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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146295
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
B60H1/32 614B
B60H1/32 614E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047181
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】591150797
【氏名又は名称】株式会社デンソーエアクール
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 幸男
(72)【発明者】
【氏名】多田 均
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA09
3L211BA32
3L211DA24
(57)【要約】
【課題】キャビンに吹き出す冷風を有効に利用して、乗員の快適性を向上させることができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置10は、空気が冷却されて生成した冷風が流れる上側通路25と、冷凍サイクルの冷媒から空気へ排熱されて生成した排熱風が流れる下側通路26と、キャビンの内側の空間の空気を吸い込む吸込用開口部11aと、吸込用開口部11aから吸い込まれた空気を分流させて、上側通路25と下側通路26とのそれぞれへ供給する筐体内部通路27とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のうち乗員が乗車する部分であるキャビンが、前記キャビンの内側の空間と前記キャビンの外側の空間とが常に連通するオープンキャビンである車両に搭載される車両用空調装置であって、
冷風を生成するための空気が流れるとともに、空気が冷却されて生成した冷風が流れる冷風用通路(25)と、
冷凍サイクルの冷媒から空気へ排熱させるための空気が流れるとともに、前記冷媒から空気へ排熱されて生成した排熱風が流れる排熱風用通路(26)と、
前記冷風用通路に配置され、前記冷媒と空気との熱交換によって、空気を冷却して冷風を生成するとともに前記冷媒を蒸発させる蒸発器(23)と、
前記排熱風用通路に配置され、前記冷媒と空気との熱交換によって、前記冷媒から空気へ放熱させて排熱風を形成する放熱器(24)と、
前記冷風用通路で生成された冷風を前記キャビンの内側の空間に向けて吹き出す冷風吹出口(13a)と、
前記冷風吹出口から吹き出された冷風を吸い込むことができる位置に配置され、前記キャビンの内側の空間(3a)の空気を吸い込む吸込口(7a、11a、31b)と、
前記吸込口から吸い込まれた空気を分流させて、前記冷風用通路と前記排熱風用通路とのそれぞれへ供給する供給用通路(27、31)と、
前記排熱風用通路で生成された排熱風を前記キャビンの外側の空間に排出する排熱風出口(11b)と、を備える、車両用空調装置。
【請求項2】
車両のうち乗員が乗車する部分であるキャビンが、前記キャビンの内側の空間と前記キャビンの外側の空間とが常に連通するオープンキャビンである車両に搭載される車両用空調装置であって、
冷風を生成するための空気が流れるとともに、空気が冷却されて生成した冷風が流れる冷風用通路(25)と、
冷凍サイクルの冷媒から空気へ排熱させるための空気が流れるとともに、前記冷媒から空気へ排熱されて生成した排熱風が流れる排熱風用通路(26)と、
前記冷風用通路に配置され、前記冷媒と空気との熱交換によって、空気を冷却して冷風を生成するとともに前記冷媒を蒸発させる蒸発器(23)と、
前記排熱風用通路に配置され、前記冷媒と空気との熱交換によって、前記冷媒から空気へ放熱させて排熱風を形成する放熱器(24)と、
前記冷風用通路で生成された冷風を前記キャビンに乗車した乗員に向けて吹き出す冷風吹出口(13a)と、
前記乗員の周辺の空気を吸い込む吸込口(7a、11a、31b)と、
前記吸込口から吸い込まれた空気を分流させて、前記冷風用通路と前記排熱風用通路とのそれぞれへ供給する供給用通路(27、31)と、
前記排熱風用通路で生成された排熱風を前記キャビンの外側の空間に排出する排熱風出口(11b)と、を備える、車両用空調装置。
【請求項3】
前記冷風用通路と前記排熱風用通路とのそれぞれは、ユニットケース(21)の内部に形成されており、
前記ユニットケースは、筐体(11)の内部に配置されており、
前記筐体は、前記筐体を構成する壁に設けられた吸込用開口部(11a)を有し、
前記ユニットケースは、前記冷風用通路の入口側開口部(25a)と、前記排熱風用通路の入口側開口部(26a)とを有し、
前記供給用通路の少なくとも一部は、前記ユニットケースの外面と前記筐体の内面とによって形成された筐体内部通路(27)によって構成されている、請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記キャビンには、乗員が着座するシート(4)が配置されており、
前記吸込口は、前記シートに対して上方に配置されている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記キャビンには、乗員が着座するシート(4)が配置されており、
前記吸込口は、前記シートの側方または前記シートに配置されている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両のうち乗員が乗車する部分であるキャビンが、キャビンの内側の空間とキャビンの外側の空間とが常に連通するオープンキャビンである車両に搭載される車両用空調装置が開示されている。この車両用空調装置は、空気が冷却されて生成した冷風が流れる冷風用通路と、冷凍サイクルの冷媒から空気へ排熱されて生成した排熱風が流れる排熱風用通路とを備える。冷風用通路で生成された冷風は、冷風吹出口から乗員に向けて吹き出される。排熱用通路で生成された排熱風は、キャビンの外側の空間に吹き出される。
【0003】
また、この車両用空調装置は、冷風を形成するための空気を吸い込む冷風用吸込口と、冷媒から空気へ排熱させるための空気を吸い込む排熱用吸込口とを、別々に備える。冷風用吸込口は、キャビンの内側の空間の空気を吸い込む。排熱用吸込口は、キャビンの外側の空間の空気を吸い込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-183326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の車両用空調装置では、冷風吹出口から吹き出された冷風の一部は、乗員に向かって流れた後、冷風用吸込口から吸い込まれる。しかし、冷風吹出口から吹き出された冷風の多くは、乗員に向かって流れた後、開放空間であるキャビンの内側の空間に拡散する。このため、冷風が無駄となるという問題がある。この冷風を有効に利用して、乗員の快適性を向上させることが望まれる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、キャビンに吹き出す冷風を有効に利用して、乗員の快適性を向上させることができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、車両のうち乗員が乗車する部分であるキャビンが、キャビンの内側の空間とキャビンの外側の空間とが常に連通するオープンキャビンである車両に搭載される車両用空調装置は、
冷風を生成するための空気が流れるとともに、空気が冷却されて生成した冷風が流れる冷風用通路(25)と、
冷凍サイクルの冷媒から空気へ排熱させるための空気が流れるとともに、冷媒から空気へ排熱されて生成した排熱風が流れる排熱風用通路(26)と、
冷風用通路に配置され、冷媒と空気との熱交換によって、空気を冷却して冷風を生成するとともに冷媒を蒸発させる蒸発器(23)と、
排熱風用通路に配置され、冷媒と空気との熱交換によって、冷媒から空気へ放熱させて排熱風を形成する放熱器(24)と、
冷風用通路で生成された冷風をキャビンの内側の空間に向けて吹き出す冷風吹出口(13a)と、
冷風吹出口から吹き出された冷風を吸い込むことができる位置に配置され、キャビンの内側の空間(3a)の空気を吸い込む吸込口(7a、11a、31b)と、
吸込口から吸い込まれた空気を分流させて、冷風用通路と排熱風用通路とのそれぞれへ供給する供給用通路(27、31)と、
排熱風用通路で生成された排熱風をキャビンの外側の空間に排出する排熱風出口(11b)と、を備える。
【0008】
また、請求項2に記載の発明によれば、車両のうち乗員が乗車する部分であるキャビンが、キャビンの内側の空間とキャビンの外側の空間とが常に連通するオープンキャビンである車両に搭載される車両用空調装置は、
冷風を生成するための空気が流れるとともに、空気が冷却されて生成した冷風が流れる冷風用通路(25)と、
冷凍サイクルの冷媒から空気へ排熱させるための空気が流れるとともに、冷媒から空気へ排熱されて生成した排熱風が流れる排熱風用通路(26)と、
冷風用通路に配置され、冷媒と空気との熱交換によって、空気を冷却して冷風を生成するとともに冷媒を蒸発させる蒸発器(23)と、
排熱風用通路に配置され、冷媒と空気との熱交換によって、冷媒から空気へ放熱させて排熱風を形成する放熱器(24)と、
冷風用通路で生成された冷風をキャビンに乗車した乗員に向けて吹き出す冷風吹出口(13a)と、
乗員の周辺の空気を吸い込む吸込口(7a、11a、31b)と、
吸込口から吸い込まれた空気を分流させて、冷風用通路と排熱風用通路とのそれぞれへ供給する供給用通路(27、31)と、
排熱風用通路で生成された排熱風をキャビンの外側の空間に排出する排熱風出口(11b)と、を備える。
【0009】
これらによれば、冷風を生成するための空気と、冷媒から空気へ排熱させるための空気とを、共通する吸込口から吸い込む。このため、冷風を生成するための空気と、冷媒から空気へ排熱させるための空気とを、別々の吸込口から吸い込む場合と比較して、冷風吹出口から吹き出された冷風を吸込口から多く吸い込むことができる。
【0010】
そして、吸込口からより多くの冷風を吸い込むため、吸込口から吸い込まれる空気の温度が下がる。このため、冷風用通路に流入する空気の温度が下がる。これにより、蒸発器を通過した後の冷風の温度を下げることができる。
【0011】
さらに、吸込口からより多くの冷風を吸い込むため、排熱風用通路に流入する空気の温度も下がる。これにより、放熱器で熱交換される前の空気と冷凍サイクルの冷媒との温度差が大きくなる。すなわち、冷媒からの放熱量が多くなり、冷房性能が上がる。このため、蒸発器での空気から冷媒への吸熱量を増大させることができ、蒸発器を通過した後の冷風の温度を下げることができる。
【0012】
さらに、吸込口からより多くの冷風を吸い込むため、乗員近傍を通過する冷風の風速が大きくなる。これにより、乗員の体感温度を下げることができる。
【0013】
このように、本発明の車両用空調装置によれば、キャビンに吹き出される冷風を有効に利用して、乗員の快適性を向上させることができる。
【0014】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態における車両用空調装置が搭載されたフォークリフトの側面図である。
図2図1中の車両用空調装置およびその周辺の拡大図である。
図3図2中の車両用空調装置の断面図である。
図4】第2実施形態における車両用空調装置が搭載されたフォークリフトの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0017】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の車両用空調装置10は、フォークリフト1に搭載される。図1の左右方向は、車両の前後方向である。図1の上下方向が、車両の上下方向である。フォークリフト1は、荷役運搬の用途に用いられ、陸上を走行する産業車両である。フォークリフト1は、上下動を行うフォーク2を備える。
【0018】
また、フォークリフト1は、フォークリフト1のうち乗員が乗車する部分であるキャビン3を備える。乗員は、フォークリフト1の運転者である。キャビン3には、乗員が着座するシート4が配置されている。キャビン3は、キャビン3の内側の空間3aがキャビン3の外側の空間と常に連通するオープンキャビンである。オープンキャビンでは、車両用空調装置10から冷風が供給されていない状態において、乗員は外気と同じ状態にさらされる。
【0019】
キャビン3は、2本のフロントアングルバー5と、2本のリヤアングルバー6と、ルーフ7と、防風パネル8とを備える。
【0020】
2本のフロントアングルバー5は、キャビン3の前方部に、互いに間をあけて配置されている。2本のリヤアングルバー6は、キャビン3の後方部に、互いに間をあけて配置されている。2本のフロントアングルバー5および2本のリヤアングルバー6のそれぞれは、キャビン3の隅に位置する。
【0021】
ルーフ7は、キャビン3の上部に配置されている。ルーフ7は、フロントアングルバー5およびリヤアングルバー6に支えられている。ルーフ7は、ガラス板、鉄板等の板状部材で構成されている。
【0022】
防風パネル8は、キャビン3の前方部であって、2本のフロントアングルバー5の間に配置されている。防風パネル8は、走行時の風が運転者にあたるのを防ぐための透明な板状部材である。
【0023】
このように、キャビン3の前方部では、防風パネル8によってキャビン3の内側の空間3aとキャビン3の外側の空間とが仕切られている。しかしながら、キャビン3の側方部および後方部では、キャビン3の内側の空間3aとキャビン3の外側の空間とは仕切られていない。
【0024】
図2に示すように、車両用空調装置10は、キャビン3のルーフ7の上に搭載される。車両用空調装置10は、筐体11と、冷風ダクト12と、冷風吹出口13aとを備える。
【0025】
筐体11は、筐体11の底部に形成された吸込用開口部11aを有する。ルーフ7は、吸込用開口部7aを有する。筐体11の吸込用開口部11aとルーフ7の吸込用開口部7aとが上下方向で対向した状態で、筐体11はルーフ7の上に配置されている。筐体11の吸込用開口部11aは、ダクトを介さずに、ルーフ7の吸込用開口部7aに連通している。本実施形態では、筐体11の吸込用開口部11aおよびルーフ7の吸込用開口部7aが、キャビン3の内側の空間3aの空気を吸い込む吸込口を構成している。
【0026】
ルーフ7と筐体11のそれぞれの吸込用開口部7a、11aは、図1に示されるシート4の上方に位置する。吸込用開口部7a、11aは、乗員の頭部近傍に位置する。吸込用開口部7a、11aの車両前後方向での位置は、シート4のうち後方側領域と同じ位置である。後方側領域は、前後方向でのシート4の座部の中心位置よりも後方側の領域である。吸込用開口部7a、11aの車両前後方向での位置は、シート4よりも車両後方側の位置でもよい。このように、吸込用開口部7a、11aは、乗員の周辺の空気を吸い込むことができる位置に配置されている。吸込用開口部7a、11aは、冷風吹出口13aから吹き出された冷風を吸い込むことができる位置に配置されている。
【0027】
冷風ダクト12は、筐体11の内部で形成された冷風をキャビン3の空間3aに導く冷風用通路を形成する。冷風ダクト12の一端は、筐体11に接続されている。冷風ダクト12は、筐体11の側面から車両前方側に延びた後、下側に向きを変えてキャビン3の空間3aに向かって延びている。ルーフ7は、ダクト用開口部7bを有する。冷風ダクト12の他端側の部分は、ダクト用開口部7bを通っている。冷風ダクト12の他端側の部分は、ルーフ7に固定されている。
【0028】
冷風吹出口13aは、冷風ダクト12の他端側の部分に設けられている。冷風吹出口13aは、冷風の出口である。冷風吹出口13aからキャビン3の空間3aへ冷風が吹き出される。冷風吹出口13aは、冷風ダクト12の他端に接続された風向調整部品13によって構成されている。風向調整部品13は、冷風の向きを調整する。
【0029】
図1に示すように、冷風吹出口13aは、シート4の上方に配置されている。冷風吹出口13aは、乗員の顔近傍に位置する。冷風吹出口13aは、乗員の頭部よりも車両前方側に位置する。すなわち、冷風吹出口13aの車両前後方向での位置は、シート4のうち前方側領域と同じ位置である。前方側領域は、前後方向でのシート4の座部の中心位置よりも前方側の領域である。冷風吹出口13aの車両前後方向での位置は、シート4よりも車両前方側の位置でもよい。冷風吹出口13aは、シート4のうち後方側領域に対して車両前方側に配置される。シート4のうち後方側領域は、車両前後方向での乗員の顔の位置に一致する。このため、冷風吹出口13aは、乗員の前方側から乗員に向かって冷風を吹き出すことで、冷風吹出口13aから吹き出された冷風を乗員の顔に当てることができる。このように、冷風吹出口13aは、シート4に着座する乗員に向けて冷風を吹き出す。
【0030】
図3に示すように、車両用空調装置10は、筐体11の内部に配置された空調ユニット20を備える。図3の左右方向は、車両の前後方向である。空調ユニット20は、筐体11の内部に配置されている。空調ユニット20は、ユニットケース21と、送風機22と、蒸発器23と、放熱器24とを有する。
【0031】
ユニットケース21は、送風機22、蒸発器23、放熱器24等を収容する。ユニットケース21は、その内部に上側通路25と下側通路26とを形成する。上側通路25は、ユニットケース21のうち上側に位置する空気通路である。下側通路26は、上側通路25の下側に位置する空気通路である。ユニットケース21は、ユニットケース21の内部空間を、上側通路25と下側通路26とに仕切る仕切り211を有する。ユニットケース21の内壁と仕切り211とによって、上側通路25と下側通路26とが形成されている。
【0032】
上側通路25は、冷風を生成するための空気が流れるとともに、空気が冷却されて生成した冷風が流れる冷風用通路である。下側通路26は、冷凍サイクルの冷媒から空気へ排熱させるための空気が流れるとともに、冷媒から空気へ排熱されて生成した排熱風が流れる排熱風用通路である。
【0033】
送風機22は、上側ファン221、下側ファン222および駆動モータ223を有する。上側ファン221は、駆動モータ223の一端側に固定されている。下側ファン222は、駆動モータ223の他端側に固定されている。駆動モータ223は、上側ファン221と下側ファン222とを同時に回転させる。送風機22は、駆動モータ223の軸方向を上下方向として配置されている。上側ファン221は、上側通路25の上流側の部分に配置されている。下側ファン222は、下側通路26の上流側の部分に配置されている。上側ファン221および下側ファン222のそれぞれは、駆動モータ223の軸方向から空気を吸い込み、ファン径方向に空気を吹き出す。
【0034】
蒸発器23は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成する冷凍サイクル構成部品である。蒸発器23は、冷凍サイクルの冷媒と空気との熱交換によって、空気を冷却して冷風を生成するとともに、冷媒を蒸発させる熱交換器である。蒸発器23は、上側通路25のうち上側ファン221の空気流れ下流側に配置されている。
【0035】
放熱器24は、冷凍サイクル構成部品である。放熱器24は、冷凍サイクルの冷媒と空気との熱交換によって、冷媒から空気へ放熱させて排熱風を生成する熱交換器である。放熱器24は、下側通路26のうち下側ファン222の空気流れ下流側に配置されている。
【0036】
また、図示しないが、車両用空調装置10は、圧縮機、減圧装置等の他の冷凍サイクル構成部品を備えている。
【0037】
ユニットケース21の上部212のうち上側ファン221の上方には、上側通路入口25aが形成されている。上側通路入口25aは、冷風用通路の入口側開口部である。ユニットケース21の底部213のうち下側ファン222の下方には、下側通路入口26aが形成されている。下側通路入口26aは、排熱風用通路の入口側開口部である。筐体11の内面とユニットケース21の外面とによって、筐体内部通路27が形成されている。この筐体内部通路27は、吸込用開口部7a、11aから流入した空気を分流させて、ユニットケース21の上側通路入口25aと下側通路入口26aとのそれぞれに空気を供給する供給用通路である。
【0038】
ユニットケース21のうち上側通路25の空気流れ下流側の部位に、上側通路出口25bが形成されている。上側通路出口25bに、冷風ダクト12の一端が接続されている。このため、上側通路25は、冷風ダクト12および冷風吹出口13aを介して、乗員の顔近傍の空間と連通する。なお、冷風ダクト12は、筐体11の右側の側壁に形成された開口部を通っている。
【0039】
また、車両用空調装置10は、排熱風ダクト15を備える。排熱風ダクト15は、筐体11の内部に配置されている。筐体11は、筐体11の側面に形成された出口用開口部11bを有する。本実施形態では、出口用開口部11bが、排熱風をキャビン3の外側の空間に排出する排熱風出口を構成する。ユニットケース21のうち下側通路26の空気流れ下流側の部位に、下側通路出口26bが形成されている。排熱風ダクト15の一端は、ユニットケース21の下側通路出口26bに接続されている。排熱風ダクト15の他端は、筐体11の出口用開口部22bに接続されている。このため、下側通路26は、排熱風ダクト15および出口用開口部11bを介して、キャビン3の外側の空間と連通する。
【0040】
次に、本実施形態の車両用空調装置10の作動について説明する。図示しない冷房スイッチがオンになると、送風機22が作動するとともに、図示しない圧縮機が作動する。圧縮機の作動によって、冷媒が冷凍サイクルを循環する。送風機22の作動によって、乗員の顔近傍の空気が、吸込用開口部7a、11aから吸い込まれる。吸込用開口部7a、11aから吸い込まれた空気は、図3中の矢印F1に示すように、上側通路入口25aへ向かう空気流れと、図3中の矢印F2に示すように、下側通路入口26aへ向かう空気流れとに分かれて、筐体内部通路27を流れる。
【0041】
図3中の矢印F1に示すように、上側通路入口25aから吸い込まれた空気は、上側通路25を流れる。上側通路25を流れる空気は、上側ファン221、蒸発器23の順に通過する。空気が蒸発器23を通過するときに、空気が冷却され、冷風が形成される。蒸発器23で形成された冷風は、上側通路出口25b、冷風ダクト12を通って、冷風吹出口13aから吹き出される。これにより、図2中の矢印F3に示すように、乗員の顔近傍へ冷風が供給される。そして、冷風吹出口13aから乗員の顔近傍へ吹き出された冷風の多くは、吸込用開口部7a、11aから吸い込まれる。このとき、キャビン3の外側の空間の空気も、吸込用開口部7a、11aから吸い込まれる。
【0042】
一方、図3中の矢印F2に示すように、下側通路入口26aから吸い込まれた空気は、下側通路26を流れる。下側通路26を流れる空気は、下側ファン222、放熱器24の順に通過する。空気が放熱器24を通過するときに、空気が冷媒からの排熱によって暖められる。排熱によって暖められた空気は、排熱風ダクト15を通って、出口用開口部11bからキャビン3の外側の空間へ排出される。
【0043】
ここで、本実施形態の車両用空調装置10と、比較例1の車両用空調装置とを比較する。図示しないが、比較例1の車両用空調装置は、冷風を形成するための冷風用の空気を吸い込む冷風用吸込口と、冷媒から空気へ排熱させるための排熱用の空気を吸い込む排熱用吸込口とを、別々に備える。冷風用吸込口は、冷風用の空気として、キャビン3の内側の空気を吸い込む。冷風用吸込口から吸い込まれた空気は、上側通路25を流れる。これにより、冷風が冷風吹出口13aから吹き出される。排熱用吸込口は、排熱用の空気として、キャビン3の外側の空気を吸い込む。排熱用吸込口から吸い込まれた空気は、下側通路26を流れる。これにより、排熱風が出口用開口部11bからキャビン3の外側へ排出される。比較例1の車両用空調装置の他の構成は、本実施形態の車両用空調装置10と同じである。
【0044】
比較例1の車両用空調装置では、冷風吹出口13aから吹き出された冷風の一部は、乗員に向かって流れた後、冷風用吸込口から吸い込まれる。しかし、冷風吹出口13aから吹き出された冷風の多くは、乗員に向かって流れた後、開放空間であるキャビン3の内側の空間3aに拡散する。このため、冷風が無駄となるという問題がある。
【0045】
これに対して、本実施形態の車両用空調装置10は、上記の通り、上側通路25と、下側通路26と、蒸発器23と、放熱器24と、吸込用開口部7a、11aと、筐体内部通路27と、冷風吹出口13aと、出口用開口部11bとを備える。冷風吹出口13aは、乗員に向けて冷風を吹き出す。吸込用開口部7a、11aは、乗員の周辺の空気を吸い込むことができる位置に配置されている。すなわち、吸込用開口部7a、11aは、冷風吹出口13aから吹き出された冷風を吸い込むことができる位置に配置されている。
【0046】
これによれば、冷風を生成するための空気と、冷媒から空気へ排熱させるための空気とを、共通する吸込口である吸込用開口部7a、11aから吸い込む。このため、比較例1と比較して、冷風吹出口13aから乗員に向けて吹き出された冷風を、吸込用開口部7a、11aから多く吸い込むことができる。
【0047】
そして、吸込用開口部7a、11aからより多くの冷風を吸い込むため、吸込用開口部7a、11aから吸い込まれる空気の温度が下がる。このため、上側通路25に流入する空気の温度が下がる。これにより、圧縮機、送風機22の運転状態が同じ条件で、比較例1と比較して、蒸発器23を通過した後の冷風の温度を下げることができる。
【0048】
さらに、吸込用開口部7a、11aからより多くの冷風を吸い込むため、下側通路26に流入する空気の温度も下がる。これにより、放熱器24で熱交換される前の空気と冷凍サイクルの冷媒との温度差が大きくなる。すなわち、冷媒からの放熱量が多くなり、冷房性能が上がる。このため、圧縮機、送風機22の運転状態が同じ条件で、比較例1と比較して、蒸発器23の空気からの吸熱量を増大させることができ、蒸発器23で熱交換後の空気温度を下げることができる。すなわち、蒸発器23を通過した後の冷風の温度を下げることができる。
【0049】
さらに、吸込用開口部7a、11aからより多くの冷風を吸い込むため、乗員近傍を通過する冷風の風速が大きくなる。これにより、乗員の体感温度を下げることができる。これらの結果、乗員の快適性を向上させることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、筐体11の吸込用開口部11aは、筐体11の底部に形成されている。しかしながら、吸込用開口部11aは、筐体11の底部ではなく、筐体11の側面に形成されてもよい。このとき、吸込用開口部11aは、ダクトを介して、ルーフ7の吸込用開口部7aに連通する。この場合では、ルーフ7の吸込用開口部7aが、空気吸込口を構成する。このダクトおよび筐体内部通路27が、吸込口から吸い込まれた空気を分流させて、冷風用通路と排熱風用通路とのそれぞれへ供給する供給用通路を構成する。
【0051】
(第2実施形態)
本実施形態の車両用空調装置10Aでは、空気吸込口の位置が、第1実施形態の車両用空調装置10と異なる。本実施形態の車両用空調装置10Aは、乗員の上半身近傍から空気を吸い込むための吸込用ダクト31を備える。
【0052】
吸込用ダクト31は、筐体11からシート4の側方まで延びている。筐体11の吸込用開口部11aは、筐体11の側面に形成されている。吸込用ダクト31の一端31aは、吸込用開口部11aに接続されている。吸込用ダクト31の他端31bは、シート4の背もたれ部の側方に位置する。吸込用ダクト31の他端31bの開口部から空気が吸込まれる。したがって、本実施形態では、吸込用ダクト31の他端31bは、キャビン3の内側の空間3aの空気を吸い込む吸込口を構成している。吸込用ダクト31の他端31bは、乗員の周辺の空気を吸い込むことができる位置に配置されている。すなわち、吸込用ダクト31の他端31bは、冷風吹出口13aから吹き出された冷風を吸い込むことができる位置に配置されている。
【0053】
吸込用ダクト31の他端31bから吸い込まれた空気は、吸込用ダクト31を通り、吸込用開口部11aから筐体11の内部に流入する。その後、第1実施形態と同様に、吸込用開口部11aから筐体11の内部に流入した空気は、筐体内部通路27を流れることで、上側通路25と下側通路26とのそれぞれに供給される。したがって、本実施形態では、吸込用ダクト31および筐体内部通路27は、吸込口から吸い込まれた空気を分流させて、冷風用通路と排熱風用通路とのそれぞれへ供給する供給用通路を構成している。
【0054】
本実施形態の車両用空調装置10Aの他の構成は、第1実施形態の車両用空調装置10と同じである。これによれば、第1実施形態と同じ効果が得られる。さらに、これによれば、吸込用ダクト31の他端31bから乗員の上半身近傍の空気が吸込まれる。このため、乗員の顔近傍から上半身への冷風流れを形成することができる。よって乗員の快適性を向上させることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、吸込用ダクト31の他端31bは、シート4の背もたれ部の側方に位置する。しかしながら、吸込用ダクト31の他端31bは、シート4の座部の側方に位置してもよい。この場合でも、吸込用ダクト31の他端31bからキャビン3の空間3aのうち乗員の周辺の空気を吸い込むことができる。また、吸込用ダクト31の他端31bは、キャビン3の内側の空間3aのうち乗員の周辺の空気を吸い込むことができれば、シート4の背もたれ部または座部の中に位置してもよい。
【0056】
(他の実施形態)
(1)上記した各実施形態では、キャビン3は、防風パネル8を備える。キャビン3の内側の空間3aがキャビン3の外側の空間と常に連通していれば、キャビン3は、防風パネル8以外の仕切りを備えていてもよい。仕切りは、ビニルカバー等の簡易的なものであってもよい。
【0057】
(2)上記した各実施形態では、冷風吹出口13aは、乗員の顔近傍に配置されている。しかしながら、乗員に向けて冷風を吹き出すことができれば、冷風吹出口13aは、他の位置に配置されてもよい。例えば、第1実施形態において、冷風吹出口13aは、キャビン3の内側の空間3aのうち上方側であって、シート4よりも車両後方側の位置に配置されてもよい。また、第1実施形態において、冷風吹出口13aは、キャビン3の内側の空間3aのうち下方側であって、シート4よりも車両前方側に配置されてもよい。また、例えば、第2実施形態において、冷風吹出口13aの位置と、吸込用ダクト31の他端31bの位置とを入れ換えてもよい。
【0058】
(3)第1実施形態では、吸込口である筐体11の吸込用開口部11aおよびルーフ7の吸込用開口部7aは、乗員の頭部近傍に配置されている。第2実施形態では、空気吸込口である吸込用ダクト31の他端31bは、シート4の側方またはシート4に配置されている。吸込口の位置は、これらに限られず、キャビン3の内側の空間3aのうち乗員の周辺の空気を吸い込むことができる位置であればよい。
【0059】
(4)第1実施形態では、ルーフ7の吸込用開口部7aと筐体11の吸込用開口部11aとのそれぞれは、1つである。しかしながら、ルーフ7の吸込用開口部7aと筐体11の吸込用開口部11aとのそれぞれは、複数でもよい。同様に、第2実施形態では、吸込用ダクト31の他端31bは、1つである。しかしながら、吸込用ダクト31の他端31bは、複数でもよい。
【0060】
(5)上記した各実施形態では、冷風吹出口13aは、1つである。しかしながら、冷風吹出口13aは、複数でもよい。
【0061】
(6)上記した各実施形態では、上側ファン221と下側ファン222とが一体に回転する送風機22が用いられている。しかしながら、上側ファン221と下側ファン222とが別々に回転する送風機が用いられてもよい。
【0062】
(7)上記した各実施形態では、筐体11の設置場所は、キャビン3の上方である。しかしながら、筐体11の設置場所は、これに限定されない。例えば、筐体11の設置場所は、キャビン3の側方であってもよい。
【0063】
(8)第1実施形態では、供給用通路は、筐体11の内面とユニットケース21の外面とによって形成された筐体内部通路27によって構成されている。しかしながら、供給用通路は、筐体11の内部に配置され、ユニットケース21とは別体である専用のダクトによって構成されてもよい。この場合、ダクトは、筐体11の吸込用開口部11aとユニットケース21とのそれぞれに接続される。
【0064】
また、供給用通路を専用のダクトで構成する場合、車両用空調装置10は、筐体11を備えていなくてもよい。この場合、ダクトが、供給用通路を構成する通路構成部材である。ダクト上流側の端部が、空気吸込口である。
【0065】
(9)上記した各実施形態では、車両用空調装置10、10Aは、フォークリフト1に搭載される。しかしながら、車両用空調装置10、10Aは、キャビン3がオープンキャビンであり、陸上を走行する他の車両に搭載されてもよい。このような車両としては、荷役運搬の用途に用いられフォークリフト以外の産業車両、ミニショベル等の建設の用途に用いられる建設車両、トラクタ等の農業の用途に用いられる農業車両等が挙げられる。また、車両に、乗員が着座するシートが配置されていなくてもよい。
【0066】
(10)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
7a ルーフの吸込用開口部
11a 筐体の吸込用開口部
11b 筐体の出口用開口部
13a 冷風吹出口
23 蒸発器
24 放熱器
25 上側通路
26 下側通路
27 筐体内部通路
図1
図2
図3
図4