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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146300
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20220928BHJP
   H02K 1/32 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H02K9/19 B
H02K1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047188
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】池本 正幸
(72)【発明者】
【氏名】小田木 隆浩
【テーマコード(参考)】
5H601
5H609
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD30
5H601EE18
5H601GA22
5H601GA24
5H601GA33
5H601GC05
5H601GC12
5H601GE11
5H601GE14
5H601GE15
5H601GE19
5H601JJ05
5H601KK01
5H601KK08
5H609BB03
5H609PP02
5H609PP07
5H609PP08
5H609QQ05
5H609QQ09
5H609QQ12
5H609QQ16
5H609QQ18
5H609RR27
5H609RR37
5H609RR42
5H609RR43
(57)【要約】
【課題】ロータコアとロータシャフトとの間に隙間が形成されている場合に、ロータコアの冷却効率を向上させることが可能なロータを提供する。
【解決手段】このロータ100では、ロータコア10とロータシャフト20との間には隙間Gが形成されている。そして、ロータシャフト20の冷媒排出孔24の流路断面積S1は、冷媒排出孔24と対向する位置に設けられたロータコア10の冷媒導入孔14aの流路断面積S2よりも大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びるシャフト挿入孔と、内部に冷却用冷媒が流れる冷媒流路と、を含むロータコアと、
前記シャフト挿入孔に挿入されるとともに、内部に前記冷却用冷媒が供給される中空のロータシャフトと、を備え、
前記ロータシャフトは、前記冷却用冷媒を前記ロータシャフトの外径側に排出するための径方向に延びる冷媒排出孔を含み、
前記冷媒流路は、前記冷媒排出孔と対向する位置に前記径方向に延びるように設けられ、前記冷媒排出孔から排出された前記冷却用冷媒が導入される冷媒導入孔を含み、
前記ロータコアと前記ロータシャフトとの間には、前記径方向における隙間が形成されており、
前記冷媒排出孔の流路断面積は、前記冷媒導入孔の流路断面積よりも大きい、ロータ。
【請求項2】
前記冷媒導入孔の流路断面積および前記隙間の間隔は、前記冷媒導入孔に導入される前記冷却用冷媒の流量が前記隙間に流れ込む前記冷却用冷媒の流量よりも多くなるように設定されている、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記隙間は、前記ロータシャフトが前記ロータコアの前記シャフト挿入孔に対して隙間嵌めされて挿入されることにより形成されている、請求項1または2に記載のロータ。
【請求項4】
前記冷媒排出孔の流路断面積は、前記冷媒導入孔に導入される前記冷却用冷媒の流量と前記隙間に流れ込む前記冷却用冷媒の流量との和よりも多い前記冷却用冷媒の流量を通過可能な大きさに設定されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項5】
前記冷媒排出孔の内径は、前記冷媒導入孔の内径よりも大きく、
前記冷媒導入孔の内径は、前記隙間の間隔よりも大きい、請求項1~4のいずれか1項に記載のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に冷却用冷媒が流れる冷媒流路を含むロータコアを備えるロータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ロータコアと、ロータコアの径方向内側に貫通してロータコアに連結され、軸方向に沿って延びる筒状のロータ軸(ロータシャフト)と、を備えるロータが開示されている。上記特許文献1に記載のロータでは、ロータコアの内周面とロータ軸の外周面との間には、径方向における隙間が形成されている。ロータコアの内部には、ロータを冷却するための油(冷却用冷媒)が流れるロータ内油路(冷媒流路)が形成されている。また、筒状のロータ軸の内部には、上記油が供給される。また、ロータ軸には、ロータ軸の内周面と外周面とを接続するように径方向に沿って延びる径方向油路(冷媒排出孔)が形成されている。ロータ内油路は、径方向油路と対向する位置に設けられ径方向に延びる部分(以下、冷媒導入孔)を含む。そして、ロータ軸の内部に供給された上記油は、ロータの回転時の遠心力によって、径方向油路から外径側に排出されロータ内流路の冷媒導入孔に流入する。なお、冷媒導入孔の内径は、径方向油路の内径よりも大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-28213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のロータでは、上記のように、ロータコアのロータ内油路(冷媒流路)の冷媒導入孔の内径は、ロータ軸(ロータシャフト)の径方向油路(冷媒排出孔)の内径よりも大きい。このため、ロータの回転時の遠心力によって径方向油路から外径側に排出された上記油(冷却用冷媒)は、ロータコアとロータ軸との間に形成された隙間には流れ込まずに冷媒導入孔に流入する。このため、ロータコアとロータ軸との間に空気層が形成されて、ロータコアからロータ軸への熱伝達効率が低下する。すなわち、ロータコアの冷却効率が低下する。このため、ロータコアとロータ軸(ロータシャフト)との間に隙間が形成されている場合に、ロータコアの冷却効率を向上させることが可能なロータが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ロータコアとロータシャフトとの間に隙間が形成されている場合に、ロータコアの冷却効率を向上させることが可能なロータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるロータは、軸方向に延びるシャフト挿入孔と、内部に冷却用冷媒が流れる冷媒流路と、を含むロータコアと、シャフト挿入孔に挿入されるとともに、内部に冷却用冷媒が供給される中空のロータシャフトと、を備え、ロータシャフトは、冷却用冷媒をロータシャフトの外径側に排出するための径方向に延びる冷媒排出孔を含み、冷媒流路は、冷媒排出孔と対向する位置に径方向に延びるように設けられ、冷媒排出孔から排出された冷却用冷媒が導入される冷媒導入孔を含み、ロータコアとロータシャフトとの間には、径方向における隙間が形成されており、冷媒排出孔の流路断面積は、冷媒導入孔の流路断面積よりも大きい。
【0008】
この発明の一の局面におけるロータでは、上記のように、冷媒排出孔の流路断面積は、冷媒導入孔の流路断面積よりも大きい。これにより、冷媒導入孔を流通可能な単位時間当たりの流量よりも多い冷却用冷媒が冷媒排出孔から外径側に排出されることによって、冷媒排出孔から排出された冷却用冷媒の一部が冷媒導入孔に導入されずに冷却用冷媒の流体圧力によって隙間に押し出される。すなわち、冷媒排出孔から排出された冷却用冷媒のうち冷媒導入孔に導入されない冷却用冷媒がロータコアとロータシャフトとの間に形成された隙間に流れ込むので、ロータコアとロータシャフトとの間に空気層が形成されるのを防止することができる。これにより、空気の熱伝導率よりも冷却用冷媒の熱伝導率の方が高いので、ロータコアとロータシャフトとの間に形成された隙間に冷却用冷媒が殆ど流れ込まない場合と比較して、ロータコアからロータシャフトへの熱伝達効率を向上させることができる。その結果、ロータコアとロータシャフトとの間に隙間が形成されている場合に、ロータコアの冷却効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記のように、ロータコアとロータシャフトとの間に隙間が形成されている場合に、ロータコアの冷却効率を向上させることが可能なロータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態によるロータの構成を示す平面図である。
図2図1の800-800線に沿った断面図である。
図3図2の900-900線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1図3を参照して、一実施形態によるロータ100の構成について説明する。
【0013】
以下の説明では、ロータ100の軸方向、径方向および周方向を、それぞれ、Z方向、R方向およびC方向とする。また、Z方向の一方側および他方側を、それぞれ、Z1側およびZ2側とする。また、R方向の一方側(内径側)および他方側(外径側)を、それぞれ、R1側およびR2側とする。
【0014】
(ロータの全体構成)
図1に示すように、ロータ100は、ステータ101と共に、回転電機102の一部を構成する。回転電機102は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータである。ロータ100およびステータ101は、それぞれ、円環状に形成されている。ロータ100は、ステータ101のR1側に、ロータ100の外周面とステータ101の内周面とがR方向に対向するように配置されている。すなわち、ロータ100は、インナーロータ型の回転電機102の一部として構成されている。
【0015】
ロータ100は、ロータコア10と、ロータシャフト20と、を備える。ロータコア10には、Z方向(軸方向)に延びるシャフト挿入孔11が形成されている。シャフト挿入孔11は、Z方向に見て、ロータコア10の中央部に設けられている。ロータシャフト20は、シャフト挿入孔11に挿入されている。なお、図2に示すように、ロータコア10の内周面10cとロータシャフト20の外周面20aとの間には、R方向(径方向)における隙間Gが形成されている。
【0016】
ロータコア10は、複数の電磁鋼板が積層されている。ロータコア10には、電磁鋼板の積層方向(Z方向)に延びる磁石挿入孔12が形成されている。図1に示すように、磁石挿入孔12は、ロータコア10のうちのR2側の部分に配置されている。磁石挿入孔12は、ロータコア10に複数(本実施形態では20個)設けられている。複数の磁石挿入孔12は、Z方向に見て、C方向に沿って等角度間隔に配置されている。
【0017】
複数の磁石挿入孔12の各々には、永久磁石13が収容されている(配置されている)。すなわち、回転電機102は、埋込永久磁石型モータ(IPMモータ:Interior Permanent Magnet Motor)として構成されている。永久磁石13は、Z方向に直交する断面が長方形形状を有している。永久磁石13は、たとえば、磁化方向(着磁方向)が短手方向となるように構成されている。
【0018】
ロータコア10では、C方向に隣り合う一対の永久磁石13により磁極Mが形成されている。すなわち、磁極Mは、ロータコア10に複数(本実施形態では10個)形成されている。磁極Mを形成する一対の永久磁石13は、R1側に凸のV字状に配置されている。なお、磁極Mを形成する一対の永久磁石13の形状は、これに限られない。
【0019】
図2に示すように、ロータシャフト20は、筒状に形成されている。すなわち、ロータシャフト20は、中空構造を有している。
【0020】
ロータシャフト20は、R2側に突出する突出部21を含む。ロータシャフト20には、ロータシャフト20の雄ねじ部に係合する雌ねじ部を有するナット22が取り付けられている。ロータシャフト20は、突出部21がロータコア10のZ1側の端面10aの一部と当接した状態で、ロータコア10のZ2側に配置されたナット22をロータコア10に対してZ2側から締め付けることにより、ロータコア10に対して締結固定されている。ナット22は、ロータコア10のZ2側の端面10bと当接している。
【0021】
ロータシャフト20は、ギア等の回転力伝達部材を介して、エンジンや車軸等に接続されている。ロータシャフト20が回転軸線80回りに回転することにより、ロータコア10にロータシャフト20の回転力が伝達される。そして、ロータシャフト20およびロータコア10がステータ101(図1参照)に対して回転軸線80回りに回転するように構成されている。
【0022】
(ロータコアの冷却構造)
ロータシャフト20は、内部に冷却用冷媒30(図3参照)(たとえば、冷却用オイル)が供給される。具体的には、ロータシャフト20の内部空間23には、冷媒供給管40が挿入されている。ロータ100(ロータコア10およびロータシャフト20)の回転時に、冷媒供給管40の内部空間41には、冷媒ポンプ(図示しない)から冷却用冷媒30が供給される。冷媒供給管40には、冷媒供給管40の内部空間41とロータシャフト20の内部空間23とを接続する吐出孔42が形成されている。これにより、ロータ100の回転時の遠心力によって、冷媒供給管40の内部空間41から冷却用冷媒30が吐出孔42を介してロータシャフト20の内部空間23に供給される。なお、図2では、冷却用冷媒30の流れを太線矢印で示している。
【0023】
ロータシャフト20は、ロータシャフト20の内部空間23に供給された冷却用冷媒30(図3参照)をロータシャフト20のR2側(外径側)に排出するためのR方向(径方向)に延びる冷媒排出孔24を含む。これにより、ロータ100(ロータコア10およびロータシャフト20)の回転時の遠心力によって、ロータシャフト20の内部空間23から冷却用冷媒30が冷媒排出孔24を介してロータシャフト20のR2側(外径側)に排出される。
【0024】
ロータコア10は、内部に冷却用冷媒30(図3参照)が流れる冷媒流路14を含む。冷媒流路14は、冷媒導入孔14aと、分岐流路部14bと、軸方向流路部14cと、を含む。冷却用冷媒30は、冷媒流路14において、冷媒導入孔14a、分岐流路部14b、軸方向流路部14cの順に流通する。冷媒流路14を流通する冷却用冷媒30は、熱伝導によりロータコア10(ひいては、永久磁石13)を冷却する。
【0025】
冷媒導入孔14aは、冷媒排出孔24と対向する位置にR方向(径方向)に延びるように設けられている。冷媒導入孔14aは、冷媒排出孔24から排出された冷却用冷媒30(図3参照)が導入される。冷媒導入孔14aは、ロータコア10において、Z方向の中央部に設けられている。
【0026】
分岐流路部14bは、冷媒導入孔14aのR2側において、冷媒導入孔14aと接続されている。分岐流路部14bは、Z1側の部分とZ2側の部分とに(二股に)分岐されている。分岐流路部14bのZ1側の部分およびZ2側の部分は、それぞれ、R2側に向かうにしたがって、Z1側およびZ2側に向かう階段状に形成されている。
【0027】
軸方向流路部14cは、分岐流路部14bのR2側において、分岐流路部14b(のZ1側の部分およびZ2側の部分)と接続されている。軸方向流路部14cは、ロータコア10のZ1側の端面10aとZ2側の端面10bとの間に亘ってZ方向に延びるように設けられている。軸方向流路部14cは、磁石挿入孔12のR1側の近傍に配置されている。軸方向流路部14cを流通した冷却用冷媒30(図3参照)は、ロータコア10のZ1側およびZ2側に排出される。
【0028】
ここで、図3に示すように、ロータ100では、冷媒排出孔24の流路断面積S1は、冷媒導入孔14aの流路断面積S2よりも大きい。すなわち、冷媒排出孔24を流通可能な冷却用冷媒30の単位時間当たりの流量は、冷媒導入孔14aを流通可能な冷却用冷媒30の単位時間当たりの流量よりも多い。
【0029】
これにより、図2に示すように、冷媒導入孔14aを流通可能な単位時間当たりの流量よりも多い冷却用冷媒30が冷媒排出孔24からR2側(外径側)に排出されることによって、冷媒排出孔24から排出された冷却用冷媒30の一部が冷媒導入孔14aに導入されずに冷却用冷媒30の流体圧力によって隙間Gに押し出される。すなわち、冷媒排出孔24から排出された冷却用冷媒30のうち冷媒導入孔14aに導入されない冷却用冷媒30がロータコア10とロータシャフト20との間に形成された隙間Gに流れ込むので、ロータコア10とロータシャフト20との間に空気層が形成されるのを防止することができる。これにより、空気の熱伝導率よりも冷却用冷媒30の熱伝導率の方が高いので、ロータコア10とロータシャフト20との間に形成された隙間Gに冷却用冷媒30が殆ど流れ込まない場合と比較して、ロータコア10からロータシャフト20への熱伝達効率を向上させることができる。その結果、ロータコア10とロータシャフト20との間に隙間Gが形成されている場合に、ロータコア10の冷却効率を向上させることができる。
【0030】
また、図3に示すように、冷媒排出孔24および冷媒導入孔14aは、それぞれ、R方向に見て、円形状を有する。そして、冷媒排出孔24の内径D1は、冷媒導入孔14aの内径D2よりも大きい。これにより、冷媒排出孔24の流路断面積S1を、冷媒導入孔14aの流路断面積S2よりも容易に大きくすることができる。
【0031】
また、図2に示すように、冷媒導入孔14aの流路断面積S1(図3参照)および隙間Gの間隔D3は、冷媒導入孔14aに導入される冷却用冷媒30の単位時間当たりの流量が隙間Gに流れ込む冷却用冷媒30の単位時間当たりの流量よりも多くなるように設定されている。すなわち、冷媒導入孔14aを流通可能な単位時間当たりの流量よりも多い冷却用冷媒30が冷媒排出孔24からR2側に排出されることによって、隙間Gに流れ込む冷却用冷媒30の単位時間当たりの流量よりも冷媒導入孔14aに導入される冷却用冷媒30の単位時間当たりの流量の方が多くなる。これにより、冷媒導入孔14aに導入される冷却用冷媒30の単位時間当たりの流量が少なくなるのを防止しながら、冷媒導入孔14aに導入されない冷却用冷媒30を隙間Gに流れ込ませることができる。
【0032】
また、冷媒導入孔14aの内径D2は、隙間Gの間隔D3よりも大きい。これにより、冷媒導入孔14aの流路断面積S1(図3参照)および隙間Gの間隔D3を、冷媒導入孔14aに導入される冷却用冷媒30の流量が隙間Gに流れ込む冷却用冷媒30の流量よりも多くなるように容易に設定することができる。
【0033】
また、冷媒排出孔24の流路断面積S1(図3参照)は、冷媒導入孔14aに導入される冷却用冷媒30の単位時間当たりの流量と隙間Gに流れ込む冷却用冷媒30の流量との和よりも多い冷却用冷媒30の単位時間当たりの流量を通過可能な大きさに設定されている。すなわち、冷媒導入孔14aを流通可能な単位時間当たりの流量と隙間Gを流通可能な単位時間当たりの流量との和よりも多い冷却用冷媒30が冷媒排出孔24からR2側に排出されることによって、冷媒導入孔14aおよび隙間Gが冷却用冷媒30で満たされた状態となる。これにより、隙間Gが冷却用冷媒30で満たされた状態となるように冷却用冷媒30を隙間Gに流し込むことができるので、ロータコア10とロータシャフト20との間に空気層が形成されるのを確実に防止することができる。その結果、ロータコア10からロータシャフト20への熱伝達効率を確実に向上させることができる。
【0034】
また、隙間Gは、ロータシャフト20がロータコア10のシャフト挿入孔11に対して隙間嵌めされて挿入されることにより形成されている。すなわち、隙間Gは、ロータシャフト20をロータコア10のシャフト挿入孔11に挿入する(隙間嵌めする)際のロータコア10の内径とロータシャフト20の外径との差である。これにより、隙間嵌めの際のロータコア10の内径とロータシャフト20の外径との差がそのまま隙間Gの間隔D3となるので、隙間Gの間隔D3が意図した大きさとなるように隙間Gを容易に形成することができる。その結果、隙間Gに流れ込む冷却用冷媒30の単位時間当たりの流量を容易に調節することができる。
【0035】
また、図1に示すように、冷媒排出孔24および冷媒流路14は、それぞれ、ロータコア10の磁極M毎に設けられている。すなわち、ロータコア10では、冷媒排出孔24および冷媒流路14は、それぞれ、複数(本実施形態では10個)設けられている。複数の冷媒排出孔24および複数の冷媒流路14は、それぞれ、互いにC方向に隣り合う磁極M同士の間(q軸上)に形成されている。そして、複数の冷媒排出孔24の流路断面積S1は、それぞれ、複数の冷媒導入孔14aの流路断面積S2よりも大きい。これにより、C方向(周方向)の複数の位置において、冷媒排出孔24から排出された冷却用冷媒30のうち冷媒導入孔14aに導入されない冷却用冷媒30がロータコア10とロータシャフト20との間に形成された隙間Gに流れ込むので、全周に亘って、ロータコア10とロータシャフト20との間に空気層が形成されるのを防止することができる。その結果、1つの冷媒排出孔24の流路断面積S1が1つの冷媒導入孔14aの流路断面積S2よりも大きい場合と比較して、ロータコア10からロータシャフト20への熱伝達効率をより向上させることができる。
【0036】
また、隙間Gは、ロータコア10のZ1側(軸方向における一方側)の端部10dからZ2側(軸方向における他方側)の端部10eに亘って設けられている。なお、隙間Gの間隔D3は、ロータコア10のZ1側の端部10dからZ2側の端部10eに亘って一定の大きさに設定されている。これにより、隙間Gに流れ込んだ冷却用冷媒30を、ロータコア10のZ1側(軸方向における一方側)の端部10dおよびZ2側(軸方向における他方側)の端部10eに向かって滞留させることなく流すことができる。その結果、隙間Gに比較的低温の冷却用冷媒30を供給し続けることができるので、ロータコア10からロータシャフト20への熱伝達効率をより向上させることができる。
【0037】
また、ロータコア10では、隙間Gに流れ込んだ冷却用冷媒30が、隙間Gを流れた後、ロータコア10のZ1側(軸方向における一方側)の端面10aおよびZ2側(軸方向における他方側)の端面10bに沿って流れるように、ロータコア10のZ1側およびZ2側には空間Sが形成されている。具体的には、ロータシャフト20の突出部21とロータコア10のZ1側の端面10aとの間には、隙間Gと接続されるとともにR方向に延びる流路21aが形成されている。また、ナット22とロータコア10のZ2側の端面10bとの間には、隙間Gと接続されるとともにR方向に延びる流路22a形成されている。これにより、冷却用冷媒30をロータコア10のZ1側(軸方向における一方側)の端面10aおよびZ2側(軸方向における他方側)の端面10bにも流すことができるので、冷却用冷媒30によりロータコア10をZ1側およびZ2側からも冷却することができる。
【0038】
また、図3に示すように、R方向(径方向)に見て、冷媒排出孔24の中心位置90は、冷媒導入孔14aの中心位置90と同じ位置に設けられている。すなわち、R方向に見て、冷媒排出孔24のうち冷媒導入孔14aにオーバラップしない部分は、Z方向に対称かつC方向に対称な円環状となっている。そして、冷媒導入孔14aを流通可能な冷却用冷媒30の単位時間当たりの流量よりも多い冷却用冷媒30が冷媒排出孔24からR2側に排出されることによって、冷媒排出孔24のうち冷媒導入孔14aにオーバラップしない円環状の部分の冷却用冷媒30が隙間Gに流れ込む。これにより、R方向(径方向)に見て、冷媒導入孔14aが冷媒排出孔24にオーバラップしない部分がZ方向(軸方向)およびC方向(周方向)に対称となるので、冷媒導入孔14aに導入されない冷却用冷媒30を隙間GにZ方向(軸方向)およびC方向(周方向)において偏りなく流れ込ませることができる。その結果、隙間Gの比較的広範囲に効率よく冷却用冷媒30を流れ込ませることができるので、ロータコア10(図2参照)からロータシャフト20(図2参照)への熱伝達効率をより向上させることができる。
【0039】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0040】
たとえば、上記実施形態では、R方向(径方向)に見て、冷媒排出孔24の中心位置90が、冷媒導入孔14aの中心位置90と同じ位置に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、径方向に見て、冷媒排出孔の中心位置が、冷媒導入孔の中心位置と異なる位置に設けられていてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、隙間Gに流れ込んだ冷却用冷媒30が、隙間Gを流れた後、ロータコア10のZ1側(軸方向における一方側)の端面10aおよびZ2側(軸方向における他方側)の端面10bに沿って流れるように、ロータコア10のZ1側およびZ2側には空間Sが形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、隙間に流れ込んだ冷却用冷媒が、隙間を流れた後、ロータコアの軸方向における一方側の端面および軸方向における他方側の端面以外の部分に沿って流れるように構成してもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、隙間Gが、ロータコア10のZ1側(軸方向における一方側)の端部10dからZ2側(軸方向における他方側)の端部10eに亘って設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、隙間が、ロータコアの軸方向における一方側の端部と他方側の端部との間の一部のみに設けられていてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、冷媒排出孔24および冷媒流路14が、それぞれ、ロータコア10の磁極M毎に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、冷媒排出孔および冷媒流路が、それぞれ、ロータコアの磁極のうちの一部のみに対して設けられていてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、複数の冷媒排出孔24および複数の冷媒流路14が、それぞれ、互いにC方向(周方向)に隣り合う磁極M同士の間(q軸上)に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の冷媒排出孔および複数の冷媒流路が、それぞれ、周方向における磁極の中央部(d軸上)に形成されていてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、冷媒排出孔24の流路断面積S1が、冷媒導入孔14aに導入される冷却用冷媒30の単位時間当たりの流量と隙間Gに流れ込む冷却用冷媒30の流量との和よりも多い冷却用冷媒30の単位時間当たりの流量を通過可能な大きさに設定されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、冷媒排出孔の流路断面積が、冷媒導入孔に導入される冷却用冷媒の単位時間当たりの流量と隙間に流れ込む冷却用冷媒の流量との和と等しい冷却用冷媒の単位時間当たりの流量を通過可能な大きさに設定されていてもよいし、冷媒導入孔に導入される冷却用冷媒の単位時間当たりの流量と隙間に流れ込む冷却用冷媒の流量との和よりも少ない冷却用冷媒の単位時間当たりの流量を通過可能な大きさに設定されていてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、隙間Gが、ロータシャフト20がロータコア10のシャフト挿入孔11に対して隙間嵌めされて挿入されることにより形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、隙間が、ロータシャフトがロータコアのシャフト挿入孔に対して隙間嵌め以外の方法によって挿入されることにより形成されていてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、冷媒排出孔24および冷媒導入孔14aが、それぞれ、R方向(径方向)に見て、円形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、冷媒排出孔が、径方向に見て、円形状以外の形状を有していてもよいし、冷媒導入孔が、径方向に見て、円形状以外の形状を有していてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、冷媒流路14が、二股に分岐されるとともに階段状に形成されている分岐流路部14bを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、冷媒流路が、分岐流路部を含まなくてもよい。その場合、冷媒導入孔と軸方向流路部とが直接接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…ロータコア、11…シャフト挿入孔、14…冷媒流路、14a…冷媒導入孔、20…ロータシャフト、24…冷媒排出孔、30…冷却用冷媒、100…ロータ、D1…(冷媒排出孔の)内径、D2…(冷媒導入孔の)内径、D3…(隙間の)間隔、G…隙間、S1…(冷媒排出孔の)流路断面積、S2…(冷媒導入孔の)流路断面積
図1
図2
図3