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  • 特開-濃度測定方法および装置 図1
  • 特開-濃度測定方法および装置 図2
  • 特開-濃度測定方法および装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146241
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】濃度測定方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
G01N21/27 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047098
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑弥
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀和
(72)【発明者】
【氏名】五所尾 康博
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059EE01
2G059EE12
2G059JJ01
2G059KK01
2G059MM05
2G059MM12
2G059NN10
(57)【要約】
【課題】用いられている成分の状態が不明であっても、溶解している各成分の濃度が測定できるようにする。
【解決手段】第1処理部102は、分光測定器101が測定した使用溶液の分光スペクトルから、使用溶液を特定する。第1処理部102は、測定した分光スペクトルを代入した値が、設定されている閾値を超える回帰式に対応する溶液を、使用溶液として特定する。第2処理部103は、第1処理部102が特定した溶液の既知とされている成分の種類毎の濃度を、特定した使用溶液の基準となる基準溶液をもとにして作成した検量情報をもとに、分光測定器101が測定した分光スペクトルから求める。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液のいずれかを選択して使用溶液とする第1ステップと、
前記使用溶液の分光スペクトルを測定する第2ステップと、
測定した分光スペクトルから、前記使用溶液を特定する第3ステップと、
特定した溶液の既知とされている成分の種類毎の濃度を、特定した前記使用溶液の基準となる基準溶液をもとにして作成した検量情報をもとに、測定した分光スペクトルから求める第4ステップと
を備える濃度測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の濃度測定方法において、
溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液の各々は、溶液の分光スペクトルの回帰式が用意され、
前記第3ステップは、測定した分光スペクトルを代入した値が、設定されている閾値を超える回帰式に対応する溶液を、前記使用溶液として特定する
ことを特徴とする濃度測定方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の濃度測定方法において、
前記検量情報は、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液の各々における、既知の成分の濃度に関する濃度回帰式である
ことを特徴とする濃度測定方法。
【請求項4】
測定対象の使用溶液の分光スペクトルを測定する分光測定器と、
前記分光測定器が測定した前記使用溶液の分光スペクトルから、前記使用溶液を特定するように構成された第1処理部と、
前記第1処理部が特定した溶液の既知とされている成分の種類毎の濃度を、特定した前記使用溶液の基準となる基準溶液をもとにして作成した検量情報をもとに、前記分光測定器が測定した分光スペクトルから求めるように構成された第2処理部と
を備え、
前記使用溶液は、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液のいずれかである
ことを特徴とする濃度測定装置。
【請求項5】
請求項4記載の濃度測定装置において、
溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液の各々の分光スペクトルの回帰式を記憶するように構成された記憶部を備え、
前記第1処理部は、測定した分光スペクトルを代入した値が、設定されている閾値を超える回帰式に対応する溶液を、前記使用溶液として特定する
ことを特徴とする濃度測定装置。
【請求項6】
請求項4または5記載の濃度測定装置において、
前記検量情報は、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液の各々における、既知の成分の濃度に関する濃度回帰式から構成されている
ことを特徴とする濃度測定装置。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載の濃度測定装置において、
前記使用溶液を用いる処理装置に前記使用溶液を輸送する流路を備え、
前記分光測定器は、前記流路を流れる前記使用溶液の分光スペクトルを測定する
ことを特徴とする濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の成分が溶解している溶液の濃度測定方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程においては、複数の酸が溶解した溶液が使用されている。例えば、シリコン基板の洗浄やリソグラフィー技術のエッチングプロセスなどでは、フッ酸、硝酸、酢酸、リン酸、塩酸、硫酸などの酸を複数溶解した処理液が用いられる。この種の処理液の使用に関しては、製品の歩留の向上、安全性や作業効率等の観点から、濃度管理が重要である。
【0003】
この濃度管理においては、使用している溶液に溶解している複数の酸の各々の濃度を測定する。例えば、各酸における光の吸収を利用して、溶液に溶解している複数の酸の濃度を求める技術がある(特許文献1参照)。この技術においては、複数の酸毎に、溶液中の濃度と光吸収との関係を示す検量線の式が用意され、測定対象の溶液に応じ、適切な検量線の式を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06-265471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術では、測定対象の溶液に用いられている(溶解している)酸などの成分の種類が既知であることが前提となっている。上述した技術では、測定対象の溶液に溶解している成分の種類が不明な場合、濃度の測定が実施できないという問題があった。測定対象の溶液を変更した場合、変更した溶液で用いられている成分の種類が既知であっても、測定の条件を変更する必要があり、測定に手間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、用いられている成分の状態が不明であっても、溶解している各成分の濃度が測定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る濃度測定装置は、測定対象の使用溶液の分光スペクトルを測定する分光測定器と、分光測定器が測定した使用溶液の分光スペクトルから、使用溶液を特定するように構成された第1処理部と、第1処理部が特定した溶液の既知とされている成分の種類毎の濃度を、特定した使用溶液の基準となる基準溶液をもとにして作成した検量情報をもとに、分光測定器が測定した分光スペクトルから求めるように構成された第2処理部とを備え、使用溶液は、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液のいずれかである。
【0008】
上記濃度測定装置の一構成例において、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液の各々の分光スペクトルの回帰式を記憶するように構成された記憶部を備え、第1処理部は、測定した分光スペクトルを代入した値が、設定されている閾値を超える回帰式に対応する溶液を、使用溶液として特定する。
【0009】
上記濃度測定装置の一構成例において、検量情報は、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液の各々における、既知の成分の濃度に関する濃度回帰式から構成されている。
【0010】
上記濃度測定装置の一構成例において、使用溶液を用いる処理装置に使用溶液を輸送する流路を備え、分光測定器は、流路を流れる使用溶液の分光スペクトルを測定する。
【0011】
また、本発明に係る濃度測定方法は、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液のいずれかを選択して使用溶液とする第1ステップと、使用溶液の分光スペクトルを測定する第2ステップと、測定した分光スペクトルから、使用溶液を特定する第3ステップと、特定した溶液の既知とされている成分の種類毎の濃度を、特定した使用溶液の基準となる基準溶液をもとにして作成した検量情報をもとに、測定した分光スペクトルから求める第4ステップとを備える。
【0012】
上記濃度測定方法の一構成例において、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液の各々は、溶液の分光スペクトルの回帰式が用意され、第3ステップは、測定した分光スペクトルを代入した値が、設定されている閾値を超える回帰式に対応する溶液を、使用溶液として特定する。
【0013】
上記濃度測定方法の一構成例において、検量情報は、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液の各々における、既知の成分の濃度に関する濃度回帰式から構成されている。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液のなかから選択された使用溶液の分光スペクトルを測定し、測定した分光スペクトルから、使用溶液を特定するので、どの使用溶液が選択されたか不明であり、用いられている成分の状態が不明であっても、溶解している各成分の濃度が測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る濃度測定装置の構成を示す構成図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る濃度測定方法を説明するフローチャートである。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る濃度測定装置のハードウエア構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る濃度測定装置100について図1を参照して説明する。この濃度測定装置100は、分光測定器101、第1処理部102、第2処理部103、および記憶部104を備える。
【0017】
分光測定器101は、測定対象の使用溶液の分光スペクトルを測定する。例えば、使用溶液を用いる処理装置112に使用溶液を輸送する流路113を備え、分光測定器101は、流路113を流れる使用溶液の分光スペクトルを測定する。流路113は、例えば、パーフルオロアルコキシアルカンなどのフッ素樹脂から構成された配管(チューブ)である。分光測定器101は、光源、分光器などから構成されている。
【0018】
使用溶液は、供給装置111に貯蓄されていて、供給装置111から供給される。使用溶液は、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液のいずれかである。記憶部104は、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液の各々の分光スペクトルの回帰式を記憶する。例えば、溶液は、洗浄液であり、処理装置112は、ウエハ洗浄装置である。洗浄液としての溶液として、薬液A、薬液B、薬液Cが用いられている。
【0019】
薬液Aと薬液Bと薬液Cとは、溶解している成分が各々異なっている。例えば、薬液Aは、成分a、成分bが溶解している水溶液である。薬液Bは、成分b、成分cが溶解している水溶液である。薬液Cの各々は、成分a、成分cが溶解している水溶液である。記憶部104は、薬液Aの分光スペクトルの回帰式A、薬液Bの分光スペクトルの回帰式B、および薬液Cの分光スペクトルの回帰式Cを記憶する。なお、薬液の種類は3種類に限るものではなく、4種類以上とすることができる。
【0020】
第1処理部102は、分光測定器101が測定した使用溶液の分光スペクトルから、使用溶液を特定する。第1処理部102は、測定した分光スペクトルを代入した値が、設定されている閾値を超える回帰式に対応する溶液を、使用溶液として特定する。
【0021】
第2処理部103は、第1処理部102が特定した溶液の既知とされている成分の種類毎の濃度を、特定した使用溶液の基準となる基準溶液をもとにして作成した検量情報をもとに、分光測定器101が測定した分光スペクトルから求める。検量情報は、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液の各々における、既知の成分の濃度に関する濃度回帰式とすることができる。例えば、成分a、成分b、成分cの各々について、これらを水溶液とした場合の濃度の回帰式を作成しておき、使用溶液の吸光度を濃度回帰式に代入することで、各成分の濃度が算出できる。
【0022】
次に、本発明の実施の形態に係る濃度測定方法について、図2を参照して説明する。まず、ステップS101で、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液(薬液A、薬液B、薬液C)のいずれかが選択されて使用溶液とされる。使用溶液とされたいずれかの薬液は、供給装置111から流路113を経由して処理装置112に供給される。例えば、複数の溶液(薬液A、薬液B、薬液C)の各々は、溶解している複数の成分の種類が既知であるが、このなかのどれが使用溶液として選択されたのかが、不明であるものとする。
【0023】
次に、第2ステップS102で、例えば、流路113で輸送されている使用溶液の分光スペクトルを、分光測定器101で測定する。
【0024】
次に、第3ステップS103で、測定した分光スペクトルから、第1処理部102により、使用溶液を特定する。測定対象薬液の種類が仮に薬液Aならば、測定スペクトルを回帰式Aに代入した場合の値が大きな値となり、回帰式B、回帰式Cに代入したときの値はゼロ付近となるように、各々の回帰式を作成しておく。薬液B、薬液Cについても同様に、対応する回帰式に代入したときのみ大きな値を示し、他の回帰式ではゼロ付近の値となるように設定する(表1参照)。各薬液に対応する回帰式に代入した場合の「大きな値」は特に数値は限定されないが、ゼロ付近の値とは明らかに区別できるように設定することができる。これらのことにより、使用溶液の薬液種類を自動で判別する。
【0025】
【表1】
【0026】
次に、第4ステップS104で、第1処理部102により特定された溶液の既知とされている成分の種類毎の濃度を、第2処理部103により、特定した使用溶液の基準となる基準溶液をもとにして作成した検量情報をもとに、測定した分光スペクトルから求める。検量情報は、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液の各々における、既知の成分の濃度に関する濃度回帰式から構成されている。例えば、成分a、成分b、成分cの各々について、これらを水溶液とした場合の濃度の回帰式から検量情報を構成する。
【0027】
なお、上述した実施の形態に係る濃度測定装置の第1処理部102、第2処理部103、記憶部104は、図3示すように、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)301と主記憶装置302と外部記憶装置303とネットワーク接続装置304となどを備えたコンピュータ機器とし、主記憶装置302に展開されたプログラムによりCPU301が動作する(プログラムを実行する)ことで、上述した各機能(濃度測定方法)が実現されるようにすることもできる。上記プログラムは、上述した実施の形態で示した濃度測定方法をコンピュータが実行するためのプログラムである。ネットワーク接続装置304は、ネットワーク305に接続する。また、各機能は、複数のコンピュータ機器に分散させることもできる。
【0028】
以上に説明したように、本発明によれば、溶解している複数の成分の種類が既知の複数の溶液のなかから選択された使用溶液の分光スペクトルを測定し、測定した分光スペクトルから、使用溶液を特定するので、どの使用溶液が選択されたか不明であり、用いられている成分の状態が不明であっても、溶解している各成分の濃度が測定できるようになる。
【0029】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0030】
100…濃度測定装置、101…分光測定器、102…第1処理部、103…第2処理部、104…記憶部、111…供給装置、112…処理装置、113…流路。
図1
図2
図3