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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146082
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/08 20060101AFI20220928BHJP
   H02K 7/06 20060101ALI20220928BHJP
   H02K 16/00 20060101ALI20220928BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20220928BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20220928BHJP
   F16J 15/3236 20160101ALI20220928BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H02K7/08 Z
H02K7/06 A
H02K16/00
F16H25/20 Z
F16H25/24 L
F16J15/3236
F16J15/447
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046875
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平尾 基裕
(72)【発明者】
【氏名】小泉 和則
【テーマコード(参考)】
3J006
3J042
3J062
5H607
【Fターム(参考)】
3J006AA01
3J006AB01
3J006AE25
3J006AE34
3J006AE50
3J006CA01
3J042AA04
3J042AA12
3J042CA10
3J042CA15
3J042DA20
3J062AB24
3J062BA16
3J062BA23
3J062CD02
3J062CD23
3J062CD66
5H607AA05
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607BB21
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE53
5H607JJ10
(57)【要約】
【課題】防水性能の低下を抑制することのできるアクチュエータを提供すること。
【解決手段】スプライン溝部633と雄ねじ部533とが形成される軸部材SFと、
軸部材SFをスプライン溝部633に沿って案内すると共に、軸部材SFを中心軸AXの軸回り方向に回転させるスプライン外筒61と、軸部材SFにおけるスプライン溝部633側の端部に固定されるアーム取付部材70と、スプライン外筒61及び軸部材SFを覆うスプライン外筒用ハウジング43と、アーム取付部材70における連結部71から軸部材SFが位置する側に軸線方向に沿って延び、スプライン外筒用ハウジング43から離隔してスプライン外筒用ハウジング43を覆う筒状部72と、筒状部72の内周面に配置されてスプライン外筒用ハウジング43に接触する摺動シール77と、筒状部72の内周面における摺動シール77よりも連結部71寄りに配置される補助シール部材78と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って延びるスプライン溝部と、中心軸を中心とする螺旋状に形成される雄ねじ部とが形成される軸部材と、
前記軸部材の前記スプライン溝部と係合して前記軸部材を前記スプライン溝部に沿って前記軸線方向に案内すると共に、前記軸部材を前記中心軸の軸回り方向に回転させるスプライン外筒と、
前記軸部材における前記スプライン溝部側の端部と前記雄ねじ部側の端部との両端部のうち、前記スプライン溝部側の端部に固定されるアーム取付部材と、
前記スプライン外筒及び前記軸部材における前記スプライン外筒よりも前記アーム取付部材が固定される側の端部側の部分を覆うスプライン外筒用ハウジングと、
内径が前記スプライン外筒用ハウジングの外径よりも大きい円筒形状に形成され、前記アーム取付部材における前記軸部材に連結される部分である連結部から前記軸部材が位置する側に前記軸線方向に沿って延び、前記スプライン外筒用ハウジングから離隔して前記スプライン外筒用ハウジングを覆う筒状部と、
前記筒状部の内周面に配置されて前記スプライン外筒用ハウジングに接触する摺動シールと、
内径が前記筒状部の内径よりも小さい円筒形状で形成され、前記筒状部の内周面における前記摺動シールよりも前記連結部寄りに配置される補助シール部材と、
を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記補助シール部材は、前記軸線方向に離隔して複数が配置される
請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記補助シール部材には、内周面に円周方向に延びる中間溝部が形成される
請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記補助シール部材は、前記軸部材に連結される前記連結部が前記スプライン外筒用ハウジングから離れる方向へ前記軸部材が前記軸線方向に沿って移動した際における、前記連結部と前記スプライン外筒用ハウジングとの距離が最大となる状態において、
前記軸線方向における前記補助シール部材の前記連結部側の端部が、前記軸線方向における前記スプライン外筒用ハウジングの前記連結部側の端部よりも前記摺動シール寄りに位置する
請求項1から3のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
第1ロータを有する第1モータと、
前記第1ロータと同軸に配置される第2ロータを有する第2モータと、
前記軸部材の前記雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部が設けられるナット部材と、
を備え、
前記軸部材は、前記第1ロータ及び前記第2ロータを前記軸線方向に貫通することにより、前記第1ロータと前記第2ロータとに対して同軸に配置され、
前記スプライン外筒は、前記第1ロータに連結されて前記第1ロータと共に回転することにより、前記軸部材を前記中心軸の軸回り方向に回転させ、
前記ナット部材は、前記雌ねじ部を前記軸部材の前記雄ねじ部に噛み合わせて配置され、前記第2ロータに連結されて前記第2ロータと共に回転することにより、前記軸部材を前記軸線方向に移動させる
請求項1から4のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
回転運動と直動運動を行うアクチュエータとして、例えば、特許文献1や特許文献2に記載のアクチュエータが知られている。特許文献1、2に記載のアクチュエータは、ボールねじ及びボールスプラインを有し、ボールねじのネジ軸とボールスプラインのシャフトとが連結された軸部材が用いられる。この構成では、ボールねじのナットが回転することで軸部材が直動運動を行い、ボールスプラインのスプライン外筒が回転することで軸部材が回転運動を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-17160号公報
【特許文献2】特開2020-61926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクチュエータは、アクチュエータが設置される環境によっては、水や油等の液体がかかる環境で使用されることもある。例えば、アクチュエータが、工作機械に設置された場合、工作機械におけるワークの切削加工時に、切削部分にかける切削液が、アクチュエータにまでかかるような環境で使用されることもある。このような液体がかかる環境で使用されるアクチュエータの防水構造としては、特許文献1、2に記載されているような、アクチュエータにおけるワークを移送するアームを移動させる移動部材と固定部材との間の部分に、移動部材と一体となって移動すると共に双方の間の隙間を塞ぐシール部材を配置することが挙げられる。しかし、移動部材と固定部材との間の隙間をシール部材によって塞ぐことにより防水性能を確保する場合、移動部材が固定部材に対して相対移動した際に、シール部材は固定部材に擦れながら移動するため、摩耗する可能性があり、防水性能が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、防水性能の低下を抑制することのできるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のアクチュエータは、軸線方向に沿って延びるスプライン溝部と、中心軸を中心とする螺旋状に形成される雄ねじ部とが形成される軸部材と、前記軸部材の前記スプライン溝部と係合して前記軸部材を前記スプライン溝部に沿って前記軸線方向に案内すると共に、前記軸部材を前記中心軸の軸回り方向に回転させるスプライン外筒と、前記軸部材における前記スプライン溝部側の端部と前記雄ねじ部側の端部との両端部のうち、前記スプライン溝部側の端部に固定されるアーム取付部材と、前記スプライン外筒及び前記軸部材における前記スプライン外筒よりも前記アーム取付部材が固定される側の端部側の部分を覆うスプライン外筒用ハウジングと、内径が前記スプライン外筒用ハウジングの外径よりも大きい円筒形状に形成され、前記アーム取付部材における前記軸部材に連結される部分である連結部から前記軸部材が位置する側に前記軸線方向に沿って延び、前記スプライン外筒用ハウジングから離隔して前記スプライン外筒用ハウジングを覆う筒状部と、前記筒状部の内周面に配置されて前記スプライン外筒用ハウジングに接触する摺動シールと、内径が前記筒状部の内径よりも小さい円筒形状で形成され、前記筒状部の内周面における前記摺動シールよりも前記連結部寄りに配置される補助シール部材と、を備える。
【0007】
この構成によれば、スプライン外筒用ハウジングを覆う筒状部の内周面における、摺動シールよりもアーム取付部材の連結部寄りに補助シール部材を配置することにより、摺動シールが摩耗した際に、液体がスプライン外筒用ハウジングと筒状部との間の隙間を通ってアクチュエータ内に入り込むことを抑制できる。これにより、摺動シールが摩耗した際における防水性能を確保することができ、防水性能の低下を抑制することができる。
【0008】
望ましい形態として、前記補助シール部材は、前記軸線方向に離隔して複数が配置される。
【0009】
この構成によれば、スプライン外筒用ハウジングと筒状部との間の隙間における補助シール部材が配置されている部分に液体が入り込んだ際における液体の流路の幅を、補助シール部材が位置する部分と、補助シール部材同士の間の部分とで大きく変化させることができる。これにより、液体の流れを乱すことができるため、液体が流れる際における抵抗を大きくすることができ、液体がスプライン外筒用ハウジングと筒状部との間の隙間を通ってアクチュエータ内に入り込むことを、より確実に抑制できる。従って、より確実に防水性能の低下を抑制することができる。
【0010】
望ましい形態として、前記補助シール部材には、内周面に円周方向に延びる中間溝部が形成される。
【0011】
この構成によれば、スプライン外筒用ハウジングと筒状部との間の隙間における補助シール部材が配置されている部分に液体が入り込んだ際における液体の流路の幅を、中間溝部が形成されている部分と、中間溝部以外の部分とで大きく変化させることができる。これにより、液体の流れを乱すことができるため、液体が流れる際における抵抗を大きくすることができ、液体がスプライン外筒用ハウジングと筒状部との間の隙間を通ってアクチュエータ内に入り込むことを、より確実に抑制できる。従って、より確実に防水性能の低下を抑制することができる。
【0012】
望ましい形態として、前記補助シール部材は、前記軸部材に連結される前記連結部が前記スプライン外筒用ハウジングから離れる方向へ前記軸部材が前記軸線方向に沿って移動した際における、前記連結部と前記スプライン外筒用ハウジングとの距離が最大となる状態において、前記軸線方向における前記補助シール部材の前記連結部側の端部が、前記軸線方向における前記スプライン外筒用ハウジングの前記連結部側の端部よりも前記摺動シール寄りに位置する。
【0013】
この構成によれば、連結部とスプライン外筒用ハウジングとの距離が最大となる状態において、補助シール部材における連結部側の端部が、スプライン外筒用ハウジングにおける連結部側の端部よりも摺動シール寄りに位置するため、軸部材の移動状態に関わらず、筒状部とスプライン外筒用ハウジングとの間の防水性能を、補助シール部材により確保することができる。これにより、より確実に防水性能の低下を抑制することができる。
【0014】
望ましい形態として、第1ロータを有する第1モータと、前記第1ロータと同軸に配置される第2ロータを有する第2モータと、前記軸部材の前記雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部が設けられるナット部材と、を備え、前記軸部材は、前記第1ロータ及び前記第2ロータを前記軸線方向に貫通することにより、前記第1ロータと前記第2ロータとに対して同軸に配置され、前記スプライン外筒は、前記第1ロータに連結されて前記第1ロータと共に回転することにより、前記軸部材を前記中心軸の軸回り方向に回転させ、前記ナット部材は、前記雌ねじ部を前記軸部材の前記雄ねじ部に噛み合わせて配置され、前記第2ロータに連結されて前記第2ロータと共に回転することにより、前記軸部材を前記軸線方向に移動させる。
【0015】
この構成によれば、軸部材を中心軸の軸回り方向に回転させる第1ロータと、軸部材を中心軸の軸線方向に移動させる第2ロータとを軸部材が貫通するため、軸部材に対して軸回り方向の回転と軸線方向の移動とを行わせるアクチュエータを、コンパクトに構成することができる。これにより、アクチュエータの省スペース化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係るアクチュエータは、防水性能の低下を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、第1実施形態に係るアクチュエータの断面図である。
図2図2は、図1に示すアクチュエータの上端付近を拡大した断面図である。
図3図3は、図2に示すアーム取付部材周りの詳細図である。
図4図4は、図1に示すアクチュエータの下端付近を拡大した断面図である。
図5図5は、図1に示す軸部材が上昇した状態を示す説明図である。
図6図6は、摺動シールが摩耗した場合における摺動シール周りの模式図である。
図7図7は、軸部材が上昇した際におけるアクチュエータの上端付近を拡大した断面図である。
図8図8は、第2実施形態のアクチュエータの要部断面図であり、摺動シール周りの模式図である。
図9図9は、第3実施形態のアクチュエータの要部断面図であり、摺動シール周りの模式図である。
図10図10は、第4実施形態に係るアクチュエータの断面図である。
図11図11は、図10に示す二軸一体型モータの詳細図である。
図12図12は、回転軸と直交する平面による二軸一体型モータの断面図である。
図13図13は、図10に示す第4実施形態に係るアクチュエータの上端付近を拡大した断面図である。
図14図14は、図10に示す第4実施形態に係るアクチュエータ1Aの軸部材が上昇した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るアクチュエータ1の断面図である。図1の断面は、後述する第1ロータ及び第2ロータの中心軸AXを含む平面による断面である。
【0020】
図1に示すように、アクチュエータ1は、例えば、ピックアンドプレース装置として用いられる。アクチュエータ1は、アーム部80と、第1モータM1と、第2モータM2と、軸部材SFと、スプライン外筒61と、ナット部材51と、を備える。
【0021】
以下、Z方向に平行な方向であって、第1モータM1からアーム部80に向けた方向を上方とし、アーム部80から第1モータM1に向けた方向を下方として説明する。また、アーム部80の中心軸AXの軸線方向は、Z方向と同一とする。
【0022】
アーム部80は、例えば、単一のアームのみを有する片持ちのアームである。アクチュエータ1は、例えば、アーム部80の中心軸AXをZ方向に向けた状態で固定台STに固定されている。アーム部80は、アーム取付部材70の上に固定される。アーム取付部材70は、後述するシャフト63の上端にボルトを介して固定される。アクチュエータ1は、アーム部80をZ方向(直動方向、中心軸AXの軸線方向)に上下させ、アーム部80をZ方向と直交する平面内で、中心軸AXの軸回り方向に回転させる。アーム部80には図示しないワークが搭載されるため、ワークが所望の位置に移送される。
【0023】
第1モータM1は、第1ステータ10と、第1ロータ20と、第1モータハウジング40と、第1回転検出部101と、を有する。
【0024】
第1ステータ10の径方向内側には、第1ステータ保持体11が配置される。第1ステータ10は、第1ステータ保持体11に固定される。第1ロータ20は、第1ステータ10の外周側に配置される。第1ロータ20は、中心軸AXを中心として回転する。第1ロータ20は、第1ロータブラケット21と、第1ロータブラケット21の径方向内側に固定され永久磁石を有する第1ロータコア22とを有する。第1ロータブラケット21は、中心軸AXを中心とする筒状に形成されている。また、第1ロータブラケット21は、第1軸受31の外輪を支持する外輪押さえ21aを有する。
【0025】
第1ステータ10及び第1ロータ20は、中心軸AXを中心として同軸に配置されている。第1ロータ20は、第1ステータ10及び第1ステータ保持体11の径方向外側に配置され、第1ステータ10に対して相対回転する。換言すると、第1ロータ20は、第1軸受31を介して、第1ステータ10及び第1ステータ保持体11に回転可能に支持される。第1ステータ保持体11は、ボルトを介して第1モータハウジング40に固定されている。第1ステータ10は、中心軸AXの周りに筒状に設けられている。
【0026】
第1モータハウジング40は、例えば円筒状に形成され、第1モータM1を収容する。第1モータハウジング40の上端は、開口しており、当該開口部には蓋部材111が設けられる。蓋部材111は、ボルトを介して第1ロータブラケット21の外輪押さえ21aに固定される。蓋部材111の径方向中央部には貫通孔が設けられ、貫通孔はスプライン外筒61で覆われており、スプライン外筒61は、蓋部材111にボルトを介して固定される。
【0027】
また、第1モータハウジング40の上端には、径方向外側に広がる取付用フランジ40aが設けられる。取付用フランジ40aは、固定台STの上面に載置され、ボルトを介して固定台STに固定可能である。蓋部材111の外周端と第1モータハウジング40の内周端との間には、微小な隙間が形成され、蓋部材111が第1モータハウジング40に対して回転可能となる。
【0028】
第1回転検出部101は、例えば、レゾルバである。第1回転検出部101は、第1モータM1の回転状態を検出する。第1回転検出部101は、第1軸受31の上側に配置される。
【0029】
第2モータM2は、第1モータM1に対して中心軸AXの軸線方向に並んで配置される。第2モータM2は、第2ステータ10Aと、第2ロータ20Aと、第2モータハウジング40Aと、第2回転検出部101Aと、を有する。第1モータM1及び第2モータM2は、円筒状のダイレクトドライブモータである。即ち、第1モータM1が有する第1ロータ20と、第2モータM2が有する第2ロータ20Aとは、いずれも円筒状の形状で形成されており、第1モータM1や第2モータM2の駆動時は、円筒状の第1ロータ20や第2ロータ20Aが、中心軸AXを中心として回転をする。軸部材SFは、第1ロータ20及び第2ロータ20Aを軸線方向に貫通することにより、第1ロータ20と第2ロータ20Aとに対して同軸に配置される。
【0030】
第2ロータ20Aは、第2ステータ10Aの外周側に配置される。第2ロータ20Aは、中心軸AXを中心として回転する。即ち、第2ロータ20Aの中心軸は、第1ロータ20の中心軸AXと同軸である。第2ロータ20Aは、第2ロータブラケット21Aと、第2ロータブラケット21Aの径方向内側に固定され永久磁石を有する第2ロータコア22Aとを有する。第2ロータブラケット21Aは、中心軸AXを中心とする筒状に形成されている。第2ステータ10A及び第2ロータ20Aは、中心軸AXを中心として同軸に配置されている。
【0031】
第2ステータ10Aの径方向内側には、第2ステータ保持体11Aが配置される。第2ステータ10Aは、第2ステータ保持体11Aに固定される。第2ロータ20Aは、第2ステータ10A及び第2ステータ保持体11Aの径方向外側に配置され、第2ステータ10A及び第2ステータ保持体11Aに対して相対回転する。換言すると、第2ロータ20Aは、第2軸受32を介して、第2ステータ10A及び第2ステータ保持体11Aに回転可能に支持される。第2ステータ10Aは、第2ステータ10Aの径方向内側に配置された第2ステータ保持体11Aに固定されている。第2ステータ保持体11Aは、ボルトを介して第2モータハウジング40Aに固定されている。第2ステータ10Aは、中心軸AXの周りに筒状に設けられている。
【0032】
ここで、軸部材SFについて説明する。軸部材SFは、上方のシャフト63と、下方のネジ軸53と、を有する。シャフト63は、アーム取付部材70から中心軸AXの軸線方向に沿って連結部100まで延びている。連結部100は、第2回転検出部101Aと並ぶ位置に設けられる。シャフト63は、縮径部63aと大径部631と小径部632とを有し、一体になって構成される。縮径部63aは、シャフト63におけるネジ軸53が位置する側の端部の反対側に位置しており、直径が大径部631の直径よりも小さい径で形成されている。即ち、縮径部63aは、シャフト63の上端に位置しており、シャフト63におけるアーム取付部材70が取り付けられる部分に形成されている。
【0033】
大径部631は、軸部材SFが最も下方に位置する状態において、アーム取付部材70から第1モータハウジング40の下底部40b付近まで延びている。大径部631は、縮径部63aの下側に配置される第1大径部631aと、第1大径部631aの下端と小径部632の上端との間に位置する第2大径部631bとを有する。第2大径部631bの外周には、中心軸AXの軸線方向に沿って延びるスプライン溝部633が周方向に間隔をおいて複数設けられる。スプライン外筒61の内周側には、図示しないが、スプライン溝部633に係合可能な複数の凸部を有するスプライン部が設けられる。第2大径部631bは、スプライン外筒61の内側を通して配置され、第2大径部631bに形成されるスプライン溝部633は、スプライン外筒61の内周側に設けられるスプライン部と係合する。
【0034】
このように、軸部材SFは、第1ロータ20から第2ロータ20Aの反対側に向けて軸線方向の一方である上方に突出する第1部分S1を有し、第1部分S1には、軸線方向に沿って延びるスプライン溝部633が設けられる。スプライン溝部633とスプライン部とが複数のボールを介して係合することで、スプライン部に沿って軸部材SFが軸線方向に案内されると共に、軸部材SFは第1ロータ20と共に回転することにより軸部材SFが中心軸の軸回り方向に回転可能となる。換言すると、スプライン外筒61は、軸部材SFのスプライン溝部633と係合して軸部材SFをスプライン溝部633に沿って中心軸AXの軸線方向に案内すると共に、軸部材SFを中心軸AXの軸回り方向に回転させることが可能になっている。
【0035】
また、スプライン外筒61は、蓋部材111を介して第1ロータ20の第1ロータブラケット21に連結されており、即ち、スプライン外筒61は、蓋部材111を介して第1ロータ20に連結されている。これにより、スプライン外筒61は、第1モータM1の駆動時には、第1ロータ20と一体となって回転することが可能になっており、第1ロータ20と共に回転することにより、軸部材SFを中心軸AXの軸回り方向に回転させることができる。
【0036】
なお、シャフト63の小径部632は、大径部631の下端から連結部100まで延びている。このように、第1部分S1では、ころがり案内のボールスプラインが適用される。
【0037】
ネジ軸53は、連結部100からストッパ55まで延びている。ネジ軸53は、上方の大径部531と、下方の小径部532とを有する。ネジ軸53の大径部531の先端部(図1の上端部)には、上方に突出する細径部531aが設けられる。細径部531aの外周には、雄ねじが設けられる。シャフト63の小径部632の下端部には、凹部632aが設けられる。凹部632aの内周には、細径部531aの雄ねじと噛み合う雌ねじが設けられる。凹部632aの内周の雌ねじは、細径部531aの雄ねじと噛み合っている。これにより、シャフト63の小径部632とネジ軸53の大径部531とが一体に連結される。即ち、シャフト63とネジ軸53とがねじ締結によって連結される。なお、大径部531の外周には雄ねじ部533が形成される。即ち、軸部材SFは、第2ロータ20Aから第1ロータ20の反対側に向けて軸線方向の他方である下方に突出する第2部分S2を有し、第2部分S2には、中心軸AXを中心とする螺旋状に形成される雄ねじ部533が設けられる。なお、小径部532の外周には雄ねじ部が設けられていない。また、軸部材SFにおけるスプライン溝部633の径D1は、雄ねじ部533の径D2よりも大きい。なお、スプライン溝部633の径D1は、大径及び小径のうちの大径である。雄ねじ部533の径D2は、外径及び内径(谷径)のうちの外径である。
【0038】
第2モータハウジング40Aは、例えば円筒状に形成され、第2モータM2を収容する。第2モータハウジング40Aの上端は、開口しており、当該開口部には軸部材SFが貫通して設けられる。開口部の外周には、中心軸AXの軸回り方向に環状に延びる上底部40Aaが設けられる。上底部40Aaは、第1モータハウジング40の下底部40bと当接し下底部40bにボルトを介して固定されている。第2モータハウジング40Aの下底部40Abも開口しており、当該開口部には、ナット用ハウジング42が取り付けられる。
【0039】
ナット用ハウジング42は、上端フランジ42aと、上端フランジ42aの内周端から下方に延びる筒状に形成された筒状部42bとを有する。上端フランジ42aは、第2モータハウジング40Aの下底部40Abにボルトを介して固定されている。
【0040】
小径部532の下端には、ストッパ55がナット56によって取り付けられている。ナット用ハウジング42の内方には、ナット部材51と、第2連結ブラケット45とが収容される。
【0041】
ナット部材51の内周側には、雌ねじ部が設けられる。雌ねじ部は、軸部材SFの第2部分S2の雄ねじ部533と複数のボールを介して噛み合う。このため、ナット部材51は、内周側の雌ねじ部を軸部材SFの雄ねじ部533に噛み合わせて配置される。ナット部材51の上方寄りの径方向外側の位置には、第2連結ブラケット45が配置されており、ナット部材51は、ボルトを介して第2連結ブラケット45に固定される。第2連結ブラケット45の上端には、径方向外側に広がるフランジ45aが設けられ、フランジ45aはボルトを介して第1連結ブラケット46に固定される。このように、第2部分S2では、ころがり案内のボールねじが適用される。
【0042】
第1連結ブラケット46は、ボルトを介して第2ロータブラケット21Aに固定される。このように、ナット部材51と、第2連結ブラケット45と、第1連結ブラケット46と、第2ロータブラケット21Aとは、一体になって回転可能である。詳細には、ナット部材51、第2連結ブラケット45、第1連結ブラケット46及び第2ロータブラケット21Aは、第2軸受32を介して、第2ステータ10A及び第2ステータ保持体11Aに対して回転可能に支持される。ナット部材51は、このように、第2連結ブラケット45と第1連結ブラケット46とを介して第2ロータブラケット21Aに連結されており、即ち、第2ロータ20Aに連結されている。このため、ナット部材51は、第2モータM2の駆動時には、第2ロータ20Aと一体となって、第2ロータ20Aと共に回転することが可能になっている。
【0043】
また、ナット部材51は、内周側の雌ねじ部が、軸部材SFの雄ねじ部533に噛み合わせて配置されている。このため、ナット部材51が中心軸AXの軸回りに回転した際には、ナット部材51は、軸部材SFを中心軸AXの軸線方向に移動させることが可能になっている。従って、ナット部材51は、第2モータM2の駆動時には、第2ロータ20Aと共に回転することにより、軸部材SFを中心軸AXの軸線方向に移動させることができる。
【0044】
第2回転検出部101Aは、例えば、レゾルバである。第2回転検出部101Aは、第2モータM2の回転状態を検出する。第2回転検出部101Aは、軸方向において連結部100に並んだ位置に配置される。
【0045】
図2は、図1に示すアクチュエータ1の上端付近を拡大した断面図である。第1モータハウジング40の上端には、ボルトを介してスプライン外筒用ハウジング43が固定されている。スプライン外筒用ハウジング43は、第1筒状部431と、第2筒状部432と、を有する。スプライン外筒用ハウジング43の内側には、軸部材SFにおける第1部分S1、即ち、シャフト63における第1大径部631a及び第2大径部631bと、内側に第2大径部631bが通るスプライン外筒61とが配置される。つまり、スプライン外筒用ハウジング43は、スプライン外筒61及び軸部材SFにおけるスプライン外筒61よりもアーム取付部材70が固定される側の端部側の部分を覆う。詳しくは、スプライン外筒用ハウジング43の第1筒状部431は、スプライン外筒61を覆い、スプライン外筒用ハウジング43の第2筒状部432は、軸部材SFにおけるスプライン外筒61よりもアーム取付部材70が固定される側の端部側でスプライン外筒61から露出する部分を覆う。
【0046】
また、第1ロータブラケット21(図1参照)の上端には、蓋部材111がボルトを介して固定される。蓋部材111の上端には、スプライン外筒61のフランジ62がボルトを介して固定される。
【0047】
スプライン外筒用ハウジング43の第1筒状部431は、上下方向の上側に配置された第1円筒部431bと、第1円筒部431bの下側に配置された段部431dと、段部431dの下側に配置された第2円筒部431eとを有する。
【0048】
第1円筒部431bには、径方向内側に延びる受け部431aが周方向に沿って円環状に設けられている。受け部431aの上面には、下方に凹む凹部が設けられ、凹部にOリング74が収容されている。第2筒状部432の下端面がOリング74を押圧した状態で、ボルトを介して第2筒状部432の下端部が第1筒状部431の受け部431aに固定される。第2円筒部431eの下端部431cの側面には、凹部が形成され、凹部にはOリング75が収容されている。
【0049】
第1モータハウジング40の上端部の内周面がOリング75を押圧している。この状態で、ボルトを介して第1筒状部431の下端部が第1モータハウジング40の上端部に固定される。さらに、第1モータハウジング40の上端部の外周面には、径方向内側に凹む凹部が設けられ、凹部にOリング76が収容されている。固定台STの内周面がOリング76を押圧した状態で、第1モータハウジング40の取付用フランジ40aが固定台STの上面にボルトを介して固定される。
【0050】
スプライン外筒61におけるフランジ62の上側の部分には、スプライン外筒61を囲む円環状の連結ブラケット34が配置される。連結ブラケット34は、中心軸AXの軸線方向における位置が、第1筒状部431における第2円筒部431eと重なる位置に配置されており、第1筒状部431の第2円筒部431eと連結ブラケット34との間には、第3軸受33が保持される。連結ブラケット34は、スプライン外筒61のフランジ62に固定される。よって、第3軸受33は、スプライン外筒61及び連結ブラケット34を回転自在に支持している。第3軸受33は、例えば、転がり軸受である。第3軸受33は、ウェーブワッシャ39a及び押さえ部材39bを介して第1筒状部431の段部431dに支持されている。第3軸受33は、ウェーブワッシャ39a及び押さえ部材39bにより、中心軸AXの軸線方向における位置が規制されている。また、第3軸受33は、第1筒状部431、第1モータハウジング40及び固定台STで径方向に支持されている。
【0051】
図3は、図2に示すアーム取付部材70周りの詳細図である。シャフト63の上端に固定されるアーム取付部材70は、連結部71と、筒状部72と、蓋部73とを有する。連結部71は、シャフト63におけるネジ軸53が位置する側の端部の反対側に位置する縮径部63aに連結される。このため、アーム取付部材70は、軸部材SFにおけるスプライン溝部633側の端部と雄ねじ部533側の端部との両端部のうち、スプライン溝部633側の端部に固定される。
【0052】
アーム取付部材70が有する筒状部72は、円筒状に形成され、アーム取付部材70における軸部材SFに連結される部分である連結部71から、下方に延びた状態で設けられる。筒状部72は、スプライン外筒用ハウジング43の第2筒状部432よりも外側に配置され、第2筒状部432の上部432aを収容する。換言すると、筒状部72は、内径がスプライン外筒用ハウジング43が有する第2筒状部432の上部432aの外径よりも大きい円筒形状に形成され、アーム取付部材70の連結部71から軸部材SFが位置する側に軸線方向に沿って延びる。これにより、筒状部72は、スプライン外筒用ハウジング43から離隔してスプライン外筒用ハウジング43の第2筒状部432を覆う。
【0053】
筒状部72の下端には、凹部72aが設けられる。凹部72aは、筒状部72における内周面の下端が拡径されて形成される。凹部72aには、摺動シール77が配置される。摺動シール77は、筒状部72の内周面に配置されて、スプライン外筒用ハウジング43に接触する。詳しくは、摺動シール77は、スプライン外筒用ハウジング43が有する第2筒状部432の上部432aに接触する。これにより、摺動シール77は、アーム取付部材70の筒状部72とスプライン外筒用ハウジング43の第2筒状部432の上部432aとの間に形成される隙間を封止する。
【0054】
つまり、アーム取付部材70の筒状部72は、内径が、第2筒状部432の上部432aの外径に対して僅かに大きくなっており、筒状部72と第2筒状部432との間には隙間が形成されている。これにより、アーム取付部材70の筒状部72は、スプライン外筒用ハウジング43が有する第2筒状部432の上部432aに対して、中心軸AXの軸線方向、及び軸回りの回転方向に相対移動をすることが可能に配置されている。筒状部72の内周面側に配置される摺動シール77は、第2筒状部432の上部432aに接触することにより、アーム取付部材70の筒状部72と、第2筒状部432の上部432aとの間に形成される隙間を封止することができる。
【0055】
摺動シール77としては、例えば断面視でU字状又はコ字状の部材をリング状に形成した構造等が挙げられる。摺動シール77は、例えば弾性変形可能な材料を用いて形成される。摺動シール77は、凹部72aの内周面と第2筒状部432の外周面との双方に当接して弾性変形した状態で配置される。摺動シール77により、シャフト63が外部から保護された状態となる。なお、凹部72aの下端部には、内側に突出する突起部72bが形成される。この突起部72bにより、摺動シール77の落下が抑制される。
【0056】
さらに、筒状部72の内周面には、補助シール部材78が配置されている。補助シール部材78は、内径が筒状部72の内径よりも小さい円筒形状で形成され、筒状部72の内周面における摺動シール77よりも、連結部71寄りに配置されている。詳しくは、筒状部72の内周面には、摺動シール77が配置される凹部72aの上側、即ち、凹部72aに対して突起部72bが形成される側の反対側に、凹部72aに隣接する切欠き部72cが形成されている。切欠き部72cは、凹部72aの径よりは小さい径で、筒状部72の内周面が拡径されることにより形成されている。補助シール部材78は、このように筒状部72の内周面に形成される切欠き部72cに配置されている。
【0057】
円筒形状で形成されて切欠き部72cに配置される補助シール部材78は、外径が切欠き部72cの径とほぼ同じ大きさになっている。また、補助シール部材78の内径は、筒状部72の内周面における切欠き部72cよりも上側の部分よりも小さく、スプライン外筒用ハウジング43が有する第2筒状部432の上部432aの外径よりも大きくなっている。即ち、円筒形状で形成される補助シール部材78の内径は、筒状部72の内周面における切欠き部72cよりも上側の部分の内径と、第2筒状部432の上部432aの外径との間の大きさになっている。また、中心軸AXの軸線方向における補助シール部材78の長さは、同方向における切欠き部72cの長さと同程度になっている。これにより、補助シール部材78は、筒状部72の内周面が拡径されることにより形成される切欠き部72cに嵌り込んだ状態で配置される。
【0058】
また、補助シール部材78は、軸線方向における補助シール部材78の、アーム取付部材70における軸部材SFに連結される部分である連結部71側の端部78aが、中心軸AXの軸線方向におけるスプライン外筒用ハウジング43の連結部71側の端部43bよりも、摺動シール77寄りに位置している。つまり、軸部材SFは、中心軸AXの軸線方向に移動することが可能になっており、軸部材SFに取り付けられるアーム取付部材70も、軸部材SFと共に軸線方向に移動することが可能になっている。このように、軸線方向に移動可能なアーム取付部材70が有する筒状部72に配置される補助シール部材78は、筒状部72の移動状態に関わらず、補助シール部材78の連結部71側の端部78aが、スプライン外筒用ハウジング43の連結部71側の端部43bよりも、摺動シール77寄りに位置するように形成されている。
【0059】
補助シール部材78は、例えば、黄銅や真鍮等の比較的柔らかい金属材料を用いて形成され、切欠き部72cに圧入されることにより切欠き部72cに配置される。または、補助シール部材78は、硬めの樹脂材料を用いて形成され、切欠き部72cに圧入されることにより切欠き部72cに配置される。
【0060】
なお、凹部72aは、凹部72aに隣接する切欠き部72cが、凹部72aの径よりも小さい径で形成されることにより、切欠き部72cと突起部72bとの間で溝状の形状で形成される。摺動シール77は、溝状の凹部72aに嵌り込むことにより配置される。
【0061】
蓋部73は、ボルトにより連結部71の蓋部取り付け面71dに取り付けられる。蓋部73は、シャフト63の縮径部63aを外部から保護する。
【0062】
図4は、図1に示すアクチュエータ1の下端付近を拡大した断面図である。アクチュエータ1におけるナット用ハウジング42の下側には、クランプ機構130が配置されている。クランプ機構130は、ネジ軸53の小径部532と、コレット132と、シリンダ134と、を含む。コレット132は、径方向に変形可能な把持部132Aと、略筒形状のフランジ部132Bと、を備える。把持部132Aには、Z方向にスリ割りが4つ形成されている。図4に示す断面図は、該スリ割りに沿って切断した断面を示している。スリ割りは、周方向に90度ずつ異なる位置に形成されている。これにより、把持部132Aは、径方向に弾性変形が可能となる。なお、スリ割りの数、形状及び位置は、特に限定されない。スリ割りは、把持部132Aが径方向に弾性変形可能となるように、形成されていればよい。
【0063】
コレット132には、ネジ軸53の小径部532が挿入される。コレット132は、第1テーパ面132aと、第2テーパ面132bと、凹部132cと、内周面132dと、を備える。第1テーパ面132aは、把持部132Aの外周面である。第1テーパ面132aは、Z方向下側に向かうにつれて外径が小さくなる傾斜面である。つまり、第1テーパ面132aは、略円錐面の形状である。
【0064】
第2テーパ面132bは、フランジ部132BのZ方向上側の外周面である。第2テーパ面132bは、Z方向上側に向かうにつれて外径が小さくなる傾斜面である。つまり、第2テーパ面132bは、略円錐面の形状である。凹部132cは、フランジ部132Bの外周面に形成された溝である。凹部132cは、Z方向において、第1テーパ面132aと第2テーパ面132bとの間に形成される。内周面132dは、ネジ軸53の被クランプ部53bと対向する面である。コレット132は、ネジ軸53が軸線方向に最大限移動した場合でも内周面132dがネジ軸53の被クランプ部53bと対向するように配置されている。
【0065】
シリンダ134は、ピストン136と、シリンダチューブ138と、第1シール部材160と、第2シール部材162と、を備える。また、シリンダ134は、気体供給部163と、固定部材144と、ストッパ部146と、ネジ軸用ハウジング150と、ばね156と、を備える。
【0066】
ピストン136には、ネジ軸53の小径部532が挿入される。ピストン136は、傾斜面136aと、第1外側面136bと、第2外側面136cと、溝部136dと、下面136eと、凹部136fと、上面136gと、を備える。
【0067】
傾斜面136aは、ピストン136のZ方向上側の内周面である。傾斜面136aは、Z方向上側に向かうにつれて径が大きくなるように傾斜している。傾斜面136aは、Z方向においてコレット132の第1テーパ面132aと重なる。このような構成により、傾斜面136aは、ピストン136がZ方向上側に移動した場合に第1テーパ面132aと接触できる。そして、傾斜面136aは、第1テーパ面132aと接触した場合に、第1テーパ面132aを径方向内側に押圧できる。すなわち、傾斜面136aは、把持部132Aを径方向内側に押圧可能なチャック部である。傾斜面136aは、第1テーパ面132aと対向する。すなわち、傾斜面136aと第1テーパ面132aとは、略同じ傾きを有する。傾斜面136aは、径方向において第1テーパ面132aと重なるように配置される。これにより、ピストン136及びコレット132が占有する空間の軸線方向の寸法を小さくすることができる。
【0068】
第1外側面136b及び第2外側面136cは、ピストン136の外側面である。第1外側面136bは、第2外側面136cよりもZ方向上側に位置する。第1外側面136bよりもZ方向下側に位置する第2外側面136cは、第1外側面136bよりも径が大きい。第1外側面136b及び第2外側面136cは、径方向において第1テーパ面132aと重なるように配置される。溝部136dは、第1外側面136bに形成された角溝である。溝部136dは、第1外側面136bの周方向に沿って形成されている。下面136eは、ピストン136のZ方向下側の面である。下面136eには、Z方向上側に凹んだ凹部136fが形成される。上面136gは、ピストン136のZ方向上側の面である。
【0069】
シリンダチューブ138は、ピストン136を収容する略筒形状の部材である。シリンダチューブ138は、筒状部138aと、外径側フランジ部138bと、内径側フランジ部138cと、溝部138dと、第1内側面138eと、第2内側面138fと、気体供給路138gと、を備える。筒状部138aは、筒形状の部材である。筒状部138aのZ方向上側の端部に外径側フランジ部138b及び内径側フランジ部138cが接続される。外径側フランジ部138bは、円環状に形成されたフランジ面である。外径側フランジ部138bは、ボルト等の固定部材140により、ナット用ハウジング42が有する筒状部42bの下端に固定される。内径側フランジ部138cは、円環状に形成され、外径側フランジ部138bよりも径方向内側に配置される。内径側フランジ部138cには、段差面142が形成される。段差面142は、内径側フランジ部138cの内周面側の位置における、Z方向上側の端部に形成される。段差面142は、Z方向上側から見て、円環形状である。
【0070】
第1内側面138eは、内径側フランジ部138cの径方向内側の側面である。第1内側面138eは、ピストン136の第1外側面136bと対向する。第2内側面138fは、筒状部138aの径方向内側の側面である。第2内側面138fの径は、第1内側面138eの径よりも大きい。第2内側面138fは、ピストン136の第2外側面136cと対向する。第1内側面138e及び第2内側面138fは、径方向においてコレット132の第1テーパ面132aと重なるように配置される。溝部138dは、第2内側面138fに形成された角溝である。溝部138dは、第2内側面138fの周方向に沿って形成されている。
【0071】
気体供給路138gは、シリンダチューブ138の外部からシリンダチューブ138の内部まで貫通する開口である。気体供給路138gには、気体供給配管158が接続されている。気体供給路138gと気体供給配管158とは、例えば、シールテープを介してネジ固定されている。
【0072】
第1シール部材160は、Oリングである。第1シール部材160は、ピストン136の第1外側面136bに形成される溝部136dに配置される。第1シール部材160は、ピストン136の第1外側面136bと、シリンダチューブ138の第1内側面138eとの間の隙間を埋める。これによれば、ピストン136の第1外側面136bと、シリンダチューブ138の第1内側面138eとの隙間がシールされる。
【0073】
第2シール部材162は、Oリングである。第2シール部材162は、シリンダチューブ138の第2内側面138fに形成される溝部138dに配置される。第2シール部材162は、ピストン136の第2外側面136cと、シリンダチューブ138の第2内側面138fとの間の隙間を埋める。これによれば、ピストン136の第2外側面136cと、シリンダチューブ138の第2内側面138fとの隙間がシールされる。このような構成により、クランプ機構130には、気体供給配管158、気体供給路138g、第1外側面136b、第2外側面136c、第1内側面138e、第2内側面138f、第1シール部材160及び第2シール部材162で囲まれた圧力室139が形成される。
【0074】
気体供給部163は、圧縮空気を供給するコンプレッサである。気体供給部163は、気体供給配管158に接続される。なお、気体供給部163が供給する気体は、圧縮空気に限定されない。気体供給部163は、例えば、圧縮された窒素を供給してもよい。
【0075】
固定部材144は、円環形状の板部材である。固定部材144は、径方向外側の下面が、シリンダチューブ138の内径側フランジ部138cに形成される段差面142と接触するように配置される。また、固定部材144は、径方向内側の端部が、コレット132に形成される凹部132cに挿入されている。
【0076】
ストッパ部146は、円環形状の部材である。ストッパ部146には、ネジ軸53の小径部532が挿入される。ストッパ部146は、コレット132の第2テーパ面132bと対向する傾斜面146aを備える。これにより、ストッパ部146は、コレット132のZ方向上側への移動を制限できる。また、ストッパ部146は、固定部材144を、シリンダチューブ138の段差面142と挟んだ状態で、ボルト等の固定部材148によって、シリンダチューブ138の内径側フランジ部138cに固定される。したがって、ストッパ部146は、固定部材144のZ方向における位置を固定する。そして、固定部材144の内径側の端部は、コレット132の凹部132cに挿入されている。これによれば、固定部材144は、コレット132のZ方向下側への移動を制限できる。このような構成により、コレット132のZ方向における位置が決定される。
【0077】
ネジ軸用ハウジング150は、シリンダチューブ138、ナット用ハウジング42、第2モータハウジング40A及び第1モータハウジング40を介して、固定台STに固定されている。ネジ軸用ハウジング150は、フランジ部150aと、フランジ面150bと、筒状部150cと、凹部150dと、蓋部材150eと、を有する。フランジ部150aは、円環状に形成され、ボルト等の固定部材152により、シリンダチューブ138の筒状部138aの下端に固定される。フランジ面150bは、フランジ部150aのZ方向上側の面である。
【0078】
フランジ面150bは、ピストン136の下面136eと対向する。筒状部150cは、フランジ部150aの内周から下方に延びている。筒状部150cは、図4に示すように、ネジ軸53の下側の端部を収容する。凹部150dは、フランジ面150bからZ方向下側に凹んだ凹部である。蓋部材150eは、筒状部150cのZ方向下側を塞ぐ部材である。蓋部材150eは、ボルトによって、筒状部150cのZ方向下側の端面に固定される。これにより、Z方向下側から、ネジ軸用ハウジング150の内部に異物が侵入することを防ぐことができる。
【0079】
ばね156は、圧縮コイルばねである。ばね156は、一方の端部がピストン136の下面136eに形成される凹部136fの底面と接触する。ばね156は、他方の端部が、ネジ軸用ハウジング150のフランジ面150bに形成される凹部150dの底面と接触する。したがって、ばね156は、ピストン136の凹部136fの底面、及びネジ軸用ハウジング150の凹部150dの底面によって圧縮されている。ネジ軸用ハウジング150が固定台STに固定されているので、凹部150dの底面はZ軸方向下側に移動しない。したがって、ばね156は、ピストン136をZ方向上側に押圧する。なお、ばね156は、圧縮コイルばねであるとしたがこれに限定されない。ばね156は、ピストン136が、コレット132の把持部132Aに近づく方向にピストン136を付勢する弾性部材であればよい。ばね156は、例えば、角ばね及び円錐ばねでもよい。また、ばね156は、複数配置されていてもよい。
【0080】
ネジ軸53の下端部には、ストッパ55がナット56によって取り付けられている。ストッパ55は、円環形状の部材である。ストッパ55は、ネジ軸53に挿入されている。ストッパ55のZ方向上側には、円環形状の緩衝部材55aが配置されている。緩衝部材55aは、例えば、弾性体のウレタンゴムである。緩衝部材55a及びストッパ55の外径r2は、ネジ軸用ハウジング150のフランジ部150aの内径r1よりも大きい。したがって、ストッパ55は、ネジ軸53が所定の長さだけ上昇した場合に、緩衝部材55aを介してフランジ部150aと接する。これにより、ストッパ55は、ネジ軸53が所定の長さを超えて上昇することを規制できる。
【0081】
次に、アクチュエータ1の動きを説明する。図5は、図1に示す軸部材SFが上昇した状態を示す説明図である。まず、軸部材SFが昇降する(直動する)態様を説明する。この態様では、第2モータM2のみが作動し、第1モータM1は作動しない。
【0082】
第2モータM2が作動すると、第2ロータ20Aが中心軸AXの軸回り方向に回転する。詳細には、第2ロータ20Aは、第2軸受32を介して、第2ステータ10A及び第2ステータ保持体11Aに対して中心軸AX回りに回転する。なお、第1ロータ20は、回転しない。
【0083】
ナット部材51は、第2連結ブラケット45と第1連結ブラケット46とを介して第2ロータブラケット21Aに連結されることにより、第2ロータ20Aと一体になっている。よって、ナット部材51も第2ロータ20Aと一体に中心軸AXの軸回り方向に回転する。ナット部材51の内周側に形成される雌ねじ部は、軸部材SFの第2部分S2に形成される雄ねじ部533と噛み合っているため、ナット部材51の回転により軸部材SFが軸線方向に沿って直動する。例えば、図2に示すように、ナット部材51の回転により、軸部材SFが軸線方向に沿って上昇する。なお、軸線方向に沿って軸部材SFが上昇する際には、緩衝部材55aを介してストッパ55がネジ軸用ハウジング150のフランジ部150aに当たることによって軸部材SFの上昇が規制される。
【0084】
次いで、軸部材SFが旋回する(回転する)態様を説明する。この態様では、軸部材SFのZ方向の移動の仕方により、第1の態様、第2の態様及び第3の態様が含まれる。
【0085】
第1の態様では、第1モータM1が作動し、第2モータM2が作動しない。前述したように、軸部材SFのシャフト63に形成されるスプライン溝部633は、スプライン外筒61の内周側に形成されるスプライン部と噛み合っている。これにより、軸部材SFは、スプライン外筒61のスプライン部に沿って軸線方向に案内される。また、スプライン外筒61は、蓋部材111を介して第1モータM1の第1ロータ20に連結されている。このため、第1モータM1が作動した際には、軸部材SFは、スプライン外筒61を介して第1ロータ20と共に回転することにより、中心軸AXの軸回り方向に回転可能となる。
【0086】
さらに、第1の態様では、第2モータM2が作動しないため、ナット部材51も回転しない。よって、スプライン外筒61の回転に伴って軸部材SFが回転すると、軸部材SFは、ナット部材51に対して軸線方向に沿って相対移動をする。以上より、第1の態様では、軸部材SFはスプライン外筒61と一体に回転しつつ、静止したナット部材51と相対的に回転することでZ方向に直動する。
【0087】
第2の態様では、軸部材SFをスプライン外筒61と一体に回転させつつ、軸部材SFのZ方向の位置が変化しないようにナット部材51を回転させる。従って、第2の態様では、第1モータM1及び第2モータM2の双方を作動させる。即ち、第1モータM1が作動することによる動作は、第1の態様と同様であり、第1モータM1が作動した際には、軸部材SFはスプライン外筒61を介して第1ロータ20と共に回転することにより、中心軸AXの軸回り方向に回転する。第2モータM2は、第1の態様では作動させなかったが、第2の態様では、第2モータM2を作動させることにより、第1モータM1の作動による軸部材SFの回転に伴って軸部材SFが直動する方向と逆方向に、ナット部材51を回転させる。以上より、第2の態様では、軸部材SFのZ方向の位置が変化しないまま、軸部材SFがスプライン外筒61と一体に回転する。
【0088】
第3の態様では、軸部材SFをスプライン外筒61と一体に回転させつつ、ナット部材51の回転速度を適宜調整することにより、軸部材SFが直動する速度(Z方向の移動速度)を可変させる。従って、第3の態様では、第1モータM1及び第2モータM2の双方を作動させる。即ち、第1モータM1による回転は第1及び第2の態様と同様であり、軸部材SFはスプライン外筒61を介して第1ロータ20と共に回転することにより、中心軸AXの軸回り方向に回転する。その際に、第2モータM2は、軸部材SFの所望する直動の速度に合わせて、モータの回転速度を設定する。以上より、第3の態様では、軸部材SFのZ方向の移動速度を適宜に調整しつつ、軸部材SFがスプライン外筒61と一体に回転する。
【0089】
アクチュエータ1は、これらのように第1モータM1や第2モータM2を作動させることにより、軸部材SFを中心軸AXの軸回り方向に回転させたり、中心軸AXの軸線方向に直動させたりする。これにより、軸部材SFに取り付けられるアーム取付部材70を移動させ、アーム取付部材70に取り付けられるアーム部80により、ワークを所望の位置に移送する。
【0090】
アクチュエータ1は、第1モータハウジング40が有する取付用フランジ40aにより、固定台STに固定されているが、固定台STに対してワークが位置する側の面である固定台STの上面では、水や油等の液体がかかる環境で作業が行われることがある。例えば、ワークに対して切削等の機械加工を行う場合には、切削液をワークにかけながら作業を行うことがあり、このため、アクチュエータ1に対しても、切削液等の液体がかかることがある。
【0091】
一方で、アクチュエータ1は、スプライン外筒61がスプライン外筒用ハウジング43に覆われており、スプライン外筒用ハウジング43が有する第2筒状部432は、上部432aが、アーム取付部材70が有する筒状部72によって覆われている。このため、スプライン外筒用ハウジング43における、内側から上方に向かって軸部材SFが延びる部分である、第2筒状部432の上部432aの上端の開口部分は、アーム取付部材70が有する筒状部72内に対して開口することなり、外部に対しては直接開口しなくなる。これにより、アクチュエータ1に液体がかかる環境においてアクチュエータ1を使用する場合でも、アクチュエータ1にかかった液体が、スプライン外筒用ハウジング43内に入り込むことが抑制される。
【0092】
また、アーム取付部材70は、軸部材SFに取り付けられており、スプライン外筒用ハウジング43は、第1モータハウジング40に取り付けられている。このため、軸部材SFが直動したり回転したりする際には、アーム取付部材70が有する筒状部72は、軸部材SFの動作に伴ってスプライン外筒用ハウジング43に対して相対移動をする。その際に、アーム取付部材70が有する筒状部72は、筒状部72の内周面側に配置されている摺動シール77が、スプライン外筒用ハウジング43が有する第2筒状部432の上部432aの外周面に摺動しながら、筒状部72はスプライン外筒用ハウジング43に対して相対移動をする。
【0093】
つまり、アーム取付部材70の筒状部72の内周面と、スプライン外筒用ハウジング43が有する第2筒状部432の外周面との間には隙間が形成されているが、摺動シール77が、第2筒状部432の外周面に摺動することにより、当該隙間が封止された状態が維持される。これにより、アーム取付部材70の筒状部72は、スプライン外筒用ハウジング43が有する第2筒状部432との隙間の封止が維持された状態で、スプライン外筒用ハウジング43に対して相対移動をする。このため、アクチュエータ1に液体がかかった場合でも、摺動シール77により、アーム取付部材70の筒状部72と、スプライン外筒用ハウジング43の第2筒状部432との間の隙間に液体が入り込むことが抑制される。従って、アクチュエータ1にかかった液体が、筒状部72と第2筒状部432との間の隙間を通って第2筒状部432の内側に入り込むことが抑制される。
【0094】
ここで、アーム取付部材70の筒状部72がスプライン外筒用ハウジング43に対して相対移動をする際には、摺動シール77は、スプライン外筒用ハウジング43の第2筒状部432に対して摺動をする。このため、摺動シール77の摺動が繰り返された場合、摺動シール77は摩耗することがある。
【0095】
図6は、摺動シール77が摩耗した場合における摺動シール77周りの模式図である。なお、図6は、摺動シール77が摩耗した際における補助シール部材78の役割を示す説明図になっている。このため、筒状部72における摺動シール77を配置する部分である凹部72aや、補助シール部材78を配置する部分である切欠き部72cについては図示していない。後述する図8図9において同様である。
【0096】
摺動シール77が摩耗した場合、摺動シール77と第2筒状部432との間に隙間hが発生する可能性がある。この場合、アクチュエータ1にかかった液体は、摺動シール77と第2筒状部432との間の隙間hを通って、筒状部72と第2筒状部432との間の隙間gに入り込むことが考えられる。
【0097】
第1実施形態に係るアクチュエータ1では、筒状部72の内周面における、摺動シール77よりもアーム取付部材70の連結部71寄りの位置に、補助シール部材78が配置されている。補助シール部材78は、内径が筒状部72の内径よりも小さい円筒形状で形成されているため、補助シール部材78と第2筒状部432との間の隙間sは、筒状部72と第2筒状部432との間の隙間gよりも小さくなっている。
【0098】
このため、アクチュエータ1にかかった液体が、摺動シール77と第2筒状部432との間の隙間hを通過した場合、通過した液体Lは、補助シール部材78と第2筒状部432との間の隙間sを、中心軸AXの軸線方向における補助シール部材78の長さtに亘って通ることになる。これにより、補助シール部材78と第2筒状部432との間の隙間sを通る液体Lは、狭い流路を通ることによる抵抗により、液体Lの動圧Pvが小さくなる。
【0099】
一方で、筒状部72と第2筒状部432との間の隙間gの雰囲気には、第2筒状部432の内側の雰囲気の圧力と同じ大きさの内圧Piが作用する。このため、補助シール部材78と第2筒状部432との間の隙間sを通ることにより、動圧Pvが低くなった液体Lは、筒状部72と第2筒状部432との間の隙間gに作用する内圧Piにより流れが阻まれ、筒状部72と第2筒状部432との間の隙間gには流れ込み難くなる。これにより、摺動シール77と第2筒状部432との間の隙間hから流れ込んだ液体Lは、筒状部72と第2筒状部432との間の隙間gを通って第2筒状部432の上部432aの上端まで流れ難くなるため、液体Lは、第2筒状部432の内側に入り込み難くなる。
【0100】
従って、アーム取付部材70が有する筒状部72の内周面とスプライン外筒用ハウジング43が有する第2筒状部432の外周面との間に配置される摺動シール77が摩耗した際における、防水性能を確保することができる。この結果、防水性能の低下を抑制することができる。
【0101】
図7は、軸部材SFが上昇した際におけるアクチュエータ1の上端付近を拡大した断面図である。アクチュエータ1は、アーム部80をZ方向に移動させる際には、軸部材SFを中心軸AXの軸線方向に移動させるが、軸部材SFが中心軸AXの軸線方向に移動した際には、アーム取付部材70が有する筒状部72も軸部材SFと共に軸線方向に移動する。このため、軸部材SFが中心軸AXの軸線方向に移動した際には、アーム取付部材70が有する筒状部72は、スプライン外筒用ハウジング43に対して相対移動をする。
【0102】
その際に、筒状部72の内周面に配置される補助シール部材78は、筒状部72の移動状態に関わらず、軸線方向における補助シール部材78の、アーム取付部材70の連結部71側の端部78aが、スプライン外筒用ハウジング43における連結部71側の端部43bよりも、摺動シール77寄りに位置している。このため、補助シール部材78は、軸部材SFに連結される連結部71がスプライン外筒用ハウジング43から離れる方向へ移動した際における、連結部71とスプライン外筒用ハウジング43との距離が最大となる状態においても、補助シール部材78の連結部71側の端部78aが、スプライン外筒用ハウジング43の連結部71側の端部43bよりも、摺動シール77寄りに位置している。
【0103】
これにより、摺動シール77が摩耗した状態においても、軸線方向における軸部材SFの移動状態に関わらず、アーム取付部材70が有する筒状部72の内周面とスプライン外筒用ハウジング43が有する第2筒状部432の外周面との間の防水性能を、補助シール部材78により確保することができる。この結果、より確実に防水性能の低下を抑制することができる。
【0104】
また、第1実施形態に係るアクチュエータ1は、スプライン外筒61を介して軸部材SFを中心軸AXの軸回り方向に回転させる第1ロータ20と、ナット部材51を介して軸部材SFを中心軸AXの軸線方向に移動させる第2ロータ20Aとを軸部材SFが貫通している。これにより、軸部材SFに対して軸回り方向の回転と軸線方向の移動とを行わせるアクチュエータ1を、コンパクトに構成することができる。この結果、アクチュエータ1の省スペース化を図ることができる。
【0105】
[第2実施形態]
次いで、第2実施形態に係るアクチュエータ1について説明する。第1実施形態と同一の構成部位には、同一符号を付けて説明を省略する。以下、第1実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0106】
図8は、第2実施形態のアクチュエータ1の要部断面図であり、摺動シール77周りの模式図である。なお、図8は、摺動シール77が摩耗した状態における模式図になっている。
【0107】
第2実施形態においても、アーム取付部材70が有する筒状部72には、内周面に補助シール部材78が配置されている。第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、補助シール部材78は、中心軸AXの軸線方向に離隔して複数が配置されている。第2実施形態は、補助シール部材78として、第1補助シール部材78bと第2補助シール部材78cとの2つが配置されている。第1補助シール部材78bは、中心軸AXの軸線方向においてアーム取付部材70が有する連結部寄りに位置する補助シール部材78になっており、第2補助シール部材78cは、摺動シール77寄りに位置する補助シール部材78になっている。第1補助シール部材78bと第2補助シール部材78cとは、軸線方向に離隔して配置されている。
【0108】
第2実施形態においても、補助シール部材78は、アーム取付部材70が有する筒状部72の移動状態に関わらず、補助シール部材78の連結部71側の端部78aが、スプライン外筒用ハウジング43の連結部71側の端部43bよりも、摺動シール77寄りに位置するように形成されている。即ち、第1補助シール部材78bの連結部71側の端部78aは、アーム取付部材70が有する連結部71とスプライン外筒用ハウジング43との距離が最大となる状態においても、スプライン外筒用ハウジング43の連結部71側の端部よりも摺動シール77寄りに位置している。
【0109】
第2実施形態においても、摺動シール77が摩耗した際には、摺動シール77と第2筒状部432との間に隙間hが発生し、アクチュエータ1にかかった液体が、摺動シール77と第2筒状部432との間の隙間hに入り込んで補助シール部材78が位置する側に流れ込む可能性がある。補助シール部材78が位置する側に流れ込んだ液体Lは、補助シール部材78と第2筒状部432との間の隙間sに流れ込む。
【0110】
その際に、補助シール部材78は、第1補助シール部材78bと第2補助シール部材78cを有しており、第1補助シール部材78bと第2補助シール部材78cとは、中心軸AXの軸線方向に離隔して配置されている。このため、第1補助シール部材78bと第2補助シール部材78cとの間の部分では、液体Lは、筒状部72と第2筒状部432との間の隙間を流れることになるが、筒状部72と第2筒状部432との間の隙間は、補助シール部材78と第2筒状部432との間の隙間sよりも大きくなっている。
【0111】
これにより、補助シール部材78が配置されている部分に液体Lが入り込んだ際における液体Lの流路の幅が、補助シール部材78が位置する部分と、第1補助シール部材78bと第2補助シール部材78cとの間の部分とで大きく変化するため、液体Lの流れを乱すことができる。従って、液体Lが流れる際における抵抗を大きくすることができ、筒状部72と第2筒状部432との間に入り込んだ液体Lが、第2筒状部432の上部432aの上端まで流れて第2筒状部432の内側に入り込むことを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に防水性能の低下を抑制することができる。
【0112】
[第3実施形態]
次いで、第3実施形態に係るアクチュエータ1について説明する。第1実施形態と同一の構成部位には、同一符号を付けて説明を省略する。以下、第1実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0113】
図9は、第3実施形態のアクチュエータ1の要部断面図であり、摺動シール77周りの模式図である。なお、図9は、摺動シール77が摩耗した状態における模式図になっている。
【0114】
第3実施形態においても、アーム取付部材70が有する筒状部72には、内周面に補助シール部材78が配置されている。第3実施形態では、第1実施形態とは異なり、補助シール部材78には、内周面78dに円周方向に延びる中間溝部78eが形成されている。中間溝部78eは、補助シール部材78の長さ方向における中央付近に位置しており、補助シール部材78の内周面78dからの深さが、円筒形状で形成される補助シール部材78の厚さよりも浅い深さで、円周方向の1周に亘って形成される溝として形成されている。
【0115】
第3実施形態においても、補助シール部材78は、アーム取付部材70が有する連結部71とスプライン外筒用ハウジング43との距離が最大となる状態において、連結部71側の端部78aが、スプライン外筒用ハウジング43の連結部71側の端部よりも摺動シール77寄りに位置するように形成されている。
【0116】
第3実施形態においても、摺動シール77が摩耗した際には、摺動シール77と第2筒状部432との間に隙間hが発生し、アクチュエータ1にかかった液体が、摺動シール77と第2筒状部432との間の隙間hに入り込んで補助シール部材78が位置する側に流れ込む可能性がある。補助シール部材78が位置する側に流れ込んだ液体Lは、補助シール部材78と第2筒状部432との間の隙間sに流れ込む。
【0117】
その際に、補助シール部材78には、内周面78dに中間溝部78eが形成されているため、中間溝部78eの部分では、液体Lは、中間溝部78eの内側にも入り込んで流れることになるが、中間溝部78eと第2筒状部432との間隔は、中間溝部78e以外の部分の補助シール部材78と第2筒状部432との隙間sよりも大きくなっている。
【0118】
これにより、補助シール部材78が配置されている部分に液体Lが入り込んだ際における液体Lの流路の幅が、中間溝部78eが形成されている部分と、中間溝部78e以外の部分とで大きく変化するため、液体Lの流れを乱すことができる。従って、液体Lが流れる際における抵抗を大きくすることができ、筒状部72と第2筒状部432との間に入り込んだ液体Lが、第2筒状部432の上部432aの上端まで流れて第2筒状部432の内側に入り込むことを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に防水性能の低下を抑制することができる。
【0119】
[第4実施形態]
次いで、第4実施形態に係るアクチュエータ1について説明する。第1実施形態と同一の構成部位には、同一符号を付けて説明を省略する。以下、第1実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0120】
図10は、第4実施形態に係るアクチュエータ1Aの断面図である。図11は、図10に示す二軸一体型モータMPの詳細図である。図12は、中心軸AXと直交する平面による二軸一体型モータMPの断面図である。第4実施形態に係るアクチュエータ1Aは、第1実施形態に係るアクチュエータ1と異なり、動力源に二軸一体型モータMPが用いられる。二軸一体型モータMPは、第1モータM1と第2モータM2とが一体となって構成されており、1つの二軸一体型モータMPは、第1モータMP1の出力軸と、第2モータMP2の出力軸とを有している。
【0121】
二軸一体型モータMPは、ステータ210と、第1ロータ220と、第2ロータ230と、ハウジング240と、第1回転検出部301と、第2回転検出部302と、を有する。第1ロータ220は、二軸一体型モータMPにおける第1モータMP1の出力軸になっており、第2ロータ230は、二軸一体型モータMPにおける第2モータMP2の出力軸になっている。ステータ210、第1ロータ220及び第2ロータ230は、中心軸AXを中心として、互いに同軸に配置されている。ステータ210は、第1ロータ220と第2ロータ230との間に配置されている。例えば、第1ロータ220は、ステータ210の径方向外側に配置され、ステータ210に対して相対回転する。第2ロータ230は、ステータ210の径方向内側に配置され、ステータ210に対して相対回転する。
【0122】
ステータ210は、ステータコア211と、第1励磁コイル212と、第2励磁コイル213と、を有する。図12に示すように、ステータ210は、中心軸AXの周りに筒状に設けられている。ステータコア211は、筒状のバックヨーク215と、バックヨーク215の径方向外側に配置された複数の第1ティース214と、バックヨーク215の径方向内側に配置された複数の第2ティース216と、を有する。第1励磁コイル212と第1ティース214、及び第1ロータ220は、第1モータMP1を構成しており、第2励磁コイル213と第2ティース216、及び第2ロータ230は、第2モータMP2を構成している。
【0123】
複数の第1ティース214は、バックヨーク215の外周に沿って並んでいる。複数の第1ティース214は、バックヨーク215と接続されている。第1励磁コイル212は、第1ティース214の周りに巻き回されている。第1励磁コイル212は、第1ドライバ321と電気的に接続されている。第1ドライバ321は、第1励磁コイル212に第1駆動電流I1を供給することにより、第1ロータ220を駆動する。
【0124】
第1励磁コイル212を励磁させて得られる回転磁界は、例えば3相である。第1励磁コイル212には、駆動信号の各位相が120°ずれたU相用、V相用及びW相用の励磁コイルが含まれる。
【0125】
複数の第2ティース216は、バックヨーク215の内周に沿って並んでいる。複数の第2ティース216は、バックヨーク215と接続されている。第2励磁コイル213は、第2ティース216の周りに巻き回されている。第2励磁コイル213は、第2ドライバ322と電気的に接続されている。第2ドライバ322は、第2励磁コイル213に第2駆動電流I2を供給することにより、第2ロータ230を駆動する。
【0126】
第2励磁コイル213を励磁させて得られる回転磁界は、例えば3相である。第2励磁コイル213には、駆動信号の各位相が120°ずれたU相用、V相用及びW相用の励磁コイルが含まれる。
【0127】
第1ドライバ321と第2ドライバ322は、コントローラー320と電気的に接続されている。コントローラー320は、第1ドライバ321と第2ドライバ322とを独立して制御する。コントローラー320は、第1駆動電流I1の電流量と第2駆動電流I2の電流量とを独立に制御する。第1駆動電流I1の電流量によって、第1ロータ220の回転角が制御される。第2駆動電流I2の電流量によって、第2ロータ230の回転角が制御される。コントローラー320は、第1ロータ220の回転角と第2ロータ230の回転角とを独立に制御する。
【0128】
第1ロータ220は、第1ロータブラケット221と、永久磁石によって構成された第1ロータコア222とを有する。第1ロータブラケット221は、第1ロータコア222の外周側に配置されている。図12に示すように、第1ロータブラケット221は、中心軸AXの周りに筒状に設けられており、二軸一体型モータMPにおける外径側の円筒出力軸になっている。第1ロータコア222は、N極のマグネット部とS極のマグネット部とを有する。N極のマグネット部とS極のマグネット部は、回転方向に交互に等間隔で配置されている。第1ロータコア222は、第1励磁コイル212が第1ティース214に励磁した回転磁界に応じて回転する。第1ロータコア222は、第1ロータブラケット221に内周面に貼り付けられてもよいし、第1ロータブラケット221の内部に埋め込まれてもよい。
【0129】
第2ロータ230は、第2ロータブラケット231と、永久磁石によって構成された第2ロータコア232と、後述のナット部材251に連結される連結ブラケット233、234を有する。図12に示すように、第2ロータブラケット231は、中心軸AXの周りに筒状に設けられており、二軸一体型モータMPにおける内径側の円筒出力軸になっている。第2ロータ230の内径は、後述のナット部材251及びスプライン外筒261の外径よりも小さくなっている。
【0130】
第2ロータコア232は、N極のマグネット部とS極のマグネット部とを有する。N極のマグネット部とS極のマグネット部は、回転方向に交互に等間隔で配置されている。第2ロータコア232は、第2励磁コイル213が第2ティース216に励磁した回転磁界に応じて回転する。第2ロータコア232は、第2ロータブラケット231に外周面に貼り付けられてもよいし、第2ロータコア232の内部に埋め込まれてもよい。
【0131】
連結ブラケット233は、筒状に形成され、第2ロータブラケット231の内周側に配置されている。第4実施形態において、連結ブラケット233は、第2ロータブラケット231の上端に固定され、第2ロータブラケット231の内周に沿って下方に延びている。連結ブラケット234は、連結ブラケット233の下端に固定され、連結ブラケット233から下方に延びている。
【0132】
第1ティース214及び第1励磁コイル212と、Z方向において重ならない位置に、第1軸受225が配置されている。第1軸受225は、バックヨーク215と、第1ロータブラケット221との間にあり、第1ロータ220を回転自在に支持している。第1軸受225は、軸受225a及び軸受225bを有する複数組み合わせ軸受である。
【0133】
第2ティース216及び第2励磁コイル213と、Z方向において重ならない位置に、第2軸受235が配置されている。第2軸受235は、バックヨーク215と、第2ロータブラケット231との間にあり、第2ロータ230を回転自在に支持している。第2軸受235は、軸受235a及び軸受235bを有する複数組み合わせ軸受である。
【0134】
第1軸受225とZ方向において重ならない位置に、第1回転検出部301が設けられている。第1回転検出部301は、ハウジング240に対する第1ロータブラケット221の回転角を検出し、コントローラー320(図12参照)に供給する。
【0135】
第1回転検出部301は、例えば、レゾルバである。第1回転検出部301は、レゾルバロータ301aと、レゾルバステータ301bと、を有する。レゾルバロータ301aは、第1ロータブラケット221の内周面に固定されている。レゾルバロータ301aは、レゾルバステータ301bの径方向において対向する位置に配置されている。コントローラー320は、第1ロータ220において所望の回転角を得られるように、第1回転検出部301の検出結果に基づいて第1駆動電流I1の電流量を調節する。
【0136】
第2軸受235とZ方向において重ならない位置に、第2回転検出部302が設けられている。第2回転検出部302は、ハウジング240に対する第2ロータブラケット231の回転角を検出し、コントローラー320(図12参照)に供給する。
【0137】
第2回転検出部302は、例えば、レゾルバである。第2回転検出部302は、レゾルバステータ302aと、レゾルバロータ302bと、を有する。レゾルバロータ302bは、第2ロータブラケット231の外周面に固定されている。レゾルバステータ302aは、レゾルバロータ302bの径方向において対向する位置に配置される。コントローラー320は、第2ロータ230において所望の回転角を得られるように、第2回転検出部302の検出結果に基づいて第2駆動電流I2の電流量を調節する。
【0138】
第1回転検出部301と、第2回転検出部302とは、円環板状のカバー299で覆われており、円環板状のカバー299は、第1回転検出部301と、第2回転検出部302との周囲に異物が侵入することを抑制している。
【0139】
軸部材SFは、第1実施形態に係るアクチュエータ1と同様に、シャフト262とネジ軸252とを有している。シャフト262には、軸線方向に沿って延びるスプライン溝部262aが周方向に複数並んで設けられる。ネジ軸252には、中心軸AXを中心とする螺旋状に形成される雄ねじ部252aが形成されている。これらのシャフト262とネジ軸252とは、アクチュエータ1Aの使用態様における上側にシャフト262が位置し、下側にネジ軸252が位置する向きで同軸上に配置され、一体に連結されている。第4実施形態においては、ネジ軸252とシャフト262とが連結部256において圧入され、一体となって軸部材SFを構成している。連結部256には、ネジ軸252とシャフト262とを圧入する際に空気を逃がす孔部256aが設けられる。
【0140】
軸部材SFは、第1ロータ220及び第2ロータ230を軸線方向に貫通することにより、第1ロータ220と第2ロータ230とに対して同軸に配置されている。具体的には、軸部材SFは、二軸一体型モータMPにおける内径側の円筒出力軸である第2ロータブラケット231の内側を軸線方向に貫通して配置されている。
【0141】
第2ロータブラケット231の下方には、内周側に雌ねじ部が設けられるナット部材251が配置されている。ナット部材251は、第2ロータ230と同軸に配置され、第2ロータ230の回転とともに回転する。ナット部材251は、フランジ部251aを有する。フランジ部251aは、固定部材251bにより連結ブラケット234に固定されている。ナット部材251は、当該連結ブラケット234と、連結ブラケット233とを介して第2ロータブラケット231に連結されている。例えば、第2ロータブラケット231と連結ブラケット233との間は、固定部材236で固定されている。また、連結ブラケット233と連結ブラケット234との間は、固定部材237で固定されている。固定部材236、237としては、例えばボルト等が用いられる。ナット部材251は、連結ブラケット233、234により、第2ロータブラケット231と一体に設けられる。従って、ナット部材251は、第2ロータ230が回転する場合、第2ロータ230と一体で中心軸AXの軸回り方向に回転する。
【0142】
軸部材SFが有するネジ軸252は、第2ロータ230から下方に突出している。ネジ軸252は、ナット部材251の内径側に挿入され、ナット部材251を貫通している。ネジ軸252とナット部材251とは、ネジ軸252に形成される雄ねじ部252aと、ナット部材251の内周側に形成される雌ねじ部とが、複数のボールを介して噛み合っている。これにより、ネジ軸252は、ナット部材251が回転すると、回転に応じて軸方向(Z方向)に移動するように構成されている。
【0143】
ナット部材251の下方には、負作動電磁ブレーキ253が配置されている。負作動電磁ブレーキ253は、フィールド253aと、サイドプレート253bと、アーマチュア253cと、ブレーキディスク253dと、電磁コイル253eとを有する。フィールド253a内には、不図示のコイルばねが配置されている。コイルばねは、アーマチュア253cをブレーキディスク253d側に押し付ける。電磁コイル253eの通電時には、コイルばねの弾性力よりも強い力でアーマチュア253cがフィールド253a側に引き付けられ、ブレーキディスク253dが開放される。また、電磁コイル253eの非通電時には、電磁コイル253eによる引き付け力が作用しなくなるため、コイルばねの弾性力によりアーマチュア253cがブレーキディスク253d側に急速に押し付けられる。ブレーキディスク253dは、連結ブラケット234の下方側の端部234aに連結されており、当該連結ブラケット234を介してナット部材251に連結される。ブレーキディスク253dが開放される場合には、ナット部材251が回転可能となる。また、ブレーキディスク253dにアーマチュア253cが押し付けられる場合には、ブレーキディスク253dの回転が規制され、これによりナット部材251の回転が規制される。従って、電磁コイル253eの非通電時には、ネジ軸252の落下が抑制される。なお、負作動電磁ブレーキ253の構成については、上記構成に限定されず、他の構成であってもよい。
【0144】
ネジ軸252の下端部には、ストッパ254が取り付けられている。ストッパ254は、ネジ軸252の上昇を規制する。
【0145】
軸部材SFが有するシャフト262は、スプライン外筒261の内側を貫通して配置されている。スプライン外筒261は、第1ロータブラケット221の上方に配置されている。つまり、スプライン外筒261は、第2ロータ230に対して軸線方向の上方の外側に配置されている。スプライン外筒261は、第1ロータ220と同軸に配置され、第1ロータ220の回転とともに回転する。スプライン外筒261は、連結ブラケット223を介して第1ロータブラケット221に連結されている。例えば、第1ロータブラケット221と連結ブラケット223との間は、固定部材226で固定されている。固定部材226としては、例えばボルト等が用いられる。スプライン外筒261は、連結ブラケット223により、第1ロータブラケット221と一体に設けられる。従って、スプライン外筒261は、第1ロータ220が回転する場合、第1ロータ220と一体で中心軸AXの軸回り方向に回転する。
【0146】
スプライン外筒261の上端には、連結ブラケット224が配置されている。連結ブラケット224は、固定部材227により連結ブラケット223に固定されている。固定部材227としては、例えばボルト等が用いられる。
【0147】
シャフト262は、第2ロータ230から上方に突出している。これにより、シャフト262は、スプライン外筒261の内径側に挿入され、スプライン外筒261を貫通している。スプライン外筒261の内周面には、スプライン溝部262aに係合可能な複数の凸部を有するスプライン部が設けられている。スプライン外筒261を貫通するシャフト262は、スプライン溝部262aが、複数のボールを介してスプライン外筒261のスプライン部と係合している。これにより、スプライン外筒261が回転する場合、回転に応じてシャフト262が軸方向(Z方向)に移動する。また、スプライン外筒261を回転させない状態でナット部材251の回転によりネジ軸252が中心軸AXの軸線方向に移動する場合、シャフト262がネジ軸252と共に軸線方向に移動する。
【0148】
ハウジング240は、モータ用ハウジング241と、ナット用ハウジング242と、スプライン外筒用ハウジング243とを有する。モータ用ハウジング241は、例えば円筒状に形成され、二軸一体型モータMPを収容する。
【0149】
ナット用ハウジング242は、フランジ部242aと、筒状部242bとを有する。フランジ部242aは、円環状に形成され、固定部材244によりモータ用ハウジング241の下端に固定される。フランジ部242aには、ステータコア固定ハウジング217を固定する固定部材245が取り付けられる。固定部材245により、ステータコア211がハウジング240に対して固定される。筒状部242bは、フランジ部242aの内周から下方に延びている。筒状部242bは、ナット部材251を収容する。筒状部242bの下端には、負作動電磁ブレーキ253が固定される。
【0150】
また、ナット用ハウジング242は、連結ブラケット234との間で第4軸受238を保持する。第4軸受238は、ナット部材251を回転自在に支持している。第4軸受238は、例えば転がり軸受である。第4軸受238は、ウェーブワッシャ239a及び押さえ部材239bを介してフランジ部242aに支持されている。第4軸受238は、ウェーブワッシャ239a及び押さえ部材239bにより、筒状部242b側に押し付けられている。
【0151】
スプライン外筒用ハウジング243は、フランジ部243aと、第1筒状部243bと、第2筒状部243cとを有する。フランジ部243aは、円環状に形成され、固定部材246によりモータ用ハウジング241の上端に固定される。また、フランジ部243aは、固定部材247により、固定台STに固定される。フランジ部243aが固定台STに固定されることにより、アクチュエータ1が固定台STに固定される。
【0152】
図13は、図10に示す第4実施形態に係るアクチュエータ1Aの上端付近を拡大した断面図である。第1筒状部243bは、円筒状に形成され、フランジ部243aの内周から上方に延びており、内側にスプライン外筒261を収容している。第1筒状部243bは、第1段部243d及び第2段部243eを介して第2筒状部243cに接続される。
【0153】
第1筒状部243bは、第1段部243dにおいて、連結ブラケット224との間で第3軸受228を保持する。第3軸受228は、ウェーブワッシャ229a及び押さえ部材229bを介して第2段部243eに支持されている。第3軸受228は、ウェーブワッシャ229a及び押さえ部材229bにより、連結ブラケット224側に押し付けられており、連結ブラケット224を介してスプライン外筒261を回転自在に支持している。
【0154】
第2段部243eには、外部と、第2筒状部243cとシャフト262との間に形成される空間との間を連通するエア供給部243fが設けられる。エア供給部243fは、エアパージ用のエア継手を取り付け可能である。エア供給部243fには、エア供給部243fに埃等の異物が入ることを抑制する、閉塞用のボルト243gが、着脱自在に配置されている。
【0155】
第2筒状部243cは、第1筒状部243bよりも径が小さい円筒状に形成され、第1筒状部243bの上端から上方に延びている。第2筒状部243cは、シャフト262の外周面の一部を覆って配置されている。
【0156】
軸部材SFにおけるスプライン溝部262a側の端部、即ち、シャフト262の先端には、縮径部262bが形成されており、シャフト262の先端には、アーム取付部材270が連結される。アーム取付部材270は、連結部271と、筒状部272とを有する。連結部271は、シャフト262の縮径部262bに連結される。連結部271には、ワークを所望の位置に移送するアーム部280が取り付けられる。
【0157】
筒状部272は、第1実施形態と同様に円筒状に形成され、連結部271から下方に延びた状態で設けられる。筒状部272は、スプライン外筒用ハウジング243の第2筒状部243cよりも外側に配置され、第2筒状部243cの上部243caを収容する。換言すると、筒状部272は、内径がスプライン外筒用ハウジング243が有する第2筒状部243cの上部243caの外径よりも大きい円筒形状に形成され、アーム取付部材270の連結部271から軸部材SFが位置する側に軸線方向に沿って延びる。これにより、筒状部272は、スプライン外筒用ハウジング243から離隔してスプライン外筒用ハウジング243の第2筒状部243cを覆う。
【0158】
筒状部272の下端には、第1実施形態と同様に凹部272aが形成されており、凹部272aには、摺動シール277が配置されている。摺動シール277は、筒状部272の内周面に配置されて、スプライン外筒用ハウジング243が有する第2筒状部243cの上部243caに接触する。これにより、摺動シール277は、アーム取付部材270の筒状部272とスプライン外筒用ハウジング243が有する第2筒状部243cの上部243caとの間に形成される隙間を封止する。なお、凹部272aの下端部には、内側に突出する突起部272bが形成され、突起部272bにより、摺動シール277の落下が抑制される。また、電源遮断時においては、摺動シール277のシール抵抗により、シャフト262の回転、即ち、軸部材SFの回転が抑制される。
【0159】
さらに、筒状部272の内周面には、摺動シール277よりも連結部271寄りの位置に、内径が筒状部272の内径よりも小さい円筒形状で形成される補助シール部材278が配置されている。補助シール部材278は、内径が筒状部272の内径よりも小さい円筒形状で形成され、筒状部272の内周面における摺動シール277よりも、連結部271寄りに配置されている。即ち、第1実施形態と同様に、筒状部272の内周面における凹部272aの上側に、凹部272aの径よりは小さい径で筒状部272の内周面が拡径されることにより形成される切欠き部272cが形成されており、補助シール部材278は、当該切欠き部272cに配置されている。
【0160】
補助シール部材278は、内径の大きさが、筒状部272の内周面における切欠き部272cよりも上側の部分の内径と、第2筒状部243cの上部243caの外径との間の大きさになっている。また、補助シール部材278は、中心軸AXの軸線方向における軸部材SFの移動に伴う筒状部272の移動状態に関わらず、補助シール部材278におけるアーム取付部材270の連結部271側の端部278aが、スプライン外筒用ハウジング243の連結部271側の端部243hよりも、摺動シール277寄りに位置するように形成されている。
【0161】
図14は、図10に示す第4実施形態に係るアクチュエータ1Aの軸部材SFが上昇した状態を示す説明図である。第4実施形態に係るアクチュエータ1Aでは、第1ロータ220を回転させることにより、第1ロータ220と一体となって回転するスプライン外筒261を回転させる。これにより、スプライン外筒261の回転と共に、シャフト262を、中心軸AXの軸回り方向に回転させることができる。また、第2ロータ230を回転させることにより、第2ロータ230と一体となって回転するナット部材251を回転させる。これにより、ナット部材251を、Z方向に移動させることなくネジ軸252に対して相対的に回転させることができ、ナット部材251の回転に伴ってネジ軸252をZ方向に移動させることができる。
【0162】
アクチュエータ1Aは、これらのように、第1ロータ220や第2ロータ230を回転させることにより、シャフト262を中心軸AXの軸線周り方向に回転させたり、ネジ軸252をZ方向に移動させたりすることができる。即ち、第1ロータ220や第2ロータ230の回転を制御することにより、軸部材SFを中心軸AXの軸回り方向に回転させたり、Z方向に移動させたりすることができる。従って、アーム取付部材270を介して軸部材SFに取り付けられているアーム部280を、中心軸AXの軸回り方向に回転させたり、Z方向に移動させたりすることができ、アーム部280に対して、所望の動作を行わせることができる。
【0163】
なお、軸部材SFを上方に移動させる場合、図14に示すように、ネジ軸252の下端のストッパ254が連結ブラケット234の下端に当接し、軸部材SFの上方への移動が規制される。また、軸部材SFを下方に移動させる場合、図10及び図13に示すように、連結部271がスプライン外筒用ハウジング243の第2筒状部243cの上端に当接し、軸部材SFの下方への移動が規制される。
【0164】
第4実施形態に係るアクチュエータ1Aにおいても、スプライン外筒261がスプライン外筒用ハウジング243に覆われており、スプライン外筒用ハウジング243が有する第2筒状部243cは、上部243caが、アーム取付部材70が有する筒状部272によって覆われている。また、アーム取付部材270が有する筒状部272の内周面側には、スプライン外筒用ハウジング243が有する第2筒状部243cの上部243caの外周面に対して接触する摺動シール277が配置されている。これらにより、アクチュエータ1Aに液体がかかる環境においてアクチュエータ1Aを使用する場合でも、アクチュエータ1Aにかかった液体が、スプライン外筒用ハウジング243内に入り込むことが抑制される。
【0165】
また、軸部材SFがZ方向に直動したり、中心軸AXの軸回り方向に回転したりする際には、アーム取付部材270が有する筒状部272は、軸部材SFの動作に伴ってスプライン外筒用ハウジング243に対して相対移動をする。その際に、アーム取付部材270の筒状部272の内周面側に配置されている摺動シール277は、スプライン外筒用ハウジング243の第2筒状部243cに対して摺動するため、摺動によって摺動シール277は摩耗することがあるが、筒状部272の内周面には、補助シール部材278が配置されている。これにより、摺動シール277が摩耗することによって、摺動シール277と、第2筒状部243cの外周面との間の隙間が大きくなった場合でも、筒状部272と第2筒状部243cとの間の部分への液体の侵入を、補助シール部材278によって抑制することができる。
【0166】
従って、アクチュエータ1Aの動力源に二軸一体型モータMPを用いた場合でも、アーム取付部材270の筒状部272とスプライン外筒用ハウジング243の第2筒状部243cとの間に配置される摺動シール277が摩耗した際における、防水性能を確保することができる。この結果、防水性能の低下を抑制することができる。
【0167】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に記載されたものに限定されない。例えば、第2実施形態において、補助シール部材78は3つ以上であってもよく、第3実施形態において、補助シール部材78に形成する中間溝部78eは2本以上であってもよい。また、第1実施形態~第4実施形態は、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0168】
1、1A アクチュエータ
10 第1ステータ
10A 第2ステータ
20、220 第1ロータ
20A、230 第2ロータ
22、222 第1ロータコア
22A、232 第2ロータコア
40 第1モータハウジング
40A 第2モータハウジング
42、242 ナット用ハウジング
43、243 スプライン外筒用ハウジング
51、251 ナット部材
53、252 ネジ軸
61、261 スプライン外筒
63、262 シャフト
70、270 アーム取付部材
71、271 連結部
72、272 筒状部
72a、272a 凹部
72c、272c 切欠き部
77、277 摺動シール
78、278 補助シール部材
78a、278a 端部
78b 第1補助シール部材
78c 第2補助シール部材
78d 内周面
78e 中間溝部
80、280 アーム部
130 クランプ機構
150 ネジ軸用ハウジング
432、243c 第2筒状部
432a、243ca 上部
533、252a 雄ねじ部
633、262a スプライン溝部
240 ハウジング
241 モータ用ハウジング
253 負作動電磁ブレーキ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14