IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ紡織株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-シートキャノピ装置 図1
  • 特開-シートキャノピ装置 図2
  • 特開-シートキャノピ装置 図3
  • 特開-シートキャノピ装置 図4
  • 特開-シートキャノピ装置 図5
  • 特開-シートキャノピ装置 図6
  • 特開-シートキャノピ装置 図7
  • 特開-シートキャノピ装置 図8
  • 特開-シートキャノピ装置 図9
  • 特開-シートキャノピ装置 図10
  • 特開-シートキャノピ装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146189
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】シートキャノピ装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20220928BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20220928BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20220928BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20220928BHJP
   A47C 7/50 20060101ALI20220928BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20220928BHJP
   B60N 3/06 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/62 Z
B60N2/64
B60N2/22
A47C7/50 A
A47C7/74 C
B60N3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047023
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末次 悠一
(72)【発明者】
【氏名】赤池 文敏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健人
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B088
【Fターム(参考)】
3B084JA02
3B084JG01
3B084JG06
3B087BD03
3B087DE01
3B088JB02
(57)【要約】
【課題】より少ない移動量で着座者の身体を広く覆うことが可能なシートキャノピ装置を提供すること。
【解決手段】シート装置1に設けられるシートキャノピ装置10であり、着座者の身体を面状に覆うことが可能な覆い部11と、覆い部11をシート装置1に対して前下がり方向に延びる軸線Lのまわりに回動させることが可能な回動機構12と、を有する。それにより、覆い部11の回転中心である軸線Lが、着座者の身体の長手方向に沿って延びる向きとなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート装置に設けられるシートキャノピ装置であって、
着座者の身体を面状に覆うことが可能な覆い部と、
該覆い部を前記シート装置に対して前下がり方向に延びる軸線のまわりに回動させる回動機構と、を有するシートキャノピ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシートキャノピ装置であって、
前記軸線が、前記シート装置の着座者の頭部を支持する頭部支持面を上方及び/又は後方に越える位置に設定される第1支点と、前記シート装置の着座者の足裏を支持する足裏支持面を前方及び/又は下方に越える位置に設定される第2支点と、を通る線とされ、
前記覆い部が、前記第1支点と前記第2支点との間で弓なりに湾曲する形となって両端支持されるシートキャノピ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシートキャノピ装置であって、
前記回動機構が、前記シート装置に備えられるシートアジャスタの動作により前記第1支点と前記第2支点との間の距離が変化し得る構成とされ、
前記覆い部が、前記距離の変化に応じて湾曲の曲率を変化させる可撓構造を備えるシートキャノピ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシートキャノピ装置であって、
前記第1支点が、前記シートアジャスタによりリクライニング調節可能とされるシートバックに係合して設けられ、前記第2支点が、前記シートアジャスタにより着座者の足裏の支持位置をシート前後方向に調節可能とされるフットレストに係合して設けられるシートキャノピ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のシートキャノピ装置であって、
前記回動機構が、前記覆い部を、着座者の身体を側方からは覆うが前上方からは覆わない側方覆いモードと、着座者の身体を側方と前上方とから半ドーム状に覆う半覆いモードと、に切り替え可能とされるシートキャノピ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のシートキャノピ装置であって、
前記覆い部が、前記回動機構により個別に回動可能とされる通気性のある網状の内戸と該内戸よりも通気性の低い外戸との内外2重構造から成るシートキャノピ装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のシートキャノピ装置であって、
前記覆い部が、前記シート装置の座面と並んで着座者を支持可能な補助座面を成すシートキャノピ装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載のシートキャノピ装置であって、
当該シートキャノピ装置が、更に、前記覆い部により覆われる領域内の後上方から前方及び/又は下方に向けて風を吹き出す上側送風機と、前記領域内の前下方から上方及び/又は後方に向けて風を吹き出す下側送風機と、を有し、前記上側送風機と前記下側送風機とから互いに同一の又は異なる温度の風を吹き出すシートキャノピ装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のシートキャノピ装置であって、
前記覆い部が、前記シート装置を挟んでシート幅方向に対称状に一対で設けられるシートキャノピ装置。
【請求項10】
請求項1に記載のシートキャノピ装置であって、
前記回動機構が、リクライニング調節可能とされるシートバックに係合して前記覆い部を上端側のみで回動可能なように支持する片持ち構造とされるシートキャノピ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートキャノピ装置に関する。詳しくは、シート装置に設けられるシートキャノピ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートバックの上部に、着座者の頭部をドーム状に覆う形に展開されるシートキャノピ装置が設けられた構成が知られている(特許文献1)。シートキャノピ装置は、シートバックの上部に設けられることで、シートバックのリクライニング動作に追従可能な構成とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-197090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、着座者の頭部を覆う覆い部が、シートバックから前方に張り出す形に展開される構成とされる。そのため、着座者の身体を広く覆うためには、覆い部を展開方向に長く形成し、かつ、移動量を大きくする必要があり、構造全体が煩雑化しやすい。そこで、本発明は、より少ない移動量で着座者の身体を広く覆うことが可能なシートキャノピ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のシートキャノピ装置は次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明のシートキャノピ装置は、シート装置に設けられ、着座者の身体を面状に覆うことが可能な覆い部と、覆い部をシート装置に対して前下がり方向に延びる軸線のまわりに回動させる回動機構と、を有する。
【0007】
上記構成によれば、覆い部の回転中心である軸線が、着座者の身体の長手方向に沿って延びる向きとなる。そのため、覆い部を、より少ない移動量で着座者の身体のまわりに移動させることができ、より少ない移動量で着座者の身体を広く覆うことができる。
【0008】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。軸線が、シート装置の着座者の頭部を支持する頭部支持面を上方及び/又は後方に越える位置に設定される第1支点と、シート装置の着座者の足裏を支持する足裏支持面を前方及び/又は下方に越える位置に設定される第2支点と、を通る線とされる。覆い部が、第1支点と第2支点との間で弓なりに湾曲する形となって両端支持される。
【0009】
上記構成によれば、覆い部により、着座者の身体を広く包み込むように覆ったり、視界の妨げとならない位置へと退かせたりすることができる。
【0010】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。回動機構が、シート装置に備えられるシートアジャスタの動作により第1支点と第2支点との間の距離が変化し得る構成とされる。覆い部が、上記距離の変化に応じて湾曲の曲率を変化させる可撓構造を備える。
【0011】
上記構成によれば、覆い部を、シート装置の調節動作に合わせて、第1支点と第2支点との間で弓なりに湾曲する形で両端支持される状態を維持することができるように追従変形させることができる。
【0012】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。第1支点が、シートアジャスタによりリクライニング調節可能とされるシートバックに係合して設けられる。第2支点が、シートアジャスタにより着座者の足裏の支持位置をシート前後方向に調節可能とされるフットレストに係合して設けられる。
【0013】
上記構成によれば、シート装置の頭部支持面と足裏支持面との間の距離が変えられる動作、すなわち着座者の姿勢を変化させる動作に応じて、覆い部を、変化した姿勢に合った湾曲具合となるように追従変形させることができる。
【0014】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。回動機構が、覆い部を、着座者の身体を側方からは覆うが前上方からは覆わない側方覆いモードと、着座者の身体を側方と前上方とから半ドーム状に覆う半覆いモードと、に切り替え可能とされる。
【0015】
上記構成によれば、着座者の身体を覆い部により側方と前上方とから広く覆ったり、側方からのみ覆い前上方を開放したりする切り替えを行うことができる。
【0016】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。覆い部が、回動機構により個別に回動可能とされる通気性のある網状の内戸と内戸よりも通気性の低い外戸との内外2重構造から成る。
【0017】
上記構成によれば、覆い部による覆いを、網状の内戸による通気性のある覆いと、内戸よりは通気性の低い外戸による覆いと、に切り替えることができる。
【0018】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。覆い部が、シート装置の座面と並んで着座者を支持可能な補助座面を成す。
【0019】
上記構成によれば、覆い部により、シート装置の座面を合理的に拡張することができる。
【0020】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。シートキャノピ装置が、更に、覆い部により覆われる領域内の後上方から前方及び/又は下方に向けて風を吹き出す上側送風機と、上記領域内の前下方から上方及び/又は後方に向けて風を吹き出す下側送風機と、を有し、上側送風機と下側送風機とから互いに同一の又は異なる温度の風を吹き出す。
【0021】
上記構成によれば、覆い部により覆われる領域内に後上方と前下方とからそれぞれ個別に風を吹き出して、着座者に対してより快適な空調を行うことができる。
【0022】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。覆い部が、シート装置を挟んでシート幅方向に対称状に一対で設けられる。
【0023】
上記構成によれば、覆い部がシート幅方向に対称状に一対で設けられることで、着座者の身体を個々の少ない移動量でより広く覆うことができる。
【0024】
また、本発明のシートキャノピ装置は、更に次のように構成されていても良い。回動機構が、リクライニング調節可能とされるシートバックに係合して覆い部を上端側のみで回動可能なように支持する片持ち構造とされる。
【0025】
上記構成によれば、シート装置の足元に覆い部の支点を設定できないような構成であっても、覆い部をシート装置に適切に設けることができる。また、覆い部がシートバックに係合して上端側のみで片持ち状に支持される構成となることから、覆い部を、シートバックのリクライニング動作時に閊えにくい構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施形態に係るシートキャノピ装置の概略構成を表す斜視図である。
図2図1の側面図である。
図3】シートキャノピ装置をセミオープンモードにした状態を表す斜視図である。
図4図3の側面図である。
図5】シートキャノピ装置をフルクローズモードにした状態を表す斜視図である。
図6図5の側面図である。
図7】シート装置をリラックスモードにした状態を表す斜視図である。
図8図7の側面図である。
図9】第2の実施形態に係るシート空調装置の概略構成を表す斜視図である。
図10】第3の実施形態に係るシート空調装置の概略構成を表す斜視図である。
図11】第4の実施形態に係るシート空調装置の概略構成を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0028】
《第1の実施形態》
(シートキャノピ装置10の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシートキャノピ装置10の構成について、図1図8を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート前後方向」や「シート幅方向」のように各方向に「シート」を付して示す場合には、後述するシート装置1を基準とした各方向をそれぞれ指すものとする。
【0029】
図1図2に示すように、本実施形態に係るシートキャノピ装置10は、自動車のフロアF上に設置されるシート装置1に適用されている。上記シート装置1は、着座者の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を有する。また、シート装置1は、着座者の足乗せ部となるオットマン4と、足裏乗せ部となるフットレスト5と、を有する。
【0030】
シートバック2は、その上部領域に着座者の頭凭れ部となる頭部支持面2Aが形成された、いわゆるハイバックタイプの縦長な形状を備えた構成とされる。上記シート装置1は、シートバック2やオットマン4、フットレスト5の使用位置をユーザによる電動操作により調節可能なシートアジャスタAを備える。
【0031】
具体的には、シートアジャスタAは、シートバック2の左右両サイドの下端部をシートクッション3の左右両サイドの後端部に対してそれぞれ回動可能なように連結する不図示のリクライナを備える。また、シートアジャスタAは、オットマン4をシートクッション3の前側部に対してシート前後方向に展開格納可能なように連結する不図示の展開格納機構を備える。
【0032】
また、シートアジャスタAは、フットレスト5の本体部5BをフロアFに対してシート前後方向にスライド可能なように連結する不図示の可動機構を備える。この不図示の可動機構は、着座者の足裏が乗せられるフットレスト5の足裏支持面5Aの起立角度や高さ位置も調節可能な構成とされる。上記シートアジャスタAにより、シートバック2は、その背凭れ角度をシート前後方向に自由に調節することができる構成とされる(図7図8参照)。
【0033】
また、オットマン4は、シートクッション3の前側面に沿って折り畳まれる格納状態(図1図2参照)と、シートクッション3の前側面から斜め上向きとなって前方に迫り出す展開状態(図7図8参照)と、に自由に切り替えられる構成とされる。詳しくは、オットマン4は、そのシートクッション3の前側面から前方に迫り出す迫り出し位置を適宜自由に調節することができる構成とされる。
【0034】
また、フットレスト5は、フロアF上をシート前後方向に自由に動かすことができる構成とされる。また、フットレスト5は、そのフロアF上をスライドする本体部5Bに対する足裏支持面5Aの起立角度や高さ位置を自由に調節することができる構成とされる。詳しくは、フットレスト5は、その足裏支持面5AをフロアFと面一状となるように落とし込む格納状態(図1図2参照)と、フロアFから斜め上向きに起立させる展開状態(図7図8)と、に自由に切り替えられる構成とされる。
【0035】
また、フットレスト5は、そのフロアFに対する本体部5Bのスライド位置や本体部5Bに対する足裏支持面5Aの起立角度や高さ位置を適宜自由に調節することができる構成とされる。また、フットレスト5は、オットマン4の展開格納に連動して、その本体部5Bの位置や足裏支持面5Aの角度がオットマン4の展開位置に応じた位置や角度に動かされる構成とされる。
【0036】
(シートキャノピ装置10の各部構成について)
図1図2に示すように、シートキャノピ装置10は、着座者の身体を左右両サイドから包み込み状に覆うことが可能な左右一対の覆い部11と、これら覆い部11をシート装置1に対して回動可能なように連結する回動機構12と、を有する。回動機構12は、ユーザによる電動操作により各覆い部11の位置を調節可能な構成とされる。
【0037】
各覆い部11は、それぞれ、通気性を備える帆布等の布材から成る幌11Aと、幌骨を成す複数本のワイヤフレーム11Bと、を有する。各ワイヤフレーム11Bは、それぞれ、アーチ状に曲げられた形状とされて、各幌11Aの開閉方向に間隔を空けて並ぶように設けられている。そして、各ワイヤフレーム11Bは、各々の外表面間に跨って幌11Aが一体に被せ付けられた構成とされる。
【0038】
各ワイヤフレーム11Bは、それぞれの後上端と前下端とが回動機構12の上端連結部12Aと下端連結部12Bとに回動可能なように連結された構成とされる。各幌11Aは、各ワイヤフレーム11Bの間でそれぞれ舟形の面形状を成す形に張られる。
【0039】
回動機構12は、各覆い部11をシート装置1に対して前下がり方向に延びる軸線Lのまわりに回動可能なように連結する。具体的には、回動機構12は、各覆い部11を、シートバック2の後上方に設けられる上端連結部12Aと、フットレスト5の前方に設けられる下端連結部12Bと、によって、軸線Lのまわりに回動可能となるように連結する。
【0040】
上端連結部12Aは、シートバック2の頭部支持面2Aを後上方に越える位置に設けられ、シートバック2に連結されている。具体的には、上端連結部12Aは、上記シートバック2の後上方箇所において、シートバック2に対するシート前後方向や高さ方向の取付位置やシート幅方向に延びる軸まわりの回動角度をそれぞれ調節することができるように連結されている。
【0041】
下端連結部12Bは、フットレスト5の足裏支持面5Aを前方に越える位置に設けられ、フットレスト5の本体部5Bに連結されている。具体的には、下端連結部12Bは、上記フットレスト5の前方箇所において、フットレスト5の本体部5Bに対するシート前後方向や高さ方向の取付位置やシート幅方向に延びる軸まわりの回動角度をそれぞれ調節することができるように連結されている。
【0042】
それにより、上端連結部12Aと下端連結部12Bとは、それぞれ、着座者の体格や後述するシートアジャスタAによるシート装置1の形態変更に合わせて、軸線Lの延びる方向を前下がり方向の範囲内で調節することができる構成とされる。上端連結部12Aと下端連結部12Bとは、それぞれ、シート装置1のシート幅方向の中央に位置するように設けられている。
【0043】
そして、上端連結部12Aと下端連結部12Bとは、それぞれ、各覆い部11の対応する各ワイヤフレーム11Bの後上端と前下端とをそれぞれ軸線Lのまわりに回動させられる状態に連結している。それにより、各覆い部11は、上端連結部12Aと下端連結部12Bとによって軸線Lのまわりに回動可能となるように両端支持された構成とされる。上記軸線Lは、上端連結部12Aの中心となる第1支点P1と、下端連結部12Bの中心となる第2支点P2と、を通る線とされる。
【0044】
各覆い部11の幌骨を成す各ワイヤフレーム11Bは、それぞれ、上記第1支点P1と第2支点P2との間の距離よりも長尺な構成とされる。各ワイヤフレーム11Bは、それらの後上端と前下端とが上端連結部12Aと下端連結部12Bとに連結されることで、これらの間で弓なりに湾曲する形に撓んだ状態としてセットされる。
【0045】
なお、各覆い部11の外側の縁部に沿った幌骨を成す外縁側の各ワイヤフレーム11Bとそれらの内側に並ぶ2番目の各ワイヤフレーム11Bとは、それぞれ、上端連結部12Aと下端連結部12Bとに対して、回動することなく定位置に固定された状態として設けられる。各覆い部11の外縁側の各ワイヤフレーム11Bは、それらの上端連結部12A及び下端連結部12Bに対する連結点から、シートバック2の背裏側に弓なりに湾曲して延びる形に設けられる。
【0046】
また、各覆い部11の外縁側から2番目の各ワイヤフレーム11Bは、それらの上端連結部12A及び下端連結部12Bに対する連結点から、シートバック2及びシートクッション3のシート幅方向の外側領域へと延び出すようにシート幅方向の外側に弓なりに湾曲して延びる形に設けられる。
【0047】
上記組み付けにより、各覆い部11の外縁側の各ワイヤフレーム11Bと2番目の各ワイヤフレーム11Bとの間に張られた幌11Aの部分は、シートバック2とシートクッション3とをシート幅方向の外側から面状に包み込む形に覆った状態として設けられる構成とされる(図2参照)。各覆い部11の幌11Aは、上端連結部12Aと下端連結部12Bとの間の全域に亘って各ワイヤフレーム11Bの外表面間に跨って被せられた状態とされる。
【0048】
各覆い部11の幌骨を成す各ワイヤフレーム11Bは、ユーザによる電動操作により上端連結部12Aと下端連結部12Bとが同時に駆動操作されることで、互いに軸線Lのまわりに左右対称状に一斉に開閉されるように動かされる。それにより、各覆い部11は、それらの幌11Aの張られる領域が、図1図2に示すオープンモードM1と、図3図4に示すセミオープンモードM2と、図5図6に示すフルクローズモードM3と、に切り替えられるようになっている。
【0049】
ここで、各覆い部11のセミオープンモードM2が、本発明の「側方覆いモード」に相当する。また、各覆い部11のフルクローズモードM3が、本発明の「半覆いモード」に相当する。
【0050】
図1図2に示すオープンモードM1は、前述した各覆い部11の外縁側の各ワイヤフレーム11Bと2番目の各ワイヤフレーム11Bとの間に張られた舟形状の幌11Aの部分のみが着座者の身体を左右両サイドから包み込み状に覆うように設けられるモードとされる。各覆い部11の残りの幌11Aの部分は、上記張られた舟形状の幌11Aの内側の部分に重なって設けられる。
【0051】
上記オープンモードM1では、各覆い部11は、着座者の身体を側方から僅かに覆うものの、前方や上方からは覆わない状態とされる。したがって、着座者の前方視界や上方視界が広く開放された状態とされる。
【0052】
図3図4に示すセミオープンモードM2は、図1図2で示したオープンモードM1から各覆い部11が軸線Lのまわりに互いに閉じられる方向に動かされて、着座者の身体を左右両サイドと前方及び上方とから包み込み状に覆うように展開されるモードとされる。このセミオープンモードM2では、各覆い部11は、着座者の身体をシート幅方向の両外側から完全に覆うと共に、着座者の前方視界を両外側から狭める。
【0053】
しかし、上記セミオープンモードM2では、各覆い部11は、着座者の正面位置までは展開されず、互いの間が空けられる状態とされる。したがって、着座者の身体を各覆い部11によりシート幅方向の両外側から広く覆いつつも、着座者の前方視界や上方視界を確保することができる。
【0054】
図5図6に示すフルクローズモードM3は、図3図4で示したセミオープンモードM2から更に各覆い部11を軸線Lのまわりに互いに閉じられる位置まで動かして、着座者の身体を左右両サイドと前方及び上方とから完全に包み込むように展開されるモードとされる。このフルクローズモードM3では、各覆い部11は、着座者の側方視界の他、前方視界や上方視界も完全に遮る状態とされる。
【0055】
上記のように、シートキャノピ装置10は、各覆い部11を、オープンモードM1(図1図2参照)と、セミオープンモードM2(図3図4参照)と、フルクローズモードM3(図5図6参照)と、に適宜切り替えることが可能とされる。したがって、着座空間を開放的にしたり閉鎖的にしたりする切り替えを段階的に行うことができる。
【0056】
詳しくは、シートキャノピ装置10は、上記各覆い部11の開閉移動を、シート装置1のシート幅方向の中央を前下がり方向に延びる軸線Lのまわりに行える構成とされる。そのため、各覆い部11をシート幅方向に延びる軸線Lまわりに開閉するような構成と比べて、各覆い部11を少ない移動量で着座者の身体を広く覆ったり開放したりするように切り替えることができる。
【0057】
すなわち、上記軸線Lは、前下がり方向に延びる向きとされることで、着座者の身体の長手方向(頭部から足先に向かう方向)に沿って延びる向きとなる。そのようなことから、各覆い部11は、着座者の身体の短手方向を、着座者の身体に沿って回転するように動かされることとなる。そのため、各覆い部11を、少ない移動量で着座者の身体を広く覆ったり開放したりするように切り替えることができる。
【0058】
上記シートキャノピ装置10は、更に、上端連結部12Aの前部に設けられる上側送風機13Aと、下端連結部12Bの後部に設けられる下側送風機13Bと、を備える。上側送風機13Aは、上端連結部12Aの前部から前方に向かって風を吹き出す構成とされる。詳しくは、上側送風機13Aは、前方と前斜め左方と前斜め右方とにそれぞれ風を吹き出す構成とされる。
【0059】
下側送風機13Bは、下端連結部12Bの後部から後上方に向かって風を吹き出す構成とされる。詳しくは、下側送風機13Bは、後上方と後斜め右上方と後斜め左上方とにそれぞれ風を吹き出す構成とされる。
【0060】
上側送風機13Aと下側送風機13Bとは、それぞれ、内部に不図示のHEPAフィルタ等のフィルタが内蔵され、取り込んだ空気に含まれる細菌やウィルスを吸着・濾過して清浄化した空気を外部へと吹き出す構成とされる。また、上側送風機13Aと下側送風機13Bとは、図示は省略されているが、取り込んだ空気の温度や湿度を個別に調節したりアロマオイル等の香り成分を付加したりして吹き出すことができる空気調節部を備えた構成とされる。
【0061】
それにより、上側送風機13Aと下側送風機13Bとは、互いに同一温度の風を吹き出したり異なる温度の風を吹き出したりすることができる構成とされる。したがって、例えば、下側送風機13Bから比較的暖かい風を吹き出し、上側送風機13Aから比較的涼しい風を吹き出すように設定することで、各覆い部11によって覆われる着座空間を快適に温調することができる。
【0062】
上記上側送風機13Aと下側送風機13Bとから吹き出される風により、各覆い部11が図1図2に示したようなオープンモードM1とされる状態では、各覆い部11による覆いのない領域に、着座空間と周囲の車内空間との間を仕切るエアカーテン状の仕切り(エアシールド)を形成することができる。また、各覆い部11が図3図4に示したようなセミオープンモードM2とされる状態でも同様に、各覆い部11による覆いのない領域に、着座空間と周囲の車内空間との間を仕切るエアカーテン状の仕切り(エアシールド)を形成することができる。
【0063】
なおかつ、各覆い部11による覆いのある領域では、上側送風機13Aと下側送風機13Bとから吹き出された風を各覆い部11の内周面に当てて、これらの内周面に沿って着座空間内に広く吹き流すことができる。その際、上側送風機13Aと下側送風機13Bとから吹き出された風は、各覆い部11の内周面に当たることで勢いが和らげられた間接風となって、着座者の身体に優しく当てられることとなる。
【0064】
また、各覆い部11が図5図6に示したようなフルクローズモードM3とされる状態では、各覆い部11によりドーム状に覆われた着座空間内の全域に亘って、上側送風機13Aと下側送風機13Bとから吹き出された風を、各覆い部11の内周面に沿って効率的に広く吹き流すことができる。また、上記フルクローズモードM3の状態では、各覆い部11の間が閉じられている。
【0065】
そのため、上側送風機13Aと下側送風機13Bとから吹き出された各風は、それぞれ、各覆い部11の内周面に沿って、これらの開口するシート装置1の後方へ向けて吹き出されることとなる。したがって、上記ドーム状に覆われた着座空間内への風の吹き出しにより、着座空間を陽圧化して、着座空間内に外部の空気が直接侵入することを抑制することができる。
【0066】
各覆い部11は、上記フルクローズモードM3とされた状態から、図7図8に示すようにシート装置1がリラックスモードに切り替えられても、フルクローズモードM3の状態を維持するようになっている。ここで、シート装置1は、着座者が通常の着座姿勢で座ることが可能な着座モードから、ユーザによる電動操作により、着座者が安楽な姿勢で座ることができるリラックスモードへと切り替えられる構成とされる。
【0067】
具体的には、シート装置1は、リラックスモードへの切り替えにより、シートバック2が後方に倒される。また、オットマン4が、シートクッション3の前側面に折り畳まれた状態から斜め上向きとなって前方に迫り出す展開状態へと切り替えられる。また、フットレスト5が、オットマン4の展開位置に対応して、本体部5Bを前方移動させると共に足裏支持面5AをフロアF上から起こし上げて上方へと移動させた展開状態へと切り替えられる。
【0068】
上記移動により、シート装置1は、シートクッション3に対するシートバック2の角度とオットマン4の角度とが寝かされると共に、フットレスト5がシートバック2から前方に遠ざかるように動かされる。それにより、シートキャノピ装置10の上端連結部12Aと下端連結部12Bとの間の距離、すなわち第1支点P1と第2支点P2との間の距離が広げられる。
【0069】
しかし、上記移動に伴い、各覆い部11は、各々のワイヤフレーム11Bが第1支点P1と第2支点P2との間の距離の変化に応じて、これらの間を延びる部分の湾曲の曲率を小さくする形に変形する。それにより、各覆い部11は、各々の周長変化を伴うことなく、リラックスモードとされたシート装置1に座る着座者の身体に合った形に変形して、着座者の身体を広く覆った状態を維持する。
【0070】
すなわち、シート装置1は、上記リラックスモードへの切り替えにより、頭部支持面2Aと足裏支持面5Aとの間の距離が広げられる。また、それに併せて、着座者の着座姿勢も、図5図6に示すような胴体部と大腿部と下腿部とがクランク状に折れ曲がった姿勢から、図7図8に示すようなストレート状に延びる姿勢に切り替えられる。
【0071】
それに対して、各覆い部11も、図5図6に示すような各ワイヤフレーム11Bが弓なりに大きく湾曲した形態から、図7図8に示すような着座者の姿勢と合うように前後に細長くなる形に引き伸ばされた形態へと切り替えられる。このように、シートキャノピ装置10は、シート装置1の頭部支持面2Aと足裏支持面5Aとの間の距離が変えられる動作、すなわち着座者の姿勢を変化させる動作に応じて、各覆い部11を、変化した姿勢に合った湾曲具合となるように追従変形させることができる構成とされる。
【0072】
なお、図示は省略されているが、シートキャノピ装置10は、各覆い部11が図1図2で示したオープンモードM1や図5図6で示したセミオープンモードM2とされた状態から、シート装置1がリラックスモードへと切り替えられても、それぞれの開閉状態を維持して着座者の身体の形に合わせた細長く引き伸ばされた形態へと切り替えられるようになっている。
【0073】
各覆い部11は、上記オープンモードM1(図1図2参照)とフルクローズモードM3(図5図6)との間の任意の位置に展開できるようになっている。各覆い部11は、互いに左右対称状に一斉に開閉されるものの他、個別に開閉されるようになっていても良い。各覆い部11は、電動操作の他、ユーザによる手動操作によって開閉されるものであっても良い。
【0074】
(まとめ)
以上をまとめると、本実施形態に係るシートキャノピ装置10は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0075】
すなわち、シートキャノピ装置(10)は、シート装置(1)に設けられ、着座者の身体を面状に覆うことが可能な覆い部(11)と、覆い部(11)をシート装置(1)に対して前下がり方向に延びる軸線(L)のまわりに回動させる回動機構(12)と、を有する。
【0076】
上記構成によれば、覆い部(11)の回転中心である軸線(L)が、着座者の身体の長手方向に沿って延びる向きとなる。そのため、覆い部(11)を、より少ない移動量で着座者の身体のまわりに移動させることができ、より少ない移動量で着座者の身体を広く覆うことができる。
【0077】
また、軸線(L)が、シート装置(1)の着座者の頭部を支持する頭部支持面(2A)を上方及び/又は後方に越える位置に設定される第1支点(P1)と、シート装置(1)の着座者の足裏を支持する足裏支持面(5A)を前方及び/又は下方に越える位置に設定される第2支点(P2)と、を通る線とされる。
【0078】
覆い部(11)が、第1支点(P1)と第2支点(P2)との間で弓なりに湾曲する形となって両端支持される。上記構成によれば、覆い部(11)により、着座者の身体を広く包み込むように覆ったり、視界の妨げとならない位置へと退かせたりすることができる。
【0079】
また、回動機構(12)が、シート装置(1)に備えられるシートアジャスタ(A)の動作により第1支点(P1)と第2支点(P2)との間の距離が変化し得る構成とされる。覆い部(11)が、上記距離の変化に応じて湾曲の曲率を変化させる可撓構造を備える。上記構成によれば、覆い部(11)を、シート装置(1)の調節動作に合わせて、第1支点(P1)と第2支点(P2)との間で弓なりに湾曲する形で両端支持される状態を維持することができるように追従変形させることができる。
【0080】
また、第1支点(P1)が、シートアジャスタ(A)によりリクライニング調節可能とされるシートバック(2)に係合して設けられる。第2支点(P2)が、シートアジャスタ(A)により着座者の足裏の支持位置をシート前後方向に調節可能とされるフットレスト(5)に係合して設けられる。
【0081】
上記構成によれば、シート装置(1)の頭部支持面(2A)と足裏支持面(5A)との間の距離が変えられる動作、すなわち着座者の姿勢を変化させる動作に応じて、覆い部(11)を、変化した姿勢に合った湾曲具合となるように追従変形させることができる。
【0082】
また、回動機構(12)が、覆い部(11)を、着座者の身体を側方からは覆うが前上方からは覆わない側方覆いモード(M2)と、着座者の身体を側方と前上方とから半ドーム状に覆う半覆いモード(M3)と、に切り替え可能とされる。上記構成によれば、着座者の身体を覆い部(11)により側方と前上方とから広く覆ったり、側方からのみ覆い前上方を開放したりする切り替えを行うことができる。
【0083】
また、シートキャノピ装置(10)が、更に、覆い部(11)により覆われる領域内の後上方から前方及び/又は下方に向けて風を吹き出す上側送風機(13A)と、上記領域内の前下方から上方及び/又は後方に向けて風を吹き出す下側送風機(13B)と、を有し、上側送風機(13A)と下側送風機(13B)とから互いに同一の又は異なる温度の風を吹き出す。上記構成によれば、覆い部(11)により覆われる領域内に後上方と前下方とからそれぞれ個別に風を吹き出して、着座者に対してより快適な空調を行うことができる。
【0084】
また、覆い部(11)が、シート装置(1)を挟んでシート幅方向に対称状に一対で設けられる。上記構成によれば、覆い部(11)がシート幅方向に対称状に一対で設けられることで、着座者の身体を個々の少ない移動量でより広く覆うことができる。
【0085】
《第2の実施形態》
続いて、第2の実施形態に係るシートキャノピ装置10の構成について、図9を用いて説明する。本実施形態に係るシートキャノピ装置10は、各覆い部11が、第1の実施形態で示した幌11Aとは別に、内戸となる網戸11Cを備えた内外2重構造から成る構成とされる。ここで、各幌11Aが本発明の「外戸」に相当し、各網戸11Cが本発明の「内戸」に相当する。
【0086】
各網戸11Cは、各幌11Aと同様に、上端連結部12Aと下端連結部12Bとに連結された複数本のワイヤフレーム11Bによって幌骨が形成された構成とされる。それにより、各網戸11Cは、ユーザによる電動操作によって、各幌11Aとは別に開閉操作を行える構成とされる。なお、各網戸11Cの開閉操作は、ユーザによる手動操作によって行われるものであっても良い。
【0087】
各網戸11Cの追加設定により、各覆い部11の幌11AをオープンモードM1にした状態で、各網戸11Cを閉めて着座者の身体全体を各幌11Aよりも通気性のある比較的開放的な形態で覆うことができる。また、図示は省略されているが、各覆い部11の幌11AをセミオープンモードM2にした状態でも同様に、各網戸11Cを閉めて着座者の身体全体を各幌11Aよりも通気性のある比較的開放的な形態で覆うことができる。
【0088】
また、各網戸11Cも、シート装置1がリラックスモードへと切り替えられる動作に伴い、各幌11Aと同様に、各ワイヤフレーム11Bの変形により着座者の身体の形に合わせた細長く引き伸ばされた形態へと切り替えられるようになっている。上記以外の構成については、第1の実施形態で示した構成と実質的に同一の構成となっているため、第1の実施形態で示した構成と同一の符号を付して説明を省略することとする。
【0089】
(まとめ)
以上をまとめると、本実施形態に係るシートキャノピ装置10は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0090】
すなわち、覆い部(11)が、回動機構(12)により個別に回動可能とされる通気性のある網状の内戸(11C)と内戸(11C)よりも通気性の低い外戸(11A)との内外2重構造から成る。上記構成によれば、覆い部(11)による覆いを、網状の内戸(11C)による通気性のある覆いと、内戸(11C)よりは通気性の低い外戸(11A)による覆いと、に切り替えることができる。
【0091】
《第3の実施形態》
続いて、第3の実施形態に係るシートキャノピ装置10の構成について、図10を用いて説明する。本実施形態に係るシートキャノピ装置10は、各覆い部11の一部をシート装置1の座面と並んで着座者を支持可能な補助座面11Dを成す形態へと切り替えることのできるブラダユニット14を備えた構成とされる。
【0092】
ブラダユニット14は、ユーザによる電動操作により、各覆い部11の外縁部分をそれぞれシートバック2及びシートクッション3の左右各側の外縁部分に接近させる。更に、ブラダユニット14は、各覆い部11の外縁部分に向けてシートバック2の左右各側の後方とシートクッション3の左右各側の下方とからそれぞれブラダ14Aを膨張展開させて、各ブラダ14Aにより各覆い部11の外縁部分を裏側から面状に支持した状態にする。
【0093】
それにより、各覆い部11の各ブラダ14Aにより裏支えされた外縁部分が、それぞれ、シートバック2の座面(背凭れ面)及びシートクッション3の座面と並んで着座者を支持可能な裏支え構造を備える補助座面11Dとして形成される。上記以外の構成については、第1の実施形態で示した構成と実質的に同一の構成となっているため、第1の実施形態で示した構成と同一の符号を付して説明を省略することとする。なお、本実施形態の構成を、第2の実施形態で示した構成と組み合わせても良い。
【0094】
(まとめ)
以上をまとめると、本実施形態に係るシートキャノピ装置10は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0095】
すなわち、覆い部(11)が、シート装置(1)の座面と並んで着座者を支持可能な補助座面(11D)を成す。上記構成によれば、覆い部(11)により、シート装置(1)の座面を合理的に拡張することができる。
【0096】
《第4の実施形態》
続いて、第4の実施形態に係るシートキャノピ装置10の構成について、図11を用いて説明する。本実施形態に係るシートキャノピ装置10は、回動機構12が、第1の実施形態で示した下端連結部12Bを備えず、上端連結部12Aのみを備え、上端連結部12Aのみで各覆い部11を回動可能なように片持ち状に支持する構造とされる。
【0097】
また、これに伴い、各覆い部11のワイヤフレーム11Bは、予め弓なりに湾曲した形に成形されて、シートバック2の角度変化によらず、幌11Aを一定形状で支える構成とされている。上記のように各覆い部11が上端連結部12Aにおいて片持ち状に支持される構成とされることで、シート装置1が第1の実施形態で示したようなフットレスト5を備えない構成であっても、各覆い部11を適切に設けることができる。
【0098】
また、各覆い部11が上端側で片持ち状の支持とされることから、第1の実施形態で示したような両端支持構造と比べて、シートバック2が前方に大きく起こされる動作に対して、各覆い部11がフロアFと当たりにくくなる。したがって、各覆い部11をシートバック2のリクライニング動作時に閊えにくい構成とすることができる。
【0099】
また、各覆い部11をシートバック2の後方へ格納しやすくなるため、着座者の乗降動作を阻害しにくい構成とすることができる。各覆い部11は、着座者の頭部から下腿部近傍までの領域を覆う長さを備えた構成とされる。
【0100】
上記以外の構成については、第1の実施形態で示した構成と実質的に同一の構成となっているため、第1の実施形態で示した構成と同一の符号を付して説明を省略することとする。なお、本実施形態の構成を、第2の実施形態及び第3の実施形態で示した構成と組み合わせても良い。
【0101】
(まとめ)
以上をまとめると、本実施形態に係るシートキャノピ装置は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0102】
すなわち、回動機構(12)が、リクライニング調節可能とされるシートバック2に係合して覆い部(11)を上端側のみで回動可能なように支持する片持ち構造とされる。上記構成によれば、シート装置(1)の足元に覆い部(11)の支点を設定できないような構成であっても、覆い部(11)をシート装置(1)に適切に設けることができる。
【0103】
また、覆い部(11)がシートバック2に係合して上端側のみで片持ち状に支持される構成となる。そのようなことから、覆い部(11)を、シートバック(2)のリクライニング動作時に閊えにくい構成とすることができる。
【0104】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を4つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0105】
1.本発明のシートキャノピ装置は、自動車、鉄道、船舶及び航空機等の様々な乗物用に供されるシート装置に適用することができるものである。また、シート装置は、乗物の他、スポーツ施設や劇場、映画館、コンサート会場、イベント会場等の各種施設用に供されるシート装置やマッサージシート等の乗物以外に供されるシート装置にも適用することができるものである。
【0106】
2.覆い部の回転軸線となる前下がり方向に延びる軸線は、シート幅方向に斜めに延びていても良い。覆い部は、シート装置を挟んでシート幅方向に対称状に一対で設けられるものの他、1箇所にのみ設けられる構成であっても良い。
【0107】
3.回動機構による覆い部の可動範囲及び被覆範囲は特に限定されない。例えば、覆い部が1枚で着座者の身体を両側方と前上方とからひと続き状に広く覆うように展開されるものや、覆い部が着座者の身体を左右いずれかの側方からのみ覆ったり前上方からのみ覆ったりするように動かされるものであっても良い。
【0108】
4.フットレストは、フロア上に設けられるものの他、オットマンに設けられる構成であっても良い。回動機構の第1支点と第2支点との間の距離を変化させるシート装置のシートアジャスタは、シートバックの長さを変化させる可変機構やシートバックを中折れ状に角度調節する中折れ機構や、シート装置のフロアに対する高さを調節するシートリフタであっても良い。また、シートアジャスタは、シートバックに対するヘッドレストの高さを調節するヘッドレスト高さ調節機構であっても良い。
【0109】
5.軸線の通る第1支点は、シート装置の着座者の頭部を支持する頭部支持面を上方及び/又は後方に越える位置に設定されていれば良い。また、第2支点は、シート装置の着座者の足裏を支持する足裏支持面を前方及び/又は下方に越える位置に設定されていれば良い。
【0110】
6.第3の実施形態(図10参照)では、各覆い部が各ブラダにより裏支えされることで着座者を支持可能な補助座面となる構成を例示した。しかし、各覆い部を裏支えする構成は、樹脂パネル等の各覆い部を裏側から面状に支持可能な部材から成るものであっても良い。或いは、各覆い部が、それぞれ各ブラダ等による裏支えを受けることなく着座者を支持可能な構造強度を備える構成であれば、各覆い部を裏支えする部材は必ずしも設けられていなくても良い。
【0111】
7.回動機構の覆い部の後上端を支持する上端連結部は、シートバックに係合して設けられるものの他、シートバックの上部に着脱可能なように設けられるヘッドレストに係合して設けられるものであっても良い。また、回動機構の覆い部の前下端を支持する下端連結部は、フットレストに係合して設けられるものの他、オットマンに係合して設けられるものであっても良い。
【符号の説明】
【0112】
1 シート装置
2 シートバック
2A 頭部支持面
3 シートクッション
4 オットマン
5 フットレスト
5A 足裏支持面
5B 本体部
10 シートキャノピ装置
11 覆い部
11A 幌(外戸)
11B ワイヤフレーム
11C 網戸(内戸)
11D 補助座面
12 回動機構
12A 上端連結部
12B 下端連結部
13A 上側送風機
13B 下側送風機
14 ブラダユニット
14A ブラダ
L 軸線
P1 第1支点
P2 第2支点
M1 オープンモード
M2 セミオープンモード(側方覆いモード)
M3 フルクローズモード(半覆いモード)
F フロア
A シートアジャスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11