(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014621
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】ノズル装置、配管清浄化装置及び排水縦管清浄化方法
(51)【国際特許分類】
E03C 1/304 20060101AFI20220113BHJP
E03C 1/302 20060101ALI20220113BHJP
B08B 9/043 20060101ALI20220113BHJP
B08B 9/045 20060101ALI20220113BHJP
B05B 3/02 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
E03C1/304
E03C1/302
B08B9/043 436
B08B9/045
B05B3/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117045
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】514234333
【氏名又は名称】河原田 祥正
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【弁理士】
【氏名又は名称】江川 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100189991
【氏名又は名称】古川 通子
(72)【発明者】
【氏名】河原田 祥正
【テーマコード(参考)】
2D061
3B116
4F033
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AE03
2D061AE05
3B116AA13
3B116AB54
3B116BA03
3B116BA12
3B116BB22
3B116BB90
4F033PA01
4F033PB02
4F033PB33
4F033PC05
4F033PD06
(57)【要約】
【課題】モータ等の駆動力を用いずに、配管内壁に固く付着した錆等の固着物に機械的な衝撃を与えて清浄化するためのノズル装置、配管清浄化装置及び排水縦管清浄化方法提供する。
【解決手段】耐圧ホースに接続され、排水口を管側面に有する管状の軸体を備える管状軸体部と、軸体に回転摺動自在に軸支され、排水口から供給された水を噴射する少なくとも一つの噴射口を備え、水の噴射の反力によって回転するノズルヘッドと、ノズルヘッドの側面から延出し、水の噴射に干渉しない盤状部と、盤状部に立設された支持軸に後端側で回動するように支持されており、ノズルヘッドの回転による遠心力により、先端側が支持軸から遠方に向かって開く少なくとも1つのブレード部材と、を備える、ノズル装置を用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧ホースに接続され、排水口を管側面に有する管状の軸体を備える管状軸体部と、
前記軸体に回転摺動自在に軸支され、前記排水口から供給された水を噴射する少なくとも一つの噴射口を備え、前記水の噴射の反力によって回転するノズルヘッドと、
前記ノズルヘッドの側面から延出し、前記水の噴射に干渉しない盤状部と、
前記盤状部に立設された支持軸に後端側で回動するように支持されており、前記ノズルヘッドの回転による遠心力により、先端側が前記支持軸から遠方に向かって開く少なくとも1つのブレード部材と、を備えることを特徴とするノズル装置。
【請求項2】
前記盤状部は円盤状であり、前記ブレード部材は歯状の外側面を有し、閉じた状態で前記円盤状の面内に収容される請求項1に記載のノズル装置。
【請求項3】
前記盤状部よりも前記軸体の先端の側に配される、前記先端に向かって凸であり前記盤状部の外周と同等以上で、前記ブレード部材が最大に開いたときの外周よりも小さい外周を有する先端部材をさらに備える請求項1または2に記載のノズル装置。
【請求項4】
前記耐圧ホースと前記管状軸体部との間に連結された50~1000mmの可撓性を有しない通水管をさらに備える請求項1~3の何れか1項に記載のノズル装置。
【請求項5】
前期可撓性を有しない通水管に沿う周囲に側方に向かって凸であり、前記盤状部の外周と同等以上で、前記ブレード部材が最大に開いたときの外周よりも小さい外周を有する、そり状部材をさらに備える請求項4に記載のノズル装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のノズル装置と、前記ノズル装置を先端に接続する耐圧ホースと、前記耐圧ホースに高圧水を供給する高圧水洗浄機と、を備えることを特徴とする配管清浄化装置。
【請求項7】
高層建物の排水縦管を洗浄するための排水縦管清浄化装置であって、
前記耐圧ホースに沿う可撓性直立支持材をさらに備える請求項6に記載の配管清浄化装置。
【請求項8】
請求項7に記載の配管清浄化装置を用いた高層建物の排水縦管の清浄化方法であって、
前記排水縦管の低層階側の開口部に、前記ノズル装置を侵入させる工程と、
前記ノズル装置の前記ノズルヘッドの噴射口から、前記高圧水洗浄機から供給される高圧水を噴射させながら、前記排水縦管内で前記低層階側から高層階側に向かって前記耐圧ホースを送り上げる工程と、を備えることを特徴とする排水縦管清浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅等の高層建物に設置されている排水管等の清浄化に好ましく用いられるノズル装置、配管清浄化装置及び排水縦管清浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅等の高層建物の流し台、洗面所、浴室、トイレ等の設備から発生する排水は、各設備に配された室内から通じる横枝管を経て、各階を貫通する共用の排水縦管から汚水槽等に流される。
【0003】
排水には多量の残渣や油脂等が含まれている。排水管の内壁には、排水の通過する時間の経過に伴い、排水中の残渣や油脂等が凝集して形成された固形物(スラッジ)が徐々に固着し、管内径を徐々に減少させる。スラッジをそのまま放置した場合にはスラッジが成長して排水管を閉塞させることもある。このような排水管の閉塞を防ぐために、高層建物に設置されている排水縦管や排水横管は一定期間ごとに清浄化される必要がある。
【0004】
排水縦管を清浄化する方法として、ノズル装置を先端に取り付けた耐圧ホースを排水縦管内に挿入し、回転するノズルヘッドから噴射された高圧水を排水縦管の内壁に固着したスラッジに当てることにより、スラッジを崩すようにして清浄化する高圧水洗浄方法が用いられている。
【0005】
高圧水洗浄方法としては、低層階側から高層階側に向かって排水縦管を洗浄する方法が知られている。例えば、下記特許文献1及び2は、高層建物に設置されている排水縦管において、内壁に大量のスラッジが固着して内径が小さくなっている排水縦管でも洗浄することができる排水縦管洗浄装置を提案している。具体的には、特許文献1及び特許文献2は、高層建物の排水縦管を洗浄するための排水縦管洗浄装置であって、先端にノズル装置を備える耐圧ホースと、排水縦管内で耐圧ホースを直立に保持するグラスファイバーロッドやアルミニウム三層管のような可撓性直立支持材と、耐圧ホースに接続されて、ノズル装置に高圧水を供給する高圧水洗浄機と、を備える排水縦管洗浄装置を開示する。
【0006】
特許文献1及び特許文献2に開示された排水縦管洗浄装置によれば、高層建物の排水縦管内を低層階側からの作業だけで、低層階側から高層階側に向かって排水縦管を洗浄することができる。しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された排水縦管洗浄装置においては、排水中の残渣や油脂等が凝集して形成されたスラッジは除去できるものの、金属の排水管の錆状の固着物を除去することは困難であった。このような問題を解決する技術として、次のような技術も提案されている。
【0007】
例えば、下記特許文献3は、フレキシブルシャフトと、フレキシブルシャフトの先端に接続したコアビットと、フレキシブルシャフトの末端に接続して、コアビットを回転させるモータと、フレキシブルシャフトに沿って配され、可撓性を有し、フレキシブルシャフトに直立性を付与する可撓性直立部材と、を備える研削装置を開示する。また、下記特許文献4は、高層建物の排水縦管を、低層階側に形成された開口部から高層階側に向かって洗浄するための排水縦管洗浄装置であって、 複数のシャフトユニットを連結して形成されたシャフトと、シャフトの高層階側の先端に連結されたコアビットと、シャフトを回転させる回転駆動機構と、シャフトを昇降させるシャフト昇降機構と、を備える排水縦管洗浄装置を開示する。
【0008】
また、例えば、下記特許文献5は、ショットブラスト、高圧水洗浄等による管内面クリ-ニングで取りきれなかった固着物を除去することができる方法として、電動機を回転駆動してフレキシブルシャフトにその回転を伝達し、当該フレキシブルシャフトの先端側に各種工具(管内クリ-ニング装置)を取付け、当該工具(管内クリ-ニング装置)の回転により管内面クリ-ニングを実施する装置が記載されている。そして、このような装置においては、配管の径が異なる場合には、径に見合った管内クリ-ニング装置を使用する必要があることにより装置の変更を余儀なくされ、極めて煩わしいという課題を提示する。そして、このような課題を解決すべく、管内クリ-ニング装置の装置本体の可動部材用支持軸を基点として可動し配管系統の直管部及び(又は)継手部の内面に付着している付着物を除去することができる可動部材であって、装置本体の端縁から突出することが可能であると共に、当該突出する際に当該装置本体の端縁から当該可動部材の端縁までの距離が可変可能に構成されてなる可動部材を備えてなる管内クリ-ニング装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許5748255号公報
【特許文献2】特許5748251号公報
【特許文献3】特開2019-2215号公報
【特許文献4】特開2018-96121号公報
【特許文献5】実登3173081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3~5に開示された装置は、排水縦管の内壁に固着した錆状の固着物をモータ等で駆動される回転装置で機械的に除去する装置である。これらの装置は駆動力としてモータを用いるために、清浄化装置の延長部分が太くなったり、装置全体が大掛かりになったり、作業現場での設置作業が煩雑になったりするという問題があった。
【0011】
本発明は、モータ等の駆動力を用いずに、配管内壁に固く付着した錆等の固着物に機械的な衝撃を与えて清浄化するためのノズル装置、配管清浄化装置及び排水縦管清浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面は、耐圧ホースに接続され、排水口を管側面に有する管状の軸体を備える管状軸体部と、軸体に回転摺動自在に軸支され、排水口から供給された水を噴射する少なくとも一つの噴射口を備え、水の噴射の反力によって回転するノズルヘッドと、ノズルヘッドの側面から延出し、水の噴射に干渉しない盤状部と、盤状部に立設された支持軸に後端側で回動するように支持されており、ノズルヘッドの回転による遠心力により、先端側が支持軸から遠方に向かって開く少なくとも1つのブレード部材と、を備えるノズル装置である。
【0013】
このようなノズル装置によれば、ノズルヘッドの回転による遠心力により、ノズルヘッドから水平方向に突出した盤状部も回転する。そして、盤状部に立設された支持軸に回動するように支持されているブレード部材が、ノズルヘッドの回転による遠心力により開きながら回転し、ブレード部材が配管の内壁に付着した固着物に衝突して固着物を除去する。そして、除去された固着物は、ノズルヘッドを回転させるために噴射される高圧水により洗い流される。このようなノズル装置によれば、モータ等の駆動力を用いずに、配管内壁に固く付着した固着物を機械的に除去し、また、除去された固着物は洗い流される。このようなノズル装置によれば、モータ等の駆動力を用いずに、配管内壁に付着した錆等の硬い固着物を除去できる。
【0014】
また、このようなノズル装置においては、ブレード部材が、盤状部に立設された支持軸に回動するように支持されており、排水管の内壁に衝突する範囲で開閉可能であるために、ブレード部材の開いたときの径が変化する。そのために、配管の内部に大きな固着物が付着している場合でも、ブレード部材が閉じることによりノズル装置を通過させやすくする。また、異なる径の配管に適用する場合には、異なる径に合わせた、異なるサイズの清浄化装置を準備する必要がないために、配管内部の清浄化作業が楽になる。
【0015】
また、ノズル装置においては、盤状部は円盤状であり、ブレード部材は歯状の外側面を有し、閉じた状態で円盤状の面内に収容されることが好ましい。このような形状である場合には、ブレード部材が閉じた状態では円盤状の径に近い細い配管を通過させることができ、また、ブレード部材が開いた状態では、切削力に優れた歯状の外側面を配管の内壁に固着した固着物に衝突させることにより、固着物を効果的に除去することができる点から好ましい。
【0016】
また、ノズル装置は、盤状部よりも軸体の先端の側に配される、先端に向かって凸であり、盤状部の外周と同等以上で、ブレード部材が最大に開いたときの外周よりも小さい外周を有する、先端部材をさらに備えることが好ましい。配管内でノズル装置を進行させるときに、盤状部の外周等が配管の継ぎ目や枝管に当たることにより引っ掛かって進行が妨げられることがある。このようなノズル装置において、先端側に凸である先端部材を配することにより、盤状部等が継ぎ目等に引っ掛かりにくくなる。このような部材の形状としては、例えば、先端側に凸である笠状、ドーム状、矢じり状等の形状が挙げられる。
【0017】
また、ノズル装置は、耐圧ホースと管状軸体部との間に連結された50~1000mmの可撓性を有しない通水管をさらに備えることが好ましい。耐圧ホースと管状軸体部との間に可撓性を有しない通水管を配することにより、ノズル装置を配管の進行方向に対して直進させるときに盤状部等が継ぎ目等に引っ掛かりにくくなる。さらに、ノズル装置は、可撓性を有しない通水管に沿う周囲に側方に向かって凸であり、盤状部の外周と同等以上で、ブレード部材が最大に開いたときの外周よりも小さい外周を有する、そり状部材をさらに備えることが、ノズル装置を配管の中央に配しやすい点から好ましい。
【0018】
また、本発明の他の一局面は、上記いずれかのノズル装置を先端に接続する耐圧ホースと、耐圧ホースに高圧水を供給する高圧水洗浄機と、を備える配管清浄化装置である。このような配管清浄化装置によれば、モータ等の駆動力を用いずに、配管内壁に固く付着した錆等の固着物に機械的な衝撃を与えて清浄化することができる。
【0019】
配管清浄化装置は、耐圧ホースに沿う可撓性直立支持材をさらに備える高層建物の排水縦管を洗浄するための排水縦管清浄化装置であることが好ましい。このような配管清浄化装置によれば、ノズル装置を高層建物の排水縦管の低層階側から高層階側に向かって、容易に上げることができる。そして、耐圧ホースがノズル装置に高圧水を送ることにより、排水縦管の管内でノズルヘッドの回転に伴って回転する盤状部の回転によりブレード部材が開いた状態で回転する。そして、ブレード部材が排水縦管の内壁に付着した固着物にハンマーを当てるように衝突して固着物を機械的に除去する。そして、機械的に除去された固着物は、ノズルヘッドから噴射される高圧水により洗い流される。
【0020】
また、本発明の他の一局面は、上記排水縦管清浄化装置を用いた高層建物の排水縦管の清浄化方法であって、排水縦管の低層階側の開口部に、ノズル装置を侵入させる工程と、ノズル装置のノズルヘッドの噴射口から、高圧水洗浄機から供給される高圧水を噴射させながら、排水縦管内で低層階側から高層階側に向かって耐圧ホースを送り上げる工程と、を備える排水縦管清浄化方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るノズル装置によれば、モータ等の駆動力を用いずに、配管内壁に固く付着した錆等の固着物に機械的な衝撃を与えて清浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態のノズル装置10の構成を説明するための正面模式図である。
【
図2】
図2は、ノズル装置10の耐圧ホース11に沿う縦方向の模式断面図である。
【
図3】
図3は、ノズル装置10を先端側から見たときの様子を説明する図であり、(a)は上面模式図、(b)はノズル装置10から先端部材7を取り外したときの模式図である。
【
図4】
図4は、ノズル装置10のブレード部材5a,5bが開いたときの状態を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、他の実施形態のノズル装置20の先端部材17を説明するための模式説明図である。
【
図6】
図6は、他の実施形態のノズル装置30を説明するための模式説明図である。
【
図7】
図7は、ノズル装置10を用いて、排水縦管P1を清浄化するときの様子を説明するための模式説明図である。
【
図8】
図8は、ノズル装置10を接続した排水縦管清浄化装置50の全体構成を説明する模式説明図である。
【
図9】
図9は、排水縦管清浄化装置50において、耐圧ホース11が可撓性直立支持材15(15a、15b、15c)に支えられている様子を説明するための耐圧ホースの横断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るノズル装置の一実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、耐圧ホース11に連結された状態の本実施形態のノズル装置10の正面模式図であり、(a)はブレード部材5a,5bが閉じたとき、(b)はブレード部材5a,5bが開いたときの模式図である。また、
図2は、ノズル装置10の耐圧ホースの長さ方向に沿う断面の模式断面図である。
【0024】
図2を参照すれば、ノズル装置10は、排水口1bを管側面に有する管状の軸体1aを備える管状軸体部1と、軸体1aに回転摺動自在に軸支され、排水口1bから供給された水を噴射する噴射口2bを有するノズルヘッド2を備える。ノズルヘッド2は、管状軸体部1の排水口1bから供給された高圧水を噴射口2bから噴射するときの反力によって回転する。
【0025】
図1を参照すれば、ノズル装置10は、ノズルヘッド2の側面から延出し、噴射口2bからの水の噴射に干渉しないように噴射口2bよりも上部に配された盤状部3を備える。また、盤状部3に立設された支持軸4a,4bと、支持軸4a,4bに後端側でそれぞれ回動するように支持されており、ノズルヘッド2の回転による遠心力により、先端側が支持軸4a,4bから遠方に向かって開くブレード部材5a,5bとを備える。さらに、ブレード部材5a,5bがそれぞれが開く角度を制限するストッパ6a,6bと、先端方向に凸の笠状の外形を有する先端部材7と、先端部材7を固定するためのナット対8を備える。
図2を参照すれば、笠状の先端部材7は、その頂点付近の中央に形成された挿通孔に軸体1aを挿通させ、その上下に配された六角ナット8aと袋状ナット8bとからなるナット対8で軸体1aの先端に固定されている。
【0026】
図2を参照すれば、管状軸体部1の軸体1aは、内部に通水するための通水路1cと通水路1cに通じる排水口1bとを有する管状の部材であり、耐圧ホース11から供給された高圧水を通水路1cを経て排水口1bから排出してノズルヘッド2に供給する構造を有する。また、ノズルヘッド2は、その中央に設けられた挿通孔2dに管状軸体部1の軸体1aを挿通させて軸体1aに回転摺動自在に軸支されており、さらに、管状軸体部1の排水口1bから供給された水を噴射する噴射口2bとを備える。
【0027】
ノズルヘッド2には、噴射口2bに排水口1bから供給される水を通過させる通水路2cが形成されている。軸体1aに回転摺動自在に軸支されたノズルヘッド2は、噴射口2bから水を斜め後方に噴射したときの反力により、軸体1aに対して回転する。噴射口の数は、とくに限定されないが、1~3個、さらには1~2個、とくには1個であることが好ましい。
【0028】
図2を参照すれば、ノズル装置10は、ノズルヘッド2の側面から延出し、噴射口2bからの水の噴射に干渉しないように噴射口2bよりも上部に形成された盤状部3を備える。ノズルヘッド2の側面から延出するとは、ノズルヘッド2の側面の外表面を基端とし、ノズルヘッド2の側面から円周方向に延びるように盤状部3が形成されていることを意味する。
【0029】
盤状部3には、その上面に支持軸4a,4bが立設されている。そして、支持軸4a,4bのそれぞれには、その後端側で回動自在にブレード部材5a,5bが支持されている。具体的には、ブレード部材5a,5bには各後端側にそれぞれ孔5c,5dが形成されている。そして、孔5cに支持軸4a,孔5dに支持軸4bをそれぞれ挿通させることにより、ブレード部材5a,5bが回動するように支持されている。
【0030】
図3は、ノズル装置10を先端側から見たときの様子を説明する模式図であり、(a)は上面模式図、(b)はノズル装置10から先端部材7を取り外したときの模式図である。
【0031】
図3(b)を参照すれば、盤状部3は円盤状であり、ブレード部材5a,5bは、それらが閉じたときには盤状部3の円盤状の面内に収容されており、それらは歯状の外側面を有することが好ましい。そして、盤状部3の上面に立設された支持軸4aにブレード部材5aがその後端側で支持されており、支持軸4bにブレード部材5bがその後端側で支持されている。ブレード部材5a,5bは、閉じた状態で盤状部3の円盤状の面内に収容されて、それらの外側面が円盤状の外周に略一致することが、ブレード部材5a,5bを盤状部3の面内にコンパクトに収容できる点から好ましい。
【0032】
ブレード部材5a,5bは、配管内に形成された硬い固着物にハンマーを当てるように衝撃を与えて崩すことが可能な厚さ及び大きさを有する金属塊であることが好ましい。また、本実施形態のノズル装置10においては、ブレード部材は2枚であるが、本発明の効果を損なわない限り、適宜、枚数を変更してもよい。また、その外側面は歯状であることが、硬い固着物を切削するように効果的に固着物を除去できる点から好ましい。
【0033】
そして、盤状部3の上面には、ブレード部材5aの後端を挟んで支持軸4aと対面するようにストッパ6aが立設されており、同様に、ブレード部材5bの後端を挟んで支持軸4bと対面するようにストッパ6bが立設されていることが好ましい。このようなストッパを設けることにより、各ブレード部材が開く角度を制限して、各ブレード部材が開きすぎて反転することが抑制され、固着物にブレード部材の外側面を衝突させることができる点から好ましい。
【0034】
そして、ノズル装置10においては、盤状部3よりも軸体1aの先端側に配される、先端に向かって凸であり、盤状部の外周と同等以上で、ブレード部材が最大に開いたときの外周よりも小さい外周を有する、先端部材7が配されている。なお、先端部材とは、進行方向の先端側に配される部材である。
図2及び
図3(a)を参照すれば、管状軸体部1の軸体1aの上部の外表面には、ねじ部が形成されており、六角ナット8aと袋状ナット8bとからなるナット対8をねじ部に螺合することにより、先端方向に凸のドーム状の外形を有する笠状の先端部材7が固定されている。先端部材は、軸体のねじ部に螺合して固定することに限られず、先端に溶接して固定させたりしてもよい。先端部材7の外周は盤状部の外周と同等あるいはやや大きく、ブレード部材5a,5bが最大に開いたときの外周よりも小さいことが好ましい。
【0035】
このように先端に向かって凸であり盤状部の外周と同等以上で、ブレード部材が最大に開いたときの外周よりも小さい外周を有する、先端部材を配することが好ましい。配管内でノズル装置を進行させるときに、盤状部やブレード部材等の外周等が配管内の固着物や継ぎ目や枝管に当たることにより引っ掛かってノズル装置の進行が妨げられることがある。本実施形態のノズル装置において、上述したような先端部材を配することにより、盤状部等を固着物等に引っ掛かりにくくさせる。先端部材の形状はとくに限定されず、上述したような笠状の他、ドーム状、あるいは、
図5に示したノズル装置20における羽17a,17b,17cを備えた矢じり状の先端部材17のような形状であってもよい。
【0036】
次に、このようなノズル装置10の動作を説明する。
図2を参照すれば、ノズル装置10は、高圧水を送水する耐圧ホース11に接続される。そして、耐圧ホース11から供給された高圧水は、ノズル装置10の管状軸体部の軸体1aの通水路1cを経て排水口1bから排出される。ノズルヘッド2には、進行方向に対して斜め後ろに噴射口2bから水が噴射されるように通水路2cが形成されている。それにより、軸体1aの排水口1bから排出された水は、軸体1aに回転摺動自在に軸支されたノズルヘッド2の噴射口2bから進行方向の斜め後ろに向かって水が噴射される。そして、その水の噴射の反力によってノズルヘッド2が摺動回転する。ノズルヘッド2が回転したとき、盤状部3も軸体1aを中心として回転する。そして、盤状部3の回転による遠心力によりブレード部材5a,5bの先端側が支持軸4a,4bから遠方に向かって開く。
【0037】
図4は、ノズル装置10の図略のノズルヘッド2から水Wが噴射されて、盤状部3が矢印の方向に回転したときに、ブレード部材5a,5bが配管Pの内部で開くときの様子を説明する説明図である。
図4(a)~(c)に示すように、支持軸4aに後端側で回動自在に支持されたブレード部材5aは、盤状部3が矢印の方向に回転したときの遠心力により、その先端側が支持軸4aから遠方に向かって開く。同様に、支持軸4bに後端側で回動自在に支持されたブレード部材5bも、盤状部3が回転したときの遠心力により、その先端側が支持軸4bから遠方に向かって開く。
【0038】
図4(a)は配管Pの径が相対的に小さい場合、
図4(b)は配管Pの径が相対的に大きい場合、
図4(c)は配管Pの径が
図4(a)の径と
図4(c)の径の中間である場合の説明図である。
図4(a)に示すように、配管Pの径が小さい場合、ブレード部材5a,5bは配管Pの小さい径に合うように小さく開き、
図4(b)に示すように、配管Pの径が大きい場合、ブレード部材5a,5bは配管Pの大きい径に合うように大きく開く。また、
図4(c)に示すように、ノズル装置10の中心軸が配管Pの中心から離れて片寄りした場合、ブレード部材5aは大きく開き、ブレード部材5bは小さく開く。そして、ブレード部材5a,5bが反転するように開くことを抑制するために、開きすぎた場合にはブレード部材5a,5bの外側面がストッパ6a,6bに当接することにより回動が制限される。
【0039】
このように動作するノズル装置10によれば、配管P内でノズル装置10を進行させたときに、ブレード部材5a,5bは、配管Pの内壁に固着した固着物にハンマーを当てるように衝突して固着物を除去する。また同時に、噴射口2bから噴射される水Wを排水管の内壁に当てることにより、崩した固着物が水洗される。
【0040】
なお、
図4(c)においては、ノズル装置10の中心軸が配管Pの中心から離れてノズル装置10が片寄りしながら配管内を進行している様子が示されている。このような場合、ブレード部材5a,5bの配管の内壁への当たり方が不均一になり、清浄化効果が低下する傾向がある。このようにノズル装置10が配管Pの中心から離れて片寄りすることを抑制するために、
図1を参照すれば、ノズル装置10においては、耐圧ホース11は、カプラ12によって、例えば50~1000mmの可撓性を有しない通水管9を介してノズル装置10の管状軸体部1に接続されている。このような通水管9はノズル装置10の直進性を向上させるために任意に設けられる。
【0041】
可撓性を有しない通水管9を管状軸体部1と耐圧ホースとの間に配することにより、遠心力による先端の揺動を抑えることができる。それにより、清浄化される配管内において、ノズル装置10が揺動しにくくなって直線状に進行しやすくなり、ノズル装置10の片寄りを抑えたり、ノズル装置10が片寄りしたときには、配管内の中央に再配置しやすくなる。可撓性を有しない通水管は、耐圧ホースの内径に近い内径を有する金属管であることが好ましく、その長さは特に限定されないが、50~1000mm、さらには、60~200mm程度であることが好ましい。
【0042】
以上、本発明に係る代表的な実施形態のノズル装置10について詳しく説明した。本発明に係るノズル装置はノズル装置10のような形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更して用いられてもよい。その代表的な変形例を以下に示す。
【0043】
本実施形態のノズル装置を配管内で進行させるとき、
図4(c)を参照して説明したように、ノズル装置10の中心軸が配管Pの中心から離れて片寄りすることを抑制するために、50~1000mmの可撓性を有しない通水管を配置することを説明した。また、本実施形態のノズル装置を配管内で進行させるときに生じうる別の問題として、配管の内壁に付着した固着物や配管の継ぎ目の凹凸等にノズル装置の盤状部やブレード部材が引っ係って進行を妨げられることがある。
【0044】
図6及び
図7を参照して、このような問題を解決したノズル装置30を説明する。
図6を参照すれば、ノズル装置30は、ノズル装置10の、可撓性を有しない通水管9に沿う周囲に、進行方向に対して垂直方向である側方に向かって凸であり、盤状部3の外周と同等以上で、ブレード部材が最大に開いたときの外周よりも小さい外周を有する、側方において角のない、例えば金属製の、そり状部材9a,9b,9cが設けられている。このようなそり状部材9a,9b,9cを設けることにより、配管の内壁に付着した固着物や配管の継ぎ目の凹凸等にノズル装置の盤状部3やブレード部材5a,5bが引っ係ることを抑制できる。詳しくは、
図7に示すように、ノズル装置30を清浄化される配管内で進行させるとき、可撓性を有しない通水管9がノズル装置30の先端付近を傾きにくくさせ、可撓性を有しない通水管9の側方に配されたそり状部材9a,9b,9cが先端付近をより傾きにくくさせる。それにより、配管Pの内壁に付着した固着物Sにノズル装置30の盤状部3やブレード部材5a,5bが引っ掛かりにくくなる。
【0045】
以上説明した本発明に係るノズル装置は各種配管内の錆等の固着物を除去するための高圧水洗浄機の先端に配されて用いられる。次に、高圧水洗浄機に接続された耐圧ホースの先端に本実施形態のノズル装置を接続した配管清浄化装置の一実施形態として、排水縦管の内部の清浄化に用いられる排水縦管清浄化装置、及びそれを用いた排水縦管清浄化方法の一実施形態について
図8を参照しながら説明する。
【0046】
図8は、高圧水洗浄機32に接続された耐圧ホース11の先端にノズル装置10を接続されてなる排水縦管清浄化装置50及びそれを用いた排水縦管清浄化方法を説明するための説明図であり、排水縦管内の拡大した模式図も示している。
図8中、11は耐圧ホースであり、15は可撓性直立支持材、10はノズル装置、32は耐圧ホース11に高圧水を供給する高圧水洗浄機、33は耐圧ホース11と可撓性直立支持材15とを巻回させて収納するホースリールである。
【0047】
また、
図8中、37は、可撓性直立支持材15を沿わせた耐圧ホース11を送り上げる送りローラである。また、38は分岐管であり、分岐管38は排水縦管P1に一端が接続される主路38a,主路38aから分岐する分岐路38b及び分岐路38bへ向かって送風するための送風口38c,止水シール材38dを備える。39は、送風口38cに接続され、分岐路38bに向けて送風するためのブロアーである。また、40は、分岐管38から排出される固着物S及び水Wを固液分離する固液分離装置である。固液分離装置40は、剥離させた固着物を捕捉する網40aと排水ポンプ40bとを備える。
【0048】
図8に示す排水縦管清浄化装置50においては、
図9に示すように、耐圧ホース11が可撓性直立支持材15(15a、15b、15c)で支えられている。可撓性直立支持材とは、巻回可能な可撓性と巻回状態から解放して直線状に賦形したときに直立性を保持する線状または管状の部材である。このような可撓性直立支持材は、可撓性を有するために作業現場へ巻回した状態で運搬することができるとともに、排水縦管内においては直立性を維持することができる。可撓性直立支持材で耐圧ホースを支える構造としては、例えば、
図9(a)に示すように、耐圧ホース11の外側にグラスファイバーロッドやカーボンファイバーロッドのような可撓性を有するロッドである可撓性直立支持材15aを沿わせるように固定したり、
図9(b)に示すように、耐圧ホース11の管内に可撓性直立支持材15bを収容したり、
図9(c)に示すように、アルミニウム三層管のような管状の可撓性直立支持材15cの管内に耐圧ホース11を収容したりするようにして、耐圧ホース11に排水縦管内で直立性を付与するような構造が挙げられる。
【0049】
可撓性を有するロッドとしては、例えば、建築物の配線のための入線ロッドとして広く用いられているような弾性ロッドが特に好ましく用いられる。弾性ロッドの具体例としては、例えば、グラスファイバー,カーボンファイバー,スチールファイバー,セラミックファイバー等で補強された繊維強化プラスチックを主体とするようなロッドが好ましく用いられる。また、管状の可撓性直立支持材としては、例えば、アルミニウム管の内層と外層をポリエチレン等の樹脂で被覆したアルミニウム三層管やフレキシブル金属チューブ(パイプ)のような直立性フレキシブルチューブ等のような、巻回可能な可撓性と巻回状態から解放したときに直立性を有する管状の部材等が挙げられる。
【0050】
本実施形態の排水縦管洗浄方法においては、はじめに、排水縦管P1の低層階、例えば、1階で排水縦管P1を切断する。そして、排水縦管P1の切断により形成された開口部に分岐管38をカップリング継手を用いて接続する。そして、耐圧ホース11の先端に装着されたノズル装置10を排水縦管P1の開口部から侵入させる。
【0051】
そして、送りローラ37に可撓性直立支持材15を沿わせた耐圧ホース11を挟持させ、送りローラ37を回転させることにより、排水縦管P1内において、それらを低層階側から高層階側に向かって送り上げる。ホースリール33からは、可撓性直立支持材15を沿わせた耐圧ホース11が順次繰り出される。
【0052】
このとき、ホースリール33から繰り出された耐圧ホース11を排水縦管P1の管内の低層階側(1F)から高層階側(11F)に向けて送り出しながら、高圧水洗浄機32から高圧水を送り、ノズル装置10のノズルヘッド2の噴射口2bから進行方向に対して斜め後方に高圧水を噴射させる。
【0053】
そして、
図8のノズル装置10付近の拡大模式図に示すように、排水縦管P1の内壁面に固着した固着物Sは、ノズルヘッド2の側面から開くブレード部材5a,5bの衝突により破壊される。また、ノズル装置10のノズルヘッド2から噴射される高圧水が破壊した固着物Sを洗い流す。そして、ノズル装置10は、排水縦管P1内の低層階側から高層階側に送り出されながら、排水縦管P1内を低層階側から高層階側に向かって固着物Sの付着した内壁を清浄化していく。
【0054】
そして、排水縦管P1の内壁から除去された固着物Sは、排水縦管P1内を水Wとともに落下する。そして、落下する固着物Sと水Wとは、
図8に示す、分岐管38の主路38aと分岐路38bとの分岐点に達したときに、ブロアー39からの風により分岐路38bへ吹き飛ばされる。そして、分岐路38bから排出された固着物S及び水Wは、固液分離装置40へ送られ、固液分離された後、処理される。
【符号の説明】
【0055】
1 管状軸体部
1a 軸体
1b 排水口
1c 通水路
2 ノズルヘッド
2b 噴射口
2c 通水路
2d 挿通孔
3 盤状部
4a,4b支持軸
5a,5b ブレード部材
5c,5d 孔
6a,6b ストッパ
7,17 先端部材
8 ナット対
9 通水管
9a,9b,9c そり状部材
10,20,30 ノズル装置
11 耐圧ホース
12 カプラ
15 可撓性直立支持材
32 高圧水洗浄機
50 排水縦管清浄化装置
P 配管
P1 排水縦管
S 固着物
W 水