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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146307
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】車両用操作ペダル装置
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/46 20080401AFI20220928BHJP
   G05G 1/30 20080401ALI20220928BHJP
   B60T 7/04 20060101ALI20220928BHJP
   B60T 7/06 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G05G1/46
G05G1/30 E
B60T7/04 B
B60T7/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047197
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 健一朗
【テーマコード(参考)】
3D124
3J070
【Fターム(参考)】
3D124AA36
3D124BB01
3D124CC01
3D124DD29
3D124DD68
3J070AA32
3J070BA51
3J070BA71
3J070CC04
3J070CC07
3J070DA01
3J070EA01
(57)【要約】
【課題】踏面に対して作用する踏力をその作用の向きとは異なる向きの力に変換する際に抉りの発生を抑制する車両用操作ペダル装置を提供すること。
【解決手段】車両用操作ペダル装置10では、操作ペダル12が踏み込まれると、連結部材14が、前側クレビス34と共に、平面視で車両前方へ変位する。同時に、踏面20の踏力F1が、連結部材14、前側クレビス34、及びスライドピン60を経て、レバー58の上側及び下側平板部64,66に伝達されるので、上側及び下側平板部64,66は、ボス68の軸線80回りに回動し、上側及び下側平板部64,66の取付穴82に回動支持されるオペレーティングロッド102の先端部104を、踏力F1の向き(車両前方側)とは異なる車幅方向の向き(車両左方)の押力F2で動かす。その際、上側及び下側平板部64,66の長穴84では、スライドピン60が、平面視で車両前方へ変位する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が車両構成部材に対し回動可能に支持されると共に、他端部に踏面が設けられ、前記踏面が車両前方側へ踏み込まれる操作ペダルと、
前記踏面が車両前方側へ踏み込まれる際に前記踏面に作用する踏力を、前記踏力の向きとは異なる変換方向の向きの力に変換する別方向変換機構と、
後端部が前記操作ペダルに対し回動可能に支持されると共に、前端部が前記別方向変換機構に対し回動可能に支持されることによって、前記踏面が車両前方側へ踏み込まれる際に平面視で車両前後方向に沿って変位する連結部材と、
前記連結部材の前記前端部に設けられ、車幅方向で相互に対向すると共に平面視で車両前後方向に沿って延在する一対のアームと、前記一対のアームに車幅方向に沿って突き通されるクレビスピンと、を有するクレビスと、を備え、
前記別方向変換機構は、
前記車両構成部材に固定されるサポート部材と、
前記サポート部材の車両上方側において車両上下方向に沿って延在する状態で前記サポート部材に対し回動可能に支持されるボスと、前記ボスが直交する状態で固設されることによって前記ボスの軸線回りに回動可能な平板部と、を有するレバーと、
前記レバーの前記平板部の縁部に設けられ、前記変換方向に沿って延在するオペレーティングロッドの先端部を回動可能に支持するために使用される取付穴と、
前記レバーの前記平板部において、前記取付穴とは異なる位置に設けられる長穴と、
前記長穴及び前記クレビスの前記一対のアーム間に車両上下方向に沿って装入され、前記長穴内をスライド可能なスライドピンと、を備え、
前記クレビスの前記クレビスピンは、前記クレビスの前記一対のアームと前記スライドピンとに車幅方向に沿って通されることによって、前記スライドピンを前記一対のアームに対し回動可能に支持することを特徴とする車両用操作ペダル装置。
【請求項2】
前記長穴の長手方向は、前記ボスの径方向と一致することを特徴とする請求項1に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項3】
前記平板部は、
前記長穴が設けられる第1平板部と、
前記第1平板部とは上下方向で異なる位置で前記ボスに固設され、前記取付穴が平面視で前記長穴とは異なる位置に設けられる第2平板部と、を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項4】
前記ボスから前記長穴までの距離と、前記ボスから前記取付穴までの距離とが異なることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項5】
前記操作ペダルは、オルガン式ペダルであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の車両用操作ペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏面に対して作用する踏力をその作用の向きとは異なる向きの力に変換する車両用操作ペダル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記車両用操作ペダル装置に関し、種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載の技術は、 補助ブレーキ装置であって、ベース部材と、ブレーキペダルと、連結リンクと、揺動部材と、を有する。
【0003】
連結リンクは、ブレーキペダルの動きを揺動部材に伝えるために設けられる。連結リンクは、上下方向に延びており、上端部でペダルアームの前方延出部に回動可能に連結されており、下端部で揺動部材に回動可能に連結されている。連結リンクが上端部でペダルアームの前方延出部に連結されているため、ブレーキペダルを踏み込み操作すると、連結リンクは、ペダルアームに引き上げられて上方に移動する。
【0004】
揺動部材は、下端部に揺動軸部を有しており、揺動軸部にてベース部材に揺動(回動)可能に支持されている。揺動部材は、揺動軸部から上方に延びる第1アームと、揺動軸部から第1アームと異なる方向に延びる第2アームと、を有する。
【0005】
揺動部材は、第2アームにて、連結リンクの下端部と回動可能に連結されている。第2アームは、ブレーキペダルを操作して連結リンクが上方に移動するとき、連結リンクにより引き上げられて揺動軸部まわりに揺動して上方に移動する。このため、ブレーキペダルの操作時、第1アーム(揺動部材)は揺動軸部まわりに揺動する。
【0006】
このような機構により、補助ブレーキ装置では、ブレーキペダルの上下方向の動きを、連結リンク及び第2アームを介して、第1アームの車幅方向の動きに変換している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-184122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ブレーキペダルの踏み込み操作が行われると、連結リンクが上方に移動する一方で、連結リンクの下端部と回動可能に連結されている第2アームは、揺動軸部まわりを回転しながら上方に移動するため、抉りが発生する虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、上述した点を鑑みてなされたものであり、踏面に対して作用する踏力をその作用の向きとは異なる向きの力に変換する際に抉りの発生を抑制する車両用操作ペダル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するためになされた請求項1に係る発明は、車両用操作ペダル装置であって、一端部が車両構成部材に対し回動可能に支持されると共に、他端部に踏面が設けられ、踏面が車両前方側へ踏み込まれる操作ペダルと、踏面が車両前方側へ踏み込まれる際に踏面に作用する踏力を、踏力の向きとは異なる変換方向の向きの力に変換する別方向変換機構と、後端部が操作ペダルに対し回動可能に支持されると共に、前端部が別方向変換機構に対し回動可能に支持されることによって、踏面が車両前方側へ踏み込まれる際に平面視で車両前後方向に沿って変位する連結部材と、連結部材の前端部に設けられ、車幅方向で相互に対向すると共に平面視で車両前後方向に沿って延在する一対のアームと、一対のアームに車幅方向に沿って突き通されるクレビスピンと、を有するクレビスと、を備え、別方向変換機構は、車両構成部材に固定されるサポート部材と、サポート部材の車両上方側において車両上下方向に沿って延在する状態でサポート部材に対し回動可能に支持されるボスと、ボスが直交する状態で固設されることによってボスの軸線回りに回動可能な平板部と、を有するレバーと、レバーの平板部の縁部に設けられ、変換方向に沿って延在するオペレーティングロッドの先端部を回動可能に支持するために使用される取付穴と、レバーの平板部において、取付穴とは異なる位置に設けられる長穴と、長穴及びクレビスの一対のアーム間に車両上下方向に沿って装入され、長穴内をスライド可能なスライドピンと、を備え、クレビスのクレビスピンは、クレビスの一対のアームとスライドピンとに車幅方向に沿って通されることによって、スライドピンを一対のアームに対し回動可能に支持することを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の車両用操作ペダル装置であって、長穴の長手方向は、ボスの径方向と一致することを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用操作ペダル装置であって、平板部は、長穴が設けられる第1平板部と、第1平板部とは上下方向で異なる位置でボスに固設され、取付穴が平面視で長穴とは異なる位置に設けられる第2平板部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の車両用操作ペダル装置であって、ボスから長穴までの距離と、ボスから取付穴までの距離とが異なることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の車両用操作ペダル装置であって、操作ペダルは、オルガン式ペダルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用操作ペダル装置は、踏面に対して作用する踏力をその作用の向きとは異なる向きの力に変換する際に抉りの発生を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の車両用操作ペダル装置10の概要が表された斜視図である。
図2】同車両用操作ペダル装置10の概要が表された側面図である。
図3】連結部材14、前側クレビス34、及び後側クレビス38が表された斜視図である。
図4】ボス68の軸線80を通る左右方向に平行な線で切断された別方向変換機構16の断面を図2の矢視A-Aで表された図である。
図5】前側クレビス34におけるスライドピン60の取付構造を説明するための分解斜視図である。
図6】同車両用操作ペダル装置10の動作を説明するための側面図である。
図7】連結部材14の傾斜状態が表された側面図である。
図8】レバー58の上側平板部64とスライドピン60の動作を説明するための平面図である。
図9】操作ペダル12及び別方向変換機構16の動作を説明するための平面図である。
図10】(a)は、ボス68の軸線80から長穴84の外端側にある半円の中心108までの第1距離D1と、ボス68の軸線80から取付穴82の中心110までの第2距離D2とが同じ場合を説明するための平面図である。(b)は、同第1距離D1と同第2距離D2とが異なる場合を説明するための平面図である。
図11】同車両用操作ペダル装置10の第1変更例が表された平面図である。
図12】同第1変更例が表された側面図である。
図13】同車両用操作ペダル装置10の第2変更例が表された平面図である。
図14】同第2変更例が表された側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る車両用操作ペダル装置について、具体化した実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。以下の説明に用いる各図面では、基本的構成の一部が省略されて描かれており、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。
【0018】
各図において、前後方向、上下方向、及び左右方向は、各図に記載された通りである。但し、図2図6図7図12、及び図14では、図の紙面の奥側が右方であり、図の紙面の手前側が左方である。図4では、図の紙面の奥側が前方であり、図の紙面の手前側が後方である。図8図9図10(a)、図10(b)、図11、及び図13では、図の紙面の奥側が下方であり、図の紙面の手前側が上方である。
【0019】
以下の説明では、本発明に係る車両用操作ペダル装置が取り付けられる車両(不図示)は、車両と略記する。本発明に係る車両用操作ペダル装置の前方、後方、上方、下方、左方、右方を、「車両前方」、「車両後方」、「車両上方」、「車両下方」、「車両左方」、「車両右方」と表記する。また、本発明に係る車両用操作ペダル装置の前後方向、上下方向を、「車両前後方向」、「車両上下方向」と表記する。更に、本発明に係る車両用操作ペダル装置の左右方向を、「車幅方向」と表記する。
【0020】
図1乃至図3に表されるように、本実施形態の車両用操作ペダル装置10は、操作ペダル12、連結部材14、及び別方向変換機構16等を備えている。操作ペダル12は、オルガン式のものであって、ペダル本体18、踏面20、及び第1貫通穴22等が設けられている。
【0021】
ペダル本体18は、アーム形状をなし、その上端部24の車両後方側には、踏面20が設けられている。一方、ペダル本体18の下端部26には、車幅方向に沿って貫通する第1貫通穴22が設けられている。第1貫通穴22には、ペダル本体18を車両フロア28に対し回動可能に支持するためのボス(不図示)が通された状態で固定される。これにより、踏面20は、車両の運転者によって車両前方側へ踏み込まれること(以下、「踏込み操作」という。)が可能である。
【0022】
尚、ペダル本体18の車両前方側の縁端寄りには、その上端部24と下端部26との間において、車幅方向に沿って貫通する第2貫通穴30が設けられている。
【0023】
連結部材14は、棒状をなしている。連結部材14の前端部32には、前側クレビス34が固定されている。前側クレビス34は、連結部材14の前端部32を別方向変換機構16に対し回動可能に支持するものである。この詳細については、後述する。一方、連結部材14の後端部36には、後側クレビス38が固定されている。
【0024】
後側クレビス38は、基端部40、一対のアーム42,42、及びクレビスピン44等を備えている。基端部40には、その車両前方側から、連結部材14の後端部36が固定されている。一対のアーム42,42は、基端部40から車両後方側へ車両前後方向に沿って延び、車幅方向で相互に対向している。これにより、後側クレビス38は、略U字形状をなしている。一対のアーム42,42には、車幅方向で対向する位置において、車幅方向に沿って貫通する一対のピン穴46,46が設けられている。
【0025】
後側クレビス38では、ペダル本体18の第2貫通穴30の周辺部分が、一対のアーム42,42間に介在している。そのような状態において、クレビスピン44が、一対のアーム42,42の各ピン穴46,46と、ペダル本体18の第2貫通穴30とに、車幅方向に沿って通されている。一対のアーム42,42のうち、一方のアーム42から外方へ突き出したクレビスピン44の先端部分には、抜け止めワッシャ(不図示)が取り付けられている。これにより、後側クレビス38は、ペダル本体18と連結部材14の後端部36とを連結し、連結部材14の後端部36を操作ペダル12に対し回動可能に支持する。
【0026】
尚、前側クレビス34は、後側クレビス38と同様にして、基端部48、一対のアーム50,50、及びクレビスピン52等を備えている。つまり、基端部48には、その車両後方側から、連結部材14の前端部32が固定されている。一対のアーム50,50は、基端部48から車両前方側へ車両前後方向に沿って延び、車幅方向で相互に対向している。これにより、前側クレビス34は、略U字形状をなしている。一対のアーム50,50には、車幅方向で対向する位置において、車幅方向に沿って貫通する一対のピン穴54,54が設けられている。
【0027】
別方向変換機構16は、サポート部材56、レバー58、及びスライドピン60等を備えている。サポート部材56は、車両フロア28において、操作ペダル12よりも車両前方側に配設されている。また、サポート部材56は、平面視で略矩形状をなし、その四隅が車両フロア28にボルト62でそれぞれ固定されている。
【0028】
レバー58は、上側平板部64、下側平板部66、及びボス68等を備えている。上側平板部64及び下側平板部66は、略L字の同一形状をなし、それらの外縁が平面視で重なり合う状態にある。更に、上側平板部64及び下側平板部66は、後述する一部を除いて、車両上下方向で一定間隔を空けながら、車両前後方向及び車幅方向に沿って延在する状態にある。そのような状態にある上側平板部64及び下側平板部66には、それらの曲折部64A,66Aにおいて、ボス68が直交して貫通し、溶接によって接合されている。ボス68は、車両上下方向に沿って延在する状態で、サポート部材56にその車両上方側から固定されている。以下、ボス68の固定構造を、図4を参照しながら説明する。
【0029】
ボス68は、上述したように、上側平板部64及び下側平板部66を車両上下方向で貫通した状態で、上側平板部64及び下側平板部66に溶接で接合されている。ボス68には、その両端から一対のブッシュ70が嵌装された状態で、カラー72が嵌入されている。これにより、各ブッシュ70の円筒部が、ボス68とカラー72との間に備え付けられている。
【0030】
サポート部材56には、支持穴74が設けられている。支持穴74は、カラー72の中空部と車両上下方向で連通した状態にある。そのような状態において、ボルト76がカラー72の上端からサポート部材56の支持穴74まで通される。カラー72の上端では、ボルト76の頭部が当接される。これに対して、サポート部材56では、ボルト76の先端部が車両下方へ突き出しており、その突き出し部分にナット78がねじ込まれる。これにより、カラー72の両端が、ボルト76の頭部とサポート部材56とに挟まれる。そのため、上側平板部64及び下側平板部66と、サポート部材56との間が一定に保持される。更に、カラー72の両端では、各ブッシュ70の円形フランジ部が、カラー72と、ボルト76の頭部又はサポート部材56との間に備え付けられる。
【0031】
このようにして、サポート部材56の車両上方側では、ボス68が、車両上下方向に沿って延在する状態で、サポート部材56に対し回動可能に支持されている。そのため、上側平板部64及び下側平板部66は、ボス68の軸線80回りに回動することが可能である。尚、図1では、ボルト76の頭部とブッシュ70とが省略されている。この省略は、後述する図8乃至図10においても、同様である。
【0032】
図1に戻って、略L字の同一形状をなす上側平板部64及び下側平板部66は、一端部64B,66B及び他端部64C,66Cを備えている。一端部64B,66Bは、ボス68から車両前方側へ延出している部位の先端部分である。これに対して、他端部64C,66Cは、ボス68から車両右方側へ延出している部位の先端部分である。
【0033】
上側平板部64及び下側平板部66には、一端部64B,66Bにおいて、車両上下方向で対向する位置に、車両上下方向に沿って貫通する取付穴82がそれぞれ設けられている。取付穴82は、平面視で円形状である。但し、図1では、上側平板部64の取付穴82が表される一方、下側平板部66のものは、上側平板部64で隠れて表されていない。
【0034】
尚、下側平板部66では、ボス68と一端部66Bとの間は、段差状にせり上がっている。これにより、上側平板部64及び下側平板部66では、一端部64B,66Bの間隔が、他端部64C,66C及び曲折部64A,66Aの各間隔よりも狭くなっている。
【0035】
また、上側平板部64及び下側平板部66には、他端部64C,66Cにおいて、車両上下方向で対向する位置に、車両上下方向に沿って貫通する一対の長穴84,84が設けられている。このようにして、上側平板部64及び下側平板部66では、長穴84が、取付穴82とは異なる位置に設けられている。
【0036】
スライドピン60は、図1及び図2に表されるように、上側平板部64及び下側平板部66において、それらの長穴84に対し、車両上下方向に沿った状態で差し込まれている。スライドピン60の上端は、上側平板部64の長穴84から車両上方へ突き出しており、その突き出し部分がカシメ加工される。同様にして、スライドピン60の下端は、下側平板部66の長穴84から車両下方へ突き出しており、その突き出し部分がカシメ加工される。このようにして、スライドピン60は、上側平板部64及び下側平板部66の各長穴84に取り付けられている。そのため、スライドピン60は、各長穴84内において、各長穴84を形成する壁面に案内されてスライドすることが可能である。
【0037】
また、スライドピン60は、上側平板部64と下側平板部66との間において、前側クレビス34に取り付けられている。以下、前側クレビス34におけるスライドピン60の取付構造を、図1及び図2に加えて、図5の分解斜視図を参照しながら説明する。
【0038】
スライドピン60には、その軸方向(つまり、車両上下方向)の中央において、車幅方向に沿って貫通するピン穴86が設けられている。スライドピン60は、前側クレビス34の一対のアーム50,50間において、車両上下方向に沿った状態で介在している。更に、スライドピン60のピン穴86は、一対のアーム50,50の各ピン穴54と車幅方向で連通した状態にある。そのような状態において、クレビスピン52が、車両左方側のアーム50のピン穴54から、スライドピン60のピン穴86を経て、車両右方側のアーム50のピン穴54まで通される。車両左方側のアーム50では、クレビスピン52の頭部が当接される。これに対して、車両右方側のアーム50では、クレビスピン52の先端部が車両右方へ突き出しており、その突き出し部分に設けられている取付溝88に対して、E型止め輪90が取り付けられる。
【0039】
このようにして、前側クレビス34において、クレビスピン52は、スライドピン60を、一対のアーム50,50に対し回動可能に支持している。これにより、前側クレビス34は、スライドピン60と連結部材14の前端部32とを連結し、連結部材14の前端部32を別方向変換機構16に対し回動可能に支持する。尚、連結部材14は、その前端部32及び後端部36が別方向変換機構16及び操作ペダル12に対し回動可能に支持されると、別方向変換機構16と操作ペダル12との間において、車両前後方向に沿って延在する状態にある。
【0040】
図6に表されるように、本実施形態の車両用操作ペダル装置10は、踏込み操作が行われると、例えば、実線で表された状態から二点鎖線で表された状態に移行する。この点は、後述する図8及び図9においても、同様である。
【0041】
図6では、操作ペダル12の踏面20が、車両の運転者によって、踏力F1で車両前方側へ踏み込まれている。その際、踏面20及びペダル本体18は、第1貫通穴22の中心を回転中心にして、車両前方へ向かう円運動を行う。これにより、後側クレビス38のクレビスピン44は、踏面20及びペダル本体18と共に、車両下方へ変位しながら車両前方へ変位する。これらの変位によって、後側クレビス38では、ペダル本体18と連結部材14の後端部36との連結角度が変化する。
【0042】
これに対して、前側クレビス34のクレビスピン52は、別方向変換機構16のスライドピン60のピン穴86に通されているため、車両上下方向の位置を保ちながら、スライドピン60と共に車両前方へ変位する。この変位によって、前側クレビス34では、スライドピン60に対する連結部材14の前端部32の連結角度が変化する。
【0043】
このようにして、連結部材14は、前側クレビス34及び後側クレビス38と共に、平面視で車両前方へ変位する一方、前端部32から後端部36に向かうに連れて、車両下方へ向かう傾斜状態になる。その際、前側クレビス34は、レバー58の上側平板部64と下側平板部66との間において、クレビスピン52を中心に自転する。但し、ペダル本体18の円運動の範囲がストッパ(不図示)等で制限されているため、図7に表されるように、前側クレビス34のアーム50及び基端部48は、上側平板部64及び下側平板部66に当接しない状態で停止する。
【0044】
また、図8に表されるように、スライドピン60は、車両前方へ変位すると、上側平板部64の長穴84を形成する壁面を車両前方へ押し動かす。これにより、上側平板部64は、ボス68の軸線80回りに回転する。その際、上側平板部64の他端部64Cは、曲線92及びその矢印で示すように、ボス68の軸線80を回転中心にして、車両前方へ向かう円運動を行う。同時に、スライドピン60は、上側平板部64の長穴84を形成する壁面に案内されながら、長穴84内をスライドする。そのため、スライドピン60は、直線94及びその矢印で示すように、車両前方へ向かう直線運動を行う。
【0045】
尚、長穴84の両端側にある2つの半円の中心を結ぶ中心線96は、長穴84の長手方向に平行な線であって、ボス68の軸線80を通過する。つまり、長穴84の長尺方向は、ボス68の径方向と一致する。
【0046】
更に、上側平板部64の一端部64Bは、曲線98及びその矢印で示すように、ボス68の軸線80を回転中心にして、車両左方へ向かう円運動を行う。上側平板部64の一端部64Bには、その取付穴82において、図9に表されるように、マスターシリンダ100から車幅方向に沿って車両右方へ突き出したオペレーティングロッド102の先端部104が、クレビス106によって回動可能に支持されている。そのため、オペレーティングロッド102は、上側平板部64の一端部64Bによって、車両前方へ変位しながら車両左方へ変位する。尚、クレビス106による回動支持は、公知技術で行われるため、その詳細な説明は省略する。
【0047】
図8及び図9を参照して説明した点は、図8及び図9に表されていない下側平板部66においても、同様である。
【0048】
このようにして、別方向変換機構16は、踏面20が車両前方側へ踏み込まれる際に踏面20に作用する踏力F1を、オペレーティングロッド102をマスターシリンダ100に押し込む、車両左方向きの押力F2に変換する。
【0049】
以上詳細に説明したように、本実施形態の車両用操作ペダル装置10では、操作ペダル12が車両前方側へ踏み込まれると、連結部材14が、前側クレビス34(の一対のアーム50,50及びクレビスピン52)及び後側クレビス38(の一対のアーム42,42及びクレビスピン44)と共に、平面視で車両前方へ変位(車両前方へ向かう直線運動)する。
【0050】
同時に、踏面20に作用する踏力F1が、ペダル本体18、後側クレビス38(の一対のアーム42,42及びクレビスピン44)、連結部材14、前側クレビス34(の一対のアーム50,50及びクレビスピン52)、及びスライドピン60を介して、レバー58の上側平板部64及び下側平板部66に伝達される。そのため、上側平板部64及び下側平板部66は、ボス68の軸線80回りに回動し、上側平板部64及び下側平板部66の各取付穴82に回動可能に支持されているオペレーティングロッド102の先端部104を、踏力F1の向きとは異なる車幅方向の向き(車両左方)の押力F2で押し動かす。
【0051】
その際、上側平板部64及び下側平板部66の各長穴84は、ボス68の軸線80を回転中心にして、車両前方へ向かう円運動を行う。しかしながら、各長穴84内では、スライドピン60が、各長穴84を形成する壁面に案内されることによって、連結部材14、前側クレビス34(の一対のアーム50,50及びクレビスピン52)、及び後側クレビス38(の一対のアーム42,42及びクレビスピン44)と同様にして、平面視で車両前方へ変位(車両前方へ向かう直線運動)する。
【0052】
このようにして、本実施形態の車両用操作ペダル装置10は、スライドピン60を平面視で車両前方へ変位(車両前方へ向かう直線運動)させることによって、踏面20に対して作用する踏力F1をその作用の向きとは異なる向きの力(つまり、押力F2)に変換する際において、抉りの発生を抑制する。
【0053】
また、本実施形態の車両用操作ペダル装置10は、中心線96で示すように、長穴84の長手方向をボス68の径方向と一致させている。そのため、本実施形態の車両用操作ペダル装置10は、長穴84の長手方向を最短にすることによって、レバー58の上側平板部64及び下側平板部66を最小化することが可能である。
【0054】
また、本実施形態の車両用操作ペダル装置10では、操作ペダル12がオルガン式ペダルである。オルガン式ペダルは、吊り下げ式のペダルに比べて、車両上下方向の長さが短い。そのため、操作ペダル12では、踏込み操作が行われる際において、後側クレビス38が取り付けられる第2貫通穴30の周辺部分が、吊り下げ式のペダルと比べて、車両上下方向に大きく変位する。従って、本実施形態の車両用操作ペダル装置10では、上記抉りの発生の抑制が、より効果的に発揮される。
【0055】
ちなみに、本実施形態において、車両フロア28は、「車両構成部材」の一例である。ペダル本体18の上端部24は、「操作ペダルの他端部」の一例である。ペダル本体18の下端部26は、「操作ペダルの一端部」の一例である。前側クレビス34は、「クレビス」の一例である。前側クレビス34の一対のアーム50,50は、「一対のアーム」の一例である。 前側クレビス34のクレビスピン52は、「クレビスピン」の一例である。上側平板部64及び下側平板部66は、「平板部」の一例である。上側平板部64の一端部64Bは、「縁部」の一例である。下側平板部66の一端部66Bは、「縁部」の一例である。中心線96で示される方向は、「長穴の長手方向」及び「ボスの径方向」の一例である。押力F2は、「変換方向の向きの力」の一例である。
【0056】
また、車両前方側は、「踏力の向き」の一例である。車幅方向は、「変換方向」の一例である。車両左方は、「変換方向の向き」の一例である。
【0057】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0058】
本実施形態の車両用操作ペダル装置10では、図10(a)に表されるように、レバー58において、ボス68の軸線80から長穴84の外端側にある半円の中心108までの距離を示す第1距離D1と、ボス68の軸線80から取付穴82の中心110までの距離を示す第2距離D2とが、同じである。もっとも、第1距離D1及び第2距離D2は、異なってもよい。例えば、図10(b)に表されるように、第2距離D2を第1距離D1よりも短くすれば、踏力F1から変換される押力F2が大きくなる。
【0059】
従って、本実施形態の車両用操作ペダル装置10は、その搭載車両の種類等によってオペレーティングロッド102の先端部104をマスターシリンダ100に押し込むために必要な力が異なるケースについても、第1距離D1と第2距離D2との比を変更することによって対応することが可能である。
【0060】
ちなみに、この場合、第1距離D1は、「ボスから長穴までの距離」の一例である。第2距離D2は、「ボスから取付穴までの距離」の一例である。
【0061】
また、本実施形態の車両用操作ペダル装置10では、レバー58の上側平板部64及び下側平板部66に代えて、図11及び図12に表されるように、上側平板アーム112及び下側平板アーム114が設けられてもよい。以下、このような第1変更例について説明するが、その説明では、上記実施形態と実質的に共通する部分には同一の符号を付すことにより、詳しい説明を省略する。この点は、後述する第2変更例においても、同様である。
【0062】
図11に表されるように、上側平板アーム112には、ボス68とは反対側の先端部において、長穴84が設けられている。下側平板アーム114には、ボス68とは反対側の先端部において、取付穴82が設けられている。このようにして、長穴84は、上側平板アーム112のみに設けられ、取付穴82は、下側平板アーム114のみに設けられている。長穴84及び取付穴82は、平面視において、上記実施形態と同じ位置、つまり互いに異なる位置に設けられている。尚、スライドピン60の下端は、カシメ加工されていない。
【0063】
図12に表されるように、上側平板アーム112及び下側平板アーム114には、ボス68が直交する状態で設けられている。更に、上側平板アーム112及び下側平板アーム114は、車両上下方向で一定間隔を空けながら、車両前後方向及び車幅方向に沿って延在する状態にある。下側平板アーム114は、車両上下方向において、上側平板アーム112よりも低い位置でボス68に固設されている。つまり、上側平板アーム112及び下側平板アーム114は、サポート部材56からの距離(つまり、高さ)を異にして、ボス68に固設されている。従って、長穴84及び取付穴82についても、サポート部材56からの距離(つまり、高さ)が異になる。
【0064】
そのため、第1変更例の構造は、ボス68において、取付穴82(オペレーティングロッド102の先端部104が取り付けられるもの)が設けられる下側平板アーム114の固設位置を容易に変更することが可能なものであるから、車両用操作ペダル装置10の搭載車両の種類等によってオペレーティングロッド102の先端部104の位置が異なるケースについても対応することが可能である。
【0065】
また、図13及び図14に表される第2変更例のように、ボス68において、上側平板アーム112及び下側平板アーム114の固設角度が変更されてもよい。第2変更例では、上記第1変更例と比べて、上側平板アーム112の固設角度は変更されていないが、下側平板アーム114の固設角度が変更されている。これにより、下側平板アーム114の取付穴82は、上記第1変更例とは異なり、平面視でボス68から車両左方へ向かう側に位置する。そのため、踏込み操作が行われると、踏力F1から変換される押力F2は、車両前後方向において、車両後方へ向かう力として作用する。
【0066】
ちなみに、第1変更例および第2変更例において、上側平板アーム112は、「第1平板部」の一例である。下側平板アーム114は、「第2平板部」の一例である。
【0067】
また、上記実施形態では、レバー58において、上側平板部64の強度が確保されるのであれば、下側平板部66が省かれてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、操作ペダル12をオルガン式ペダルとして本発明が適用されているが、吊り下げ式のペダルとして本発明が適用されてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、操作ペダル12をブレーキペダルとして本発明が適用されているが、車両で使用される各ペダル(例えば、アクセルペダル又はクラッチペダル等)として本発明が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 車両用操作ペダル装置
12 操作ペダル
14 連結部材
16 別方向変換機構
20 踏面
24 ペダル本体の上端部
26 ペダル本体の下端部
28 車両フロア
32 連結部材の前端部
34 前側クレビス
36 連結部材の後端部
50,50 前側クレビスの一対のアーム
52 前側クレビスのクレビスピン
56 サポート部材
58 レバー
60 スライドピン
64 上側平板部
64B 上側平板部の一端部
66 下側平板部
66B 下側平板部の一端部
68 ボス
80 ボスの軸線
82 取付穴
84 長穴
96 長穴の中心線
102 オペレーティングロッド
104 先端部
112 上側平板アーム
114 下側平板アーム
D1 第1距離
D2 第2距離
F1 踏力
F2 押力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14