(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146221
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20220928BHJP
H05K 3/24 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K3/24 A
H05K3/24 C
H05K3/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047070
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】奈須 孝有
(72)【発明者】
【氏名】近藤 洋右
(72)【発明者】
【氏名】奥田 明大
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博仁
【テーマコード(参考)】
5E338
5E343
【Fターム(参考)】
5E338AA18
5E338BB61
5E338CD03
5E338CD05
5E338EE33
5E343AA23
5E343BB09
5E343BB17
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB39
5E343BB40
5E343BB44
5E343DD20
5E343DD43
5E343DD56
5E343DD58
5E343EE15
5E343FF10
5E343GG02
(57)【要約】
【課題】メッキ層の下に設けられている金属パッドをより確実に保護することのできる配線基板を提供する。
【解決手段】配線基板1は、セラミック基板11と、セラミック基板11の表面11aに設けられている金属パッド21と、金属パッド21上に設けられているメッキ層30とを備えている。金属パッド21は、その一部がセラミック基板11に埋設されているとともに、他の一部がセラミック基板11の表面11aから突出している。メッキ層30は、金属パッド21の外周縁部に隣接しているセラミック基板11の表面11aにはみ出ており、セラミック基板11に接触している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基板と、
前記セラミック基板の表面に設けられている金属パッドと、
前記金属パッド上に設けられているメッキ層と
を備えている配線基板であって、
前記金属パッドは、その一部が前記セラミック基板に埋設されているとともに、他の一部が前記セラミック基板の表面から突出しており、
前記メッキ層は、前記金属パッドの外周縁部に隣接している前記セラミック基板の表面にはみ出て、前記セラミック基板に接触している、
配線基板。
【請求項2】
前記金属パッドは、前記セラミック基板の表面に向かって先細りとなる先細部を有している、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
上面視で、前記メッキ層の配置領域は、前記金属パッドの最大径部の配置領域よりも大きくなっている、請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記金属パッド上に配置されている金具をさらに備えている、請求項1から3の何れか1項に記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に金属パッドを備えている配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子部品が搭載される配線基板として、非導電性材料であるセラミックで形成されているセラミック基板と、セラミック基板の表面に導電性材料を用いて形成されている金属パッド(メタライズ層とも呼ばれる)とを備えているものがある。金属パッドは、外部の電子部品との接続端子、および、水晶振動子のシールリング用のパッドなどとして利用される。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガラスセラミック焼結体からなる絶縁基板の表面にリード端子と接続するための銅メタライズパッドを具備する配線基板が開示されている。この配線基板においては、銅メタライズパッドの周辺部が絶縁基板内に埋め込まれている。このような構造は、例えば、ガラスセラミック組成物を含むペーストを、銅メタライズパッドのパターンの周辺部を被覆するように印刷することによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている配線基板などのように、金属パッドの周辺部を被覆するようにガラスセラミック組成物を含むペーストを設けると、焼成後の配線基板の表面には、ペーストに由来するセラミックの段差が生じる。このような配線基板の金属パッド上にメッキ層を形成すると、金属パッドの全面にメッキ層を形成することができず、メッキ層の端部とセラミック層との間に隙間が形成される可能性がある。
【0006】
メッキ層とセラミック層との間に隙間が形成されると、メッキ工程後の配線基板表面の洗浄処理などで使用される薬液が、メッキ層の下の金属パッドへと入り込んでしまう。これにより、金属パッドに含まれる金属成分が変性する可能性があり、望ましくない。
【0007】
そこで、本発明では、メッキ層の下に設けられている金属パッドをより確実に保護することのできる配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面にかかる配線基板は、セラミック基板と、前記セラミック基板の表面に設けられている金属パッドと、前記金属パッド上に設けられているメッキ層とを備えている。この配線基板において、前記金属パッドは、その一部が前記セラミック基板に埋設されているとともに、他の一部が前記セラミック基板の表面から突出しており、前記メッキ層は、前記金属パッドの外周縁部に隣接している前記セラミック基板の表面にはみ出て、前記セラミック基板に接触している。
【0009】
上記の構成によれば、メッキ層の外周縁部を、セラミック基板の表面と密着した状態とすることができ、配線基板の製造時に使用される薬液などが、メッキ層の下層の金属パッド側へ入り込む可能性を低減させることができる。したがって、メッキ層の下に設けられている金属パッドをより確実に保護することができる。
【0010】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記金属パッドは、前記セラミック基板の表面に向かって先細りとなる先細部を有していてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、金属パッドがセラミック基板から抜けにくい構成とすることができる。
【0012】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板は、上面視で、前記メッキ層の配置領域が、前記金属パッドの最大径部の配置領域よりも大きくなっていてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、メッキ層の外周縁部において、セラミック基板の表面との接触領域をより大きくすることができる。したがって、セラミック基板に対するメッキ層の密着強度を向上させることができる。
【0014】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板は、前記金属パッド上に配置されている金具をさらに備えていてもよい。
【0015】
ここで、前記金具には、例えば、外部の電子部品との接続端子となるピンおよびスタッド、並びに、水晶振動子のシールリングなどが含まれる。例えば、金属パッド上にピンおよびスタッドなどが設けられていることで、外部の電子部品などとの電気的な接続を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一局面にかかる配線基板によれば、メッキ層の下に設けられている金属パッドをより確実に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる配線基板の内部構成を示す断面模式図である。
【
図2】
図1に示す配線基板に設けられている接続パッドの一つの構成を示す断面図である。
【
図3】
図1に示す配線基板に設けられている接続パッドの一つの構成を示す上面図である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかる配線基板の製造工程を示すフローチャートである。
【
図5】
図4に示す製造工程中の露光工程および現像工程を説明する模式図である。
【
図6】
図4に示す製造工程中の転写工程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0019】
本実施形態では、本発明にかかる配線基板の一例として、配線基板1を例に挙げて説明する。配線基板1は、例えば、半導体素子、および水晶振動子などの電子部品を搭載するための配線基板、あるいは静電チャック用の配線基板などとして利用される。配線基板1には、入出力端子となるピン50が接続される金属パッド(例えば、接続パッド20)が設けられている。なお、水晶振動子が搭載される配線基板1の場合には、金属パッドにはシールリングが接続される。また、配線基板1には、ピン50などの金具が取り付けられていなくてもよい。
【0020】
図1には、配線基板1の一部分の断面構成を示す。配線基板1は、主として、セラミック基板11と、複数の導電性パターンとで構成されている。
【0021】
セラミック基板11は、配線基板1の土台となる部材である。セラミック基板11は、例えば、アルミナ(Al2O3)を主成分とする高温焼成セラミックで形成することができる。また、別の実施態様では、セラミックシートは、焼結性を向上させたアルミナなどの中温焼成セラミック(MTCC)、または低温焼成セラミック(LTCC)で形成されていてもよい。
【0022】
セラミック基板11は、1つまたは複数のセラミックグリーンシートを焼成して得られる。セラミック基板11が複数のセラミックグリーンシートから形成される場合には、セラミック基板11は、積層された複数のセラミック層を有している。
図1には、セラミック基板11が、1つのセラミックグリーンシートで形成されている構成例を示している。
【0023】
本実施形態では、便宜上、略平板状のセラミック基板11において接続パッド20が設けられている側の面を表面11aとし、その反対側の面を裏面11bとする。但し、セラミック基板11の表面および裏面の定義はこれに限定はされず、任意に決めることができる。また、本実施形態では、セラミック基板11の面方向をX方向とし、セラミック基板11の厚み方向をY方向とする(
図2参照)。
【0024】
なお、
図1に示す例では、配線基板1の一方の面(すなわち、表面11a)にのみ接続パッド20が設けられているが、別の実施態様では、接続パッド20は、配線基板1の両方の面(すなわち、表面11aおよび裏面11b)に設けられていてもよい。
【0025】
導電性パターンは、セラミック基板11の表面11a、裏面11b、および内部などに設けられている。各導電性パターンは、それぞれ所定の形状に形成されており、例えば、配線、ビア、接続パッド(具体的には、金属パッド21)、および電極などとして機能する。
【0026】
導電性パターンは、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、銀(Ag)、またはモリブデン(Mo)などの金属材料、あるいはこれらの金属材料を主成分とする合金材料によって形成することができる。セラミック基板11が高温焼成セラミックで形成されている場合には、導電性パターンは、例えば、タングステン(W)、またはモリブデン(Mo)を主成分とすることが好ましい。セラミック基板11が中温焼成セラミックまたは低温焼成セラミックで形成されている場合には、導電性パターンは、例えば、銅(Cu)、または銀(Ag)を主成分とすることが好ましい。
【0027】
図1に示す例では、セラミック基板11の表面11a側に、導電性パターンの一例である接続パッド20が2個設けられている。但し、配線基板1に設けられている接続パッド20の個数はこれに限定はされない。
図1では、図示を省略しているが、配線基板1には、配線、ビア、および電極などの導電性パターンも設けられている。
【0028】
接続パッド20には、ピン(金具)50が接続される。ピン50は、ろう材55によって接続パッド20上に取り付けられている。
【0029】
接続パッド20は、主として、金属パッド21と、金属パッド21上に設けられているメッキ層30とで構成されている。
【0030】
金属パッド21は、導電性パターンの一例であり、上述した材料を用いて形成される。金属パッド21は、その一部(例えば、柱状部21bと、柱状部21bに連続する先細部21aの一部)がセラミック基板11に埋設されているとともに、他の一部(例えば、先細部21aの頂部)がセラミック基板11の表面11aから突出している。
【0031】
メッキ層30は、金属パッド21における表面11aから突出している部分を覆うように設けられている。メッキ層30は、単層のメッキ層で構成されていてもよいし、複数のメッキ層で構成されていてもよい。メッキ層30が複数のメッキ層で構成されている場合には、メッキ層30には、例えば、Niメッキ層31、およびAuメッキ層32などが含まれる(
図2参照)。メッキ層30は、例えば、従来公知の電解めっき法などを用いて形成することができる。電解めっき法を行うことで、セラミック基板11の表面11aから露出している金属パッド21の表面にメッキ被膜を形成することができる。
【0032】
図2には、本実施形態にかかる配線基板1に備えられている接続パッド20の一つを拡大して示す。また、
図3は、接続パッド20の一つが形成されている箇所を含む配線基板1の一部の上面図である。上述したように、接続パッド20は、金属パッド21と、メッキ層30とを有している。
【0033】
金属パッド21は、上面視で略円形状となっている。
図2に示すように、金属パッド21は、先細部21aと、柱状部21bとを有している。
図2では、先細部21aと、柱状部21bとの境界に一点鎖線を付している。先細部21aは、セラミック基板11の表面(
図2などでは、表面11a)側に位置している。
【0034】
先細部21aは、セラミック基板11の表面11aへ向かって先細となっている。すなわち、先細部21aは、セラミック基板11の面方向(X方向)における断面積が、セラミック基板11の内部側へ向かうにしたがって大きくなる形状を有している。本実施形態では、先細部21aの面方向(X方向)の断面形状は、略円形となっている。
【0035】
柱状部21bは、セラミック基板11の内部側に位置している。図示はされていないが、柱状部21bは、セラミック基板11の内部に配置されているビアまたは配線などと接触した状態となっていてもよい。柱状部21bは、セラミック基板11の面方向(X方向)に沿った断面形状が、セラミック基板11の厚み方向(Y方向)に略一定となっている。本実施形態では、柱状部21bの面方向(X方向)の断面形状は、略円形となっている。
【0036】
本実施形態では、金属パッド21をY方向(厚み方向)の断面視で見たときに、金属パッド21におけるX方向(面方向)における幅が最大となる最大径部(本実施形態では、柱状部21bに相当)は、セラミック基板11の内部に位置している。
【0037】
金属パッド21がこのような形状を有していることで、金属パッド21がセラミック基板11から抜けにくい構成とすることができる。
【0038】
図2に示すように、金属パッド21は、その少なくとも一部がセラミック基板11内に埋まった状態となっている。そして、金属パッド21の他の一部(具体的には、頂部)は、セラミック基板11の表面11aから突出している。
【0039】
具体的には、金属パッド21は、セラミック基板11の表面11aと直交する厚み方向の寸法の半分よりも多くの部分がセラミック基板11内に埋まっている。すなわち、
図2に示すように、金属パッド21の厚み方向の寸法をHとし、金属パッド21におけるセラミック基板11内に埋まっている部分(セラミック基板11の表面11aの仮想延長面(破線で示す)よりも下方の部分)の厚み方向の寸法H1とすると、H1>1/2×Hとなっている。
【0040】
また、金属パッド21は、その全表面積の50%よりも多くの部分がセラミック基板11内に埋まっているということもできる。この構成によれば、金属パッド21は、セラミック基板11の表面11aから突出している部分の表面積よりも、セラミック基板11内に埋め込まれている部分(セラミック基板11の表面11aよりも下方の部分)の表面積の方が大きくなる。このように、金属パッド21においてセラミック基板11に埋め込まれている部分の表面積がより大きくなることで、金属パッド21からセラミック基板11への熱伝達性を向上させることができる。
【0041】
なお、金属パッド21において、セラミック基板11内に埋まっている部分の割合は、金属パッド21の厚み方向の寸法Hの60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0042】
また、金属パッド21の一部(具体的には、頂部)が、セラミック基板11の表面11aから突出していることで、金属パッド21を覆うように設けられるメッキ層30において、ピン50などの金具との接合に寄与する領域を増やすことができる。これにより、接続パッド20上に配置されるピン50などの金具をより安定した状態で固定することができる。この点を踏まえると、金属パッド21の頂部の表面11aからの突出量は、金属パッド21の厚み方向の寸法Hの割合で5%以上であることが好ましい。
【0043】
メッキ層30は、セラミック基板11の表面11aから突出した金属パッド21の表面を覆うように設けられている。本実施形態では、メッキ層30は、Niメッキ層31とAuメッキ層32とが積層された積層構造を有している。具体的には、金属パッド21の表面を覆うようにNiメッキ層31が設けられ、Niメッキ層31を覆うようにAuメッキ層32が設けられていることが好ましい。これにより、接続パッド20の表面を、化学的により安定したAuメッキ層32で覆うことができる。
【0044】
図2などに示すように、メッキ層30は、金属パッド21の外周縁部に隣接しているセラミック基板11の表面11aにはみ出ており、セラミック基板11の表面11aに接触している。
【0045】
これにより、メッキ層30の外周縁部は、セラミック基板11の表面11aと密着された状態となる。そのため、配線基板1の製造時に使用される薬液(例えば、メッキ工程などの後に配線基板1の表面を洗浄処理する際に使用する薬液)が、メッキ層30の下層の金属パッド21側へ入り込む可能性を低減させることができる。したがって、メッキ層30の下に設けられている金属パッド21をより確実に保護することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、配線基板1の上面視で、メッキ層30の配置領域は、金属パッド21の最大径部(本実施形態では、柱状部21b)の配置領域よりも大きくなっている(
図3参照)。すなわち、メッキ層30のX方向(面方向)の大きさ(本実施形態では、メッキ層30の径D2に相当)は、金属パッド21の最大径部のX方向(面方向)の大きさ(本実施形態では、柱状部21bの径D1に相当)よりも大きくなっている(
図2および
図3参照)。また、配線基板1の上面視で、金属パッド21の最大径部の配置領域は、メッキ層30の配置領域内に存在する(
図3参照)。
【0047】
この構成によれば、上面視で金属パッド21の配置領域の外側に位置するメッキ層30の外周縁部において、セラミック基板11の表面11aとの接触領域をより大きくすることができる。したがって、セラミック基板11に対するメッキ層30の密着強度を向上させることができる。これにより、基板からより剥がれにくい接続パッド20が得られる。
【0048】
続いて、配線基板1の製造方法について説明する。ここでは、セラミック基板11に接続パッド20を形成する工程を中心に説明する。この工程以外の配線基板1の製造方法については、従来公知の配線基板の製造方法が適用できる。
【0049】
図4には、配線基板1の製造工程の一部を工程順に示す。
図4では、主に、パターン形成工程(S10)からメッキ工程(S40)までの各工程を示している。
【0050】
図5には、金属パッド21用の導電性パターンを形成するためのパターン形成工程(S10)が行われる様子を工程順に示す。
図6には、金属パッド21用の導電性パターンをセラミックシート10に転写する転写工程(S30)が行われる様子を工程順に模式的に示す。
【0051】
図4に示す各工程を行うにあたって、先ず、セラミックシート10を準備する。セラミックシート10は、例えば、アルミナ(Al
2O
3)などを含有するセラミック材料の粉末を、有機溶剤およびバインダなどとともに混練してスラリーを作製した後、シート状に成形することで得られる。
【0052】
セラミックシート10を準備した後、必要に応じて、セラミックシート10内の所定の箇所にビア用の導電性パターンを形成する。ビア用の導電性パターンを形成する工程では、セラミックシート10内の所定の位置(ビアが形成される位置)に貫通孔を形成し、貫通孔内に導電性ペーストを埋め込む。これにより、セラミックシート10内の所定位置にビアとなる領域が形成される。
【0053】
続いて、パターン形成工程(S10)を行う。
図5には、パターン形成工程(S10)が行われる様子を模式的に示す。パターン形成工程(S10)には、露光工程(S11)および現像工程(S12)が含まれる。
図5には、露光工程(S11)、および、その後に行われる現像工程(S12)の様子を、工程Aから工程Cの順に示す。
【0054】
露光工程(S11)を行うにあたって、先ず、キャリアフィルム61と、感光性の導電性ペースト62を準備する。キャリアフィルム61としては、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの樹脂製の透明フィルムを用いることができる。
【0055】
導電性ペースト62は、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、銀(Ag)、またはモリブデン(Mo)などを含有する金属粉末と、感光性樹脂とを含む。感光性樹脂としては、紫外光が照射されると光硬化するネガ型感光材が用いられる。導電性ペーストに感光性樹脂が含まれることで、フォトリソグラフィによって所定形状の導電性パターンを形成することができる。そのため、例えば、スクリーン印刷法で導電性パターンを形成する場合と比較して、より高精細なパターン形状を有する導電性パターンを形成することができる。
【0056】
導電性ペースト62は、キャリアフィルム61上に塗布される。導電性ペースト62の塗布は、従来公知のスクリーン印刷装置などを用いて行うことができる。これにより、導電性ペースト付着フィルム体(以下、フィルム体と呼ぶ)が得られる。
【0057】
露光工程(S11)では、例えば、UV光源などを備えている露光装置を用いてキャリアフィルム61上に塗布された導電性ペースト62に光Lを照射する。
【0058】
露光工程(S11)では、ガラスマスク70を用いてキャリアフィルム61上の導電性ペースト62に光Lを照射し、配線基板1に形成される金属パッド21のパターン形状に合わせて、導電性ペースト62内の感光性樹脂を光硬化させる。
図5では、導電性ペースト62のキャリアフィルム61から遠い側の面を第1面62aとし、キャリアフィルム61との接触面を第2面62bとする。
【0059】
露光工程(S11)では、導電性ペースト62の上方に、ガラスマスク70が配置される。ガラスマスク70には、平板状のガラス71に、形成予定の導電性パターン25の形状にあわせて遮光膜72が設けられている。露光工程では、キャリアフィルム61上の導電性ペースト62に対して、ガラスマスク70を介して、導電性ペースト62に含まれる感光性樹脂が光硬化する光L(例えば、紫外光)が照射される。
【0060】
これにより、遮光膜72が設けられていない領域の導電性ペースト62には光Lが照射される一方、遮光膜72が設けられている領域の導電性ペースト62には光Lが照射されない。その結果、キャリアフィルム61上の導電性ペースト62では、光Lが照射された領域に存在する感光性樹脂のみが光硬化し、遮光膜72によって光が遮られる領域に存在する感光性樹脂は光硬化することなくキャリアフィルム61上に残る。
【0061】
なお、このようにして光Lを照射すると、導電性ペースト62内に含まれる金属粉末によって光が散乱されるため、照射された光Lの一部は、キャリアフィルム61に近い側(すなわち、第2面62b側)の導電性ペースト62にまで到達しない。そのため、キャリアフィルム61に近い側(すなわち、第2面62b側)の導電性ペースト62内の感光性樹脂は光硬化が阻害される傾向にある。
【0062】
すなわち、導電性ペースト62において光硬化される領域は、光Lが入射する側(すなわち、第1面62a側)から離れるにしたがって狭くなる。これにより、導電性ペースト62には、キャリアフィルム61との接触面へ向かって先細となる形状を有する光硬化領域25Aが形成される。
【0063】
その後、現像工程(S12)を行う。現像工程(S12)では、キャリアフィルム61上に、導電性パターン25を形成する。具体的には、導電性ペースト62を現像液で処理し、導電性ペースト62の未感光部分を除去する。これにより、導電性ペースト62の光硬化した領域のみがキャリアフィルム61上に残り、キャリアフィルム61上に導電性パターン25が形成される(
図5の工程C参照)。導電性パターン25は、キャリアフィルム61側に位置する先細部21aと、キャリアフィルム61から遠い側に位置する柱状部21bとを有する。
【0064】
以上のようにして、パターン形成工程(S10)が行われる。これにより、キャリアフィルム61上に所定形状の導電性パターン25が形成される。
【0065】
続いて、転写工程(S20)を行う。
図6には、転写工程(S20)が行われる様子を模式的に示す。転写工程(S20)では、準備しておいたセラミックシート10に対して、パターン形成工程(S10)で形成された導電性パターン25を転写し、セラミックシート10上に導電性パターン25を配置する。
【0066】
具体的には、
図6の工程Aに示すように、セラミックシート10の表面に接着溶剤75(例えば、アルコール系溶剤)を塗布し、セラミックシート10の一部をペースト化する。ここでは、セラミックシート10の表面10a(セラミック基板11の表面11aに相当する)側から接着用材を塗布し、セラミックシートの一部をペースト化する。
図6では、セラミックシート10において、ペースト化されたセラミック部分を10cで示す。
【0067】
次に、
図6の工程Bに示すように、キャリアフィルム61の導電性パターン25が形成された面をセラミックシート10側にして、キャリアフィルム61をセラミックシート10の表面10a上に載せて、熱プレス装置76を用いて加圧および加熱する。
【0068】
その後、
図6の工程Cに示すように、キャリアフィルム61を剥がすことにより、導電性パターン25がセラミックシート10に転写される。ここで、導電性パターン25の少なくとも一部は、セラミックシート10内に埋め込まれた状態となっている。
【0069】
このようにして、セラミックシート10には、金属パッド21用の導電性パターン25が形成される。
【0070】
複数のセラミック層を有する配線基板1の場合には、上記の方法で、複数のセラミックシート10を形成した後、各シートを決められた順序で積層する。
【0071】
その後、焼成工程(S30)を行う。焼成工程(S30)では、導電性パターン25が形成されたセラミックシート10、またはその積層体をコファイヤ焼成(同時焼成)する。これにより、セラミックシート10はセラミック基板11となる。なお、焼成工程(S30)を行うことによって、導電性パターン25内に含まれている感光性樹脂は焼失する。
【0072】
焼成工程(S30)が終了すると、メッキ工程(S40)が行われる。メッキ工程(S40)は、例えば、従来公知の電解めっき法によって実施される。電解めっき法を行うことで、セラミック基板11から露出している金属パッド21の表面にメッキ被膜を形成することができる。
【0073】
このメッキ工程(S40)では、使用するメッキ液の成分を変更してメッキ処理を複数回繰り返してもよい。これにより、金属パッド21の表面に、複数のメッキ層(例えば、Niメッキ層31、およびAuメッキ層32など)を有するメッキ層30を形成することができる。
【0074】
メッキ工程(S40)が終了すると、洗浄などの後処理の工程が行われる。以上のようにして、接続パッド20を備えている配線基板1が製造される。
【0075】
なお、
図1に示す配線基板1のように、接続パッド20上にピン50などの金具が取り付けられている場合には、メッキ工程(S40)が終了した後に、ろう付けによってピン50を接続パッド20上に取り付ける。これにより、ろう材55によって固定されたピン50を有する配線基板1が得られる。
【0076】
以上のように、本実施形態にかかる配線基板1の製造方法では、感光性の導電性ペースト62が塗布されたキャリアフィルム61を露光および現像することによって、キャリアフィルム61との接触面へ向かって先細となる形状を有する導電性パターン25を形成する。この導電性パターン25を、セラミックシート10に転写して金属パッド21を形成する。
【0077】
このような製造方法を用いて金属パッド21を形成することで、より微細な金属パッド21を形成することができる。例えば、本実施形態にかかる製造方法によれば、金属パッド21の径D1が約30μm程度であり、隣接する金属パッド21同士の間隔が約60μm程度の高精細な金属パッド21を備えた配線基板1を得ることができる。
【0078】
また、上述のパターン形成工程(S10)の露光工程(S11)では、導電性ペースト62の光硬化される領域が、光Lが入射する側から離れるにしたがって狭くなるという特性を利用して、導電性パターン25に先細部21aを形成することができる。この先細部21aは、金属パッド21の先細部21aとなる。金属パッド21において、セラミック基板11の表面11a側に先細部21aが形成されていることで、金属パッド21をセラミック基板11から抜けにくくすることができる。
【0079】
(実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる配線基板1は、セラミック基板11と、セラミック基板11の表面11aに設けられている金属パッド21と、金属パッド21上に設けられているメッキ層30とを備えている。金属パッド21およびメッキ層30は、外部の電子部品などとの電気接続を行う接続パッド20を構成している。金属パッド21は、その一部がセラミック基板11に埋設されているとともに、他の一部がセラミック基板11の表面11aから突出している。メッキ層30は、金属パッド21の外周縁部に隣接しているセラミック基板11の表面11aにはみ出ており、セラミック基板11に接触している。
【0080】
上記の構成では、金属パッド21におけるセラミック基板表面からの突出部分の全体が、メッキ層30によって覆われた状態となる。すなわち、メッキ層30が、金属パッド21の外周端部を覆うように、金属パッド21の突出部に回り込むように設けられた状態となる。
【0081】
これにより、メッキ層30の外周縁部が、セラミック基板11の表面11aと密着された状態となるため、配線基板1の製造時に使用される薬液が、メッキ層30の下層の金属パッド21側へ入り込む可能性を低減させることができる。したがって、メッキ層30の下に設けられている金属パッド21をより確実に保護することができ、金属パッド21に含まれるタングステンやモリブデンなどの金属の変性を抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態にかかる配線基板1では、転写法を用いて金属パッド21を形成している。これにより、金属パッド21の少なくとも一部がセラミック基板11に埋設された状態とすることができる。これにより、セラミック基板11に対する金属パッド21の密着強度を向上させることができる。そのため、セラミック基板11上に金属パッド21を形成した後に、金属パッド21の外周を、例えば、アルミナコートなどを用いて被覆する必要性を低減させることができる。
【0083】
転写法を用いて金属パッド21を形成すると、スクリーン印刷法を用いて金属パッド21を形成した場合と比較して、金属パッド21表面の平坦性を向上させることができる。そのため、本実施形態にかかる配線基板1において、転写法を用いて形成された金属パッド21を接続パッド20として利用すると、接続パッド20上に配置されるピン50などの金具との接続信頼性を向上させることができる。
【0084】
なお、本実施形態では、金属パッドおよびメッキ層を有するパッドとして、電気接続用のピンパッド(すなわち、接続パッド20)を例示して説明したが、パッドの用途は電気接続用のものに限定はされない。別の実施態様では、金属パッドおよびメッキ層を有するパッドは、水晶振動子などを搭載する配線基板におけるシールリング用のパッドとして利用され得る。
【0085】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した種々の実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 :配線基板
11 :セラミック基板
11a :(セラミック基板の)表面
20 :接続パッド
21 :金属パッド
21a :(金属パッドの)先細部
21b :(金属パッドの)柱状部(金属パッドの最大径部)
30 :メッキ層
50 :ピン(金具)