(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145978
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステム
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20220928BHJP
H02S 40/10 20140101ALI20220928BHJP
B08B 1/02 20060101ALI20220928BHJP
B08B 13/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H02S50/00
H02S40/10
B08B1/02
B08B13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046732
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 正吉
(72)【発明者】
【氏名】平田 優育
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓弥
【テーマコード(参考)】
3B116
5F151
【Fターム(参考)】
3B116AA02
3B116AA47
3B116AB02
3B116AB53
3B116BB22
5F151JA15
5F151KA07
(57)【要約】
【課題】広範囲の太陽光パネルを効率良く洗浄でき且つメンテナンスをも行い得る太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムを提供する。
【解決手段】走行自在な台車本体110と、架台300に設置された太陽光パネルPの着脱機構120とを有し、着脱機構120によって架台300から取り外された太陽光パネルPを搬送する運搬ロボット100を備え、更に、運搬ロボット100によって搬送される太陽光パネルPの発電テストを実施し正常か否かを判定する検査ユニット210と、検査ユニット210で発電テストが実施されて正常と判定された太陽光パネルPを洗浄する洗浄ユニット220とを有したメンテナンス設備200を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台に設置された太陽光パネルを取り外す取外工程と、
該取外工程で架台から取り外された太陽光パネルをメンテナンス設備へ搬送する第一運搬工程と、
該第一運搬工程でメンテナンス設備へ搬送された太陽光パネルの発電テストを実施し正常か否かを判定する検査工程と、
該検査工程で発電テストが実施されて正常と判定された太陽光パネルを洗浄する洗浄工程と、
該洗浄工程で洗浄された太陽光パネルを取り外された架台へ搬送する第二運搬工程と、
該第二運搬工程で搬送された太陽光パネルを架台に設置する取付工程と
が行われる太陽光パネルのメンテナンス方法。
【請求項2】
前記検査工程で発電テストが実施され発電量が設定値未満の太陽光パネルを新しい太陽光パネルに交換する交換工程が行われ、
該交換工程で交換された新しい太陽光パネルは、前記洗浄工程が回避されて前記第二運搬工程が行われる請求項1記載の太陽光パネルのメンテナンス方法。
【請求項3】
走行自在な台車本体と、架台に設置された太陽光パネルの着脱機構とを有し、該着脱機構によって架台から取り外された太陽光パネルを搬送する運搬ロボットと、
該運搬ロボットによって搬送される太陽光パネルの発電テストを実施し正常か否かを判定する検査ユニットと、該検査ユニットで発電テストが実施されて正常と判定された太陽光パネルを洗浄する洗浄ユニットとを有したメンテナンス設備と
を備えた太陽光パネルのメンテナンスシステム。
【請求項4】
前記太陽光パネルは、架台に対し支持位置と開放位置との間で切り換えられる支持ブラケットによって支持され、
前記運搬ロボットの着脱機構は、
前記台車本体上に配設され且つ前記太陽光パネルが載置される台座を昇降させる昇降機構と、
該昇降機構の台座に配設され且つ前記支持ブラケットを支持位置と開放位置との間で切換自在な開閉機構と
を備えた請求項3記載の太陽光パネルのメンテナンスシステム。
【請求項5】
前記検査ユニットは、太陽光パネルに光を照射する照明と、該照明から光が照射された太陽光パネルの発電量を計測する電流計と、該電流計で計測された発電量が設定値未満である場合に太陽光パネルの交換指令を出力する判定制御器とを備えた請求項3又は4記載の太陽光パネルのメンテナンスシステム。
【請求項6】
巻上下ワイヤを有するクレーンと、
該クレーンの巻上下ワイヤから吊り下げられる基盤と、架台に設置された太陽光パネルの着脱機構と、該着脱機構によって取り外された太陽光パネルを搬送自在な搬送ユニットとを有する搬送アタッチメントと、
走行自在な台車本体を有し、前記クレーンから吊り下げられた搬送アタッチメントの着脱機構によって架台から取り外された太陽光パネルを搬送する運搬ロボットと、
該運搬ロボットによって搬送される太陽光パネルの発電テストを実施し正常か否かを判定する検査ユニットと、該検査ユニットで発電テストが実施されて正常と判定された太陽光パネルを洗浄する洗浄ユニットとを有したメンテナンス設備と
を備えた太陽光パネルのメンテナンスシステム。
【請求項7】
前記太陽光パネルは、架台に対し支持位置と開放位置との間で切り換えられる支持ブラケットによって支持され、
前記クレーンから吊り下げられる搬送アタッチメントの着脱機構は、前記基盤に配設され且つ前記支持ブラケットを支持位置と開放位置との間で切換自在な開閉機構を備えた請求項6記載の太陽光パネルのメンテナンスシステム。
【請求項8】
前記搬送ユニットは、
太陽光パネルを吸着する吸盤と、
該吸盤の内部を負圧にする吸引ポンプと
を備えた請求項6又は7記載の太陽光パネルのメンテナンスシステム。
【請求項9】
前記検査ユニットは、太陽光パネルに光を照射する照明と、該照明から光が照射された太陽光パネルの発電量を計測する電流計と、該電流計で計測された発電量が設定値未満である場合に太陽光パネルの交換指令を出力する判定制御器とを備えた請求項6~8の何れか一項に記載の太陽光パネルのメンテナンスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の進行を抑制すべく再生可能エネルギへの関心が高まっており、出力が1MWを超えるメガソーラと称される大規模な太陽光発電施設が建設されている。
【0003】
一般に、太陽光パネルは、その最小構成単位である太陽電池セルを複数集めた太陽電池モジュールからなり、前記メガソーラの場合、太陽電池モジュールを複数枚集めた太陽電池アレイが架台に多数設置される形となる。
【0004】
前記太陽光パネルは、当然のことながら屋外に設置され、塵埃等が付着することが避けられないため、定期的に洗浄する必要がある。
【0005】
従来、前記太陽光パネルの洗浄には、自走式の大型洗浄機を用いる方法(例えば、特許文献1参照)やバックホウ等の重機に洗浄装置を装備した洗浄作業機を用いる方法(例えば、特許文献2参照)が導入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-145873号公報
【特許文献2】特開2016-78013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のものの場合、大型洗浄機を一列の太陽電池アレイに装着して自走させることで太陽光パネルの洗浄を行うため、一列の太陽電池アレイの洗浄が終わるたびに大型洗浄機を他の列の太陽電池アレイに装着し直す必要があり、手間が掛かるという不具合を有していた。又、一列の太陽電池アレイにおいて、連続せずに間隔のあいている箇所には橋渡しプレートを掛け渡す必要もある。更に又、前記太陽電池アレイが設置される架台が高くなるほど、大型洗浄機の装着やメンテナンスが行いにくくなる。
【0008】
一方、特許文献2に記載のものでは、太陽電池アレイのすぐ横に重機械が通れるスペースがないと洗浄を行うことができず、太陽電池アレイ周辺の整備が必要となっていた。
【0009】
又、発電量が設定値未満となった太陽電池モジュールを新しい太陽電池モジュールに交換する作業は、通常、人が行わなければならず、手間と時間が掛かっていた。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、広範囲の太陽光パネルを効率良く洗浄でき且つメンテナンスをも行い得る太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、架台に設置された太陽光パネルを取り外す取外工程と、
該取外工程で架台から取り外された太陽光パネルをメンテナンス設備へ搬送する第一運搬工程と、
該第一運搬工程でメンテナンス設備へ搬送された太陽光パネルの発電テストを実施し正常か否かを判定する検査工程と、
該検査工程で発電テストが実施されて正常と判定された太陽光パネルを洗浄する洗浄工程と、
該洗浄工程で洗浄された太陽光パネルを取り外された架台へ搬送する第二運搬工程と、
該第二運搬工程で搬送された太陽光パネルを架台に設置する取付工程と
が行われる太陽光パネルのメンテナンス方法に係るものである。
【0012】
前記太陽光パネルのメンテナンス方法においては、前記検査工程で発電テストが実施され発電量が設定値未満の太陽光パネルを新しい太陽光パネルに交換する交換工程が行われ、
該交換工程で交換された新しい太陽光パネルは、前記洗浄工程が回避されて前記第二運搬工程が行われることが好ましい。
【0013】
一方、本発明は、走行自在な台車本体と、架台に設置された太陽光パネルの着脱機構とを有し、該着脱機構によって架台から取り外された太陽光パネルを搬送する運搬ロボットと、
該運搬ロボットによって搬送される太陽光パネルの発電テストを実施し正常か否かを判定する検査ユニットと、該検査ユニットで発電テストが実施されて正常と判定された太陽光パネルを洗浄する洗浄ユニットとを有したメンテナンス設備と
を備えた太陽光パネルのメンテナンスシステムに係るものである。
【0014】
前記太陽光パネルのメンテナンスシステムにおいて、前記太陽光パネルは、架台に対し支持位置と開放位置との間で切り換えられる支持ブラケットによって支持され、
前記運搬ロボットの着脱機構は、
前記台車本体上に配設され且つ前記太陽光パネルが載置される台座を昇降させる昇降機構と、
該昇降機構の台座に配設され且つ前記支持ブラケットを支持位置と開放位置との間で切換自在な開閉機構と
を備えることができる。
【0015】
前記太陽光パネルのメンテナンスシステムにおいて、前記検査ユニットは、太陽光パネルに光を照射する照明と、該照明から光が照射された太陽光パネルの発電量を計測する電流計と、該電流計で計測された発電量が設定値未満である場合に太陽光パネルの交換指令を出力する判定制御器とを備えることができる。
【0016】
又、本発明は、巻上下ワイヤを有するクレーンと、
該クレーンの巻上下ワイヤから吊り下げられる基盤と、架台に設置された太陽光パネルの着脱機構と、該着脱機構によって取り外された太陽光パネルを搬送自在な搬送ユニットとを有する搬送アタッチメントと、
走行自在な台車本体を有し、前記クレーンから吊り下げられた搬送アタッチメントの着脱機構によって架台から取り外された太陽光パネルを搬送する運搬ロボットと、
該運搬ロボットによって搬送される太陽光パネルの発電テストを実施し正常か否かを判定する検査ユニットと、該検査ユニットで発電テストが実施されて正常と判定された太陽光パネルを洗浄する洗浄ユニットとを有したメンテナンス設備と
を備えた太陽光パネルのメンテナンスシステムに係るものである。
【0017】
前記クレーンを備えた太陽光パネルのメンテナンスシステムにおいて、前記太陽光パネルは、架台に対し支持位置と開放位置との間で切り換えられる支持ブラケットによって支持され、
前記クレーンから吊り下げられる搬送アタッチメントの着脱機構は、前記基盤に配設され且つ前記支持ブラケットを支持位置と開放位置との間で切換自在な開閉機構を備えることができる。
【0018】
前記クレーンを備えた太陽光パネルのメンテナンスシステムにおいて、前記搬送ユニットは、
太陽光パネルを吸着する吸盤と、
該吸盤の内部を負圧にする吸引ポンプと
を備えることができる。
【0019】
前記クレーンを備えた太陽光パネルのメンテナンスシステムにおいて、前記検査ユニットは、太陽光パネルに光を照射する照明と、該照明から光が照射された太陽光パネルの発電量を計測する電流計と、該電流計で計測された発電量が設定値未満である場合に太陽光パネルの交換指令を出力する判定制御器とを備えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムによれば、広範囲の太陽光パネルを効率良く洗浄でき且つメンテナンスをも行い得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムの第一実施例を示す全体概要斜視図である。
【
図2】本発明の太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムの第一実施例における運搬ロボットを示す斜視図である。
【
図3】本発明の太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムの第一実施例における開閉機構と支持ブラケットを示す斜視図である。
【
図4】本発明の太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムの第一実施例における開閉機構を支持ブラケットに係合させた状態を示す断面図である。
【
図5】本発明の太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムの第一実施例における開閉機構により支持ブラケットを支持位置から開放位置へ切り換えた状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムの第一実施例におけるメンテナンス設備の検査ユニットを示す斜視図である。
【
図7】本発明の太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムの第一実施例におけるメンテナンス設備の洗浄ユニットを示す斜視図である。
【
図8】本発明の太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムの第一実施例のフローチャートである。
【
図9】本発明の太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムの第二実施例を示す全体概要斜視図である。
【
図10】本発明の太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムの第二実施例におけるクレーンに吊り下げられる搬送アタッチメントを示す斜視図である。
【
図11】本発明の太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムの第二実施例におけるクレーンに吊り下げられる搬送アタッチメントの開閉機構を支持ブラケットに係合させた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1~
図8は本発明の太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムの第一実施例である。
【0024】
第一実施例の場合、
図1に示す如く、運搬ロボット100と、メンテナンス設備200とを備えた点を特徴としている。
【0025】
前記運搬ロボット100は、太陽光パネルP(複数枚集められて太陽電池アレイAを構成する太陽電池モジュールM)が多数設置される架台300の下に潜り込めるようになっており、
図2に示す如く、走行自在な台車本体110と、着脱機構120とを備えている。
【0026】
前記太陽光パネルPは、架台300に対し支持位置(
図2、
図3及び
図4参照)と開放位置(
図5参照)との間で切り換えられる支持ブラケット310によって支持されている。前記支持ブラケット310は、
図3及び
図4に示す如く、本体部311と、支持板部312とを備えている。前記支持ブラケット310の本体部311は、円柱状の部材で、その軸芯部に貫通孔313が穿設され、架台300から張り出す保持枠314に対し上下方向へ延びる軸線を中心として回転自在に設けられている。前記貫通孔313の円周方向一側には軸線方向へ延びるキー溝313aが刻設されている。前記支持ブラケット310の支持板部312は、前記本体部311の外周から水平に張り出し、太陽電池モジュールMの端縁部を上下から挟持するようになっている。
【0027】
前記着脱機構120は、昇降機構130と、開閉機構140とを備えている。
【0028】
前記昇降機構130は、前記台車本体110上に複数本のリンク131がパンタグラフ状にピン連結され、前記太陽光パネルPが載置される台座132をシリンダ等の昇降駆動装置(図示せず)により昇降させるようになっている。前記台座132の上面には、スペーサ133が設けられ、該スペーサ133の上に前記太陽電池モジュールMが載置された状態で、前記メンテナンス設備200における後述するフォーク230を太陽電池モジュールMの下に差し入れたり、抜いたりできるようになっている。尚、前記昇降機構130は、パンタグラフ状のリンク131に限定されるものではなく、例えば、テレスコピック式やその他の形式のものを採用できることは言うまでもない。
【0029】
前記開閉機構140は、
図3、
図4及び
図5に示す如く、前記貫通孔313及びキー溝313aに挿入自在なキー部材141を備え、該キー部材141は、モータ142によって回転駆動され、前記支持ブラケット310を支持位置と開放位置との間で切り換えられるようになっている。前記モータ142は、前記昇降機構130の台座132から側方へ張り出すブラケット143に配設されている。
【0030】
前記メンテナンス設備200は、検査ユニット210と、洗浄ユニット220とを有している。
【0031】
前記検査ユニット210は、
図6に示す如く、前記運搬ロボット100によって搬送される太陽光パネルPの発電テストを実施するユニットで、照明211と、電流計212と、判定制御器213とを備えている。前記照明211は、フォーク230によって前記運搬ロボット100からリフトアップされた太陽光パネルPに光を照射するようになっている。前記電流計212は、前記照明211から光が照射された太陽光パネルPの発電量を計測するようになっている。前記判定制御器213は、前記電流計212で計測された発電量が設定値未満である場合に太陽光パネルPの交換指令を出力するようになっている。
【0032】
前記洗浄ユニット220は、
図7に示す如く、複数の洗浄ノズル221を備え、前記検査ユニット210で発電テストが実施されて正常(発電量が設定値以上)と判定された太陽光パネルPを洗浄するようになっている。尚、前記判定制御器213から出力される交換指令により交換された新しい太陽光パネルPは、洗浄されずにそのままフォーク230により運搬ロボット100へ受け渡されるようになっている。
【0033】
更に、本実施例のメンテナンス方法としては、
図8のフローチャートに示す如く、取外工程と、第一運搬工程と、検査工程と、洗浄工程或いは交換工程と、第二運搬工程と、取付工程とが行われるようになっている。
【0034】
前記取外工程は、架台300に設置された太陽光パネルPを取り外す工程である。
【0035】
前記第一運搬工程は、前記取外工程で架台300から取り外された太陽光パネルPをメンテナンス設備200へ搬送する工程である。
【0036】
前記検査工程は、前記第一運搬工程でメンテナンス設備200へ搬送された太陽光パネルPの発電テストを実施し正常か否かを判定する工程である。
【0037】
前記洗浄工程は、前記検査工程で発電テストが実施されて正常と判定された太陽光パネルPを洗浄する工程である。
【0038】
前記交換工程は、前記検査工程で発電テストが実施され発電量が設定値未満の太陽光パネルPを新しい太陽光パネルPに交換する工程である。
【0039】
前記第二運搬工程は、前記洗浄工程で洗浄された太陽光パネルP或いは前記交換工程で交換された新しい太陽光パネルPを架台300へ搬送する工程である。
【0040】
前記取付工程は、前記第二運搬工程で搬送された太陽光パネルPを架台300に設置する工程である。
【0041】
次に、上記第一実施例の作用を説明する。
【0042】
先ず、
図1に示す如く、運搬ロボット100の台車本体110が走行し、太陽光パネルP(複数枚集められて太陽電池アレイAを構成する太陽電池モジュールM)が多数設置される架台300の下に潜り込み、対象となる太陽光パネルPの下に移動する。
【0043】
続いて、前記運搬ロボット100の着脱機構120の昇降機構130が作動して台座132が上昇する(
図2参照)。
【0044】
前記台座132が上昇すると、
図3に示す状態から
図4に示す如く、キー部材141が貫通孔313に挿入される。同時に、太陽光パネルPがスペーサ133を介して台座132の上に載置され、支持ブラケット310から僅かに浮いた状態となる。
【0045】
前記貫通孔313に挿入されたキー部材141は、モータ142により回転駆動され、
図5に示す如く、支持ブラケット310が支持位置から開放位置へ旋回して切り換えられる。
【0046】
前記支持ブラケット310が支持位置から開放位置へ旋回して切り換えられると、前記昇降機構130が作動して台座132が下降し、前記架台300から太陽光パネルPが取り外される(
図8の取外工程参照)。
【0047】
前記太陽光パネルPを載せた運搬ロボット100の台車本体110は、走行してメンテナンス設備200へ移動する(
図8の第一運搬工程参照)。
【0048】
前記メンテナンス設備200に移動した運搬ロボット100の台座132に載置された太陽光パネルPは、
図6に示す如く、フォーク230によって前記運搬ロボット100からリフトアップされる。
【0049】
前記太陽光パネルPには、検査ユニット210の照明211から光が照射され、太陽光パネルPの発電量が電流計212によって計測され正常か否かが判定される(
図8の検査工程参照)。
【0050】
前記電流計212で計測された発電量が設定値以上である場合、前記太陽光パネルPは正常であるため、判定制御器213から交換指令は出力されず、太陽光パネルPは、洗浄ユニット220へ送られる。前記電流計212で計測された発電量が設定値未満である場合には、前記判定制御器213から交換指令が出力され、新しい太陽光パネルPに交換される(
図8の交換工程参照)。
【0051】
前記検査ユニット210で発電テストが実施されて正常(発電量が設定値以上)と判定された太陽光パネルPは、
図7に示す如く、洗浄ユニット220の洗浄ノズル221から水が噴射されて洗浄される(
図8の洗浄工程参照)。洗浄された太陽光パネルPは、フォーク230により運搬ロボット100へ受け渡される。尚、前記判定制御器213から出力される交換指令により交換された新しい太陽光パネルPは、洗浄されずにそのままフォーク230により運搬ロボット100へ受け渡される。
【0052】
前記洗浄ユニット220で洗浄された太陽光パネルP(或いは交換された新しい太陽光パネルP)は、前記運搬ロボット100により、
図1に示す如く、元の架台300の位置へ戻され(
図8の第二運搬工程参照)、取り外し時と逆の手順で架台300に取り付けられる(
図8の取付工程参照)。
【0053】
第一実施例の場合、特許文献1に記載のもののように、大型洗浄機を一列の太陽電池アレイAに装着して自走させることで太陽光パネルPの洗浄を行うのではなく、運搬ロボット100が太陽電池モジュールMを架台300から取り外してメンテナンス設備200へ運び、交換又は洗浄後に架台300に戻すため、一列の太陽電池アレイAの洗浄が終わるたびに大型洗浄機を他の列の太陽電池アレイAに装着し直す必要がなく、手間が掛からない。又、一列の太陽電池アレイAにおいて、連続せずに間隔のあいている箇所に橋渡しプレートを掛け渡す必要もない。更に又、前記太陽電池アレイAが設置される架台300が高くなっても、昇降機構130での対応が可能となり、交換又は洗浄作業を円滑に進めることができる。
【0054】
一方、特許文献2に記載のもののように、太陽電池アレイAのすぐ横に重機械が通れるスペースを延々と確保しなくても、第一実施例の場合、架台300の下に運搬ロボット100を潜り込ませて取り外した太陽電池モジュールMをメンテナンス設備200へ運ぶルートを確保しさえすれば、太陽電池モジュールMの交換又は洗浄を行うことができるため、太陽電池アレイA周辺の整備は必要最小限に簡略化できる。
【0055】
又、発電量が設定値未満となった太陽電池モジュールを新しい太陽電池モジュールに交換する作業は、人が行わなくて済み、手間と時間が掛からなくなる。
【0056】
こうして、広範囲の太陽光パネルPを効率良く洗浄でき且つメンテナンスをも行い得る。
【0057】
図9~
図11は本発明の太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムの第二実施例であって、図中、
図1~
図8と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。基本的な構成は
図1~
図8に示す第一実施例と同様であるが、第二実施例の特徴とするところは、
図9~
図11に示す如く、太陽光パネルPの架台300からの取り外しと、架台300に対する取り付けとをクレーン400によって行い、該クレーン400と運搬ロボット100との間で太陽光パネルPを受け渡すよう構成した点にある。
【0058】
第二実施例の場合、クレーン400は、走行装置410を有する走行フレーム420上にマスト430が立設される走行式のクレーンである。マスト430の頂部には、旋回体440が旋回自在に配置されている。前記旋回体440には、ジブ450が起伏自在に取り付けられている。前記ジブ450先端からは巻上下ワイヤ460が巻上げ下げ自在に垂下されている。
【0059】
前記走行装置410は、イコライザビーム411と、走行車輪412とを備え、前記走行車輪412は、前記イコライザビーム411の走行方向両端部にレール413に沿って転動自在となるよう配設され、図示していない走行駆動モータによって回転駆動されるようになっている。尚、前記走行装置410は、レール413に沿って転動自在な走行車輪412の代わりに、タイヤ或いはクローラを備えた形式のものを採用することができる。
【0060】
前記巻上下ワイヤ460には、
図10に示す如く、基盤510と、着脱機構520と、搬送ユニット530とを有する搬送アタッチメント500が吊り下げられている。
【0061】
前記搬送アタッチメント500の基盤510は、上面に埋め込まれたアイボルト511に前記巻上下ワイヤ460が連結されて吊り下げられ、昇降されるようになっている。
【0062】
前記着脱機構520は、前記巻上下ワイヤ460によって基盤510が昇降されることから前記運搬ロボット100のような昇降機構130(
図2参照)は備えておらず、開閉機構540のみを備えている。
【0063】
前記開閉機構540は、
図3、
図4及び
図5に示す第一実施例の開閉機構140を上下反転させた構造を有し、第一実施例と同様に、
図11に示す如く、前記貫通孔313及びキー溝313aに挿入自在なキー部材541を備え、該キー部材541は、モータ542によって回転駆動され、前記支持ブラケット310を支持位置と開放位置との間で切り換えられるようになっている。前記モータ542は、前記搬送ユニット530の基盤510から側方へ張り出すブラケット543に配設されている。
【0064】
前記搬送ユニット530は、
図11に示す如く、太陽光パネルPを吸着する吸盤531と、該吸盤531の内部を負圧にする吸引ポンプ532とを備えている。尚、前記吸引ポンプ532には、給電ケーブル533が接続されている。
【0065】
尚、第二実施例において、運搬ロボット100は、第一実施例と同様のものを使用しているが、クレーン400から吊り下げられる搬送アタッチメント500が着脱機構520として開閉機構540を有しているため、運搬ロボット100の着脱機構120における開閉機構140は必ずしも設ける必要はなく、省略することも可能である。
【0066】
次に、上記第二実施例の作用を説明する。
【0067】
先ず、走行装置410によりクレーン400を走行させて所望の位置に停止させ、ジブ450の先端から搬送アタッチメント500を吊り下げ、対象となる太陽光パネルP(複数枚集められて太陽電池アレイAを構成する太陽電池モジュールM)の上方にセットする。
【0068】
続いて、前記クレーン400の巻上下ワイヤ460が巻き下げられ、搬送アタッチメント500の基盤510が下降する。
【0069】
前記基盤510が下降すると、
図11に示す如く、キー部材541が貫通孔313に挿入される。同時に、搬送ユニット530の吸引ポンプ532を駆動して吸盤531により太陽光パネルPを吸着すると、該太陽光パネルPが支持ブラケット310から僅かに浮いた状態となる。
【0070】
前記貫通孔313に挿入されたキー部材541は、モータ542により回転駆動され、図示は省略しているが、支持ブラケット310が支持位置から開放位置へ旋回して切り換えられる。
【0071】
前記支持ブラケット310が支持位置から開放位置へ旋回して切り換えられると、前記クレーン400の巻上下ワイヤ460が巻き上げられて前記基盤510が上昇し、前記架台300から太陽光パネルPが取り外される(
図8の取外工程参照)。
【0072】
前記架台300から取り外された太陽光パネルPは、前記吸盤531に吸着された状態でクレーン400により搬送され、待機している運搬ロボット100の台座132の上に下ろされる。
【0073】
前記太陽光パネルPを載せた運搬ロボット100の台車本体110は、走行してメンテナンス設備200へ移動する(
図8の第一運搬工程参照)。
【0074】
前記メンテナンス設備200に移動した運搬ロボット100の台座132に載置された太陽光パネルPは、
図6に示す如く、フォーク230によって前記運搬ロボット100からリフトアップされる。
【0075】
前記太陽光パネルPには、検査ユニット210の照明211から光が照射され、太陽光パネルPの発電量が電流計212によって計測され正常か否かが判定される(
図8の検査工程参照)。
【0076】
前記電流計212で計測された発電量が設定値以上である場合、前記太陽光パネルPは正常であるため、判定制御器213から交換指令は出力されず、太陽光パネルPは、洗浄ユニット220へ送られる。前記電流計212で計測された発電量が設定値未満である場合には、前記判定制御器213から交換指令が出力され、新しい太陽光パネルPに交換される(
図8の交換工程参照)。
【0077】
前記検査ユニット210で発電テストが実施されて正常(発電量が設定値以上)と判定された太陽光パネルPは、
図7に示す如く、洗浄ユニット220の洗浄ノズル221から水が噴射されて洗浄される(
図8の洗浄工程参照)。洗浄された太陽光パネルPは、フォーク230により運搬ロボット100へ受け渡される。尚、前記判定制御器213から出力される交換指令により交換された新しい太陽光パネルPは、洗浄されずにそのままフォーク230により運搬ロボット100へ受け渡される。
【0078】
前記洗浄ユニット220で洗浄された太陽光パネルP(或いは交換された新しい太陽光パネルP)は、前記運搬ロボット100により、
図11に示す如く、元の架台300の位置へ戻すべく、前記クレーン400が待機している近傍に搬送され(
図8の第二運搬工程参照)、取り外し時と逆の手順でクレーン400によって架台300に取り付けられる(
図8の取付工程参照)。
【0079】
第二実施例の場合、特許文献1に記載のもののように、大型洗浄機を一列の太陽電池アレイAに装着して自走させることで太陽光パネルPの洗浄を行うのではなく、クレーン400が太陽電池モジュールMを架台300から取り外した後、運搬ロボット100に受け渡し、該運搬ロボット100が前記太陽光パネルPをメンテナンス設備200へ運び、交換又は洗浄後に前記クレーン400の近傍まで運び、該クレーン400が太陽光パネルPを引き取って架台300に戻す。このクレーン400と運搬ロボット100による連携操作を繰り返すことにより、特許文献1に記載のもののように、一列の太陽電池アレイAの洗浄が終わるたびに大型洗浄機を他の列の太陽電池アレイAに装着し直す必要がなく、手間が掛からない。又、一列の太陽電池アレイAにおいて、連続せずに間隔のあいている箇所に橋渡しプレートを掛け渡す必要もない。更に又、前記太陽電池アレイAが設置される架台300が高くなっても、クレーン400での対応が可能となり、交換又は洗浄作業を円滑に進めることができる。
【0080】
一方、第二実施例の場合、クレーン400の作業範囲は、特許文献2の重機械に比べて広くなるため、クレーン400と運搬ロボット100とを組み合わせることにより、特許文献2に記載のもののように、太陽電池アレイAのすぐ横に重機械が通れるスペースを延々と確保しなくても、太陽電池モジュールMの交換又は洗浄を行うことができ、太陽電池アレイA周辺の整備は必要最小限に簡略化できる。
【0081】
又、発電量が設定値未満となった太陽電池モジュールを新しい太陽電池モジュールに交換する作業は、人が行わなくて済み、手間と時間が掛からなくなる。
【0082】
こうして、第二実施例においても、第一実施例と同様、広範囲の太陽光パネルPを効率良く洗浄でき且つメンテナンスをも行い得る。
【0083】
そして、第一実施例及び第二実施例の場合、前記検査工程で発電テストが実施され発電量が設定値未満の太陽光パネルPを新しい太陽光パネルPに交換する交換工程が行われ、該交換工程で交換された新しい太陽光パネルPは、前記洗浄工程が回避されて前記第二運搬工程が行われる。このように構成すると、故障している太陽光パネルPを洗浄してしまうことが避けられ、効率をより高めることができる。
【0084】
又、第一実施例の場合、前記太陽光パネルPは、架台300に対し支持位置と開放位置との間で切り換えられる支持ブラケット310によって支持され、前記運搬ロボット100の着脱機構120は、前記台車本体110上に配設され且つ前記太陽光パネルPが載置される台座132を昇降させる昇降機構130と、該昇降機構130の台座132に配設され且つ前記支持ブラケット310を支持位置と開放位置との間で切換自在な開閉機構140とを備えている。このように構成すると、前記太陽電池アレイAが設置される架台300が高くなっても、昇降機構130での対応が可能となり、交換又は洗浄作業を円滑に進める上で有効となる。
【0085】
又、第一実施例及び第二実施例の場合、前記検査ユニット210は、太陽光パネルPに光を照射する照明211と、該照明211から光が照射された太陽光パネルPの発電量を計測する電流計212と、該電流計212で計測された発電量が設定値未満である場合に太陽光パネルPの交換指令を出力する判定制御器213とを備えている。このように構成すると、太陽光パネルPの故障の有無を正しく判定することができる。
【0086】
又、第二実施例の場合、前記太陽光パネルPは、架台300に対し支持位置と開放位置との間で切り換えられる支持ブラケット310によって支持され、前記クレーン400から吊り下げられる搬送アタッチメント500の着脱機構520は、前記基盤510に配設され且つ前記支持ブラケット310を支持位置と開放位置との間で切換自在な開閉機構540を備えている。このように構成すると、作業範囲の広いクレーン400によって太陽光パネルPの着脱をより効率良く行う上で有効となる。
【0087】
更に又、第二実施例の場合、前記搬送ユニット530は、太陽光パネルPを吸着する吸盤531と、該吸盤531の内部を負圧にする吸引ポンプ532とを備えている。このように構成すると、故障した太陽光パネルPを、前記搬送ユニット530の吸引ポンプ532を駆動して吸盤331により吸着でき、架台300からの取り外しと、架台300への取り付けを安定して行うことができる。
【0088】
尚、本発明の太陽光パネルのメンテナンス方法及びメンテナンスシステムは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0089】
100 運搬ロボット
110 台車本体
120 着脱機構
130 昇降機構
131 リンク
132 台座
133 スペーサ
140 開閉機構
141 キー部材
142 モータ
143 ブラケット
200 メンテナンス設備
210 検査ユニット
211 照明
212 電流計
213 判定制御器
220 洗浄ユニット
221 洗浄ノズル
230 フォーク
300 架台
310 支持ブラケット
311 本体部
312 支持板部
313 貫通孔
313a キー溝
314 保持枠
331 吸盤
400 クレーン
410 走行装置
411 イコライザビーム
412 走行車輪
413 レール
420 走行フレーム
430 マスト
440 旋回体
450 ジブ
460 巻上下ワイヤ
500 搬送アタッチメント
510 基盤
511 アイボルト
520 着脱機構
530 搬送ユニット
531 吸盤
532 吸引ポンプ
533 給電ケーブル
540 開閉機構
541 キー部材
542 モータ
543 ブラケット
P 太陽光パネル
A 太陽電池アレイ
M 太陽電池モジュール