(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146276
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】セラミックス部材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220928BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220928BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20220928BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/31 C
H01L21/31 D
H01L21/302 101G
H02N13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047158
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若園 誠
(72)【発明者】
【氏名】田中 和孝
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
5F004BB18
5F004BB20
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB29
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5F045BB10
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5F131EB18
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5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
5F131JA12
5F131JA33
(57)【要約】
【課題】表面側の部分のみを交換可能であり、かつその交換可能な部分の耐久性が確保されたセラミックス部材の提供。
【解決手段】本発明のセラミックス部材10は、第1表面11aと、第1表面11aの反対側に配される第1裏面11bとを含む板状の第1セラミックス部材10と、第2表面12a1と、第2表面12a1の反対側に配される第2裏面12a2とを含み、第2表面12a2と第1裏面11bとが対向する形で第1セラミックス部材11が重ねられる板状の第2セラミックス部材12とを備えるセラミックス部材10であって、第2セラミックス部材12は、第2表面12a1に開口するように形成され、第1セラミックス部材11を第2表面12a1に吸着させるために、負圧を供給する複数の部材吸着孔12dを有し、第1セラミックス部材11及び第2セラミックス部材12は、共に緻密体からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面と、前記第1表面の反対側に配される第1裏面とを含む板状の第1セラミックス部材と、
第2表面と、前記第2表面の反対側に配される第2裏面とを含み、前記第2表面と前記第1裏面とが対向する形で前記第1セラミックス部材が重ねられる板状の第2セラミックス部材とを備えるセラミックス部材であって、
前記第2セラミックス部材は、前記第2表面に開口するように形成され、前記第1セラミックス部材を前記第2表面に吸着させるために、負圧を供給する複数の部材吸着孔を有し、
前記第1セラミックス部材及び前記第2セラミックス部材は、共に緻密体からなるセラミックス部材。
【請求項2】
前記第1セラミックス部材の内部に設けられ、かつ前記第1表面に対象物が載せられた際に、前記対象物を前記第1表面に吸着させるために、静電引力を発生させるチャック電極を備える請求項1に記載のセラミックス部材。
【請求項3】
前記第1表面に開口するように形成され、かつ前記第1表面に対象物が載せられた際に、前記対象物を前記第1表面に吸着させるために、負圧を供給する複数の対象物吸着孔を備える請求項1に記載のセラミックス部材。
【請求項4】
複数の前記部材吸着孔のうち、少なくとも1つの前記部材吸着孔は、前記対象物吸着孔に連通し、かつ前記対象物を前記第1表面に吸着させるために、負圧を供給する請求項3に記載のセラミックス部材。
【請求項5】
前記対象物吸着孔に連通する前記部材吸着孔の孔径と、前記部材吸着孔に連通する前記対象物吸着孔の孔径とが互いに異なる請求項4に記載のセラミックス部材。
【請求項6】
前記第1セラミックス部材と、前記第2セラミックス部材とが、互いに同じセラミックス材料からなる請求項1から請求項5の何れか一項に記載のセラミックス部材。
【請求項7】
複数の前記部材吸着孔の周りを取り囲むように、前記第1セラミックス部材の前記第1裏面と前記第2セラミックス部材の前記第2表面との間に介在される環状のシール部材を備える請求項1から請求項6の何れか一項に記載のセラミックス部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の一部を構成する半導体製造装置部品に、セラミックス材料を主体として構成されるセラミックス部材が用いられている。この種のセラミックス部材は、例えば、表面側で対象物(ウェハ等)を保持する機能を備えた保持装置、表面側に載せられた対象物を加熱する機能を備えた加熱装置、表面側に設けられた複数の噴射口から離間配置された対象物に対してプロセスガスを噴射するシャワーヘッド等の様々な用途の半導体製造装置部品に使用される。
【0003】
このようなセラミックス部材を備えた半導体製造装置部品は、プラズマが発生する環境下で使用されることがある。例えば、半導体製造装置部品(セラミックス部材)の表面等には、半導体の製造に伴って発生した物質(例えば、Si含有物、金属含有物等)が徐々に堆積するため、その物質を除去するために、プラズマ放電を利用したチャンバー内のクリーニングが定期的に行われる。そのため、セラミックス部材に対象物が載せられていない状態で、セラミックス部材の表面がプラズマに晒されることがある。
【0004】
なお、本発明に関連する技術を開示する文献として、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、緻密なセラミックス材料からなる板状の支持部と、その支持部に載せられる多孔質セラミックス材料からなる載置部とを備える真空チャック部材が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セラミックス部材を、プラズマに繰り返し晒される環境下で使用し続けると、セラミックス部材の表面が劣化して破損するため、セラミックス部材を定期的に交換する必要があった。このようなセラミックス部材は、プラズマによる劣化が見られる表面側の部分のみならず、劣化が少ない又は劣化が問題とならない裏面側の部分まで含めて全体的に交換される。そのため、従来は、セラミックス部材のうち、プラズマ等により劣化し易い表面側の部分のみを交換することができず、問題となっていた。
【0007】
なお、特許文献1には、支持部から載置部を取り外すことが可能な真空チャック部材が示されているものの、表面側に配置される載置部が多孔質体からなるため、プラズマに対する耐久性が低い。そのため、例えば、チャンバー内のクリーニング時等において、多孔質体からなる載置部に劣化が起こり易く、問題となっていた。
【0008】
本発明の目的は、表面側の部分のみを交換可能であり、かつその交換可能な部分の耐久性が確保されたセラミックス部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 第1表面と、前記第1表面の反対側に配される第1裏面とを含む板状の第1セラミックス部材と、第2表面と、前記第2表面の反対側に配される第2裏面とを含み、前記第2表面と前記第1裏面とが対向する形で前記第1セラミックス部材が重ねられる板状の第2セラミックス部材とを備えるセラミックス部材であって、前記第2セラミックス部材は、前記第2表面に開口するように形成され、前記第1セラミックス部材を前記第2表面に吸着させるために、負圧を供給する複数の部材吸着孔を有し、前記第1セラミックス部材及び前記第2セラミックス部材は、共に緻密体からなるセラミックス部材。
【0010】
<2> 前記第1セラミックス部材の内部に設けられ、かつ前記第1表面に対象物が載せられた際に、前記対象物を前記第1表面に吸着させるために、静電引力を発生させるチャック電極を備える前記<1>に記載のセラミックス部材。
【0011】
<3> 前記第1表面に開口するように形成され、かつ前記第1表面に対象物が載せられた際に、前記対象物を前記第1表面に吸着させるために、負圧を供給する複数の対象物吸着孔を備える前記<1>に記載のセラミックス部材。
【0012】
<4> 複数の前記部材吸着孔のうち、少なくとも1つの前記部材吸着孔は、前記対象物吸着孔に連通し、かつ前記対象物を前記第1表面に吸着させるために、負圧を供給する前記<3>に記載のセラミックス部材。
【0013】
<5> 前記対象物吸着孔に連通する前記部材吸着孔の孔径と、前記部材吸着孔に連通する前記対象物吸着孔の孔径とが互いに異なる前記<4>に記載のセラミックス部材。
【0014】
<6> 前記第1セラミックス部材と、前記第2セラミックス部材とが、互いに同じセラミックス材料からなる前記<1>から<5>の何れか1つに記載のセラミックス部材。
【0015】
<7> 複数の前記部材吸着孔の周りを取り囲むように、前記第1セラミックス部材の前記第1裏面と前記第2セラミックス部材の前記第2表面との間に介在される環状のシール部材を備える前記<1>から<6>の何れか1つに記載のセラミックス部材。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表面側の部分のみを交換可能であり、かつその交換可能な部分の耐久性が確保されたセラミックス部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1に係る加熱装置の断面構成を模式的に表した説明図
【
図2】
図1の加熱装置における、セラミックス部材の第1セラミックス部材が、第2セラミックス部材から取り外された状態の断面構成を模式的に表した説明図
【
図3】実施形態2に係る加熱装置の断面構成を模式的に表した説明図
【
図4】
図3の加熱装置における、セラミックス部材の第1セラミックス部材が、第2セラミックス部材から取り外された状態の断面構成を模式的に表した説明図
【
図5】実施形態3に係るセラミックス部材の断面構成の一部を拡大した説明図
【
図6】実施形態4に係るセラミックス部材の断面構成の一部を拡大した説明図
【
図7】実施形態5に係るセラミックス部材の構成を模式的に表した上面図
【
図8】実施形態6に係るセラミックス部材の断面構成の一部を拡大した説明図
【
図9】実施形態6に係る第2セラミックス部材の一部の構成を拡大した上面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を、
図1及び
図2を参照しつつ説明する。
図1は、実施形態1に係る加熱装置100の断面構成を模式的に表した説明図である。説明の便宜上、
図1の上側を、加熱装置100の上側とし、
図1の下側を、加熱装置100の下側とする。
図1には、加熱装置100を上下方向に切断した断面図が模式的に示されている。
【0019】
加熱装置100は、対象物(例えば、半導体ウェハ)Wを真空吸着により保持しつつ、所定の処理温度(例えば、400℃~800℃程度)に加熱する装置であり、上側に、対象物Wを支持する複数のピン状の凸部を有するピンチャック式の真空吸着機構を備えている。このような加熱装置100は、例えば、成膜装置(CVD成膜装置、スパッタリング成膜装置等)、エッチング装置(プラズマエッチング装置)等の半導体製造装置の一部(半導体製造装置部品)として使用される。このような加熱装置100は、セラミックス部材10と、柱状支持体20とを備えている。なお、本実施形態の加熱装置100には、静電引力を発生させるチャック電極は設けられていない。
【0020】
セラミックス部材10は、対象物Wの保持や加熱を行う部分であり、概ね円盤状の外観形状を備えている。このようなセラミックス部材10は、主として、第1セラミックス部材11と、第2セラミックス部材12とを備えている。
【0021】
第1セラミックス部材11は、上側から平面視した際、略円形をなした板状の部材である。第1セラミックス部材11は、第2セラミックス部材12に対して着脱できるように、第2セラミックス部材12とは別部材として構成されている。
図2は、
図1の加熱装置100における、セラミックス部材10の第1セラミックス部材11が、第2セラミックス部材12から取り外された状態の断面構成を模式的に表した説明図である。
【0022】
第1セラミックス部材11は、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックス材料の緻密体により形成される。なお、ここでいう主成分は、第1セラミックス部材11を構成するセラミックス材料のうち、含有割合の最も多い成分を意味する。
【0023】
このような第1セラミックス部材11は、対象物Wが載せられる第1表面11aと、第1表面11aの反対側に配される第1裏面11bとを備えている。第1表面11aは、平坦な表面からなる基準面11a1と、その基準面11a1に設けられた複数の凸部11a2における各上面(頂面)11a3とからなる。
【0024】
また、第1セラミックス部材11は、第1表面11aの基準面11a1に開口するように形成される複数の対象物吸着孔11cを備えている。対象物吸着孔11cは、第1セラミックス部材11を厚み方向に貫通する形で設けられる。対象物吸着孔11cの一方の開口部11c1は、基準面11a1に配され、他方の開口部11c2は、第1裏面11bに配されている。
【0025】
第2セラミックス部材12は、上側から平面視した際に、中央部が凹状に窪んだ略円形の板状部材であり、第1セラミックス部材11よりも一回り大きな外観形状を備えている。
【0026】
第2セラミックス部材12は、第1セラミックス部材11と同じセラミックス材料から構成される。具体的には、第2セラミックス部材12は、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックス材料の緻密体により形成される。そのため、第2セラミックス部材12と第1セラミックス部材11とでは、熱膨張率が互いに同じである。
【0027】
このような第2セラミックス部材12は、板状をなした本体部12aと、本体部12aの周縁から上側に向かって円環状に盛り上がった枠部12bとを備えている。本体部12aは、上側に配される第2表面12a1と、第2表面12a1の反対側(つまり、下側)に配される第2裏面12a2とを備えている。
【0028】
また、第2セラミックス部材12は、第2表面12a1と、枠部12bとで形成され、第1セラミックス部材11を収容する収容部12cを備えている。第1セラミックス部材11を収容する際、第2表面12a1と第1裏面11bとが対向する形で、第2セラミックス部材12に、第1セラミックス部材11が重ねられる。
【0029】
更に、第2セラミックス部材12は、第2表面12a1に開口するように形成され、第1セラミックス部材11を第2表面12a1に吸着させるために、負圧を供給する複数の部材吸着孔12dを備えている。部材吸着孔12dは、厚み方向に延びた形をなし、一方の端部に、第2表面12a1に配される開口部12d1を備えている。また、第2セラミックス部材12は、内部に扁平な形状をなした負圧室12eを備えており、その負圧室12eに、各部材吸着孔12dの他方の端部が接続されている。負圧室12eは、第2表面12a1が広がる方向に沿うように形成されている。また、第2セラミックス部材12は、一端が負圧室12eに接続し、他端が第2裏面12a2に開口する孔状の負圧供給路12fを備えている。負圧供給路12fの上側に配される一方の開口した端部12f1は、第2セラミックス部材12の内部で、負圧室12eと繋がっている。また、負圧供給路12fの下側に配される他方の端部12f2は、第2裏面12a2に開口する形で設けられている。
【0030】
複数の部材吸着孔12dのうち、多くの部材吸着孔12dは、第1セラミックス部材11を吸着するために利用され、残りの一部の部材吸着孔12dは、第1セラミックス部材11に設けられた対象物吸着孔11cに接続される。一部の部材吸着孔12dの開口部12d1と、対象物吸着孔11cの開口部11c2とが接続し、対象物吸着孔11c及び一部の部材吸着孔12dが互いに連通する。そのため、対象物Wの裏面Wbと、第1表面11aとの間に、負圧が供給され、その負圧を利用して、第1表面11a上に載せられた対象物Wが固定(真空吸着)される。
【0031】
また、第2セラミックス部材12の内部には、第1表面11aを加熱可能なヒータ電極13が設けられている。ヒータ電極13は、抵抗発熱体であり、導電性材料(タングステン、モリブデン等)により形成される。ヒータ電極13は、上側から平面視した際に、略同心円状に延びる線状のパターンを構成している。ヒータ電極13は、セラミックス部材10の表面(主に、第1セラミックス部材11の第1表面11a)を万遍なく加熱できるように、全体的に水平方向(第1表面11aが広がる方向)に広がった形となっている。
【0032】
なお、ヒータ電極13の線状パターンの両端部は、セラミックス部材10の裏面(第2セラミックス部材12の第2裏面12a2)側に配される給電用の電極端子(不図示)にそれぞれ接続されている。ヒータ電極13は、電圧が印加されて電流が流れると発熱し、セラミックス部材10の第1表面11aを加熱する。そして、第1表面11a(凸部11a2の各上面11a3)に載せられた対象物Wが全体的に加熱される。ヒータ電極13は、例えば、導体ペーストを印刷した導体層を焼結してメタライズしたものからなる。
【0033】
セラミックス部材10の直径(第2セラミックス部材12の直径)は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、100mm以上500mm以下程度に設定される。また、セラミックス部材10の厚み(第1セラミックス部材11を収容部12cに収容して、第1セラミックス部材11と第2セラミックス部材12とを重ねさわせた状態での厚み)は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、3mm以上30mm以下程度に設定される。
【0034】
また、第1セラミックス部材11の直径は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、80mm以上480mm以下程度に設定される。また、第1セラミックス部材11の厚みは、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、1mm以上25mm以下程度に設定される。
【0035】
柱状支持体20は、
図1及び
図2に示されるように、上下方向に延びる略円筒状の部材である。このような柱状支持体20は、一端(上端)21aが第2裏面12a2と対向する形でセラミックス部材10を支持する筒状の周壁部21を備えている。柱状支持体20は、セラミックス部材10と同様、窒化アルミニウムを主成分とするセラミックス材料の緻密体により形成される。柱状支持体20の外径は、例えば50mm以上150mm以下程度であり、柱状支持体20の高さ(上下方向の長さ)は、例えば100mm以上300mm以下程度である。
【0036】
柱状支持体20の周壁部21の上端21aは、セラミックス部材10の裏面(第2裏面12a2)の中心部付近に、公知の接合材料により形成された接合部(不図示)を介して接合されている。柱状支持体20の中央には、上下方向に延びつつ、上端21a側が開口した貫通孔状の中空部22を備えている。中空部22は、上下方向に延びた周壁部21の内周面21bによって囲まれた空間である。本実施形態の場合、周壁部21の内径は、上下方向で略同一に設定されている。このような中空部22に、ヒータ電極13に電力を供給するための複数の電極端子(不図示)等が収容されている。電極端子は、Auろう材等の導電性材料により形成され、中空部22において、上下方向に沿って配置される。
【0037】
周壁部21の内部には、壁内通路23が形成されている。壁内通路23は、上下方向に貫通する形で設けられており、上端21aに開口した端部23aは、負圧供給路12fの下側に配される他方の端部12f2と接続されている。なお、壁内通路23の他方の端部は、外部に配置された真空ポンプ(不図示)に接続されている。
【0038】
真空ポンプが作動すると、壁内通路23を介して、第2セラミックス部材12の内部に形成される負圧供給路12f、負圧供給路12fに接続する負圧室12e、及び負圧室12eに接続する複数の部材吸着孔12dに負圧が供給される。第2セラミックス部材12の収容部12cに、第1セラミックス部材11が収容された状態において、部材吸着孔12dに負圧が供給されると、開口部12d1が配される第2セラミックス部材12の第2表面12a1と、第1セラミックス部材11の第1裏面11bとの間のごく小さな隙間が減圧され、第1セラミックス部材12が第2セラミックス部材12に対して吸着固定される。
【0039】
また、複数の部材吸着孔12dの一部は、上述したように、対象物Wを第1表面11a上に真空吸着するために利用される。具体的には、複数の部材吸着孔12dの一部が対象物吸着孔11cと連通し、対象物吸着孔11cの開口部11c1により、第1表面11aに載せられた対象物Wの裏面Wbと、第1表面11aとの間に負圧が供給され、その負圧を利用して、対象物Wが第1表面11a上に固定(真空吸着)される。
【0040】
また、第1表面11a上に対象物Wが固定された状態で、外部に設置された電源(不図示)から、電極端子等を介して、発熱抵抗体であるヒータ電極13に電圧が印加されると、ヒータ電極13が発熱し、セラミックス部材10の表面(第1セラミックス部材11の第1表面11a)上に保持された対象物Wが所定の温度(例えば、400~800℃)に加熱される。
【0041】
ここで、加熱装置100の製造方法を説明する。本実施形態の加熱装置100の製造方法は、例えば以下の通りであり、初めにセラミックス部材10と、柱状支持体20とを作製する。
【0042】
セラミックス部材10の作製方法は、シート積層法を利用したものであり、第1セラミックス部材11と、第2セラミックス部材12とを別々に作製する。具体的には、以下の通りである。先ず、窒化アルミニウム粉末100質量部に、酸化イットリウム(Y2O3)粉末1質量部と、バインダ20質量部と、適量の分散剤及び可塑剤とを加えた混合物に、有機溶剤を加え、ボールミルを用いて20時間混合し、グリーンシート用スラリーを作製する。
【0043】
得られたグリーンシート用スラリーをキャスティング装置でシート状に成形し、その後、シート状の成形物を乾燥させることでグリーンシートが得られる。このようにして、第1セラミックス部材11及び第2セラミックス部材12を作製するための複数枚のグリーンシートを用意する。
【0044】
また、窒化アルミニウム粉末、バインダ、有機溶剤の混合物に、タングステンやモリブデン等の金属粉末を添加して混錬することにより、メタライズペースト(導体ペースト)を作製する。このメタライズペーストを例えばスクリーン印刷装置を用いて印刷することにより、特定の各グリーンシートに、後にヒータ電極13等となる未焼結導体層を形成する。また、グリーンシートに予めビア孔を設けた状態で印刷することにより、後にヒータ電極13等に電気的に接続する導体ビア等となる未焼結導体部を形成する。
【0045】
また、特定の各グリーンシートに対して、マシニングにより、後に対象物吸着孔11c、部材吸着孔12d、負圧室12e、負圧供給路12f、収容部12c等となる溝部や孔部を形成する。
【0046】
次に、これらのグリーンシートを複数枚(例えば、8枚)重ねて熱圧着し、必要に応じて外周を切断して、第1セラミックス部材11用のグリーンシート積層体(例えば、厚み3.2mm)を作製する。このグリーンシート積層体をマシニングによって切削加工して円板状の成形体1を作製する。
【0047】
また、同様に、所定のグリーンシートを複数枚(例えば20枚)重ねて熱圧着し、必要に応じて外周を切断して、第2セラミックス部材12用のグリーンシート積層体(例えば、厚み8mm)を作製する。このグリーンシート積層体をマシニングによって切削加工して円板状の成形体2を作製する。
【0048】
得られた成形体1を例えば300~600℃の温度条件下で脱脂し、更に脱脂後の成形体1(脱脂体1)を焼成して焼成体1を作製する。この焼成体1の表面を研磨加工等することで、第1セラミックス部材11が得られる。
【0049】
また、同様に、成形体2を例えば300~600℃の温度条件下で脱脂し、更に脱脂後の成形体2(脱脂体2)を焼成して焼成体2を作製する。この焼成体2の表面を研磨加工等することで、第2セラミックス部材12が得られる。このようにして、第1セラミックス部材11及び第2セラミックス部材12を備える本実施形態のセラミックス部材10が得られる。
【0050】
また、柱状支持体20の作製方法は、例えば以下の通りである。先ず、窒化アルミニウム粉末100質量部に、酸化イットリウム粉末1質量部と、バインダ3質量部と、適量の分散剤及び可塑剤とを加えた混合物に、有機溶剤を加え、ボールミルを用いて混合することで、スラリーを得る。このスラリーを、スプレードライヤーを用いて顆粒化し、得られた顆粒を原料粉末とする。次に、中空部22に対応する中子が配置されたゴム型に原料粉末を充填し、ゴム型内に原料粉末を冷間静水圧プレスすることで成形体を得る。得られた成形体を脱脂し、更に脱脂後の成形体(脱脂体)を焼成して筒状体を得る。得られた筒状体の周壁部にドリル等で穴加工を施して、壁内通路23を形成する。このようにして柱状支持体20が得られる。
【0051】
次に、第2セラミックス部材12と柱状支持体20とを接合する。第2セラミックス部材12の第2裏面12a2及び柱状支持体20(周壁部21)の上端21aに対して、必要によりラッピング加工を行った後、第2セラミックス部材12の裏面12a2と柱状支持体20の上端21aの少なくとも一方に、例えば希土類や有機溶剤等を混合してペースト状にした公知の接合剤を均一に塗布する。接合剤を塗布する際は、裏面(第2裏面12a2)に設けられた負圧供給路12fの端部12f2と、上端21a側に設けられた壁内通路23の端部23aをそれぞれ塞がないように、接合剤の塗布箇所が設定される。このように接合剤が塗布された後、脱脂処理が行われる。次いで、第2セラミックス部材12の裏面12a2と柱状支持体20の上端21aとを、負圧供給路12f及び壁内通路23が互いに連通するように重ね合わせ、その状態で、焼成を行うことにより、第2セラミックス部材12と柱状支持体20とを接合する。
【0052】
その後、第2セラミックス部材12に、第2表面12a1と第1裏面11bとが対向する形で、第1セラミックス部材11が重ねられつつ、第2セラミックス部材12の収容部12cに収容される。以上のような製造方法により、上述した構成の加熱装置100が製造される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の加熱装置100は、セラミックス部材10の第1セラミックス部材11が、第2セラミックス部材12に対して着脱可能な構成となっている。そのため、定期的に行われるプラズマ放電を利用したチャンバー内のクリーニングにより、セラミックス部材10の表面(第1セラミックス部材11の第1表面11a)が損傷しても、その第1セラミックス部材11を、新たな第1セラミックス部材11に取り換えることができる。しかも、第1セラミックス部材11は、セラミックス材料の緻密体からなるため、プラズマに対する耐久性が高い。
【0054】
また、本実施形態の加熱装置100の場合、第1セラミックス部材11及び第2セラミックス部材12は、共に同じセラミックス材料の緻密体からなるため、互いに同じ熱膨張率を備えている。そのため、第1セラミックス部材11及び第2セラミックス部材12は、熱膨張又は熱収縮による互いの寸法差が発生することが抑制され、第1セラミックス部材11が第2セラミックス部材12の収容部12c内で位置ずれすることや、収容部12cから脱落すること等が抑制される。
【0055】
また、本実施形態の加熱装置100は、複数の部材吸着孔12dのうち、少なくとも1つの部材吸着孔12dは、対象物吸着孔11cに連通し、かつ対象物Wを第1表面11aに吸着させるために、負圧を供給するように構成されている。対象物吸着孔11cに連通する部材吸着孔12dを、特に「中継孔」と称する。
【0056】
<実施形態2>
次いで、本発明の実施形態2を、
図3及び
図4を参照しつつ説明する。
図3は、実施形態2に係る加熱装置100Aの断面構成を模式的に表した説明図である。説明の便宜上、
図3の上側を、加熱装置100Aの上側とし、
図3の下側を、加熱装置100Aの下側とする。
図3には、加熱装置100Aを上下方向に切断した断面図が模式的に示されている。
【0057】
加熱装置100Aは、対象物(例えば、半導体ウェハ)Wを静電引力の作用で保持しつつ、所定の処理温度(例えば、400℃~800℃)に加熱する装置である。このような加熱装置100は、例えば、成膜装置(CVD成膜装置、スパッタリング装置)、エッチング装置(プラズマエッチング装置)等として使用される。
【0058】
加熱装置100Aは、セラミックス部材10Aと、ベース部材20Aとを備えている。加熱装置100Aは、更に、セラミックス部材10Aとベース部材20Aとの間に介在される接合部30Aを備えている。
【0059】
セラミックス部材10Aは、対象物Wの保持や加熱を行う部分であり、概ね円盤状の外観形状を備えている。このようなセラミックス部材10Aは、主として、第1セラミックス部材11Aと、第2セラミックス部材12Aとを備えている。
【0060】
第1セラミックス部材11Aは、上側から平面視した際、略円形をなした板状の部材である。第1セラミックス部材11Aは、第2セラミックス部材12Aに対して着脱できるように、第2セラミックス部材12Aとは別部材として構成されている。
図4は、
図3の加熱装置100Aにおける、セラミックス部材10Aの第1セラミックス部材11Aが、第2セラミックス部材12Aから取り外された状態の断面構成を模式的に表した説明図である。
【0061】
第1セラミックス部材11Aは、実施形態1と同様、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックス材料の緻密体により形成される。このような第1セラミックス部材11Aは、対象物Wが載せられる第1表面11Aaと、第1表面11Aaの反対側に配される第1裏面11Abとを備えている。第1表面11Aaは、平坦な表面からなる基準面11Aa1と、その基準面11Aa1に設けられた複数の凸部11Aa2における各上面(頂面)11Aa3とからなる。
【0062】
また、第1セラミックス部材11Aの内部には、対象物Wを保持するために利用されるチャック電極15Aが設けられている。チャック電極15Aは、導電性材料(タングステン、モリブデン、白金等)により形成される。チャック電極15Aは、上側から平面視した際、略円形状をなしている。チャック電極15Aは、導体ペーストを印刷した導体層を焼結してメタライズしたものからなる。なお、チャック電極15Aに電力を供給するための受電電極(不図示)は、第1セラミックス部材11Aの第1裏面11Aabに形成されている凹部11Ac内に設けられている。チャック電極15Aは、受電電極にビア導体等を介して電気的に接続されている。なお、受電電極には、給電用の電極端子16Aが電気的に接続されている。
【0063】
このようなチャック電極15Aに電源(不図示)から直流高電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によって対象物Wが、セラミックス部材10Aの表面(第1セラミックス部材11Aの第1表面11Aa)に吸着固定される。
【0064】
第2セラミックス部材12Aは、上側から平面視した際に、中央部が凹状に窪んだ略円形の板状部材であり、第1セラミックス部材11Aよりも一回り大きな外観形状を備えている。
【0065】
第2セラミックス部材12Aは、第1セラミックス部材11Aと同じセラミックス材料から構成される。具体的には、第2セラミックス部材12Aは、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックス材料の緻密体により形成される。そのため、第2セラミックス部材12Aと第1セラミックス部材11Aとでは、熱膨張率が互いに同じである。
【0066】
このような第2セラミックス部材12は、板状をなした本体部12Aaと、本体部12Aaの周縁から上側に向かって円環状に盛り上がった枠部12Abとを備えている。本体部12Aaは、上側に配される第2表面12Aa1と、第2表面12Aa1の反対側(つまり、下側)に配される第2裏面12Aa2とを備えている。
【0067】
また、第2セラミックス部材12Aは、第2表面12aA1と、枠部12Abとで形成され、第1セラミックス部材11Aを収容する収容部12Acを備えている。第1セラミックス部材11Aを収容する際、第2表面12Aa1と第1裏面11Abとが対向する形で、第2セラミックス部材12Aに、第1セラミックス部材11Aが重ねられる。
【0068】
本実施形態の場合、第1セラミックス部材11Aの第1裏面11Abと、第2セラミックス部材12Aの第2表面12Aa1との間には、Oリング(環状のシール部材)17Aが介在されている。
【0069】
更に、第2セラミックス部材12Aは、第2表面12Aa1に開口するように形成され、第1セラミックス部材11Aを第2表面12Aa1に吸着させるために、負圧を供給する複数の部材吸着孔12Adを備えている。部材吸着孔12Adは、厚み方向に延びた形をなし、一方の端部に、第2表面12Aa1に配される開口部12Ad1を備えている。また、第2セラミックス部材12Aは、内部に扁平な形状をなした負圧室12Aeを備えており、その負圧室12Aeに、各部材吸着孔12Adの他方の端部が接続されている。負圧室12Aeは、第2表面12Aa1が広がる方向に沿うように形成されている。また、第2セラミックス部材12Aは、一端が負圧室12Aeに接続し、他端が第2裏面12Aa2に開口する孔状の負圧供給路12Afを備えている。負圧供給路12Afの上側に配される一方の開口した端部12Af1は、第2セラミックス部材12Aの内部で、負圧室12Aeと繋がっている。また、負圧供給路12Afの下側に配される他方の端部12Af2は、第2裏面12Aa2に開口する形で設けられている。複数の部材吸着孔12Adは、第1セラミックス部材11Aを吸着するために利用される。
【0070】
また、第2セラミックス部材12Aの内部には、第1表面11Aaを加熱可能なヒータ電極13Aが設けられている。ヒータ電極13Aは、抵抗発熱体であり、導電性材料(タングステン、モリブデン等)により形成される。ヒータ電極13Aは、上側から平面視した際に、略同心円状に延びる線状のパターンを構成している。ヒータ電極13Aは、セラミックス部材10Aの表面(主に、第1セラミックス部材11Aの第1表面11Aa)を万遍なく加熱できるように、全体的に水平方向(第1表面11aが広がる方向)に広がった形となっている。
【0071】
なお、ヒータ電極13Aの線状パターンの両端部は、セラミックス部材10Aの裏面(第2セラミックス部材12Aの第2裏面12Aa2)側に配される給電用の電極端子(不図示)にそれぞれ接続されている。ヒータ電極13Aは、電圧が印加されて電流が流れると発熱し、セラミックス部材10Aの第1表面11Aaを加熱する。そして、第1表面11Aa(凸部11Aa2の各上面11Aa3)に載せられた対象物Wが全体的に加熱される。ヒータ電極13Aは、例えば、導体ペーストを印刷した導体層を焼結してメタライズしたものからなる。
【0072】
また、第2セラミックス部材12Aには、第1セラミックス部材11Aの第1裏面11Ab側に配される給電用の電極端子16A等を収容する厚み方向に延びた貫通孔部18Aが設けられている。
【0073】
セラミックス部材10Aの直径(第2セラミックス部材12Aの直径)は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、100mm以上500mm以下程度に設定される。また、セラミックス部材10Aの厚み(第1セラミックス部材11Aを収容部12Acに収容して、第1セラミックス部材A11と第2セラミックス部材A12とを重ねさわせた状態での厚み)は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、3mm以上30mm以下程度に設定される(ただし、Oリング17Aの厚み分を除く)。
【0074】
また、第1セラミックス部材11Aの直径は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、80mm以上480mm以下程度に設定される。また、第1セラミックス部材11Aの厚みは、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、1mm以上28mm以下程度に設定される。
【0075】
ベース部材20Aは、例えばセラミックス部材10Aと同径の、又はセラミックス部材10Aより径が大きい円形平面の板状部材であり、熱伝導率がセラミックス部材10Aを構成するセラミックス材料の熱伝導率よりも高い材料(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属等)により形成されている。ベース部材20Aの直径は、例えば30mm~500mm程度であり、ベース部材20Aの厚みは、例えば5mm~240mm程度である。
【0076】
ベース部材20Aの内部には、冷媒流路21Aが形成されている。冷媒流路21Aに冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が供給されると、ベース部材20Aが冷却される。上述したヒータ電極13Aによるセラミックス部材10Aの加熱と併せてベース部材20Aの冷却が行われると、接合部30Aを介したセラミックス部材10Aとベース部材20Aとの間の伝熱により、セラミックス部材10Aの表面(第1セラミックス部材11Aの第1表面11Aa)に保持された対象物Wが一定に維持される。
【0077】
なお、ベース部材20Aには、厚み方向に貫通する形で設けられ、第2セラミックス部材12Aの負圧供給路12Afと連通するベース部材内通路22Aを備えている。ベース部材内通路22Aは、上側に配されるベース部材内通路22Aの一方の端部22Aaは、ベース部材20Aの表面20Aaに開口する形で設けられ、下側に配される他方の端部22Abは、ベース部材20Aの裏面20Abに開口する形で設けられる。なお、ベース部材内通路22Aの他方の端部22Abは、外部に配置された真空ポンプ(不図示)に接続されている。
【0078】
また、ベース部材20Aには、貫通孔部18Aと連通するように、厚み方向に貫通する形で設けられたベース部材貫通孔部23Aが設けられている。上側に配されるベース部材貫通孔部23Aの一方の端部は、ベース部材20Aの表面20Aaに開口する形で設けられ、下側に配される他方の端部は、ベース部材20Aの裏面20Abに開口する形で設けられる。
【0079】
接合部30Aは、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接合剤(接着剤)の硬化物からなり、第2セラミックス部材12Aとベース部材20Aとを接合している。接合部30Aの厚みは、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、0.1mm以上1mm以下程度に設定されてもよい。
【0080】
上述した真空ポンプ(不図示)が作動すると、ベース部材内通路22Aを介して、第2セラミックス部材12Aの内部に形成される負圧供給路12Af、負圧供給路12Afに接続する負圧室12Ae、及び負圧室12Aeに接続する複数の部材吸着孔12Adに負圧が供給される。第2セラミックス部材12Aの収容部12Acに、第1セラミックス部材11AがOリング17Aと共に収容された状態において、部材吸着孔12Adに負圧が供給されると、開口部12Ad1が配される第2セラミックス部材12Aの第2表面12Aa1と、第1セラミックス部材11Aの第1裏面11Abとの間であり、Oリング17Aで囲まれた小さな隙間が減圧され、第1セラミックス部材11Aが第2セラミックス部材12Aに対して吸着固定される。
【0081】
図3及び
図4では図示を省略しているが、セラミックス部材10A(第2セラミックス部材12A)に形成されている電極端子16A等が挿通される貫通孔部18Aは、合成樹脂等を利用して適宜、封止される。なお、他の実施形態において、貫通孔部が負圧経路(負圧供給路、負圧室等)と接続しないように設定されている場合は、貫通孔部を上記のように封止する必要はない。
【0082】
上述したように、静電引力により、第1表面11a上に対象物Wが固定された状態で、外部に設置された電源(不図示)から、電極端子等を介して、発熱抵抗体であるヒータ電極13Aに電圧が印加されると、ヒータ電極13Aが発熱し、セラミックス部材10Aの表面(第1セラミックス部材11の第1表面11Aa)上に保持された対象物Wが所定の温度(例えば、400~800℃)に加熱される。
【0083】
次いで、加熱装置100Aの製造方法を説明する。本実施形態の加熱装置100Aの製造方法は、例えば以下の通りであり、初めにセラミックス部材10Aと、ベース部材20Aとを作製する。
【0084】
セラミックス部材10Aの作製方法は、実施形態1のセラミックス部材10の作製方法と同様、第1セラミックス部材11Aと、第2セラミックス部材12Aとを別々に作製する。なお、第1セラミックス部材11A及び第2セラミックス部材12Aの製造方法は、基本的には、実施形態1に示される製造方法と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0085】
また、ベース部材20Aは、公知の製造方法によって製造可能であり、ここではその詳細説明を省略する。
【0086】
セラミックス部材10A及びベース部材20Aをそれぞれ用意した後、例えば、シリコーン樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着剤を用いて、第2セラミックス部材12Aとベース部材20Aとを接合する。その際、セラミックス部材10Aの貫通孔部18Aとベース部材貫通孔部23A、及びセラミックス部材10Aの負圧供給路12Afとベース部材内通路22Aが、それぞれ連通するように、第2セラミックス部材12Aとベース部材20Aとを接合する。
【0087】
その後、貫通孔部18A及びベース部材貫通孔部23Aに、ベース部材20Aの裏面20Ab側から、チャック電極15Aに電力を供給するための電極端子16Aが挿入され、第1セラミックス部材11Aの凹部11Ac内に形成されている受電電極に電極端子16Aがろう付け等により接続される。なお、電極端子16Aは、棒状の金属部材からなる。
【0088】
そして、Oリング17Aを、第1セラミックス部材11Aと、第2セラミックス部材12Aとの間に介在させる。なお、Oリング17Aは、シリコーン樹脂等からなり、第2セラミックス部材12Aに形成されている複数の部材吸着孔12Adの周りを取り囲むように、第1セラミックス部材11Aの第1裏面11Abと第2セラミックス部材12Aの第2表面12Aa1との間に介在される。Oリング17Aは、第1セラミックス部材11Aと第2セラミックス部材12Aとの間の空間の気密性を高めるために利用される。以上のような製造方法により、上述した構成の加熱装置100Aが製造される。
【0089】
以上説明したように、本実施形態の加熱装置100Aは、セラミックス部材10Aの第1セラミックス部材11Aが、第2セラミックス部材12Aに対して着脱可能な構成となっている。そのため、定期的に行われるプラズマ放電を利用したチャンバー内のクリーニングにより、セラミックス部材10Aの表面(第1セラミックス部材11Aの第1表面11Aa)が損傷しても、その第1セラミックス部材11Aを、新たな第1セラミックス部材11Aに取り換えることができる。しかも、第1セラミックス部材11Aは、セラミックス材料の緻密体からなるため、プラズマに対する耐久性が高い。
【0090】
また、本実施形態の加熱装置100Aの場合、第1セラミックス部材11A及び第2セラミックス部材12Aは、共に同じセラミックス材料の緻密体からなるため、互いに同じ熱膨張率を備えている。そのため、第1セラミックス部材11A及び第2セラミックス部材12Aは、熱膨張又は熱収縮による互いの寸法差が発生することが抑制され、第1セラミックス部材11Aが第2セラミックス部材12Aの収容部12Ac内で位置ずれすることや、収容部12Acから脱落すること等が抑制される。
【0091】
また、本実施形態の場合、第1セラミックス部材11Aと第2セラミックス部材12Aとの間に、Oリング(環状のシール部材)17Aが介在されている。そのため、部材吸着孔12Adに負圧が供給されると、開口部12Ad1が配される第2セラミックス部材12Aの第2表面12Aa1と、第1セラミックス部材11Aの第1裏面11Abとの間であり、Oリング17Aで囲まれた空間の気密性が高くなり、その空間が減圧され易くなる。その結果、本実施形態の加熱装置100Aでは、第1セラミックス部材11Aが第2セラミックス部材12Aに対して吸着固定され易くなっている。なお、Oリング17Aは、耐熱性に優れるものが好ましい。
【0092】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0093】
(1)上記実施形態1において、対象物吸着孔11cに連通する部材吸着孔(中継孔)12dの孔径と、部材吸着孔12dに連通する対象物吸着孔11cの孔径とは、略同じであったが、本発明はこれに限られない。
【0094】
図5は、実施形態3に係るセラミックス部材10Bの断面構成の一部を拡大した説明図である。
図5に示されるように、セラミックス部材10Bは、第1セラミックス部材11Bと、第2セラミックス部材12Bとを備え、第1裏面11Bbと第2表面12Ba1とが対向する形で、第1セラミックス部材11Bと第2セラミックス部材12Bとが重ねられている。そして、第1セラミックス部材11Bには、対象物吸着孔11Bcが形成され、第2セラミックス部材12Bには、対象物吸着孔11Bcに連通する部材吸着孔(中継孔)12Bdが形成されている。この実施形態の場合、対象物吸着孔11Bcの孔径より、部材吸着孔(中継孔)12Bdの孔径の方が、大きくなるように設定されている。このように、対象物吸着孔11Bc及び部材吸着孔(中継孔)12Bdの各孔径が設定されていると、第1セラミックス部材11Bが第2セラミックス部材12Bに重ねられる際、対象物吸着孔11Bcと部材吸着孔11Bdとに位置ずれがあった場合においても、対象物の吸着力への影響を低減することができる。
【0095】
図6は、実施形態4に係るセラミックス部材10Cの断面構成の一部を拡大した説明図である。
図6に示されるように、セラミックス部材10Cは、第1セラミックス部材11Cと、第2セラミックス部材12Cとを備え、第1裏面11Cbと第2表面12Ca1とが対向する形で、第1セラミックス部材11Cと第2セラミックス部材12Cとが重ねられている。そして、第1セラミックス部材11Cには、対象物吸着孔11Ccが形成され、第2セラミックス部材12Cには、対象物吸着孔11Ccに連通する部材吸着孔(中継孔)12Cdが形成されている。この実施形態の場合、対象物吸着孔11Ccの孔径より、部材吸着孔(中継孔)12Cdの孔径の方が、小さくなるように設定されている。このように、対象物吸着孔11Cc及び部材吸着孔(中継孔)12Cdの各孔径が設定されていると、第1セラミックス部材11Cが第2セラミックス部材12Cに重ねられる際、対象物吸着孔11Ccと部材吸着孔11Cdとに位置ずれがあった場合においても、対象物の吸着力への影響を低減することができる。
【0096】
(2)他の実施形態においては、第1セラミックス部材を第2セラミックス部材に重ね合わせる際、第1セラミックス部材を、例えば周方向において位置決めし易いように、セラミックス部材に、位置決め機構を設けてもよい。
図7は、実施形態5に係るセラミックス部材10Dの構成を模式的に表した上面図である。
図7に示されるように、第1セラミックス部材11Dは、上面視で略円形状をなしており、その周縁部に、凹状に窪んだ第1位置決め部111Dが2箇所形成されている。2つの第1位置決め部111Dは、略円形状をなした第1セラミックス部材11Dの中心を間に置きつつ、対向する位置に設けられている。また、第2セラミックス部材12Dは、上面視で略円形状の本体部12Daと、その周りに配される円環状の枠部12Dbとを備えている。そして、枠部12Dbの内周縁側に、第1位置決め部111Dと嵌合する、2つの凸状の第2位置決め部112Dが設けられている。第1セラミックス部材11Dを、第2セラミックス部材12Dに重ね合わせる際に、第1位置決め部111D及び第2位置決め部112Dを嵌合させることで、第1セラミックス部材11Dを、第2セラミックス部材12Dに対して、所望の箇所に設置することができる。なお、他の実施形態においては、第1セラミックス部材に形成される第1位置決め部を凸状とし、第2セラミックス部材に形成される第2位置決め部を凹状としてもよい。
【0097】
(3)上記実施形態1等では、第1セラミックス部材を吸着させるために負圧を供給する経路と、対象物を吸着させるために負圧を供給する経路とが途中で繋がっており、共通の真空ポンプを利用して、それぞれ目的とする負圧が供給されていたが、本発明はこれに限られず、他の実施形態においては、例えば、第1セラミックス部材を吸着させるための負圧と、対象物を吸着させるための負圧とが、互いに独立した経路により、それぞれ目的とする負圧が供給されてもよい。
【0098】
ここで、
図8及び
図9を参照しつつ、第1セラミックス部材を吸着させるための負圧と、対象物を吸着させるための負圧とが、互いに独立した経路で供給される場合を説明する。
図8は、実施形態6に係るセラミックス部材10Eの断面構成の一部を拡大した説明図である。
図8に示されるように、本実施形態のセラミックス部材10Eは、第1セラミックス部材11Eと、第2セラミックス部材12Eとを備えており、第1裏面11Ebと第2表面12Ea1とが対向する形で、第1セラミックス部材11Eと第2セラミックス部材12Eとが重ねられている。第1セラミックス部材11Eは、対象物が載せられる第1表面11Eaと、第1表面11Eaの反対側に配される第1裏面11Ebとを備えている。第1表面11Eaは、平坦な表面からなる基準面11Ea1と、その基準面11Ea1に設けられた複数の凸部11Ea2における各上面(頂面)11Ea3とからなる。また、第1セラミックス部材11Eには、第1表面11Eaの基準面11Ea1に開口するように形成される複数の対象物吸着孔11Ecを備えている。対象物吸着孔11Ecは、第1セラミックス部材11Eを厚み方向に貫通する形で設けられる。この対象物吸着孔11Ecの一方の開口部11cE1は、基準面11Ea1に配され、他方の開口部11Ec2は、第1裏面11Ebに配されている。また、第2セラミックス部材12Eには、対象物吸着孔11Ecに連通する対象物吸着孔用中継孔12Egが形成されている。
図9は、実施形態6に係る第2セラミックス部材12Eの一部の構成を拡大した上面図である。対象物吸着孔用中継孔12Egの一方の開口部12Eg1は、第2表面12Ea1に配されている。対象物吸着孔用中継孔12Egは、開口部12Eg1から下方に向かって延びつつ途中で水平方向に延びるように折れ曲がり、更に、本体部12Ea側から枠部12Eb側に向かって延びるように配されている。そして、更に、第2セラミックス部材12Eの裏面側に向かって延び、対象物吸着孔用中継孔12Egの他方の開口部が、第2セラミックス部材12Eの裏面に配された形となっている。このような、対象物吸着孔11Ec及び対象物吸着孔用中継孔12Eg等からなる経路を利用して、対象物を吸着させるための負圧が供給される。これに対して、第2セラミックス部材12Eには、第1セラミックス部材11Eを吸着するための部材吸着孔12Ed、負圧室12Ee、負圧供給路(不図示)等からなる経路が形成されている。この経路は、上述した経路(対象物を吸着するための経路)とは独立しており、対象物吸着孔11Ec及び部材吸着孔12Edに対して、例えば、互いに異なる大きさの負圧を供給することが可能となる。このおうに、対象物吸着孔11Ecから供給される負圧による対象物の吸着と、部材吸着孔12Edから供給される負圧による第1セラミックス部材11Eの吸着とを、互いに独立して行ってもよい。
【0099】
(4)他の実施形態においては、セラミックス部材を、半導体製造装置部品であるシャワーヘッドに利用してもよい。この場合、第1セラミックス部材と第2セラミックス部材とを吸着するために対象物吸着孔に負圧を供給するための経路と、第1セラミックス部材に設けられる、噴射口からプロセスガスを噴射させるために正圧を供給するための経路とを、互いに独立して設ける必要がある。
【符号の説明】
【0100】
10…セラミックス部材、11…第1セラミックス部材、11a…第1表面、11b…
第1裏面、11c…対象物吸着孔、12…第2セラミックス部材、12a…本体部、12b…枠部、12a1…第2表面、12a2…第2裏面、12c…収容部、12d…部材吸着孔、12e…負圧室、12f…負圧供給路、13…ヒータ電極、20…柱状支持体、W…対象物