(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146065
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】カバー構造
(51)【国際特許分類】
B62J 23/00 20060101AFI20220928BHJP
B62J 17/00 20200101ALI20220928BHJP
B62J 6/02 20200101ALI20220928BHJP
【FI】
B62J23/00 A
B62J17/00
B62J6/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046856
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】澤田 富智美
(72)【発明者】
【氏名】村上 智弥
(57)【要約】
【課題】外観性を損なうことなく、乗員に対する走行風の当たりを軽減する。
【解決手段】カバー構造は、ヘッドランプユニット(25)が設けられた鞍乗型車両の車両前部に適用されている。カバー構造には、ヘッドランプユニットの周囲に取り付けられたランプカバー(70)と、ランプカバーの後方かつ左右方向外側に配置されたサイドカバー(30)と、が設けられている。ランプカバーの外側面がサイドカバーの外側面に向かって左右方向外側に傾斜している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドランプユニットが設けられた鞍乗型車両の車両前部のカバー構造であって、
前記ヘッドランプユニットの周囲に取り付けられたランプカバーと、
前記ランプカバーの後方かつ左右方向外側に配置されたサイドカバーと、を備え、
前記ランプカバーの外側面が前記サイドカバーの外側面に向かって左右方向外側に傾斜していることを特徴とするカバー構造。
【請求項2】
前記ランプカバーの外側面の高さ方向中間には走行風を後方に導く第1のガイド面が形成され、
前記ランプカバーの外側面の下側には走行風を後方に向かって斜め上方に導く第2のガイド面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカバー構造。
【請求項3】
前記第2のガイド面が前記ランプカバーの前縁から後縁まで延びており、当該第2のガイド面の前縁が前記第1のガイド面よりも前方かつ左右方向内側に位置していることを特徴とする請求項2に記載のカバー構造。
【請求項4】
前記ランプカバーの後方で前記サイドカバーの左右方向内側にフロントフォークが配置されており、
前記第1のガイド面から後方に延びる延長線が、前記フロントフォークの前端又は前端よりも左右方向外側を通過することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のカバー構造。
【請求項5】
前記サイドカバーの外側面には、前方から後方に向かって左右方向外側に傾斜すると共に、上方から下方に向かって左右方向内側に傾斜した斜面が形成されていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のカバー構造。
【請求項6】
前記ランプカバーの外側面の上側には走行風の上方への拡散を抑えつつ走行風を後方に導く第3のガイド面が形成されていることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両にはヘッドランプユニットの周囲を覆うランプカバーが取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のランプカバーの内面から取付部が突き出しており、この取付部の取付穴にボルトを介してブラケットが取り付けられている。また、ヘッドランプユニットの背面にはベース板が設けられており、ベース板の取付穴にボルトを介してブラケットが取り付けられている。ランプカバーの背面及びヘッドランプの内面がブラケットを介して連結されることで、ボルトの外部への露出が抑えられて外観性が向上されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、精悍な印象を与えるためにランプカバーの左右幅を狭く形成する場合があるが、ランプカバーの側方を走行風が通過して乗員に対する走行風の当たりが強くなる。一方で、ランプカバーの左右幅を広く形成すると、精悍な印象が得られずに外観性が悪化するという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、外観性を損なうことなく、乗員に対する走行風の当たりを軽減することができるカバー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のカバー構造は、ヘッドランプユニットが設けられた鞍乗型車両の車両前部のカバー構造であって、前記ヘッドランプユニットの周囲に取り付けられたランプカバーと、前記ランプカバーの後方かつ左右方向外側に配置されたサイドカバーと、を備え、前記ランプカバーの外側面が前記サイドカバーの外側面に向かって左右方向外側に傾斜していることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のカバー構造によれば、ランプカバーよりも後方かつ左右方向外側にサイドカバーが配置され、このサイドカバーの外側面に向かってランプカバーの外側面が傾斜している。前方からの走行風がランプカバーの外側面からサイドカバーの外側面に導かれ、乗員の前方のサイドカバーの外側面で走行風が左右方向外側に拡散される。ランプカバーの外側面だけではなく、ランプカバーの外側面とサイドカバーの外側面によって走行風の流れが左右方向外側に向けられるため、風除けのためにランプカバーの左右幅を大きく形成する必要がない。よって、外観性を損なうことなく、乗員に対する走行風の当たりを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例の鞍乗型車両の車両前部の斜視図である。
【
図3】本実施例の車両前部からボディカバーの一部を外した左側面図である。
【
図5】
図2のボディカバーをA-A線に沿って切断した断面図である。
【
図6】本実施例のアッパーボディカバーの取付部分を示す斜視図である。
【
図7】本実施例の車両前部の左側面の拡大図である。
【
図8】
図7の車両前部をB-B線に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のカバー構造は、車ヘッドランプユニットが設けられた鞍乗型車両の車両前部に設けられている。カバー構造は、ヘッドランプユニットの周囲にランプカバーが取り付けられ、ランプカバーの後方かつ左右方向外側にサイドカバーが配置されている。ランプカバーの外側面がサイドカバーの外側面に向かって左右方向外側に傾斜しており、前方からの走行風がランプカバーの外側面からサイドカバーの外側面に導かれ、乗員の前方のサイドカバーの外側面で走行風が左右方向外側に拡散される。ランプカバーの外側面だけではなく、ランプカバーの外側面とサイドカバーの外側面によって走行風の流れが左右方向外側に向けられるため、風除けのためにランプカバーの左右幅を大きく形成する必要がない。よって、外観性を損なうことなく、乗員に対する走行風の当たりを軽減することができる。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例のカバー構造が適用された鞍乗型車両について説明する。
図1は本実施例の鞍乗型車両の車両前部の斜視図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、アルミ鋳造によって形成されるツインスパー型の車体フレーム10に、エンジン16や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10は、ヘッドパイプ11から左右に分岐して後方に延びる一対のメインフレーム12と、ヘッドパイプ11から左右に分岐して下方に延びる一対のダウンフレーム13とを有している。一対のメインフレーム12によってエンジン16の後部が支持され、一対のダウンフレーム13によってエンジン16の前部が支持されている。エンジン16が車体フレーム10に支持されることで車両全体の剛性が確保されている。
【0012】
メインフレーム12の前側部分はタンクレールになっており、タンクレール上に燃料タンク17が配置されている。メインフレーム12の後側部分はボディフレームになっており、ボディフレームの上部からシートレール14及びバックステー15が後方に向かって延びている。シートレール14上にはライダーシート18が配置されている。ヘッドパイプ11にはステアリングシャフト(不図示)を介して一対のフロントフォーク21が操舵可能に支持されている。フロントフォーク21の下部には前輪22が回転可能に支持されており、前輪22の上部はフロントフェンダ23によって覆われている。
【0013】
ヘッドパイプ11の下方でエンジン16のシリンダヘッドの前方にラジエータ24が配置されている。ラジエータ24には、多数の細菅又は放熱フィンを有するラジエータコアが設けられている。ラジエータコアに流れる冷媒とラジエータコアに吹き付けられた走行風の間で熱交換が実施されている。また、鞍乗型車両1の前部にはヘッドランプユニット25が設けられている。ヘッドランプユニット25の周囲にはランプカバー70が取り付けられ、ランプカバー70の後方にはラジエータ24を左右側方から覆う一対のボディカバー(サイドカバー)30が取り付けられている。
【0014】
ところで、左右幅が狭いランプカバー70であれば車両前部が精悍な外観になるが、ランプカバー70の側方から乗員に向かって走行風が流れ易くなる。このため、ランプカバー70の左右幅の増加を抑えつつ、乗員に対する走行風の当たりを軽減可能なカバー構造が求められている。本実施例のカバー構造は、左右幅が狭いランプカバー70の外側面と、ランプカバー70の左右方向外側に配置されたボディカバー30の外側面とによって、走行風の流れを左右方向外側に拡散させることで、外観性を損なうことなく乗員に対する走行風の当たりを軽減している。
【0015】
以下、
図2から
図4を参照して、カバー構造の詳細構成について説明する。
図2は本実施例の車両前部の左側面図である。
図3は本実施例の車両前部からボディカバーの一部を外した左側面図である。
図4は本実施例の車両前部の前面図である。
【0016】
図2から
図4に示すように、ボディカバー30は、ランプカバー70の後方かつ左右方向外側に配置され、ランプカバー70と共に鞍乗型車両1の車両前部の外装を形成している。ボディカバー30は、車体フレーム10の前部に固定されたベースボディカバー31と、ベースボディカバー31の外側のアッパーボディカバー61及びアウターボディカバー51と、ベースボディカバー31の内側のインナーボディカバー66と、を有している。ベースボディカバー31の外側面の中間部から下部にわたってアウターボディカバー51が配置され、ベースボディカバー31の外側面の上部にアッパーボディカバー61が配置されている。
【0017】
ベースボディカバー31は、前輪22の上方で車体フレーム10(メインフレーム12)を側方から覆うと共に前輪22の後方でラジエータ24を側方から覆っている。ベースボディカバー31は左右幅が小さな上半部32と左右幅が大きな下半部33を有している。ベースボディカバー31の外側面の上側よりも下側、すなわち上半部32の外側面よりも下半部33の外側面が左右方向外側に突き出して段差面34(特に
図4参照)が形成されている。段差面34はベースボディカバー31の前縁から後方に向かって斜め上方に延びており、この段差面34を境目にしてベースボディカバー31が上半部32と下半部33に分かれている。
【0018】
段差面34の前縁は前輪22の上端よりも上方に位置している。段差面34の延在方向の中間位置が部分的に切り欠かれて縦溝35が形成されている。縦溝35は下半部33の後述する開口36に向かって延びている。縦溝35を挟んで段差面34が前半部分と後半部分に分かれており、段差面34の前半部分の上方には段差面34に沿って長孔37が形成され、段差面34の後半部分の上方には段差面34に沿って突状部38が形成されている。長孔37には後述するアウターボディカバー51の板状部52が取り付けられ、突状部38の上面が板状部52の上面に連続するように形成されている。
【0019】
ベースボディカバー31の下半部33には、段差面34の下方に側面視三角形状の開口36が形成されている。開口36は、ラジエータ24の側方でメインフレーム12の前方において、ベースボディカバー31の内側と外側を連ねている。縦溝35を通じて開口36に走行風が導かれ、ベースボディカバー31の内側に走行風が取り込まれる。開口36の前縁は後縁よりも左右方向内側に位置しており、開口36の後縁には左右幅が大きな壁面(不図示)が形成されている。この開口36の後縁の壁面に前方からの走行風が当たることで、開口36からベースボディカバー31の内側に走行風が取り込まれる。
【0020】
前面視にてベースボディカバー31の段差面34の下側よりも上側、すなわち下半部33の前面が上半部32の前面よりも左右方向外側に広がって下部前面41が形成されている。下部前面41は、正面を向いた正面部分と、斜め前方を向いた斜面部分とによって形成されている。下部前面41は段差面34の下方で窪んでおり、窪み42から段差面34の前縁に向かって下部前面41が前方に突き出している(特に
図3参照)。下部前面41から段差面34に向かう傾斜が急峻になるため、下部前面41に受け止められた泥水に走行風が吹き付けられても、泥水が段差面34の前縁を上方に乗り越え難くなっている。
【0021】
また、ベースボディカバー31の段差面34よりも下側の下部外側面43が段差面34の側縁に向かって左右方向外側に突き出している(特に
図4参照)。下部外側面43に付着した泥水に走行風が吹き付けられても、泥水が段差面34の側縁を上方に乗り越え難くなっている。ベースボディカバー31の前側部分では、段差面34の前縁及び側縁が外方に突き出すことで、段差面34よりも上方に泥水が向かい難くなって乗員への泥水の付着が抑えられている。側面視にてベースボディカバー31の下半部33は前輪22の後部に部分的に重なっている。下半部33の内面からはメインフレーム12に向けて遮蔽板44(
図8参照)が突き出している。
【0022】
ベースボディカバー31の長孔37や突状部38の上方には、上半部32の外側面が左右方向外側に膨らんで膨出部45が形成されている。膨出部45はベースボディカバー31の前縁から後方に向かって斜め上方に延びており、膨出部45には複数の開口が形成されている。上半部32の上縁には、上半部32の外側面が左右方向内側に窪んで膨出部45に沿った横溝46が形成されている。膨出部45の外側面にはアッパーボディカバー61が取り付けられている。アッパーボディカバー61は、ランプカバー70の後方で走行風を左右方向外側に拡散させている。
【0023】
アッパーボディカバー61は、ベースボディカバー31の前縁から後方に向かって斜め上方に延びている。アッパーボディカバー61の上端は、後述するアウターランプカバー73の上端よりも上方に位置し、アッパーボディカバー61の下端はアウターランプカバー73の下端よりも下方に位置している。アッパーボディカバー61の外側面には、前方から後方に向かって左右方向外側に傾斜すると共に、上方から下方に向かって左右方向内側に傾斜した斜面62が形成されている(特に
図4参照)。斜面62に沿って走行風が後斜め下方に流れて、乗員に向かって走行風が流れ難くなっている。
【0024】
アウターボディカバー51は、アッパーボディカバー61の下方でベースボディカバー31の外側に取り付けられている。アウターボディカバー51には、ベースボディカバー31の段差面34を上方から覆う庇状の板状部52と、板状部52の後方に連結部53を介して連なるリアカバー部54とが形成されている。板状部52はベースボディカバー31の長孔37に取り付けられ、段差面34よりも上方で板状部52が前後に延びている。板状部52の前縁が段差面34の前縁よりも前方に位置しており、前輪22に跳ね上げられた泥水が庇状の板状部52によって広い範囲で受け止められる。
【0025】
板状部52はベースボディカバー31の外側面から左右方向外側に向かって下向きに傾斜し、板状部52の左右方向外側の側縁には下方に屈曲した返し部55が形成されている。返し部55の内面と段差面34の左右方向外側の側縁には隙間が空けられ、返し部55が段差面34の側縁よりも下方まで延びている(特に
図4参照)。板状部52に受け止められた泥水が返し部55から段差面34の下方まで流れ落ち易く、板状部52よりも上方に泥水が向かい難くなって乗員への泥水の付着が抑えられている。なお、返し部55が板状部52の前半部に形成されているが、返し部55が板状部52の長手方向に沿って全体的に形成されていてもよい。
【0026】
段差面34と庇状の板状部52によって走行風の通り路が形成されている。段差面34の前縁と板状部52の前縁によって走行風の入口が形成されており、走行風の入口に対して前方からの走行風が入り込んでいる。上記したように返し部55の内面と段差面34に隙間が空いており、隙間にも走行風が入り込んでいる。これらの走行風が板状部52の内側で整流されて、走行風による走行抵抗が減らされている。このように、段差面34と板状部52は、前輪22から跳ね上げられた泥水を受け止めるだけでなく、走行抵抗を減少可能な走行風の通り路をボディカバー30に形成している。
【0027】
板状部52の後部が縦溝35の上方に位置しており、板状部52の後部には連結部53が設けられている。連結部53の内壁面(不図示)によって板状部52の内側を通る走行風が縦溝35に導かれている。連結部53の下部にはリアカバー部54が設けられている。リアカバー部54は前後上下に広がってベースボディカバー31の外側を覆っている。側面視にてリアカバー部54の一部が縦溝35及び開口36に重なることで、縦溝35から開口36に走行風が導かれてベースボディカバー31の内側に効率的に走行風が取り込まれる。
【0028】
インナーボディカバー66は、ベースボディカバー31の前縁に沿って、ベースボディカバー31の内側に取り付けられている。インナーボディカバー66の下部は、ベースボディカバー31の下部前面41に沿って形成されている。インナーボディカバー66の下部は斜め前方を向いた斜面になっており、ベースボディカバー31の下部前面41と共に前方からの水滴を受け止めている。なお、ベースボディカバー31、インナーボディカバー66、アウターボディカバー51、アッパーボディカバー61は、主に掛け止めによって互いに固定されている。
【0029】
ランプカバー70は、ヘッドランプユニット25の周囲を覆うベースランプカバー71と、ベースランプカバー71の外側面に取り付けられたアウターランプカバー73と、を有している。ベースランプカバー71は、ヘッドランプユニット25の上下2つの発光体を前面から露出させている。ベースランプカバー71の外側面は後方に向かって左右方向外側に傾斜しており、ベースランプカバー71の外側面から突き出した凸部72にアウターランプカバー73が取り付けられている。このため、ベースランプカバー71の外側面とアウターランプカバー73の内側面の間には隙間が形成されている。
【0030】
アウターランプカバー73は、側面視にて略平行四辺形状に形成されている。アウターランプカバー73の前縁及び後縁は下縁から上縁に向かって後方に傾き、アウターランプカバー73の上縁及び下縁は前縁から後縁に向かって上方に傾いている。アウターランプカバー73の外側面の高さ方向中間には第1のガイド面74が形成されている。第1のガイド面74は前縁から後縁まで略水平に延びており、前縁から後縁に向かって左右方向外側に傾斜している。第1のガイド面74に沿って走行風が流れることで、第1のガイド面74によって走行風が後方に導かれている。
【0031】
アウターランプカバー73の外側面の下側には、アウターランプカバー73の下縁に沿って谷型屈曲部75が形成されている。谷型屈曲部75の谷筋がアウターランプカバー73の下縁と平行に延びており、谷型屈曲部75の谷筋よりも下側には第2のガイド面76が形成されている。第2のガイド面76は前縁から後縁に向かって斜め上方に延びている。また、第2のガイド面76は、谷筋から下縁に向かって左右方向外側に傾斜すると共に、前縁から後縁に向かって左右方向外側に傾斜している。第2のガイド面76に沿って走行風が流れることで、第2のガイド面76によって走行風が後方に向かって斜め上方に導かれている。
【0032】
アウターランプカバー73の外側面の上側には、アウターランプカバー73の上縁に沿って山型屈曲部77が形成されている。山型屈曲部77の稜線がアウターランプカバー73の上縁と平行に延びており、山型屈曲部77の稜線よりも下側には第3のガイド面78が形成されている。第3のガイド面78は側面視にて略三角形状に形成されており、稜線から下方に向かって左右方向内側に傾斜すると共に、前縁から後縁に向かって左右方向外側に傾斜している。第3のガイド面78に沿って走行風が流れることで、第3のガイド面78によって走行風の上方への拡散が抑えられながら走行風が後方に導かれている。
【0033】
このように、アウターランプカバー73の第1-第3のガイド面74、76、78が後方に向かって左右方向外側に傾斜している。アウターランプカバー73の後方かつ左右方向外側にはアッパーボディカバー61が配置されているため、アウターランプカバー73からアッパーボディカバー61に走行風が導かれる。アウターランプカバー73の後方にフロントフォーク21が位置しているが、フロントフォーク21の側方を通過して走行風がアッパーボディカバー61に導かれている。アッパーボディカバー61で走行風が左右方向外側に拡散されて、乗員に対する走行風の当たりが軽減されている。
【0034】
また、アウターランプカバー73においても、第1のガイド面74に沿って流れる走行風に、第2のガイド面76に沿って流れる走行風が合流することで走行風が拡散されて、乗員に対する走行風の当たりが軽減されている。また、第3のガイド面78によって走行風が上方に拡散し難くなり、ランプカバー70から乗員に向かう走行風の流れが抑えられている。なお、走行風の流れの詳細については後述する。また、ランプカバー70の上部にはメータパネル27が設けられており、メータパネル27の背面にはメータ28が取り付けられている。メータパネル27の側面にはターンシグナルランプ29が設けられている。
【0035】
図5及び
図6を参照して、アッパーボディカバーの取付構成について説明する。
図5は
図2のボディカバーをA-A線に沿って切断した断面図である。
図6は本実施例のアッパーボディカバーの取付部分を示す斜視図である。
【0036】
図5及び
図6に示すように、アッパーボディカバー61には複数の掛止爪63が形成されている。掛止爪63は、アッパーボディカバー61の内側面から突き出した基端部64と、基端部64の先端部から後方に延びる爪部65とを有している。爪部65の基端から爪先に向かって、爪部65とアッパーボディカバー61の内側面の間隔が広がっている。ベースボディカバー31には、複数の掛止爪63に対応して複数の掛止穴47と複数の膨出部45が形成されている。膨出部45には爪部65が引っ掛かる支持面49が形成され、支持面49の前方から後方に向かって、支持面49とベースボディカバー31の内側面の間隔が広がっている。
【0037】
アッパーボディカバー61の掛止爪63がベースボディカバー31の掛止穴47に入り込み、掛止爪63の爪部65が膨出部45の支持面49に支持されて、ベースボディカバー31に対してアッパーボディカバー61が掛け止めされる。このとき、爪部65及び支持面49が後方に向かって左右方向内側に傾いているため、爪部65の内側に支持面49が入り込み易くなると共に、爪部65の内側に爪部65が入り込んだ状態でガタツキが減らされている。なお、爪部65とアッパーボディカバー61の内側面の間隔が、支持面49とベースボディカバー31の内側面の間隔と等しく又は小さく形成されていることが好ましい。
【0038】
アッパーボディカバー61の後側はネジ止め構造又はクリップ止め構造に形成されており、アッパーボディカバー61の後側以外は上記した掛け止め構造に形成されている。掛止爪63はフック形状に形成されているため、ネジ止め構造やクリップ止め構造と比べて、掛け止め構造に必要なアッパーボディカバー61の左右幅が少ない。アッパーボディカバー61の前端側の左右幅が狭く形成されているため、アッパーボディカバー61の後方に向かって走行風がスムーズに流されている。なお、アッパーボディカバー61とインナーボディカバー66も同様な掛け止め構造によって取り付けられている。
【0039】
図7及び
図8を参照して、走行風の流れについて説明する。
図7は本実施例の車両前部の左側面の拡大図である。
図8は
図7の車両前部をB-B線に沿って切断した断面図である。
【0040】
図7に示すように、ベースランプカバー71の外側面にアウターランプカバー73が取り付けられ、アウターランプカバー73の後方でベースボディカバー31の外側面にアッパーボディカバー61が取り付けられている。アウターランプカバー73の下側の谷型屈曲部75よりも下方にアッパーボディカバー61の下端が位置しており、アウターランプカバー73の上側の山型屈曲部77よりも上方にアッパーボディカバー61の上端が位置している。このように、アッパーボディカバー61は、アウターランプカバー73の後方でアウターランプカバー73よりも上下に大きく形成されている。
【0041】
アウターランプカバー73の第1のガイド面74は略水平に延びており、谷型屈曲部75の第2のガイド面76は前縁から後縁に向かって斜め上方に延びている。第2のガイド面76の前縁が第1のガイド面74よりも前方かつ左右方向内側(
図4参照)に位置し、第2のガイド面76に沿って走行風が流れ易くなっている。矢印F1に示す走行風が第1のガイド面74によって後方に導かれ、矢印F2に示す走行風が第2のガイド面76によって斜め後方に導かれている。矢印F1に示す走行風に矢印F2に示す走行風が下方から合流することで、アッパーボディカバー61の前方で走行風が拡散されている。
【0042】
また、山型屈曲部77の第3のガイド面78は、第1のガイド面74から上方に向かって左右方向外側に傾斜している。矢印F1に示す走行風が第3のガイド面78によって上方に拡散し難くなり、アウターランプカバー73の外側面から乗員に向かう走行風の流れが抑えられる。これにより、アウターランプカバー73の第1のガイド面74からアッパーボディカバー61の外側面に向けて走行風が流れ易くなっている。第1のガイド面74の後方にフロントフォーク21が存在しており、フロントフォーク21の外周面も走行風を後方に導くガイド面として機能している。
【0043】
図8に示すように、アウターランプカバー73の後方でアッパーボディカバー61の左右方向内側にフロントフォーク21が配置されている。フロントフォーク21の外周面の外側半部(図では左半部)がアウターランプカバー73よりも左右方向外側にはみ出している。第1のガイド面74から後方に延びる延長線L1が、フロントフォーク21の前端又は前端よりも左右方向外側を通過している。第1のガイド面74からフロントフォーク21の外周面の左右方向外側に走行風が当たることで、矢印F3に示すようにアウターランプカバー73からアッパーボディカバー61の外側面に向かって走行風が流れ易くなる。
【0044】
図7に戻り、アッパーボディカバー61の外側面には、前方から後方に向かって左右方向外側に傾斜すると共に上方から下方に向かって左右方向内側に傾斜した斜面62が形成されている。アッパーボディカバー61の斜面62の下端は第2のガイド面76の下端と略同じ高さで、アッパーボディカバー61の斜面62の上端は第3のガイド面78の上端と略同じ高さになっている。アッパーボディカバー61の斜面62が上下方向に広く形成されているため、アッパーボディカバー61の外側面から後方に向かう走行風がアッパーボディカバー61の斜面62に受け止められ易くなっている。
【0045】
そして、フロントフォーク21の側方を通ってアッパーボディカバー61の斜面62に走行風が導かれると、アッパーボディカバー61の斜面62によって走行風が左右方向外側に拡散される。このとき、矢印F4に示すように、アッパーボディカバー61の斜面62の傾きによって走行風が上方に拡散し難くなり、アッパーボディカバー61から乗員に向かう走行風の流れが抑えられている。アウターランプカバー73からアッパーボディカバー61に走行風が導かれ、アッパーボディカバー61で走行風が左右方向外側に拡散されることで、ランプカバー70の左右幅を狭く形成しても乗員への走行風の当たりが軽減されている。
【0046】
このように、アウターランプカバー73の後方で矢印F1、F2に示す走行風が合流することで走行風が拡散され、さらにアッパーボディカバー61の外側面で走行風が左右方向外側に拡散されている。2段階で走行風が拡散されることで、乗員への走行風の当たりが効果的に軽減されている。アウターランプカバー73では第3のガイド面78によって走行風の上方への拡散が抑えられ、アッパーボディカバー61では斜面62によって走行風の上方への拡散が抑えられている。アウターランプカバー73及びアッパーボディカバー61から乗員側に走行風が向かい難くなって、乗員への走行風の当たりがさらに軽減されている。
【0047】
以上、本実施例によれば、アウターランプカバー73よりも後方かつ左右方向外側にアッパーボディカバー61が配置され、このアッパーボディカバー61の外側面に向かってアウターランプカバー73の外側面が傾斜している。前方からの走行風がアウターランプカバー73の外側面からアッパーボディカバー61の外側面に導かれ、乗員の前方のアッパーボディカバー61の外側面で走行風が左右方向外側に拡散される。アウターランプカバー73の外側面だけではなく、アウターランプカバー73の外側面とアッパーボディカバー61の外側面によって走行風の流れが左右方向外側に向けられるため、風除けのためにランプカバー70の左右幅を大きく形成する必要がない。よって、外観性を損なうことなく、乗員に対する走行風の当たりを軽減することができる。
【0048】
なお、本実施例では、ボディカバーが複数のカバー部材で構成されているが、ボディカバーは1つのカバー部材で構成されていてもよい。
【0049】
また、本実施例では、ランプカバーが複数のカバー部材で構成されているが、ランプカバーは1つのカバー部材で構成されていてもよい。
【0050】
また、本実施例では、アウターランプカバーの外側面に第1-第3のガイド面が形成されているが、アウターランプカバーの外側面に第1-第3のガイド面が形成されていなくてもよい。アウターランプカバーの外側面は、アッパーボディカバーの外側面に向かって左右方向外側に傾斜していればよい。
【0051】
また、本実施例では、前面視にて第2のガイド面がアウターランプカバーの谷筋から下縁に向かって左右方向外側に傾斜しているが、第2のガイド面は走行風を後方に向かって斜め上方に導くように形成されていればよい。
【0052】
また、本実施例では、前面視にて第3のガイド面がアウターランプカバーの稜線から下方に向かって左右方向内側に傾斜しているが、第3のガイド面は走行風の上方への拡散を抑えつつ走行風を後方に導くように形成されていればよい。
【0053】
また、本実施例では、側面視にてアウターランプカバーが略平行四辺形状に形成されているが、アウターランプカバーの外形形状は特に限定されない。
【0054】
また、本実施例では、アッパーボディカバーの斜面が前方から後方に向かって左右方向外側に傾斜し、上方から下方に向かって左右方向内側に傾斜しているが、アッパーボディカバーの斜面は少なくとも前方から後方に向かって左右方向外側に傾斜していればよい。
【0055】
また、鞍乗型車両とは、乗員がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、乗員がシートに跨らずに乗車する小型のスクータタイプの車両も含んでいる。
【0056】
以上の通り、本実施例のカバー構造は、ヘッドランプユニット(25)が設けられた鞍乗型車両(1)の車両前部のカバー構造であって、ヘッドランプユニットの周囲に取り付けられたランプカバー(70)と、ランプカバーの後方かつ左右方向外側に配置されたサイドカバー(ボディカバー30)と、を備え、ランプカバーの外側面がサイドカバーの外側面に向かって左右方向外側に傾斜している。この構成によれば、ランプカバーよりも後方かつ左右方向外側にサイドカバーが配置され、このサイドカバーの外側面に向かってランプカバーの外側面が傾斜している。前方からの走行風がランプカバーの外側面からサイドカバーの外側面に導かれ、乗員の前方のサイドカバーの外側面で走行風が左右方向外側に拡散される。ランプカバーの外側面だけではなく、ランプカバーの外側面とサイドカバーの外側面によって走行風の流れが左右方向外側に向けられるため、風除けのためにランプカバーの左右幅を大きく形成する必要がない。よって、外観性を損なうことなく、乗員に対する走行風の当たりを軽減することができる。
【0057】
本実施例のカバー構造において、ランプカバーの外側面の高さ方向中間には走行風を後方に導く第1のガイド面(74)が形成され、ランプカバーの外側面の下側には走行風を後方に向かって斜め上方に導く第2のガイド面(76)が形成されている。この構成によれば、第1のガイド面に沿って後方に流れる走行風に、第2のガイド面に沿って斜め上方に流れる走行風が合流することで走行風が拡散される。走行風がランプカバーを通過すると、サイドカバーによって走行風がさらに拡散されて乗員に対する走行風の当たりが軽減される。
【0058】
本実施例のカバー構造において、第2のガイド面がランプカバーの前縁から後縁まで延びており、当該第2のガイド面の前縁が第1のガイド面よりも前方かつ左右方向内側に位置している。この構成によれば、第2のガイド面に沿って走行風が流れ易くなり、第1のガイド面に沿って流れる走行風が第2のガイド面に沿って流れる走行風によって効果的に拡散される。
【0059】
本実施例のカバー構造において、ランプカバーの後方でサイドカバーの左右方向内側にフロントフォーク(21)が配置されており、第1のガイド面から後方に延びる延長線(L1)が、フロントフォークの前端又は前端よりも左右方向外側を通過する。この構成によれば、第1のガイド面からフロントフォークの外周面の左右方向外側に走行風が当たることで、ランプカバーからサイドカバーの外側面に向かって走行風が流れ易くなる。
【0060】
本実施例のカバー構造において、サイドカバーの外側面には、前方から後方に向かって左右方向外側に傾斜すると共に、上方から下方に向かって左右方向内側に傾斜した斜面(62)が形成されている。この構成によれば、サイドカバーの斜面によって走行風が左右方向外側に拡散される。このとき、アッパーボディカバーの斜面の傾きによって走行風が上方に拡散し難くなり、アッパーボディカバーの外側面から乗員に向かう走行風の流れが抑えられている。
【0061】
本実施例のカバー構造において、ランプカバーの外側面の上側には走行風の上方への拡散を抑えつつ走行風を後方に導く第3のガイド面(78)が形成されている。この構成によれば、第3のガイド面によって走行風が上方に拡散し難くなり、ランプカバーの外側面から乗員に向かう走行風の流れが抑えられる。ランプカバーの外側面からサイドカバーの外側面に走行風が流れ易くなり、サイドカバーの外側面によって走行風が左右方向外側に拡散されて乗員に対する走行風の当たりが軽減される。
【0062】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0063】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。