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  • 特開-アンダーピニング用圧入杭 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014609
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】アンダーピニング用圧入杭
(51)【国際特許分類】
   E02D 35/00 20060101AFI20220113BHJP
   E02D 27/48 20060101ALI20220113BHJP
   E02D 5/26 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
E02D35/00
E02D27/48
E02D5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117014
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】591226586
【氏名又は名称】兼松サステック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】水谷 羊介
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA19
2D041BA33
2D041DB01
2D041DB12
2D041DB13
(57)【要約】
【課題】安全性および信頼性が高く、安価なアンダーピニング工法を行うことができる、アンダーピニング用圧入杭を提供する。
【解決手段】円柱状の杭体を軸方向に連続して複数本を連結して構成するアンダーピニング用圧入杭であって、前記杭体は木製の柱状体であり、前記杭体の上部と下部に、連結した際に上下に位置する他の前記杭体と連結可能な連結構造を有することを特徴とする、アンダーピニング用圧入杭。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の杭体を軸方向に連続して複数本を連結して構成するアンダーピニング用圧入杭であって、
前記杭体は木製の柱状体であり、
前記杭体の上部と下部に、連結した際に上下に位置する他の前記杭体と連結可能な連結構造を有することを特徴とする、
アンダーピニング用圧入杭。
【請求項2】
請求項1に記載のアンダーピニング用圧入杭において、
前記連結構造は、前記杭体の軸方向の一方の端面に突設するほぞ状の係合凸部と、軸方向の他方の端面に穿設するほぞ穴状の係合凹部と、からなることを特徴とする、
アンダーピニング用圧入杭。
【請求項3】
請求項1に記載のアンダーピニング用圧入杭において、
前記連結構造は、前記杭体の軸方向のそれぞれの端部を対称に切り欠いて形成した嵌合部と、前記嵌合部を前記杭体の軸方向と直交する方向に貫通する貫通孔と、前記貫通孔に挿通するピンと、からなることを特徴とする、
アンダーピニング用圧入杭。
【請求項4】
円柱状の杭体を軸方向に連続して複数本を連結して構成するアンダーピニング用圧入杭であって、
前記杭体は木製の柱状体であり、
連続する前記杭体は、相対する面を貫通する棒状の連結材を介して連結することを特徴とする、
アンダーピニング用圧入杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾いた住宅を水平に戻すアンダーピニング用の圧入杭に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤の不等沈下により傾いた住宅を水平に戻す方法として、アンダーピニング工法が知られている。
アンダーピニング工法は、住宅の基礎下を掘削し、この掘削部から住宅に反力をとってジャッキにより鋼管を地盤中の支持層まで圧入した後、支持層に反力をとって住宅の基礎の高さを調整して、住宅を水平に戻すものである。
このとき地盤中に圧入する鋼管は、外径が140mm~160mm程度、長さが500mm~1000mm程度の短尺な鋼管であり、掘削部内で順次溶接により接合しながら支持層まで圧入する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のアンダーピニング工法には、以下の問題点がある。
(1)鋼管は高価である。また、近年、鋼材の価格は上昇している。
(2)短尺の鋼管を圧入するたびに鋼管の全周溶接を行うため、作業時間のほとんどが溶接時間となってしまう。
(3)溶接作業を掘削部内で行うため、作業環境が悪く、危険である。
(4)溶接は溶接技術者の技量によるため、作業環境が悪ければ溶接の信頼性が落ちるおそれがある。
(5)掘削部は換気状態が悪く、溶接ヒュームによって健康を害するおそれがある。
(6)地下水位が高い場合、溶接作業のために水をくみ出す必要がある。
【0004】
本発明は、安全性および信頼性が高く、安価なアンダーピニング工法を行うことができる、アンダーピニング用圧入杭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、円柱状の杭体を軸方向に連続して複数本を連結して構成するアンダーピニング用圧入杭であって、前記杭体は木製の柱状体であり、前記杭体の上部と下部に、連結した際に上下に位置する他の前記杭体と連結可能な連結構造を有することを特徴とする、アンダーピニング用圧入杭を提供する。
本願の第2発明は、第1発明のアンダーピニング用圧入杭において、前記連結構造は、前記杭体の軸方向の一方の端面に突設するほぞ状の係合凸部と、軸方向の他方の端面に穿設するほぞ穴状の係合凹部と、からなることを特徴とする。
本願の第3発明は、第1発明のアンダーピニング用圧入杭において、前記連結構造は、前記杭体の軸方向のそれぞれの端部を対称に切り欠いて形成した嵌合部と、前記嵌合部を前記杭体の軸方向と直交する方向に貫通する貫通孔と、前記貫通孔に挿通するピンと、からなることを特徴とする。
本願の第4発明は、円柱状の杭体を軸方向に連続して複数本を連結して構成するアンダーピニング用圧入杭であって、前記杭体は木製の柱状体であり、連続する前記杭体は、相対する面を貫通する棒状の連結材を介して連結することを特徴とする、アンダーピニング用圧入杭を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)木杭は鋼管と比べて安価である。また、国産材や間伐材の端材を有効利用し、環境負荷を低減できる。
(2)溶接作業を掘削部内で行う必要がなく、安全である。
(3)技術者の技量や作業環境にかかわらず高い信頼性が得られる。
(4)地下水位が高い場合でも施工可能であり、水のくみ出し作業が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のアンダーピニング用圧入杭の説明図
図2】本発明のアンダーピニング用圧入杭の使用状態の説明図
図3】本発明のアンダーピニング用圧入杭を用いたアンダーピニング工法の説明図
図4】その他実施例にかかる本発明のアンダーピニング用圧入杭の説明図(1)
図5】その他実施例にかかる本発明のアンダーピニング用圧入杭の説明図(2)
図6】その他実施例にかかる本発明のアンダーピニング用圧入杭の説明図(3)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
[1]構成
<1>全体構成
本発明のアンダーピニング用圧入杭は、円柱状の杭体1を複数本連結するものである(図1)。
【0010】
<2>杭体
杭体1は、木製であり、径140mm~160mm、長さ500mm程度の円柱状の中実体である。木製の杭体1は、鋼管と比べて安価である。また、杭体1には国産材や間伐材の端材を有効利用でき、環境負荷を低減できる。
杭体1は、軸方向の上面中央にほぞ状の係合凸部11を設ける。また軸方向の下面中央には、係合凸部11と嵌合可能なほぞ穴状の係合凹部12を設ける。
【0011】
<3>係合凸部と係合凹部による連結
杭体1は、軸方向に複数本をつなげて、地盤中に圧入する(図2)。
上下の杭体1が、係合凹部12に係合凸部11を嵌合して連結するため、係合凸部11が杭体1に作用する曲げに対する抵抗体となる。
【0012】
[2]工法
次に、本発明のアンダーピニング用圧入杭を使用したアンダーピニング工法について説明する。
【0013】
<1>最下段の杭体の圧入
住宅の基礎下を掘削し掘削部Sを形成し、最下段に配置する杭体1aを掘削部S内の地盤上に配置する。最下段に配置する杭体1aは、下面に係合凹部12を設けなくてもよい。
次に、住宅に反力をとってジャッキ2により地盤中に杭体1aを圧入する(図3a)。
【0014】
<2>杭体の圧入(1)
圧入した杭体1aの上面の係合凸部11を、次に圧入する杭体1bの係合凹部12を嵌合し、杭体1a上に杭体1bを載置する。
そして、住宅に反力をとってジャッキ2により地盤中に杭体1a、1bを圧入する(図3b)。杭体1aの係合凸部11を杭体1bの係合凹部12が嵌合しているため、横ずれがない。
【0015】
<3>杭体の圧入(2)
<2>を繰り返して杭体1aが支持層に到達するまで圧入する(図3c)。最上段に配置する杭体1cは、上面に係合凸部11を設けなくてもよい。
従来の溶接とは異なり、木製の杭体1の係合凸部11と係合凹部12を嵌合して連結することで杭体1を一体とするため、掘削部内での溶接作業が不要となり安全である。また、地下水位が高い場合でも施工可能であり、水のくみ出し作業が不要である。
また、杭体1の係合凸部11と係合凹部12を嵌合するだけでよく、技術者の技量や作業環境にかかわらず高い信頼性が得られる。
本実施例においては、杭体1aが支持層に到達するまで圧入したが、支持層に到達する前に住宅を支えるための支持力を得られる場合には、杭体1は支持層に到達する長さは不要である。特に、本発明の杭体1は木製のため鋼管よりも周面摩擦が大きく、鋼管杭より短くても支持力を得られる。このため、設計長が短くなり、短工期で施工を行うことができる。
【0016】
[3]その他実施例
<1>その他の連結構造
上述の実施例においては、杭体1の上面と下面に設けた係合凸部11と係合凹部12とにより連結したが、上下に位置する杭体1をそれぞれ対称に切り欠いて嵌合部13を形成するとともに、嵌合部13を杭体1の軸方向と直交する方向に貫通する貫通孔14を設け、貫通孔14にピン15を挿通することにより、上下の杭体を連結してもよい(図4、5)。ピン15を介して上下の杭体が連結されているため、杭体1を引き抜くこともできる。
【0017】
また、上下に位置する杭体1の相対する面を貫通する棒状の連結材3を介して、上下の杭体1を連結してもよい(図6)。
連結材3は、例えば異径鉄筋をエポキシ樹脂等によりコーティングしたものである。
杭体1は木製であるため、一方の杭体1に下穴16を設けて、下穴16内に連結材3を配置しておけば、杭体1を圧入する際に、他方の杭体1には連結材3が貫入される。そして連結材3の引き抜き抵抗により、上下の杭体1は一体となる。
【符号の説明】
【0018】
1 杭体
11 係合凸部
12 係合凹部
13 嵌合部
14 貫通孔
15 ピン
16 下穴
2 ジャッキ
3 係合棒
図1
図2
図3
図4
図5
図6