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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146253
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】車両駆動モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20220928BHJP
   F16H 57/04 20100101ALN20220928BHJP
【FI】
H02K9/19 A
F16H57/04 Q
F16H57/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047126
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
(72)【発明者】
【氏名】宮本 正悟
(72)【発明者】
【氏名】板谷 隆樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 耕作
【テーマコード(参考)】
3J063
5H609
【Fターム(参考)】
3J063AA04
3J063AC01
3J063BA11
3J063CD09
3J063XD03
3J063XD32
3J063XD73
3J063XF14
5H609BB03
5H609BB12
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP07
5H609PP11
5H609QQ05
5H609QQ12
5H609RR37
5H609RR48
5H609RR50
(57)【要約】
【課題】 電気自動車を長期間運転しなかった場合でも、軸受の潤滑を維持することができる車両駆動モータを提供する。
【解決手段】 内周面に円筒形状のステータコイルを固定し、上部に通油路を設けたケーシングと、該ケーシング内に配置され、前記ステータコイルの対向位置にロータを固定した出力シャフトと、前記出力シャフトを支持する軸受と、該軸受と対向配置され、前記通油路から供給されたオイルを貯えるオイル保持部と、を備え、前記オイル保持部は、前記出力シャフトの軸方向から正面視したときに、上辺が前記出力シャフトの下端より低く、下辺が前記軸受の下外周に沿ったポケット形状の受皿である車両駆動モータ。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に円筒形状のステータコイルを固定し、上部に通油路を設けたケーシングと、
該ケーシング内に配置され、前記ステータコイルの対向位置にロータを固定した出力シャフトと、
前記出力シャフトを支持する軸受と、
該軸受と対向配置され、前記通油路から供給されたオイルを貯えるオイル保持部と、を備え、
前記オイル保持部は、前記出力シャフトの軸方向から正面視したときに、上辺が前記出力シャフトの下端より低く、下辺が前記軸受の下外周に沿ったポケット形状の受皿である車両駆動モータ。
【請求項2】
請求項1に記載の車両駆動モータにおいて、
前記オイル保持部は、前記出力シャフトの軸方向から正面視したときに、前記出力シャフトの外周を囲み、上端高さが前記出力シャフトの中心高さと略等しい、略U字状の受皿であることを特徴とする車両駆動モータ。
【請求項3】
請求項1に記載の車両駆動モータにおいて、
前記オイル保持部は、前記出力シャフトの軸方向から正面視したときに、前記出力シャフトの外周を囲み、上端高さが前記出力シャフトの中心高さと略等しい、略三日月状の受皿であることを特徴とする車両駆動モータ。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の車両駆動モータにおいて、
前記オイル保持部を、前記軸受の軸方向の移動を制限するリテーナと一体に構成したことを特徴とする車両駆動モータ。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の車両駆動モータにおいて、
前記出力シャフトは、一対の軸受で支持されており、各々の軸受に対し、前記オイル保持部が設けられていることを特徴とする車両駆動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の駆動力を生成する車両駆動モータに関し、特に、低温のオイルでステータコイルや軸受等を冷却しつつ、軸受を潤滑する車両駆動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
高出力化と小型化を両立した車両駆動モータでは、モータを高速回転させた際にステータコイルや軸受等が高温になるため、それらを冷却する必要がある。また、車両駆動モータでは、軸受の生涯回転数が増大するため、軸受のオイル切れに起因する故障を排除したいという要求もある。
【0003】
そのため、例えば、特許文献1では、同文献の図3から図5に例示される構成により、上方から吐出したオイルで回転電機(モータ)の三相コイル(ステータコイル)や軸受等を冷却し、さらに、軸受を潤滑している。この詳細については、同文献の段落0060で「コイルエンド20a、20bと三相コイル20の軸線方向の略中央部に吐出されたオイルは、三相コイル20の周方向に沿って三相コイル20の下部に流れ落ち、このオイルが三相コイル20を流れ落ちる間に、三相コイル20からオイルに熱が伝わり、ステータ18の冷却が行われる。特に、三相コイル20の中で最も高温となるコイルエンド20a、20bにオイルを供給しているため、三相コイル20が効率よく冷却される。」と、また、段落0068で「このため、モータMのコイルエンド20a、20bを冷却するためのオイルを供給するオイルパイプ44を利用して、モータMの軸線方向外方に設けられた軸受43を潤滑することができ、軸受43を潤滑するための新たな潤滑構造を不要にできる。」と、具体的に説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5136688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、回転電機(モータ)の駆動中であれば、三相コイル(ステータコイル)を冷却しつつ、軸受を潤滑できるが、回転電機を長期間駆動しなかった場合には、軸受近傍のオイルが流れ落ちて軸受の潤滑が不足し、それが故障要因になる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明では、電気自動車を長期間運転しなかった場合でも、軸受の潤滑を維持することができる車両駆動モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の車両駆動モータは、内周面に円筒形状のステータコイルを固定し、上部に通油路を設けたケーシングと、該ケーシング内に配置され、前記ステータコイルの対向位置にロータを固定した出力シャフトと、前記出力シャフトを支持する軸受と、該軸受と対向配置され、前記通油路から供給されたオイルを貯えるオイル保持部と、を備え、前記オイル保持部は、前記出力シャフトの軸方向から正面視したときに、上辺が前記出力シャフトの下端より低く、下辺が前記軸受の下外周に沿ったポケット形状の受皿であるものとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両駆動モータによれば、電気自動車を長期間運転しなかった場合でも、軸受の潤滑を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】比較例の車両駆動モータの軸方向断面図
図2】比較例の車両駆動モータの径方向断面図
図3】実施例1の車両駆動モータの軸方向断面図
図4】実施例1のオイル保持部の周辺の正面図
図5】実施例1のオイル保持部の第一変形例
図6】実施例1のオイル保持部の第二変形例
図7】実施例2の車両駆動モータの軸方向断面図
図8図7の車両駆動モータの組み立て手順を説明するための断面図
図9】本発明のオイル保持部を減速機に適用した第一の例
図10】本発明のオイル保持部を減速機に適用した第二の例
【発明を実施するための形態】
【0010】
<比較例>
本発明の車両駆動モータを説明する前に、まず、図1図2を用いて、比較例の車両駆動モータ10を説明する。なお、比較例の車両駆動モータ10は、特許文献1の電動機の構成のうち、本発明に関連する構成を抽出して簡略表示したものである。
【0011】
図1は、比較例の車両駆動モータ10の軸方向断面図である。この車両駆動モータ10は、回転軸が水平になるように電気自動車に組み込まれるものであり、紙面下方向が設置後の重力方向に相当する。
【0012】
ここに示すように、比較例の車両駆動モータ10は、外殻を形成するケーシング1と、ケーシング1の上下に設けた通油路2(上通油路2a、下通油路2b)と、ケーシング1の円筒部内周面に固定した円筒形状のステータコイル3と、水平配置した出力シャフト4と、出力シャフト4の外周であってステータコイル3の対向位置に固定したロータ5と、出力シャフト4を2箇所で支持する一対の軸受6(例えば、ころ軸受や玉軸受)と、一方の軸受6の軸方向の移動を制限するリテーナ7と、ケーシング1の内面端部にリテーナ7を固定するボルト8を備えている。
【0013】
この車両駆動モータ10にインバータ回路(図示せず)から電流を供給すると、固定子側のステータコイル3に流れた電流が作る磁束により、回転子側の出力シャフト4が回転し、電気自動車を駆動するための駆動力が出力される。このとき、電流が流れて高温になったステータコイル3や、高速回転時の抗力損失により高温になった軸受6等を冷却する必要があり、また、抗力損失抑制のため軸受6を潤滑する必要がある。そこで、比較例の車両駆動モータ10では、外部から供給した低温のオイルにより、ステータコイル3や軸受6等を冷却するとともに、軸受6を潤滑している。
【0014】
図中の破線矢印は、外部から供給された低温のオイルの流れる方向を示しており、上通油路2aの吐出孔から吐出されたオイルが、最高温部である端部3aおよびそれと熱的に接続されたステータコイル3を冷却した後、下方に流れ落ち、さらに、高速回転する出力シャフト4によって攪拌されて飛び跳ね、軸受6を潤滑した後、ケーシング1の下部を貫通する下通油路2bから車両駆動モータ10の外部に排出される様子を示している。なお、上通油路2aに供給されるオイルは、実施例3で説明する減速機20で巻き上げたものであっても良いし、ポンプで吸い上げたものであっても良い。
【0015】
図2は、図1のオイルの流れを、別方向から見た図であり、図1の右側の端部3aを含む位置における、車両駆動モータ10の径方向断面図である。なお、ここでは、ケーシング1の外周面の図示を省略している。ここに示すように、上通油路2aの吐出孔から吐出されたオイルは、ケーシング1の内周面に沿って流れるものと、上方の端部3aから落下するものに分かれる。前者のオイルは、ケーシング1の内周面に沿って配置されたステータコイル3の端部3aを順次冷却する。一方、後者のオイルは、高速回転する出力シャフト4によって攪拌されて飛び跳ね、一部が軸受6に到達して軸受6を冷却、潤滑する。このようにして、比較例の車両駆動モータ10では、ステータコイル3や軸受6の冷却と、軸受6の潤滑を実現することができる。
【実施例0016】
しかしながら、比較例の車両駆動モータ10では、軸受6へのオイル供給に出力シャフト4の回転を利用しているため、電気自動車を長期間運転しなかった場合には、軸受6の近傍のオイルが流れ落ちてしまい、次回運転時には、軸受6の潤滑不足により、軸受6の抗力損失が増加し、車両駆動モータ10の故障を招く可能性がある。特に、オイル供給に減速機の巻き上げを利用する場合、車両駆動モータ10の起動直後は、減速機の歯車の回転速度が遅くオイルの巻上量が少ないため、この問題はより重要になる。
【0017】
そこで、図3から図6に示す、本発明の実施例1に係る車両駆動モータ10Aでは、電気自動車を長期間運転しなかった場合であっても、少なくとも出力端側の軸受6については潤滑を維持できるようにする。なお、以下では、比較例と同等の構成については重複説明を省略する。
【0018】
図3は、実施例1の車両駆動モータ10Aの軸方向断面図である。この車両駆動モータ10Aは、比較例の車両駆動モータ10の構成に、更に、出力端側の軸受6に対向するオイル保持部9を追加したものである。このオイル保持部9は、リテーナ7の下半の一部を、ステータコイル3の端部3aの下方まで伸ばした受皿部材であり、上側の端部3aから垂れた後、高速回転する出力シャフト4によって攪拌されて飛び跳ねた、比較的低温のオイルを貯え、軸受6に供給するためのものである。なお、図3では、部品点数を削減するため、防止リテーナ7とオイル保持部9を一体構成としたが、両者を別体の構成としても良い。
【0019】
図4は、本実施例のオイル保持部9の周辺の正面図である。ここに示すように、オイル保持部9は、軸方向から正面視したときに、上辺が出力シャフト4の下端より低く、下辺が軸受6の下外周に沿った、ポケット形状の受皿部材である。このようなオイル保持部9を設けることで、電気自動車を長期間運転しなかった場合であっても、前回運転時にオイル保持部9に貯えたオイルにより軸受6の潤滑を維持することができるので、次回運転の開始時には軸受6を適切に潤滑した状態で、電気自動車を運転することができる。
【0020】
以上で説明したように、本実施例の車両駆動モータ10Aによれば、電気自動車を長期間運転しなかった場合でも、モータの軸受の潤滑を維持することができる。
【0021】
<オイル保持部の第一変形例>
次に、図5を用いて、図4のオイル保持部9の変形例を説明する。図4のオイル保持部9では、軸受6の攪拌損失の増加を抑制するため、比較的浅い受皿形状を採用することで、オイル保持部9内のオイル量を所望量以下に抑制していた。しかしながら、車両駆動モータ1Aの駆動終了後には、軸受6の慣性回転時の遠心力により、オイル保持部9からオイルが掻き出されるため、慣性回転の継続時間が長い特性の車両駆動モータ1Aで浅い受皿形状のオイル保持部9を採用すると、オイル保持部9内のオイル残量が不足する可能性が考えられる。また、電気自動車を坂道に駐車した場合などには、オイル保持部9の一端側が低くなり、そこからオイルが流出してオイル残量が不足する可能性も考えられる。
【0022】
そこで、図5のオイル保持部9Aでは、図5の左図に示すように、軸方向から正面視したときに、出力シャフト4の外周を囲み、上端高さが出力シャフト4の中心高さと略等しい、略U字状の形状を採用した。これにより、車両駆動モータ1Aの駆動中に図4のオイル保持部9より多くのオイルを貯えることができるため、軸受6の慣性回転時の遠心力によりオイルの一部が掻き出されても十分なオイル残量を確保することができる。また、電気自動車が坂道に駐車され、オイル保持部9Aが図5の右図に示す姿勢になり、オイルの一部がオイル保持部9Aの右側から流れ出た場合であっても、次回運転時に軸受6で必要とされる十分なオイル残量を維持することができる。
【0023】
<オイル保持部の第二変形例>
次に、図6を用いて、図5のオイル保持部9Aの変形例を説明する。図5のオイル保持部9Aでは十分な量のオイルを貯えることができるが、オイル保持部9A内のオイル残量が過剰になり、車両駆動モータ10Aの駆動中に軸受6の攪拌抵抗が過剰になる可能性がある。
【0024】
そこで、図6のオイル保持部9Bでは、軸方向から正面視したときに、出力シャフト4の外周を囲み、上端高さが出力シャフト4の中心高さと略等しい、略三日月状となる形状を採用した。これにより、車両駆動モータ10Aの駆動中には、オイル保持部9Bの上辺の低い箇所から過剰なオイルが排出されるため、オイル保持部9B内のオイル量をある程度抑制し、軸受6での攪拌抵抗を抑制することができる。また、オイル保持部9Bの上端は、図5のオイル保持部9Aの上端と同程度の高さであるため、電気自動車を坂道に駐車したには、図5の右図に示したと同等の作用により、オイル保持部9B内に十分なオイル残量を維持することができる。
【実施例0025】
次に、図7図8を用いて、実施例2の車両駆動モータ10Bを説明する。なお、以下では、実施例1と同等の構成については重複説明を省略する。
【0026】
実施例1の車両駆動モータ1Aでは、図3に示したように、出力端側にある右側の軸受6に対してはオイル保持部9を設けたが、左側の軸受6に対してはオイル保持部を設けなかった。これに対し、本実施例の車両駆動モータ10Bでは、図7の断面図に示すように、左側の軸受6に対してもオイル保持部9Cを設け、左側の軸受6についても潤滑を維持できるようにした。なお、図7のオイル保持部9Cの正面視形状には、図4のオイル保持部9、図5のオイル保持部9A、図6のオイル保持部9Bの何れを採用しても良い。
【0027】
図7では、右側の軸受6に対し、実施例1と同様、軸方向の移動を抑制するリテーナ7を設けたが、出力シャフト4の左端に圧入した左側の軸受6については、リテーナ7により出力シャフト4の軸方向の移動が抑制されている以上、重ねて他のリテーナで固定する必要が無い。そのため、左側のオイル保持部9Cについては後述する組み立て手順を考慮し、リテーナに相当する部位を省略した。
【0028】
図8は、図7の車両駆動モータ10Bの構造をより具体的に示したものである。図8では、ケーシング1が、フロントケーシング1a、円筒ケーシング1b、リアケーシング1cから構成されている。このようなケーシング1を用いる場合、車両駆動モータ10Bは、次の手順で組み立てられる。
【0029】
まず、円筒ケーシング1bの内周面にステータコイル3を固定する。次に、出力シャフト4の右側に軸受6を圧入した後、その軸受6をフロントケーシング1aの内面に挿入する。そして、フロントケーシング1aの内面にリテーナ7をボルトで固定して、右側の軸受6および出力シャフト4の軸方向位置を固定する。その後、出力シャフト4の中央にロータ5を固定し、出力シャフト4の先端に左側の軸受6を圧入してから、フロントケーシング1aを円筒ケーシング1bにボルトで締結する。さらに、リアケーシング1cにオイル保持部9Cをボルトで締結した後、リアケーシング1cを円筒ケーシング1bにボルトで締結する。このような組立手順により、左右の軸受の近傍にオイル保持部9、9Cを設けた車両駆動モータ10Bを製造することができる。
【実施例0030】
次に、図9を用いて、車両駆動モータの出力側に接続した減速機20に、本発明を適用した構成例を説明する。なお、本実施例の車両駆動モータには、比較例の車両駆動モータ10、上記実施例の車両駆動モータ10A、10Bの何れを用いても良いが、以下では、車両駆動モータ10Bを用いた構成を説明する。
【0031】
図9に示すように、本実施例の減速機20は、車両駆動モータ10Bの出力側に接続した装置であり、複数の歯車21を組み合わせることで、車両駆動モータ10Bの出力シャフト4の低トルク高速回転の出力を、高トルク低速回転の駆動力に変換するものである。
【0032】
この減速機20において、歯車21群が下方の貯油部から巻き上げた低温のオイルは、配管22aを通って車両駆動モータ10Bの上通油路2aに供給され、また、車両駆動モータ10Bの下通油路2bから排出された高温のオイルは配管22bを通って減速機20に循環する。そして、車両駆動モータ10Bから減速機20に戻った高温のオイルは、減速機20の下方の貯油部で放熱され、低温になる。
【0033】
ここで、減速機20の歯車21のうち、車両駆動モータ10Bの出力シャフト4と同軸のものは、出力シャフト4と等速で高速回転する。この歯車21が、例えば、はすば歯車であれば、その歯車21のシャフトを支持する軸受6Aは、径方向および軸方向の荷重を受けるため、車両駆動モータ10Bの軸受6より過酷な条件下で使用される可能性がある。そのため、本実施例では、減速機20の軸受6Aに対しても、実施例1や実施例2と同様のオイル保持部9Dを設置した。
【0034】
図10はステータコイル3の左右の端部において、発熱量が異なる場合の例である。本例は左側端部の発熱量が大きい場合を示しており、配管22aはステータコイル3左側端部近傍に接続されている。本構造によって発熱量の大きい側のコイルをより冷却することが可能となる。
【0035】
これにより、上記実施例の車両駆動モータ10A、10Bと同様に、本実施例の減速機20においても、電気自動車を長期間運転しなかった場合でも、減速機の軸受の潤滑を維持することができる。
【符号の説明】
【0036】
10、10A、10B 車両駆動モータ
1 ケーシング
1a フロントケーシング
1b 円筒ケーシング
1c リアケーシング
2 通油路
2a 上通油路
2b 下通油路
3 ステータコイル
3a 端部
4 出力シャフト
5 ロータ
6 軸受
7 リテーナ
8 ボルト
8a ボルト穴
9 オイル保持部
20 減速機
21 歯車
22 配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10