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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146191
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】車両用アンダーカバー構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20220928BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20220928BHJP
【FI】
B62D25/20 N
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047025
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】高市 皓太
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA31
3D203AA33
3D203BB03
3D203BB06
3D203BB08
3D203CA58
3D203CB09
3D203CB22
3D203DB05
3D235AA02
3D235BB04
3D235BB23
3D235CC15
3D235DD35
3D235EE63
3D235FF06
3D235FF07
3D235FF09
3D235FF12
(57)【要約】
【課題】車両用アンダーカバー構造にて、アンダーカバーへの異物又は障害物の衝突に起因する衝撃及び騒音を効率的に緩和し、この衝撃からバッテリパックを効率的に保護する。
【解決手段】本発明の車両用アンダーカバー構造は、車両のフロア組立体の下方に位置するバッテリパックを下方から覆うアンダーカバーを有し、アンダーカバーは、前方パネルと、この前方パネルよりも後方の後方パネルとを有し、前方パネルの後端領域と後方パネルの前端領域とを結合した結合領域が形成されており、結合領域が、バッテリパックよりも前方に配置され、前方パネルが、車両水平方向に沿って配置される本体部分と、この本体部分から上方に突出するように変形した凸部分とを有し、凸部分が、下方から上方に向かうに従って凸部分の平面視の外周から同内周に向かって傾斜するように形成される1つ又は複数の傾斜面部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロア組立体の下方に位置するバッテリパックを下方から覆うアンダーカバーを備え、
前記アンダーカバーが、前方パネルと、前記前方パネルよりも車両後方寄りに位置する後方パネルとを有し、
前記前方パネルの車両前後方向の後端領域と前記後方パネルの車両前後方向の前端領域とを結合した結合領域が形成されている、車両用アンダーカバー構造であって、
前記結合領域が、前記バッテリパックよりも車両前方寄りに配置され、
前記前方パネルが、車両水平方向に沿って配置される本体部分と、この本体部分から上方に突出するように変形した凸部分とを有し、
前記凸部分が、下方から上方に向かうに従って前記凸部分の平面視の外周から同内周に向かって傾斜するように形成される1つ又は複数の傾斜面部を有している、車両用アンダーカバー構造。
【請求項2】
前記複数の傾斜面部が、前記凸部分の車両前後方向の前端寄りに位置する前方傾斜面部と、前記凸部分の車両前後方向の後端寄りに位置する後方傾斜面部とを有しており、
上下方向に対する前記後方傾斜面部の傾斜角度が、上下方向に対する前記前方傾斜面部の傾斜角度よりも大きくなっている、請求項1に記載の車両用アンダーカバー構造。
【請求項3】
前記フロア組立体が、その車両幅方向の中央に位置するフロアトンネルを有し、
前記フロアトンネルが、上方に膨出し、かつ車両前後方向に延びるように形成され、
前記前方パネルが複数の前記凸部分を有し、
各凸部分は、前記フロアトンネルに対して車両幅方向のいずれか一方に位置している、請求項1又は2に記載の車両用アンダーカバー構造。
【請求項4】
前記凸部分が、その上端に位置する頂面部を有し、
前記頂面部が、前記フロア組立体に締結されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用アンダーカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロア組立体の下方に位置するバッテリパックを下方から覆うアンダーカバーを有する車両用アンダーカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを用いて走行駆動可能となるように構成される車両、例えば、電気自動車等においては、多くの場合、モータに電力を供給するバッテリパックがフロア組立体の下方に配置されている。このような車両は、バッテリパックを保護するためにバッテリパックを下方から覆うアンダーカバーを有する。アンダーカバーは、その製造効率、その強度等を考慮して、前方パネルと、この前方パネルよりも車両後方寄りに位置する後方パネルとを接続するように構成されることがある。
【0003】
アンダーカバーを含んだ車両用アンダーカバー構造の一例としては、1つのアンダーカバーが、互いに二分割された前半部(前方パネル)と後半部(後方パネル)とを接続するように構成され、前半部と後半部との接続部がバッテリパックの下方を通過するように配置され、アンダーカバーの前半部及び後半部が、バッテリパックの底面に対向する平坦なプレート部分(本体部分)を有している、車両用アンダーカバー構造が挙げられる。(例えば、特許文献1、特に、その段落[0023]~段落[0025]、図1、及び図2を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-147070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記アンダーカバー構造の一例においては、アンダーカバーの前方パネル及び後方パネルの本体部分が平坦に形成されるに過ぎない。そして、車輪、特に、前輪によって跳ね上げられた小石、泥水等の異物、又は車両によって乗り上げられる歩道の段差、縁石、車止め等の障害物は、車両の前方かつ下方からアンダーカバーに向かって衝突する傾向にある。
【0006】
そのため、上記アンダーカバー構造の一例におけるアンダーカバーは、このような異物又は障害物の衝突に起因する衝撃を十分に吸収できないおそれがある。この場合、アンダーカバーが、バッテリパックを十分に保護できないおそれもある。さらに、アンダーカバーへの異物又は障害物の衝突によって、乗員にとって不快な騒音がアンダーカバーを中心に発生するおそれがある。
【0007】
上記実情を鑑みると、車両用アンダーカバー構造においては、アンダーカバーへの異物又は障害物の衝突に起因する衝撃及び騒音を効率的に緩和すること、このような衝撃からバッテリパックを効率的に保護することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するために、一態様に係る車両用アンダーカバー構造は、車両のフロア組立体の下方に位置するバッテリパックを下方から覆うアンダーカバーを備え、前記アンダーカバーが、前方パネルと、前記前方パネルよりも車両後方寄りに位置する後方パネルとを有し、前記前方パネルの車両前後方向の後端領域と前記後方パネルの車両前後方向の前端領域とを結合した結合領域が形成される、車両用アンダーカバー構造であって、前記結合領域が、前記バッテリパックよりも車両前方寄りに配置され、前記前方パネルが、車両水平方向に沿って配置される本体部分と、この本体部分から上方に突出するように変形した凸部分とを有し、前記凸部分が、下方から上方に向かうに従って前記凸部分の平面視の外周から同内周に向かって傾斜するように形成される1つ又は複数の傾斜面部を有する。
【発明の効果】
【0009】
一態様に係る車両用アンダーカバー構造においては、アンダーカバーへの異物又は障害物の衝突に起因する衝撃及び騒音を効率的に緩和することができ、このような衝撃からバッテリパックを効率的に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る車両用アンダーカバー構造を有する車両を、そのバッテリパック及びアンダーカバーを分解した状態で概略的に示す分解斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る車両用アンダーカバー構造を概略的に示す底面図である。
図3図3は、図2のX-X線断面図である。
図4図4は、図2のY-Y線断面図である。
図5図5は、図2のZ-Z線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態に係る車両用アンダーカバー構造について、それを設けた車両と共に説明する。本実施形態に係る車両用アンダーカバー構造(以下、必要に応じて、単に「アンダーカバー構造」という)を設けた車両は、電気自動車となっている。しかしながら、車両は、アンダーカバー構造を設けることができる電気自動車以外の電動車両とすることもできる。
【0012】
本明細書中の説明に用いられる図1図5においては、車両を基準とした方向を次のように示す。図1図3及び図5においては、車両前方及び車両後方を、それぞれ片側矢印F及び片側矢印Bによって示す。図1図2、及び図4においては、車両前方を向いた場合の左方及び右方を、それぞれ片側矢印L及び片側矢印Rによって示す。車両幅方向は、片側矢印L及び片側矢印Rによって示される。さらに、図1及び図3図5においては、車両上方及び車両下方を、それぞれ片側矢印U及び片側矢印Dによって示す。
【0013】
なお、左方及び右方は、それぞれ車両前方を向いた場合の左方及び右方を指すものとする。水平方向は、車両の前後方向及び幅方向に沿った方向を指すものとする。車両上方及び車両下方を、場合によっては、それぞれ単に上方及び下方と呼ぶ。
【0014】
「車両用アンダーカバー構造及び車両の概略」
図1図5を参照して、本実施形態に係る車両用アンダーカバー構造10及び車両の概略について説明する。すなわち、本実施形態に係る車両用アンダーカバー構造10及び車両は、概略的には次のように構成される。図1に示すように、車両用アンダーカバー構造10は車両に設けられる。車両は、バッテリパック1及びフロア組立体2を有する。バッテリパック1は、フロア組立体2の下方に位置する。アンダーカバー構造10は、バッテリパック1を下方から覆うアンダーカバー11を有する。
【0015】
図2及び図3に示すように、アンダーカバー11は、前方パネル20と、この前方パネル20よりも車両後方寄りに位置する後方パネル30とを有する。アンダーカバー構造10には、前方パネル20の車両前後方向の後端領域21と後方パネル30の車両前後方向の前端領域31とを結合した結合領域12が形成されている。
【0016】
図3に示すように、結合領域12が、バッテリパック1よりも車両前方寄りに配置されている。図3図5に示すように、前方パネル20は、車両水平方向に沿って配置される本体部分22を有する。前方パネル20はまた、この本体部分22から上方に突出するように変形した凸部分23を有する。凸部分23は、下方から上方に向かうに従って凸部分23の平面視の外周から同内周に向かって傾斜するように形成される1つ又は複数の傾斜面部23a,23b,23c,23dを有している。
【0017】
さらに、本実施形態に係る車両用アンダーカバー構造10及び車両は、概略的には次のように構成することができる。図5に示すように、複数の傾斜面部23a~23dは、凸部分23の車両前後方向の前端寄りに位置する前方傾斜面部23aを含む。複数の傾斜面部23a~23dは、凸部分23の車両前後方向の後端寄りに位置する後方傾斜面部23bを含む。上下方向に対する後方傾斜面部23bの傾斜角度は、上下方向に対する前記前方傾斜面部23aの傾斜角度よりも大きくなっている。
【0018】
図3及び図4に示すように、フロア組立体2は、その車両幅方向の略中央に位置するフロアトンネル3を有する。このフロアトンネル3は、上方に膨出し、かつ車両前後方向に延びるように形成されている。図2図4を参照すると、前方パネル20は、複数の凸部分23を有している。各凸部分23は、フロアトンネル3に対して車両幅方向のいずれか一方に位置している。
【0019】
図5に示すように、凸部分23は、その上端に位置する頂面部23eを有する。頂面部23eは、フロア組立体2に締結されている。
【0020】
「車両の詳細」
図1図4を参照すると、車両は詳細には次のように構成することができる。図1図3、及び図4を参照すると、車両のバッテリパック1は、車両の走行駆動に用いられるモータ(図示せず)に電力を供給可能とするように構成される。さらに、バッテリパック1は充電可能に構成される。
【0021】
図4に示すように、バッテリパック1は、その外部への電力の供給及びバッテリパック1の外部からの電力の受給を可能とするように構成される高電圧ケーブル1bに接続されるコネクタ1aを有する。さらに、コネクタ1aは、車両幅方向にてフロアトンネル3とオーバーラップするように配置される。
【0022】
図2図4を参照すると、フロア組立体2は、フロアトンネル3に対して車両幅方向の両側方にそれぞれ位置する2つのフロアパネル4を有する。図4を参照すると、フロア組立体2は、それぞれ2つのフロアパネル4の下方に位置する2つの側方クロスメンバ5を有する。図3及び図4を参照すると、フロア組立体2は、フロアトンネル3の下方に位置する中央クロスメンバ6を有する。中央クロスメンバ6は、2つの側方クロスメンバ5を連結するように延びる。
【0023】
図4に示すように、フロアトンネル3は、略ハット形状の横断面を有するように形成される。フロアトンネル3は、その上端に位置する頂面部3aを有する。フロアトンネル3は、それぞれ頂面部3aの車両幅方向の両側方端から下方に延びる2つの側面部3bを有する。2つの側面部3bは、上方から下方に向かうに従って2つの側面部3bの間隔を広げるように形成される。フロアトンネル3は、それぞれ2つの側面部3bの下端から車両幅方向の両側方に向かって突出する2つのフランジ部3cを有する。
【0024】
各フランジ部3cは、その突出方向に延びるフランジ本体3dを有する。各フランジ部3cはまた、その突出方向にて、対応する側面部3bとこのフランジ部3cのフランジ本体区域3dとの間に位置し、かつフランジ本体区域3dに対して下方に凹むフランジ凹区域3eを有する。
【0025】
フロア組立体2において、各フロアパネル4は、その車両幅方向の内方端に位置する内側縁部4aを有する。フロアトンネル3の2つのフランジ部3cは、それぞれ2つのフロアパネル4の内側縁部4aに対して上方に位置する。この場合、2つのフロアパネル4の内側縁部4aは、フロアトンネル3における2つのフランジ部3cのフランジ凹区域3eをそれぞれ横切るように延びる。しかしながら、フロアトンネルの2つのフランジ部は、それぞれ2つのフロアパネルの内側縁部に対して下方に位置することもできる。
【0026】
フロアトンネル3における2つのフランジ部3cのフランジ本体区域3dは、それぞれ2つのフロアパネル4の内側縁部4aと上下方向にて重なっており、かつそれぞれ2つのフロアパネル4の内側縁部4aに溶接によって接合されている。フロアトンネル3における2つの側面部3bもまた、それぞれ2つのフロアパネル4の内側縁部4aと上下方向にて重なっており、かつそれぞれ2つのフロアパネル4の内側縁部4aに溶接によって接合されている。しかしながら、これらの接合は、溶接以外の接合手段によってもたらすこともできる。
【0027】
図3を参照すると、フロア組立体2において、2つの側方クロスメンバ5及び中央クロスメンバ6は車両幅方向に並んでいる。2つの側方クロスメンバ5及び中央クロスメンバ6は車両幅方向に沿って延びる。2つの側方クロスメンバ5及び中央クロスメンバ6は、車両前後方向にてアンダーカバー11の結合領域12とオーバーラップするように位置する。
【0028】
図4を参照すると、2つの側方クロスメンバ5は、それぞれ2つのフロアパネル4と上下方向に当接し、かつそれぞれ2つのフロアパネル4に溶接によって接合されている。図3及び図4を参照すると、中央クロスメンバ6は、フロアトンネル3と上下方向に当接し、かつフロアトンネル3に溶接によって接合されている。しかしながら、これらの接合は、溶接以外の接合手段によってもたらすこともできる。
【0029】
「車両用アンダーカバー構造の詳細」
図2図5を参照すると、車両用アンダーカバー構造10は、詳細には次のように構成することができる。前方パネル20は、フロアトンネル3に対して車両幅方向の両側方にそれぞれ位置する2つの側方領域24を有する。特に明確に図示はしないが、2つの側方領域24は、それぞれ運転席及び助手席の下方に位置する。図3に示すように、後方パネル30は、バッテリパック1と上下方向に当接する。
【0030】
図2及び図3を参照すると、アンダーカバー11は、その結合領域12を中央クロスメンバ6に取り付けるように構成される2つの中間取付部13を有する。2つの中間取付部13は、後述する2つの前方取付部14よりも車両幅方向の外方寄りに位置する。しかしながら、2つの中間取付部の少なくとも1つが、車両幅方向にて2つの前方取付部間に位置することもできる。アンダーカバーは、1つ又は3つ以上の中間取付部を有することができる。
【0031】
具体的には、各中間取付部13は、後方パネル30の前端領域31と前方パネル20の後端領域21とが互いに上下方向に重なった状態でボルト又はネジ及びナットを用いた締結手段によって中央クロスメンバ6と締結されるように構成される。しかしながら、この締結は、ボルト又はネジ及びナットを用いた締結手段以外の締結手段によってもたらすこともできる。中間取付部は、締結手段以外の手段を用いることもできる。
【0032】
図2図5を参照すると、前方パネル20は、フロアトンネル3に対して車両幅方向の一方側に位置する1つの凸部分23と、フロアトンネル3に対して車両幅方向の他方側に位置する1つの凸部分23とを有する。この場合、前方パネル20は、2つの凸部分23を有する。2つの凸部分23の頂面部23eは、それぞれフロアトンネル3における2つのフランジ部3cのフランジ凹区域3eと当接する。
【0033】
さらに、アンダーカバー11は、2つの凸部分23の頂面部23eをフロアトンネル3における2つのフランジ部3cのフランジ凹区域3eにそれぞれ取り付けるように構成される2つの前方取付部14を有する。2つの前方取付部14は、2つの凸部分23の頂面部23eを、ボルト又はネジ及びナットを用いた締結手段によってそれぞれ2つのフランジ部3cのフランジ凹区域3eに締結するように構成されている。言い換えれば、各前方取付部14において、その凸部分23の頂面部23eと、この頂面部23eに当接するフロアトンネル3のフランジ部3cのフランジ凹区域3eとは、ボルト又はネジ及びナットを用いた締結手段によって共締めされている。
【0034】
そのため、車輪、特に、前輪によって車両の下方から跳ね上げられた小石、泥水等の異物Eが凸部分23内に入り込んだとしても、この異物Eが凸部分23の頂面部23eに位置する締結手段に接触することは難い。その結果、ボルト、ネジ、ナット等の締結手段への異物Eの衝突に起因する衝撃及び騒音を防ぐことができる。さらに、締結手段が、凸部分23の上端の頂面部23eに位置するので、車両が冠水路を走行する場合であっても、締結手段が水と接触し難く、その結果、締結手段の腐食等を防ぐことができる。車両前方から見て、バッテリパック1のコネクタ1aは、これら2つの凸部分23間に位置する。
【0035】
しかしながら、この締結は、ボルト又はネジ及びナットを用いた締結手段以外の締結手段によってもたらすこともできる。さらに、前方パネルは、フロアトンネルに対して車両幅方向の一方側に位置する1つ以上の凸部分と、フロアトンネルに対して車両幅方向の他方側に位置する1つ以上の凸部分とを有するもできる。特に、前方パネルは、2つのフランジ部におけるフランジ凹区域の一方に締結される1つ以上の凸部分と、2つのフランジ部におけるフランジ凹区域の他方に締結される1つ以上の凸部分とを有することもできる。前方パネルは、フロアパネルに締結される1つ以上の凸部分を有することもできる。アンダーカバーは、1つ又は3つ以上の前方取付部を有することができる。
【0036】
さらに図2に示すように、アンダーカバー11は、後方パネル30の前端領域31に対して下方に位置するバッテリパックガード15を有する。バッテリパックガード15は、車両前後方向にてアンダーカバー11の結合領域12に隣接するように配置される。バッテリパックガード15は、車両幅方向に沿って配置されている。バッテリパックガード15は、後方パネル30の前端領域31の全体に渡って延びる。バッテリパックガード15は、パイプ形状に形成することができる。
【0037】
図4に示すように、各凸部分23は、その車両前後方向の左方端寄りに位置する左方傾斜面部23cを有する。各凸部分23はまた、その車両前後方向の右方端寄りに位置する右方傾斜面部23dを有する。前方パネル20において、各凸部分23における各傾斜面部23a~23dの下端は本体部分22に結合されている。前方パネル20において、各凸部分23は本体部分22と一体に形成されている。
【0038】
以上、本実施形態に係る車両用アンダーカバー構造10は、車両のフロア組立体2の下方に位置するバッテリパック1を下方から覆うアンダーカバー11を備え、前記アンダーカバー11が、前方パネル20と、前記前方パネル20よりも車両後方寄りに位置する後方パネル30とを有し、前記前方パネル20の車両前後方向の後端領域21と前記後方パネル30の車両前後方向の前端領域31とを結合した結合領域12が形成されている、車両用アンダーカバー構造10であって、前記結合領域12が、前記バッテリパック1よりも車両前方寄りに配置され、前記前方パネル20が、車両水平方向に沿って配置される本体部分22と、この本体部分22から上方に突出するように変形した凸部分23とを有し、前記凸部分23が、下方から上方に向かうに従って前記凸部分23の平面視の外周から同内周に向かって傾斜するように形成される1つ又は複数の傾斜面部23a~23dを有している。
【0039】
一般的に、車両の走行時においては、車輪、特に、前輪によって車両の下方から跳ね上げられた小石、泥水等の異物、又は車両によって乗り上げられる歩道の段差、縁石、車止め等の障害物が、車両の前方かつ下方からアンダーカバーの車両前後方向の前方部分に衝突し易い。これに対して、本実施形態に係るアンダーカバー構造10においては、前方パネル20がバッテリパック1よりも車両前方寄りに配置されるので、前方パネル20とフロア組立体2との間には、バッテリパック1の厚さに相当した高さを有する空間を形成できる。そのため、このような空間は、車両の前方かつ下方からの異物E(図5に示す)又は障害物に起因してアンダーカバー11からバッテリパック1に向かう衝撃を効率的に緩和することができる。
【0040】
また、凸部分23によってアンダーカバー11の剛性を効率的に向上させることができる。特に、図5に示すように、凸部分23の傾斜面部23a~23dによって、片側矢印Jにより示すように上記異物Eが繰り返しアンダーカバー11に衝突することを防ぐべくこの異物Eを逃がすことができる。よって、本実施形態に係る車両用アンダーカバー構造10によれば、異物E又は障害物の衝突に起因する衝撃及び騒音を効率的に緩和することができる。さらには、このような衝撃からバッテリパック1を効率的に保護することができる。
【0041】
本実施形態に係る車両用アンダーカバー構造10においては、前記複数の傾斜面部23a~23dが、前記凸部分23の車両前後方向の前端寄りに位置する前方傾斜面部23aと、前記凸部分23の車両前後方向の後端寄りに位置する後方傾斜面部23bとを有しており、上下方向に対する前記後方傾斜面部23bの傾斜角度が、上下方向に対する前記前方傾斜面部23aの傾斜角度よりも大きくなっている。
【0042】
このようなアンダーカバー構造10においては、凸部分23の前方傾斜面部23a及び後方傾斜面部23bによって、車両の前方かつ下方からの異物Eを効率的に車両後方に向かって地面を転がるように逃がすことができる。さらには、凸部分23内に入った異物Eが、繰り返し凸部分23に衝突することを防ぐことができる。その結果、この繰り返しの衝突に起因する騒音の発生を防ぐことができる。
【0043】
本実施形態に係る車両用アンダーカバー構造10においては、前記フロア組立体2が、その車両幅方向の中央に位置するフロアトンネル3を有し、前記フロアトンネル3が、上方に膨出し、かつ車両前後方向に延びるように形成され、前記前方パネル20が複数の前記凸部分23を有し、各凸部分23は、前記フロアトンネル3に対して車両幅方向のいずれか一方に位置している。
【0044】
一般的に、車両走行時において、車輪、特に、前輪によって跳ね上げられる異物は、車両の前方、下方、かつ車両幅方向の外方からアンダーカバー、特に、前方パネルの車両幅方向の側方部に衝突し易い。これに対して、本実施形態に係るアンダーカバー構造10においては、凸部分23が、フロアトンネル3に対して車両幅方向のいずれか一方に位置する前方パネル20の側方領域24に配置されるので、凸部分23によって、異物Eの衝突に起因する衝撃及び騒音を効率的に緩和することができる。
【0045】
本実施形態に係る車両用アンダーカバー構造10においては、前記凸部分23が、その上端に位置する頂面部23eを有し、前記頂面部23eが、前記フロア組立体2に締結されている。このようなアンダーカバー構造10においては、フロア組立体2に締結された凸部分23によって、アンダーカバー11の剛性を効率的に向上させることができる。よって、異物E又は障害物の衝突に起因する衝撃及び騒音を効率的に緩和することができる。
【0046】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…バッテリパック、2…フロア組立体、3…フロアトンネル
10…車両用アンダーカバー構造(アンダーカバー構造)、11…アンダーカバー、12…結合領域
20…前方パネル、21…後端領域、22…本体部分、23…凸部分、23a…傾斜面部、前方傾斜面部、23b…傾斜面部、後方傾斜面部、23c…傾斜面部、左方傾斜面部
23d…傾斜面部、右方傾斜面部、23e…頂面部
30…後方パネル、31…前端領域
図1
図2
図3
図4
図5