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特開2022-146068自動運転方法、作業車両及び自動運転システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146068
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】自動運転方法、作業車両及び自動運転システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20220928BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20220928BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 303M
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046859
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】光畑 友啓
(72)【発明者】
【氏名】大森 康永
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB19
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB14
2B043DA01
2B043DA05
2B043DA07
2B043DA15
2B043EA02
2B043EA12
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
2B043EC15
2B043ED02
5H301AA01
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD05
5H301DD17
5H301GG17
5H301MM09
(57)【要約】
【課題】作業者の意図しない自動走行を抑制することができる自動運転方法、作業車両及び自動運転システムを提供する。
【解決手段】
コンバイン1は、予め設定された走行経路に基づいて自動走行を行う作業車両であって、自動走行を許可する自動走行許可操作部材である自動走行許可スイッチ34と、走行経路に基づく自動走行を制御する自動走行制御部62として機能する制御装置50と、を備える。自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34が操作(押圧)されている間、走行経路に基づく自動走行を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された走行経路に基づいて自動走行を行う作業車両の自動運転方法であって、
前記自動走行を許可する自動走行許可操作部材を操作する操作工程と、
前記走行経路に基づく前記自動走行を制御する自動走行制御工程と、を有し、
前記自動走行制御工程は、前記自動走行許可操作部材が操作されている間、前記走行経路に基づく前記自動走行を実行することを特徴とする自動運転方法。
【請求項2】
前記自動走行制御工程は、前記自動走行許可操作部材が操作されていて所定の設定速度で前記自動走行を実行している際に、前記自動走行許可操作部材の操作が解除された場合、前記設定速度よりも遅い速度で前記自動走行を継続することを特徴とする請求項1に記載の自動運転方法。
【請求項3】
前記自動走行制御工程は、前記自動走行許可操作部材が操作されていて所定の設定速度で前記自動走行を実行している際に、前記自動走行許可操作部材の操作が解除されると共に前記設定速度の増速操作が行われた場合、前記増速操作を前記設定速度に反映せず、前記自動走行許可操作部材が再度操作されてから前記増速操作を前記設定速度に反映することを特徴とする請求項1に記載の自動運転方法。
【請求項4】
前記自動走行制御工程は、前記自動走行許可操作部材が操作されていて所定の設定速度で前記自動走行を実行している際に、前記自動走行許可操作部材の操作が解除された場合、所定の継続時間の経過後に前記自動走行を停止することを特徴とする請求項1に記載の自動運転方法。
【請求項5】
前記自動走行制御工程は、前記自動走行許可操作部材の操作が解除されて前記自動走行を停止するまでの間に、運転条件の変更操作が行われた場合、前記継続時間を延長することを特徴とする請求項4に記載の自動運転方法。
【請求項6】
前記自動走行制御工程は、後退走行用の前記継続時間を前進走行用の前記継続時間よりも短く設定することを特徴とする請求項4に記載の自動運転方法。
【請求項7】
前記自動走行制御工程は、前記作業車両に複数設けられた前記自動走行許可操作部材のうち、少なくとも一つの前記自動走行許可操作部材が操作されている場合、前記自動走行を停止しないことを特徴とする請求項1に記載の自動運転方法。
【請求項8】
前記自動走行制御工程は、前記作業車両に複数設けられた前記自動走行許可操作部材のうち、全ての前記自動走行許可操作部材が操作されている場合、所定の設定速度で前記自動走行を実行し、一方、少なくとも一つの前記自動走行許可操作部材が操作されている場合、前記設定速度よりも遅い速度で前記自動走行を実行することを特徴とする請求項1に記載の自動運転方法。
【請求項9】
予め設定された走行経路に基づいて自動走行を行う作業車両であって、
前記自動走行を許可する自動走行許可操作部材と、
前記走行経路に基づく前記自動走行を制御する自動走行制御部と、を備え、
前記自動走行制御部は、前記自動走行許可操作部材が操作されている間、前記走行経路に基づく前記自動走行を実行することを特徴とする作業車両。
【請求項10】
前記自動走行許可操作部材は、当該作業車両の操縦部のアームレストの前方の手摺部に配置されることを特徴とする請求項9に記載の作業車両。
【請求項11】
予め設定された走行経路に基づいて自動走行を行う作業車両を備える自動運転システムであって、
前記自動走行を許可する自動走行許可操作部材と、
前記走行経路に基づく前記自動走行を制御する自動走行制御部と、を備え、
前記自動走行制御部は、前記自動走行許可操作部材が操作されている間、前記走行経路に基づく前記自動走行を実行することを特徴とする自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定された走行経路に基づいて自動走行を行う作業車両の自動運転方法、作業車両及び自動運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインやトラクタ等の作業車両には、予め設定された走行経路に基づいて自動走行を行うものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される自律走行システムは、作業車両を自律走行させる走行制御部を備えていて、特許文献1の実施形態では、ユーザが無線通信端末を操作して自律走行の開始を指示ことにより、トラクタが直線経路及び旋回経路に沿って走行しながら作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-92621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の作業車両では、自動走行の開始を指示するための開始ボタンやタッチパネルの操作キーに触れただけで、作業者が誤って自動走行の開始を指示してしまうことがあり、作業者の意図しない自動走行が行われ、その自動走行が継続されるおそれがある。
【0006】
本発明は、作業者の意図しない自動走行を抑制することができる自動運転方法、作業車両及び自動運転システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の自動運転方法は、予め設定された走行経路に基づいて自動走行を行う作業車両の自動運転方法であって、前記自動走行を許可する自動走行許可操作部材を操作する操作工程と、前記走行経路に基づく前記自動走行を制御する自動走行制御工程と、を有し、前記自動走行制御工程は、前記自動走行許可操作部材が操作されている間、前記走行経路に基づく前記自動走行を実行することを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の作業車両は、予め設定された走行経路に基づいて自動走行を行う作業車両であって、前記自動走行を許可する自動走行許可操作部材と、前記走行経路に基づく前記自動走行を制御する自動走行制御部と、を備え、前記自動走行制御部は、前記自動走行許可操作部材が操作されている間、前記走行経路に基づく前記自動走行を実行することを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の自動運転システムは、予め設定された走行経路に基づいて自動走行を行う作業車両を備える自動運転システムであって、前記自動走行を許可する自動走行許可操作部材と、前記走行経路に基づく前記自動走行を制御する自動走行制御部と、を備え、前記自動走行制御部は、前記自動走行許可操作部材が操作されている間、前記走行経路に基づく前記自動走行を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業者の意図しない自動走行を抑制することができる自動運転方法、作業車両及び自動運転システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の作業車両の一実施形態に係るコンバインの側面図である。
図2】本発明の作業車両の一実施形態に係るコンバインのブロック図である。
図3】本発明の作業車両の一実施形態に係るコンバインの操縦部の平面図である。
図4】本発明の作業車両の一実施形態に係るコンバインの自動走行動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の作業車両の一実施形態であるコンバイン1について図1等を参照して説明する。コンバイン1は、自動運転又は手動操作によって、作業対象の圃場を走行すると共に、圃場に植えられた穀稈から作物の収穫作業を行うために刈取等の作業を行うものである。
【0013】
コンバイン1は、手動走行モード及び自動走行モードの何れかの走行モードが設定される。コンバイン1は、手動走行モードが設定されている場合、作業者による操縦部9の操縦に応じて手動走行を行うように構成される。
【0014】
一方、コンバイン1は、自動走行モードが設定されている場合、予め設定された走行経路に従って自動走行しながら自動刈取する自動刈取走行を行うように構成される。例えば、コンバイン1は、圃場の未刈穀稈を有する領域(以下、未刈領域と称する)において複数の行程を往復する往復刈りや、未刈領域の内周に沿った行程の周回を中央側にずらしながら繰り返す回り刈り等の走行パターンの自動刈取走行を行う。
【0015】
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、貯留部6と、排藁処理部7と、動力部8と、操縦部9とを備え、いわゆる自脱型コンバインで構成される。コンバイン1は、走行部2によって走行しつつ、刈取部3によって刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6に貯える。コンバイン1は、脱穀後の排藁を排藁処理部7によって処理する。コンバイン1は、動力部8が供給する動力によって、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を駆動する。
【0016】
走行部2は、機体フレーム10の下方に設けられていて、左右一対のクローラ式走行装置11と、トランスミッション(図示せず)とを備える。走行部2は、動力部8のエンジン26から伝達される動力(例えば、回転動力)によって、クローラ式走行装置11のクローラを回転することで、コンバイン1を前後方向に走行させたり、左右方向に旋回させたりする。トランスミッションは、動力部8の動力(回転動力)をクローラ式走行装置11へ伝達するものであり、回転動力を変速することもできる。
【0017】
刈取部3は、走行部2の前方に設けられ、最大刈取条数以内の条列の刈取作業を行い、刈取作業の対象の条列数によって刈取幅が定まる。刈取部3は、デバイダ13と、引起装置14と、切断装置15と、搬送装置16とを備える。デバイダ13は、圃場の穀稈を一条毎に分草して、最大刈取条数以内の所定条数分の穀稈を引起装置14へ案内する。引起装置14は、デバイダ13によって案内された穀稈を引き起こす。切断装置15は、引起装置14によって引き起こされた穀稈を切断する。搬送装置16は、切断装置15によって切断された穀稈を脱穀部4へ搬送する。
【0018】
脱穀部4は、刈取部3の後方に設けられる。脱穀部4は、フィードチェーン18と、扱胴19とを備える。フィードチェーン18は、刈取部3の搬送装置16から搬送された穀稈を脱穀のために搬送し、更に脱穀後の穀稈、すなわち排藁を排藁処理部7へと搬送する。扱胴19は、フィードチェーン18によって搬送されている穀稈を脱穀する。
【0019】
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられる。選別部5は、揺動選別装置21と、風選別装置22と、穀粒搬送装置(図示せず)と、藁屑排出装置(図示せず)とを備える。揺動選別装置21は、脱穀部4から落下した脱穀物をふるいにかけて穀粒と藁屑等に選別する。風選別装置22は、揺動選別装置21によって選別された脱穀物を送風によって更に穀粒と藁屑等に選別する。穀粒搬送装置は、揺動選別装置21及び風選別装置22によって選別された穀粒を貯留部6へ搬送する。藁屑排出装置は、揺動選別装置21及び風選別装置22によって選別された藁屑等を機外へ排出する。
【0020】
貯留部6は、脱穀部4の右側方に設けられる。貯留部6は、グレンタンク23と、排出装置24とを備える。グレンタンク23は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。排出装置24は、オーガ等で構成され、穀粒の排出作業を行い、グレンタンク23に貯留されている穀粒を任意の場所に排出する。排出装置24は、制御装置50(図2参照)に制御されて自動的に、又は操縦部9の操作に応じて手動で排出作業を行う。
【0021】
排藁処理部7は、脱穀部4の後方に設けられる。排藁処理部7は、排藁搬送装置(図示せず)と、排藁切断装置(図示せず)とを備える。例えば、排藁処理部7は、脱穀部4のフィードチェーン18から搬送された排藁を、排藁搬送装置によってそのまま機外(例えば、コンバイン1の後方や下方)へ排出する。あるいは、排藁処理部7は、排藁搬送装置によって排藁切断装置へ搬送して、排藁切断装置によって切断した後で機外(例えば、コンバイン1の後方の右側寄り)へ排出する。
【0022】
動力部8は、走行部2の上方、且つ、貯留部6の前方に設けられる。動力部8は、回転動力を発生させるエンジン26を備える。動力部8は、エンジン26が発生させた回転動力を、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7に伝達する。また、コンバイン1は、動力部8のエンジン26へ供給する燃料を収容する燃料タンク(図示せず)を備える。
【0023】
操縦部9は、動力部8の上方に設けられる。操縦部9は、図3に示すように、運転席28の周囲に、コンバイン1の走行を操縦するためのハンドル29、主変速レバー30及び副変速レバー31等の操作具を備える。また、操縦部9は、刈取部3による刈取作業、脱穀部4による脱穀作業、貯留部6の排出装置24による排出作業等を操作するための機構を備える。
【0024】
運転席28は、作業者が座る座席であり、例えば、コンバイン1の右部に設けられる。運転席28の右側にはアームレスト32が設けられ、アームレスト32の前方には手摺部33が設けられる。手摺部33には、自動走行許可操作部材の一例である自動走行許可スイッチ34が設けられ、自動走行許可スイッチ34は、例えば、運転席28に座った作業者がアームレスト32に右腕を掛けた状態で、右手の指が掛かる手摺部33の位置に配置される。例えば、自動走行許可スイッチ34は、押しボタンで構成され、操作(押圧)されているとき、すなわち押されているときにオンになり、操作(押圧)が解除されているとき、すなわち押されていないときにオフになる。
【0025】
自動走行許可スイッチ34は、自動走行モードが設定されている場合に押圧されている間、走行経路に基づく自動走行を許可するためのものである。換言すれば、自動走行モードが設定されていても、自動走行許可スイッチ34が押圧されなければ、走行経路に基づく自動走行は許可されない。自動走行許可スイッチ34の操作に応じたコンバイン1の自動走行動作の詳細は後述する。
【0026】
ハンドル29は、作業者による回転操作を走行部2に伝達して、コンバイン1の進行方向を変更し、すなわちコンバイン1を操向操作するものである。例えば、手動走行モードが設定されている場合、走行部2は、作業者によるハンドル29の操向操作を常時受け付ける。一方、自動走行モードが設定されている場合、走行部2は、作業者によるハンドル29の操向操作を受け付けないが、コンバイン1は、ハンドル29が操作されると、走行モードを自動走行モードから手動走行モードへ切り替える。ハンドル29は、回転方向に±5度程度のマージンを有し、このマージン内の操作を走行部2に伝達しないように構成される。なお、ハンドル29のマージンは、±5度に限定されず、人為的に調整可能である。
【0027】
主変速レバー30及び副変速レバー31は、作業者による操作に応じてコンバイン1の走行の設定速度を切り替えるものである。例えば、手動走行モードが設定されている場合、主変速レバー30は、中央のニュートラル位置35にあると、コンバイン1を停車させる。また、主変速レバー30は、ニュートラル位置35よりも前側の前進速度変更領域36に倒されると、コンバイン1の前進走行操作を走行部2に伝達し、前後方向に長い前進速度変更領域36における主変速レバー30の前後方向の位置に応じた前進設定速度を走行部2に設定する。前進速度変更領域36に位置する主変速レバー30は、ニュートラル側から前方へ倒されると、前進設定速度を増速し、一方、前方からニュートラル側へ倒されると、前進設定速度を減速する。
【0028】
一方、主変速レバー30は、ニュートラル位置35よりも後側の後退速度変更領域37に倒されると、コンバイン1の後退走行操作を走行部2に伝達し、前後方向に長い後退速度変更領域37における主変速レバー30の前後方向の位置に応じた後退設定速度を走行部2に設定する。後退速度変更領域37に位置する主変速レバー30は、ニュートラル側から後方へ倒されると、後退設定速度を増速し、一方、後方からニュートラル側へ倒されると、後退設定速度を減速する。
【0029】
また、自動走行モードが設定されてコンバイン1が自動走行を行うとき、主変速レバー30は、前進速度変更領域36に位置している。自動走行モードが設定されている場合、主変速レバー30が前進速度変更領域36に位置することを、コンバイン1の自動走行開始条件の一つとしてよい。前進自動走行では、主変速レバー30の前後方向の位置に応じた前進設定速度を走行部2に設定し、例えば、自動走行中に主変速レバー30がニュートラル側から前方へ倒されると、前進設定速度を増速し、一方、前方からニュートラル側へ倒されると、前進設定速度を減速する。また、後退自動走行では、主変速レバー30の前後方向の位置に拘わらず、定速の後退設定速度を走行部2に設定する。
【0030】
コンバイン1は、図2に示すように、GPS等の衛星測位システムを利用してコンバイン1の位置情報を取得する測位ユニット39を備えている。測位ユニット39は、測位アンテナを介して測位衛星から測位信号を受信し、測位信号に基づいて測位ユニット39の位置情報、すなわちコンバイン1の位置情報を取得する。
【0031】
なお、コンバイン1は、圃場の周囲の畦等に設置された基地局(図示せず)と通信可能に構成されてもよい。基地局は、測位アンテナを介して測位衛星から測位信号を受信し、測位信号に基づいて基地局の位置情報を取得する。基地局は、基地局の位置情報に基づく補正情報を、コンバイン1(例えば、測位ユニット39)へ送信する。コンバイン1(例えば、測位ユニット39)は、補正情報を基地局から受信し、補正情報に基づいて測位ユニット39の位置情報、すなわちコンバイン1の位置情報を補正する。
【0032】
次に、コンバイン1の制御装置50について図2を参照して説明する。制御装置50は、CPU等のコンピュータで構成され、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部51や、外部機器と通信を行う通信部52に接続されている。記憶部51は、コンバイン1の各種構成要素及び各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御装置50が、記憶部51に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、各種構成要素及び各種機能を制御する。制御装置50は、例えば、測位ユニット39を制御してコンバイン1の位置情報を取得する。
【0033】
記憶部51は、例えば、コンバイン1の作業対象である圃場の圃場情報を記憶する。圃場情報は、圃場外周を構成する圃場端の形状、大きさ及び位置情報(座標等)等や、圃場の未刈領域の形状、大きさ及び位置情報(座標等)等を含む。
【0034】
通信部52は、無線通信アンテナを介して、作業者の保有する携帯端末53等の外部機器と無線通信可能となる。制御装置50は、通信部52を制御して携帯端末53と無線通信を行い、携帯端末53との間で各種情報を送受信する。
【0035】
携帯端末53は、コンバイン1の構成要素の一つであって、コンバイン1を遠隔操作可能な端末であり、例えば、タッチパネルを備えるタブレット端末やノート型のパーソナルコンピュータ等で構成される。例えば、携帯端末53は、コンバイン1の手動走行モード及び自動走行モードの何れかの走行モードを設定可能な画面(例えば、ホーム画面やモード設定画面)をタッチパネルに表示し、作業者の操作に応じて設定された走行モードをコンバイン1へ送信する。なお、携帯端末53と同様の操作装置が操縦部9に備えられてもよい。
【0036】
携帯端末53は、作業対象の圃場に係る圃場情報について、タッチパネルのタッチ操作等による入力操作を受け付けるように構成され、例えば、圃場情報を設定可能な圃場情報設定画面を表示する。携帯端末53は、圃場情報設定画面において、圃場情報に基づく圃場マップを表示しつつ、圃場マップ上にコンバイン1の走行経路を進行方向が分かるように表示することもできる。携帯端末53は、圃場情報設定画面で設定された圃場情報をコンバイン1へ送信する。
【0037】
携帯端末53は、コンバイン1の自動刈取走行の走行パターンの選択を受け付ける機能を有し、自動刈取走行の走行経路を作成する場合に、往復刈り又は回り刈りの走行パターンを選択する画面(例えば、走行選択画面)をタッチパネルに表示する。携帯端末53は、作業者の操作に応じて入力された走行パターン(往復刈り又は回り刈り)をコンバイン1へ送信して走行経路の作成を指示する。
【0038】
また、制御装置50は、記憶部51に記憶されたプログラムを実行することにより、圃場情報設定部60、走行経路作成部61、自動走行制御部62及び自動刈取制御部63として動作する。なお、走行経路作成部61、自動走行制御部62及び自動刈取制御部63は、本発明に係る自動運転方法の走行経路作成工程、自動走行制御工程及び自動刈取制御工程を実現するものである。なお、自動走行許可スイッチ34は、自動走行を許可するか否かを操作するための操作部として機能し、本発明に係る自動運転方法の操作工程を実現する。
【0039】
圃場情報設定部60は、作業対象の圃場に係る圃場情報を自動又は手動で設定して記憶部51に記憶する。例えば、圃場情報設定部60は、携帯端末53の圃場情報設定画面に対する圃場情報の入力操作に応じて、圃場情報を手動で設定する。あるいは、圃場情報設定部60は、サーバ(図示せず)との通信によって、サーバが記憶している圃場情報を受信して自動で設定してもよい。なお、圃場情報設定部60は、サーバから受信した圃場情報を携帯端末53の圃場情報設定画面によって編集可能にしてもよい。
【0040】
なお、他の例として、圃場情報設定部60は、作業対象の圃場を撮影した圃場画像を取得し、圃場画像を画像解析した結果に基づいて圃場情報を設定してもよい。また、圃場情報設定部60は、携帯端末53の操作に応じて設定した圃場情報や、サーバから受信した圃場情報と、圃場画像から解析した圃場情報と整合性をとることで、より正確な圃場情報を取得してもよい。
【0041】
圃場画像は、コンバイン1に備わる機体カメラによって撮影してもよく、基地局に備わる固定カメラによって撮影した画像を通信部52で受信してもよく、携帯端末53に備わる携帯カメラによって撮影した画像を通信部52で受信してもよく、ドローン等の空撮装置に備わる空撮カメラによって撮影した画像を通信部52で受信してもよい。圃場情報設定部60は、機体カメラ、固定カメラ、携帯カメラ又は空撮カメラのうち、1つのカメラの圃場画像から圃場情報を解析してもよく、2つ以上のカメラの圃場画像から圃場情報を解析してもよい。なお、制御装置50は、機体カメラ、固定カメラ、携帯カメラ又は空撮カメラによって撮影した圃場画像を操縦部9のモニタに表示させたり、携帯端末53へ送信して携帯端末53のモニタに表示させたりしてもよい。
【0042】
走行経路作成部61は、圃場をコンバイン1が自動運転で自動走行及び自動刈取(自動刈取走行)を行うために参照する走行経路を作成して記憶部51に記憶する。走行経路は、自動走行に関する走行設定だけでなく、自動刈取等の作業に関する作業設定も含む。走行設定は、圃場における走行位置に加えて、各走行位置での進行方向(操向方向及び前進又は後退)を含む。作業設定は、各走行位置での刈取の稼働又は停止、刈取速度及び刈取高さ、刈取条数、他の作業に関する情報を含む。
【0043】
走行経路作成部61は、圃場内の未刈領域に対して、走行しながら刈取を行う行程を直線状に設定し、複数の直線行程を組み合わせて走行経路を設定する。走行経路作成部61は、携帯端末53等の操作に応じて選択された走行パターン(往復刈り又は回り刈り)に応じた走行経路を作成する。例えば、走行経路作成部61は、未刈領域の内周に沿った行程の周回を中央側にずらしながら繰り返す回り刈りの走行経路や、未刈領域において複数の行程を往復する往復刈りの行程を作成する。走行経路作成部61は、複数の直線行程からなる一連の走行経路において、自動刈取走行を開始する開始位置と、自動刈取走行を完了する終了位置とを設定する。
【0044】
自動走行制御部62は、自動走行モードが設定されている場合、走行経路作成部61で作成された走行経路の走行設定に基づいて動力部8並びに走行部2を制御して、走行経路に応じた自動走行を実行させる。なお、コンバイン1は、ジャイロセンサ及び方位センサを備えてコンバイン1の変位情報及び方位情報を取得し、自動走行制御部62は、変位情報及び方位情報に基づいてコンバイン1の自動走行を調整してもよい。
【0045】
自動走行制御部62は、自動走行の実行中にハンドル29が操作されると、走行モードを自動走行モードから手動走行モードへ切り替える。また、自動走行制御部62は、自動走行の設定速度として、主変速レバー30の前後方向の位置に応じた前進設定速度又は定速の後退設定速度を設定する一方、前進自動走行の実行中に、主変速レバー30が操作されると、主変速レバー30の位置に応じて自動走行の設定速度を変更する。例えば、自動走行中に、前進速度変更領域36に位置する主変速レバー30がニュートラル側から前方へ倒されると、自動走行制御部62は、走行経路に設定された前進設定速度に拘わらず、前進設定速度を増速し、一方、前方からニュートラル側へ倒されると、走行経路に設定された前進設定速度を拘わらず、前進設定速度を減速する。
【0046】
自動刈取制御部63は、自動走行モードが設定されている場合、走行経路作成部61で作成された走行経路の作業設定に基づいて動力部8並びに刈取部3を制御して、走行経路に応じた自動刈取を実行させる。自動刈取制御部63は、刈取部3によって走行経路上の未刈穀稈を自動的に刈り取る。また、自動刈取制御部63は、自動刈取に伴い、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を制御して、刈取後の穀稈の脱穀、脱穀後の穀粒や藁屑の選別、選別後の穀粒の貯留、脱穀後の排藁の処理等を自動的に実行させる。
【0047】
特に、自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34の操作に応じたコンバイン1の自動走行動作を制御する。コンバイン1の自動走行動作について、図4のフローチャートを参照して説明する。自動走行制御部62は、自動走行モードが設定されていて(ステップS1:Yes)、コンバイン1が各種の自動走行開始条件を満たしている場合に(ステップS2:Yes)、自動走行を開始可能な状態、すなわち自動走行可能状態になる(ステップS3)。なお、自動走行モードが設定されていない場合(ステップS1:No)や、自動走行開始条件を満たしていない場合(ステップS2:No)には、自動走行動作は行われない。
【0048】
そして、自動走行制御部62は、自動走行可能状態の場合に、自動走行許可スイッチ34が操作(押圧)されていると(ステップS4:Yes)、自動走行が許可されて、自動走行を実行する(ステップS5)。一方、自動走行制御部62は、自動走行可能状態の場合に、自動走行許可スイッチ34が操作(押圧)されていないとき(ステップS4:No)、自動走行が許可されず、自動走行を実行しない。自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34が押圧されていて自動走行を実行している際に、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されると(ステップS6:Yes)、自動走行を停止(一時中断)する(ステップS7)。また、自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されて自動走行を停止した状態で、自動走行許可スイッチ34が再度押圧されると自動走行を再開する。このように自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されて自動走行を停止したとき、自動走行制御部62は、ステップS1へ移行してもよく、あるいは、自動走行許可スイッチ34の押圧の解除状態を記憶しつつ、自動走行許可スイッチ34の操作を待機するステップS4へ移行してもよい。
【0049】
なお、自動走行制御部62は、自動走行可能状態の場合には、自動走行開始条件を満たしていることや、自動走行許可スイッチ34の操作によって自動走行が実行されることを、操縦部9や携帯端末53のモニタの画面表示によって作業者へ報知するとよい。また、自動走行許可スイッチ34は、例えば、LEDを備えていて、コンバイン1が各種の自動走行開始条件を満たしていて、かつ自動走行制御部62が自動走行可能状態である場合と、その他の場合とで、LEDの発色を変えるように構成されてもよい。
【0050】
例えば、自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されてから、所定の継続時間又は継続距離の自動走行を継続し、その後、自動走行を停止するとよい。この場合、自動走行制御部62は、主変速レバー30の位置に応じた前進設定速度又は定速の後退設定速度よりも遅い速度を設定して自動走行を継続するとよく、また、自動走行を停止するまで、設定速度を徐々に減速してもよい。また、自動走行制御部62は、所定の継続時間又は継続距離の自動走行を継続している間でも、操縦部9や携帯端末53に備わる停車ボタンの操作に応じて、又は主変速レバー30の減速操作に応じて、即座に自動走行を停止してもよい。
【0051】
あるいは、自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されると、即座に自動走行を停止してもよい。なお、自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されて減速していることや、所定の継続時間又は継続距離の経過後に自動走行を停止することを、音声出力や、操縦部9や携帯端末53のモニタの画面表示によって作業者へ報知してもよい。
【0052】
自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されてから自動走行を継続するときには、主変速レバー30が操作されて設定速度の増速操作が行われた場合でも、その増速操作を設定速度に反映しない。この場合、自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されているときの設定速度の増速操作を、自動走行許可スイッチ34が再度押圧されて自動走行を再開するときに反映する。
【0053】
自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されてから自動走行を継続する所定の継続時間又は継続距離を、前進走行時に比べて後退走行時に短くし、若しくは、後退走行時に0にする。換言すれば、自動走行制御部62は、後退走行用の継続時間を前進走行用の継続時間よりも短く設定し、好ましくは、後退自動走行中に自動走行許可スイッチ34の押圧が解除された場合には、自動走行を継続せずに即座に停止するとよい。
【0054】
自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されてから自動走行を停止するまでの間、すなわち自動走行を継続する所定の継続時間又は継続距離の間に、操縦部9や携帯端末53の操作によって、コンバイン1の運転条件(例えば、走行の設定速度や操向、刈取の刈取高さ等)の変更操作が行われた場合には、継続時間又は継続距離を延長してよく、若しくは、継続時間又は継続距離のカウントをリセットしてよい。自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されている間の運転条件の変更操作は、自動走行の継続中に反映してもよいが、若しくは、自動走行許可スイッチ34が再度押圧されたときに反映してもよい。
【0055】
なお、継続時間又は継続距離の延長分は、継続時間又は継続距離の初回分と同じでよく、例えば、初回の継続時間が5秒であって、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されてから5秒以内に主変速レバー30が操作された場合、継続時間を5秒延長して10秒に設定する。また、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されてから10秒以内に別の操作が行われると、継続時間を5秒延長して15秒に設定する。
【0056】
あるいは、自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されてから所定の継続時間又は継続距離の間に、操縦部9や携帯端末53の操作によってコンバイン1の運転条件の変更操作が行われた場合、継続時間又は継続距離の延長に代えて、自動走行の停止を禁止してもよい。
【0057】
また、自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されてから自動走行を継続しているときに、走行経路に沿った前進区間又は後退区間が終了して旋回区間に入る場合には、自動走行を停止するとよい。
【0058】
上記のように、本実施形態によれば、作業車両の例であるコンバイン1は、予め設定された走行経路に基づいて自動走行を行う作業車両であって、自動走行を許可する自動走行許可操作部材の例である自動走行許可スイッチ34と、走行経路に基づく自動走行を制御する自動走行制御部62として機能する制御装置50と、を備える。自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34が操作(押圧)されている間、走行経路に基づく自動走行を実行する。
【0059】
これにより、コンバイン1は、作業者が自動走行許可スイッチ34を操作(押圧)している間に走行経路に基づく自動走行を実行するので、自動走行許可スイッチ34に誤って触れただけでは自動走行が継続されることがなく、作業者の意図しない自動走行を抑制することができる。
【0060】
なお、上記した実施形態では、自動走行許可スイッチ34は押圧されているときにオンになり、自動走行制御部62は自動走行許可スイッチ34が押圧されているときに自動走行を実行する例を説明したが、本発明は、この例に限定されない。例えば、他の例では、自動走行制御部62は、自動走行モードが設定されていてコンバイン1が各種の自動走行開始条件を満たしている場合、すなわち自動走行可能状態である場合に、コンバイン1が前進自動走行の経路上にいるときには、自動走行許可スイッチ34の押圧操作に拘わらず、自動走行を実行してもよい。一方、自動走行制御部62は、自動走行可能状態である場合に、コンバイン1が前進自動走行に比べて危険性が高い経路(例えば、後退自動走行の経路等)上にいるときには、自動走行許可スイッチ34が押圧されているときに、自動走行が許可されて、自動走行を実行してもよい。
【0061】
なお、上記した実施形態では、作業者が自動走行許可スイッチ34を操作(押圧)しているときにオンになり、自動走行制御部62が自動走行を実行する例を説明したが、本発明は、この例に限定されない。例えば、他の例では、自動走行許可スイッチ34は、所定時間(例えば、5秒)以上長押しすることで、自動走行許可スイッチ34を離した後も自動走行許可スイッチ34が操作(押圧)されている状態(押圧ロック状態)になるように構成されてよい。この場合、もう一度自動走行許可スイッチ34を操作(押圧)することで押圧ロック状態が解除される。
【0062】
自動走行許可スイッチ34が押圧ロック状態の場合、自動走行制御部62は、自動走行を連続して実行することになるが、自動走行を行う経路が旋回区間に入るときや前進区間から後退区間に入るときには、押圧ロック状態を維持してもよいが、押圧ロック状態を解除して自動走行を停止してもよい。また、自動走行許可スイッチ34は、前進自動走行の場合には、押圧ロック状態への切り替えを可能とし、一方、後退自動走行の場合には、押圧ロック状態への切り替えを禁止してもよい。
【0063】
本実施形態のコンバイン1において、自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34が押圧されていて所定の設定速度で自動走行を実行している際に、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除された場合、設定速度よりも遅い速度で自動走行を継続する。
【0064】
これにより、作業者が自動走行許可スイッチ34を離しても、コンバイン1は、自動走行許可スイッチ34が押圧されている場合よりも遅い速度で自動走行を継続するので、作業者は、自動走行を停止することなく、落ち着いて運転条件の変更操作等を行うことができる。
【0065】
本実施形態のコンバイン1において、自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34が押圧されていて所定の設定速度で自動走行を実行している際に、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されると共に設定速度の増速操作が行われた場合、その増速操作を設定速度に反映せず、自動走行許可スイッチ34が再度押圧されてから増速操作を設定速度に反映する。
【0066】
これにより、作業者が自動走行許可スイッチ34を離している間に主変速レバー30等によって設定速度の増減操作が行われても、コンバイン1の走行速度が増減されないので、作業者は、自動走行を停止することなく、落ち着いて運転条件の変更操作等を行うことができる。
【0067】
本実施形態のコンバイン1において、自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34が押圧されていて所定の設定速度で自動走行を実行している際に、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除された場合、所定の継続時間の経過後に自動走行を停止する。
【0068】
これにより、作業者が自動走行許可スイッチ34を離してから所定時間経過後にコンバイン1が停車するので、作業者の意図しない自動走行が継続されることを抑制することができる。
【0069】
本実施形態のコンバイン1において、自動走行制御部62は、自動走行許可スイッチ34の押圧が解除されて自動走行を停止するまでの間に、運転条件の変更操作が行われた場合、継続時間を延長する。
【0070】
これにより、作業者が自動走行許可スイッチ34を離している間のコンバイン1の自動走行は、作業者が運転条件の変更操作をすれば継続時間が延長されるので、作業者が運転条件を変更しているときに、作業者の意図しないコンバイン1の停車を抑制することができる。
【0071】
本実施形態のコンバイン1において、自動走行制御部62は、後退走行用の継続時間を前進走行用の継続時間よりも短く設定する。
【0072】
これにより、コンバイン1の後退自動走行は、前進自動走行に比べて視界が悪く安全性が低いために停車の緊急性が高いので、即座に停車させることができる。
【0073】
本実施形態のコンバイン1において、自動走行許可スイッチ34は、コンバイン1の操縦部9のアームレスト32の前方の手摺部33に配置される。
【0074】
これにより、作業者はアームレスト32に肘をかけた状態で自動走行許可スイッチ34を操作できるので、コンバイン1の自動走行の実行操作をするための作業者の負担を軽減することができる。また、作業者は手摺部33を握った状態で自動走行許可スイッチ34を操作することができるので、自動走行中の作業者の安全性を確保することができる。
【0075】
上記した実施形態では、運転席28の右側にアームレスト32及び手摺部33を設けて、自動走行許可スイッチ34を右側の手摺部33に設ける例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、他の例では、運転席28の左側にアームレスト32及び手摺部33を設けて、自動走行許可スイッチ34を左側の手摺部33に設けてもよい。若しくは、他の例では、運転席28の左右両側にアームレスト32及び手摺部33を設けて、自動走行許可スイッチ34を左右両側の手摺部33に設けてもよい。
【0076】
あるいは、他の例では、操縦部9のキャビン内で、アームレスト32及び手摺部33以外の位置(例えば、ハンドル29や主変速レバー30等)に自動走行許可スイッチ34を設けてもよく、又は携帯端末53に自動走行許可スイッチ34を設けてもよい。
【0077】
また、他の実施形態では、右側の手摺部33、左側の手摺部33、ハンドル29、主変速レバー30、携帯端末53等の複数の位置に、複数の自動走行許可スイッチ34を設けてもよい。この場合、自動走行制御部62は、少なくとも一つの自動走行許可スイッチ34が押圧されている場合、自動走行を実行し、すなわち自動走行を停止しない。これにより、作業者の意図しないコンバイン1の停車を抑制することができる。
【0078】
あるいは、他の実施形態では、右側の手摺部33、左側の手摺部33、ハンドル29、主変速レバー30、携帯端末53等の複数(例えば、二つ)の位置に、複数(例えば、二つ)の自動走行許可スイッチ34を設けたとき、自動走行制御部62は、全ての自動走行許可スイッチ34が押圧されている場合、所定の設定速度で自動走行を実行する。一方、少なくとも一つの自動走行許可スイッチ34が押圧されている場合、自動走行制御部62は、設定速度よりも遅い速度で自動走行を実行する。また、何れの自動走行許可スイッチ34も押圧されていない場合、自動走行制御部62は、自動走行を停止し、すなわちコンバイン1を停車する。
【0079】
これにより、作業者は何れか一つの自動走行許可スイッチ34を押していればコンバイン1が低速で自動走行を継続するので、作業者は、自動走行を停止することなく、落ち着いて運転条件の変更操作等を行うことができる。
【0080】
上記した実施形態では、自動走行制御部62は、自動走行モードが設定されると共にコンバイン1が各種の自動走行開始条件を満たしていて自動走行可能状態になっている場合に、自動走行許可スイッチ34が押圧されていると、自動走行を実行する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、他の実施形態では、自動走行制御部62は、自動走行可能状態になっている場合であっても、操縦部9や携帯端末53に備わる自動走行開始ボタンの操作に応じて開始指示を受信してから、自動走行許可スイッチ34が押圧されていると、自動走行を実行するように構成されてもよい。
【0081】
また、上記した実施形態では、自動走行許可スイッチ34が押しボタンで構成される例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、自動走行許可スイッチ34は、手摺部33やハンドル29と一体的に設けられるレバーで構成され、作業者がレバーを手摺部33やハンドル29と共に握ることによって自動走行許可スイッチ34が押圧された状態になってもよい。
【0082】
例えば、携帯端末53は、コンバイン1の自動走行(自動刈取走行)の開始を受け付ける機能を有し、自動走行の開始ボタンを有する自動走行実行画面をタッチパネルに表示する。自動走行実行画面は、自動走行モードが設定されると共にコンバイン1が各種の自動走行開始条件を満たす場合に、開始ボタンを操作可能に表示する。携帯端末53は、自動走行実行画面の開始ボタンの操作に応じて自動走行の開始指示をコンバイン1へ送信する。
【0083】
なお、上記した実施形態では、コンバイン1の制御装置50が圃場情報設定部60、走行経路作成部61、自動走行制御部62及び自動刈取制御部63として機能する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、他の実施形態では、携帯端末53が圃場情報設定部60、走行経路作成部61、自動走行制御部62及び自動刈取制御部63として機能するように構成されてもよい。換言すれば、本発明に係る自動運転システム は、コンバイン1の制御装置50及び携帯端末53の少なくとも一つを適用して、圃場情報設定部60、走行経路作成部61、自動走行制御部62及び自動刈取制御部63として機能し、自動走行制御部62は自動走行許可スイッチ34等の自動走行許可操作部材が操作されている間、走行経路に基づく自動走行を実行すればよい。
【0084】
上記した実施形態では、本発明の作業車両が、自脱型のコンバイン1で構成される例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、本発明の作業車両は、普通型のコンバイン、トラクタ、乗用草刈機、乗用田植機、運搬車、除雪車、ホイールローダ等の乗用作業車両や、無人草刈機などの無人作業車両で構成されてもよい。
【0085】
なお、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自動運転方法、作業車両及び自動運転システムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 コンバイン(作業車両)
2 走行部
9 操縦部
28 運転席
29 ハンドル
30 主変速レバー
32 アームレスト
33 手摺部
34 自動走行許可スイッチ(自動走行許可操作部材)
50 制御装置
51 記憶部
53 携帯端末
60 圃場情報設定部
61 走行経路作成部
62 自動走行制御部
63 自動刈取制御部
図1
図2
図3
図4