(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146246
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】コルゲート管及び複合管
(51)【国際特許分類】
F16L 11/11 20060101AFI20220928BHJP
F16L 11/20 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F16L11/11
F16L11/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047107
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(72)【発明者】
【氏名】深尾 洋一
(72)【発明者】
【氏名】臼井 優太郎
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CA12
3H111CA15
3H111CA43
3H111CA47
3H111CA53
3H111CB02
3H111CB03
3H111CB14
3H111DB03
3H111EA04
(57)【要約】
【課題】 従来には無かった新規な構成のコルゲート管及び当該コルゲート管を用いた複合管を提供すること。
【解決手段】 複合管1は、水路としての管体11と、管体11の外周を覆う保護管としてのコルゲート管12とを備えている。コルゲート管12は、山部21と、山部21よりも外径及び内径がそれぞれ小さい谷部22とが、軸線方向において交互に設けられた蛇腹状をなしており、軸線方向への伸縮が可能となっている。コルゲート管12は、独立気泡タイプの発泡ポリエチレン製である。コルゲート管12は、多孔質層のみで構成されている。したがって、コルゲート管12は、径方向の外方に多孔質層が露出されているとともに、径方向の内方に多孔質層が露出されて当該多孔質層と管体11とが直接的に接触されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
山部と前記山部よりも外径及び内径がそれぞれ小さい谷部とが軸線方向において交互に設けられた蛇腹状をなし、前記軸線方向への伸縮が可能であって、樹脂製の多孔質層からなるコルゲート管。
【請求項2】
請求項1に記載のコルゲート管に通水用の管体が挿通された複合管であって、前記多孔質層が径方向の外方へと露出されている複合管。
【請求項3】
請求項1に記載のコルゲート管に通水用の管体が挿通された複合管であって、前記多孔質層が径方向の内方へと露出されて当該多孔質層と前記管体とが直接的に接触されている複合管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルゲート管及び当該コルゲート管を用いた複合管に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~特許文献8には、山部と谷部とが軸線方向において交互に形成されたコルゲート管(被覆層)が開示されている。コルゲート管は、低密度ポリエチレン等の樹脂材料で構成されており、軸線方向への伸縮が可能となっている。コルゲート管の内側には、発泡ウレタン等の多孔質な層が、コルゲート管とは別個に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-219149号公報
【特許文献2】特開2017-219150号公報
【特許文献3】特開2018-105405号公報
【特許文献4】特開2018-105406号公報
【特許文献5】特開2019-105323号公報
【特許文献6】特開2019-105328号公報
【特許文献7】特開2019-215010号公報
【特許文献8】特開2020-180627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来には無かった新規な構成のコルゲート管及び当該コルゲート管を用いた複合管を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1の発明のコルゲート管は、山部と前記山部よりも外径及び内径がそれぞれ小さい谷部とが軸線方向において交互に設けられた蛇腹状をなし、前記軸線方向への伸縮が可能であって、樹脂製の多孔質層からなっている。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のコルゲート管に通水用の管体が挿通された複合管であって、前記多孔質層が径方向の外方へと露出されている複合管である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1に記載のコルゲート管に通水用の管体が挿通された複合管であって、前記多孔質層が径方向の内方へと露出されて当該多孔質層と前記管体とが直接的に接触されている複合管である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコルゲート管は、多孔質層からなる新規なものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を、給水給湯用の複合管において具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、複合管1は、水路としての管体11と、管体11の外周を覆う保護管としてのコルゲート管12とを備えている。
【0011】
管体11は樹脂材料により構成されている。当該樹脂材料としては、例えば、ポリブデン、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられる。これら樹脂材料のうち、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。管体11を構成する樹脂材料には、他の添加剤が含有されていてもよい。なお、本実施形態において管体11は、架橋ポリエチレン製である。また、管体11は呼び径が13Aである。
【0012】
コルゲート管12は、山部21と、山部21よりも外径及び内径がそれぞれ小さい谷部22とが、軸線方向(
図1の左右方向)において交互に設けられた蛇腹状をなしており、軸線方向への伸縮が可能となっている。なお、山部21の縦断面積は、谷部22の縦断面積よりも大きい。
【0013】
コルゲート管12は樹脂材料により構成されている。当該樹脂材料としては、例えばポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレンプロピレンジエンゴム、並びにこれらの混合物が挙げられる。なお、前記樹脂材料には、他の添加剤が含有されていてもよい。
【0014】
コルゲート管12は、独立気泡タイプ又は連続気泡タイプの多孔質な発泡樹脂製である(気泡を「K」で示す)。独立気泡タイプであれば、断熱性や衝撃吸収性に優れるコルゲート管12となる。連続気泡タイプであれば、収縮性に優れ、また管体11で発生する水撃音等の吸音性に優れるコルゲート管12となる。
【0015】
なお、本実施形態においてコルゲート管12は、独立気泡タイプの発泡ポリエチレン製である。また、コルゲート管12を構成する樹脂材料には、着色剤が添加されている。当該着色剤によって、コルゲート管12は、給水用の複合管1に適した青色、給湯用の複合管1に適した赤色、又は給湯器等の機器への接続に用いられる複合管1に多い白色に発色されている。コルゲート管12は、多孔質層を外表面側から視認できることで色の濃淡が斑となっているとともに光沢も無く、施工箇所の周囲の色との色馴染み性に優れる。
【0016】
コルゲート管12は多孔質層のみで構成されている。したがって、コルゲート管12は、径方向の外方(外表面)に多孔質層が露出されているとともに、径方向の内方(内表面)に多孔質層が露出されている。よって、複合管1を取り扱う者は、コルゲート管12の多孔質層に対して直接的に接触されるため、当該多孔質層の凹凸によって滑り難くて取り扱いが容易となる。また、管体11は、コルゲート管12の多孔質層に対して直接的に接触されるため、当該接触の面積が狭くてコルゲート管12に対する滑りが良好となり、例えばコルゲート管12を収縮させて管体11を露出する作業が容易となる。
【0017】
次に、本実施形態の複合管1の製造装置40について説明する。
図2に示すように、製造装置40は、当該図面の左側から右側へ向けて管体11を移動させつつ管体11の外周にコルゲート管12を形成することで、複合管1を製造する。この製造方法はインライン成形と呼ばれている。
【0018】
製造装置40は、繰出機41、押出機42、クロスダイ43、コルゲータ44、冷却槽45、及び引取機46を備えている。繰出機41は、管体11をクロスダイ43に向かって繰り出す。押出機42は、クロスダイ43に向けて、コルゲート管12を形成するための溶融状態の樹脂材料を押し出す。当該樹脂材料には、樹脂材料の発泡反応を促進する発泡剤が注入または混練されている。発泡剤としては、化学発泡剤を用いてもよいし、物理発泡剤を用いてもよい。あるいは、発泡剤として、化学発泡剤及び物理発泡剤を併用してもよい。
【0019】
なお、本実施形態においては、コルゲート管12を形成するための主たる樹脂材料(主材)として、低密度ポリエチレンが用いられており、当該樹脂材料にブタンやペンタン等の発泡剤を含有したポリスチレン(発泡剤マスターバッチ)と、着色剤である青色の顔料を含有した色マスターバッチとが配合されている。主材と発泡剤マスターバッチと色マスターバッチとの質量比は、100:5:5である。
【0020】
クロスダイ43は、管体11がクロスダイ43を通過する際に、前記樹脂材料を、管体11の外周へと円筒状に押し出す。これにより、管体11の外周を覆う樹脂材が形成される。
【0021】
コルゲータ44は、図示しないモールドブロック(金型)を循環させる周知の構成を有している。前記樹脂材で覆われた管体11がコルゲータ44を通過することで、樹脂材が発泡しつつモールドブロックの金型形状に沿って変形されて、山部21と谷部22とが軸線方向において交互に設けられた蛇腹状のコルゲート管12が成形される。コルゲート管12は多孔質であるため、管体11に対する接触面積を小さくでき、高温のコルゲート管12が管体11に対して貼り付くことを抑制できる。これは、複合管1のインライン成形を実現する上で、特に有効となる。
【0022】
なお、本実施形態において、コルゲート管12を形成するための樹脂材のうち、山部21に位置する樹脂材については発泡倍率が2.2倍であって、谷部22に位置する樹脂材については発泡倍率が1.4倍である。つまり、コルゲート管12を形成するための樹脂材のうち、山部21に位置する樹脂材のほうが、谷部22に位置する樹脂材よりも発泡倍率が高くなっている。
【0023】
コルゲート管12を形成するための樹脂材の発泡倍率が低ければ、山部21と谷部22との内径差が明確となり、換言すればコルゲート管12の内周面における蛇腹状が明確となり、コルゲート管12の伸縮性を良好に維持できるし、外観上も従来(無発泡)のコルゲート管との差が少なくて違和感が無い。
【0024】
このような発泡状態を達成するうえで、コルゲート管12を形成するための樹脂材のうち、山部21に位置する樹脂材については発泡倍率が2.0倍~2.4倍が好適であってさらに好適には2.1倍~2.3倍であり、谷部22に位置する樹脂材については発泡倍率が1.2倍~1.6倍が好適であってさらに好適には1.3倍~1.5倍である。
【0025】
さて、コルゲータ44を通過した管体11及びコルゲート管12は、冷却槽45を通過する際に冷却される。これにより、コルゲート管12が硬化し、複合管1が形成される。形成された複合管1は、引取機46によって引き取られるとともに、図示しない巻取機によって巻き取られる。
【0026】
(変更例)
上記実施形態は次のように変更してもよい。
〇コルゲート管12において、径方向の外方及び内方のうちの内方にのみ多孔質層を露出させること。つまり、コルゲート管12において径方向の外方に、樹脂材料により構成された被覆層を配置すること。
【0027】
例えば、
図3に示す複合管2において、当該被覆層としての被覆管14は、山部31と、山部31よりも外径及び内径がそれぞれ小さい谷部32とが、軸線方向(
図3の左右方向)において交互に設けられた蛇腹状をなしており、軸線方向への伸縮が可能である。
【0028】
軸線方向における山部31の配置間隔は、
図3に示すようにコルゲート管12の山部21の配置間隔と同じであってもよいし、図示しないが異なっていてもよい。また、被覆管14は、
図3に示すように多孔質でなくともよいし、図示しないが多孔質であってもよい。さらに、被覆管14において谷部32の内周部分は、
図3に示すようにコルゲート管12の山部21の外周に位置していてもよいし、図示しないがコルゲート管12の谷部22に位置していても、さらには谷部22に入り込んでいてもよい。
【0029】
なお、複合管2において被覆管14以外の構成は、
図1に示す複合管1と同じであるため、同一構成には同じ部材番号を付して説明を省略する。
【0030】
複合管2の製造には、例えば
図4に示す製造装置50が用いられる。製造装置50は、
図2に示す製造装置40において、冷却槽45と引取機46との間に別のクロスダイ51が配置されている。別の押出機52は、クロスダイ51に向けて、被覆管14を形成するための溶融状態の樹脂材料(本実施形態においてはポリエチレン)を押し出す。クロスダイ51は、管体11及びコルゲート管12がクロスダイ51を通過する際に、前記樹脂材料を、コルゲート管12の外周へと円筒状に押し出す。これにより、コルゲート管12の外周を覆う樹脂材が形成される。
【0031】
クロスダイ51と引取機46との間には、別のコルゲータ53が配置されている。前記樹脂材で覆われたコルゲート管12がコルゲータ53を通過することで、コルゲート管12の外周を覆う樹脂材がモールドブロックの金型形状に沿って変形されて、山部31と谷部32とが軸線方向において交互に設けられた蛇腹状の被覆管14が成形される。
【0032】
コルゲータ53と引取機46との間には、別の冷却槽54が配置されている。管体11、コルゲート管12、及び被覆管14は、冷却槽54を通過する際に冷却される。これにより、被覆管14が硬化し、複合管2が形成される。
【0033】
〇コルゲート管12において、径方向の外方及び内方のうちの外方にのみ多孔質層を露出させること。つまり、コルゲート管12において径方向の内方に中間層を配置することで、コルゲート管12の多孔質層が、管体11に対して直接的に接触しないようにすること。
【0034】
なお、前記中間層は、発泡層であってもよいしフィルム層であってもよい。特に、コルゲート管12を形成する高温の樹脂材が管体11に対して接着することを防止すべく、前記中間層には当該接着を抑制する効果があるものを用いるとよりよい。
【0035】
〇コルゲート管12において、径方向の外方及び内方の両方において多孔質層を露出させないこと。つまり、コルゲート管12において、径方向の外方に被覆層を配置するとともに、径方向の内方に中間層を配置すること。
【0036】
〇上記実施形態において複合管1は、所謂インライン成形によって管体11の外周面にコルゲート管12を成形したものであった。これを変更し、コルゲート管12のみをコルゲータ44にて成形した後、後工程である通管工程にてコルゲート管12に管体11を挿通させることで複合管1を製造すること。この場合においても、管体11がコルゲート管12の多孔質層に対して直接的に接触されるため、コルゲート管12に対する管体11の滑りが良好となり、コルゲート管12への管体11の挿通が容易となる。
【0037】
〇コルゲート管12を形成するための樹脂材のうち、山部21に位置する樹脂材の発泡倍率を、谷部22に位置する樹脂材の発泡倍率よりも低くすること。
【0038】
〇呼び径が16Aの管体11に対応したコルゲート管12において具体化すること。この場合、コルゲート管12を形成するための樹脂材のうち、山部21に位置する樹脂材については発泡倍率を1.7倍とし、谷部22に位置する樹脂材については発泡倍率を1.1倍とするとよい。
【0039】
コルゲート管12を形成するための樹脂材の発泡倍率が低ければ、山部21と谷部22との内径差が明確となり、換言すればコルゲート管12の内周面における蛇腹状が明確となり、コルゲート管12の伸縮性を良好に維持できるし、外観上も従来(無発泡)のコルゲート管との差が少なくて違和感が無い。
【0040】
このような発泡状態を達成するうえで、コルゲート管12を形成するための樹脂材のうち、山部21に位置する樹脂材については発泡倍率が1.5倍~1.9倍が好適であってさらに好適には1.6倍~1.8倍であり、谷部22に位置する樹脂材については発泡倍率が1.05倍~1.15倍が好適であってさらに好適には1.075倍~1.125倍である。
【0041】
(付記)
上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
(1)請求項1に記載のコルゲート管に通水用の管体が挿通された複合管であって、前記コルゲート管の外周には被覆層が成形されており、前記被覆層は、山部と前記山部よりも外径及び内径がそれぞれ小さい谷部とが軸線方向において交互に設けられた蛇腹状をなす被覆管であって、当該被覆管は前記軸線方向への伸縮が可能である複合管。
【0042】
(2)前記多孔質層は低発泡樹脂製である請求項1に記載のコルゲート管。
【0043】
(3)色の濃淡が斑な請求項1又は技術的思想(2)に記載のコルゲート管。
【0044】
(4)前記多孔質層は、前記山部の発泡倍率が前記谷部の発泡倍率よりも高くなっている技術的思想(2)に記載のコルゲート管。このようにすれば、複合管を取り扱う者が直接的に接触されるコルゲート管の山部が滑り難くなり、当該複合管の取り扱いが容易となる。
【0045】
(5)前記多孔質層は、前記山部の発泡倍率が前記谷部の発泡倍率よりも低くなっている技術的思想(2)に記載のコルゲート管。このようなコルゲート管を用いた複合管においては、コルゲート管の谷部と管体との接触面積を狭くすることができ、コルゲート管に対する管体の滑りが良好となり、例えばコルゲート管を収縮させて管体を露出する作業が容易となる。
【符号の説明】
【0046】
1…複合管
2…複合管
11…管体
12…コルゲート管
14…被覆管
21…山部
22…谷部
31…山部
32…谷部
40…製造装置
41…繰出機
42…押出機
43…クロスダイ
44…コルゲータ
45…冷却槽
46…引取機
50…製造装置
51…クロスダイ
52…押出機
53…コルゲータ
54…冷却槽