後、4週間隔で用量9~20を6mg/kg体重という量で患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、用量8の後、抗体を、体重あたり6mg/kgという量で4週間ごと無期限に患者に投与する。いくつかの実施形態では、6mg/kg体重の最終用量の後に12週間隔で患者に投与する抗体量は3mg/kg体重である。いくつかの実施形態では、この減量用量を、第52週から12週間後(すなわち、用量14から12週間後)に患者に初回投与し、他の実施形態では、この減量用量を、第76週から12週間後(すなわち、用量20から12週間後)に患者に投与する。いくつかの実施形態では、6mg/kg体重の最終用量の後4週間隔で患者に投与する抗体の量は1mg/kg体重である。いくつかの実施形態では、この減量用量を、第52週から4週間後(すなわち、用量14から4週間後)に患者に初回投与し、他の実施形態では、この減量用量を、第76週から4週間後(すなわち、用量20から4週間後)に患者に初回投与する。
【0105】
プロトコル(1)は、ApoE遺伝子型決定で決定した場合にApoE4保因者またはApoE4非保因者とされる患者で用いてよい。プロトコル(1)の代替的実施形態のいずれにおいても、抗Aβ抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含んでよく、ここで、VHは、配列番号3または配列番号9のアミノ酸配列を有する第1の相補性決定領域(VHCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を有するVHCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVHCDR3を含み、VLは、配列番号6のアミノ酸配列を有するVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するVLCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVLCDR3を含む。プロトコル(1)のいくつかの実施形態では、抗Aβ抗体はVH及びVLを含み、ここで、VHは、配列番号1のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含み、VLは、配列番号2のVL CDR1、VL CDR2、及びVLCDR3を含み、ここで、CDRはChothia、enhanced Chothia、AbM、または接触定義に基づいて定義される。プロトコル(1)のいくつかの実施形態では、抗Aβ抗体はVH及びVLを含み、ここで、VHは、配列番号1を含むかまたは構成要素とし、VLは、配列番号2を含むかまたは構成要素とする。プロトコル(1)のある実施形態では、抗Aβ抗体はヒトIgG1定常領域を含む。特定の実施形態では、抗Aβ抗体は、配列番号10を含むかまたは構成要素とする重鎖、及び配列番号11を含むかまたは構成要素とする軽鎖を含む。
【0106】
プロトコル(2)とされる、本開示による別のプロトコルは、
(A)抗ベータアミロイド抗体を患者の体重あたり1mg/kg量で患者に投与すること、
(B)ステップ(A)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり1mg/kgという量で患者に投与すること、
(C)ステップ(B)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり3mg/kgという量で患者に投与すること、
(D)ステップ(C)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり3mg/kgという量で患者に投与すること、
(E)ステップ(D)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり6mg/kgという量で患者に投与すること、
(F)ステップ(E)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり6mg/kgという量で患者に投与すること、及び
(G)ステップ(F)の後、連続4週間の間隔を置き、抗体を、患者の体重あたり10mg/kgという量で患者に投与することを含む。
【0107】
言い換えれば、プロトコル(2)は、抗ベータアミロイド抗体の初回用量を、患者の体重あたり1mg/kgという量で患者に投与し、その後、初回用量から4週間後に体重あたり1mg/kgという量で第2用量を投与することを含む。第2用量の後、4週間隔で、抗体の用量3及び用量4を体重あたり3mg/kgという量で患者に投与する。用量4の投与後4週間隔で、抗体の用量5及び用量6を体重あたり6mg/kgという量で患者に投与する。その後、用量6の投与から4週間後、抗体の用量7を体重あたり10mg/kgという量で患者に投与する。
【0108】
プロトコル(2)は、約4週間隔で約52週間にわたり投与される合計14用量を含み、任意選択で、その後、約4週間ごとに用量投与を継続してよく、それにより患者のARIA易発現性が低いAD治療を行い得る。言い換えれば、用量7の投与から4週間後、用量8~14は、10mg/kg体重という量で4週間隔にて患者に投与してよい。いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体を体重あたり10mg/kgという量で4週間ごとに少なくとも第76週まで引き続き患者に投与する。言い換えれば、いくつかの実施形態では、方法は、用量7の後、4週間隔で用量8~20を10mg/kg体重という量で患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、用量7の後、抗Aβ抗体を体重あたり10mg/kgという量で4週間ごとに無期限で患者に投与する。いくつかの実施形態では、10mg/kg体重の最終用量の後、抗Aβ抗体の量を3mg/kg体重まで減量し、12週間隔で患者に投与する。いくつかの実施形態では、この減量用量を、第52週から12週間後(すなわち、用量14から12週間後)に患者に初回投与し、他の実施形態では、この減量用量を、第76週から12週間後(すなわち、用量20から12週間後)に患者に初回投与する。いくつかの実施形態では、10mg/kg体重の最終用量から4週間後、患者に投与する抗体の量を減量して4週間ごとに1mg/kg体重とする。いくつかの実施形態では、この減量用量を第52週から4週間後(すなわち、用量14から4週間後)に開始し、他の実施形態では、この減量用量を第76週から4週間後(すなわち、用量20から4週間後)に開始する。
【0109】
プロトコル(2)は、ApoE4保因者及びApoE4非保因者のいずれの治療にも用いることができる。プロトコル(2)の代替的実施形態のいずれにおいても、抗Aβ抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含んでよく、ここで、VHは、配列番号3または配列番号9のアミノ酸配列を有する第1の相補性決定領域(VHCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を有するVHCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVHCDR3を含み、VLは、配列番号6のアミノ酸配列を有するVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するVLCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVLCDR3を含む。プロトコル(2)のいくつかの実施形態では、抗Aβ抗体はVH及びVLを含み、ここで、VHは、配列番号1のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含み、VLは、配列番号2のVL CDR1、VL CDR2、及びVLCDR3を含み、ここで、CDRはChothia、enhanced Chothia、AbM、または接触定義に基づいて定義される。プロトコル(2)のある実施形態では、抗Aβ抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含んでよく、ここで、VHは、配列番号1を含むかまたは構成要素とし、VLは、配列番号2を含むかまたは構成要素とする。プロトコル(2)のいくつかの実施形態では、抗Aβ抗体はヒトIgG1定常領域を含む。特定の実施形態では、抗Aβ抗体は、配列番号10を含むかまたは構成要素とする重鎖、及び配列番号11を含むかまたは構成要素とする軽鎖を含む。
【0110】
本開示は、ApoE4保因者を治療するための別のプロトコルであるプロトコル(3)を提供する。本実施形態は、
(A)抗ベータアミロイド抗体を患者の体重あたり1mg/kg量で患者に投与すること、
(B)ステップ(A)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり1mg/kgという量で患者に投与すること、及び
(C)ステップ(B)の後、連続4週間の間隔を置き、抗体を、患者の体重あたり3mg/kgという量で患者に投与することを含む。
【0111】
言い換えれば、プロトコル(3)は、抗ベータアミロイド抗体の初回用量を患者の体重あたり1mg/kgという量で患者に投与することを含む。初回用量から4週間後、抗体の第2用量を体重あたり1mg/kgという量で患者に投与する。その後、第2用量から4週間後、抗体の用量3を体重あたり3mg/kgという量で患者に投与する。
【0112】
プロトコル(3)は、約4週間隔で約52週間にわたり投与される合計14用量を含み、任意選択で、その後、約4週間ごとに用量投与を継続してよく、それにより患者のARIA易発現性が低いAD治療を行い得る。言い換えれば、用量3の投与から4週間後、用量4~14は、3mg/kg体重という量で4週間隔にて患者に投与してよい。いくつかの実施形態では、抗体を体重あたり3mg/kgという量で4週間ごとに少なくとも第76週まで引き続き患者に投与する。言い換えれば、いくつかの実施形態では、方法は、用量3の後、用量4~20を体重あたり3mg/kgの量で4週間隔にて患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、用量3の後、抗体を、体重あたり3mg/kgという量で4週間ごと無期限に患者に投与する。いくつかの実施形態では、処方期間の後、患者に投与する抗体の量を減量して12週間ごとに3mg/kg体重としてよい。いくつかの実施形態では、12週間隔投与は第52週の後(すなわち、用量14の後)に開始され、他の実施形態では、12週間隔投与は第76週の後(すなわち、用量20の後)に開始される。いくつかの実施形態では、処方期間の後、患者に投与する抗体の量を減量して4週間ごとに1mg/kg体重としてよい。いくつかの実施形態では、この減量用量を第52週から4週間後(すなわち、用量14から4週間後)に開始し、他の実施形態では、この減量用量を第76週から4週間後(すなわち、用量20から4週間後)に開始する。
【0113】
プロトコル(3)は、ApoE遺伝子型決定で決定したApoE4保因者で使用してよい。プロトコル(3)の代替的実施形態のいずれにおいても、抗Aβ抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含んでよく、ここで、VHは、配列番号3または配列番号9のアミノ酸配列を有する第1の相補性決定領域(VHCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を有するVHCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVHCDR3を含み、VLは、配列番号6のアミノ酸配列を有するVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するVLCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVLCDR3を含む。プロトコル(3)のいくつかの実施形態では、抗Aβ抗体はVH及びVLを含み、ここで、VHは、配列番号1のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含み、VLは、配列番号2のVL CDR1、VL CDR2、及びVLCDR3を含み、ここで、CDRはChothia、enhanced Chothia、AbM、または接触定義に基づいて定義される。プロトコル(3)のいくつかの実施形態では、抗Aβ抗体はVH及びVLを含み、ここで、VHは、配列番号1を含むかまたは構成要素とし、VLは、配列番号2を含むかまたは構成要素とする。プロトコル(3)のある実施形態では、抗Aβ抗体はヒトIgG1定常領域を含む。特定の実施形態では、抗Aβ抗体は、配列番号10を含むかまたは構成要素とする重鎖、及び配列番号11を含むかまたは構成要素とする軽鎖を含む。
【0114】
プロトコル(4)とされる、本開示の別のプロトコルは、
(A)抗ベータアミロイド抗体を患者の体重あたり1mg/kg量で患者に投与すること、
(B)ステップ(A)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり1mg/kgという量で患者に投与すること、
(C)ステップ(B)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり3mg/kgという量で患者に投与すること、
(D)ステップ(C)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり3mg/kgという量で患者に投与すること、及び
(E)ステップ(D)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり6mg/kgという量で患者に投与することを含む。
【0115】
言い換えれば、プロトコル(4)は、抗ベータアミロイド抗体の初回用量を、患者の体重あたり1mg/kgという量で患者に投与し、その後、初回用量から4週間後に体重あたり1mg/kgという量で第1用量を投与することを含む。第2用量の後、4週間隔で、用量3及び用量4を体重あたり3mg/kgという量で患者に投与する。その後、用量4の投与から4週間後、抗体の用量5を体重あたり6mg/kgという量で患者に投与する。
【0116】
プロトコル(4)は、約4週間隔で約52週間にわたり投与される合計14用量を含み、任意選択で、その後、約4週間ごとに用量投与を継続してよく、それにより患者のARIA易発現性が低いAD治療を行い得る。言い換えれば、用量5の投与から4週間後、用量6~14を、6mg/kg体重という量で4週間隔にて患者に投与してよい。いくつかの実施形態では、抗体を体重あたり6mg/kgという量で4週間ごとに少なくとも第76週まで引き続き患者に投与する。言い換えれば、いくつかの実施形態では、方法は、用量5の後、4週間隔で用量6~20を6mg/kg体重という量で患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、用量5の後、抗体を、体重あたり6mg/kgという量で4週間ごと無期限に患者に投与する。いくつかの実施形態では、6mg/kg体重の最終用量の後、患者に投与する抗体の量を減量して12週間ごとに3mg/kg体重とする。いくつかの実施形態では、この減量用量を、第52週から12週間後(すなわち、用量14から12週間後)に患者に初回投与し、他の実施形態では、この減量用量を、第76週から12週間後(すなわち、用量20から12週間後)に患者に初回投与する。いくつかの実施形態では、10mg/kg体重の最終用量の後、患者に投与する抗体の量を減量して4週間ごとに1mg/kg体重とする。いくつかの実施形態では、この減量用量を第52週から4週間後(すなわち、用量14から4週間後)に開始し、他の実施形態では、この減量用量を第76週から4週間後(すなわち、用量20から4週間後)に開始する。
【0117】
プロトコル(4)の代替的実施形態のいずれにおいても、抗Aβ抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含んでよく、ここで、VHは、配列番号3または配列番号9のアミノ酸配列を有する第1の相補性決定領域(VHCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を有するVHCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVHCDR3を含み、VLは、配列番号6のアミノ酸配列を有するVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するVLCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVLCDR3を含む。プロトコル(4)のいくつかの実施形態では、抗Aβ抗体はVH及びVLを含み、ここで、VHは、配列番号1のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含み、VLは、配列番号2のVL CDR1、VL CDR2、及びVLCDR3を含み、ここで、CDRはChothia、enhanced Chothia、AbM、または接触定義に基づいて定義される。プロトコル(4)のいくつかの実施形態では、抗Aβ抗体はVH及びVLを含み、ここで、VHは、配列番号1を含むかまたは構成要素とし、VLは、配列番号2を含むかまたは構成要素とする。プロトコル(4)のある実施形態では、抗Aβ抗体はヒトIgG1定常領域を含む。特定の実施形態では、抗Aβ抗体は、配列番号10を含むかまたは構成要素とする重鎖、及び配列番号11を含むかまたは構成要素とする軽鎖を含む。
【0118】
プロトコル(5)とされる、本開示のさらに別のプロトコルは、
(A)抗ベータアミロイド抗体を患者の体重あたり1mg/kg量で患者に投与すること、
(B)ステップ(A)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり1mg/kgという量で患者に投与すること、
(C)ステップ(B)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり3mg/kgという量で患者に投与すること、
(D)ステップ(C)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり3mg/kgという量で患者に投与すること、
(E)ステップ(D)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり3mg/kgという量で患者に投与すること、
(F)ステップ(E)の4週間後、抗体を、患者の体重あたり3mg/kgという量で患者に投与すること、
(G)ステップ(F)の後、連続4週間の間隔を置き、抗体を、患者の体重あたり6mg/kgという量で患者に投与すること、
(H)ステップ(G)の後、連続4週間の間隔を置き、抗体を、患者の体重あたり6mg/kgという量で患者に投与すること、
(I)ステップ(H)の後、連続4週間の間隔を置き、抗体を、患者の体重あたり6mg/kgという量で患者に投与すること、
(J)ステップ(I)の後、連続4週間の間隔を置き、抗体を、患者の体重あたり6mg/kgという量で患者に投与すること、
(K)ステップ(J)の後、連続4週間の間隔を置き、抗体を、患者の体重あたり6mg/kgという量で患者に投与すること、及び
(L)ステップ(K)の後、連続4週間の間隔を置き、抗体を、患者の体重あたり10mg/kgという量で患者に投与することを含む。
【0119】
言い換えれば、プロトコル(5)は、抗ベータアミロイド抗体の初回用量を、患者の体重あたり1mg/kgという量で患者に投与し、その後、初回用量から4週間後に体重あたり1mg/kgという量で第2用量を投与することを含む。第2用量の後、4週間隔で、抗体の用量3、用量4、用量5、及び用量6を体重あたり3mg/kgという量で患者に投与する。用量6の投与後4週間隔で、用量7、用量8、用量9、用量10、及び用量11を体重あたり6mg/kgという量で患者に投与する。その後、用量11の投与から4週間後、抗体の用量12を体重あたり10mg/kgという量で患者に投与する。
【0120】
プロトコル(5)は、約4週間隔で約52週間にわたり投与される合計14用量を含み、任意選択で、その後、約4週間ごとに用量投与を継続してよく、それにより患者のARIA易発現性が低いAD治療を行い得る。言い換えれば、用量12の投与から4週間後、用量13~14を10mg/kg体重という量で4週間隔にて患者に投与してよい。いくつかの実施形態では、抗体を体重あたり10mg/kgという量で4週間ごとに少なくとも第76週まで引き続き患者に投与する。言い換えれば、いくつかの実施形態では、方法は、用量12の後、4週間隔で用量13~20を6mg/kg体重という量で患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、用量12の後、抗体を体重あたり10mg/kgという量で4週間ごと無期限に患者に投与する。いくつかの実施形態では、10mg/kg体重の最終用量の後、患者に投与する抗体の量を減量して12週間ごとに3mg/kg体重とする。いくつかの実施形態では、この減量用量を、第52週から12週間後(すなわち、用量14から12週間後)に患者に初回投与し、他の実施形態では、この減量用量を、第76週から12週間後(すなわち、用量20から12週間後)に患者に初回投与する。いくつかの実施形態では、10mg/kg体重の最終用量の後、患者に投与する抗体の量を減量して4週間ごとに1mg/kg体重とする。いくつかの実施形態では、この減量用量を第52週から4週間後(すなわち、用量14から4週間後)に開始し、他の実施形態では、この減量用量を第76週から4週間後(すなわち、用量20から4週間後)に開始する。ある実施形態では、プロトコル(5)で投与を受ける被験者はApoE4保因者である。高用量(10mg/kgなど)のアデュカヌマブは、固定-用量レジメンで観察される程度と同じようなARIAを招くことなく、ApoE4保因者に用量調節レジメンで投与することができる。他の実施形態では、プロトコル(5)で投与を受ける被験者はApoE4非保因者である。
【0121】
プロトコル(5)の代替的実施形態のいずれにおいても、抗Aβ抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含んでよく、ここで、VHは、配列番号3または配列番号9のアミノ酸配列を有する第1の相補性決定領域(VHCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を有するVHCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVHCDR3を含み、VLは、配列番号6のアミノ酸配列を有するVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するVLCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVLCDR3を含む。プロトコル(5)のいくつかの実施形態では、抗Aβ抗体はVH及びVLを含み、ここで、VHは、配列番号1のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含み、VLは、配列番号2のVL CDR1、VL CDR2、及びVLCDR3を含み、ここで、CDRはChothia、enhanced Chothia、AbM、または接触定義に基づいて定義される。プロトコル(5)のいくつかの実施形態では、抗Aβ抗体はVH及びVLを含み、ここで、VHは、配列番号1を含むかまたは構成要素とし、VLは、配列番号2を含むかまたは構成要素とする。プロトコル(5)のある実施形態では、抗Aβ抗体はヒトIgG1定常領域を含む。特定の実施形態では、抗Aβ抗体は、配列番号10を含むかまたは構成要素とする重鎖、及び配列番号11を含むかまたは構成要素とする軽鎖を含む。
【0122】
ApoE4保因者及びApoE4非保因者に対する例示的投与スキームを下記表6に記載する。
【表6】
【0123】
前述の例示的プロトコルは、安全性の要求事項に合せて有効性を最適化する。本発明のある実施形態では、患者の血管原性浮腫(VE)の易発現性を低下させる、または患者の脳微小出血(mH)の易発現性を低下させる、または患者のVE及びmHの両方を減少させる。
【0124】
これらの好ましいプロトコルの変形も可能である。用量間隔が定期的な患者の体重あたり1mg/kgの抗Aβ抗体の複数用量、その後、用量間隔が定期的な3mg/kgの複数用量という投与スキームを用いることができる。例えば、投与スキームは、患者の体重あたり1mg/kgを用量間隔4週間で2用量、それに続く、3mg/kgを用量間隔4週間で4用量を含む。この投与スキームの別の例は、患者の体重あたり1mg/kgを用量間隔4週間で2用量、それに続く、3mg/kgを用量間隔4週間で複数用量を治療完了まで含む。この投与スキームの別の例は、患者の体重あたり1mg/kgを用量間隔4週間で4用量、それに続く、3mg/kgを用量間隔4週間で複数用量を治療完了まで含む。ARIAは一般に用量2と用量5の間で発生することを考えると、この簡略プロトコルによりさらなる安全域が提供され得る。したがって、患者は6mg/kgまで用量調節を継続する必要がない場合があり、むしろ用量漸増を患者の体重あたり約3mg/kgで中止できる。
【0125】
これらの好ましいプロトコルの別の変形は、用量間隔が定期的な患者の体重あたり1mg/kgの抗Aβ抗体の複数用量、それに続けて、用量間隔が定期的な3mg/kgの複数用量を用いてよく、最後は、治療終了まで、用量間隔が定期的な患者の体重あたり6mg/kgの複数用量という投与スキームを含む。この投与スキームの一例は、患者の体重あたり1mg/kgを用量間隔4週間で2用量、それに続けて、3mg/kgを用量間隔4週間で4用量を用いてよく、最後は、治療終了まで、患者の体重あたり6mg/kgの複数用量を含む。
【0126】
別の実施形態では、例示的投与スキームは、用量(例えば、2用量、4用量、5用量)間が4週間隔の患者の体重あたり3mg/kgの投与で開始され、その後、用量間が4週間隔の患者の体重あたり6mg/kgの複数用量(例えば、2用量、4用量、5用量、6用量、10用量)、その後、用量間が4週間隔の患者の体重あたり10mg/kgの複数用量(例えば、2用量、4用量、5用量、6用量、10用量、15用量、20用量)を治療終了まで投与する。必要に応じ、3mg/kgの投与に先立ち、患者の体重あたり1mg/kgという任意選択の用量を4週間隔の用量(例えば、2用量、4用量、5用量)で投与してよい。被験者は、ApoE4保因者またはApoE4非保因者であり得る。
【0127】
本発明のさらなる実施形態では、用量調節ステップがなくても患者が適切な応答を示す場合、患者に合わせたモノクローナル抗体の用量調節を省くことができる。この事象では、例えば、ApoE4保因者に、患者の体重あたり1mg/kg、または3mg/kg、6mg/kg、または10mg/kgの抗Aβ抗体という用量のモノクローナル抗体を投与することができ、またApoE4非保因者には、患者の体重あたり3mg/kg、または6mg/kg、または10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、または30mg/kgの抗Aβ抗体という用量を投与することができる。合計14用量を、約4週間の間隔を置いて約52週間にわたり投与し、任意選択で、その後、約4週間ごとに用量投与を継続し、それにより患者のARIA易発現性が低いAD治療を行うことができる。
【0128】
抗Aβ抗体での治療中のARIA管理
ARIAの発現を予防する、またはその確率を低下させる上記方法にもかかわらず、患者にARIA(ARIA-E及び/またはARIA-H)が発症する場合がある。本開示は、そのような患者の治療を修飾する方法も提供する。かかる方法では、抗Aβ抗体を用いた用量の中止、及び/または用量の調整、及び/または治療の終了を行うことができる。
【0129】
(1)ARIA-E症例の内訳
下記表7は、上記治療レジメン期間中に発生し得るARIA-E症例の内訳計画を提供する。
【表7-1】
【表7-2】
【0130】
臨床症状の重症度は以下のとおり定義される。
【0131】
軽度:症状(複数可)に被験者がほとんど気づかないかまたは被験者が不快に思わない;症状による実行または機能への影響はない;処方薬品は通常は症状(複数可)の軽減に必要ではないが、被験者の人格を理由に与えられる場合がある。
【0132】
中等度:被験者が不快に思うほどの重症度の症状(複数可);日常活動の実行に影響を及ぼす;被験者は試験を継続することができる;症状(複数可)の治療が必要な場合がある。
【0133】
重度:症状(複数可)による強い不快感がある;症状により能力が損なわれるかまたは被験者の日常生活に大きな影響を及ぼす;重症度が原因で試験治療による治療が中止される場合がある;症状(複数可)に対する治療が行われる場合及び/または被験者を入院させる場合がある。
【0134】
ARIA-Eの重症度は以下のとおり定義される。
【0135】
軽度のARIA-E:軽度液体抑制反転回復法(Fluid-attenuated inversion recovery)(FLAIR)の高信号域は脳溝及び/または皮質または皮質下白質に限局し(脳回の腫脹及び脳溝の消失の有無を問わない)、単一の最大径5cm未満の領域に影響を与える。検出される病変領域は1つのみである。
【0136】
中等度ARIA-E:FLAIRの高信号域測定値が単一の最大径で5~10cmである、または2つ以上の病変部位の各々の測定値が単一の最大径で10cm未満である、中等度の病変領域。
【0137】
重度ARIA-E:重度の病変(FLAIRの高信号領域の測定値が単一最大径で10cm超)であり、しばしば顕著な皮質下白質及び/または脳溝の病変を有する(それに伴う脳回の腫脹及び脳溝の消失がある)。1つ以上の別個/独立の病変部位が認められる場合がある)。
【0138】
表7に従い、抗Aβ抗体(例えば、BIIB037)を用いた治療期間中どの時点でも臨床症状がない、MRIの読影による軽度のARIA-Eを発症する患者は、その時点の用量で抗Aβ抗体を用いた治療を継続することができる。患者は、MRIの読取りでARIA-Eが消失するまで約4週間ごとにMRIを受けるべきである。患者は、ARIA-Eが消失するまで予定された来院時には毎回MMSEも受けるべきである。医療従事者は、安全性及びMRIデータの評価に基づいて、患者への投与を中止するか、またはより低用量で投与を継続することを要求する場合がある。
【0139】
抗Aβ抗体を用いた治療期間中どの時点でも臨床症状がない、MRIの読影による中等度または重度のARIA-Eを発症する患者は治療を一時的に中止するべきであるが、予定された受診は評価のためにすべて完了するべきであり、その他に、MRIに従いARIA-Eが消失するまで約4週間ごとに予定外の来院でMRIを受けるべきである。これらの患者は、ARIA-Eが消失するまで予定された来院時には毎回MMSEも受けるべきである。ARIA-Eが消失し、被験者が無症状のままの場合は、患者は同一用量の抗Aβ抗体で治療を再開してよい。患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、患者はその次に低い抗Aβ抗体用量で再開するべきである。
【0140】
抗Aβ抗体を用いた治療期間中どの時点でも軽度、中等度、重度、または重篤な(「他の医学的に重要な事象」のみ)臨床症状を伴う、MRIの読影による軽度、中等度、または重度のARIA-Eを発症する患者は、治療を一時的に中止するべきであるが、予定受診はすべて評価のために完了するべきであり、その他に、MRIによるARIA-Eが消失するまで、約4週間ごとに予定外の来院でMRIを受けるべきである。患者は、ARIA-Eが消失するまで予定された来院時には毎回MMSEも受けるべきである。ARIA-Eが消失し、臨床症状が消失した場合、患者は同一用量の抗Aβ抗体で治療を再開してよい。患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、患者はその次に低い抗Aβ抗体用量で再開することになる。
【0141】
抗Aβ抗体を用いた治療期間中どの時点でも重篤な(「他の医学的に重要な事象」以外の)臨床症状を伴う、MRIの読影による軽度、中等度、または重度のARIA-Eを発症する患者は、抗Aβ抗体を用いた治療を中止するべきである。患者は予定された受診は評価のためにすべて完了するべきであり、その他に、中央のMRIの読影に従いARIA-Eが消失するまで約4週間ごとに予定外の来院でMRIを受けるべきである。患者はまた、ARIA-Eが消失するまで予定された来院時には毎回MMSEも受けることになる。
【0142】
患者に、用量中止を要するARIAの第3のエピソードがある場合、患者は抗Aβ抗体を用いた治療を中止する。
【0143】
(2)ARIA-H(微小出血)症例の内訳
下記表8は、上記治療レジメン期間中に発生し得るARIA-H(微小出血)症例の内訳計画を提供する。
【表8-1】
【表8-2】
【0144】
臨床症状の重症度は以下のとおり定義される。
【0145】
軽度:症状(複数可)に被験者がほとんど気づかないかまたは被験者が不快に思わない;症状による実行または機能への影響はない;処方薬品は通常は症状(複数可)の軽減に必要ではないが、被験者の人格を理由に与えられる場合がある。
【0146】
中等度:被験者が不快に思うほどの重症度の症状(複数可);日常活動の実行に影響を及ぼす;被験者は試験を継続することができる;症状(複数可)の治療が必要な場合がある。
【0147】
重度:症状(複数可)による強い不快感がある;症状により能力が損なわれるかまたは被験者の日常生活に大きな影響を及ぼす;重症度が原因で試験治療による治療が中止される場合がある;症状(複数可)に対する治療が行われる場合及び/または被験者を入院させる場合がある。
【0148】
ARIA-H(微小出血)の重症度は以下のとおり定義される。
軽度:1~4回の微小出血
中等度:5~9回の微小出血
重度:10回以上の微小出血
【0149】
抗Aβ抗体を用いた治療期間中に臨床症状がない、1回以上かつ4回以下の累積微小出血(複数可)を発症する患者は、その時点の用量で治療を継続してよいが、MRIによって微小出血の安定が確認されるまで約2週間ごとに予定外の来院でMRIを受けなければならない。微小出血が安定であるとされるのは、初回検出MRIとその2週間後に実施するMRIを含む、連続する2回のMRI間で変化がない場合である。患者は、ARIA-Hが安定するまで予定された来院時には毎回MMSEも受けるべきである。
【0150】
抗Aβ抗体を用いた治療期間中に臨床症状がない、5回以上かつ9回以下の累積微小出血を発症する患者は、治療を一時的に中止するべきであるが、予定された受診は評価のためにすべて完了するべきであり、その他に、MRIによって微小出血の安定が確認されるまで約2週間ごとに予定外の来院でMRIを受けるべきである。微小出血が安定であるとされるのは、初回検出MRIとその2週間後に実施するMRIを含む、連続する2回のMRI間で変化がない場合である。患者はまた、ARIA-Hが安定するまで予定された来院時には毎回MMSEも受けることになる。微小出血が安定であるとみなされた時点で、患者は同一用量で治療を再開してよい。被験者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、被験者は、次に低い用量で再開することになる。
【0151】
9回以下の累積微小出血(複数可)及び軽度、中等度、重度、または重篤な(「他の医学的に重要な事象」)臨床症状を発症する患者は、抗Aβ抗体を用いた治療を一時的に中止するべきであるが、予定された受診は評価のためにすべて完了するべきであり、その他に、MRIによって微小出血(複数可)の安定が確認されるまで約2週間ごとに予定外の来院でMRIを受けるべきである。微小出血が安定であるとされるのは、初回検出MRIとその2週間後に実施するMRIを含む、連続する2回のMRI間で変化がない場合である。患者は、ARIA-Hが安定するまで予定された来院時には毎回MMSEも受けるべきである。微小出血(複数可)が安定であるとみなされ、臨床症状が消失した時点で、患者は同一用量の抗Aβ抗体で治療を再開してよい。被験者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、患者はその次に低い抗Aβ抗体用量で再開することになる。
【0152】
微小出血(複数可)に関連した重篤な(「他の医学的に重要な事象」以外の)臨床症状を経験する患者は治療を中止するべきであるが、予定された受診は評価のためにすべて完了するべきであり、その他に、MRIによって微小出血(複数可)の安定が確認されるまで約2週間ごとに予定外の来院でMRIを受けるべきである。患者はまた、ARIA-Hが安定するまで予定された来院時には毎回MMSEも受けることになる。
【0153】
抗Aβ抗体を用いた治療期間中10回以上の累積微小出血を発症する患者は、症状の重症度にかかわらず治療を中止するべきである。患者は予定された受診は評価のためにすべて完了するべきであり、その他に、MRIにより微小出血が安定であるとみなされるまで約2週間ごとに予定外の来院でMRIを受けるべきである。患者はまた、ARIA-Hが安定するまで予定された来院時には毎回MMSEも受けることになる。
【0154】
患者に、用量中止を要するARIAの第3のエピソードがある場合、被験者は治療を中止する。
【0155】
(3)ARIA-H(脳表ヘモジデリン沈着症)症例の内訳
下記表9は、上記治療レジメン期間中に発生し得るARIA-H(脳表ヘモジデリン沈着症)症例の内訳計画を提供する。
【0156】
臨床症状の重症度は以下のとおり定義される。
【0157】
軽度:症状(複数可)に被験者がほとんど気づかないかまたは被験者が不快に思わない;症状による実行または機能への影響はない;処方薬品は通常は症状(複数可)の軽減に必要ではないが、被験者の人格を理由に与えられる場合がある。
【0158】
中等度:被験者が不快に思うほどの重症度の症状(複数可);日常活動の実行に影響を及ぼす;被験者は試験を継続することができる;症状(複数可)の治療が必要な場合がある。
【0159】
重度:症状(複数可)による強い不快感がある;症状により能力が損なわれるかまたは被験者の日常生活に大きな影響を及ぼす;重症度が原因で試験治療による治療が中止される場合がある;症状(複数可)に対する治療が行われる場合及び/または被験者を入院させる場合がある。
【0160】
ARIA-H(脳表ヘモジデリン沈着症)の重症度は以下のとおり定義される。
軽度の脳表ヘモジデリン沈着症域:1つの新たな限局領域
中等度の脳表ヘモジデリン沈着症域:2つの新たな限局領域
重度の脳表ヘモジデリン沈着症域:>2の新たな限局領域。
【表9-1】
【表9-2】
【0161】
臨床症状がない、単一の限局性脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する患者は、その時点の用量で抗Aβ抗体を用いた治療を継続してよいが、中央のMRI読影により脳表ヘモジデリン沈着症の安定が確認されるまで約2週間ごとに予定外の来院でMRIを受けなければならない。脳表ヘモジデリン沈着症が安定であるとされるのは、初回検出MRIとその2週間後に実施するMRIを含む、連続する2回のMRI間で変化がない場合である。患者はまた、ARIA-Hが安定するまで予定された来院時には毎回MMSEも受けることになる。
【0162】
抗Aβ抗体を用いた治療期間中に臨床症状を伴わずに発生する限局性脳表ヘモジデリン沈着症域を累積で2つ発症する患者は、治療を一時的に中止するべきであるが、予定された受診は評価のためにすべて完了するべきであり、その他に、MRIによって脳表ヘモジデリン沈着症の安定が確認されるまで約2週間ごとに予定外の来院でMRIを受けるべきである。脳表ヘモジデリン沈着症が安定であるとされるのは、初回検出MRIとその2週間後に実施するMRIを含む、連続する2回のMRI間で変化がない場合である。患者は、ARIA-Hが安定するまで予定された来院時には毎回MMSEも受けるべきである。脳表ヘモジデリン沈着症が安定であるとみなされた時点で、患者は同一用量で治療を再開してよい。患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、被験者は、次に低い用量で再開することになる。
【0163】
累積限局性脳表ヘモジデリン沈着症域が2つ以下であり、軽度、中等度、重度、または重篤な(「他の医学的に重要な事象」のみ)臨床症状を発症する患者は、抗Aβ抗体を用いた治療を一時的に中止するべきであるが、予定された受診は評価のためにすべて完了するべきであり、その他に、中央のMRI読影により脳表ヘモジデリン沈着症の安定が確認されるまで約2週間ごとに予定外の来院でMRIを受けるべきである。脳表ヘモジデリン沈着症が安定であるとされるのは、初回検出MRIとその2週間後に実施するMRIを含む、連続する2回のMRI間で変化がない場合である。患者はまた、ARIA-Hが安定するまで予定された来院時には毎回MMSEも受けることになる。脳表ヘモジデリン沈着症が安定であるとみなされ、臨床症状が消失した時点で、患者は同一用量で治療を再開してよい。患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、患者はその次に低い抗Aβ抗体用量で再開するべきである。
【0164】
脳表ヘモジデリン沈着症に関連した重篤な(「他の医学的に重要な事象」以外の)臨床症状を経験する患者は、抗Aβ抗体を用いた治療を中止することになるが、予定された受診は評価のためにすべて完了するべきであり、その他に、MRIによって脳表ヘモジデリン沈着症の安定が確認されるまで約2週間ごとに予定外の来院でMRIを受けるべきである。患者は、ARIA-Hが安定するまで予定された来院時には毎回MMSEも受けるべきである。
【0165】
累積限局性脳表ヘモジデリン沈着症域が2つを超えて発症する患者は、臨床症状の重症度にかかわらず抗Aβ抗体を用いた治療を中止するべきであるが、予定された受診は評価のためにすべて完了するべきであり、その他に、中央のMRIの読影により脳表ヘモジデリン沈着症の安定が確認されるまで約2週間ごとに予定外の来院でMRIを受けるべきである。患者は、ARIA-Hが安定するまで予定された来院時には毎回MMSEも受けるべきである。
【0166】
患者に、用量中止を要するARIAの第3のエピソードがある場合、患者は治療を中止する。
【0167】
(4)ARIA-HがARIA-Eと同時である症例の内訳
抗Aβ抗体を用いた治療期間中のどの時点でもARIA-HとARIA-Eを同時に発症する患者は、前述のガイドラインのうち最も制限的なガイドラインに従うべきである。治療再開に先立ち、該当する場合、ARIA-Eが消失していること、ARIA-Hが安定であるとみなされること、及び被験者が無症状であることが必要である。
【0168】
(5)ARIA-H(大出血)症例の内訳
試験期間中、症状の重症度にかかわらず偶発的な大出血を発症する患者は、抗Aβ抗体を用いた治療を中止しなければならないが、予定された受診は評価のためにすべて完了するべきであり、その他に、MRIによって大出血の安定が確認されるまで約2週間ごとに予定外の来院でMRIを受けるべきである。患者は、大出血が安定するまで予定された来院時には毎回MMSEも受けるべきである。
【0169】
ARIA-H(大出血)の重症度は以下のとおり定義される。
軽度:最大径が1~2cm
中等度:最大径が2~4cm
重度:最大径が4cm超
【0170】
(6)標準用量レジメンでARIAを発症する患者の例示的治療方法
抗Aβ抗体の標準用量の患者が臨床症状を伴わない中等度または重度のARIA-Eを発症する場合、ARIA-Eが消失するまで用量の中止が必要である。ARIA-E消失の時点で、中等度または重度のARIA-Eを発症する直前に患者に投与されていた用量と同用量を患者に投与することができる。この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、直近の中等度または重度のARIA-Eを発症する直前に患者に投与されていた抗Aβ抗体用量よりも低い抗Aβ抗体用量を患者に投与するべきである。例えば、6mg/kgの抗Aβ抗体という標準用量を受けている患者が臨床症状のない中等度または重度のARIA-Eを発症する場合、抗Aβ抗体を用いた患者の治療はARIA-Eが消失するまで中止するべきであり、ARIA-Eの消失後に、患者は6mg/kgの抗Aβ抗体を用いた治療を継続することができる。ただし、この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hを発症して用量の中止が必要となったことがある場合、ARIAが消失してから、より低い用量(例えば、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg)の抗Aβ抗体を患者に投与するべきである。
【0171】
抗Aβ抗体の標準用量の患者が、軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状を有する、軽度、中等度、または重度のARIA-Eを発症する場合、ARIA-Eが消失するまで用量の中止が必要である。ARIA-Eが消失して臨床症状が消失する時点で、中等度または重度のARIA-Eを発症する直前に患者に投与されていた用量と同用量を患者に投与することができる。この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状のある、直近の中等度または重度のARIA-Eを発症する直前に患者に投与されていた抗Aβ抗体用量よりも低い抗Aβ抗体用量を患者に投与するべきである。例えば、6mg/kgの抗Aβ抗体という標準用量を受けている患者が、軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状を有する、軽度、中等度、または重度のARIA-Eを発症する場合、抗Aβ抗体を用いた患者の治療はARIA-Eが消失し臨床症状が消失するまで中止するべきであり、それらの消失後に、患者は6mg/kgの抗Aβ抗体を用いた治療を継続することができる。ただし、この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hを発症して用量の中止が必要となったことがある場合、ARIAが消失し臨床症状が消失してから、より低い用量(例えば、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg)の抗Aβ抗体を患者に投与するべきである。
【0172】
抗Aβ抗体の標準用量の患者が臨床症状のない5~9の累積微小出血を発症する場合、ARIA-Hが安定するまで用量の中止が必要である。ARIA-Hが安定になった時点で、5~9の累積微小出血を発症する直前に患者に投与されていた用量と同用量を患者に投与することができる。この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、5~9の累積微小出血を発症する直前に患者に投与されていた抗Aβ抗体用量よりも低い抗Aβ抗体用量を患者に投与するべきである。例えば、6mg/kgの抗Aβ抗体という標準用量を受けている患者が、臨床症状がない5~9の累積微小出血を発症する場合、抗Aβ抗体を用いた患者の治療はARIA-Hが安定するまで中止するべきであり、安定後に、患者は6mg/kgの抗Aβ抗体を用いた治療を継続することができる。ただし、この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hを発症して用量の中止が必要となったことがある場合、ARIA-Hが安定化した時点で、より低い用量(例えば、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg)の抗Aβ抗体を患者に投与するべきである。
【0173】
抗Aβ抗体の標準用量の患者が軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状のある1~9の累積微小出血を発症する場合、ARIA-Hが安定するまで用量の中止が必要である。ARIA-Hが安定し臨床症状が消失する時点で、1~9の累積微小出血を発症する直前に患者に投与されていた用量と同用量を患者に投与することができる。この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状のある1~9の累積微小出血を発症する直前に患者に投与されていた抗Aβ抗体用量よりも低い抗Aβ抗体用量を患者に投与するべきである。例えば、6mg/kgの抗Aβ抗体という標準用量を受けている患者が、軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状のある1~9の累積微小出血を発症する場合、抗Aβ抗体を用いた患者の治療はARIA-Hが安定し臨床症状が消失するまで中止するべきであり、それらの後に、患者は6mg/kgの抗Aβ抗体を用いた治療を継続することができる。ただし、この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hを発症して用量の中止が必要となったことがある場合、ARIA-Hが安定化し臨床症状が消失した時点で、より低い用量(例えば、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg)の抗Aβ抗体を患者に投与するべきである。
【0174】
抗Aβ抗体の標準用量の患者が臨床症状のない2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する場合、ARIA-Hが安定するまで用量の中止が必要である。ARIA-Hが安定になった時点で、2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する直前に患者に投与されていた用量と同用量を患者に投与することができる。この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する直前に患者に投与されていた抗Aβ抗体用量よりも低い抗Aβ抗体用量を患者に投与するべきである。例えば、6mg/kgの抗Aβ抗体という標準用量を受けている患者が、臨床症状がない2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する場合、抗Aβ抗体を用いた患者の治療はARIA-Hが安定するまで中止するべきであり、安定後に、患者は6mg/kgの抗Aβ抗体を用いた治療を継続することができる。ただし、この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hを発症して用量の中止が必要となったことがある場合、ARIA-Hが安定化した時点で、より低い用量(例えば、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg)の抗Aβ抗体を患者に投与するべきである。
【0175】
抗Aβ抗体の標準用量の患者が軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状のある、1つまたは2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する場合、ARIA-Hが安定し臨床症状が消失するまで用量の中止が必要である。ARIA-Hが安定し臨床症状が消失する時点で、2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する直前に患者に投与されていた用量と同用量を患者に投与することができる。この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、1つまたは2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する直前に患者に投与されていた抗Aβ抗体用量よりも低い抗Aβ抗体用量を患者に投与するべきである。例えば、6mg/kgの抗Aβ抗体という標準用量を受けている患者が、軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状のある、1つまたは2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する場合、抗Aβ抗体を用いた患者の治療はARIA-Hが安定し臨床症状が消失するまで中止するべきであり、それらの後に、患者は6mg/kgの抗Aβ抗体を用いた治療を継続することができる。ただし、この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hを発症して用量の中止が必要となったことがある場合、ARIA-Hが安定化し臨床症状が消失した時点で、より低い用量(例えば、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg)の抗Aβ抗体を患者に投与するべきである。
【0176】
(7)用量調節レジメン時にARIAを発症する患者の例示的治療方法
抗Aβ抗体の用量調節レジメンを受けている患者が臨床症状のない中等度または重度のARIA-Eを発症する場合、ARIA-Eが消失するまで用量の中止が必要である。ARIA-E消失の時点で、中等度または重度のARIA-Eを発症する直前に患者に投与されていた用量と同用量を患者に投与することができる。この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、用量の中止が必要となった直近のARIAを発症する直前に患者に投与されていた抗Aβ抗体用量よりも低い抗Aβ抗体用量を患者に投与するべきである。例えば、患者が上記のプロトコル(5)のレジメンを受けており、ステップ(C)の後に臨床症状のない中等度または重度のARIA-Eを発症する場合、ARIA-Eが消失するまで抗Aβ抗体を用いた治療を中止するべきである。ARIA-E消失の時点で、中等度または重度のARIA-Eを発症する直前に患者に投与されていた用量と同じ用量(すなわち、患者の体重あたり3mg/kg)を患者に投与することができる。用量中止の後に抗Aβ抗体を用いた治療を再開する場合、患者は再開用量で2用量以上(すなわち、3mg/kgを少なくとも2用量)受けなければならない。再開用量の2回目の投与後、及び用量を漸増した際の2回目の投与後にMRIを実施するべきである。その後で、患者は、プロトコル(5)の残りのステップ(すなわち、ステップ(D)から(L))を継続することができる。
【0177】
ただし、プロトコル(5)のレジメンに従った治療を受けており、ステップ(C)の後に臨床症状のない中等度または重度のARIA-Eを発症する患者が、それまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量の中止が必要となったことがある場合、ARIA-Eが消失するまで抗Aβ抗体を用いた治療を中止するべきであり、ARIA-E消失の時点で、用量中止が必要となった直近の中等度または重度のARIAを発症する直前に患者に投与されていた抗Aβ抗体用量よりも低い抗Aβ抗体用量(この場合、患者の体重あたり1mg/kg)をこの患者に投与するべきである。用量中止の後に抗Aβ抗体を用いた治療を再開する場合、患者は再開用量で2用量以上(すなわち、1mg/kgを少なくとも2用量)受けなければならない。再開用量の2回目の投与後、及び用量を漸増した際の2回目の投与後にMRIを実施するべきである。その後で、患者は、プロトコル(5)の残りのステップ(すなわち、ステップ(D)から(L))を継続することができる。
【0178】
抗Aβ抗体の用量調節レジメンを受けている患者が、軽度、中等度、または重度の臨床症状、または「他の医学的に重要な」重篤度分類基準を満たす臨床症状を有する、軽度、中等度、もしくは重度のARIA-Eを発症する場合、ARIA-Eが消失するまで用量の中止が必要である。ARIA-Eが消失して臨床症状が消失する時点で、軽度、中等度または重度のARIA-Eを発症する直前に患者に投与されていた用量と同用量を患者に投与することができる。この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、用量の中止が必要となった直近のARIAを発症する直前に患者に投与されていた抗Aβ抗体用量よりも低い抗Aβ抗体用量を患者に投与するべきである。例えば、患者が上記のプロトコル(5)のレジメンを受けており、ステップ(E)の後で軽度、中等度、または重度の臨床症状、または「他の医学的に重要な」重篤度分類基準を満たす臨床症状を有する、軽度、中等度または重度のARIA-Eを発症する場合、ARIA-Eが消失し、臨床症状が消失するまで抗Aβ抗体を用いた治療を中止するべきである。ARIA-E及び臨床症状が消失した時点で、中等度または重度のARIA-Eを発症する直前に患者に投与されていた用量と同じ用量(すなわち、患者の体重あたり3mg/kg)を患者に投与することができる。用量中止の後に抗Aβ抗体を用いた治療を再開する場合、患者は再開用量で2用量以上(すなわち、3mg/kgを少なくとも2用量)受けなければならない。再開用量の2回目の投与後、及び用量を漸増した際の2回目の投与後にMRIを実施するべきである。その後で、患者は、プロトコル(5)の残りのステップ(すなわち、ステップ(F)から(L))を継続することができる。
【0179】
ただし、プロトコル(5)のレジメンに従った治療を受けており、ステップ(E)の後で軽度、中等度、または重度の臨床症状、または「他の医学的に重要な」重篤度分類基準を満たす臨床症状を有する、軽度、中等度、または重度のARIA-Eを発症する患者が、それまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量の中止が必要となったことがある場合、ARIA-Eの消失及び/またはARIA-Hの安定ならびに臨床症状の消失まで抗Aβ抗体を用いた治療を中止するべきであり、それらが消失した時点で、最も重篤なARIAを発症する直前に患者に投与されていた抗Aβ抗体用量よりも低い抗Aβ抗体用量(この場合、患者の体重あたり1mg/kg)をこの患者に投与するべきである。用量中止の後に抗Aβ抗体を用いた治療を再開する場合、患者は再開用量で2用量以上(すなわち、1mg/kgを少なくとも2用量)受けなければならない。再開用量の2回目の投与後、及び用量を漸増した際の2回目の投与後にMRIを実施するべきである。その後で、患者は、プロトコル(5)の残りのステップ(すなわち、ステップ(F)から(L))を継続することができる。
【0180】
例えば、患者が上記のプロトコル(5)のレジメンを受けており、ステップ(G)の後で軽度、中等度、重度、または「他の医学的に重要な」重篤度分類基準を満たす臨床症状を有する、軽度、中等度または重度のARIA-Eを発症する場合、ARIA-Eが消失し、臨床症状が消失するまで抗Aβ抗体を用いた治療を中止するべきである。ARIA-E及び臨床症状が消失したら、中等度または重度のARIA-Eを発症する直前に患者に投与されていた用量と同じ用量(すなわち、患者の体重あたり6mg/kg)を患者に投与することができる。用量中止の後に抗Aβ抗体を用いた治療を再開する場合、患者は再開用量で2用量以上(すなわち、6mg/kgを少なくとも2用量)受けなければならない。再開用量の2回目の投与後、及び用量を漸増した際の2回目の投与後にMRIを実施するべきである。その後で、患者は、プロトコル(5)の残りのステップ(すなわち、ステップ(H)から(L))を継続することができる。ただし、プロトコル(5)のレジメンに従った治療を受けており、ステップ(G)の後で、軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状を有する、軽度、中等度、または重度のARIA-Eを発症する患者が、それまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量の中止が必要となったことがある場合、ARIA-Eが消失し、臨床症状が消失するまで抗Aβ抗体を用いた治療を中止するべきであり、それらが消失した時点で、直近の中等度または重度のARIA-Eを発症する直前に患者に投与されていた抗Aβ抗体用量よりも低い抗Aβ抗体用量(この場合、患者の体重あたり3mg/kg)をこの患者に投与するべきである。用量中止の後に抗Aβ抗体を用いた治療を再開する場合、患者は再開用量で2用量以上(すなわち、3mg/kgを少なくとも2用量)受けなければならない。再開用量の2回目の投与後、及び用量を漸増した際の2回目の投与後にMRIを実施するべきである。その後で、患者は、プロトコル(5)の残りのステップ(すなわち、ステップ(F)から(L))を継続することができる。
【0181】
抗Aβ抗体の用量調節レジメンを受けている患者が臨床症状のない5~9の累積微小出血を発症する場合、ARIA-Hが安定するまで用量の中止が必要である。ARIA-Hが安定になった時点で、5~9の累積微小出血を発症する直前に患者に投与されていた用量と同用量を患者に投与することができる。この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、5~9の累積微小出血を発症する直前に患者に投与されていた抗Aβ抗体用量よりも低い抗Aβ抗体用量を患者に投与するべきである。例えば、抗Aβ抗体のプロトコル(5)治療レジメンを受けている患者がステップ(D)の後で臨床症状がない5~9の累積微小出血を発症する場合、抗Aβ抗体を用いた患者の治療はARIA-Hが安定するまで中止するべきであり、安定後に、患者は、ステップ(D)の抗Aβ抗体量と同量(すなわち、患者の体重あたり3mg/kg)を用いた治療を継続することができる。用量中止の後に抗Aβ抗体を用いた治療を再開する場合、患者は再開用量で2用量以上(すなわち、3mg/kgを少なくとも2用量)受けなければならない。その後で、患者は、プロトコル(5)の残りのステップ(すなわち、ステップ(E)から(L))を継続することができる。
【0182】
ただし、この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hを発症して用量の中止が必要となったことがある場合、ARIA-Hが安定化した時点で、プロトコル(5)の低用量(すなわち、患者の体重あたり1mg/kg)の抗Aβ抗体を患者に投与するべきである。患者に、患者の体重あたり1mg/kgの抗Aβ抗体を2用量以上投与する。その後で、患者は、プロトコル(5)の残りのステップ(すなわち、ステップ(E)から(L))を継続してよい。
【0183】
抗Aβ抗体の用量調節レジメンを受けている患者が軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状のある1~9の累積微小出血を発症する場合、ARIA-Hが安定し、臨床症状が消失するまで用量の中止が必要である。ARIA-Hが安定し、臨床症状が消失した時点で、1~9の累積微小出血を発症する直前に患者に投与されていた用量と同用量を患者に投与することができる。この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、軽度、中等度、または重度の臨床症状、または「他の医学的に重要な」重篤度分類基準を満たす臨床症状を有する、1~9の累積微小出血を発症する直前に患者に投与されていた抗Aβ抗体用量よりも低い抗Aβ抗体用量を患者に投与するべきである。例えば、プロトコル(5)を受けている患者がステップ(E)の後で軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状のある1~9の累積微小出血を発症する場合、抗Aβ抗体を用いた患者の治療はARIA-Hが安定し臨床症状が消失するまで中止するべきであり、それらの後に、患者は、ステップ(E)で使用した量と同量の抗Aβ抗体(すなわち、患者の体重あたり3mg/kg)を用いた治療を継続することができる。用量中止の後に抗Aβ抗体を用いた治療を再開する場合、患者は再開用量で2用量以上(すなわち、3mg/kgを少なくとも2用量)受けなければならない。その後で、患者は、プロトコル(5)の残りのステップ(すなわち、ステップ(F)から(L))を継続することができる。
【0184】
ただし、この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hを発症して用量の中止が必要となったことがある場合、ARIA-Hが安定化し臨床症状が消失した時点で、低用量(すなわち、患者の体重あたり1mg/kg)の抗Aβ抗体を患者に投与するべきである。患者に、患者の体重あたり1mg/kgの抗Aβ抗体を2用量以上投与する。その後で、患者は、プロトコル(5)の残りのステップ(すなわち、ステップ(F)から(L))を継続してよい。
【0185】
抗Aβ抗体の用量調節レジメンを受けている患者が臨床症状のない2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する場合、ARIA-Hが安定するまで用量の中止が必要である。ARIA-Hが安定になった時点で、2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する直前に患者に投与されていた用量と同用量を患者に投与することができる。この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する直前に患者に投与されていた抗Aβ抗体用量よりも低い抗Aβ抗体用量を患者に投与するべきである。例えば、プロトコル(5)を受けている患者がステップ(E)の後で臨床症状がない2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する場合、抗Aβ抗体を用いた患者の治療はARIA-Hが安定するまで中止するべきであり、安定後に、患者は、ステップ(E)と同量の抗体(すなわち、患者の体重あたり3mg/kg)を用いた治療を継続することができる。患者に、患者の体重あたり3mg/kgの抗Aβ抗体を2用量以上投与する。その後で、患者は、プロトコル(5)の残りのステップ(すなわち、ステップ(F)から(L))を継続することができる。
【0186】
ただし、この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hを発症して用量の中止が必要となったことがある場合、ARIA-Hが安定化した時点で、プロトコルで次に低い用量(すなわち、患者の体重あたり1mg/kg)の抗Aβ抗体を2用量以上患者に投与するべきである。その後で、患者は、プロトコル(5)の残りのステップ(すなわち、ステップ(F)から(L))を継続してよい。
【0187】
抗Aβ抗体の用量調節レジメンを受けている患者が、軽度、中等度、または重度の臨床症状、または「他の医学的に重要な」重篤度分類基準を満たす臨床症状を有する、1つまたは2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する場合、ARIA-Hが安定し臨床症状が消失するまで用量の中止が必要である。ARIA-Hが安定し、臨床症状が消失した時点で、2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する直前に患者に投与されていた用量と同用量を患者に投与することができる。この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hの既往があり、用量中止が必要となったことがある場合、1つまたは2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する直前に患者に投与されていた抗Aβ抗体用量よりも低い抗Aβ抗体用量を患者に投与するべきである。例えば、プロトコル(5)を受けている患者がステップ(C)の後で、軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状のある、1つまたは2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を発症する場合、抗Aβ抗体を用いた患者の治療はARIA-Hが安定し臨床症状が消失するまで中止するべきであり、それらの後に、患者は、プロトコル(5)のステップ(C)と同量の抗Aβ抗体(すなわち、患者の体重あたり3mg/kg)を2用量以上用いた治療を継続することができる。その後で、患者は、プロトコル(5)の残りのステップ(すなわち、ステップ(D)から(L))を継続することができる。
【0188】
ただし、この患者がそれまでにARIA-EまたはARIA-Hを発症して用量の中止が必要となったことがある場合、ARIA-Hが安定化し臨床症状が消失した時点で、プロトコル(5)で次に低い量の抗Aβ抗体(すなわち、患者の体重あたり1mg/kg)を2用量以上患者に投与するべきである。その後で、患者は、プロトコル(5)の残りのステップ(すなわち、ステップ(D)から(L))を継続してよい。
【0189】
(8)ARIAによる用量中止後の治療再開
上記いずれの場合においても、用量中止の後で抗Aβ抗体(例えば、BIIB037)を用いる治療を再開する場合、再開用量で2用量以上を患者に投与する必要がある。再開用量の2回目の投与後、及び用量を漸増した際の2回目の投与後にMRIを実施するべきである。
【0190】
ADの症状の測定及び軽減
ADのリスク、存在、重症度、及び進行の測定は、経時的な臨床診断;患者の全体的な機能レベルの評価;日常生活能力または行動障害の評価;脳構造の容積分析;脳内の異常タンパク質の病理学的沈着物についてのインビボ測定(例えば、PETベータ-アミロイド画像検査)、または体液の生化学的変数(例えば、タウタンパク質またはAβペプチド);及び疾患の自然経過/既往との比較によって決定することができる。
【0191】
患者のADの病期決定には、以下の臨床評価、すなわち、CDR、FCSRT、神経精神症状評価質問票(NPI-Q)、ならびにレイ聴覚性言語学習検査(RA VLT)の直後再生及び遅延再生、ウェクスラー記憶検査(WMS)言語性対連合学習検査の直後再生及び遅延再生、Delis-Kaplan実行機能検査の言語流暢性条件の1と2、及びウェクスラー成人知能検査第4版記号探し及び符号下位検査を含む、神経心理学的検査バッテリー;ならびに認知薬研究コンピュータ検査バッテリー(Cognitive Drug Research computerized test battery)を用いることができる。
【0192】
一実施形態では、診断法は、臨床的認知症尺度(CDR)スケール、神経心理学的検査バッテリー、認知症薬研究コンピュータ検査バッテリー、自由及び手掛りによる選択的想起検査(FCSRT)、精神状態短時間検査(MMSE)、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)、及び神経精神症状評価質問票(NPI-Q)でのベースラインからの変化の決定を含む。
【0193】
バイオマーカーは、ADの定義及び疾患のスペクトルに沿った疾患病期決定にとって不可欠なものとして浮上してきている。バイオマーカーの表現型は、アミロイド斑、神経原線維変化、炎症、及び神経変性のような、臨床表現型と神経病理学的表現型の間にある不足を補うことができる。ADのバイオマーカーには、ApoEアイソタイプ、CSF Aβ42、アミロイドPET、CSFタウ、及び海馬容積測定(HCV)MRIが含まれる。
【0194】
脳の特定領域のアミロイド斑量は18F-AV-45によるPETで測定することができる。18F-AV-45は、Avid Radiopharmaceuticals(Philadelphia,Pennsylvania)により開発されたアミロイドリガンドである。これは、線維性Aβに高親和性に結合する(Kd=3.1nM)。18F-AV-45によるPET画像検査の結果から、AD患者では、アミロイドの沈着が多いと考えられる皮質領域にトレーサーが選択的に集積しているが、健常対照では、これらの領域から短時間で消失し、皮質には最小限のトレーサー集積しか示されなかったことが示されている。AD被験者と年齢整合対照被験者間で18F-AV-45の平均取込み量における有意差が観察された。18F-AV-45によるPET画像検査の試験・再試験分散は、AD患者及び認知機能健常対照者いずれにおいても低い(5%未満)。18F-AV-45によるPET画像の視覚評価及び皮質取込みの平均定量推定は、免疫組織化学及び銀染色老人斑スコアにより測定した、剖検時のアミロイド病理の存在及び量と相関する(Clark CM,et al. Use of florbetapir-PET for imaging β-amyloid pathology. JAMA,2011 Jan;305(3):275-283)。
【0195】
18F-AV-45の放射線線量計測は典型的PETリガンドの範囲内である。平均的ヒト全身有効線量は0.019mSv/MBqであると推定される。1回の注射あたり370MBqの線量は、良好なイメージング結果が得られることも示されている。
【0196】
AD患者は、FDG PET測定において局所糖代謝が特徴的に低下しており、これは進行性の認知機能障害に関連している(Landau SM,et al. Associations between cognitive,functional,and
FDG-PET measures of decline in AD and MCI. Neurobiol Aging,2011 Jul;32(7):1207-18;Mielke R,et al. HMPAO SPET and FDG PET in Alzheimer’s disease and vascular dementia:comparison of perfusion and metabolic pattern. Eur J Nucl Med.,1994 Oct;21(10):1052-60)。抗Aβ抗体が糖代謝障害の進行を止める効果は、FDG
PET測定を使用して定期的に評価することができる。FDGの放射線線量計測は典型的PETリガンドの範囲内である。平均的ヒト全身有効線量は0.019mSv/MBqであると推定される。標準FDGイメージングのプロトコルでは1回の注射あたり185MBqの線量を用いる。患者は、典型的に、各スキャンで最高185MBqを受けることができる。
【0197】
CSF中のAβ1-42値及びT-タウ値またはP-タウ値の測定は、ADの予測バイオマーカーとして受入れられつつある。エビデンスは、タウ凝集病理が病因における非常に初期の事象であることを裏付けている。(Duyckaerts(2011)Lancet Neurol.10,774-775,and Braak et al.,(2013),Acta Neuropath.,126:631-41)。
【0198】
AD関連バイオマーカーを用いることもできる。これらには、血中のピログルタミル化-Aβ、Aβ40、及びAβ42、ならびにCSF中の総タウ、リン酸化-タウ、ピログルタミル化-Aβ、Aβ40、及びAβ42が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0199】
MRIによる形態計測もまた、AD評価に役立つ。これらには、全脳容積、海馬容積、脳室容積、及び皮質灰白質容積が含まれる。評価プロトコルには、ASL-MRIにより測定する脳血流及びtf-fMRIにより測定する機能的結合性を含めることができる。
【0200】
本開示に従ってAD患者の治療に抗Aβ抗体(例えば、BIIB037)を使用することにより、ベースライン測定値に対するこれらのパラメータの1つまたはそれ以上の改善がもたらされるか、またはある病期から次の病期へADの進行を少なくとも予防もしくは緩徐化する。
【0201】
ARIAの測定
AD患者は一般に、抗Aβ抗体(例えば、BIIB037)に用量依存的に応答する。したがって、最大限の効率を得るために高用量を用いることは有利である。しかし、抗Aβ抗体の用量を増量した場合、特定の患者集団においてARIAの発生率または出現率が高まり得る。本開示により、アルツハイマー病の治療を受けている患者で感受性のある患者、特に、高用量の抗Aβ抗体投与を受けている患者、ならびにApoE4保因者におけるARIAの発生率を低下させることが可能になる。特に、本開示により、アミロイド関連画像異常-浮腫(ARIA-E)の発生率を低下させること、またはアミロイド関連画像異常-出血もしくはヘモジデリン沈着症(ARIA-H)の発生率を低下させること、またはARIA-EとARIA-Hの両方を低下させることが可能になる。
【0202】
浮腫(ARIA-E)及び微小出血またはヘモジデリン沈着症(ARIA-H)が含まれるARIAは、MRI(すなわち、液体抑制反転回復法(ARIA-EにはFLAIR/T2、またARIA-HにはT2*/グラジェントエコー法)により容易に検出可能である。(Sperling R,et al. Amyloid-related imaging abnormalities in patients with Alzheimer’s disease treated with bapineuzumab:a retrospective analysis. Lancet Neurol.,2012;11(3):241-9)。ARIA-Hの検出においてT2*/グラジェントエコー法よりはるかに感度の高いMRI法である磁化率強調画像(SWI)(Sperling RA,et al. Amyloid-related imaging abnormalities in amyloid-modifying therapeutic trials:Recommendations from the Alzheimer’s Association Research Roundtable Workgroup. Alzheimer’s and Dementia,2011;7(4):367-85)を用いることもできる。
【0203】
血管原性浮腫の徴候には、一般に白質に限局し、しばしば脳回の腫脹に関連する、T2強調時の高信号及びFLAIRシーケンスが含まれる。血管原性浮腫がある場合の症状には、頭痛、認知機能悪化、意識変容、痙攣、不安定、及び嘔吐が含まれる。
【0204】
ARIA-HはMRIで観察可能であり、臨床的相関のない(すなわち、患者は無症状である)画像所見と考えられている(Sperling RA,et al. Amyloid-related imaging abnormalities in amyloid-modifying therapeutic trials:Recommendations from the Alzheimer’s Association Research Roundtable Workgroup. Alzheimer’s and Dementia,2011;7(4):367-85)。具体的には、出血は、グラジェントエコー法、T1強調、T2強調、及びFLAIRのMRIシーケンスを使用して検出可能である。微小出血は通常無症状であるが、大出血は典型的に、脳の罹患領域を反映する限局性の徴候及び症状、ならびに血管原性浮腫の場合の症状を含む非特異的症状を有する。MRI収集の周波数は安全性モニタリングのニーズによる。
【0205】
以下は本発明の実施例である。それらは、本発明の範囲を何ら限定するものではないと解釈されるべきである。
【実施例0206】
実施例1:インビボでのBIIB037の毒性試験
BIIB037の毒性評価にはTg2576マウス及びカニクイザルを使用した。2種のうちTg2576マウスでは、アミロイド斑が脳の実質及び血管系に蓄積されることから、これらのマウスを薬理学的に適切な第一の種とみなす。
【0207】
マウスでの標準の組織病理学的評価に加え、ヘモジデリン(ヘモグロビンの分解産物)のペルルス染色を実施して微小出血を定量化した。微小出血は、Tg2576マウス(Kumar-Singh S,et al. Dense-core plaques in Tg2576 and PSAPP mouse models of Alzheimer’s disease are centered on vessel walls. American Journal of Pathology,2005 Aug;167(2):527-43)を含むADトランスジェニックマウスモデルにおける背景所見(Winkler DT,et al. Spontaneous hemorrhagic stroke in a mouse model of cerebral amyloid angiopathy. J. Neurosci.,2001 Mar 1;21(5):1619-27)、及び一部の抗Aβ抗体で処置したトランスジェニックマウスにおける薬物関連所見[Pfeifer M,et al. Cerebral hemorrhage after passive anti-Aβ
immunotherapy. Science 2002 Nov 15;298(5597):1379;Racke MM,et al. Exacerbation of cerebral amyloid angiopathy- associated microhemorrhage in amyloid precursor protein transgenic mice by immunotherapy
is dependent on antibody recognition of
deposited forms of amyloid beta. J Neurosci.,2005 Jan 19;25(3):629-36.;Wilcock OM,Colton CA. Immunotherapy,vascular pathology,and microhemorrhages in transgenic mice. CNS & Neurological Disorders Drug Targets,2009 Mar;8(1):50-64)の両方として観察された。
【0208】
実施例2:インビボでのBIIB037の短期試験
13週間の試験において、Tg2576マウスに10mg/kgもしくは70mg/kgのch12F6A、または500mg/kgのch12F6AもしくはBIIB037という用量を毎週IV投与した。70mg/kg/週を超えて投与した2匹のマウスにおいて、標準の組織病理学的染色により評価した最小から軽度の急性出血が観察された。さらなる所見には、対照動物と比較して70mg/kg/週を超えて処置したマウスにおいて髄膜の血管炎症の発生率及び/または重症度がわずかに上昇していたこと、ならびに500mg/kg/週を投与した動物2匹において血栓症が発現したことが含まれた。6週間の休薬回復期間終了時には、ch12F6A処置マウス及びBIIB037処置マウスで観察されていた所見の発生率及び重症度は、試験期間を通して対照群で観察された範囲内であった。
【0209】
脳の標準的な組織病理学に加え、微小出血の存在をペルルス染色により評価したところ、13週間の投与後、ch12F6A/BIIB037処置群と対照群間で微小出血の有意差は認められなかった。
【0210】
70mg/kg/週以上で観察された髄膜の血管炎症及び急性出血の発生率及び/または重症度が高かったことは、10mg/kg/週の無毒性量(NOAEL)決定に寄与した。
【0211】
実施例3:インビボでのBIIB037の長期試験
6か月の試験において、Tg2576マウスに10mg/kgもしくは40mg/kgのch12F6A、または250mg/kgのch12F6AもしくはBIIB037を毎週IV投与した。マウス定常ドメインを含むキメラ型12F6A(ch12F6A)を40mg/kg超で処置した主要動物及び早期死亡動物の脳において髄膜/脳の血管炎症及び血管肥厚を組み合わせた発生率及び/または重症度がわずかに高かったこと、ならびに250mg/kgのch12F6Aで処置した動物のサブセットにおける微小出血領域が増大していたことを除いては、本試験期間及び回復期間中に評価したどのパラメータにおいても治療に関連する変化はなかった。
【0212】
250mg/kgのBIIB037の静脈内注射投与を毎週受けたTg2576マウスにおいて、治療に関連する所見も、髄膜/脳の血管炎症及び/または血管肥厚の発生率及び/または重症度の上昇もなく、ch12F6AまたはBIIB037の処置を受けた動物の脳内の微小出血の病巣数及び/または領域割合における統計学的な有意差はなかった。
【0213】
6週間の回復期間の後、血管の炎症または肥厚の発生率及び/または重症度は、処置群及び対照群で同様であった。これらの変化が治療に関連して増悪する可能性を完全に除外できるわけではないが、脳内の血管の炎症、肥厚、及び悪化が考えられる微小出血は、治療との関係が不明確なものであり、疾患モデルに単独で本質的な加齢による変性変化の可能性が高いとみなされた。したがって、この試験ではNOAELは250mg/kg/週である。
【0214】
4週間のサルによる試験において治療関連所見が観察され、NOAELは300mg/kg/週であった。
【0215】
以上をまとめると、BIIB037の毒性評価により、沈着Aβに対する抗体の結合と一致する毒性プロファイルが確認された。
【0216】
実施例4:インビボでのアミロイドベータの減少
Tg2576マウスでは、ch12F6Aの長期にわたる投与(0.3mg/kg~30mg/kg)後に脳アミロイドの用量依存的減少が観察された。最小有効量とした3mg/kgにて有意なアミロイド減少が観察され、有効性は10mg/kg~30mg/kg間でプラトーに達すると思われた。13週間のTg2576マウスによる毒性試験(10mg/kg/週)から得られた無毒性量(NOAEL)を安全域決定のために使用した。
【0217】
1mg/kg及び3mg/kgでのヒトにおけるBIIB037の定常状態平均曝露量(AUC0~4wkとして計算)は、13週間のマウス毒性試験で観察された非臨床的NOAEL用量への曝露(AUC0~4wkとして計算)の約12分の1及び4分の1となるよう計画される。用量10mg/kgの後のBIIB037の定常状態平均曝露量は、NOAEL用量の曝露量と同様となるよう計画される。最高用量である30mg/kgは、NOAEL曝露量の2~3倍であり、かつ髄膜の血管炎症の重症度及び脳出血の発生率でわずかな上昇が観察された用量70mg/kgでの曝露量の3分の1である定常状態平均曝露量を達成するよう計画される。
【0218】
実施例5:BIIB037を用いた臨床経験
最初の臨床試験は、軽度~中等度のAD被験者を対照としたBIIB037の安全性、忍容性、及び薬物動態(PK)についての第1相無作為盲検プラセボ対照単回投与用量漸増(SAD)試験である。53例の被験者をSAD試験に登録した。
【0219】
BIIB037の開始用量は0.3mg/kgであり、500mg/kg(AUCTAU=402000μg*時間/mL)を与えられたTg2576マウスにおける平均曝露量を超えない平均曝露量(AUCinf)を提供すると予測された用量である60mg/kgまで漸増した。30mg/kg(0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、及び30mg/kg)までの用量は一般に忍容性が高かった。
【0220】
症候性アミロイド関連画像異常-浮腫(ARIA-E)の重篤有害事象(SAE)2例、及び無症候性ARIA-Eの有害事象(AE)1例が60mg/kgコホートで報告された。試験プロトコルに従い、60mg/kgコホートへの以降の登録を中止した。SAD試験ではAEによる死亡例も中止例も報告されなかった。BIIB037の血清曝露は、用量30mg/kgまで直線性を示した。
【0221】
実施例6:BIIB037の臨床試験
A.ヒトAD被験者を対象としたBIIB037の第1b相臨床試験
第1b相治験を実施した。治験は、前駆期から軽度のAD被験者及びアミロイドスキャン陽性者を対象としたBIIB037の無作為化盲検プラセボ対照用量漸増試験であった。治験の主要評価項目は安全性であった。副次評価項目には、18F-AV-45によるPET画像検査により測定する脳アミロイド斑内容物に対する効果の評価が含まれた。特定の脳領域で18F-AV-45によるPET信号のベースラインからの変化を評価した。探索的評価項目で被験者の認知機能を評価した。被験者に、患者の体重に基づいた1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、または10mg/kgのBIB037、またはプラセボを与えた。
【0222】
B.事前に規定された中間解析#1
事前に規定された中間解析#1では、1mg/kg、3mg/kg、及び10mg/kgの各群及びプラセボ群について26週間のデータが得られた。
【0223】
AD被験者を、プラセボ群、患者の体重あたり1mg/kgのBIIB037を受けた群、体重あたり3mg/kgのBIIB037を受けた群、及び体重あたり10mg/kgのBIIB037を受けた群の4群に無作為化した。被験者は各群約31例であった。被験者の平均年齢は約72歳(平均)であった。ApoE4保因者は、各群それぞれの63%、61%、66%、及び63%を構成した。
【0224】
被験者のAD臨床病期を評価した。前駆期AD被験者は、各群それぞれの47%、32%、44%、及び41%を構成した。軽度AD被験者は、各群それぞれの53%、68%、56%、及び59%を構成した。
【0225】
静PET撮像プロトコルを用いた。各被験者にトレーサーを注射し、単回スキャンを実施した。トレーサーは、線維性Aβプラークを標的とするPETリガンドであるAV45であった。
【0226】
アミロイドPETイメージングプロトコルの結果は標準取込み値比として表したが、これは、PETイメージングに使用されるβ-アミロイドリガンドの取込み尺度であり、存在するβ-アミロイド量に対応する。標準化した取込み値比は、基準領域に対する目的領域の比を取ることによりPET信号を正規化する。目的領域では、特異的結合及び結合シグナル変化は、治療により誘導された薬理学調節を反映する。基準領域では、非特異的結合は治療効果がないことを示す。
【0227】
アミロイドの用量依存的減少が観察された。第26週に3mg/kg及び10mg/kgで観察された統計学的に有意な減少があった。かかる効果は、小サブセットの被験者に基づき第54週まで継続すると考えられた。観察された効果による明らかなApoE修飾はなかった。ベースラインの標準取込み値比が高い被験者において、より大きな効果が観察された。
【0228】
治療の安全性及び忍容性を評価した。有害事象は一般に軽度または中等度であった。最も頻度の高かった有害事象は頭痛であり、用量依存的であると考えられた。化学、血液学、尿検査、ECG、またはバイタルサインの有意な変化はなかった。被験者27例は、ARIA-EまたはARIA-E/Hを示した。
【0229】
BIIB037高用量及びApoE4保因で高いARIA発生率が観察された。ホモ接合性及びヘテロ接合性のE4保因者はARIAについて同様のリスクがあると考えられた。
【0230】
ARIA-Eの発現はほとんどの例で治療過程の初期に生じた。ARIA-Eは1mg/kg及び3mg/kgの用量で3~5用量(第18週または第10週)の後に生じた。5回目の用量以降は症例は検出されなかった。ARIA-Eは6mg/kg及び10mg/kgの用量で2用量(第6週)の後及び第30週に生じた。画像所見はほとんどの場合4~12週間で消失し、ARIA-Eが可逆性であることを示した。
【0231】
ARIA-Hイベントのあった被験者は全員ARIA-Eイベントもあった。3mg/kg及び10mg/kgの各治療群においてARIA-Eの発生率はARIA-Hの発生率よりも高かった。1mg/kgの用量投与を受けた群では各イベントの発生率は同じであった。
【0232】
C.事前に規定された中間解析#2
事前に規定された中間解析#2では、1mg/kg、3mg/kg、及び10mg/kgの各群及びプラセボ群についての54週間のデータ、ならびに6mg/kgの群についての26週間のデータが得られた。
【0233】
図1は、治療群それぞれについての観察データに基づいた、測定時点ごとの平均PET複合の標準取込み値比(SUVR)を示す。
図1は、抗体BIIB037の投与を受けた治療群それぞれにおいてベースラインから第26週までアミロイド量の減少があったことを示す。BIIB037の投与を受けた治療群それぞれにおいて第26週から第54週までさらなるアミロイド量の減少があった。プラセボ群は対応するアミロイド量の減少を示さなかった。
【0234】
図1はまた、BIIB037の投与によるアミロイド量の減少は用量依存的であったことも示す。高用量のBIIB037は、アミロイドスキャンを使用すると、より大幅な脳内アミロイドの減少を伴っていた。同様の効果はプラセボ群では観察されなかった。
【0235】
図2は、ベースラインの臨床病期、すなわち、前駆期または軽度のADによる、第26週のベースラインのPET複合SUVRからの補正平均変化量を示す。
図2は観察データに基づいている。
図2は、アミロイドスキャンではアミロイド減少が用量依存的であったことを示す。
【0236】
図3は、被験者のApoE4ステータスによるアミロイド量の減少を示す。保因者群及び非保因者群はいずれも、プラセボ群と比較してアミロイド量の減少を示した。減少は各症例で用量依存的であった。
【0237】
試験中のARIA-E及び/またはARIA-Hの発生率を推定した。結果を
図4に示す。ApoE4保因者及びApoE4非保因者におけるARIAの発生率も
図4に報告する。発生率は用量依存的であり、6mg/kg及び10mg/kgではApoE4保因依存的であった。ARIA-Eの発現はほとんどの場合、治療過程初期であった。ARIA-Eは概して可逆性であった。ARIA-Hは安定であった。画像所見はほとんどの場合4~12週間で消失した。
【0238】
D.患者の認知力の臨床評価
治療患者におけるアルツハイマー病の症状の変化の指標として臨床評価を用いた。具体的には、臨床的認知症尺度(CDR)スケール及び精神状態短時間検査(MMSE)でベースラインからの変化を測定した。観察データに基づくこれらの評価の結果を
図5及び
図6にまとめている。
【0239】
図5は、プラセボ投与を受けた患者と、1mg/kg、3mg/kg、または10mg/kgの抗体BIIB037投与を受けた患者集団とを比較する、ベースラインのCDR-SBからの補正平均変化量を示す。特定用量での治療の第54週に測定を行った。
【0240】
図6は、プラセボ投与を受けた患者と、1mg/kg、3mg/kg、または10mg/kgの抗体BIIB037投与を受けた患者集団とを比較する、ベースラインのMMSEからの補正平均変化量を示す。特定用量での治療の第54週に測定を行った。
【0241】
実施例7:前駆期または軽度のアルツハイマー病患者を対象とした、抗Aβモノクローナル抗体アデュカヌマブ(BIIB037)の無作為化二重盲検プラセボ対照第1b相試験:疾患病期及びApoE ε4ステータスによる中間結果
アデュカヌマブ(BIIB037)は、可溶性オリゴマー及び不溶性線維を含めたベータ-アミロイド(Aβ)ペプチドの凝集形態に対して選択的なヒトモノクローナル抗体である。アデュカヌマブの単回投与用量漸増試験では、許容可能な安全性、及び最高30mg/kgまでの用量で軽度から中等度のAD患者が対象となることが実証された。この第1b相試験では、前駆期または軽度のAD患者におけるアデュカヌマブの安全性、忍容性、薬物動態(PK)、及び薬力学を評価した。
【0242】
目的は、疾患病期及びApoE ε4ステータスによる、アデュカヌマブでの安全性及びAβ除去(フロルベタピル[18-AV-45]によるポジトロン断層撮影[PET]結果の変化)の中間結果を提示することであった。
【0243】
試験デザイン
PRIMEは、多施設共同無作為二重盲検プラセボ対照反復投与試験[NCT01677572]である。
【0244】
患者は、50~90歳、一定用量の併用薬がある、精神状態短時間検査(MMSE)スコアが20以上である、及び下記の臨床診断基準及び放射線診断基準を満たす患者であった。
●前駆期AD:MMSEが24~30の自発的記憶愁訴;自由及び手掛りによる選択的想起検査の自由再生スコアの合計が27以下;臨床的認知症尺度(CDR)総合スコアが0.5;他の認知領域における有意レベルの障害なし;基本的に日常生活動作は保たれ、認知症なし;視覚評価によるフロルベタピルPETスキャンが陽性であった。
●軽度AD:MMSEが20~26;総合CDRが0.5または1.0;National Institute on Aging及びAlzheimer’s AssociationのADほぼ確実(probable)主要臨床診断基準を満たしていた;視覚評価によるフロルベタピルPETスキャンが陽性であった。
【0245】
PRIME試験デザインを
図14に示す。患者(計画登録者数、N=188)を、時間差用量漸増デザインの治療群(目標登録者数:実薬治療群あたりn=30)9群のうち1群に実薬対プラセボ比3:1で無作為化した。主要評価項目及び副次評価項目を
図15に記載する。PRIME評価スケジュールを
図16に示す。PRIMEは現在進行中である。中間解析の場合、1mg/kg、3mg/kg、及び10mg/kgの群では第54週まで、また6mg/kg群では第30週までデータを分析した。
【0246】
患者
無作為化した患者166例のうち165例が投与を受け、107例(65%)はApoE ε4保因者、68例(41%)は前駆期ADであった。患者の内訳を
図17に示す。ベースラインの人口統計学的特性及び疾患特性は
図18に示すように全治療群で概してよく類似していた。
【0247】
安全性
全治療群で患者の84%~98%において有害事象(AE)が報告された。最も頻度の高かったAE及び重篤なAE(SAE)はアミロイド関連画像異常(ARIA;MRIに基づく)(表9)であり、他のAE/SAEは患者集団と一致した。
図19は、ARIA所見及びARIA-Eの後の患者内訳の概要を提供する。
【0248】
死亡3例が報告された(プラセボで2例、アデュカヌマブ10mg/kgで1例);治療関連とみなされた症例はなかった(2例は試験中止後に発生した)。
【0249】
単独のARIA-浮腫(ARIA-E)の発生率は用量及びApoE ε4-ステータスに依存的であった(
図19):
●ApoE ε4保因者での全体的なARIA-E発生率は1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、及び10mg/kgのアデュカヌマブそれぞれについて5%、5%、43%、及び55%であったのに対し、プラセボでは0%であった。
●ApoE ε4非保因者での対応する発生率は0%、9%、11%、及び17%対0%であった。
●ARIA-微小出血/ヘモジデリン沈着症(ARIA-H)単独の発生率は、用量及びApoE ε4ステータスで同様であった(データ図示せず)。
【0250】
小さい試料サイズに基づくと、ApoE ε4ステータスを考慮した場合、前駆期または軽度のAD被験者間でARIA-Eの発生率に明らかな差はなかった(
図19)。ほとんどの(92%)ARIA-Eイベントは、最初の5用量までに観察され、ARIA-Eイベントの65%は無症状であった。
●症状がある場合、それらは典型的に4週間以内に消失した。
●MRI所見は典型的に4~12週間以内に解決した。
【0251】
ARIA-Eを発症した大部分の患者(54%)は、治療を継続し(治療継続患者のうち93%は用量を減量して継続した)、ARIA-E再発患者はいなかった。ARIA-E患者での治療中止は軽度及び前駆期のサブグループで一貫していた(データ図示せず)。
【0252】
化学、血液学、尿検査、心電図、またはバイタルサインの有意な変化はなかった。
【0253】
脳Aβプラークの減少
6領域、すなわち、前頭部、頭頂葉、側頭葉外側部、感覚運動、前部帯状回、及び後部帯状回の容積から得た複合SUVRにより脳Aβプラークの減少を評価した。
【0254】
第26週及び第54週での用量依存的及び時間依存的な脳Aβプラークの減少(SUVR低下により証明される)は一般に、
図7に示す被験用量内では軽度及び前駆期のADサブグループで一貫しており、ApoE ε4保因者及び非保因者で一貫していた。
【0255】
臨床評価項目
探索的評価項目、すなわち、1年目のMMSE(
図8)及びCDR-sb(
図9)での低下について統計学的に有意な用量依存的減速があった。
【0256】
結論
プラセボに対し、PETイメージングにより測定した脳Aβプラークの用量依存的かつ時間依存的な有意な減少があった。この効果は治療の6か月目及び1年目で明らかであった。
【0257】
プラセボと対比してAβプラークの減少に及ぼすアデュカヌマブの効果のパターンは、ほとんどの場合、疾患病期及びApoE ε4ステータスで一貫していた。
【0258】
1年目のMMSE及びCDR-sbでの低下について統計学的に有意な用量依存的減速が観察された。
【0259】
アデュカヌマブは、54週にわたる容認可能な安全性プロファイルを示した。安全性及び忍容性の主な所見はARIAであったが、経過を観察し管理することができた。ARIAの発生率は用量依存的かつApoE-ε4-ステータス依存的であった。ARIAはほとんどの場合、治療過程初期に観察され、軽度の一過性の症状があるかまたは無症状であった。
【0260】
中間解析#3
中間解析#3には、54週目までの6mg/kg群及び対応するプラセボ群(分析のため、併合したプラセボ集団に組み込む)のデータが含まれる。
【0261】
脳Aβプラークの減少
6領域、すなわち、前頭部、頭頂葉、側頭葉外側部、感覚運動、前部帯状回、及び後部帯状回の容積から得た複合SUVRにより脳Aβプラークの減少を評価した。
図11に示すように、54週目に脳Aβプラーク(SUVR低下により証明される)の用量依存的減少があった。
【0262】
臨床評価項目
探索的評価項目、すなわち、1年目のMMSE(
図13)及びCDR-sb(
図12)の低下について統計学的に有意な用量依存的減速があった。
【0263】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて記載してきたが、上述の説明は本発明の範囲を例示することを意図し、制限するものではなく、本発明の範囲は添付の請求の範囲に記載の範囲により定義される。他の態様、利点、及び変更は以下の特許請求の範囲に含まれる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
アルツハイマー病(AD)を治療する方法を必要とするヒト被験者のアルツハイマー病を治療する方法であって、
前記ヒト被験者に複数用量の抗ベータアミロイド抗体を投与し、ここで、前記被験者は、前記抗ベータアミロイド抗体を用いた治療中、アミロイド関連画像異常(ARIA)を発症し、ここで、前記ARIAは、(i)中等度または重度である、臨床症状を伴わないARIA-E、(ii)軽度、中等度、または重度であり、軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状を伴うARIA-E、(iii)累積微小出血が5~9である、臨床症状を伴わないARIA-H、(iv)累積微小出血が1~9である、軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状を伴うARIA-H、(v)脳表ヘモジデリン沈着症の累積領域を2つ有する、臨床症状を伴わないARIA-H、または(vi)1つまたは2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を有する、軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状を伴うARIA-Hであり、
前記ARIA発現後は、前記ARIAが消失するまで前記被験者への前記抗ベータアミロイド抗体の投与を中止し、
前記被験者が前記ARIAを発症する直前に投与していた用量と同一用量の抗ベータアミロイド抗体の前記被験者への投与を再開し、
ここで、前記抗ベータアミロイド抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、
ここで、前記VHは、配列番号3のアミノ酸配列を有する第1の相補性決定領域(VHCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を有するVHCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVHCDR3を含み、
前記VLは、配列番号6のアミノ酸配列を有するVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するVLCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVLCDR3を含む
ことを含む、前記方法。
(項目2)
前記抗ベータアミロイド抗体の前記複数用量は同用量である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記抗ベータアミロイド抗体の前記複数用量は異なる量の用量を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記複数用量は、前記被験者の体重あたり1mg/kgである、項目2に記載の方法。
(項目5)
前記複数用量は、前記被験者の体重あたり3mg/kgである、項目2に記載の方法。
(項目6)
前記複数用量は、前記被験者の体重あたり6mg/kgである、項目2に記載の方法。
(項目7)
前記複数用量は、前記被験者の体重あたり10mg/kgである、項目2に記載の方法。
(項目8)
前記複数用量は、前記被験者の体重あたり15mg/kgである、項目2に記載の方法。
(項目9)
前記複数用量は、前記被験者の体重あたり30mg/kgである、項目2に記載の方法。
(項目10)
前記複数用量は、前記被験者の体重あたり1mg/kg及び3mg/kgを含む、項目3に記載の方法。
(項目11)
前記複数用量は、前記被験者の体重あたり1mg/kg、3mg/kg、及び6mg/kgを含む、項目3に記載の方法。
(項目12)
前記複数用量は、前記被験者の体重あたり1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、及び10mg/kgを含む、項目3に記載の方法。
(項目13)
前記被験者はApoE4保因者であり、前記複数用量は前記被験者の体重あたり1mg/kg、3mg/kg、または6mg/kgのうち2つ以上の用量を含む、項目3に記載の方法。
(項目14)
前記被験者はApoE4非保因者であり、前記複数用量は前記被験者の体重あたり1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、または30mg/kgのうち2つ以上の用量を含む、項目3に記載の方法。
(項目15)
前記ARIA消失後の投与再開時に投与する用量よりも高い用量の抗ベータアミロイド抗体の後続投与をさらに含む、項目1、3、または10~14のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記複数用量を4週間隔で投与する、項目1~15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記ARIA発現の前に前記被験者に投与する複数用量数は2~14用量である、項目1~16のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記ARIA発現の前に前記被験者に投与する複数用量数は2~5用量である、項目1~14のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記抗ベータアミロイド抗体の複数用量の前記ヒト被験者への投与は、前記ARIA発現前に、ステップ(a)で開始し、以下の投与ステップ、すなわち、
(a)前記抗ベータアミロイド抗体を前記被験者の体重あたり1mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(b)ステップ(a)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり1mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(c)ステップ(b)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(d)ステップ(c)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(e)ステップ(d)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(f)ステップ(e)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(g)ステップ(f)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、及び
(h)ステップ(g)の後、続く4週間の間隔を置いて、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する
というステップの2つ以上を順に実施することを含む、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記方法は、前記ARIA消失後、以下の投与ステップ、すなわち、
(a)前記抗ベータアミロイド抗体を前記被験者の体重あたり1mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(b)ステップ(a)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり1mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(c)ステップ(b)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(d)ステップ(c)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(e)ステップ(d)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(f)ステップ(e)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(g)ステップ(f)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、及び
(h)ステップ(g)の後、続く4週間の間隔を置いて、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する
というステップのうち前記ARIA発現前に実施しなかったステップを順に実施することを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記抗ベータアミロイド抗体の複数用量の前記ヒト被験者への投与は、前記ARIA発現前に、ステップ(a)で開始し、以下の投与ステップ、すなわち、
(a)前記抗ベータアミロイド抗体を前記被験者の体重あたり1mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(b)ステップ(a)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり1mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(c)ステップ(b)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(d)ステップ(c)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(e)ステップ(d)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(f)ステップ(e)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、及び
(g)ステップ(f)の後、続く4週間の間隔を置いて、前記抗体を前記被験者の体重あたり10mg/kgの量で前記被験者に投与する
というステップの2つ以上を順に実施し、
ここで、前記被験者はApoE4非保因者であることを含む、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記方法は、前記ARIA消失後、以下の投与ステップ、すなわち、
(a)前記抗ベータアミロイド抗体を前記被験者の体重あたり1mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(b)ステップ(a)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり1mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(c)ステップ(b)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(d)ステップ(c)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(e)ステップ(d)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(f)ステップ(e)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、及び
(g)ステップ(f)の後、続く4週間の間隔を置いて、前記抗体を前記被験者の体重あたり10mg/kgの量で前記被験者に投与する
というステップのうち前記ARIA発現前に実施しなかったステップを順に実施することを含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記抗ベータアミロイド抗体の複数用量の前記ヒト被験者への投与は、
(a)前記抗ベータアミロイド抗体を前記被験者の体重あたり1mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(b)ステップ(a)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり1mg/kgの量で前記被験者に投与する、及び
(c)ステップ(b)の後、続く4週間の間隔を置いて、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与し、
ここで、前記被験者はApoE4保因者であることを含む、項目1に記載の方法。
(項目24)
前記抗ベータアミロイド抗体の投与再開後、前記ヒト被験者は第2のARIA、すなわち、(i)中等度または重度である、臨床症状を伴わないARIA-E、(ii)軽度、中等度、または重度であり、軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状を伴うARIA-E、(iii)5~9の累積微小出血がある、臨床症状を伴わないARIA-H、(iv)累積微小出血が1~9である、軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状を伴うARIA-H、(v)脳表ヘモジデリン沈着症の累積領域を2つ有する、臨床症状を伴わないARIA-H、または(vi)1つまたは2つの累積する脳表ヘモジデリン沈着症域を有する、軽度、中等度、重度、または重篤な臨床症状を伴うARIA-Hを発症し、
前記第2のARIAが消失するまで前記被験者への前記抗ベータアミロイド抗体投与を中止すること、及び
前記被験者への前記抗ベータアミロイド抗体投与を、前記被験者が前記第2のARIAを発症する直前に前記被験者に投与した用量より低い用量で再開することをさらに含む、項目1~23のいずれか1項に記載の方法。
(項目25)
前記ARIAは臨床症状を伴わない、項目1~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記ARIAは軽度の臨床症状を伴う、項目1~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
前記ARIAは中等度の臨床症状を伴う、項目1~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
前記ARIAは、重度の臨床症状を伴う、項目1~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
投与を静脈内に実施する、項目1~28のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記VHは配列番号1からなり、かつ
前記VLは配列番号2からなる、項目1~29のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記抗体はヒトIgG1定常領域を含む、項目1~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、ここで、
前記重鎖は配列番号10からなり、かつ
前記軽鎖は配列番号11からなる、項目1~29のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
アルツハイマー病を治療する方法を必要とするヒト被験者のアルツハイマー病を治療する方法であって、抗ベータアミロイド抗体の複数用量を前記ヒト被験者に投与し、ここで、前記複数用量を以下の
(a)前記抗ベータアミロイド抗体を前記被験者の体重あたり1mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(b)ステップ(a)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり1mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(c)ステップ(b)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(d)ステップ(c)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(e)ステップ(d)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(f)ステップ(e)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(g)ステップ(f)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(h)ステップ(g)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(i)ステップ(h)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(j)ステップ(i)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(k)ステップ(j)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、及び
(l)ステップ(k)の後、続く4週間の間隔を置いて、前記抗体を前記被験者の体重あたり10mg/kgの量で前記被験者に投与する
というように投与することを含む、前記方法。
(項目34)
アルツハイマー病を治療する方法を必要とするヒト被験者のアルツハイマー病を治療する方法であって、抗ベータアミロイド抗体の複数用量を前記ヒト被験者に投与し、ここで、前記複数用量を以下の
(a)前記抗ベータアミロイド抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(b)ステップ(a)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(c)ステップ(b)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(d)ステップ(c)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(e)ステップ(d)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(f)ステップ(e)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(g)ステップ(f)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(h)ステップ(g)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(i)ステップ(h)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、及び
(j)ステップ(i)の後、続く4週間の間隔を置いて、前記抗体を前記被験者の体重あたり10mg/kgの量で前記被験者に投与する
というように投与することを含む、前記方法。
(項目35)
アルツハイマー病を治療する方法を必要とするヒト被験者のアルツハイマー病を治療する方法であって、抗ベータアミロイド抗体の複数用量を前記ヒト被験者に投与し、ここで、前記複数用量を以下の
(a)前記抗ベータアミロイド抗体を前記被験者の体重あたり1mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(b)ステップ(a)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり1mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(c)ステップ(b)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(d)ステップ(c)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(e)ステップ(d)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(f)ステップ(e)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、及び
(g)ステップ(f)の後、続く4週間の間隔を置いて、前記抗体を前記被験者の体重あたり10mg/kgの量で前記被験者に投与する
というように投与することを含む、前記方法。
(項目36)
アルツハイマー病を治療する方法を必要とするヒト被験者のアルツハイマー病を治療する方法であって、抗ベータアミロイド抗体の複数用量を前記ヒト被験者に投与し、ここで、前記複数用量を以下の
(a)前記抗ベータアミロイド抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(b)ステップ(a)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり3mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(c)ステップ(b)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、
(d)ステップ(c)の4週間後、前記抗体を前記被験者の体重あたり6mg/kgの量で前記被験者に投与する、及び
(e)ステップ(d)の後、続く4週間の間隔を置いて、前記抗体を前記被験者の体重あたり10mg/kgの量で前記被験者に投与する
というように投与することを含む、前記方法。
(項目37)
前記ヒト被験者はApoE4保因者である、項目33~36のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
投与を静脈内に実施する、項目1~37のいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
前記抗ベータアミロイド抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、
前記VHは配列番号1からなり、かつ
前記VLは配列番号2からなる、項目1~38のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
前記抗体はヒトIgG1定常領域を含む、項目1~39のいずれか1項に記載の方法。
(項目41)
前記抗ベータアミロイド抗体は重鎖及び軽鎖を含み、ここで、
前記重鎖は配列番号10からなり、かつ
前記軽鎖は配列番号11からなる、項目1~38のいずれか1項に記載の方法。