(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146141
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】外観検査方法及び外観検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046960
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000139687
【氏名又は名称】株式会社安永
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】疋田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】川村 拓也
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA61
2G051AB02
2G051BA01
2G051CA04
2G051CB01
2G051DA07
2G051EA17
2G051EB01
2G051ED04
(57)【要約】
【課題】カラー画像を用いて検査対象物の外観検査をする際の検査精度を向上させる。
【解決手段】光が照射されたワークWの画像を取得し、取得されたワークWの画像から第1色の単色光画像である第1画像と、該第1色とは異なる色の第2色の単色光画像である第2画像とを取得し、第1画像に基づく画像と第2画像に基づく画像とを、各画像を構成する複数の画素の各階調値をそれぞれ足し合わせることで合成し、得られた合成画像から、階調値が所定範囲内である部分を抜き出して、該抜き出した部分に基づいて欠陥Cの有無を判定する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の表面に形成された欠陥を検査する外観検査方法であって、
前記検査対象物に光を照射する照射工程と、
光が照射された前記検査対象物の画像を取得する撮像工程と、
取得された前記検査対象物の画像から第1色の単色光画像である第1画像と、該第1色とは異なる色の第2色の単色光画像である第2画像とを取得する単色光画像取得工程と、
前記第1画像に基づく画像と前記第2画像に基づく画像とを、各画像を構成する複数の画素の各階調値を対応する画素毎にそれぞれ足し合わせることで合成する画像合成工程と、
前記画像合成工程で得られた合成画像に基づいて前記欠陥の有無を判定する判定工程と、
を含み、
前記判定工程は、前記画像合成工程で得られた合成画像から、階調値が所定範囲内である部分を抜き出して、該抜き出した部分に基づいて前記欠陥の有無を判定する工程であることを特徴とする外観検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の外観検査方法において、
前記照射工程で照射される光は白色光であり、
前記単色光画像取得工程は、前記撮像工程で取得された画像から、RGBのうちの2色の画像を、前記第1画像及び前記第2画像として取得する工程であることを特徴とする外観検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載の外観検査方法において、
前記単色光画像取得工程は、RGBのうち欠陥候補周辺のコントラストが最も大きい色の単色光画像を前記第1画像とし、RGBのうち前記欠陥候補周辺のコントラストが最も小さい色の単色光画像を前記第2画像とする工程であり、
前記画像合成工程の前に、前記第2画像における階調値を反転させて反転画像を得る反転画像取得工程を更に含み、
前記画像合成工程は、前記第1画像と前記反転画像とを合成する工程であることを特徴とする外観検査方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の外観検査方法において、
前記画像合成工程の前に、前記第1画像の各画素の階調値の平均値と、前記第2画像の各画素の階調値の平均値とが同じになるように、前記第1画像の各画素の階調値及び前記第2画像の各画素の階調値を補正する階調値調整工程を更に含み、
前記画像合成工程は、各画素の階調値がそれぞれ調整された後の第1画像と各画素の階調値がそれぞれ調整された後の第2画像とを合成する工程であることを特徴とする外観検査方法。
【請求項5】
検査対象物の表面に形成された欠陥を検査する外観検査装置であって、
前記検査対象物に光を照射する照射部と、
光が照射された前記検査対象物の画像を取得する撮像部と、
取得された前記検査対象物の画像から欠陥の有無を検査する検査部と、を備え、
前記検査部は、
前記撮像部により取得された前記検査対象物の画像から第1色の単色光画像である第1画像と、該第1色とは異なる色の第2色の単色光画像である第2画像とを取得し、
前記第1画像に基づく画像と前記第2画像に基づく画像とを、各画像を構成する複数の画素の各階調値を対応する画素毎にそれぞれ足し合わせることで合成して合成画像を生成し、
前記合成画像から、階調値が所定範囲内である部分を抜き出して、該抜き出した部分に基づいて前記欠陥の有無を判定することを特徴とする外観検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の外観検査装置において、
前記照射部が照射する光は白色光であり、
前記検査部は、前記撮像部により取得された画像から、RGBのうちの2色の画像を、前記第1画像及び前記第2画像として取得することを特徴とする外観検査装置。
【請求項7】
検査対象物の表面に形成された欠陥を検査する外観検査方法であって、
前記検査対象物に光を照射する照射工程と、
光が照射された前記検査対象物の画像を1つ又は複数取得する撮像工程と、
前記画像が1つである場合には、該1つの画像から取得される複数の単色光画像に対して、各単色光画像を構成する複数の画素の各階調値を対応する画素毎にそれぞれ足し合わせることで各単色光画像を合成し、前記画像が複数である場合には、該各画像を構成する複数の画素の各階調値を対応する画素毎にそれぞれ足し合わせることで各画像を合成する画像合成工程と、
前記画像合成工程で得られた合成画像に基づいて前記欠陥の有無を判定する判定工程と、
を含み、
前記判定工程は、前記画像合成工程で得られた合成画像から、階調値が所定範囲内である部分を抜き出して、該抜き出した部分に基づいて前記欠陥の有無を判定する工程であることを特徴とする外観検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、外観検査方法及び外観検査装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品などの検査対象物を撮像して得られた画像に基づいて、検査対象物に欠けや異物の付着等の欠陥がないかを検査する外観検査方法が知られている。従来は、白黒画像に基づく検査が主流であったが、近年では、カラー画像を用いてより詳細な検査を行うことが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の外観検査装置では、複数の撮像画像のそれぞれを複数の色成分に分光処理して複数の分光画像を生成し、生成した分光画像を、検査目的に応じた分配率で合成した合成画像を生成し、生成された合成画像に基づいて検査対象物の外観を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、欠陥に色がついている場合、分光画像のそれぞれにおいて欠陥部分のコントラストに差がある。各分光画像の欠陥部分のコントラストが小さい場合、各分光画像に対して分配率を定めて合成すると、コントラストの情報が劣化してしまうおそれがある。このため、外観検査の検査精度を向上させる観点からは改良の余地がある。
【0006】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、カラー画像を用いて検査対象物の外観検査をする際の検査精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、検査対象物の表面に形成された欠陥を検査する外観検査方法を対象として、前記検査対象物に光を照射する照射工程と、光が照射された前記検査対象物の画像を取得する撮像工程と、取得された前記検査対象物の画像から第1色の単色光画像である第1画像と、該第1色とは異なる色の第2色の単色光画像である第2画像とを取得する単色光画像取得工程と、前記第1画像に基づく画像と前記第2画像に基づく画像とを、各画像を構成する複数の画素の各階調値を対応する画素毎にそれぞれ足し合わせることで合成する画像合成工程と、前記画像合成工程で得られた合成画像に基づいて前記欠陥の有無を判定する判定工程と、を含み、前記判定工程は、前記画像合成工程で得られた合成画像から、階調値が所定範囲内である部分を抜き出して、該抜き出した部分に基づいて前記欠陥の有無を判定する工程である、という構成にした。
【0008】
この構成によると、階調値を足し合わせて画像を合成するため、欠陥候補とその周辺の階調値の差が大きくなり、欠陥周辺のコントラストが大きくなる。特に、異なる色の単色光画像を用いることで、1つの画像の階調値を倍増する等して階調値の差を大きくする場合とは異なり、階調値の差が欠陥により発生していることを精度良く判定することができる。また、階調値が所定範囲内である部分を抜き出すことで、欠陥周辺を強調することができる。これにより、外観検査の検査精度を向上させることができる。
【0009】
前記外観検査方法の一実施形態では、前記照射工程で照射される光は白色光であり、前記単色光画像取得工程は、前記撮像工程で取得された画像から、RGBのうちの2色の画像を、前記第1画像及び前記第2画像として取得する工程である。
【0010】
すなわち、白色光に照射された検査対象物の画像であれば、該画像からRGBの各色の画像を生成することができる。これにより、RGBの各色を検査対象物に照射した画像を取得する必要がなくなり、検査時間を短縮することができる。
【0011】
前記一実施形態において、前記単色光画像取得工程は、RGBのうち欠陥候補周辺のコントラストが最も大きい色の単色光画像を前記第1画像とし、RGBのうち前記欠陥候補周辺のコントラストが最も小さい色の単色光画像を前記第2画像とする工程であり、前記画像合成工程の前に、前記第2画像における階調値を反転させて反転画像を得る反転画像取得工程を更に含み、前記画像合成工程は、前記第1画像と前記反転画像とを合成する工程である、という構成でもよい。
【0012】
この構成によると、欠陥候補周辺のコントラストが最も小さい色の単色光画像の階調値を反転させた反転画像を第1画像と合成することで、欠陥部分の階調値にはほとんど影響を与えることなく、背景部分の階調値を出来る限り小さくすることができる。これにより、欠陥周辺のコントラストを強調することができる。この結果、外観検査の検査精度をより向上させることができる。
【0013】
前記一実施形態において、前記画像合成工程の前に、前記第1画像の各画素の階調値の平均値と、前記第2画像の各画素の階調値の平均値とが同じになるように、前記第1画像の各画素の階調値及び前記第2画像の各画素の階調値を補正する階調値調整工程を更に含み、前記画像合成工程は、各画素の階調値がそれぞれ調整された後の第1画像と各画素の階調値がそれぞれ調整された後の第2画像とを合成する工程である、という構成でもよい。
【0014】
この構成によると、撮像工程で用いるカメラの受光感度がRGBで異なる場合や、照明装置のRGBの波長バランスが異なる場合などであっても、第1画像及び第2画像の階調値の平均値をそろえることで、これらの影響を低減することができる。これにより、欠陥周辺のコントラストを強調しやすくすることができ、外観検査の検査精度をより向上させることができる。
【0015】
ここに開示された技術の他の態様は、検査対象物の表面に形成された欠陥を検査する外観検査装置を対象として、前記検査対象物に光を照射する照射部と、光が照射された前記検査対象物の画像を取得する撮像部と、取得された前記検査対象物の画像から欠陥の有無を検査する検査部と、を備え、前記検査部は、前記撮像部により取得された前記検査対象物の画像から第1色の単色光画像である第1画像と、該第1色とは異なる色の第2色の単色光画像である第2画像とを取得し、前記第1画像に基づく画像と前記第2画像に基づく画像とを、各画像を構成する複数の画素の各階調値を対応する画素毎にそれぞれ足し合わせることで合成して合成画像を生成し、前記合成画像から、階調値が所定範囲内である部分を抜き出して、該抜き出した部分に基づいて前記欠陥の有無を判定する、という構成とした。
【0016】
この構成でも、欠陥周辺の階調値の差を大きくできるとともに、欠陥周辺のコントラストを強調することができる。これにより、外観検査の検査精度を向上させることができる。
【0017】
前記外観検査装置において、前記照射部が照射する光は白色光であり、前記検査部は、前記撮像部により取得された画像から、RGBのうちの2色の画像を、前記第1画像及び前記第2画像として取得する、という構成でもよい。
【0018】
この構成によると、取得した画像からRGBの各色の画像を生成することができる。これにより、RGBの各色を検査対象物に照射した画像を取得する必要がなくなり、検査時間を短縮することができる。
【0019】
ここに開示された技術における外観検査方法の他の態様は、検査対象物の表面に形成された欠陥を検査する外観検査方法を対象として、前記検査対象物に光を照射する照射工程と、光が照射された前記検査対象物の画像を1つ又は複数取得する撮像工程と、前記画像が1つである場合には、該1つの画像から取得される複数の単色光画像に対して、各単色光画像を構成する複数の画素の各階調値を対応する画素毎にそれぞれ足し合わせることで各単色光画像を合成し、前記画像が複数である場合には、該各画像を構成する複数の画素の各階調値を対応する画素毎にそれぞれ足し合わせることで各画像を合成する画像合成工程と、前記画像合成工程で得られた合成画像に基づいて前記欠陥の有無を判定する判定工程と、を含み、前記判定工程は、前記画像合成工程で得られた合成画像から、階調値が所定範囲内である部分を抜き出して、該抜き出した部分に基づいて前記欠陥の有無を判定する工程である、という構成とした。
【0020】
この構成でも、欠陥周辺の階調値の差を大きくできるとともに、欠陥周辺のコントラストを強調することができる。これにより、外観検査の検査精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、カラー画像を用いて検査対象物の外観検査をする際の検査精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る外観検査装置の概略図である。
【
図2】
図2は、外観検査装置のカメラ周辺を示す概略図である。
【
図3】
図3は、外観検査装置の制御系を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、カメラで撮像された画像から単色光画像を生成した状態を示す模式図である。
【
図5】
図5は、画像合成工程を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、合成画像から判定用の画像を取得する様子を示す図である。
【
図7】
図7は、コントローラによる外観検査の処理動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態2に係る外観検査装置において、反転画像生成工程を概略的に示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態2に係る外観検査装置において、合成画像から判定用の画像を取得する様子を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態3に係る外観検査装置において、階調値調整工程を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明における、前後方向、上下方向、及び左右方向は、説明を簡単にするために便宜上規定した方向であり、実際の使用状態を限定するものではない。
【0024】
(実施形態1)
図1及び
図2は、本実施形態1に係る外観検査装置1を概略的に示す。この外観検査装置1は、例えば、検査対象物(以下、ワークWという)としての半導体部品等の欠陥を外観から検査する装置である。ここでいう「欠陥」とは、傷、凹み、異物の付着等である。
【0025】
外観検査装置1は、箱状の筐体2を有する。筐体2内には、3つのトレー収納部4,5,6と、1つの検査部3とが設けられている。トレー収納部4,5,6は、検査前のワークWが並べられたトレーを収納する検査前トレー収納部4と、欠陥無しと判定されたワークWが並べられたトレーを収納する良品トレー収納部5と、欠陥有りと判定されたワークWが並べられたトレーを収納する欠陥品トレー収納部6とを含む。検査部3の詳細については後述する。尚、3つのトレー収納部4,5,6及び1つの検査部3の配置については、特に限定されない。
【0026】
各トレー収納部4,5,6及び検査部3の上側には、各トレー収納部4,5,6及び検査部3が並ぶ方向に沿って延びるレール7が設けられている。レール7にはワークWを保持するアーム8が、該レール7に沿ってスライド可能に支持されている。アーム8の先端(ここでは下側端)には、実際にワークWを保持する保持部8aが設けられている。保持部8aは、ワークWを真空吸着により吸着保持する。保持部8aは、上下方向に移動可能に構成されている。アーム8は、レール7に沿って移動することで、保持部8aに保持されたワークWを、検査前トレー収納部4から、検査部3、良品トレー収納部5若しくは欠陥品トレー収納部6に搬送する。アーム8は、後述するコントローラ100のアーム制御部101により制御される。
【0027】
各トレー収納部4,5,6に収納されたトレーは、コンベヤ(図示省略)により、レール7及び上下方向の両方に直交する方向に移動可能に構成されている。このコンベヤにより、アーム8とトレーとの位置合わせができるようになっている。尚、レール7が、該レール7及び上下方向の両方に直交する方向に移動可能に構成されていて、レール7を移動させることで、アーム8とトレーとの位置合わせをする構成でもよい。
【0028】
検査部3は、角筒状の壁部3aを有する。検査部3は、壁部3aの内側に、ワークWの画像を取得する1つのカメラ10と、ワークWにおける検査領域に光を照射する複数(ここでは4つ)の照明装置20とを備える。
【0029】
本実施形態では、カメラ10は、1つの検査部3に対して1つだけ設けられている。つまり、外観検査装置1の検査部3は、画像取得装置として単一のカメラを備える。カメラ10は、アーム8に保持されたワークWを撮影する。カメラ10は、ワークWのカラー画像を取得可能なカメラである。カメラ10は、
図3に示すように、コントローラ100と通信可能に構成されていて、コントローラ100の光学系制御部102により制御される。
【0030】
図2に示すように、複数の照明装置20は、カメラ10を囲むようにそれぞれ配置されている。各照明装置20は、可視光領域の光を照射するように構成されている。具体的には、白色光、赤色光、緑色光、及び青色光の波長の異なる光を、単色で照射したり、組み合わせて照射したりする。各照明装置20は、それぞれ壁部3aに支持されている。各照明装置20が照射する光のワークWへの入射角度、及び光量は、コントローラ100の光学系制御部102により、それぞれ独立して調整される。すなわち、コントローラ100により、一部の照明装置20のみを作動させかつ他の照明装置20を停止させたり、全ての照明装置20を作動させかつ各照明装置20の光量をそれぞれ異ならせたりすることができる。尚、照明装置20の数や配置は、照明装置20が2つ以上設けられるのであれば、特に限定されない。特に、照明装置20は、カメラ10の周囲全体を囲むように、壁部3aの内周面の周方向全体に配置されてもよい。
【0031】
外観検査装置1は、カメラ10により撮影された画像や、後述する外観検査の結果を表示することができる表示装置30(
図3参照)を備える。表示装置30は、コントローラ100を経由して送られてきた画像等を表示する。表示装置30は、カメラ10及び照明装置20を操作するためのアイコンが表示されるように構成されていてもよい。
【0032】
〈制御系〉
外観検査装置1は、コントローラ100により作動制御される。コントローラ100は、CPUを有するプロセッサ、複数のモジュールが格納されたメモリ等を有する。コントローラ100は、カメラ10により撮影された画像に基づいて、ワークWの欠陥を検査する機能を有する。特に、コントローラ100は、カメラ10により撮影されたカラー画像に基づいて、ワークWの欠陥を検査する。このような機能は、メモリのモジュールにソフトウェアとして格納されている。プロセッサ及びメモリの数は1つに限定されず、コントローラ100が2つ以上のプロセッサ及びメモリを有していてもよい。
【0033】
図3に示すように、コントローラ100は、アーム8の動作を制御するアーム制御部101と、カメラ10及び各照明装置20を制御する光学系制御部102と、カメラ10により取得された画像に所定の処理を施す画像処理部103と、画像処理部103により処理された画像を合成して合成画像を生成する画像合成部104と、合成画像に基づいて欠陥の有無を判定する判定部105と、を有する。アーム制御部101、光学系制御部102、画像処理部103、画像合成部104、及び判定部105は、それぞれ、メモリに格納されたモジュールの一例である。
【0034】
アーム制御部101は、アーム8の移動、保持部8aの動作等を制御する。アーム制御部101は、アーム8に設けられた位置センサ(図示省略)によりアーム8の位置に関する情報を取得する。アーム制御部101は、位置センサからの情報に基づいて、アーム8が所望の位置に位置するように、アーム8を移動させる。アーム制御部101は、ワークWが適切に搬送されるように、保持部8aの上下動及び吸着動作を制御する。
【0035】
光学系制御部102は、カメラ10のピント調整をしたり、各照明装置20の位置、角度、光量、及び照射する光の色等を調整したりする。カメラ10は、光学系制御部102からの制御信号にしたがって、ワークWのカラー画像を取得する。本実施形態1では、各照明装置20は、ワークWに対して白色光を照射する。カメラ10は、光学系制御部102の制御信号に基づいて、各照明装置20により白色光が照射されたワークWのカラー画像を取得する。
【0036】
画像処理部103は、カメラ10により取得したカラー画像に対して、RGBの各色の画像を抽出する。すなわち、画像処理部103は、RGBの24ビット画像から赤色、緑色、及び青色の8ビットの単色光画像をそれぞれ抽出する。画像処理部103により生成された赤色、緑色、及び青色の8ビット画像から、第1画像と、該第1画像とは異なる色の第2画像を選択する。
【0037】
画像合成部104は、画像処理部103により選択された第1画像と第2画像とに対して、各画像を構成する複数の画素の各階調値をそれぞれ足し合わせることで合成する。階調値は、例えば、輝度の階調値である。画像合成の詳細については後述する。尚、階調値として、彩度の階調値を採用してもよい。
【0038】
判定部105は、画像合成部104により生成された合成画像に基づいてワークWの欠陥の有無を判定する。判定部105による判定については後述する。
【0039】
コントローラ100は、判定部105の判定結果を表示するように表示装置30に制御信号を出力する。コントローラ100は、判定部105が欠陥ありと判定したときには、ワークWの欠陥箇所が分かるように表示装置30に表示させる。
【0040】
コントローラ100は、判定部105により良品と判定されたワークWの合成画像を記憶部40に記憶させる。記憶された合成画像は、例えば、判定部105による判定に利用される。
【0041】
〈画像処理及び画像合成〉
画像処理部103及び画像合成部104の処理について説明する。
【0042】
画像処理部103は、
図4に示すように、カメラ10により取得した24ビットのカラー画像から赤色、緑色、及び青色の8ビットの単色光画像をそれぞれ生成する。このとき、例えば欠陥Cが黄色であったとすると、
図4に示すように、赤色の単色光画像と、緑色の単色光画像には欠陥Cが現れる一方で、青色の単色光画像には欠陥Cが現れない。画像処理部103は、これらの画像から第1画像及び第2画像を選択する。本実施形態1では、例えば、欠陥候補の周辺のコントラスト(欠陥Cの候補となる部分とその周辺との輝度差)が大きい2つの画像を、第1画像及び第2画像として選択することができる。以下、第1画像として、赤色の単色光画像が選択され、第2画像として、緑色の単色光画像が選択されたとして説明する。
【0043】
次に、
図5を参照しながら画像合成部104の処理について説明する。画像合成部104は、実際には二次元画像を合成しているが、ここでは、説明を簡単にするために、一次元プロファイルを元に説明する。
【0044】
図5に示すプロファイルは、欠陥Cの部分を含む第1画像、第2画像、及び合成画像の各一次元プロファイルである。(a)は第1画像、(b)は第2画像、(c)は合成画像である。縦軸は、輝度の階調値であり、第1画像及び第2画像は8ビットの画像であるため、
図5(a),(b)の階調値の最小値は0であり、最大値は255となる。
【0045】
画像合成部104は、第1画像を構成する複数の画素の各階調値と、第2画像を構成する複数の画素の各階調値とを、対応する画素毎にそれぞれ足し合わせる。これにより、
図5(c)に示すように、合成画像は511階調となり、階調値の最大値は510となる。
図5(c)では、グラフの縦軸を縮小して示しているため、
図5(a),(b)と差が無いように見えるが、実際には、欠陥Cの部分の階調値と欠陥Cの周辺部分の階調値との差は大きくなっている。画像合成部104は、色を区別することなく階調値を足し合わせる。例えば、第1画像(赤色光の画像)における任意の画素Xの階調値が110であり、第2画像(緑色光の画像)における画素Xに対応する画素の階調値が130であるときには、合成画像における画素Xに対応する画素の階調値は240になる。
【0046】
〈欠陥の判定〉
次に、判定部105の判定について説明する。ここでも、説明を簡単にするために、一次元プロファイルを元に説明する。
【0047】
判定部105は、
図6に示すように、画像合成部104により生成された合成画像から、階調値が所定範囲内である部分を抜き出して、抜き出した部分に基づいて欠陥Cの有無を判定する。具体的には、判定部105は、合成画像から8ビット分の範囲、すなわち、256階調分の範囲を抜き出す。判定部105は、例えば、256を挟むように129~384の範囲を抜き出すことができる。判定部105が抜き出す256階調分の範囲は、ユーザーが任意に設定してもよいし、予め設定された範囲でもよい。また、抜き出す範囲は、16ビットよりも小さくかつ欠陥候補部分の階調値が全て含まれる範囲であれば、7ビット以下でもよく、9ビット以上でもよい。
【0048】
そして、判定部105は、抜き出した256階調分の画像に基づいて欠陥Cの有無を判定する。欠陥Cの判定の具体的な態様は特に限定されない。例えば、判定部105は、記憶部40に記憶された良品の合成画像と比較して、階調値の差の絶対値が所定値以上の部分があるときには、ワークWに欠陥Cがあると判定してもよい。尚、判定部105は、良品の合成画像と比較する際に、検査用合成画像と比較用合成画像との階調値の平均値が揃うように、検査用合成画像及び比較用合成画像の少なくとも一方の階調値を一律に増減させてもよい。
【0049】
〈フローチャート〉
図7は、コントローラ100によるワークの外観検査の動作処理を示すフローチャートである。
【0050】
まず、ステップS1において、コントローラ100は、アーム8を制御して、検査前のワークWを取り出して、検査部3の上まで移動させる。
【0051】
次に、ステップS2において、コントローラ100は、照明装置20によりワークWに白色光を照射する。
【0052】
次いで、ステップS3において、コントローラ100は、白色光が照射されたワークWのカラー画像を取得する。
【0053】
次に、ステップS4において、コントローラ100は、取得されたカラー画像から第1画像及び第2画像を生成する。コントローラ100は、カラー画像から、RGBの各色の単色光画像を生成し、その中から、第1画像及び第2画像を選択することで、第1画像及び第2画像を生成する。
【0054】
次いで、ステップS5において、コントローラ100は、生成された第1画像と第2画像とを合成する。コントローラ100は、各画像の各画素の階調値を足し合わせることで、第1画像と第2画像とを合成する。
【0055】
次に、ステップS6において、コントローラ100は、前記ステップS5で生成された合成画像から階調値が所定範囲の部分を抜き出す。コントローラ100は、8ビット分の範囲を合成画像から抜き出す。
【0056】
そして、ステップS7において、コントローラ100は、前記ステップS6で抜き出した8ビット分の画像に基づいて、欠陥Cの有無を判定する。コントローラ100は、欠陥CがないYESのときにはステップS8に進む。一方で、コントローラ100は、欠陥CがあるNOのときにはステップS9に進む。
【0057】
前記ステップS8において、欠陥Cがないことを表示装置30により報知した後、リターンして、次のワークWの検査を実行する準備を行う。
【0058】
一方で、前記ステップS9では、コントローラ100は、表示装置30により、欠陥Cの箇所が分かるような画像を表示して欠陥Cがあることを報知する。その後、コントローラ100は、リターンして、次のワークWの検査を実行する準備を行う。
【0059】
したがって、本実施形態1によると、ワークWに光を照射し、光が照射されたワークWの画像を取得し、取得されたワークWの画像から第1色の単色光画像である第1画像と、該第1色とは異なる色の第2色の単色光画像である第2画像とを取得し、第1画像と第2画像とを、各画像を構成する複数の画素の各階調値をそれぞれ足し合わせることで合成し、得られた合成画像から、階調値が所定範囲内である部分を抜き出して、該抜き出した部分に基づいて欠陥Cの有無を判定する。これにより、階調値を足し合わせて画像を合成するため、欠陥周辺の階調値の差が大きくなり、コントラストが大きくなる。また、階調値が所定範囲内である部分を抜き出すことで、欠陥周辺を強調することができる。これにより、外観検査の検査精度を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態1では、撮像されたワークWの画像から、RGBのうちの2色の画像を、第1画像及び前記第2画像として取得する。白色光に照射された検査対象物の画像であれば、該画像からRGBの各色の画像を生成することができる。これにより、RGBの各色を検査対象物に照射した画像を取得する必要がなくなり、検査時間を短縮することができる。
【0061】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0062】
本実施形態2では、画像処理部103及び画像合成部104での処理が、前記実施形態1とは異なる。具体的には、画像処理部103は、カラー画像からRGBの各色の単色光画像を生成した後、各単色光画像のうち、欠陥候補周辺のコントラストが最も大きい色の単色光画像を第1画像とし、欠陥候補周辺のコントラストが最も小さい色の単色光画像を第2画像とする。次に、画像処理部103は、
図8に示すように、第2画像について階調値を反転させて、反転画像を取得する反転画像取得工程を実行する。画像処理部103は、階調値0が255となり、階調値255が0となるように、階調の中央値である階調値127.5を基準に階調値を反転させる。
【0063】
画像合成部104は、
図9に示すように、第1画像(
図9(a))と反転画像(
図9(b))とを合成して、合成画像(
図9(c))を生成する。画像合成部104は、前記実施形態1と同様に、第1画像及び反転画像の各画素の階調値を足し合わせることで、第1画像と反転画像とを合成する。このように、欠陥候補周辺のコントラストが大きい画像に対して、欠陥候補周辺のコントラストが小さい画像の反転画像を足し合わせることで、
図9(c)に示すように、背景部分の階調値を出来る限り小さくすることができ、欠陥周辺のコントラストを強調することができる。
【0064】
そして、判定部105は、前記実施形態1と同様に、合成画像から256階調分の範囲を抜き出す。判定部105は、抜き出した後の画像に基づいて欠陥Cの有無を判定する。
【0065】
したがって、本実施形態2によると、欠陥候補周辺のコントラストが最も小さい色の単色光画像の階調値を反転させた反転画像を、欠陥候補周辺のコントラストが最も大きい色の単色光画像である第1画像と合成することで、欠陥部分の階調値にはほとんど影響を与えることなく、背景部分の階調値を出来る限り小さくすることができる。これにより、欠陥部分のコントラストを強調することができ、外観検査の検査精度をより向上させることができる。
【0066】
(実施形態3)
以下、実施形態3について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1及び2と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0067】
本実施形態3では、画像処理部103及び画像合成部104での処理が、前記実施形態1及び2とは異なる。具体的には、画像処理部103は、カラー画像からRGBの各色の単色光画像を生成して、第1画像及び第2画像を選択した後、第1画像の各画素の階調値の平均値と、第2画像の各画素の階調値の平均値とが同じになるように、第1画像の各画素の階調値及び前記第2画像の各画素の階調値を補正する階調値調整工程を実行する。画像処理部103は、例えば
図10に示すように、画像処理部103は、第1画像及び第2画像の階調値の平均値をそれぞれ算出して、該平均値が同じ値になるように、第1画像の各画素の階調値を減少させる補正を行うともに、第2画像については、第2画像の各画素の階調値を増加させる補正を行う。
【0068】
画像合成部104は、補正後の第1画像と補正後の第2画像とを合成して、合成画像を生成する。画像合成部104は、前記実施形態1と同様に、補正後の第1画像及び補正後の第2画像の各画素の階調値を足し合わせることで、2つの画像を合成する。
【0069】
そして、判定部105は、前記実施形態1と同様に、合成画像から256階調分の範囲を抜き出す。判定部105は、抜き出した後の画像に基づいて欠陥Cの有無を判定する。
【0070】
したがって、本実施形態3によると、第1画像と第2画像との平均輝度をそろえるようにすることで、カメラ10の受光感度がRGBで異なる場合や、照明装置20のRGBの波長バランスが異なる場合などであっても、これらの影響を低減することができる。これにより、外観検査の検査精度をより向上させることができる。
【0071】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0072】
例えば、前述の実施形態では、ワークWに白色光を照射して、カメラ10でカラー画像を取得して、該カラー画像からRGBの各色の単色光画像を取得していた。これに限らず、照明装置20により赤色光をワークWに照射して赤色の単色光画像を取得し、緑色光を照射して緑色の単色光画像を取得し、及び青色光を照射して青色の単色光画像を取得してもよい。この場合、カメラ10の撮影位置を固定した状態で、すなわち、各画像でワークWの座標が同じになる状態で、各色の単色光画像をそれぞれ取得する必要がある。
【0073】
また、前述の実施形態では、画像処理部103は、RGBの各色の単色光画像を生成して、第1画像及び第2画像を選択していた。これに限らず、例えば、ワークW毎に予め何色の単色光画像を生成するかテーブル等でコントローラ100のメモリに記憶させておき、画像処理部103はメモリに記憶されたテーブルを参照して、予め設定された色の単色光画像のみを生成するようにしてもよい。
【0074】
また、前述の実施形態2と実施形態3とを組み合わせても良い。すなわち、第1画像と第2画像との階調値の平均値を同じにしてから、第2画像の階調値を反転させて、反転画像を作成するようにしてもよい。これにより、第1画像の階調値と反転画像の階調値とを足し合わせた際に、背景部分の階調値が欠陥部分に対して小さくなり、欠陥周辺のコントラストを出来る限り強調することができる。
【0075】
また、前述の実施形態1~3では、RGBの各色の単色光画像を生成していたが、YCMの各色の単色光画像を生成するようにしてもよい。
【0076】
また、前述の実施形態1~3では、2色の単色光画像を合成していたが、3色以上の単色光画像を合成するようにしてもよい。また、照明装置20の照明条件(光のワークWへの入射角度や光量)が異なる複数の白色光画像を合成するようにしてもよい。
【0077】
また、前述の実施形態1~3では、ワークWの二次元画像を用いていたが、三次元画像を用いるようにしてもよい。この場合でも、各画像でワークWの座標が同じになるように撮影する。
【0078】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
ここに開示された技術は、検査対象物の表面に形成された欠陥を検査する際に有用である。
【符号の説明】
【0080】
1 外観検査装置
10 カメラ
20 照明装置
100 コントローラ(検査部)
W ワーク(検査対象物)