(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145996
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】防音カバー
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20220928BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20220928BHJP
【FI】
G10K11/16 150
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046761
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大西 一義
(72)【発明者】
【氏名】富山 幸治
【テーマコード(参考)】
3B087
5D061
【Fターム(参考)】
3B087DE10
5D061AA06
5D061CC12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】軽量化を図ると共に、形状設計自由度を向上することができる防音カバーを提供する。
【解決手段】対象物を囲う防音カバー1aは、発泡樹脂により形成される第一分割体2aと、発泡樹脂により形成される第二分割体4aを備える。第一分割体2aは、発泡樹脂により形成されるヒンジ軸27を備える一方、第二分割体4aは、発泡樹脂により形成される軸受部(第一軸受部46、第二軸受け部48)を備える。軸受部は、ヒンジ軸27を勘合させて第一分割体2aと第二分割体4aとを回動可能に軸支する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を囲う防音カバーであって、
発泡樹脂により形成される第一分割体と、
発泡樹脂により形成される第二分割体と、を備え、
前記第一分割体は、発泡樹脂により形成されるヒンジ軸を備え、
前記第二分割体は、発泡樹脂により形成され、前記ヒンジ軸に勘合させて、該第二分割体と前記第一分割体とを回動可能に軸支する軸受部を備える、防音カバー。
【請求項2】
前記第一分割体は、前記対象物の一部を囲う第一本体部と、該第一本体部から延設される軸支持部と、該軸支持部に支持される棒状の前記ヒンジ軸と、を備え、
前記第二分割体は、前記対象物の他の一部を囲う第二本体部と、該第二本体部から延設される前記軸受部と、を備え、
前記軸受部は、第一勘合凹部を有する第一軸受部と、第二勘合凹部を有する第二軸受部と、を備え、
前記棒状のヒンジ軸は、該第一勘合凹部と該第二勘合凹部とに挟持された状態で勘合される、請求項1に記載の防音カバー。
【請求項3】
前記第一軸受部材と前記第二軸受部とは、前記ヒンジ軸の軸方向に離れて配置される、請求項2に記載の防音カバー。
【請求項4】
前記軸受部は、2つの前記第二軸受部材を備え、
前記第一軸受部材は、2つの該第二軸受部材の間に配置される、請求項3に記載の防音カバー。
【請求項5】
前記ヒンジ軸は、前記軸方向の両端部に、拡径部を備える、請求項1-4の何れか1項に記載の防音カバー。
【請求項6】
前記発泡樹脂は、アスカーC硬度が、60~99度である、請求項1-5の何れか1項に記載の防音カバー。
【請求項7】
前記第一分割体は、発泡樹脂により形成される第一係合部を備え、
前記第二分割体は、発泡樹脂により形成される第二係合部を備え、
前記第一分割体と前記第二分割体とは、前記第一係合部と前記第二係合部とが係合されて固定される、請求項1-6の何れか1項に記載の防音カバー。
【請求項8】
第一分割体と、第二分割体と、を備え、対象物を囲う防音カバーであって、
前記第一分割体は、前記対象物の一部を囲う第一本体部と、該第一本体部の開口面側に配置される枠部材であって、該枠部材から延設されるヒンジ軸を有する第一枠部と、を備え、
前記第二分割体は、前記対象物の他の一部を囲う第二本体部と、該第二本体部の開口面側に配置される枠部材であって、該枠部材から延設され、前記ヒンジ軸に勘合させて、該第二分割体と前記第一分割体とを回動可能に軸支する軸受部を有する第二枠部材と、を備え、
前記第一本体部と、前記第二本体部は、第一発泡樹脂で成形され、
前記第一枠部と、前記第二枠部は、前記第一発泡樹脂よりも硬度の高い第二発泡樹脂で成形される、防音カバー。
【請求項9】
前記第一発泡樹脂のアスカーC硬度は、1~60度であり、
前記第二発泡樹脂のアスカーC硬度は、60~99度である、請求項8に記載の防音カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の駆動源等には、音や振動の伝達を防止するため、防音カバーを取り付けられている。近年、車室内の静寂性向上の観点から、駆動源等全体を防音カバーで覆う構造も採用されている。例えば、文献1には、樹脂製の第1及び第2の包囲壁と、第1及び第2の包囲壁の一側部同士を連結し、かつ、第1及び第2の包囲壁と一体形成される樹脂製のヒンジ部と、を有するコンプレッサーカバーが開示されている。また、文献2には、複数の吸音部と、隣接する一対の吸音部間を連結するヒンジ部と、を一体的に備える吸音カバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-133408号公報
【特許文献2】特許第4922978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、文献1、2のカバーは、ヒンジ部の厚みがカバー本体の厚みに対して小さく設定されているため、カバー本体を発泡樹脂で形成し、大型の駆動源等に適用される場合は、取り付け時等に、ヒンジ部が破損する恐れがある。
【0005】
本発明は、軽量化と、取り扱い強度の向上とを両立することができる防音カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
防音カバーは、対象物を囲う防音カバーである。当該防音カバーは発泡樹脂により形成される第一分割体と、発泡樹脂により形成される第二分割体とを備える。第一分割体は、発泡樹脂により形成されるヒンジ軸を備え、第二分割体は、発泡樹脂により形成され、第一分割体のヒンジ軸に勘合させて、第二分割体と第一分割体とを回動可能に軸支する軸受部を備える。
【0007】
上記防音カバーを構成する第一分割体は、ヒンジ軸を含めて、発泡樹脂により形成される。また、上記防音カバーを構成する第二分割体は、軸受部を含めて、構成部材が発泡樹脂により形成される。従って、構成部材すべてが発泡樹脂により形成されるため、防音カバーを軽量化することができる。
【0008】
また、第一分割体のヒンジ軸と、第二分割体の軸受部との勘合により、第一分割体と第二分割体とが連結されるため、第一分割体と第二分割体とを肉薄のヒンジ部で連結する場合と比較して、連結部の強度を高め、取り扱い強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】第一例の防音カバーの組付け状態の斜視図である。
【
図5】第一例の防音カバーの組付け状態の平面図である。
【
図8】第一例の防音カバーの固定状態の平面図である。
【
図11】第二例の防音カバーの組付け状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1.第一例の防音カバーの基本構成)
防音カバー1aの基本構成について、
図1を参照して説明する。防音カバー1aは、対象物(不図示)を囲い、対象物を発生源とする音や振動の伝達を防止する。対象物は、例えば、車両の動力源であるモータ、エンジンや、インテークマニホールド、エアーコンプレッサ等である。
【0011】
図1においては、対象物が車両用のモータ(不図示)である場合を示す。なお、説明を容易にするために、駆動軸や配線等を省略した円筒形状のモータを例示するが、対象物の形状は問わない。
防音カバー1aは、対象物であるモータの外周面を囲う。本実施例では、防音カバー1aは、対象物の外周面全体を囲っている。なお、囲う範囲は、対象部における音や振動の特定の発生箇所や配置スペース等に応じて、適宜、設定することができる。
【0012】
防音カバー1aは、2分割された第一分割体2aと、第二分割体4aとにより構成される。第一分割体2aは、モータの一方の略半分の外周面を囲う。また、第二分割体4aは、モータの他方の略半分の外周面を囲う。
【0013】
第一分割体2aは、発泡樹脂により形成される。発泡樹脂として、ウレタンフォーム、アクリルフォーム、シリコーンフォーム、スチレンフォーム、発泡オレフィン(発泡PP、発泡PE)、発泡PVC、発泡EVA、発泡PA等を用いることができる。例えば、アスカーC硬度が60~90度の発泡樹脂を用いるとよい。
【0014】
第二分割体4aは、発泡樹脂により形成される。発泡樹脂として、ウレタンフォーム、アクリルフォーム、シリコーンフォーム、スチレンフォーム、発泡オレフィン(発泡PP、発泡PE)、発泡PVC、発泡EVA、発泡PA等を用いることができる。例えば、アスカーC硬度が60~90度の発泡樹脂を用いるとよい。
【0015】
(2.第一例の防音カバーの構成部材)
第一例の防音カバー1aの構成部材について、
図2-3を参照して説明する。防音カバー1aは、
図2に示す第一分割体2aと、
図3に示す第二分割体4aとにより構成される。
【0016】
第一分割体2aは、対象物である円筒形状のモータ(不図示)を、駆動軸(不図示)の軸方向である第一方向に沿って略2分割した場合の分割形状に相当する一方の半円筒部を収容する第一本体部20aにより構成される。第一本体部20aは、モータの半円筒部の外形に対応する凹状内面を有し、開口面(第一開口面22)を含む開口端側の領域が第一枠部21aとされる。第一本体部20aは、所定の厚みを有し、第一枠部21aの第一開口面22は、第一本体部20aの厚みに応じた水平面とされている。
【0017】
第一開口面22は、第一方向に平行に配置する一対の第一長辺23と、一対の第一長辺23の両端部をそれぞれ接続する一対の第一短辺24とにより構成される。なお、本実施形態では、一対の第一長辺23と一対の第一短辺24との接続部は、角部が丸められたアール面とされている。
【0018】
第一本体部20aには、第一枠部21aの一方の第一長辺23を含む外面から、第一方向に直交する第二方向に沿って外方に延在する、一対の軸支持部25が形成されている。一対の軸支持部25は、第一枠部21aと一体成形されている。一対の軸支持部25は、第一枠部21aの第一開口面22と面一に形成され、第一開口面22における一対の軸支持部25を第一方向に接続する部分は、第一本体部20aの収容空間側に凹んだ第一凹部26とされている。なお、第一凹部26は、後述する第二分割体4aの第一軸受部46の外形に対応した凹形状とされている。
【0019】
一対の軸支持部25の外方先端側には、第一方向に延在するヒンジ軸27が形成されている。ヒンジ軸27は、一対の軸支持部25と一体成形され、一対の軸支持部25により支持されている。ヒンジ軸27は、軸断面が円形の棒状部材であり、両端部は、径方向に拡径された拡径部28とされている。ヒンジ軸27は、後述する第二分割体4aの軸受部46、48に勘合され、第一分割体2aと第二分割体4aとを回動可能とする回転軸として機能する。
【0020】
第一枠部21aの他方の第一長辺23の第一方向中央には、第一枠部21aの開口方向に突出する第一係合部30が形成されている。第一係合部30は、第一枠部21aと一体成形されている。本実施形態では、第一係合部30は、突条により構成される。
【0021】
具体的には、突条は、第一枠部21aの第一開口面22から突出する一対の第一脚部31と、一対の第一脚部31の先端を連結する第一連結部32とからなる門型形状とされている。第一方向の断面視(
図6、7参照)において、一対の第一脚部31は、先端側が付根側に対してやや細くされ、先端側が付根側に対して第一枠部21aの外縁側に傾斜するように形成され、先端側が第一枠部21aの外方に配置されている。第一連結部32は、突出方向の先端部が、突出方向に凸となる曲面形状とされている。また、先端部における第一枠部21aの外縁側の縁が、外縁側に張り出す鍔部33とされている。
【0022】
第一本体部20aには、第一方向間で第一係合部30を挟むように、一対の第一補助係合部34が形成されている。一対の第一補助係合部34は、第一分割体2aと一体に成形されている。本実施形態では、第一補助係合部34は、第一本体部20aにおける第一枠部21aの外面に延設され、第一開口面22を超える位置まで延在するように形成されている。第一補助係合部34は、第一方向の断面視(
図10参照)において、第一開口面22から延在される延在部における内縁側の付根部と第一開口面22とが、第一テーパ面35で接続されている。
【0023】
第二分割体4aは、対象物である円筒形状のモータ(不図示)を、駆動軸(不図示)の第一方向に沿って略2分割した場合の分割形状に相当する他方の半円筒部を収容する第二本体部40aにより構成される。第二本体部40aは、モータの半円筒部の外形に対応する凹状内面を有し、開口面(第二開口面42)を含む開口端側の領域が第二枠部41aとされる。
【0024】
第二枠部41aの第二開口面42は、第一方向に平行に配置する一対の第二長辺43と、一対の第二長辺43の両端部をそれぞれ接続する一対の第二短辺44とにより構成される。なお、本実施形態では、一対の第二長辺43と一対の第二短辺44との接続部は、角部が丸められたアール面とされている。
【0025】
第二本体部40aには、第二枠部41aの一方の第二長辺43を含む外面から、第一方向に直交する第二方向の一方に沿って外方に延在する、軸受部45が形成されている。軸受部45は、第二枠部41aと一体成形されている。本実施形態では、軸受部45は、一方の第二長辺43の第一方向中央から延在する第一軸受部46と、一方の第二長辺43の第一方向両端部から延在する一対の第二軸受部48と、により構成される。
【0026】
第一軸受部46は、延在先端側に、第一方向の断面形状(
図6参照)が、第二本体部40aの収容空間側に開放するC字形状とされた第一勘合凹部47が形成されている。第一勘合凹部47の内面は、第一分割体2aのヒンジ軸27を第一方向に2分割した場合の半円形状に対応した凹曲面とされている。一方、一対の第二軸受部48は、それぞれ延在先端側に、第一方向の断面形状(
図7参照)が、第一勘合凹部47に対向する方向に開放するC字形状とされた第二勘合凹部49が形成されている。第二勘合部の内面は、第一分割体2aのヒンジ軸27を第一方向に2分割した場合の半円形状に対応した凹曲面とされている。
【0027】
第一軸受部46と、一対の第二軸受部48は、後述するように、第一分割体2aのヒンジ軸27が、第一方向に離れて配置される第一軸受部46の第一勘合凹部47と、一対の第二軸受部48の各第二勘合凹部49とにより挟持された状態で勘合され、第一分割体2aと第二分割体4aとを回動可能となるようにヒンジ軸27を保持する機能を担う。
【0028】
第二本体部40aには、第二枠部41aの他方の第二長辺43を含む外面から、第一方向に直交する第二方向の他方に沿って外方に延在する第二係合部50が形成されている。第二係合部50は、第二枠部41aと一体成形されている。第二係合部50は、後述するように、第一分割体2aと第二分割体4aとが組付けられ、対象物が囲われたときに、第一分割体2aの第一係合部30と相対する位置に形成される。
【0029】
第二係合部50は、本実施形態では、他方の第二長辺の第一方向中央に形成される透孔により構成される。具体的には、第二係合部50は、第二枠部41aの第二開口面42と面一に延在する一対の第二脚部51と、一対の第二脚部51の先端を連結する第二連結部52とからなる門型形状とされている。第二開口面42における一対の第二脚部51を第一方向に接続する部分は、第二本体部40aの収容空間側に凹んだ第二凹部53とされ、一対の第二脚部51と、第二連結部52と、第二凹部53とに囲まれる領域において、第二枠部41aの開口方向に開口する部分が透孔とされている。なお、第二凹部53は、第一分割体2aの第一係合部30が収容可能な凹形状とされている。
【0030】
第二本体部40aには、第一方向間で第二係合部50を挟むように、一対の第二補助係合部54が形成されている。一対の第二補助係合部54は、第二分割体4aと一体に成形されている。一対の第二補助係合部54は、後述するように、第一分割体2aと第二分割体4aとが組付けられ、対象物が囲われたときに、第一分割体2aの一対の第一補助係合部34と相対する位置に形成されている。
【0031】
第二補助係合部54は、本実施形態では、第二係合部50の一対の第二脚部51に隣接する第一方向の外側の領域が、それぞれ、第二本体部40aの収容空間側に凹んだ凹部により構成されている。具体的には、第二補助係合部54は、第一方向の断面視(
図10参照)において、第二開口面42の内縁側から外縁側に向かって凹部の深さが大きくされ、外縁側が開放された凹部とされている。そして、第二開口面42の内縁側と外縁側とが第一補助係合部34側に凸となる凸部により接続され、凸部の頂部が第二テーパ面55とされている。
【0032】
(3.第一例の防音カバーの組付け状態)
第一例の防音カバー1aを組付けた状態について、
図4-7を参照して説明する。防音カバー1aを囲う際には、第一分割体2aと第二分割体4aとを組付けた状態とされる。
【0033】
例えば、第一分割体2aの第一枠部21aの開口方向と、第二分割体4aの第二枠部41aの開口方向とが同一方向となるように配置した状態で、第一分割体2aのヒンジ軸27が、第二分割体4aの軸受部45に勘合される。この際、軸受部45は、第一軸受部46と一対の第二軸受部48とにより構成され、第一軸受部46の第一勘合凹部47と一対の第二軸受部48の各第二勘合凹部49とが対向する方向に開放する凹曲面とされていることから第一分割体2aのヒンジ軸27は、第一軸受部46と一対の第二軸受部48とにより挟持された状態で勘合される。
【0034】
第一分割体2aのヒンジ軸27は、軸方向断面が円形の棒状部材であり、第二分割体4aの軸受部45の第一勘合凹部47と、各第二勘合凹部49は、ヒンジ軸27の軸断面を二分した半円形状に対応する凹曲面とされているため、第二分割体4aを、第一分割体2aのヒンジ軸27を基軸として、第一分割体2aに近接する方向に回動させることができる。
【0035】
また、第二枠部41aにおける第一方向中央に配置される第一軸受部46と、第一方向両端にそれぞれ配置される第二軸受部48とにより第一分割体2aのヒンジ軸27を挟持させた状態で勘合されるため、回動時に偏った力が加わっても、ヒンジ軸27を安定的に支持することができる。
【0036】
さらに、第一分割体2aのヒンジ軸27は、軸方向両端部が拡径部28とされ、第二分割体4aの軸受部45の各勘合凹部の内径よりも大きくされているため、第二分割体4aが、第一分割体2aから軸方向に外れることを防止することができる。
【0037】
(4.第一例の防音カバーの固定状態)
第一例の防音カバー1aの固定状態ついて、
図1、8-10を参照して説明する。防音カバー1aを、対象物である円筒形状のモータ(不図示)を囲んで固定する場合を一例として説明する。
【0038】
第一分割体2aのヒンジ軸27を第二分割体4aの軸受部45(第一軸受部46、第二軸受部48)に勘合させた状態で、第一分割体2aの第一本体部20aに、モータの半分相当を収容し、第二分割体4aを回動させる。第二分割体4aの第二枠部41aと第一分割体2aの第一枠部21aとが近接されると、第一分割体2aの第一係合部30(突条)が、第二分割体4aの第二係合部50(透孔)に係合される。この際、同時に、第一分割体2aの一対の第一補助係合部34が、第二分割体4aの一対の第二補助係合部54に係合され、第二第一分割体2aの第一開口面22と第二分割体4aの第二開口面42とが当接される。
【0039】
図9に示すように、第二係合部50(透孔)を挿通した第一係合部30(突条)の先端の鍔部33が、第二係合部50の第二連結部52に係止される。この際、
図10に示すように、一対の第一補助係合部34の第一テーパ面35と、一対の第二補助係合部54の第二テーパ面55とが対向配置され、第二テーパ面55が、一対の第一補助係合部34の延在部に対して、第一テーパ面35側に入り込んだ状態とされる。本構成により、第二係合部50の
図10における上方向への移動が抑制され、第一係合部30の鍔部33が第二係合部50の第二連結部52から外れ難くされている。
【0040】
また、
図9に示すように、固定状態において、第二分割体4aの第一軸受部46は、第一分割体2aの第一凹部26内に収容されている。また、第一分割体2aの第一係合部30は、第二分割体4aの第二係合部50の第二凹部53内に収容され、対象物が隙間なく覆われる。
【0041】
(5.効果)
第一分割体2aの第一本体部20aは、ヒンジ軸27(軸支持部25)が第一本体部20a(第一枠部21a)と一体成形され、第一本体部20aとヒンジ軸27(軸支持部25)を含む構成部材が、発泡樹脂で形成されている。同様に、第二分割体4aの第二本体部40aは、軸受部45が、第二本体部40a(第二枠部41a)と一体成形され、第二本体部40aと軸受部45を含む構成部材が、発泡樹脂で形成されている。従って、第一例の防音カバー1aは、構成部材すべてが、発泡樹脂で成形されているため、軽量化することができる。
【0042】
また、第一分割体2aのヒンジ軸27と第二分割体4aの軸受部45(第一軸受部46、第二軸受部48)との勘合により、第一分割体2aと第二分割体4aとが連結されるため、第一分割体2aと第二分割体4aとを肉薄のヒンジ部で連結する場合と比較して、連結部の強度を高め、取り扱い強度を向上させることができる。
【0043】
さらに、固定状態において、第一本体部20aの第一凹部26内に第二分割体4aの第一軸受部46が収容され、第一本体部20aの第一開口面22と第一本体部4aの第二開口面42とが当接して固定されるため、第一分割体2aと第二分割体4aとを肉薄のヒンジ部で連結する場合のように、ヒンジ部が開いて、両開口面同士に隙間が生じるような状況が発生することがなく、安定して防音効果を維持することができる。
【0044】
特に、第一分割体2aと第二分割体4aを、アスカーC硬度が60~99度である発泡樹脂で成形する場合、アスカーC硬度が60度未満の発泡樹脂で成形する場合と比較して、ヒンジ軸27の軸支構造の強度を高めることでき、安定した回動動作を行うことができる。また、対象物を収容する本体部の強度も高まり、使用環境によっては、飛散物等に対する抵抗力を高めることができる。
【0045】
なお、対象物の振動(音)特性や使用環境によっては、第一分割体2aと第二分割体4aを、アスカーC硬度が60度未満の発泡樹脂で成形することができる。この場合、アスカーC硬度が60~99度である発泡樹脂で成形する場合と比較して、ヒンジ軸27の軸支構造の強度は劣るものの、対象物の振動(音)特性に応じた防音性能に調整することができる。
【0046】
(6.変形例)
第一例の防音カバー1aの第一分割体2aは、一対の軸支持部25によりヒンジ軸27を支持する構成としたが、1つ又は3つ以上の軸支持部を有する構成としてもよい。また、軸支持部の形状や軸方向の配置位置は、対象物の大きさや配置スペースに応じて、任意に設定することができる。
【0047】
第一例の防音カバー1aの第二分割体4aは、3つの軸受部45(第一軸受部46、一対の第二軸受部48)でヒンジ軸27を軸支する構成としたが、軸受部として、第一軸受部と1つの第二軸受部を有する構成や、第一軸受部と第二軸受部をそれぞれ2つ以上有する構成としてもよい。この場合、形状や軸方向の配置位置を含め、対象物の大きさや配置スペースに応じて、任意に設定することができる。
【0048】
第一例の防音カバー1aは、第二分割体4aの第二係合部50を透孔としたが、第二係合部50を、一対の第二脚部51と、第二連結部52と、第二凹部53とに囲まれる凹部としてもよい。この場合、第一分割体2aの第一係合部30(突条)の外径を第二係合の凹部の内径よりも大きくして、圧入して固定させることもできる。また、第一係合部30と第二係合部50とは、互いに係合または勘合される形状であればよく、任意の形状とすることができる。また、第一係合部30と第二係合部50は、対象物の配置スペースに応じて、第一枠部21aと第二枠部41aの任意の位置に設けることができる。
【0049】
第一例の防音カバー1aは、第一分割体2aに、第一係合部30と一対の第一補助係合部34を設ける一方、第二分割体4aに、第二係合部50と一対の第二補助係合を設ける構成としたが、各補助係合部を設けない構成としてもよい。また、各係合部および各補助係合を設けない構成とすることもできる。この場合、ベルトで巻き付ける構成や、第一分割体2aの第一枠部21a材と第二分割体4aの第二枠部41a材とにそれぞれ鍔部を設け、鍔部をクリップで固定するなどで固定方法を採用することができる。
【0050】
第一例の防音カバー1aとして、第一分割体2aと第二分割体4aを、アスカーC硬度が60~99度である発泡樹脂で成形する場合、第一本体部20aと第二本体部40aの内部に、アスカーC硬度が60度未満の発泡樹脂層を積層配置させることもできる。
【0051】
(7.第二例の防音カバー)
第一例の防音カバー1aは、第一分割体2aと第二分割体4aの構成部材を同一の発泡樹脂で成形したが、第二例の防音カバー1bは、構成部材を異なる発泡樹脂で成形される。第二例の防音カバー1bについて、
図11を参照して説明する。第一例の防音カバー1aと同一の構成要素については、同一の符号を用いる。
【0052】
防音カバー1bの第一分割体2bは、第一本体部20bと第一枠部21bが別部材とされている。第一枠部21bには、軸支持部25およびヒンジ軸27が一体成形されている。
【0053】
第一本体部20bは、アスカーC硬度が1~60度である発泡樹脂(第一発泡樹脂)で成形されている。一方、ヒンジ軸27(軸支持部25)を含む第一枠部21bは、アスカーC硬度が60~99度である発泡樹脂(第二発泡樹脂)で成形されている。なお、先行して第一本体部20b又はヒンジ軸27(軸支持部25)を含む第一枠部21bの一方をインサート材として成形し、インサート材を他方の成形金型内に配置させた状態で、他方の材料を発泡成形することで両部材を一体化させることができる。
【0054】
防音カバー1bの第二分割体4bは、第二本体部40bと第二枠部41bが別部材とされている。第二枠部41bには、軸受部45(第一軸受部46、一対の第二軸受部48)が一体成形されている。
【0055】
第二本体部40bは、アスカーC硬度が1~60度である発泡樹脂(第一発泡樹脂)で成形されている。一方、軸受部45(第一軸受部46、一対の第二軸受部48)を含む第二枠部41bは、アスカーC硬度が60~99度である発泡樹脂(第二発泡樹脂)で成形されている。なお、先行して第二本体部40b又は軸受部45を含む第二枠部41bの一方をインサート材として成形し、インサート材を他方の成形金型内に配置させた状態で、他方の材料を発泡成形することで両部材を一体化させることができる。
【0056】
第二例の防音部材では、第一分割体2bと第二分割体4bとを回動可能に連結する部分(ヒンジ軸27(軸支持部25)、軸受部45)が、アスカーC硬度が60~99度である発泡樹脂(第一発泡樹脂)で成形されるため、連結部の強度を高めることができ、安定した回動動作を行うことができる。
【0057】
また、対象物を収容する本体部(第一本体部20b、第二本体部40b)が、アスカーC硬度が1~60度である発泡樹脂(第一発泡樹脂)で成形されるため、対象物の振動(音)特性に応じた防音性能に調整することができる。
【符号の説明】
【0058】
1a、1b:防音カバー、 2a、2b:第一分割体、 4a、4b:第二分割体、 20a、20b:第一本体部、 21a、21b:第一枠部、 25:軸支持部、 27:ヒンジ軸、 30:第一係合部(突条)、 40a、40b:第二本体部、 41a、42b:第二枠部、 45:軸受部、 50:第二係合部(透光)