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特開2022-146260Mn賦活蛍光体、波長変換体、及び発光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146260
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】Mn賦活蛍光体、波長変換体、及び発光装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/64 20060101AFI20220928BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20220928BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
C09K11/64
H01L33/50
G02B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047138
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】坂野 広樹
(72)【発明者】
【氏名】豊島 広朗
【テーマコード(参考)】
2H148
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA19
4H001CA02
4H001XA07
4H001XA08
4H001XA12
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA25
5F142AA22
5F142DA44
5F142DA52
5F142DA56
5F142DA63
5F142DA72
5F142DA73
5F142GA33
5F142HA01
(57)【要約】
【課題】波長が254nmの光が照射されたとき、発光スペクトルにおいて、600nm以上900nm以下の範囲に発光ピークを有するMn賦活蛍光体を提供する。
【解決手段】本発明のMn賦活蛍光体は、波長が254nmの光が照射されたとき、600nm以上900nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発光するMn賦活蛍光体であって、一般式:Mg1-xSiAl3+pMn2+q3+z(ただし、0.2≦x≦1、0<y≦0.1、0.1≦p≦1.5、0≦q≦1.5、0.5≦z≦1.5)で表される化合物を含むものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長が254nmの光が照射されたとき、600nm以上900nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発光するMn賦活蛍光体であって、
一般式:Mg1-xSiAl3+pMn2+q3+z(ただし、0.2≦x≦1、0<y≦0.1、0.1≦p≦1.5、0≦q≦1.5、0.5≦z≦1.5)で表される化合物を含むMn賦活蛍光体。
【請求項2】
請求項1に記載のMn賦活蛍光体であって、
波長が254nmの光が照射されたときの発光スペクトルにおいて、600nm以上900nm以下の波長範囲における発光ピークの半値幅が、100nm以上170nm以下である、Mn賦活蛍光体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のMn賦活蛍光体であって、
波長が254nmの光が照射されたときの発光スペクトルにおいて、650nmにおける蛍光強度をI650、600nm以上900nm以下の波長範囲における発光ピークにおける蛍光強度をIMAXとしたとき、I650、IMAXが、1.5≦IMAX/I650を満たす、Mn賦活蛍光体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のMn賦活蛍光体であって、
上記一般式中、0<1-x+y≦1.0を満たす化合物を含む、Mn賦活蛍光体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のMn賦活蛍光体であって、
当該Mn賦活蛍光体が、組成式MgSiAlj1j2Mnで表され、
前記組成比f、g、h、j1、j2及びiが、
0.00≦f≦0.88、
0.70≦g≦1.30、
0.70≦h≦4.50、
5.50≦j1+j2≦7.50、
0.00<i≦1.30、及び
0.70≦h+i≦5.30を満たすように構成される、Mn賦活蛍光体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のMn賦活蛍光体であって、
レーザー回折散乱法で測定される体積頻度粒度分布において、累積値が50%となる粒子径D50が、1μm以上50μm以下である、Mn賦活蛍光体。
【請求項7】
請求項6に記載のMn賦活蛍光体であって、
レーザー回折散乱法で測定される体積頻度粒度分布において、累積値が10%となる粒子径D10、累積値が90%となる粒子径をD90としたとき、
(D90-D10)/D50が、1.0以上20.0以下である、Mn賦活蛍光体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のMn賦活蛍光体を含む、波長変換体。
【請求項9】
請求項8に記載の波長変換体を備える、発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Mn賦活蛍光体、波長変換体、及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで化学組成がMgSiAlで示される結晶を含む蛍光体について様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、化学組成がMgSiAlで示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶にEuが固溶し、250nmから500nmの光を照射すると450nm以上530nm以下の青色から緑色の蛍光を発する蛍光体が記載されている(特許文献1の請求項23)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-000965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のEu賦活蛍光体は、254nmの光が照射されたとき、発光スペクトルにおいて、600nm以上900nm以下の範囲に発光ピークを有するものではなかった。
また、化学組成がMgSiAlで示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶にMnが固溶することで、近赤外光を発する蛍光体が得られることは知られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、近赤外発光蛍光体の実現を目指して検討を行った結果、賦活元素としてMn元素を選択し、一般式:Mg1-xSiAl3+pMn2+q3+z(ただし、0.2≦x≦1、0<y≦0.1、0.1≦p≦1.5、0≦q≦1.5、0.5≦z≦1.5)で表される化合物を用いることによって、波長が254nmの光が照射されたとき、発光スペクトルにおいて、600nm以上900nm以下の範囲に発光ピークを有する新規蛍光体を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明によれば、
波長が254nmの光が照射されたとき、600nm以上900nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発光するMn賦活蛍光体であって、
一般式:Mg1-xSiAl3+pMn2+q3+z(ただし、0.1≦x≦1、0<y≦0.1、0.1≦p≦1.5、0≦q≦2、0≦z≦1.5)で表される化合物を含むMn賦活蛍光体が提供される。
【0007】
また本発明によれば、上記のMn賦活蛍光体を含む、波長変換体が提供される。
【0008】
また本発明によれば、上記の波長変換体を備える、発光装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、波長が254nmの光が照射されたとき、発光スペクトルにおいて、600nm以上900nm以下の範囲に発光ピークを有するMn賦活蛍光体、それを用いた波長変換体、及び発光装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1、4、比較例1、2の蛍光体におけるXRDパターンを示す図である。
図2】実施例1、4、比較例1、2の蛍光体における発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態のMn賦活蛍光体を概説する。
【0012】
Mn賦活蛍光体は、波長が254nmの光が照射されたとき、600nm以上900nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発光する蛍光体である。
このMn賦活蛍光体は、一般式:Mg1-xSiAl3+pMn2+q3+z(ただし、0.2≦x≦1、0<y≦0.1、0.1≦p≦1.5、0≦q≦1.5、0.5≦z≦1.5)で表される化合物を含む。
【0013】
本発明者の知見によれば、設計組成として一般式:Mg1-xSiAl3+p-yMn2+q3+z(ただし、0.2≦x≦1、0<y≦0.1、0.1≦p≦1.5、0≦q≦1.5、0.5≦z≦1.5)を有する化合物を用いることによって、蛍光体中の賦活元素Mnの賦活量を適切に制御できるため、近赤外領域及び/又は近赤外領域近傍における発光特性に優れたMn賦活蛍光体を実現できることが見出された。
【0014】
詳細なメカニズムは定かでないが、蛍光体中の元素の一部をMn元素に置換することで、発光ピーク位置が長波長側にシフトし、近赤外領域近傍における光を発光する蛍光体を実現できると考えられる。
また、蛍光体中のMg元素の含有量を適切に制御することにより発光特性を高められると考えられる。
【0015】
本実施形態のMn賦活蛍光体は、200nm~300nmのUV光や420nm~530nmの青色光で励起可能である。
【0016】
本実施形態のMn賦活蛍光体を含む波長変換体は、照射された光(励起光)を変換して、励起光とは異なる波長範囲に発光ピークを有する光を発光する部材で構成される。波長変換体は、下記の発光装置の少なくとも一部を構成してもよい。波長変換体は、例えば、600nm以上900nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発光してもよい。波長変換体は、本実施形態のMn賦活蛍光体以外の公知の蛍光体を一または二以上含んでもよい。
【0017】
波長変換体は、Mn賦活蛍光体からのみで構成されてもよく、Mn賦活蛍光体が分散した母材を含んでもよい。母材としては、例えば、ガラス、樹脂、無機材料などが挙げられる。
【0018】
本実施形態の波長変換体を備える発光装置は、センサー・検査・分析用、セキュリティ用、光通信用、医療用などの各種の用途に用いることができるが、例えば、LEDパッケージ、光源、設置型の分光光度計、ハンド型の食品分析計、ウェアラブルデバイス、赤外線カメラ、水分測定装置、ガス検出装置等が挙げられる。
【0019】
発光装置の一例は、発光素子と、発光素子から照射された光を変換して発光するMn賦活蛍光体を含む波長変換体と、を備える。このような波長変換体は、その形状が特に限定されず、プレート状に構成されてもよく、例えば、発光素子の一部または発光面全体を封止するように構成されてもよい。
【0020】
以下、本実施形態のMn賦活蛍光体を詳述する。
【0021】
Mn賦活蛍光体は、波長が254nmの光が照射されたとき、発光スペクトルにおいて、600nm以上900nm以下、好ましくは680nm以上900nm以下、より好ましくは700nm以上850nm以下の波長範囲に発光ピークを有する。
【0022】
発光ピークの位置は、蛍光体に含まれるMn元素の濃度、すなわち、一般式:Mg1-xSiAl3+pMn2+q3+z(ただし、0.2≦x≦1、0<y≦0.1、0.1≦p≦1.5、0≦q≦1.5、0.5≦z≦1.5)中のyや1-x等を適切に調整することによって、制御できる。
【0023】
波長が254nmの光が照射されたときの、Mn賦活蛍光体の発光スペクトルにおいて、600nm以上900nm以下の波長範囲における発光ピークの半値幅は、例えば、100nm以上170nm以下、好ましくは110nm以上160nm以下、より好ましくは120nm以上150nm以下である。半値幅を上記範囲内とすることで、ピーク波長における発光強度を向上できる。
【0024】
上記一般式中、1-xの下限は、例えば、0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上である。これにより、発光ピークの発光強度を高められる。
一方、1-xの上限は、0.90以下、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.30以下である。これにより、発光ピークの形状をよりシャープにすることができ、可視光成分を含まない発光が得られるため好ましい。
【0025】
上記一般式中、yの下限は、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上である。ピーク位置を所望の範囲内とすることができる。
一方、yの上限は、好ましくは0.09以下、より好ましくは0.07以下である。これにより、近赤外領域近傍における光を発光させることができる。
【0026】
Mn賦活蛍光体は、上記一般式中、0<1-x+y≦1.0、好ましくは0<1-x+y≦0.9、より好ましくは0<1-x+y≦0.5を満たす化合物を含んでもよい。これにより、近赤外領域近傍における光を発光させることができ、発光ピークの発光強度を高められる。
【0027】
Mn賦活蛍光体が、組成式MgSiAlj1j2Mnで表され、
組成比f、g、h、j1、j2及びiが、
0.00≦f≦0.88、
0.70≦g≦1.30、
0.70≦h≦4.50、
5.50≦j1+j2≦7.50、
0.00<i≦1.30、及び
0.70≦h+i≦5.30を満たすように構成されてもよい。
【0028】
波長が254nmの光が照射されたときの、Mn賦活蛍光体の発光スペクトルにおいて、650nmにおける蛍光強度をI650、600nm以上900nm以下の波長範囲における発光ピークにおける蛍光強度をIMAXとする。
Mn賦活蛍光体は、I650、IMAXが、例えば、1.5≦IMAX/I650、好ましくは5.0≦IMAX/I650、より好ましくは10.0≦IMAX/I650を満たすように構成されてもよい。これにより、発光ピークを長波長側にシフトさせたり、発光ピークの形状をよりシャープにしたりすることが可能であり、可視光成分を含まない発光が得られるため好ましい。
一方、Mn賦活蛍光体は、I650、IMAXが、例えば、IMAX/I650≦1000を満たすように構成されてもよい。
【0029】
Mn賦活蛍光体について、レーザー回折散乱法を用いて測定した体積頻度粒度分布において、累積値が50%となる粒子径をD50、累積値が10%となる粒子径をD10、累積値が90%となる粒子径をD90とする。
【0030】
D50は、例えば、1μm以上50μm以下、好ましくは2μm以上40μm以下、より好ましくは3μm以上30μm以下である。上記の範囲内とすることで、発光特性のバランスを図ることができる。
【0031】
(D90-D10)/D50の下限は、例えば、1.0以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上である。一方、(D90-D10)/D50の上限は、例えば、20.0以下、好ましくは10.0以下、より好ましくは7.0以下である。上記の範囲内とすることで、発光特性のバランスを図ることができる。
【0032】
以下、本実施形態のMn賦活蛍光体の製造方法について説明する。
【0033】
Mn賦活蛍光体の製造方法の一例は、一般式:Mg1-xSiAl3+pMn2+p3+p(ただし、0.2≦x≦1、0<y≦0.1、0.1≦p≦1.5、0≦q≦1.5、0.5≦z≦1.5)で表される化合物の組成を構成する各元素を含む原料混合物を得る混合工程と、原料混合物を焼成する焼成工程と、を含んでもよい。
【0034】
Mg元素を含む原料としては、Mgを含む、金属、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、及び酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物等が挙げられる。
Si元素を含む原料としては、Siを含む、金属、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、及び酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物等が挙げられる。
Al元素を含む原料としては、Alを含む、金属、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、及び酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物等が挙げられる。
【0035】
Mn元素を含む原料としては、Mnを含む、金属、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、及び酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物等が用いられる。
【0036】
原料混合物は、例えば、Mnの窒化物または酸化物、Mgの窒化物または酸化物、Alの窒化物または酸化物、及び酸化ケイ素または窒化ケイ素を含むものを用いてもよい。これにより、焼成時における反応を促進させることができる。
【0037】
原料を混合する方法は、特に限定されないが、例えば、乳鉢、ボールミル、V型混合機、遊星ミルなどの混合装置を用いて十分に混合する方法がある。
【0038】
焼成工程は、上述した原料混合物を、例えば、電気炉等の焼成用炉の内部で焼成する工程である。
焼成用炉内部における焼成雰囲気は、アルゴン、ヘリウム、水素、窒素等の非酸化性ガスの雰囲気ガスであってもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
焼成工程における焼成温度は、焼成工程終了後の未反応原料の低減、主成分の分解抑制の観点から、適当な温度範囲が選択される。
焼成工程における焼成温度の下限は、1000℃以上が好ましく、1200℃以上がより好ましく、1500℃以上がさらに好ましい。一方、焼成温度の上限は、2200℃以下が好ましく、2000℃以下がより好ましく、1900℃以下がさらに好ましい。
【0040】
焼成雰囲気ガスの圧力は、焼成温度に応じて選択されるが、通常0.1MPa以上10MPa以下の範囲である。工業的生産性を考慮すると0.5MPa以上1MPa以下とすることが好ましい。
【0041】
焼成工程における焼成時間は、未反応物の低減、生産性の向上の観点から、適当な時間範囲が選択される。
焼成時間の下限は、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、2時間以上がさらに好ましい。また、焼成時間の上限は、48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、10時間以下がさらに好ましい。
【0042】
以上により、焼成工程後の原料混合物(焼成物)が得られる。
【0043】
本実施形態のMn賦活蛍光体の製造方法は、焼成工程後の原料混合物(焼成物)を、粉砕して粉砕物を得る粉砕工程をさらに含んでもよい。
【0044】
焼成工程により得られる焼成物の状態は、原料配合や焼成条件によって、粉体状、塊状と様々である。粉砕工程及び/又は分級操作工程によって、焼成物を、所定のサイズの粉体状にできる。
なお、上記の他に、蛍光体の分野で公知の工程を追加してもよい。
【0045】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0046】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0047】
[実施例1~4、比較例1]
(Mn賦活蛍光体の製造)
表1に示す設計組成に従って、窒化ケイ素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、及び酸化マンガン(MnO)を秤量し、乳鉢を用いて混合して、原料混合物を得た。
得られた原料混合物を、電気炉に入れ、窒素雰囲気中、1700℃、0.8MPaの焼成条件にて、2時間焼成を行った。
得られた焼成物を、乳鉢で粉砕後、目開き150μmの篩で篩分け(分級処理)を行い、篩通過分を回収して、粉末状のMn賦活蛍光体(蛍光体粒子)を得た。
【0048】
【表1】
【0049】
得られた実施例1~4、比較例1のMn賦活蛍光体について、ICP発光分光分析を用いて、Mn賦活蛍光体中の各元素の含有量(wt%)を測定した。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
[比較例2]
酸化マンガン(MnO)を、酸化ユーロピウム(Eu)に変更した以外は、比較例1と同様にして、MgSiAl:Euで表される粉末状のEu賦活蛍光体(蛍光体粒子)を得た。
【0052】
【表3】
【0053】
実施例1~4、比較例1で得られたMn賦活蛍光体、比較例2で得られたEu賦活蛍光体について、Cu-Kα線を用いた粉末X線回折測定(XRD測定)を行った。その結果、いずれの蛍光体のXRDパターンにおいても、MgSiAlに帰属されるピークが確認された。
なお、実施例1、4、比較例1、2におけるXRDパターンを図1に示す。
【0054】
(D10、D50、D90)
実施例1~4、比較例1のMn賦活蛍光体の粒子径分布について、レーザー回折・散乱法の粒子径測定装置(Beckman Coulter社製、LS 13 320)を用いて測定した。
【0055】
(発光スペクトル)
実施例1~4、比較例1のMn賦活蛍光体、比較例2のEu賦活蛍光体について、次のように分光蛍光光度計を用いて、発光スペクトルを得た。
まず、光度計に付属の固体試料ホルダー(合成石英製セル)に、粉末状のMn賦活蛍光体を充填し、次いで、カットフィルター(290nm以下の波長の光を吸収するフィルター)を具備した分光蛍光光度計(株式会社堀場製作所社製、Fluorolog-3)を用いて、光源:Xeランプを使用し、波長:254nmの励起光を照射したときの発光スペクトルを測定した。なお、比較例2の場合のみ、励起光として、波長365nmの光を発するランプを使用し、カットフィルターとして390nm以下の波長の光を吸収するフィルターを使用した。
実施例1、4、比較例1、2の発光スペクトルを図2に示す。各実施例、比較例1の発光スペクトルにおいて、実施例4における発光強度の最大値(IMAX)を1.00として規格化し、比較例2の発光スペクトルにおいて、発光強度の最大値を1.00として規格した。
また、実施例1~4、比較例1のMn賦活蛍光体において、得られた発光スペクトルから発光ピークのピーク位置や半値幅の測定を行った。得られた発光スペクトルから600nm以上900nm以下の波長範囲におけるピークにおける発光強度の最大値(IMAX)、及び650nmにおける蛍光強度I650を求め、IMAX/I650を算出した。
【0056】
上記の発光スペクトルにおいて600nm以上900nm以下の波長範囲中における発光ピークの有無に基づいて、その範囲における発光の有り(○)、無し(×)を判断した。
600nm以上900nm以下の波長範囲における発光が、実施例1~4、及び比較例1のMn賦活蛍光体に確認されたが、比較例2のEu賦活蛍光体には確認されなかった。
一方、400nm以上500nm未満の波長範囲における発光については、比較例2のEu賦活蛍光体にのみ確認された。
【0057】
実施例1~4のMn賦活蛍光体は、波長が254nmの光が照射されたとき、600nm以上900nm以下の波長範囲に発光ピークが観察され、比較例1と比べて発光特性に優れる結果を示した。
このような実施例から、近赤外光を活用する各種デバイスに好適なMn賦活蛍光体を実現できることが分かった。
図1
図2