(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146052
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】畝立装置
(51)【国際特許分類】
A01B 13/02 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
A01B13/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046835
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】501091925
【氏名又は名称】株式会社小川農具製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅規
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 英樹
(72)【発明者】
【氏名】小川 達瑛矢
【テーマコード(参考)】
2B032
【Fターム(参考)】
2B032CA02
2B032CA06
2B032CB03
2B032CB16
2B032CB21
(57)【要約】
【課題】 小型の耕耘機でも複数条の畝を同時に形成することができるとともに、畝成形部のみの着脱を容易に行うことが可能な畝立装置を提供する。
【解決手段】 畝立装置は、畝の成形をする畝成形部10と、畝成形部10を耕耘機50の後方に装着し、耕耘部52の近傍に被取付体30を保持する装着部20と、被取付体30に畝成形部10を着脱自在に取り付ける取付具40と、を有する。畝成形部10は、取付具40の被差込部43に差し込むための差込体13を有し、取付具40は、差込体13を被差込部43に係合保持するロック機構を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
畝の成形をする畝成形部と、前記畝成形部を耕耘機の後方に装着し、耕耘部の近傍に被取付体を保持する装着部と、前記被取付体に前記畝成形部を着脱自在に取り付ける取付具と、を備えてなり、
前記畝成形部は、土を左右に振り分けて畝を成形する側板と、前記側板の先端上方に配置され、前記取付具の被差込部に差し込むための差込体と、を有し、
前記取付具は、前記被取付体に嵌合固定する嵌合部と、前記嵌合部より延出した延出部と、前記差込体を差し込むための被差込部と、前記差込体を前記被差込部に係合保持するロック機構と、を有することを特徴とする畝立装置。
【請求項2】
ロック機構は、延出部の貫通孔に出没自在に挿入された固定具と、前記固定具を押し下げるバネ体と、前記バネ体の復元力に抗して前記固定具を上方に押し上げるスライド部材と、を有することを特徴とする請求項1記載の畝立装置。
【請求項3】
スライド部材は、細長い薄板部と、延出部内を前後方向に移動して固定具を出没させる固定具押上部と、を有することを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の畝立装置。
【請求項4】
固定具押上部は、一対の立設片からなり、固定具の軸部に挿通された小ピンを摺接させながら、バネ体の復元力に抗して前記固定具を上方に押し上げる傾斜部を有することを特徴とする請求項3記載の畝立装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘機に装着して田畑の畝立をする畝立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田畑の耕した土を細長く直線状に盛り上げ、栽培する作物や土の状態に適した畝を成形する畝立作業を行うために、トラクタなどの耕耘機の後方に突出したアタッチメント用フレームに装着する種々の畝立装置がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の畝立装置は、複数条の畝の形成を同時に行うために、耕耘機のアタッチメント用フレームに対して装着された複数の畝成形部を配設し、作業効率を向上させたものが開示されている(例えば特許文献2-4参照)。
【0004】
また、本出願人は、耕耘機のロータリー近傍に畝立部を配設することで、田畑を耕す際にロータリーで跳ね上げた土をすぐさま左右に振り分けて畝を形成することができ、複数条の畝の形成を同時に行うことができる小型軽量化した畝立装置を開示した(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平02-067701号公報
【特許文献2】実開昭47-007314号公報
【特許文献3】特開平07-284301号公報
【特許文献4】特開2017-000068号公報
【特許文献5】特開2020-103114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した複数条の畝の成形を同時に行う畝立装置は、耕耘機の移動距離が減って作業効率が向上する一方で、それらの高さや角度の調整機構や補助輪等を備えているため、畝立装置自体が大型で重量が大きくなり、それに伴って牽引力の大きい耕耘機が必要であるとともに、畝立装置全体の脱着や運搬することが不便であった。
【0007】
また、耕耘機に畝立装置を装着することや畝立装置の畝立部を取り付ける場合には、ボルトなどを工具によって締付固定するものであったため着脱するのに手間が掛かるものであった。
【0008】
したがって、本発明は、小型の耕耘機でも複数条の畝を同時に形成することができるとともに、畝成形部のみを容易に着脱することが可能な畝立装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、畝の成形をする畝成形部と、前記畝成形部を耕耘機の後方に装着し、耕耘部の近傍に被取付体を保持する装着部と、前記被取付体に前記畝成形部を着脱自在に取り付ける取付具と、を備えてなり、
前記畝成形部は、土を左右に振り分けて畝を成形する側板と、前記側板の先端上方に配置され、前記取付具の被差込部に差し込むための差込体と、を有し、
前記取付具は、前記被取付体に嵌合固定する嵌合部と、前記嵌合部より延出した延出部と、前記差込体を差し込むための被差込部と、前記差込体を前記被差込部に係合保持するロック機構と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
また、上述した構成に加え、ロック機構は、延出部の貫通孔に出没自在に挿入された固定具と、前記固定具を押し下げるバネ体と、前記バネ体の復元力に抗して前記固定具を上方に押し上げるスライド部材と、を有することが好ましい。
【0011】
また、上述した構成に加え、スライド部材は、細長い薄板部と、延出部内を前後方向に移動して固定具を出没させる固定具押上部と、を有することが好ましい。
【0012】
また、上述した構成に加え、固定具押上部は、一対の立設片からなり、固定具の軸部に挿通された小ピンを摺接させながら、バネ体の復元力に抗して前記固定具を上方に押し上げる傾斜部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明によれば、畝立装置によって、複数条の畝の成形を同時に行うことができ、かつ、畝成形部の着脱を容易に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の畝立装置の実施形態の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の畝立装置を耕耘機に装着した状態を示す概念図である。
【
図3】畝成形部と取付具を前方から見た拡大斜視図である。
【
図4】畝立装置の取付具を後ろ方向から見た拡大斜視図である。
【
図5】取付具のロック機構の構造を示す分解斜視図である。
【
図6】ロック機構を示す取付具周辺の部分拡大縦断面図であり、(a)畝成形部の差込体を差し込む前の状態、及び、(b)畝成形部の差込体を差し込んで係合保持した状態である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態)
本発明の実施形態である畝立装置の一例について
図1-6に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態において、
図1に示すように、畝立装置から見て耕耘機50(又は耕耘部52)側を前方向とし、耕耘機50のアタッチメント用フレーム51の長手方向を左右方向とする。なお、このアタッチメント用フレーム51は、耕耘部52のカバー52bの上方に配設された細長い角筒状の棒状体であり、補助輪等のアタッチメントを装着するためのものである。
【0016】
畝立装置は、畝の成形をする畝成形部10と、畝成形部10を耕耘機50の後方に装着し、耕耘部52の近傍に被取付体30を保持する装着部20と、被取付体30に畝成形部10を着脱自在に取り付ける取付具40と、を主要部として構成されるものである。
【0017】
畝成形部10は、
図3に示すように、土を左右に振り分けて畝を成形する側板11、11と、側板11、11の先端下方に配置され、畝間の溝を成形する底板12と、側板11、11内の先端上方に配置され、取付具40の被差込部43に差し込むための差込体13と、を有する。
【0018】
側板11、11は、前方方向を先端とし、略逆V字状に折り曲げたように形成された板状体が配置され、その先端上方付近において取付具40の被差込部43に後方から差込体13を差し込みうる開口部11aが形成されている。なお、この側板11、11は、栽培する作物や土の状態によって好適な畝の高さや幅の形状に応じて、傾斜角度や高さなどを変更することが可能である。
【0019】
差込体13は、底板12から立設された支持部14の上方に固定されており、被差込部43に嵌合しうる棒状体であり、この棒状体の左右の両側面から突出した鍔部13aと、ロック機構の固定具の先端に係合する係合凹部13bと、を有する。また、この差込体13は、取付具40の被差込部43の内周面全体に差込体13の外周面を十分に当接させることで、畝成形部10とのガタツキを防止することが可能であり、例えば、被差込部43の内周面より一回り小さい略六角形状の棒状体であることが好ましい。
【0020】
装着部20は、耕耘機50のアタッチメント用フレーム51に固定するフレーム固定部21と、耕耘部52のロータリー52aの近傍に被取付体30を保持する被取付体固定部22と、フレーム固定部21より下方に被取付体固定部22を配置する支持体23と、からなる。また、この装着部20は、畝成形部10の角度や高さを調整するように、支持体23の被取付体固定部22の部分を角度及び高さ調整を自在とする調整機構を設けることが好ましい。
【0021】
支持体23は、耕耘部52のカバー52bを後方より避けながらロータリー52a近傍に被取付体30を配置しうる略倒U字状の枠部材からなり、耕耘部52のカバー52bの形状によらずに装着することができ、異なる機種の耕耘機50に装着しうる汎用性の高いものである。
【0022】
被取付体30は、長い角筒状の棒状体であり、耕耘機50のアタッチメント用フレーム51と同じ形状にすることが好ましい。
【0023】
次に、上述した畝成形部10を装着部20に着脱自在に取り付ける取付具40について説明する。この取付具40は、
図3、4、5に示すように、装着部20の被取付体30に嵌合固定する嵌合部41と、嵌合部41より前方に延出した延出部42と、畝成形部10の差込体13を差し込むための被差込部43と、差込体13を被差込部43に係合保持するロック機構と、を有する。
【0024】
嵌合部41は、被取付体30の左右方向から差し込んで任意の位置で嵌合固定しうるように、左右に開口した角形の筒状体である。また、この嵌合部41は、筒状体の内周面と被取付体30の外周面との間にスペーサ44を介在させ、任意の位置で嵌合固定させるものである。
【0025】
スペーサ44は、嵌合部41とは別部材であり、略コ字状に折り曲げて形成されたクリップ体であり、一方を嵌合部41の内周面と被取付体30との隙間に介在させるとともに、他方にネジ穴を設け、このネジ穴にボルト44aを螺入して嵌合部41の外周面と被取付体30の外周面とを押圧することで任意の位置で固定する。
【0026】
延出部42は、嵌合部41の背面から延出して形成された細長い角筒状体であり、延出部42の上面から被差込部43の内部まで貫通し、固定具45を出没自在に挿入する貫通孔42aを有する。この延出部42は、後述するロック機構のスライド部材47を摺接自在に内包させるものであり、先端付近の内部にバネ体の一端を固定するためのバネ体固定部42bが設けられている。
【0027】
被差込部43は、差込体13を差し込みうるように一端が開口して形成された六角形状の筒状体であり、延出部42の後端下方に設けられたものである。この被差込部43は、後述するロック機構によって固定具45の先端が被差込部43内に没入して、差込体13の係合凹部13bを押圧して係合保持するものである。また、この被差込部43は、斜め上方向からボルトを螺入して押圧する押圧部43aを備えることで、差込体13との係合保持した状態を補助することが可能である。
【0028】
ロック機構は、延出部42の貫通孔42aに出没自在に挿入された固定具45と、固定具45を押し下げるバネ体46と、バネ体46の復元力に抗して固定具45を上方に押し上げるスライド部材47と、からなるものである。
【0029】
固定具45の軸部は、バネ体46の一端が固定され、スライド部材47の固定具押上部47bの傾斜部47cに載置するために、棒状の小ピン45aを軸部の長手方向に対して直角をなすように挿通する。
【0030】
バネ体46は、延出部42のバネ体固定部42bに対して巻き付けるように固定した弦巻バネとすることが好適である。
【0031】
スライド部材47は、延出部42内及び嵌合部41下面に沿って前後方向に摺接する細長い薄板部47aと、延出部42内を前後方向に移動して固定具45の小ピン45aを出没させる固定具押上部47bと、を有する。
【0032】
固定具押上部47bは、固定具45の軸部の出没動作を妨げないように、垂直に立設された一対の立設片からなり、固定具45の軸部に挿通された小ピン45aを摺接させながらバネ体46の復元力に抗して上方に押し上げる傾斜部47cと、傾斜部47の上端及び下端に溝部47d、47dと、を有する。
【0033】
溝部47d、47dは、小ピン45aを上下で挟み込むように略倒U字状に形成することで、固定具45の出没位置の高さの範囲を決めるとともに、畝立作業時の振動などによる固定具45の離脱を防止することが可能である。また、このスライド部材47は、作業者による畝成形部10の着脱操作を容易にするために薄板部47aの後端付近にリング状の把持部47eを設けている。
【0034】
次に、上述した畝立装置における畝成形部10の着脱方法について説明する。
まず、耕耘機50のアタッチメント用フレーム51に装着部20のフレーム固定部21を固定し、被取付体固定部22を耕耘部52のロータリー52a近傍に配置された被取付体固定部22に被取付体30を嵌合固定する。
【0035】
このとき、所望の畝の形状や間隔に適した畝成形部10の取付位置に、左右方向から複数の取付具40の嵌合部41を差し込んだ後に、嵌合部41に設けられたスペーサ44で被取付体30に対して取付具40の嵌合部41を押圧固定する。
【0036】
そして、
図6(a)に示すように、取付具40のスライド部材47をあらかじめ後方に引き出して固定具45を上方に突出させておき、畝成形部10を耕耘部52のカバー52bの下方において、畝成形部10の差込体13を取付具40の被差込部43に差し込む。
【0037】
畝成形部10の差込体13を取付具40の被差込部43に差し込んだ状態において、
図6(b)に示すように、スライド部材47を前方向に押し込むことで、固定具45がバネ体46の復元力によって被差込部43内に没入するとともに、固定具45の先端が差込体13の係合凹部13bに係合保持される。
【0038】
また、畝立装置の畝成形部10を取り外す際には、取付具40のスライド部材47を後方に引くと、固定具45が上方に押し上げられ、係合保持した状態が解除されることで、畝成形部10を取付具40から取り外すことができる。
【0039】
したがって、上述した畝立装置によって、田畑を耕す際に耕耘機50のロータリー52aで跳ね上げた土をすぐさま左右に振り分けて複数条の畝の形成を同時に行うことができ、少ない操作によって畝成形部10の着脱を容易に行うことが可能である。
【0040】
上記の実施形態では本発明の好ましい実施形態を例示したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で改善や変更が可能である。例えば、取付具40の被差込部43は、耕耘部52のロータリー52a及び被取付体30の位置に応じて、畝成形部10をロータリー52aの近傍に配設すればよく、嵌合部41の直下又は後方に被差込部43を延出してもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 畝成形部、11 側板、11a 開口部、12 底板、13 差込体、13a 鍔部、13b 係合凹部、14 支持部、
20 装着部、21 フレーム固定部、22 被取付体固定部、23 支持体、
30 被取付体、
40 取付具、41 嵌合部、42 延出部、42a 貫通孔、42b バネ体固定部、
43 被差込部、43a 押圧部、44 スペーサ、44a ボルト、45 固定具、
45a 小ピン、46 バネ体、 47 スライド部材、47a 薄板部、
47b 固定具押上部、47c 傾斜部、47d 溝部、47e 把持部、
50 耕耘機、51 アタッチメント用フレーム、52 耕耘部、52a ロータリー、
52b カバー